(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103462
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】関節骨インプラント用増強コンポーネント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006001
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】23152646
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル ラン
(72)【発明者】
【氏名】サイード ムサ
(72)【発明者】
【氏名】ラシット オズカン
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン ゾウアギ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC04
4C097DD01
4C097DD10
4C097FF05
4C097MM04
4C097SC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨インプラント用の増強コンポーネントを提供する。
【解決手段】関節インプラント用の増強コンポーネント(1)は、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された、第1の構造体(12)と、第1の構造体(12)を少なくとも部分的に取り囲むか、または第1の構造体(12)の周縁に沿って第1の構造体(12)上に少なくとも部分的に配置される第2の構造体(15)と、を備える。さらに、本発明は、特に空間的に互いに離開して、上記の増強コンポーネント(1)および少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントを備える外科用キットまたはシステムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節インプラント(30)のための増強コンポーネント(1)であって、
水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された、第1の構造体(12)と、
前記第1の構造体(12)を少なくとも部分的に取り囲むか、または前記第1の構造体(12)の周縁に沿って前記第1の構造体(12)上に少なくとも部分的に配置される第2の構造体(15)と、
を備える、増強コンポーネント(1)。
【請求項2】
前記第1の構造体(12)が多孔質構造体または格子状構造体、特に平らな、または板状の多孔質構造体または格子状構造体の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項3】
前記第2の構造体(15)は、前記第1の構造体(12)の高さよりも大きい高さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項4】
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の片側、特に遠位側にのみ配置されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項5】
前記増強コンポーネント(1)の片側、特に近位側には、前記第1の構造体(12)がないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項6】
前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の近位側の方向に延びていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項7】
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の底部要素を形成し、前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の壁部要素、特に周壁部要素の形態であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項8】
前記第2の構造体(12)は、水または水性液体と接触して硬化可能である前記生体適合性材料(20)の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項9】
前記第1の構造体(12)および前記第2の構造体(15)が、互いに独立して、金属材料を含み、または金属材料から構成され、特に、前記金属材料が、チタン、チタン合金、コバルトまたはコバルトをベースとする合金、移植可能なステンレス鋼、および前述の金属材料の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項10】
前記増強コンポーネント(1)が、前記増強コンポーネント(1)を複数の空間(17)に細分化し、または前記増強コンポーネント(1)の複数の空間(17)の形成に関与する多数の仕切り要素(16)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項11】
前記増強コンポーネント(1)は、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための固定要素(22)を受け入れるように適合された少なくとも1つの開口部(18)を備えることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項12】
前記増強コンポーネント(1)は、前記関節インプラントの外側輪郭部に部分的に一致する外側輪郭部(3)を有し、前記関節インプラントのシャフト、キール、固定ペグまたはウィングレットにフィットするように適合されたさらなる外側輪郭部(5)を有することを特徴とする、請求項11に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項13】
前記増強コンポーネント(1)が単一部品コンポーネントの形態であることを特徴とする、
請求項1から12のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項14】
前記増強コンポーネント(1)は、3D印刷、特に3D金属印刷によって製造されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項15】
外科用キットまたはシステム(10)であって、
特に空間的に互いに離開して、請求項1から14のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)と、
少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントであって、特に、関節インプラント(30)、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための多数の固定要素(22)、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)、使用のための命令、および前述のキットまたはシステムコンポーネントの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのキットまたはシステムコンポーネントと、
を備える、外科用キットまたはシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節骨インプラント(articular or joint bone implant)用の増強コンポーネント、および関節骨(articular or joint bone)の欠損を治療するための外科用キットまたはシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関節形成術(例えば膝関節形成術)中では、患者が骨を著しく失う可能性がある。そのため、患者に合わせた治療を行うために増強が使用されることがある。増強は、起こりうる骨の損失を補うために使用される。
【0003】
国際出願第2008/040408号には、骨インプラント用の増強コンポーネントが記載されている。この増強コンポーネントは、金属性多孔質構造体と、増強コンポーネントを骨インプラントに固定するための固定要素用の少なくとも1つの開口部とを有するものとして記載されている。この増強コンポーネントは、骨インプラントを確実に安定させ、骨組織の最適な内部成長を可能にすることを目的としている。
【0004】
上記のアプローチにもかかわらず、特に、国際出願第2008/040408号から公知の増強コンポーネントは骨セメントなしで使用することのみを意図しているため、さらなる改良の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の根底にある目的は、上記の必要性に適切に対処する増強コンポーネントおよび外科用キットを利用可能にすることである。
【0006】
この目的は、請求項1に記載の増強コンポーネントおよび請求項15に記載の外科用キットによって適切に達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項および本明細書において定義される。すべての請求項の主題および文言はそれぞれ、明示的な参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、増強コンポーネント、特に関節インプラントまたは関節インプラント用の増強コンポーネントに関する。
【0008】
増強コンポーネントは、以下を備える。
-水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された、第1の構造体と、
-第1の構造体を少なくとも部分的に、特に部分的にのみ、または連続的に、すなわち完全に、またはいかなる干渉もなしに、取り囲むか、または第1の構造体の周縁に沿って第1の構造体上に、少なくとも部分的に、特に部分的にのみ、または連続的に、すなわち完全に、またはいかなる干渉もなしに、配置される第2の構造体。
【0009】
本発明に従って使用される「増強コンポーネント」という用語は、特に骨の欠損、特に骨の損失を補うように適合されたコンポーネントを指す。
【0010】
本発明に従って使用される「関節インプラント」という用語は、関節の骨欠損を治療するためのインプラントを指す。関節インプラントは、永久インプラントまたは一時的なインプラントの形態であってもよい。さらに、関節インプラントは、脛骨インプラント、大腿骨インプラント、膝関節インプラント、股関節インプラント、足関節インプラント、肩関節インプラント、下顎関節インプラント、肘関節インプラント、指関節インプラント、および脊椎関節インプラントからなる群から選択されてもよい。
【0011】
本発明に従って使用される「骨欠損」という用語は、特に、哺乳動物、特にヒトまたは非ヒトの骨、より詳細には関節骨、好ましくは股関節または膝関節の骨における骨材料の損失および/または空隙または空洞の形態での異常を意味する。骨欠損は、骨折、骨外傷、骨疾患、腫瘍疾患、または外科的介入/再介入、より詳細には再手術、特に関節形成術、特に人工股関節形成術または人工膝関節形成術などの部分的または全体的な人工関節形成術後の結果であり得る。特に、骨欠損は、脛骨欠損、大腿骨欠損、膝関節欠損、股関節欠損、足関節欠損、肩関節欠損、下顎関節欠損、肘関節欠損、指関節欠損および脊椎骨欠損からなる群から選択されてもよい。
【0012】
好ましくは、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料は、骨セメント材料である。
【0013】
本発明に従って使用される「生体適合性材料」という用語は、それを必要とする患者にとって有害でないか、または基本的に有害でない任意の材料を指す。
【0014】
本発明に従って使用される「骨セメント材料」という用語は、水または水性液体と接触して硬化可能である任意の生体適合性材料を指し、ここで、生体適合性材料の硬化は、セメントの、またはセメントの様な硬化プロセスに基づいている。
【0015】
本発明に従って使用される「水性液体」という用語は、水を有する、または水を含む液体を指す。水性液体は、例えば、体液、水溶液または水性懸濁液の形態であってもよい。好ましくは、水性液体は水溶液、特に塩化ナトリウム水溶液のような塩水溶液である。あるいは、または組み合わせて、水性液体は、体液、特に血液および/または組織液、特に硬組織液、例えば骨組織液、および/または軟組織液、例えば軟骨液であってもよい。
【0016】
国際出願第2008/040408号に記載されている増強コンポーネントとは対照的に、本発明による増強コンポーネントは、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料と組み合わせて、または生体適合性材料無しに使用することができる。
【0017】
有利なことには、第1の構造体により、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料と、関節または関節インプラントとの間のグリップがかなり改善される可能性がある。したがって、脱臼の危険性が著しく低減される。十分な安定性を得るためには、骨組織を(追加的に)内部成長させる必要はない。好ましくは、増強コンポーネントの第1の構造体と、治療される骨欠損とは接触しない。さらに、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料に対するその透過性設計により、第1の構造体は、増強コンポーネントの全体的な軽量化に有利に寄与する。
【0018】
有利なことに、第2の構造体によって、第1の構造体と関節または関節インプラントとの間の強い接触が完全に回避される。このような接触は、2つのインプラント間の摩擦により、患者の体内での材料の残留を引き起こし得る。
【0019】
さらに、第2の構造体は、有利には、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料と第1の構造体との間の十分なインターロックを可能にする。さらに、軟骨組織のような任意の軟組織と第1の構造体との強い接触が回避され、あるは少なくとも最小限に抑えられる。
【0020】
本発明の一実施形態では、第1の構造体が多孔質、特に開孔多孔質構造体、または格子状構造体(グリッド状構造体)、特に平らな、または板状の多孔質構造体、または平らな、または板状の格子状構造体の形態を有し、または、そのような形態である。
【0021】
好ましくは、第1の構造体は、空隙または中空空間、特に連通する空隙または中空空間を備える。特に、空隙または中空空間は、細孔、特に相互接続された細孔の形態であってもよい。
【0022】
空隙または中空空間は、0.25mm~5mmの直径を有していてもよい。さらに、第1の構造体の空隙または中空空間の直径は、第1の構造体全体にわたって変化してもよく、または一定であってもよい。
【0023】
さらに、第1の構造体の空隙または中空空間の直径は、第1の構造体のある部分から別の部分にむけて変化してもよく、特に徐々に変化してもよい。従って、有利には、第1の構造体の機械的特性を調整することが可能である。例えば、機械的強度が高すぎると、骨溶解によって隣接する骨組織を損傷する危険性があるが、これを避けることができる。
【0024】
さらに、第1の構造体の空隙または中空空間の直径は、第1の構造体のある部分から別の部分への移行部において、徐々にまたは非漸進的に、特に急激にまたは突然に、変化してもよい。
【0025】
好ましくは、第1の構造体は、支柱、特に相互接続された支柱を備え、または支柱によって構成される。より好ましくは、支柱は、特にこれ以前の段落で開示したように、空隙または中空空間を形成する。第1の構造体の支柱は、本発明によればウェブと呼ぶこともできる。支柱は、0.2mm~2.5mmの厚さを有していてもよい。
【0026】
特に好ましくは、第1の構造体は、格子状構造体(グリッド状構造体)、特に三次元格子状構造体の形態であり、好ましくは、これ以前の段落に開示されているように、支柱を備え、または支柱によって構成される。
【0027】
さらに、第1の構造体は、0.05~0.5の相対密度を有していてもよい。
【0028】
第1の構造体の文脈において本発明に従って使用される「相対密度」という用語は、第1の構造体自体の密度を支柱の材料の密度で割ったものを意味する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、第2の構造体は、第1の構造体の高さまたは厚さよりも大きい高さまたは厚さを有する。好ましくは、第2の構造体は、第1の構造体よりも0.1mm~20mm、特に0.1mm~15mm、好ましくは0.1mm~12mm高く、あるいは厚い。さらに好ましくは、第1の構造体は、0.5mm~4mm、特に0.5mm~3mm、好ましくは1mm~2mmの高さまたは厚さ、特に最小の高さまたは厚さを有することができる。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、第1の構造体は、特に、増強コンポーネントの片側に、特に片側のみに、特に遠位側または近位側に、好ましくは遠位側に配置される。
【0031】
あるいは、第1の構造体は、増強コンポーネントの対向する2つの側面、特に遠位側と近位側に配置される。例えば、このようなことは、増強コンポーネントが4mmの厚さを有する場合に考えられる。
【0032】
増強コンポーネントの文脈で本発明に従って使用される「近位側」という用語は、増強コンポーネントが移植された状態において、関節インプラントの方を向いているか、または増強コンポーネントによって治療される関節の中心を向いている増強コンポーネントの側を指す。
【0033】
増強コンポーネントの文脈で本発明に従って使用される「遠位側」という用語は、増強コンポーネントが移植された状態において、増強コンポーネントの関節インプラントから離れる側を向くか、または増強コンポーネントによって治療される関節の中心から離れる側を向く増強コンポーネントの側を指す。
【0034】
本発明に従って使用される「関節の中心(center of an articulation)」または「関節の中心(center of a joint)」という用語は、関節の関節パートナー間の接合面または接合平面または接合線または接合点を指す。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、増強コンポーネントの片側、特に片側のみ、特に近位側または遠位側、好ましくは近位側には、第1の構造体がない。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、第2の構造体は、増強コンポーネントの近位側または遠位側、好ましくは近位側の方向に延びる。
【0037】
さらに、第1の構造体は、第2の構造体の高さまたは厚さに沿って、少なくとも部分的に、特に部分的においてのみ、または連続的に、すなわち完全にまたは中断することなく、延在してもよい。特に、第1の構造体は、第2の構造体の高さまたは厚さに沿って部分的にのみ延在してもよく、増強コンポーネントの近位側および/または遠位側、好ましくは近位側および遠位側の両方には、第1の構造体がない。あるいは、第1の構造体は、増強コンポーネントの一方の側から対向する側まで、特に遠位側から近位側まで、またはその逆に、連続的に延在してもよい。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、第1の構造体は、増強コンポーネントの底部要素を形成する。好ましくは、第2の構造体は、増強コンポーネントの壁部要素、特に周壁部要素を備えるか、または形成する。壁部要素は、0.5mm~10mm、特に0.5mm~5mm、好ましくは0.5mm~2mmの厚さを有していてもよい。
【0039】
本発明のさらなる実施形態において、第2の構造体は、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていない。好ましくは、第2の構造体には、空隙または中空、空間特に細孔の形態の空隙または中空空間がない。したがって、第2の構造体の文脈で先に述べた利点は、さらに改善され得る。
【0040】
本発明のさらなる実施形態では、第1の構造体および第2の構造体は、互いに独立して、材料を含むか、または材料から構成される。主に、材料は、金属材料、セラミック材料、ポリマー材料、および前述の材料の少なくとも2つの組み合わせ、特に混合物からなる群から選択されてもよい。好ましくは、材料は金属材料であり、特に、チタン、チタン合金、コバルトまたはコバルトをベースとする合金、移植可能なステンレス鋼(ISO 5832-1によるステンレス鋼など)、および前述の金属材料の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。特に好ましいチタン合金は、Ti6Al4V、すなわち、3.5重量パーセントから4.5重量パーセントのバナジウム、5.5重量パーセントから6.75重量パーセントのアルミニウム、およびバランスチタン(balance titanium)、および任意に不可避の不純物を含む合金である。特に、Ti6Al4Vは、ISO 5832-3によるTi6Al4Vであってもよい。有用なセラミック材料は、特にISO 6474-1による、アルミナのような生体適合性セラミック、ジルコニア、および前述のセラミック材料の少なくとも2つの組み合わせ、特に混合物(有用な組み合わせは、ISO 6474-2によるATZまたはZTAとして知られている)からなる群から選択されてもよい。有用なポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ビタミンE含有UHMWPE、架橋UHMWPE、炭素添加ポリマー、および前述のポリマー材料の少なくとも2つの組み合わせ、特に混合物からなる群から選択されてもよい。
【0041】
本発明のさらなる実施形態において、増強コンポーネントは、増強コンポーネントを複数の空間に細分化する、または増強コンポーネントの複数の空間の形成に関与する、多数の仕切り要素、すなわち(1つのみの)仕切り要素、または複数の、すなわち2つ以上の仕切り要素をさらに備える。仕切り要素の数は、有利には、増強コンポーネントの押し付け強度を増加させるか、または確実にする。好ましくは、多数の仕切り要素は(多数の仕切り要素もまた)、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料の通過または浸透を許容するように適合されず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されない。より具体的には、多数の仕切り要素は、好ましくは、空隙または中空空間、特に細孔の形態の空隙または中空空間を有さない。多数の仕切り要素は、0.5mm~10mm、特に0.5mm~5mm、好ましくは0.5mm~2mmの厚さを有していてもよい。
【0042】
原則的に、多数の仕切り要素は、第1の構造体および/または第2の構造体と同じ材料を有するか、または同じ材料で構成されてもよい。あるいは、多数の仕切り要素は、第1の構造体および/または第2の構造体とは異なる材料を有するか、または異なる材料から構成されてもよい。有用な材料に関しては、その全体において、第1の構造および第2の構造に関して言及された材料を参照する。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、増強コンポーネントは、増強コンポーネントを関節インプラントに固定するための固定要素を受け入れるように適合された、少なくとも1つの開口部、特に(唯一の)1つの開口部または複数の開口部を備える。従って、増強コンポーネントと関節インプラントとの間の接続が有利に改善され得る。固定要素は、例えば、ねじ、釘またはピンの形態であってもよい。例えば、増強コンポーネントは、増強コンポーネントを関節インプラントに固定するための固定要素を受け入れるように適合された2つまたは3つの開口部を備えていてもよい。
【0044】
本発明のさらなる実施形態において、増強コンポーネントを関節インプラントに固定するための固定要素を受け入れるように適合されている少なくとも1つの開口部は、少なくとも1つの貫通部の形態、すなわち、増強コンポーネント、特に増強コンポーネントの第1の構造体をその高さ方向または厚さ方向に沿って完全に横断または広がる少なくとも1つの開口部の形態であり、および/または中空円筒要素によって形成され、中空円筒要素は両端が開口している。特に、中空円筒要素は、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料の通過または浸透を許容するように適合されていない、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていない壁部を有していてもよい。好ましくは、中空円筒要素の壁部には、空隙または中空空間、特に細孔の形態の空隙または中空空間がない。壁は、0.5mm~10mm、特に0.5mm~5mm、好ましくは0.5mm~2mmの厚さを有していてもよい。原則として、中空円筒要素は、第1の構造体および/または第2の構造体と同じ材料を有するか、または同じ材料から構成されてもよい。あるいは、中空円筒要素は、第1の構造体および/または第2の構造体とは異なる材料を有するか、または異なる材料から構成されてもよい。有用な材料に関しては、その全体において、第1の構造体および第2の構造体に関して言及された材料を参照する。
【0045】
あるいは、増強コンポーネントは、増強コンポーネントを関節インプラントに固定するための固定要素を受け入れるように適合された開口部を有さなくてもよい。この場合、増強コンポーネントの固定は、例えばクリップなど、別の方法で行われてもよい。
【0046】
好ましくは、増強コンポーネントは、関節インプラントの外側輪郭部と部分的に一致する外側輪郭部を有し、関節インプラントのシャフト、キール、固定ペグまたはウィングレットにフィットするように適合されたさらなる外側輪郭部を有する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態では、増強コンポーネントは、単一部品コンポーネントの形態である。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、増強コンポーネントは、3D印刷または積層造形法、特に3D金属印刷によって製造または生産される。これは、サブトラクティブ製造による製造では非現実的であろう、増強コンポーネントの複雑な輪郭、設計、形状および/または幾何学形状が実現され得るという利点を有する。したがって、3D印刷または積層造形法は、有利なことに、増強コンポーネントをターゲットとした製造を可能にし、それによって患者の個々のニーズに正確に対処する。さらに、増強コンポーネントの製造に3D印刷を使用することにより、適用される材料が有利なことに最大50%削減される可能性がある。その結果、増強コンポーネントの重量が最大50%減少する。このことは、インプラントの量と重さの両方において大きな進歩を意味し、関節または骨の欠損の治療を促進する。
【0049】
本発明に従って使用される「3D印刷」または「積層造形法」という用語は、材料の除去に基づくフライス加工や旋盤加工のような製造プロセスとは対照的に、材料の追加の原理に基づいて製品、特に完成品、工具、プロトタイプ、モデルまたはサンプルを特に迅速に製造するための方法を指す。生産は、化学的および/または物理的プロセスによって、形状のない(液体、粉末など)または形状中立の(曲がった、またはワイヤー状の)材料を使用して、コンピュータ内部のデータモデルに基づいて直接行われる。
【0050】
さらに、3D印刷または積層造形法は、粉末床法、自由空間法、および液体材料法からなる群から選択されてもよい。
【0051】
粉末床法は、選択的レーザー溶融、選択的レーザー焼結、選択的加熱焼結、結合剤による粉末材料の固化(結合剤噴射)および電子ビーム溶融からなる群から選択されてもよい。
【0052】
自由空間法は、熱溶融積層法、LOM(薄膜積層)法、クラッディング法、ワックス積層法、輪郭グラフト法、コールドガススプレー法および電子ビーム溶解法からなる群から選択されてもよい。
【0053】
液体材料法は、ステレオリソグラフィ法、DLP(デジタル・ライト・プロセッシング)法、およびLCM法からなる群から選択されてもよい。LCM法は、液体複合成形法であってもよいし、リソグラフィに基づくセラミック製造法であってもよい。
【0054】
あるいは、増強コンポーネントは、機械加工などの従来の製造技術によって製造されてもよい。
【0055】
第2の態様によれば、本発明は、特に関節の骨欠損を治療するための外科用キットまたはシステムに関する。
【0056】
外科用キットまたはシステムは、特に、互いに空間的に離開した、第1の態様による増強コンポーネントと、少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントとを備える。特に、少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントは、関節インプラント、増強コンポーネントを関節インプラントに固定するための多数の固定要素、すなわち1つまたは複数の、すなわち2つ以上の固定要素、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料、使用のための命令、および前述のさらなるキットまたはシステムコンポーネントの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
多数の固定要素は、少なくとも1つのねじ、少なくとも1つの釘、少なくとも1つのピン、少なくとも1つのクリップ、および前述の固定要素の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0058】
外科用キットまたはシステムのさらなる特徴および利点、特に増強コンポーネントに関しては、不必要な繰り返しを避けるために、その全体において、本発明の第1の態様に基づいて説明されたそれぞれの実施形態を参照する。本発明の第1の態様、特に増強コンポーネントに関して説明した特徴および利点は、本発明の第2の態様による外科用キットまたはシステムに関しても適用される。
【0059】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲、および図を参照して示される本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明において理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図は模式的に以下を示す。
【
図1】本発明による増強コンポーネントの一実施形態。
【
図2】
図1の増強コンポーネントの近位側の透視図。
【
図3】本発明による増強コンポーネントの第1の構造体を示す拡大上面図。
【
図4】本発明による増強コンポーネントの第1の構造体の一例を示す拡大詳細図。
【
図5】三次元格子状構造体を有し、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料上に適用される増強コンポーネントの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、関節インプラント(articular or joint implant)、特に脛骨インプラントなどの膝関節インプラントや股関節インプラント用の増強コンポーネント1を概略的に示している。
【0062】
増強コンポーネント1は、
水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された第1の構造体12と、
第1の構造体12を少なくとも部分的に、特に部分的にのみ、または完全に取り囲むか、または第1の構造体の周縁に沿って第1の構造体12上に少なくとも部分的に、特に部分的にのみ、または完全に配置される第2の構造体15と、
を備える。
【0063】
好ましくは、増強コンポーネント1は、関節インプラントの外側輪郭部に一致する外側輪郭部3を有し、好ましくは、増強コンポーネント1は、関節インプラントのシャフト、キール、固定ペグまたはウィングレットにフィットするように適合されたさらなる外側輪郭部5を有する。
【0064】
第1の構造体12は、好ましくは多孔質構造体または格子状構造体、特に平らな、または板状の多孔質構造体、または平らな、または板状の格子状構造体(グリッド構造)の形態である。したがって、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料上に増強コンポーネント1を適用、特に圧縮すると、それがまだ完全に硬化していない限り、生体適合性材料は第1の構造体12を通過または貫通することができる。これにより、増強コンポーネント1と骨との間、ひいては関節インプラントと骨との間の接続が最適化される。
【0065】
好ましくは、第1の構造体12は空隙または中空空間14を有し、特に連通する空隙または中空空間14を有する。
【0066】
特に、空隙または中空空間14は細孔の形態であり、好ましくは相互に連結した細孔である。
【0067】
さらに、第1の構造体12は、支柱13を備えていてもよいし、支柱13から構成されていてもよい(
図3および
図4参照)。支柱13は、特に、相互に連結された支柱の形態であってもよい。好ましくは、支柱13は空隙または中空空間14を形成する。
【0068】
第1の構造体の助けにより、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料と関節骨インプラントとの間のグリップが有利に改善され得る。したがって、不安定性のリスクに適切に対処することができる。十分な安定性を得るためには、骨組織の(追加的な)成長は必須ではない。好ましくは、増強コンポーネント1の第1の構造体12と、治療される骨欠損との間には接触がない。さらに、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料を透過可能な設計により、第1の構造体12は、増強コンポーネント1の全体的な軽量化に有利に寄与する。
【0069】
第2の構造体15の助けにより、増強コンポーネント1に接続される関節インプラント、または治療される骨欠損との強い接触を回避することができ、さもなければ、関節インプラントと増強コンポーネント1との間の摩擦により、患者の身体、例えば患者の膝に材料が残留する原因となり得る。第2の構造体15のさらなる利点は、水または水性液体との接触で硬化可能な生体適合性材料と、増強コンポーネント1の第1の構造体12との間の十分なインターロックにある。最後に、軟骨組織のような隣接する軟組織間の強い接触も、第2の構造体15によって回避することができる。
【0070】
好ましくは、
図1に示すように、第2の構造体15は、第1の構造体12の高さよりも大きい高さを有する。
【0071】
さらに好ましくは、第1の構造体12は、増強コンポーネント1の一方の側、特に遠位側にのみ配置され、特に、増強コンポーネント1の対向する側、特に近位側は、第1の構造体12がない。
【0072】
さらに好ましくは、第2の構造体15は、増強コンポーネント1の近位側の方向に延びる。
【0073】
さらに、第1の構造体12は、好ましくは、増強コンポーネント1の底部要素を形成し、第2の構造体15は、増強コンポーネント1の壁部要素、特に周壁部要素を備え、または形成する。
【0074】
好ましくは、第2の構造体15は、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていない。
【0075】
さらに好ましくは、第1の構造体12および第2の構造体15は、互いに独立して、金属材料を含み、または金属材料から構成され、特に、金属材料が、チタン、チタン合金、コバルトまたはコバルトをベースとする合金、移植可能なステンレス鋼、特にISO 5832-1によるもの、および前述の金属材料の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0076】
さらに好ましくは、増強コンポーネント1は、増強コンポーネント1を複数の空間17に細分化し、または増強コンポーネント1の複数の空間17の形成に関与する、多数の仕切り要素16を備える。
【0077】
増強コンポーネント1は、
図1に示すように、2つの開口部18を備えてもよい。開口部18の各々は、好ましくは、増強コンポーネント1を関節インプラントに固定するためのネジ、釘またはピンなどの固定要素を受け入れるように構成される。好ましくは、開口部18の各々は、貫通部、すなわち、増強コンポーネント1、特に第1の構造体12を、その高さ方向または厚さ方向に沿って完全に横断または広がる開口部の形態である。より好ましくは、開口部18の各々は、中空円筒要素19によって形成される。特に、中空円筒要素19は、水または水性液体と接触して硬化可能である生体適合性材料の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていない壁部を有する。
【0078】
さらに好ましくは、増強コンポーネント1は、単一部品コンポーネントの形態である。
【0079】
さらに好ましくは、増強コンポーネント1は、3D印刷、特に3D金属印刷によって製造される。
【0080】
図2は、
図1に示されるような増強コンポーネント1の近位側の透視図である。したがって、さらなる特徴および利点に関しては、その全体が
図1の説明を参照する。特に、
図2の参照番号は、
図1のそれぞれの参照番号と同じ意味を有する。
【0081】
図3は、本発明による増強コンポーネント1の第1の構造体12の拡大上面図である。第1の構造体12は、好ましくは、チタンもしくはチタン合金、特にTi6Al4V、またはコバルトをベースとする合金のような金属材料で作られている。
【0082】
第1の構造体12は、連通する空隙または中空空間14、特に連通孔を有する三次元格子状構造体を形成する連結支柱13を備える。
【0083】
さらに、空隙または中空空間14は、0.5mm~6mmの直径を有していてもよい。
【0084】
さらに、支柱13はサイズ、特に長さおよび/または厚さが等しく、規則的に配置され、特に、第1の構造体12の体積全体にわたって等しい大きさを有する空隙または中空空間14が均一に分布するように配置されてもよい。
【0085】
あるいは、支柱13は、異なるサイズ、特に長さおよび/または厚さを有し、不規則に、特に空隙または中空空間14の直径が異なるように配置されてもよい。具体的には、異なる直径の空隙または中空空間14は、第1の構造体12の容積全体に均一に分布していてもよい。
【0086】
あるいは、空隙または中空空間14の直径は、増強コンポーネント1、特に第1の構造体12の一部分から、増強コンポーネント1、特に第1の構造体12の別の部分にむけて急激に変化してもよい。
【0087】
図4は、本発明による増強コンポーネント1の三次元格子構造体の形態の第1の構造体12の一例の拡大詳細図である。
【0088】
格子状構造体12は、長さが等しく規則的に配置された支柱13を備える。支柱13は個々の横木部22を形成し、この横木部22では、120°交互に傾斜した支柱13が隣接する支柱に連結されている。従って、横木部22内では、支柱13は30°の角度で交互に上下に延在する。
【0089】
平面内では、複数のこのような横木部22が互いに平行に配置されている。この第1の平面の下にある平面では、同じように構成された横木部が、それぞれの最高点が上の平面の横木部のそれぞれの最低点に接するように、最も上部にある平面の横木部に垂直に延在している。この領域では、互いに垂直な横木部は互いに接続されている。
【0090】
同様に、下にも平面があり、ここでは横木部が上の平面と垂直に配置され、この横木部も上の横木部と同じように接続されている。
【0091】
その結果、三次元格子状構造体12が得られ、これは、それぞれの横木部に対して45°で見ると、好ましくは、正六角形の形の断面を有する連続チャンネルを有するハニカム構造を有する。有利なことに、このような三次元構造は、特に高い機械的安定性を示す。
【0092】
好ましくは、格子状構造体12は、3D金属印刷、例えば電子ビーム溶解によって製造される。この方法では、制御された電子ビームを使用し、格子状構造体がそれぞれの平面を通過する箇所で金属粉末を層状に溶融させる。層ごとの構造のため、三次元構造における支柱の非常に複雑なコースも製造することができ、好ましくは、この方法で生成された成形体は、関節インプラントの外側の輪郭にすでに適合されていてもよい。
【0093】
図5は、水または水性液体との接触により硬化可能な生体適合性材料20上に、特に生体適合性材料20がまだ完全に硬化していない限り、適用され、特に圧縮される、三次元格子状構造体の形態の第1の構造体12を有する増強コンポーネント1の拡大詳細図である。好ましくは、生体適合性材料20は骨セメントの形態である。生体適合性材料20は、好ましくは、その硬化中に、格子状構造体12の空隙または中空空間14、特に孔を通過または浸透する。
【0094】
図6は、本発明による外科用キット10の一実施形態と、脛骨骨欠損を治療するためのその使用法を示す。
【0095】
外科用キット10は、増強コンポーネント1、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料20、および脛骨インプラント30を備える。
【0096】
増強コンポーネント1は2つの開口部18を備え、これらはそれぞれ、増強コンポーネント1を脛骨頭部41に固定するための固定要素22を受け入れるように構成されている。
【0097】
好ましくは、増強コンポーネント1は、脛骨インプラント30の外側輪郭部に部分的に一致する外側輪郭部を有し、脛骨インプラント30のシャフト32を受け入れるように適合されたさらなる外側輪郭部を有する。
【0098】
脛骨インプラント30は、垂直下方に突出するシャフト32を有する板状の脛骨プラトー31を備える。好ましくは、増強コンポーネント1の外側輪郭部は、脛骨プラトー31の外側輪郭部に適合している。
【0099】
脛骨インプラント30は、切除された脛骨40の脛骨頭部41に適用される。脛骨インプラント30が脛骨40に固定された状態で、シャフト32が相補的に形成された脛骨40の凹部42に係合することにより、脛骨インプラント30が位置決めされる。
【0100】
脛骨欠損を治療するために、生体適合性材料20をまず脛骨頭部41に適用してもよい。次に、水または水性液体を加えることによって、生体適合性材料20の硬化が始まる。あるいは、または組み合わせて、生体適合性材料20の硬化は、体液、例えば血液および/または体組織液、特に骨組織液によって始まってもよい。
【0101】
次に、増強コンポーネント10は、生体適合性材料20がまだ完全に硬化していない限り、特に生体適合性材料20が増強コンポーネント1の空隙または中空空間、特に細孔を通過するように、生体適合性材料20上に適用され、特に押し付けられる。これは、(追加的に)増強コンポーネント1を脛骨頭部41に固定するために、増強コンポーネント1の開口部18に係合するか、または開口部18を貫通するねじなどの固定要素22を使用することによって、有利に最適化され得る。
【0102】
あるいは、脛骨欠損を治療するために、生体適合性材料20を水または水性液体、特に水溶液と混合し、その後、脛骨頭部41上および/または脛骨インプラント30上に適用し、その後、脛骨インプラント30を脛骨頭部41上に押圧してもよく、特に、増強コンポーネント1を脛骨インプラント30に取り付けてもよい。
【0103】
典型的には、人工半月板として機能するように適合された関節コンポーネント、例えば関節表面コンポーネント、特に超高分子量ポリエチレン製の関節表面コンポーネントが、脛骨プラトー31上に適用される。関節コンポーネント上には、大腿骨に固定された大腿骨インプラントの顆がもたれかかることがある(図示せず)。
【0104】
増強コンポーネント1は通常、脛骨インプラント30の下側に配置される。好ましくは、増強コンポーネント1は、脛骨プラトー31の底面と脛骨頭部41の上面との間の骨欠損を橋渡しするように適合される。
【0105】
図に示す実施形態のさらなる特徴および利点に関しては、その全体において一般的な説明を参照する。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節インプラント(30)のための増強コンポーネント(1)であって、
水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された、第1の構造体(12)と、
前記第1の構造体(12)を少なくとも部分的に取り囲むか、または前記第1の構造体(12)の周縁に沿って前記第1の構造体(12)上に少なくとも部分的に配置される第2の構造体(15)と、
を備える、増強コンポーネント(1)。
【請求項2】
前記第1の構造体(12)が多孔質構造体または格子状構造体、特に平らな、または板状の多孔質構造体または格子状構造体の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項3】
前記第2の構造体(15)は、前記第1の構造体(12)の高さよりも大きい高さを有することを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項4】
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の片側、特に遠位側にのみ配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項5】
前記増強コンポーネント(1)の片側、特に近位側には、前記第1の構造体(12)がないことを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項6】
前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の近位側の方向に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項7】
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の底部要素を形成し、前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の壁部要素、特に周壁部要素の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項8】
前記第2の構造体(12)は、水または水性液体と接触して硬化可能である前記生体適合性材料(20)の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていないことを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項9】
前記第1の構造体(12)および前記第2の構造体(15)が、互いに独立して、金属材料を含み、または金属材料から構成され、特に、前記金属材料が、チタン、チタン合金、コバルトまたはコバルトをベースとする合金、移植可能なステンレス鋼、および前述の金属材料の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項10】
前記増強コンポーネント(1)が、前記増強コンポーネント(1)を複数の空間(17)に細分化し、または前記増強コンポーネント(1)の複数の空間(17)の形成に関与する多数の仕切り要素(16)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項11】
前記増強コンポーネント(1)は、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための固定要素(22)を受け入れるように適合された少なくとも1つの開口部(18)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項12】
前記増強コンポーネント(1)は、前記関節インプラントの外側輪郭部に部分的に一致する外側輪郭部(3)を有し、前記関節インプラントのシャフト、キール、固定ペグまたはウィングレットにフィットするように適合されたさらなる外側輪郭部(5)を有することを特徴とする、請求項11に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項13】
前記増強コンポーネント(1)が単一部品コンポーネントの形態であることを特徴とする、
請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項14】
前記増強コンポーネント(1)は、3D印刷、特に3D金属印刷によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の増強コンポーネント(1)。
【請求項15】
外科用キットまたはシステム(10)であって、
特に空間的に互いに離開して、請求項1から14のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)と、
少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントであって、特に、関節インプラント(30)、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための多数の固定要素(22)、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)、使用のための命令、および前述のキットまたはシステムコンポーネントの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのキットまたはシステムコンポーネントと、
を備える、外科用キットまたはシステム(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
図に示す実施形態のさらなる特徴および利点に関しては、その全体において一般的な説明を参照する。
(項目1)
関節インプラント(30)のための増強コンポーネント(1)であって、
水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)の通過または浸透を可能にするように適合され、および/または骨組織の内部成長を可能にするように適合された、第1の構造体(12)と、
前記第1の構造体(12)を少なくとも部分的に取り囲むか、または前記第1の構造体(12)の周縁に沿って前記第1の構造体(12)上に少なくとも部分的に配置される第2の構造体(15)と、
を備える、増強コンポーネント(1)。
(項目2)
前記第1の構造体(12)が多孔質構造体または格子状構造体、特に平らな、または板状の多孔質構造体または格子状構造体の形態であることを特徴とする、項目1に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目3)
前記第2の構造体(15)は、前記第1の構造体(12)の高さよりも大きい高さを有することを特徴とする、項目1または2に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目4)
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の片側、特に遠位側にのみ配置されていることを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目5)
前記増強コンポーネント(1)の片側、特に近位側には、前記第1の構造体(12)がないことを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目6)
前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の近位側の方向に延びていることを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目7)
前記第1の構造体(12)は、前記増強コンポーネント(1)の底部要素を形成し、前記第2の構造体(15)は、前記増強コンポーネント(1)の壁部要素、特に周壁部要素の形態であることを特徴とする、項目1から6のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目8)
前記第2の構造体(12)は、水または水性液体と接触して硬化可能である前記生体適合性材料(20)の通過または浸透を許容するように適合されておらず、および/または骨組織の内部成長を許容するように適合されていないことを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目9)
前記第1の構造体(12)および前記第2の構造体(15)が、互いに独立して、金属材料を含み、または金属材料から構成され、特に、前記金属材料が、チタン、チタン合金、コバルトまたはコバルトをベースとする合金、移植可能なステンレス鋼、および前述の金属材料の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目10)
前記増強コンポーネント(1)が、前記増強コンポーネント(1)を複数の空間(17)に細分化し、または前記増強コンポーネント(1)の複数の空間(17)の形成に関与する多数の仕切り要素(16)をさらに備えることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目11)
前記増強コンポーネント(1)は、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための固定要素(22)を受け入れるように適合された少なくとも1つの開口部(18)を備えることを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目12)
前記増強コンポーネント(1)は、前記関節インプラントの外側輪郭部に部分的に一致する外側輪郭部(3)を有し、前記関節インプラントのシャフト、キール、固定ペグまたはウィングレットにフィットするように適合されたさらなる外側輪郭部(5)を有することを特徴とする、項目11に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目13)
前記増強コンポーネント(1)が単一部品コンポーネントの形態であることを特徴とする、
項目1から12のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目14)
前記増強コンポーネント(1)は、3D印刷、特に3D金属印刷によって製造されることを特徴とする、項目1から13のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)。
(項目15)
外科用キットまたはシステム(10)であって、
特に空間的に互いに離開して、項目1から14のいずれか一項に記載の増強コンポーネント(1)と、
少なくとも1つのさらなるキットまたはシステムコンポーネントであって、特に、関節インプラント(30)、前記増強コンポーネント(1)を前記関節インプラント(30)に固定するための多数の固定要素(22)、水または水性液体と接触して硬化可能な生体適合性材料(20)、使用のための命令、および前述のキットまたはシステムコンポーネントの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのキットまたはシステムコンポーネントと、
を備える、外科用キットまたはシステム(10)。
【外国語明細書】