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特開2024-103467超音波衝撃研削装置のための工具、および超音波衝撃研削を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103467
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】超音波衝撃研削装置のための工具、および超音波衝撃研削を行う方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/08 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B24B33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006458
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】18/099,491
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】アールティーエックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】RTX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1000 Wilson Boulevard,Arlington,VA 22209,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】ツィーガン ワン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ イー.クチェク
(72)【発明者】
【氏名】ガジャワリ ヴィー.スリニヴァサン
(72)【発明者】
【氏名】ロビン エイチ.フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー.リール
(72)【発明者】
【氏名】アラン シー.バロン
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド アブディラヒ アブディ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジョゼフ ラズール
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158AA16
3C158AA18
3C158DA10
(57)【要約】
【課題】 超音波衝撃研削装置のための工具、および超音波衝撃研削を行う方法を提供する。
【解決手段】 印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具は、長手方向軸に配置される工具本体と、工具本体の出力端から延びる第1のチップと、工具本体の出力端から第1のチップに平行に延びる第2のチップとを含む。第1のチップは、第1の長さを有する。第2のチップは、第1の長さより長い第2の長さを有する。第1及び第2のチップの質量は、工具本体の出力端にわたって長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具であって、
前記長手方向軸に配置された工具本体と、
前記工具本体の出力端から延び、第1の長さを有する、第1のチップと、
前記工具本体の前記出力端から前記第1のチップと平行に延び、前記第1の長さよりも長い第2の長さを有する、第2のチップと、
を備え、
前記第1及び第2のチップの質量が、前記工具本体の前記出力端にわたって前記長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている、
前記工具。
【請求項2】
前記第1のチップ及び前記第2のチップが異なる材料で形成されている、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記第1のチップが第1の全体チップ密度を有し、前記第2のチップが第2の全体チップ密度を有し、前記第2の全体チップ密度は前記第1の全体チップ密度よりも小さい、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記第2のチップが内部空洞を備える、請求項1に記載の工具。
【請求項5】
前記第1のチップ及び前記第2のチップが同じ材料で形成されている、請求項4に記載の工具。
【請求項6】
前記第1のチップ及び前記第2のチップが、前記印加された動作周波数において実質的に均一な長手方向振動振幅を有する、請求項1に記載の工具。
【請求項7】
前記第1のチップ及び前記第2のチップが、被加工物に形成された穴の形状を画定するように構成された均一な成形部を有する、請求項1に記載の工具。
【請求項8】
前記第1のチップ及び前記第2のチップが、異なる長さの延長部を有し、前記延長部は、前記成形部と前記工具本体の前記出力端との間に配置されている、請求項7に記載の工具。
【請求項9】
前記成形部が、ディフューザ部と計量部とを含む、請求項8に記載の工具。
【請求項10】
印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具であって、
前記長手方向軸に配置された工具本体と、
前記本体の出力端に接続された複数のチップであって、前記複数のチップの各チップは異なる長さを有する、前記複数のチップと、
を備え、
前記複数のチップの振動振幅は、前記印加された動作周波数において実質的に均一である、
前記工具。
【請求項11】
前記複数のチップの質量が、前記出力端及び前記長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている、請求項10に記載の工具。
【請求項12】
前記チップが異なる材料で形成されている、請求項10に記載の工具。
【請求項13】
前記チップが異なる材料密度を有し、前記材料密度がチップ長の増加に伴って減少する、請求項11に記載の工具。
【請求項14】
前記複数のチップの少なくとも一部のチップが内部空洞を有する、請求項10に記載の工具。
【請求項15】
前記複数のチップのうちのチップが、1つ以上の列で均一に離間されている、請求項10に記載の工具。
【請求項16】
前記複数のチップのうちのチップが、被加工物に形成された穴の形状を画定するように構成された均一な成形部を有する、請求項10に記載の工具。
【請求項17】
前記複数のチップの少なくとも一部のチップが、異なる長さの延長部を有し、前記延長部は、前記成形部と前記工具の前記端部との間に配置されている、請求項16に記載の工具。
【請求項18】
前記成形部が、ディフューザ部と計量部とを含む、請求項17に記載の工具。
【請求項19】
超音波衝撃研削を行う方法であって、
超音波衝撃研削装置の工具を被加工物に対してある角度で配向することであって、前記工具は、長手方向軸と、異なる長さの複数のチップとを有し、前記チップの端部は、前記被加工物の表面から等しい距離に配置される、前記配向することと、
すべてのチップに均一な振動振幅を提供することと、
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記複数のチップの質量が、前記長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、セラミックマトリックス複合材(CMC)の機械加工に関し、より具体的には、超音波衝撃研削(UIG)に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量セラミックマトリックス複合材(CMC)は、ガスタービンエンジン用途に非常に望ましい材料である。CMC、特にSiC/SiC CMC(炭化ケイ素マトリックス及び繊維を有する)は、高温で優れた物理的、化学的及び機械的特性を示し、ブレード外側空気シール(BOAS)、ベーン、ブレード、燃焼器、及び排気構造を含む高温部分構成要素を製造するのに特に望ましいものとなっている。他の材料と同様に、CMC構成要素を冷却して適切な動作温度を維持することは、CMC構成要素の性能、耐久性、及び機能に重要であり得る。熱応力を緩和するための特徴部は、材料を通して提供される冷却チャネルを含み得る。高品質でCMCを機械加工するための効率的で費用効果の高い方法を開発する際に課題があった。SiC/SiC CMCは、ダイヤモンド工具の硬度に次ぐ第2の硬度を有し、SiC繊維強化相は、異方性及び不均一性をもたらす。
【0003】
UIGは、CMCなどの硬く脆い材料に対して高アスペクト比を有する複雑な孔形状を製造するために使用されてきた。UIGにおいて、トランスデューサへの電気エネルギー入力は、高周波数(通常20~40kHz)で長手方向軸に沿った機械的振動に変換される。励起された振動は、その後、エネルギー集束ホーンを介して伝達され、振動の振幅を増幅し、この振幅は工具チップに伝達される。したがって、被加工物の真上に位置する工具は、所望の振幅でその長手方向軸に沿って振動することができる。水または油中に懸濁された研磨材(例えば、ダイヤモンド、炭化ホウ素など)の混合物を含む研磨スラリーが、機械加工領域内に絶えず供給される。工具の振動は、工具と被加工物との間のスラリー中に保持された研磨粒子を被加工物表面に衝突させ、マイクロチッピングによる材料除去を引き起こす。実際の機械加工は研磨粒子によって行われるため、工具は被加工物よりも柔らかくすることができる。
【0004】
UIGプロセスは、セラミック及び硬質金属を含む多種多様なエンジニアリング材料を処理するための真の三次元機械加工能力を提供するように成熟している。UIGの重要な用途は、貫通孔及び止まり穴を開け、スロット及びポケットを機械加工することである。穴穿孔は、常に、製品製造のための最も一般的な機械加工プロセスとして理解され、UIGは、多様な穴、特にCMCのような硬い及び脆性材料に対して小さい直径及び高いアスペクト比を有する穴を製造する際の高い潜在能力を示す。しかしながら、UIGのすべての好ましい属性にもかかわらず、その用途は、非常に低い除去率に起因して制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記の不利な点が低減されるように、冒頭で述べた種類の超音波衝撃研削(UIG)を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具は、長手方向軸に配置される工具本体と、工具本体の出力端から延びる第1のチップと、工具本体の出力端から第1のチップに平行に延びる第2のチップとを含む。第1のチップは、第1の長さを有する。第2のチップは、第1の長さより長い第2の長さを有する。第1及び第2のチップの質量は、工具本体の出力端にわたって長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている。
【0007】
別の態様では、印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具は、長手方向軸に配置される工具本体と、本体の出力端に接続される複数のチップとを含む。複数のチップの各チップは、異なる長さを有し、複数のチップの振動振幅は、印加される動作周波数において実質的に均一である。
【0008】
さらに別の態様では、超音波衝撃研削を行う方法は、超音波衝撃研削装置の工具を被加工物に対してある角度で配向することと、工具のすべてのチップに均一な振動振幅を提供することとを含む。工具は、長手方向軸と、長さの異なる複数のチップとを有する。チップの端部は、被加工物の表面から等距離に配置される。
【0009】
この発明の概要は例としてのみ提供されており、限定されるものではない。本開示の他の態様は、本文全体、特許請求の範囲、及び添付図面を含む本開示の全体を考慮して理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マルチチップ工具の一実施形態を組み込んだ超音波衝撃研削装置の斜視図である。
図2図1のマルチチップ工具の拡大図である。
図3図1のマルチチップ工具によって形成された貫通孔を有する被加工物の斜視図である。
図4】被加工物に穴を機械加工するために配置されたマルチチップ工具を組み込んだ超音波研削装置の別の実施形態の斜視図である。
図5図4のマルチチップ工具の斜視図である。
図6図5のマルチチップ工具のチップの一実施形態の拡大図である。
図7図5のマルチチップ工具のチップの別の実施形態の簡略断面図である。
図8】マルチチップ工具の別の実施形態を有する超音波衝撃研削装置の斜視図である。
図9図8のマルチチップ工具の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上で特定された図は本発明の実施形態を明らかにするものであるが、考察で述べられるように、他の実施形態も企図される。いかなる場合も、本開示は、本発明を代表として提示するものであり、限定するものではない。当業者であれば、本発明の原理の範囲及び趣旨に収まる他の多数の修正及び実施形態を考案することができることを理解されたい。図面は一定の縮尺で描かれていない場合があり、本発明の応用及び実施形態には、図面に具体的に示されていない特質、工程、及び/または構成要素が含まれる場合がある。
【0012】
超音波衝撃研削(UIG)の生産性及び収量を改善する1つの方法は、特別に設計された工具で同時に複数の特徴部を機械加工することである。本開示は、同時に機械加工され得る特徴部または穴の数を増加させるための複数のチップを有するUIG工具に関する。効率的な動作のために、工具は、工具本体に取り付けられたすべてのチップが等しい入力振幅を有するように、工具本体の基部に沿って実質的に均一な振動振幅を達成するように設計することができる。同様に、各チップは、出力面において実質的に均一な出力振動振幅を達成するように設計され得る。本明細書で使用される場合、実質的に均一な振動振幅という用語は、最大10%の変動を含み得る。振幅が不均一であり、表面に沿って、例えば湾曲した態様で分布する場合、取り付けられた工具は、組み合わされた長手方向及び曲げ振動モードで励起される。曲げモードでの工具振動は、過剰な応力を工具に及ぼし、工具の破損を引き起こす可能性がある。したがって、特定の予想動作周波数において、特定の振幅利得及び所定の長さを有する各工具チップを設計することが重要である。
【0013】
図1は、マルチチップ工具12を有するUIGアセンブリ10の斜視図である。UIGアセンブリ10は、CMC被加工物に複数の穴を同時に機械加工するように構成されている。図2は、マルチチップ工具12の拡大図である。図3は、UIGアセンブリ10によって形成された貫通孔を有する被加工物の斜視図である。本明細書では、図1図3を一緒に考察する。UIGアセンブリ10、UIG装置11、マルチチップ工具12、トランスデューサ14、コレット16、工具本体18、ホーン20、端部22、出力基部24、チップ26、成形部27、ディフューザ部28、計量部30、末端部32、被加工物34、穴36、ディフューザ38、及び長手方向軸Aが示されている。UIG装置11は、研磨粒子のスラリーを用いた超音波衝撃研削のための工具を用いた動作のために構成された任意の従来の超音波機械加工装置またはその変形であり得る。コレット16は、マルチチップ工具12を受け入れて保持するように適合されている。トランスデューサ14への電気エネルギー入力は、高周波数(通常20~40kHz)で長手方向軸Aに沿った機械的振動に変換される。トランスデューサ14は、UIG装置11が使用されている場合に、振動エネルギーをマルチチップ工具12に伝達する。マルチチップ工具12は、工具本体18、ホーン20、端部22、出力基部24、及びチップ26を含む。ホーン20は、コレット16に隣接する工具本体18の一端に配置される。チップ26は、工具本体18の反対側の端部に配置される。チップ26は、端部22の末端部に配置された出力基部24から延びる。チップは、被加工物34内に穴36の形状を画定するように構成された成形部27を含むことができる。成形部27は、出力基部24に隣接して配置されたディフューザ部28と、末端部32まで延びる計量部30とを含むことができる。
【0014】
工具本体18は、所望の振幅及び通常は約20~40kHzの周波数で長手方向軸Aに沿って振動するように構成されたソノトロードである。チップ26の振動は、エネルギーを伝達して、チップ26と被加工物34との間でスラリー中の研磨粒子を高速で推進する。ホーン20及び端部22は、チップ26に伝達される振動振幅を増幅するように構成された収束部を有する。マルチチップ工具12は、動作中に使用される研磨粒子の平均粒径の約50%の振幅で長手方向軸Aに沿って振動するように構成され得る。マルチチップ工具12は、すべてのチップ26が実質的に等しい入力振幅を有するように、出力基部24にわたって実質的に均一な振動振幅を提供するように構成される。チップ26の数及びチップ26の間隔は、機械加工される特徴部の目標の数及び間隔に基づいて選択することができる。チップ26の数及びチップ26の間隔は、すべてのチップ26にわたって実質的に均一な振動振幅を維持し、目標振幅を満たすように制限することができる。例えば、20から50ミクロンの間の目標振幅を有する用途では、すべてのチップ26上の振動振幅の均一性を維持するために、全チップスパンを約1.5インチ未満に制限することができる。
【0015】
チップ26は、図1及び図2に示すように、均一な長さ及びサイズを有し、出力基部24全体にわたって均一に離間して、出力基部24全体にわたる質量分布を長手方向軸Aに対して実質的にバランスをとることができる。実質的にバランスのとれた質量は、出力面(チップ26の末端部32)において実質的に均一な振動振幅を達成する。チップ26は、並列に、かつ長手方向軸Aに平行に配置される。動作中、マルチチップ工具12は、すべてのチップ26が被加工物34の上方の均一な高さに配置されて穴36の同時機械加工を可能にするように、被加工物34に対して配置されるように構成される。
【0016】
チップ26は、チップ26の交換を可能にするために、出力基部24に取り外し可能に固定することができる(例えば、ねじ接続を介して)。チップ26は、当技術分野で知られている任意の形状を有することができる。図2及び図3に示すように、チップ26は、当該技術分野で既知のレイドバック型のディフューザ部28を有して、レイドバック型の扇形孔36を形成することができる。チップ26は、ディフューザ部28から出力面(末端部32)まで延びる計量部30を含むことができる。ディフューザ部28は、計量部30に向かって収束する台形の出力基部を有する多面体形状を有することができる。計量部30は、円筒形とすることができる。当該技術分野において公知のように、円錐形のディフューザ部、ローブ付きディフューザ部、またはVehr型拡散部を有するチップを含むが、これらに限定されない他のチップ形状が企図される。末端部32は、末端部32の出力面が被加工物34の表面と実質的に平行な平面内に配置されるように角度を付けることができる。
【0017】
図1及び図2に示すように、出力基部24は、出力基部24におけるチップ26の組み合わされた周囲と実質的に一致する大きさの実質的に矩形の形状を有することができる。チップ26は、出力基部24全体にわたって均一に間隔を置いて配置され、出力基部24全体にわたって実質的に質量のバランスをとり、出力面(末端部32)において実質的に均一な振動振幅を提供する。出力基部24は、チップ26の数及び配置に応じて他の形状及びサイズを有することができる。例えば、チップ26は、図1及び図2に示すように単一の列に配置することができ、または複数の列(例えば、図8及び図9参照)に配置することができる。チップ26の配置は、機械加工される特徴部の配置に基づいて選択することができる。チップ26の数は、図示の実施形態に限定されない。チップ26の数は、一般に、チップ26において所望の出力振幅を提供するのに必要な工具本体18のサイズと、所望の孔サイズとによって制限される。例えば、1インチのサイズの出力基部の場合、工具チップの数は約3~30で変化し得る。典型的には、冷却孔は、0.014インチ~0.028インチの範囲の直径を有する。チップ26は、出力面(末端部32)において実質的に均一な振動振幅を提供するために、出力基部24にわたって実質的に均一な質量分布を提供するように配置される。不均衡な質量分布は、曲げモード振動を生じる可能性があり、これは、チップ26及び/またはマルチチップ工具12の故障を引き起こす可能性がある。マルチチップ工具12は、出力基部24の両端に配置された少なくとも2つのチップを含み、それらの間に設けられた任意の追加のチップ26は、出力基部24全体の質量のバランスをとるために均一に離間されることが理解されるであろう。
【0018】
端部22は、工具本体18の円筒状部と出力基部24との間に移行部を提供するように成形することができる。図1及び図2に示すように、材料は、出力基部24に向かって収束する平坦な壁を有する端部22を提供する方法で、工具本体18の両側から除去することができる。追加の材料を、平坦な壁の間に加えて、工具本体18から出力基部24の縁部に分岐する部分を形成することができる。端部22は、出力基部24で出力される振動振幅をさらに増幅することができる。端部22の形状は、出力基部24の形状に基づいて変化することができ、本明細書に開示される形状に限定されない。
【0019】
被加工物34は、CMC材料で形成することができる。被加工物34は、例えば、炭化ケイ素マトリックス中に配置された炭化ケイ素繊維を有するSiC/SiC CMCとすることができる。開示されるマルチチップ工具12は、CMC製造の効率及びスループットを改善するのに特に適しているが、CMC被加工物または特定のCMC材料に対する使用に限定されない。被加工物34は、ガスタービンエンジンの構成要素であり得る。例えば、被加工物34は、高温で使用するように構成されたBOAS、ベーン、ブレード、燃焼器、排気構造とすることができる。
【0020】
いくつかの製造プロセスでは、各工具チップと被加工物との間の均一な距離を維持しながら、マルチチップ工具の長手方向軸に対して計量孔軸を整列させることは不可能である。例えば、図4に示すように、工具の出力基部(チップが取り付けられる部分)が被加工物表面に対して角度を成すように、工具を配向する必要がある場合がある。チップが等しい長さである場合、一部のチップは、動作中に被加工物表面から実質的に離間される。複数の穴の同時機械加工を可能にするために、異なる長さのチップを設けることができる。
【0021】
図4は、被加工物44に穴を機械加工するために配置されたマルチチップ工具42の斜視図である。図5は、図4のマルチチップ工具42の斜視図である。図6は、図5のマルチチップ工具42のチップの一実施形態の拡大図である。図7は、図5のマルチチップ工具42のチップの別の実施形態の簡略断面図である。図5図7は、本明細書において一緒に考察する。マルチ工具チップ42、被加工物44、穴46、工具本体48、ホーン50、端部52、出力基部54、チップ56、成形部57、ディフューザ部58、計量部60、末端部62、延長部64、及び長手方向軸Aが示されている。マルチチップ工具42は、図1に示され、それに関して説明されるUIG装置11と共に使用することができる。ホーン50、端部52、及び出力基部54を含む工具本体48は、図1及び図2に示されかつそれらに関して説明された工具本体18と実質的に同じまたは同様とすることができる。マルチチップ工具12及び42は、工具本体18及び48に取り付けられるチップの数、形状及び長さが異なる。
【0022】
図5は、様々な長さのチップ56を示す。チップ56は、出力基部54の両端に配置された最も長いチップ及び最も短いチップと共に、長さが短くなるように出力基部54にわたって配置される。チップ56は、並列に、かつ長手方向軸Aに平行に配置される。マルチチップ工具42は、実質的に平坦な被加工物表面に対して配向されるように構成され、その結果、チップ56の末端部62は、平坦な被加工物表面に対して平行な平面に配置される。チップ56の相対的な長さは、被加工物の形状及び被加工物に対するマルチチップ工具の向きに応じて変化し得ることが、当業者には理解されよう。図4に示すように、被加工物44は、曲面を有する翼形状を有するベーンとすることができる。しかしながら、図示のように、チップ56は、被加工物表面の狭い実質的に平坦な部分に対応する列に配置される。
【0023】
チップ56は、被加工物44内に穴46の形状を画定するように構成された成形部57を含むことができる。成形部57は、ディフューザ部58及び計量部60を含むことができる。計量部は、末端部62まで延びる。ディフューザ部58は、計量部60に隣接して配置される。図5に示すように、ディフューザ部58は円錐形状を有することができ、計量部60は円筒形状を有することができる。他の実施形態では、チップ56は、当技術分野で公知のように、レイドバックディフューザ部、ローブ付きディフューザ部、またはVehr型拡散部を有するチップを含むが、それらに限定されない、他の形状を有することができる。
【0024】
より長いチップ56は、出力基部54に取り付けられるように構成された延長部64をさらに含むことができる。延長部64は、ディフューザ部58の最も外側の範囲または基部に実質的に一致する断面を有する円筒形であり得る。延長部64は、チップ56の長さを延ばすために設けることができるが、被加工物42に穴46の一部を形成することを意図していない。図1及び図2に示すマルチチップ工具12に関して前述したように、チップ56の数、形状、及び配置は、図示したものに限定されず、製造要件を満たすために必要に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、複数の列のチップ56を出力基部54上に設けることができる。
【0025】
振動振幅の大きさは、各チップ56の質量に大きく依存する。各チップ56の出力面(末端部60)上で振動振幅の実質的に均一な分布を得るために、すべてのチップ56間で実質的に質量のバランスをとる必要がある。図6及び図7は、出力基部54にわたって及び長手方向軸Aに対して質量のバランスをとるための2つの手段を示し、これらは、独立して使用され得るか、または組み合わされ得る。すべてのチップ56は、ほぼ同じ質量を有するように構成される。本明細書で使用される場合、「ほぼ同じ質量」または「実質的に均一な質量分布」または「実質的にバランスのとれた質量分布」を有するチップは、チップ56の出力面(末端部62)における振動振幅の10%以下の変動をもたらす変動を可能にする。
【0026】
図6は、すべてのチップ56A~56Cの間で質量のバランスをとるために異なる密度の材料で形成されたチップ56A~56Cを示す。最も長く、最も大きな体積を有するチップ56Aは、チップ56B及び56Cよりも低い密度を有する材料で形成することができる。最も短い長さ及び最も小さい体積を有するチップ56Cは、チップ56A及び56Cよりも高い密度を有する材料で形成することができる。チップ56Aと56Cとの間の長さ及び体積を有するチップ56Bは、中間密度の材料で形成することができる。例えば、チップ56Aはアルミニウム合金で形成することができ、チップ56Bはチタン合金で形成することができ、チップ56Cは工具鋼で形成することができる。前述のように、チップ56は、動作中に被加工物表面42に接触せず、代わりに、チップ56と被加工物42との間に提供されるスラリー中の研磨粒子を加速し、被加工物材料を削り取る。したがって、チップ56は、被加工物42よりも柔らかい材料で形成され得る。
【0027】
代替的に、または異なる材料密度のチップ56を提供することと組み合わせて、チップ56の質量は、材料除去を介して選択的に低減され得る。均一なチップ形状を維持するために、チップ56の少なくとも一部またはチップ56の全部を中空にすることによって、質量分布は出力基部54にわたって実質的にバランスをとることができる。図7は、チップ56D~56Fを示す。チップ56D~56Fは、同じ材料で作ることができる。チップ56Fよりも長く、したがって重いチップ56D及び56Eは、中空であるか、または内部空洞を有して、出力基部54にわたって、マルチチップ工具42の長手方向軸に対して、実質的にバランスのとれた質量分布を提供することができる。壁厚または空洞サイズは、チップ56Fの質量にほぼ等しいチップ質量を提供するために、必要に応じて、各チップ56D及び56Eに対して変化し得る。
【0028】
チップ56は、例えば、選択されたチップ材料、形状、及び内部空洞を用いた公知の付加製造プロセスを介して形成され得る。チップ56の形状、相対的長さ、数、配置、及び材料は、図示の実施形態に限定されない。マルチチップ工具は、様々な穴構成及び製造設定に適応するように、本明細書の教示を用いて設計され得ることが、当業者には理解されよう。
【0029】
図8は、図1のUIG装置11及びマルチチップ工具72を備えたUIGアセンブリ70の斜視図である。図9は、図8のマルチチップ工具72の拡大図である。UIGアセンブリ70、UIG装置11、トランスデューサ14、コレット16、マルチチップ工具72、工具本体74、端部76、出力基部78、チップ80、ディフューザ部82、計量部84、延長部86、末端部88、及び長手方向軸Aが示されている。マルチチップ工具72は、2列のチップ80を含み、各列のチップ80A~80Hは、左から右に長さが増加するように配置される。チップ80は、各列において列の間に均一に間隔を置いて配置される。チップ80は、並列に、かつ長手方向軸Aに平行に配置される。
【0030】
工具本体74は、出力基部78における振動振幅を増幅し、チップ80に所望の振動振幅入力を提供するように構成された端部76を含む。チップ80は、出力基部78にわたる質量分布と長手方向軸Aに対する質量分布とを実質的にバランスをとって、各チップ80の出力面(末端部88)において実質的に均一な振動振幅を達成するように構成され、配置される。先に説明したように、各チップは、実質的にバランスのとれた質量分布を達成するために、ほぼ同じ質量を有することができる。チップ80A~80Hは、異なる材料で形成することができ、及び/または図7及び図8に示すチップ56A~56Fに関して説明したような内部空洞を含むことができる。
【0031】
チップ80は、図1及び図2に示し、これに関して説明したチップ28と同様のレイドバックディフューザ部82及び円筒形の計量部84を有する。チップ80の少なくとも一部(例えば、チップ80B~80H)は、出力基部78に隣接して配置された延長部86を有することができる。延長部はチップ80B~80Hの長さを伸ばすように意図されており、その結果、末端部88は、被加工物から均一な距離に配置される。延長部86は、ディフューザ部82の基部に一致する形状を有することができる。延長部86は、被加工物に形成された穴の一部を形成することを意図していない。他の実施形態では、チップ80は、当技術分野で公知のように、円錐形のディフューザ部、ローブ付きディフューザ部、またはVehr型拡散部を有するチップを含むがこれらに限定されない、他の形状を有することができる。
【0032】
複数の工具チップを有するCMCに対する高性能の超音波機械加工は、すべての工具チップの出力面において実質的に均一な振動振幅を提供するように、長手方向振動軸に対する工具チップの質量分布を実質的にバランスさせることによって達成され得る。これは、異なる材料密度を有する材料のチップを形成すること、及び中空チップを形成することを含む、本明細書に記載の任意の方法またはそれらの組み合わせによって達成され得る。すべての工具チップのバランスを十分に保つことによって、UIGを使用して複数の特徴部を同時に機械加工し、除去率を何倍にも改善することが可能である。
【0033】
本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語、例えば、「実質的に」、「本質的に」、「概して」、「およそ」などは、本明細書に明示的に記載されている任意の適用可能な定義または制限に準拠して解釈され、かつそれに従う必要がある。すべての場合において、本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語は、あらゆる関連する開示される実施形態、及び本開示の全体を考慮して当業者によって理解されるような範囲または変動を広く包含するものと、例えば、通常の製造公差の変動、偶発的なアラインメントの変動、熱、回転、または振動の作動条件によって引き起こされる一時的なアラインメントまたは形状の変動などを包含するものと、解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語は、あたかも所与の開示または詳細説明において適格な相対的用語または程度に関する用語が使用されていないかのように、変動を伴わない指定された品質、特徴、パラメータ、または値を明示的に含む範囲を包含するものと解釈されるべきである。
【0034】
(可能な実施形態の考察)
以下は、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明である。
【0035】
印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具は、長手方向軸に配置される工具本体と、工具本体の出力端から延びる第1のチップと、工具本体の出力端から第1のチップに平行に延びる第2のチップとを含む。第1のチップは、第1の長さを有する。第2のチップは、第1の長さより長い第2の長さを有する。第1及び第2のチップの質量は、工具本体の出力端にわたって長手方向軸に対して実質的にバランスがとれている。
【0036】
先述の段落の工具は、任意で、以下の特徴、構成、及び/または追加構成要素のうちのいずれか1つ以上を、付加的及び/または代替的に含んでもよい。
【0037】
前述の工具の一実施形態では、第1のチップ及び第2のチップは、異なる材料で形成することができる。
【0038】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第1のチップは、第1の全体チップ密度を有することができ、第2のチップは、第2の全体チップ密度を有することができる。第2の全体チップ密度は、第1の全体チップ密度よりも小さくすることができる。
【0039】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第2のチップは、内部空洞を含むことができる。
【0040】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第1のチップ及び第2のチップは、同じ材料で形成することができる。
【0041】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第1のチップ及び第2のチップは、印加された動作周波数において実質的に均一な長手方向振動振幅を有することができる。
【0042】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第1のチップ及び第2のチップは、被加工物に形成された穴の形状を画定するように構成された均一な成形部を有することができる。
【0043】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、第1のチップ及び第2のチップは、異なる長さの延長部を有することができ、延長部は、成形部と工具本体の出力端との間に配置される。
【0044】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、成形部は、ディフューザ部及び計量部を含むことができる。
【0045】
印加された動作周波数で長手方向軸に沿って振動するように駆動される超音波衝撃研削装置のための工具は、長手方向軸に配置される工具本体と、本体の出力端に接続される複数のチップとを含む。複数のチップの各チップは、異なる長さを有し、複数のチップの振動振幅は、印加される動作周波数において実質的に均一である。
【0046】
先述の段落の工具は、任意で、以下の特徴、構成、及び/または追加構成要素のうちのいずれか1つ以上を、付加的及び/または代替的に含んでもよい。
【0047】
前述の工具の一実施形態では、複数のチップの質量は、出力端及び長手方向軸に対して実質的にバランスをとることができる。
【0048】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、チップは、異なる材料で形成することができる。
【0049】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、チップは、異なる材料密度を有し得る。材料密度は、チップ長の増加に伴って減少し得る。
【0050】
前述の工具のいずれかの一実施形態にでは、複数のチップの少なくとも一部のチップは、内部空洞を有することができる。
【0051】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、複数のチップのうちのチップは、1つ以上の列で均一に離間され得る。
【0052】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、複数のチップのうちのチップは、被加工物に形成される穴の形状を画定するように構成された均一な成形部を有することができる。
【0053】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、複数のチップの少なくとも一部のチップは、異なる長さの延長部を有することができる。延長部は、成形部と工具の端部との間に配置することができる。
【0054】
前述の工具のいずれかの一実施形態では、成形部は、ディフューザ部及び計量部を含むことができる。
【0055】
超音波衝撃研削を行う方法は、超音波衝撃研削装置の工具を被加工物に対してある角度で配向することと、工具のすべてのチップに均一な振動振幅を提供することとを含む。工具は、長手方向軸と、長さの異なる複数のチップとを有する。チップの端部は、被加工物の表面から等距離に配置される。
【0056】
先述の段落の方法は、任意選択で、以下の特徴、構成、追加構成要素、及び/またはステップのうちのいずれか1つ以上を、付加的及び/または代替的に含んでもよい。
【0057】
前述の方法の一実施形態では、複数のチップの質量は、長手方向軸に対して実質的にバランスをとることができる。
【0058】
例示的な実施形態(複数可)を参照して本発明は説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよく、本発明の要素は均等物で置き換えられてもよいことが、当業者には理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的範囲から逸脱することなく、多くの修正が加えられてもよい。よって、本発明は、開示される特定の実施形態(複数可)に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】