(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103478
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】透明導電層、イオン貯蔵層及び/又はエレクトロクロミック層としてN-ドープ導電性ポリマーを有するエレクトロクロミック装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1516 20190101AFI20240725BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20240725BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20240725BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240725BHJP
H10K 50/135 20230101ALI20240725BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240725BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240725BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240725BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20240725BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240725BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20240725BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20240725BHJP
【FI】
G02F1/1516
G02F1/155
G02F1/15 506
C08G61/12
H10K50/135
H10K85/60
H10K71/60
H10K85/10
H10K77/10
H10K71/20
H10K71/13
H10K102:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】48
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006810
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】18/099,850
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/532,911
(32)【優先日】2023-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/545,355
(32)【優先日】2023-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521095259
【氏名又は名称】アンビライト・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアングオ・メイ
(72)【発明者】
【氏名】インホ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】アシュカン・アブタヒ
【テーマコード(参考)】
2K101
3K107
4J032
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DC03
2K101DC12
2K101DC43
2K101DC44
2K101DC45
2K101EB01
2K101EC02
2K101EC05
2K101ED12
2K101ED51
2K101EE02
2K101EG27
2K101EG28
2K101EG52
2K101EG54
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2K101EH14
2K101EJ32
2K101EK35
3K107AA01
3K107BB01
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3K107FF15
3K107GG07
3K107GG11
4J032BA09
4J032BB01
4J032CG03
(57)【要約】
【課題】n-ドープ有機導電性ポリマーを含むエレクトロクロミック装置/ディスプレイを提供する。
【解決手段】エレクトロクロミック装置は、2つの基材と、2つの基材の間に配置された複数の領域とを含み、領域の各々は、第1の導電層、第1の導電層の上の電解質層、電解質層の上のエレクトロクロミック層、及びエレクトロクロミック層の上の第2の導電層を含む。第1の導電層はn-ドープ有機導電性ポリマーを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基材と、2つの基材の間に配置された複数の領域とを含むエレクトロクロミック装置であって、領域の各々が、
第1の導電層、
第1の導電層の上の電解質層、
電解質層の上のエレクトロクロミック層、及び
エレクトロクロミック層の上の第2の導電層
を含み、
第1の導電層が、式
【化1】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素、ハロゲン又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、エレクトロクロミック装置。
【請求項2】
第2の導電層がn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項3】
第2の導電層の厚さが第1の導電層の厚さ未満である、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項4】
第1の導電層と電解質層との間に配置されたイオン貯蔵層を更に含み、イオン貯蔵層がn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項5】
電解質層とエレクトロクロミック層との各々が、ポリマーから作製されている、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項6】
電解質層が固体電解質層である、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項7】
領域が、第1の領域と第2の領域とを含み、異なる色を表示するために、第1の領域が、第2の領域の第2のエレクトロクロミック層とは異なる、第1のエレクトロクロミック層を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項8】
基材の少なくとも一方が可撓性である、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項9】
第1の導電層又は第2の導電層が、透明又は半透明である、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項10】
2つの隣接する領域を接続する導電性ポリマー相互接続を更に含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項11】
導電性ポリマー相互接続がn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項10に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項12】
エレクトロクロミック装置がシースルーディスプレイになることができるように、退色状態における領域の各々が透明である、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項13】
第1の導電層が、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、第1の導電層の酸化状態と還元状態との間で、5未満の色の彩度変化ΔC*とを有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項14】
3ボルト未満で動作する、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項15】
各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、5%未満の透過率減衰ΔTを有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項16】
領域が、第1の領域と第2の領域とを含み、第1の領域のエレクトロクロミック層及び第2の導電層が、第2の領域のエレクトロクロミック層及び第2の導電層から分離しており、第1の領域の第2の導電層と、第2の領域の第2の導電層とが、これらの間に配置された第1の導電性ポリマー相互接続によって接続されている、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項17】
第1の領域の電解質層及び第1の導電層が、第2の領域の電解質層及び第1の導電層から分離しており、第1の領域の第1の導電層と、第2の領域の第1の導電層とが、これらの間に配置された第2の導電性ポリマー相互接続によって接続されている、請求項16に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項18】
2つの基材と、2つの基材の間に配置された層とを含むエレクトロクロミック装置であって、層が、
第1の導電層、
第1の導電層の上の電解質層、
電解質層の上のエレクトロクロミック層、及び
エレクトロクロミック層の上の第2の導電層
を含み、
第1の導電層が、式
【化2】
(式中、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数である)のn-ドープポリ(3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジオン)(n-PBDF)を含む、エレクトロクロミック装置。
【請求項19】
第2の導電層がn-PBDFを含む、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項20】
第2の導電層の厚さが第1の導電層の厚さ未満である、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項21】
第1の導電層と電解質層との間に配置されたイオン貯蔵層を更に含み、イオン貯蔵層がn-PBDFを含まない、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項22】
電解質層とエレクトロクロミック層との各々が、ポリマーから作製されている、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項23】
電解質層が固体電解質層である、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項24】
基材の少なくとも一方が可撓性である、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項25】
第1の導電層又は第2の導電層が、透明又は半透明である、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項26】
第1の導電層が、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、第1の導電層の酸化状態と還元状態との間で、5未満の色の彩度変化ΔC*とを有する、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項27】
3ボルト未満で動作する、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項28】
各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、5%未満の透過率減衰ΔTを有する、請求項18に記載のエレクトロクロミック装置。
【請求項29】
第1の基材上に第1の導電層を形成する工程、
第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程、
第2の基材上に第2の導電層を形成する工程、
第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程、
エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程、及び
第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程
を含む、エレクトロクロミック装置を形成するための方法。
【請求項30】
第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程
を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程が、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程が、エレクトロクロミックフィルム及び第2の電気的相互接続の各々の上に、並びに隣接する第2の領域同士の間の間隙に、第2の電解質層を形成する工程を含む、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の導電層が、式
【化3】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程が、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程が、第2の電解質層をパターニングして、エレクトロクロミックフィルムの各々の上に第2の電解質フィルムを形成する工程であって、第2の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含む、
請求項30に記載の方法。
【請求項34】
第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程
を更に含み、
第1の導電層が、式
【化4】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程が、
第1の電解質層をパターニングして、第1の領域の各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程であって、第1の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程
を含み、
第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程が、
第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
パターニングする操作の少なくとも1つを、フォトリソグラフィ又は印刷法によって実行する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
第2の導電層が、式
【化5】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
第1の導電層と第1の電解質層との間にイオン貯蔵層を形成する工程
を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程
を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程が、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程が、エレクトロクロミックフィルム及び第2の電気的相互接続の各々の上に、並びに隣接する第2の領域同士の間の間隙に、第2の電解質層を形成する工程を含む、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程が、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程が、第2の電解質層をパターニングして、エレクトロクロミックフィルムの各々の上に第2の電解質フィルムを形成する工程であって、第2の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含む、
請求項39に記載の方法。
【請求項42】
第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程
を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第1の導電層と第1の電解質層との間にイオン貯蔵層を形成する工程が、イオン貯蔵層をパターニングして、第1の領域の各々の上にイオン貯蔵フィルムを形成する工程であって、イオン貯蔵フィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程が、第1の電解質層をパターニングして、イオン貯蔵フィルムの各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程であって、第1の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含み、
第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程が、第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含む、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
パターニングする操作の少なくとも1つを、フォトリソグラフィ又は印刷法によって実行する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第2の導電層が、式
【化6】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
エレクトロクロミック装置を形成するための方法であって、
第1の基材上に第1の導電層をコーティングする工程であり、第1の導電層が、式
【化7】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、工程、
第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程、
第2の基材上に第2の導電層をコーティングする工程、
第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程、並びに
以下の1つ:
a)第1の領域の各々の上に電解質層を形成する工程で、電解質層同士が互いに分離している、工程;電解質層の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程で、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;及びエレクトロクロミック層が第2の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又は
b)第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程で、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に電解質層を形成する工程で、電解質層同士が互いに分離している、工程;及び電解質層が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程
を実行する工程
を含む、方法。
【請求項47】
パターニングする操作の少なくとも1つを、フォトリソグラフィ又は印刷法によって実行する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
エレクトロクロミック装置を形成するための方法であって、
第1の基材上に第1の導電層をコーティングする工程であり、第1の導電層が、式
【化8】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、工程、
第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程、
第2の基材上に第2の導電層をコーティングする工程、並びに
以下の1つ:
a)第1の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程で、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層上に電解質層を形成する工程;及び電解質層が第2の導電層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又は
b)第2の導電層上に電解質層を形成する工程;電解質層上にエレクトロクロミック層を形成する工程;エレクトロクロミック層をパターニングして、電解質層上に複数のエレクトロクロミック層領域を形成する工程;及びエレクトロクロミック層領域が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程
を実行する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2023年12月19日に出願された米国出願第18/545,355号、2023年12月7日に出願された米国出願第18/532,911号、及び2023年1月20日に出願された米国出願第18/099,850号の優先権を主張する。上記出願のすべての内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、透明導電層、又は/及びイオン貯蔵層、又は/及びエレクトロクロミック層としての役割を果たすことができるn-ドープ有機導電性ポリマーを有する、エレクトロクロミック装置に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミック装置(ECD)は、典型的には、基材としての2層の非導電性層、1層又は2層の透明導電(TC)層、作用電極(WE)としてのエレクトロクロミック層、対電極(CE)としてのイオン貯蔵層及び電解質層を含む7層からなる。エレクトロクロミック層は、外的な電気的偏りが適用されると、色が変化する。その間に、イオン貯蔵層では、エレクトロクロミック層における反応とは反対の反応が起こり、エレクトロクロミック層で発生した電荷を平衡させる。エレクトロクロミック層とイオン貯蔵層との間には、イオン供給源及びイオン伝導チャネルとして機能する、電解質層がある。エレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層は、装置のための集電体である透明導体上に配置される。2層の透明導電層が選択される場合、装置は透過型装置として機能する。1層の透明導体を使用する(例えば、他方の導電層が反射型導電層である)場合、典型的には反射型装置として機能する。ECDにおいて最も使用されるTC層は、大部分のEC材料には低いシート抵抗、高い光透過性、及び十分に大きな電位窓のため、酸化インジウムスズ(ITO)である。しかしながら、ITOは、曲げ半径及び曲げ歪みが小さく、機械的に脆弱であり、ロールツーロール製造及びフレキシブルエレクトロニクスにおける用途は限定的である。加えて、インジウムは希土類金属であり、鉱物埋蔵量が乏しい。ITOの需要の増加に伴い、インジウムの入手性は、20年以内に非常に抑制されるようになるであろうが、近年でも価格の高騰が見られている。したがって、高い性能を提供すると同時に低コストなITO代替物を見つけることは非常に望ましいことであり、ECDの層数を減少させて装置構造を単純化し、コストを更に下げることは、更に価値が認められる。更に、溶液処理が可能で、色変化が最小限の透過型イオン貯蔵材料を、エレクトロクロミック材料と組み合わせて、性能及び耐久性を改善することも所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、n-ドープ有機導電性ポリマーを含むエレクトロクロミック装置/ディスプレイに関する。
【0005】
一態様では、開示されるエレクトロクロミック装置は、2つの基材と、2つの基材の間に配置された複数の領域とを含み、領域の各々は、第1の導電層、第1の導電層の上の電解質層、電解質層の上のエレクトロクロミック層、及びエレクトロクロミック層の上の第2の導電層を含む。開示されるエレクトロクロミック装置において、第1の導電層は、式
【化1】
のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。この式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素、ハロゲン又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである。いくつかの実施形態では、第2の導電層はn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第2の導電層の厚さは第1の導電層の厚さ未満である。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、第1の導電層と電解質層との間に配置されたイオン貯蔵層を更に含み、ここで、イオン貯蔵層はn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない。いくつかの実施形態では、電解質層とエレクトロクロミック層との各々は、ポリマーから作製される。いくつかの実施形態では、電解質層は固体電解質層である。いくつかの実施形態では、領域は、第1の領域と第2の領域とを含み、異なる色を表示するために、第1の領域は、第2の領域の第2のエレクトロクロミック層とは異なる、第1のエレクトロクロミック層を含む。いくつかの実施形態では、基材の少なくとも一方は可撓性である。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層は、透明又は半透明である。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、2つの隣接する領域を接続する導電性ポリマー相互接続を更に含む。いくつかの実施形態では、導電性ポリマー相互接続がn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック装置がシースルーディスプレイになることができるように、退色状態における領域の各々は透明である。いくつかの実施形態では、n-ドープ有機導電性ポリマーは、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、n-ドープ有機導電性ポリマーの酸化状態と還元状態との間で、5未満の色の彩度変化ΔC
*とを有する。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、3ボルト未満で動作する。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、5%未満の透過率減衰ΔTを有する。いくつかの実施形態では、領域は、第1の領域と第2の領域とを含み、第1の領域のエレクトロクロミック層及び第2の導電層は、第2の領域のエレクトロクロミック層及び第2の導電層から分離しており、第1の領域の第2の導電層と、第2の領域の第2の導電層とは、これらの間に配置された第1の導電性ポリマー相互接続によって接続されている。いくつかの実施形態では、第1の領域の電解質層及び第1の導電層は、第2の領域の電解質層及び第1の導電層から分離しており、第1の領域の第1の導電層と、第2の領域の第1の導電層とは、これらの間に配置された第2の導電性ポリマー相互接続によって接続されている。
【0006】
一態様では、開示されるエレクトロクロミック装置は、2つの基材と、2つの基材の間に配置された層とを含む。ここで、これらの層は、第1の導電層、第1の導電層の上の電解質層、電解質層の上のエレクトロクロミック層、及びエレクトロクロミック層の上の第2の導電層を含み、第1の導電層は、式
【化2】
のn-ドープポリ(3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジオン)(n-PBDF)を含む。この式中、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数である。いくつかの実施形態では、第2の導電層はn-PBDFを含む。いくつかの実施形態では、第2の導電層の厚さは第1の導電層の厚さ未満である。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、第1の導電層と電解質層との間に配置されたイオン貯蔵層を含み、イオン貯蔵層はn-PBDFを含まない。いくつかの実施形態では、電解質層とエレクトロクロミック層との各々は、ポリマーから作製される。いくつかの実施形態では、電解質層は固体電解質層である。いくつかの実施形態では、基材の少なくとも一方は可撓性である。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層は、透明又は半透明である。いくつかの実施形態では、第1の導電層は、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、第1の導電層の酸化状態と還元状態との間で、5未満の色の彩度変化ΔC
*とを有する。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、3ボルト未満で動作する。いくつかの実施形態では、開示されるエレクトロクロミック装置は、各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、5%未満の透過率減衰ΔTを有する。
【0007】
一態様では、エレクトロクロミック装置を形成するための方法が開示される。この方法は、第1の基材上に第1の導電層をコーティングする工程であって、第1の導電層は、式
【化3】
(この式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、工程、第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程、第2の基材上に第2の導電層をコーティングする工程、第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程、並びに以下の工程の組の1つ:a)第1の領域の各々の上に第1の電解質層を形成する工程であって、第1の電解質層同士が互いに分離している、工程;第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に、第2の電解質層を形成する工程であって、第2の電解質層同士が互いに分離している、工程;及び第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はb)第1の領域の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;電解質層の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;及びエレクトロクロミック層が第2の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はc)第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;及び電解質層が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を実行する工程を含む。
【0008】
別の態様では、エレクトロクロミック装置を形成するための方法が提供される。この方法は、第1の基材上に第1の導電層を形成する工程、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程、第2の基材上に第2の導電層を形成する工程、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程、及び第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程を更に含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程は、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、エレクトロクロミックフィルム及び第2の電気的相互接続の各々の上に、並びに隣接する第2の領域同士の間の間隙に、第2の電解質層を形成する工程を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の導電層は、式
【化4】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程は、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程であって、エレクトロクロミックフィルム同士が互いに分離している、工程を含み、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、第2の電解質層をパターニングして、エレクトロクロミックフィルムの各々の上に第2の電解質フィルムを形成する工程であって、第2の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程を更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程は、第1の電解質層をパターニングして、第1の領域の各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程であって、第1の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含む。第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程は、第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の導電層は、式
【化5】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1の導電層と第1の電解質層との間にイオン貯蔵層を形成する工程を更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の導電層と第1の電解質層との間にイオン貯蔵層を形成する工程は、イオン貯蔵層をパターニングして、第1の領域の各々の上にイオン貯蔵フィルムを形成する工程であって、イオン貯蔵フィルム同士が互いに分離している、工程を含む。第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程は、第1の電解質層をパターニングして、イオン貯蔵層の各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程であって、第1の電解質フィルム同士が互いに分離している、工程を含む。第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程は、第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含む。
【0018】
別の態様では、エレクトロクロミック装置を形成するための方法が提供される。この方法は、第1の基材上に第1の導電層をコーティングする工程であって、第1の導電層は、式
【化6】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、工程、第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程、第2の基材上に第2の導電層をコーティングする工程、第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する工程、並びに以下の1つ:a)第1の領域の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;電解質層の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;及びエレクトロクロミック層が第2の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はb)第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;及び電解質層が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、を実行する工程を含む。
【0019】
別の態様では、エレクトロクロミック装置を形成するための方法が提供される。この方法は、第1の基材上に第1の導電層をコーティングする工程であって、第1の導電層は、式
【化7】
(式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は、有機又は金属カチオンである)のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む、工程、第1の導電層をパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する工程、第2の基材上に第2の導電層をコーティングする工程、並びに以下の1つ:a)第1の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層上に電解質層を形成する工程;及び電解質層が第2の導電層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はb)第2の導電層上に電解質層を形成する工程;電解質層上にエレクトロクロミック層を形成する工程;エレクトロクロミック層をパターニングして、電解質層上に複数のエレクトロクロミック層領域を形成する工程;及びエレクトロクロミック層領域が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、を実行する工程を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記パターニング操作のいくつか又はすべてを、フォトリソグラフィ又は印刷法によって実行することができる。
【0021】
本技術の様々な実施形態のある特定の特質を、特に添付の特許請求の範囲に述べる。本開示の原理を利用している、説明のための実施形態を述べた以下の詳細な説明を参照することによって、本技術の特質及び利点のより良好な理解が得られる。添付図面は、以下のものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の1つの例示的実施形態による、透明導電層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの層を含む、エレクトロクロミック装置の断面図である。
【
図2(A)】いくつかの例示的実施形態による、異なる厚さにおける例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDF薄膜の電気伝導率を含有する図である。
【
図2(B)】いくつかの例示的実施形態による、異なる厚さにおける例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDF薄膜の透過率を含有する図である。
【
図2(C)】いくつかの例示的実施形態による、異なる厚さにおける例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDF薄膜のシート抵抗と550nmにおける透過率とを含有する図である。
【
図3(A)】エレクトロクロミック装置のTC層として機能する、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFの層を含む、3電極エレクトロクロミック装置の例示的設計を示す図である。1つの例示的実施形態による、3電極エレクトロクロミック装置の模式図である。
【
図3(B)】エレクトロクロミック装置のTC層として機能する、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFの層を含む、3電極エレクトロクロミック装置の例示的設計を示す図である。
図3(A)における作用電極の断面図である。
【
図4(A)】ITO/基材上、及び例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDF/基材上のエレクトロクロミックポリマー(ECP)-Bのサイクリックボルタモグラム、並びに白金ボタン電極上のn-PBDFのサイクリックボルタモグラムを含有する図である。
【
図4(B)】n-PBDF/基材上のECP-Bの分光電気化学分析の図である。
【
図5(A)】例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFの電荷容量を示す図である。プロピレンカーボネート(PC)中、0.2Mのテトラブチルアンモニウム-ビス-トリフルオロメタンスルホンイミデート(TBA-TFSI)において、異なる速度におけるITO上の30nm厚n-BDF薄膜のサイクリックボルタモグラムである。
【
図5(B)】例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFの電荷容量を示す図である。走査速度に対してプロットした、0.3V(対Ag/AgCl)における平均電流密度を示す図である。
【
図6】本開示のいくつかの例示的実施形態による、イオン貯蔵層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの層を含む、エレクトロクロミック装置の断面図である。
【
図7(A)】1つの例示的実施形態による、イオン貯蔵層として機能するn-PBDFの層を含む、例示的なITO/例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Bエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、有色及び退色状態における分光電気化学分析の図である。
【
図7(B)】1つの例示的実施形態による、イオン貯蔵層として機能するn-PBDFの層を含む、例示的なITO/例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Bエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、段階的電位高速クロノアンペロメトリー(SPFC)由来のスイッチング動態を示す図である。
【
図8】本開示のいくつかの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能する、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの層、及び作用電極用のTC層として機能する、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの別の層とを含む、エレクトロクロミック装置の断面図である。
【
図9(A)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Bエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、有色及び退色状態における分光電気化学分析の図である。
【
図9(B)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Bエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、SPFC由来のスイッチング動態を示す図である。
【
図10(A)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Mエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、有色及び退色状態における分光電気化学分析の図である。
【
図10(B)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-Mエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、SPFC由来のスイッチング動態を示す図である。
【
図11(A)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-BKエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、有色及び退色状態における分光電気化学分析の図である。
【
図11(B)】1つの例示的実施形態による、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能するn-PBDFの層、及び作用電極用のTC層として機能するn-PBDFの別の層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/ECP-BKエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、SPFC由来のスイッチング動態を示す図である。
【
図12】印加電圧を-0.3Vから0.9Vまで上昇させた、PC中0.2MのTBA-TFSIにおける、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDFの吸光分光電気化学分析の図である。
【
図13】1つの例示的実施形態による、対電極用のエレクトロクロミック層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの層を含む、エレクトロクロミック装置の断面図である。
【
図14(A)】1つの例示的実施形態による、対電極用のエレクトロクロミック層として機能するn-PBDFの層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/PEDOT:PSSエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、有色及び退色状態における分光電気化学分析の図である。
【
図14(B)】1つの例示的実施形態による、対電極用のエレクトロクロミック層として機能するn-PBDFの層を含む、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDF/PEDOT:PSSエレクトロクロミック装置の図である。1つの例示的実施形態による、SPFC由来のスイッチング動態を示す図である。
【
図15】ポリマー対電極(n-PBDF及びDEPOT:PSS)並びにECP-ブルーフィルムのサイクリックボルタンメトリーの結果、並びにCVからの体積比容量のグラフである。
【
図16(A)】1つの例示的実施形態による、作用電極(20nm)の場合の、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムのデータを含有するグラフである。吸光スペクトルを示すグラフである。
【
図16(B)】1つの例示的実施形態による、作用電極(20nm)の場合の、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムのデータを含有するグラフである。
図16(A)から推定されるCIE L
*, a
*, b
*色座標値を示すグラフである。
【
図17】2種のポリマー導体(n-PBDF及びPEDOT:PSS)の、異なる厚さにおけるCIE L
*, a
*, b
*色座標値を示すグラフである。
【
図18(A)】1つの例示的実施形態による、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムをベースとする、作用電極と対電極との両方としての、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動データを含有するグラフである。吸光スペクトルを示すグラフである。
【
図18(B)】1つの例示的実施形態による、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムをベースとする、作用電極と対電極との両方としての、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動データを含有するグラフである。動的透過率変化を示すグラフである。
【
図18(C)】1つの例示的実施形態による、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムをベースとする、作用電極と対電極との両方としての、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動データを含有するグラフである。光メモリを示すグラフである。
【
図19(A)】いくつかの例示的実施形態による、異なる導体及びイオン貯蔵層を使用した、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動を比較するデータを含有するグラフである。「ITO/VO
x」は、イオン貯蔵層としてVo
x、作用電極としてITOを使用したECDを意味する。「Cとしてn-PBDF」は、イオン貯蔵対電極としてn-PBDF、作用電極としてITOを使用したECDを意味する。「W/Cとしてn-PBDF」は、イオン貯蔵対電極及び作用電極としてn-PBDFを使用したECDを意味する。動的着色/退色速度及び光学的コントラストの比較を示すグラフである。
【
図19(B)】いくつかの例示的実施形態による、異なる導体及びイオン貯蔵層を使用した、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動を比較するデータを含有するグラフである。エレクトロクロミック効率の比較を示すグラフである。
【
図19(C)】いくつかの例示的実施形態による、異なる導体及びイオン貯蔵層を使用した、透過型ECP-B ECDのエレクトロクロミック挙動を比較するデータを含有するグラフである。CIE a
*及びb
*色座標値の変化の比較を示すグラフである。
【
図20】一実施形態による、パターニングされたエレクトロクロミック装置についての製作構想の例示的模式図である。
【
図21】ITO、ITO/VO
x及びn-PBDFフィルム(作用電極又は対電極として)の光透過率スペクトルを示すグラフである。
【
図22(A)】いくつかの例示的実施形態による、フォトリソグラフィパターニングを使用した、パッシブマトリックスベースのエレクトロクロミック装置又はディスプレイのための作用電極基材の製作方法の模式図である。
【
図22(B)】いくつかの例示的実施形態による、フォトリソグラフィパターニングを使用した、パッシブマトリックスベースのエレクトロクロミック装置又はディスプレイのための対電極基材の製作方法の模式図である。
【
図23(A)】クロストークが低減した、全ポリマーパッシブマトリックスベースのエレクトロクロミックディスプレイの画像である。標的ピクセルP5の着色を示す画像である。-0.8Vの電圧が10秒にわたって、標的ピクセルに印加される。
【
図23(B)】クロストークが低減した、全ポリマーパッシブマトリックスベースのエレクトロクロミックディスプレイの画像である。2つの標的ピクセルが点灯した画像である。-0.8Vの電圧が10秒にわたって、標的ピクセルに印加される。
【
図24】全ポリマーセグメント型エレクトロクロミック装置又はディスプレイの例示的模式図である。
【
図25(A)】全ポリマーセグメント型エレクトロクロミックディスプレイの種々の応用の画像である。時計バンドの画像である。
【
図25(B)】全ポリマーセグメント型エレクトロクロミックディスプレイの種々の応用の画像である。リング状構造物を装着したヒトの皮膚の画像である。
【
図26】1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図27】別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図28】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図29】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図30】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図31】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図32】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【
図33】更に別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、本開示の様々な実施形態の十分な理解を提供するために、ある特定の具体的な詳細を述べる。しかしながら、本開示は、これらの詳細によらずに実施してもよいことを、当業者は理解するであろう。更に、本開示の様々な実施形態をここに開示するが、当業者が共通して持つ一般的知識によって、本開示の範囲内で多くの調節及び修正がなされうる。このような修正には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本開示の任意の態様についての公知の等価物で置換することを含む。
【0024】
文脈による別段の要求がない限り、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて、「comprise(~を含む)」の語並びにその変化形、例えば「comprises」及び「comprising」は、制限のない包含的な意味において、すなわち、「~を含むが、それに限定されない」として解釈されるものとする。本明細書全体を通じて、値の数的範囲の列挙は、範囲を画定する値を含めて、範囲内にある各別々の値を個別に参照する省略表記としての役割を果たすことを意図し、各別々の値は、ここに個別に列挙したように、本明細書に組み込まれる。加えて、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明白に別段の指示をしない限り、複数の参照事項を含む。
【0025】
この明細書全体を通じて、「一実施形態」又は「ある実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載される特定の特質、構造又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書全体を通じた様々な場所における、「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という語句の出現は、必ずしも、すべてが同じ実施形態を参照しているわけではないが、いくつかの例では、同じ実施形態を参照していてもよい。更に、1つ又は複数の実施形態では、特定の特質、構造又は特徴を、任意の好適な様式で組み合わせてもよい。「透明」とは、可視光領域における40%超の透過率を意味し、例えば、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、70%以上を含む。「半透明」とは、可視光領域における5%超の透過率を意味し、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%及び40%未満を含む。「全ポリマー(all polymer)」又は「全ポリマー(all-polymer)」とは、導電層と、イオン貯蔵層と、電解質層とエレクトロクロミック層とが、ポリマーを含むことを意味する。いくつかの実施形態では、「全ポリマー(all polymer)」又は「全ポリマー(all-polymer)」は、ポリマー基材を更に含むこともある。「固体電解質」は、固体又はゲル状固体電解質を含む。
【0026】
ここに記載される様々な実施形態は、式
【化8】
のn-ドープ有機導電性ポリマーを含むエレクトロクロミック装置を対象とする。この式中、Xは、O、S又はSeであり、m及びnの各々は、ゼロよりも大きい整数であり、R
1及びR
2の各々は、独立して、水素又はC
1~C
10アルキルの1つから選択され、M
+は有機又は金属カチオンである。いくつかの実施形態では、XはOであり、R
1及びR
2の各々は水素であり、M
+はプロトンであり、これらの実施形態によるn-ドープ有機導電性ポリマーは、式
【化9】
のn-ドープポリ(3,7-ジヒドロベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン-2,6-ジオン)(n-PBDF)と呼ばれる。本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、透明導電(TC)層、及び/又はイオン貯蔵層、及び/又はエレクトロクロミック層として機能しうる。この明細書全体を通じて、例示的な目的のために、3種の特定のエレクトロクロミックポリマーが使用される。この開示は、これらの例に限定されるものではないことが理解されるべきである。ECP-マゼンタ(ECP-M)は、例示的なマゼンタ色のECPである。ECP-ブルー(ECP-B)は、例示的な青色のECPである。ECP-ブラック(ECP-BK)は、例示的な黒色のECPである。例示的なECP-M、ECP-B及びECP-BKの構造を、下にそれぞれ次の通り示すが、nは、ゼロよりも大きい整数である。
【0027】
【0028】
従来のECDは、基材としての2層の非導電性層、それぞれ基材上に配置された1層又は2層の透明導電(TC)層(1層は作用電極用、1層は対電極用)、作用電極(WE)としてのエレクトロクロミック層、対電極(CE)としてのイオン貯蔵層、及びWEとCEとの間に挿入された電解質層を含む7層からなる。本開示において、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、TC層、又は/及びイオン貯蔵層、又は/及びエレクトロクロミック層としての役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、従来のITOと置き換えて非常に透明な導体とすることができ、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、ECDにおけるTC層の少なくとも1層として機能することができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、ECDにおけるイオン貯蔵層として機能することができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、対電極用のTC層とイオン貯蔵層との両方として、別々に機能することができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、対電極用のTC層とイオン貯蔵層との両方として同時に(例えば、1つの単一層として統合される)機能することができ、その結果、層が減少し、エレクトロクロミック装置の構造が単純化する。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、対電極用のイオン貯蔵層及び作用電極用のTC層として、別々に機能することができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、対電極用のTC層とイオン貯蔵層との両方として同時に(例えば、1つの単一層として統合される)、及び作用電極用のTC層として機能することができ、その結果、層が減少し、エレクトロクロミック装置の構造が単純化する。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、対電極用のTC層とイオン貯蔵層との両方として別々に、及び作用電極用のTC層として機能することができる。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、酸化還元反応を行ってエレクトロクロミック特性を呈し、エレクトロクロミック層として機能することができ(対電極として、従来のイオン貯蔵層と置き換える)、作用電極としてのp-ドープエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、本開示のECDは、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなる層を含む。TC層及び/又はイオン貯蔵層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの他に、電解質塩(例えば、Li+塩、Na+塩、TBA+(テトラブチルアンモニウム))、又は機械的特性を調節するためのいくつかの安定剤(例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリスチレン)等の、層の光学特性及び電気伝導率に有意に影響を与えない他の成分を含んでもよい。エレクトロクロミック層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの他に、電解質塩(例えば、Li+塩、Na+塩、TBA+(テトラブチルアンモニウム))、若しくは機械的特性を調節するためのいくつかの安定剤(例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリスチレン)等の、層の光学特性及び電気伝導率に有意に影響を与えない他の成分、又はWO3、ビオロゲン若しくはn-ドープエレクトロクロミックポリマー等の、いくつかの他のn-ドープエレクトロクロミック材料を含んでもよい。p-ドープエレクトロクロミック材料とは、材料が酸化されると、エレクトロクロミックプロセスを起こすことを意味する。n-ドープエレクトロクロミック材料とは、材料が還元されると、エレクトロクロミックプロセスを起こすことを意味する。
【0029】
本開示において、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、大部分のEC材料には低いシート抵抗、高い光透過性、及び大きな電位窓を示し、これによって、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、ECDのための有機透明導体となる。これに加えて、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、機械的に可撓性であり、ロールツーロール製造及びフレキシブルECDに容易に適用することができ、従来の透明導体ITOに対抗している。本開示において開示されるECDにおいて、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層が、対電極用のイオン貯蔵層とTC層との両方として同時に機能する場合、ECDの構造を単純化することができ、したがって、より少ないコスト且つ改善されたスループットで製造することができる。そのため、本開示の技術は、高性能ECDをより低コストで提供することができる。
【0030】
一態様では、本開示のエレクトロクロミック装置は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層を含み、この層は、適用された装置の電位窓の範囲内では酸化還元反応が起こらず、透明なままである。3つの主要な異なるタイプの、本開示のエレクトロクロミック装置の構成がある。各タイプから各々の例示的な構成を示し、以下の通り論じる。
【0031】
本開示のエレクトロクロミック装置の第1のタイプは、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む少なくとも1層のTC層を有する。
図1に示されるように、このような例示的な構成は、第1の絶縁性基材102、第1の絶縁性基材102の上に配置されており、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む第1の導電層104、第1の導電層104上に配置されたイオン貯蔵層106、イオン貯蔵層106の上に配置された電解質層108、電解質層108の上に配置されたエレクトロクロミック層110、エレクトロクロミック層110の上に配置された第2の導電層112、第2の導電層112の上に配置された第2の絶縁性基材114、及びエレクトロクロミック装置100を動作させるための回路配線116を有しうる。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層の少なくとも一方は透明である(導電層が透明である場合、TC層と呼ばれる)。いくつかの実施形態では、第1の導電層と第2の導電層との両方が透明である(これらの本開示のECDの場合、2層のTC層を有する)。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層は、反射型導電層、例えば金属層を含み、反射型ECDを形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層104は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない透明導体(例えばITO)を含んでもよく、第2の導電層112は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1の導電層104と第2の導電層112との両方が、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1の導電層104と第2の導電層112との少なくとも一方が、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなる。
【0032】
本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、高性能透明導体として機能することができる。これを実証するため、n-PBDFを例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーとして使用し、様々な厚さにおける光学的透過率、電気伝導度及びシート抵抗を調査する。
図2(A)は、16nm~94nmの範囲にわたる厚さを有する薄膜の導電性を示す図である。薄膜の導電性は、膜厚が増加するにつれて上昇する。94nmの厚さの前後では、6100S/cmに達する。n-PBDF薄膜の光学的透過率を、
図2(B)に図示する。
図2(B)に示されるように、n-PBDF薄膜は、可視領域(例えば400~700nm)において、高い透過率を示す。薄膜の導電性及び可視領域における透過率が高いことは、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーが、透明導体として使用するのに好適であることを示す。これは、シート抵抗及び光学的透過率が膜厚とともにプロットされた、
図2(C)において更に明らかとなる。ヒトの目が最も高感度となる550nmの波長において、最適化されたn-PBDF薄膜は、45Ω/sqという低いシート抵抗と、高い透過率(T
550>80%)を呈し、従来の透明導体ITOに対抗することができる。したがって、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、高性能透明導体として確立される。
【0033】
ECDにおいてTC層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの実証を単純化するため、3電極エレクトロクロミック装置300を採用する。
図3(A)における模式図に示されるように、本明細書で開示されるECD300は、対電極(例えばPt)CE、参照電極(例えばAg/AgCl)RE及び作用電極WEを含む。
図3(B)における作用電極WEの断面図を描いた図に示されるように、作用電極WEは、基材としてガラス又はPETのピース、透明導体として本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの層、及びエレクトロクロミック層としてエレクトロクロミック材料(例えばECP-B)の層を含む。一実施形態では、T
550(波長550nmにおける透過率)>85%且つR
s(シート抵抗)<80Ω/sqである例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDFの層がまず、剥き出しのガラス基材上にコーティングされ、続いてエレクトロクロミック層、例えばECP-Bがコーティングされる。次いでこのガラススライドを液体電解質に浸して、3電極エレクトロクロミック装置を準備する。一実施形態では、最大0.7V(対Ag/AgCl)の正電位を印加すると、ECP-Bは徐々に酸化され、透過型となる。このプロセスは、
図4(B)に示されるように、n-PBDF/基材構造体における、ECP-Bの分光電気化学分析測定において捕捉される。印加電圧が上昇するにつれて、可視領域(例えば400~700nm)におけるECP-Bの透過率が上昇する。透明電極としてITOを使用した場合に同じ測定を実行すると、非常に類似したエレクトロクロミック応答が記録される。ITO/基材上のECP-B、n-PBDF/基材上のECP-B、及び白金ボタン作用電極上で取得したn-PBDF自体についてのCV測定結果を
図4(A)に示すが、ECP-Bエレクトロクロミック層は、ECP-Bが、ITO透明導体上とn-PBDF透明導体上との両方で、-0.2V前後(対Ag/AgCl)における同じ酸化開始点を有することを示しており、これは、n-PBDFの酸化開始点(Ag/AgClに対して0.58V)よりも約0.8V低い。したがって、n-PBDFに印加される電圧が0.58Vよりも低い場合、n-PBDFは酸化還元反応を起こさない。総じて、これらの結果は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、エレクトロクロミック装置の光学特性及び電気特性に悪影響を及ぼすことなく、エレクトロクロミック装置におけるTC層として使用することができ、無機TC(例えばITO)に匹敵しうることを実証している。
【0034】
透過性に加えて、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、高い電荷密度を呈する。例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFを、実証のために使用する。
図5(A)に示されるように、0.2MのTBA-TFSI(PC)電解質中、異なる走査速度でサイクリックボルタモグラムを記録することによって、n-PBDF薄膜の体積比容量(C
*)を測定した。サイクリックボルタモグラムによれば、-0.2V~+0.4Vの範囲における非ゼロ電流プラトーは、二重層容量を表す。
図5(B)に示されるように、容量性挙動は、走査速度に伴って電流密度が直線的に増加することによっても確認される。高い光学的透過性と大きな電荷容量との両方によって、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、ECDにおけるイオン貯蔵材料に使用されることが確保される。
【0035】
本開示のエレクトロクロミック装置の第2のタイプは、イオン貯蔵層として、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層を有する。イオン貯蔵層として機能する本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層を有する、例示的なECDスキームを
図6に示す。ECDは、第1の絶縁性基材602、第1の絶縁性基材602の上に配置された第1の導電層604、第1の導電層604上に配置されており、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含むイオン貯蔵層606、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含むイオン貯蔵層606の上に配置された電解質層608、電解質層608の上に配置されたエレクトロクロミック層610、エレクトロクロミック層610の上に配置された第2の導電層612、第2の導電層612の上に配置された第2の絶縁性基材614、及びエレクトロクロミック装置600を動作させるための回路配線616を含む。本開示のn-ドープ有機導電性ポリマー層は、イオン貯蔵層として機能し、エレクトロクロミック層610(作用電極)における、無機又は有機エレクトロクロミック材料のいずれかとともに作用することができる。いくつかの実施形態では、イオン貯蔵層606は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなる。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層の少なくとも一方は透明である。いくつかの実施形態では、第1の導電層と第2の導電層との両方が透明である。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層は、反射型導電層、例えば金属層を含み、反射型ECDを形成する。
【0036】
エレクトロクロミック装置のためのイオン貯蔵層(対電極)としての、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層の性能を実証するため、次のECD実施形態では、作用電極として、エレクトロクロミック層においてECP-Bを例示的なECPとして使用し、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFを使用する。in situで架橋した1:1のPEGDA:PC中0.2MのTBATFSIを、電解質層608として使用する。本開示のn-PBDF薄膜を、対電極用のイオン貯蔵層606として用いる。
図7(A)は、本開示のエレクトロクロミック装置の透過率スペクトルを図示した図である。透過率スペクトルは、着色プロセス中の大きな変化を示しており、有色状態と退色状態との間で、エレクトロクロミック装置が首尾よくスイッチしたことを示す。段階的電位高速クロノアンペロメトリー(SPFC)由来のスイッチング動態を
図7(B)に示すが、これは、エレクトロクロミック装置が、612nmにおいて、5%から55%への高速スイッチングを達成していることを示す。この結果は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーが、エレクトロクロミック装置のためのイオン貯蔵材料として、優れた働きをすることを実証している。
【0037】
本開示のエレクトロクロミック装置の第3のタイプは、TC層とイオン貯蔵層との両方として機能する、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層を有する。エレクトロクロミック装置800の1つの例示的な構成を、
図8に示す。ECD800は、第1の絶縁性基材802、第1の絶縁性基材802の上に配置されており、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層804、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層804の上に配置された電解質層806、電解質層806の上に配置されたエレクトロクロミック層808、エレクトロクロミック層808の上に配置されたTC層810、及び導電層810の上に配置された第2の絶縁性基材812を含む。導電層810は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含んでもよく、若しくは本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなってもよく、又は本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まないTC層、例えばITOであってもよく、又は反射型導電層、例えば金属であってもよい。エレクトロクロミック装置800は、エレクトロクロミック装置800を動作させるための回路配線814を更に含む。この例示的な装置800において、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む単一層804は、対電極用のTC層とイオン貯蔵層との両方として同時に機能し、したがって、より低コスト且つより高いスループットで装置の構造が単純化される。いくつかの実施形態では、各層における他の成分由来の変形に起因して、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層804は、2つの別々の層に分割され、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む一方の層がTC層として機能し、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む他方の層がイオン貯蔵層として機能してもよい。TC層810はまた、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含んでもよく、若しくは本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなってもよく、又は本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まないTC層、例えばITOであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む層804は、2つの別々の層に分割され、イオン貯蔵層として本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む1つの層と、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない1つのTC層、例えばITOを有してもよく、TC層810はまた、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含んでもよく、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミック装置は、TC層とイオン貯蔵層との両方として機能する、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなる層を有する。
【0038】
一実施形態では、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFを、エレクトロクロミック層808(作用電極)としてのECP-B、電解質層806としてのin situで架橋した1:1のPEGDA:PC中0.2MのTBATFSI、作用電極808用の透明導電層810としてのn-PBDF薄膜、及びn-PBDF層804を使用したエレクトロクロミック装置に組み立てる。n-PBDF層804は、対電極用の透明導体とイオン貯蔵層との両方として同時に機能する。エレクトロクロミック装置の光学的性能を、
図9(A)及び
図9(B)に示す。
図9(A)は、エレクトロクロミック装置の透過率スペクトルを図示した図である。透過率スペクトルは、着色プロセス中の大きな変化を示しており、有色状態と退色状態との間で、エレクトロクロミック装置が首尾よくスイッチしたことを示す。SPFC由来のスイッチング動態を
図9(B)に示すが、これは、エレクトロクロミック装置が、612nmにおいて、18%から70%への高速スイッチングを達成していることを示す。この結果は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーが、対電極用の透明導体及びイオン貯蔵材料として、優れた働きをすることを実証している。
【0039】
上記の構造的構成は、他のタイプのECPにも適用することができる。例えば、エレクトロクロミック層808のECP-Bは、ECP-M又はECP-BKと置き換えてもよい。ECP-Mエレクトロクロミック層808を有するエレクトロクロミック装置の光学的性能を、
図10(A)及び
図10(B)に示す。
図10(A)は、エレクトロクロミック装置の透過率スペクトルを図示した図である。透過率スペクトルは、着色プロセス中の大きな変化を示しており、有色状態と退色状態との間で、エレクトロクロミック装置が首尾よくスイッチしたことを示す。SPFC由来のスイッチング動態を
図10(B)に示すが、これは、エレクトロクロミック装置が、550nmにおいて、22%から78%への高速スイッチングを達成していることを示す。この結果は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーが、透明導体及びイオン貯蔵材料として、ECP-Mエレクトロクロミック層808とともに優れた働きをすることを実証している。
【0040】
ECP-BKエレクトロクロミック層808を有するエレクトロクロミック装置の光学的性能を、
図11(A)及び
図11(B)に示す。
図11(A)は、エレクトロクロミック装置の透過率スペクトルを図示した図である。透過率スペクトルは、着色プロセス中の大きな変化を示しており、有色状態と退色状態との間で、エレクトロクロミック装置が首尾よくスイッチしたことを示す。SPFC由来のスイッチング動態を
図11(B)に示すが、これは、エレクトロクロミック装置が、550nmにおいて、7%から40%への高速スイッチングを達成していることを示す。この結果は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーはまた、透明導体及び/又はイオン貯蔵材料として、ECP-BKエレクトロクロミック層808とともに優れた働きをすることを実証している。
【0041】
無機及び有機エレクトロクロミック材料のいずれも、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置におけるエレクトロクロミック層に使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置におけるエレクトロクロミック層は、WO3、NiO、IrO2、V2O5、イソインジゴ、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体を含むエレクトロクロミック共役ポリマー、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール若しくはジケトピロロピロールを含むアクセプターユニットを含有するコポリマーの1つ又は複数を含む。種々のタイプの電解質材料(例えば、液体電解質、ゲル電解質又は固体電解質)を、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置における電解質層に使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置における電解質層は、固体電解質又はゲル電解質を含む。
【0042】
無機及び有機イオン貯蔵材料のいずれも、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置におけるイオン貯蔵層に使用してもよい。いくつかの実施形態では、イオン貯蔵層が本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない場合、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置におけるイオン貯蔵層は、4~12族における金属元素の1種若しくは複数の酸化物、又は酸化物の混合物、又は任意の他の金属酸化物をドーピングされた酸化物の1種を含む。基材102及び114は、任意の絶縁性基材、例えばガラス又はプラスチックであってもよい。基材102及び114は、ロールツーロール製造プロセスに適応するように、可撓性であってもよい。
【0043】
別の態様では、本開示はまた、エレクトロクロミック層としての本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの使用に関する。例示的な有機導電性ポリマーPBDFと、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDFとは、酸化還元対である。したがって、これらは電位によって、エレクトロクロミック材料として機能することができる。PC中0.2MのTBA-TFSIにおいて、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーn-PBDFの分光電気化学的特性評価を実行する。
図12に示されるように、n-PBDFは、酸化還元反応を起こすことができ、850nm前後における最大吸光度で色を提示し、印加電圧の上昇に伴って吸光度が上昇する。
図13は、1つの例示的実施形態による、対電極用のエレクトロクロミック材料として本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを用いた、エレクトロクロミック装置1300の構成を図示している。エレクトロクロミック装置1300は、第1の絶縁性基材1302、第1の絶縁性基材1302の上に配置された第1の導電層1304、第1の導電層1304の上に配置されており、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む第1のエレクトロクロミック層1306、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含む第1のエレクトロクロミック層1306の上に配置された電解質層1308、電解質層1308の上に配置されており、p-ドープエレクトロクロミック材料を含む第2のエレクトロクロミック層1310、p-ドープエレクトロクロミック材料を含む第2のエレクトロクロミック層1310の上に配置された第2の導電層1312、及び第2の導電層1312の上に配置された第2の絶縁性基材1314を含む。いくつかの実施形態では、第1又は第2の導電層1304及び1312の一方は、有機又は無機導電性材料(例えばITO)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の導電層と第2の導電層との一方が、反射型導電材料、例えば金属を含み、反射型ECDを形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層又は第2の導電層の少なくとも一方は透明である。いくつかの実施形態では、第1の導電層と第2の導電層との両方が透明である。いくつかの実施形態では、ここに示したようなデュアルポリマーECDについての印加電位窓のもとでは、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーが発色しうるため、第1の導電層1304と第2の導電層1312とは、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーを含まない。第1のエレクトロクロミック層1306における本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーは、n-ドープECPとして機能する。エレクトロクロミック装置1300は、エレクトロクロミック装置1300を動作させるための回路配線1316を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のエレクトロクロミック層1306は、本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーからなる。
【0044】
無機及び有機p-ドープエレクトロクロミック材料のいずれも、第2のエレクトロクロミック層1310に使用してもよい。いくつかの実施形態では、第2のエレクトロクロミック層1310におけるp-ドープエレクトロクロミック材料は、NiO、IrO2、V2O5、イソインジゴ、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体を含むエレクトロクロミック共役ポリマー、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール若しくはジケトピロロピロールを含むアクセプターユニットを含有するコポリマーの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、p-ドープエレクトロクロミック材料は、p-ドープエレクトロクロミックポリマーである。種々のタイプの電解質材料(例えば、液体電解質、ゲル電解質又は固体電解質)を、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置における電解質層1308に使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるエレクトロクロミック装置における電解質層1308は、固体電解質又はゲル電解質を含む。
【0045】
EC層としての本開示のn-ドープ有機導電性ポリマーの性能を実証するために、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFを、例示的なp-ドープポリマーであるPEDOT:PSSと組み合わせて、デュアルポリマーエレクトロクロミック装置を作製する。一実施形態では、n-PBDFを、p-ドープECPとしてのPEDOT:PSS、電解質としてのin situで架橋した1:1のPEGDA:PC中0.2MのTBATFSI、n-ドープECPとしてのn-PBDFを使用したエレクトロクロミック装置に組み立てる。略図を
図13に描画する。
図14(A)に見られるように、0.2V刻みで-0.5Vから1.5Vの間で、分光電気化学測定を記録した(例として、少数の電圧のみを示した)。一方の電極において、酸化時にn-PBDFが電子を失い、中性状態に戻り、これに伴って850nm前後の吸光度ピークが上昇する。他方の電極において、PEDOT:PSSが還元され、中性状態に戻り、これに伴って700nm前後の吸光度ピークが上昇する。エレクトロクロミック装置は、高速スイッチング動態と、50%という高い光学的コントラストとを示す。
図14(B)に示されるように、-0.5Vの印加電圧において、0.2秒以内に退色状態に達し、1.5Vの印加電圧において、3秒以内に有色となる。この装置は、1900cm
2/Cという高い着色効率を示し、公知のエレクトロクロミック装置の中で最高記録の数値である。
【0046】
N-ドープ容量導体
開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、空気/水に安定な高い導電性を使用して、ECD中の従来のITOに首尾よく取って代わることができる、n-ドープ透明容量導体である。より興味深いことに、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、エレクトロクロミックポリマー(ECP)において消費される電荷を、高いイオン及び電子の混合伝導性による、イオン貯蔵層としての効率的なキャパシタ挙動で直接均衡させることができた。いくつかの実施形態では、例示的なn-ドープ有機導電性ポリマーであるn-PBDFフィルムの典型的なサイクリックボルタンメトリー(CV)を、異なる走査速度で記録する。これらは、厚さとは無関係に、矩形のような挙動及び明瞭なファラディックピークを有する、同様のCV形状を示す。これは、体積に応じたポリマー/電解質界面における電荷の蓄積による、純粋な静電容量と、疑似静電容量由来の高い比静電容量をもたらす、可逆的な酸化還元反応を通じた静電容量との組合せに起因する。加えて、100mVs-1を超えても形状を維持し、これは、容量ポリマーフィルムへの容易で素早いイオンの挿入/取り出しを示している。高い容量性の特性を使用して、対電極におけるn-PBDFフィルムは、イオン貯蔵層を加えることなく、補完的な電荷均衡層のように直接的に作用することができ、カソードで発色するECPとともに、退色及び発色させることができた。開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、容量性導体の他に、電極及び/又は電気的相互接続として使用することができる。
【0047】
図15は、電場応答性の電位窓を比較するための、2種のポリマー導体(n-PBDF及びPEDOT:PSS)、並びに典型的なp型エレクトロクロミックポリマーのCV結果を提示している。両ポリマー導体は、バルクポリマー/電解質界面に電荷が蓄積する純粋な容量性特性を呈し、無機対応物であるITOと比較して、遥かに大きな電荷貯蔵である。これによって、大きく、電位に無関係な電流が生じ、高い酸化(PEDOT:PSSの場合)又は還元(n-PBDFの場合)電位においてさえ持続する。非ファラディックな、ポリマードメインに形成される電気二重層は、高いドーピングレベルでは、静電容量に支配的に寄与する。興味深いことに、同一の厚さの未反応フィルムのCV曲線によれば、イオン及び電荷キャリアの共役ネットワークへの近接がより促進されて、ポリマー/電解質界面を越えることにより、n-PBDFはより大きな体積比静電容量を呈する(約3倍、PEDOT:PSSの場合の約72Fcm
-3に対して、n-PBDFの場合は約206Fcm
-3)。ポリマーフィルムにおける高いイオン及び電子の混合伝導性に起因して、二重層の形成は、単にポリマー/電解質界面層に限定されるのではなく、イオン及び電荷キャリアにおける共役ネットワーク内にも及ぶことになる。微分アノード/カソード電荷密度及び走査速度における直線的な電流依存性において、電解質のイオン拡散が優れており、安定であることが確認される。直線の傾きにおいて、高い体積比静電容量は、n-PBDFフィルムの場合、電気二重層(EDL)による電流プラトーにおいて、200~250Fcm
-3(約500μFcm
-2の面積比静電容量)であると推定され、これは、従来の炭素質材料よりも高く、酸化物ハイブリッド材料に匹敵する。n-PBDFフィルムは、ファラディックな酸化還元反応による高い正電圧(+0.7V、170Fcm
-3)の際には、良好に保持された、かなり高い静電容量挙動を示し、大きな電場応答性の電位窓における、優れた容量性の性質が示唆される。電気化学的サイクル中はファラディック静電容量に大きな減少が見出されるため、ファラディック挙動は、十分にコンディショニングしたn-PBDFフィルムにおいて試験される。しかしながら、n-PBDFフィルムは、電気化学的サイクルとは独立したEDL由来の静電容量プロセスから、安定な箱型形状のCV性質を示す。
【0048】
色変化が最小限の透過性
開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーが、導体及び/又はイオン貯蔵材料として使用される場合、高い伝導性及び高いイオン容量の他に、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、電場応答性の電位窓の全範囲を通じて、色変化が最小限の透過性を呈する。いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、n-ドープ有機導電性ポリマーの酸化状態と還元状態との間で、5未満の色の彩度変化ΔC
*とを呈する。いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、380nmから800nmの間の波長で色変化が最小限の透過性と、n-ドープ有機導電性ポリマーの酸化状態と還元状態との間で、4、又は3、又は2、又は1.5、又は1未満の色の彩度変化ΔC
*とを呈する。開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーフィルムは、作用電極において、正バイアスが印加されたECPの酸化によって、部分的に脱ドープされ、ECPの退色状態に色が残ることがある。例示的なn-PBDFフィルムの電気化学的着色効果は、三電極系における印加電圧の関数としての吸光度の測定において確認される。
図16(A)に示されるように、n-PBDFフィルムは、より高い正バイアスが印加されるにつれて、より脱ドープされ、目に見えて発色する。バイアスが0.8Vよりも高い場合、n-PBDFは完全に脱ドープされ、中性PBDFフィルムは、493nm前後の小さなショルダーピークとともに、877nmに吸光ピークを示すが、依然として可視領域の光透過率は高い。低い着色効率、及び可視領域における小さな吸光度変化に起因して、n-PBDF電極は、ECDのための作用電極と対電極との両方の位置において、最小限の色変化特性を示す。ヒトの目におけるより詳細な色の提示は、1976 CIE L
*a
*b
*色座標によって計算及び調査される。興味深いことに、n-PBDFフィルムは、酸化還元状態の全体で、色度の変化をほとんど示さない。
図16(B)に示されるように、作用電極における20nmのn-PBDFフィルムについて、色座標a
*とb
*との両方は最小限の変化を示し(a
*は約0.4上昇、b
*は約0.09上昇)、彩度C
*(C
*= (a
*2+b
*2)
1/2)も小さな変化を示す(380nmから800nmの間の波長において、ΔC
*は約0.43である)。対電極における30nmのn-PBDFフィルムについて、同様の傾向が観測される(380nmから800nmの間の波長において、a
*は約0.8上昇し、b
*は約0.2下降し、ΔC
*は約0.78である)。これは、ECDにおいて、退色状態で色残りがないこと、又は有色状態で色の追加がないことを示す。透過型エレクトロクロミックディスプレイ用途において、電気化学的プロセス全体にわたって色度がないことは、無彩色の色表示(すなわち、エレクトロクロミック活性材料自体の色)と、高い光学的コントラストとの両方のために、非常に重要である。n-PBDFは、高電位バイアス下で完全に脱ドープされた場合、380nmから800nmの間で、3又は5よりも大きな色の彩度変化ΔC
*をもたらす、遥かに厚いフィルムを有するエレクトロクロミック材料として使用することができることを言及する必要がある。
【0049】
この特性によって、発明者らのPBDFは、種々の電気化学装置用途における透明導体として、電子装置において避けられない電気化学的反応又は電荷移動の際に深刻な色変化に見舞われる従来の透明ポリマー導体を超える、優れた候補となる。実際に、n-PBDF導体は、傑出したp型導体であるPEDOT:PSSと比較して、電気化学的反応の全範囲にわたって、最小限の色変化を呈する。
図17に示されるように、2種のポリマー導体(n-PBDF及びPEDOT:PSS)の色座標値を比較する。比較のために、PEDOT:PSSをより機能化する他の追加の後処理を行わずに、PEDOT:PSSフィルムを製作する。同一の厚さのポリマーフィルム(約30nm)において、2種のポリマー導体は同様に、98から92への輝度変化を呈する。しかしながら、PEDOT:PSSは大幅な色変化を示し、-1.0Vのバイアスにおいて、顕著な青色及び中程度の緑色を帯びたシフトによって、彩度変化ΔC
*は約7.1である。これらの変化は、透明導体としての使用に、とりわけ、反対側の作用電極における従来の高性能p型エレクトロクロミックポリマーとともに、対電極として用いる場合に有害である。作用電極におけるp型エレクトロクロミックポリマーが正電圧で退色するとき、対電極材料の強い酸化をもたらす。加えて、意図的でない電荷移動、又はp型EPCの着色のための印加電圧によって、PEDOT:PSSの部分的な脱ドープのために、作用電極において着色効果が発生しうる。対照的に、n-PBDFは、フィルムの厚さに関係なく、酸化状態(-0.4V)から還元(+1.0V)状態までに示す色変化は最小限であり、作用電極と対電極との両方において、使用に好適であることが示唆される。
【0050】
低い最低空軌道(LUMO)及び低い動作電圧
開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、低い最低空軌道(LUMO)レベルを有する。いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、約-4.5eVのLUMOレベルを有する。いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、約-4.7eV、又は約-4.9eV、又は約-5.1eVのLUMOレベルを有する。低いLUMOでは、水及び酸素の還元反応が回避されることによって、n-ドープ導体を周囲条件で応用することができる。この他、低いLUMOでは、酸素への/酸素からの望ましくない電荷移動がなく、ドーピング変化が小さいこと、又は強く脱ドープされた状態では電荷注入及び輸送が乏しいことに起因して、電気二重層(EDL)由来の安定且つ強力な容量性挙動を生じることができる。加えて、低いLUMOレベルは、容易なドーピング又は低い還元電位をもたらし、これによって、電場応答性領域におけるECDの退色状態がより広くなる。例示的なn-PBDFの場合、
図16(A)に示されるように、+0.7V前後のバイアスまで、ドーピングされた状態及び生じた透明な性質を容易に保持する。+0.8Vよりも高い印加電圧では、非常に弱い脱ドープ能力のために、可視吸光の明確な増加を示す。
図15に示されるように、低い開始還元電位(約+0.7V)は、容量性EDLによる、より大きな電位窓、及び従来のp型エレクトロクロミックポリマーの電位窓に調和する、効率的な電場応答性をもたらす。従来のn型遷移金属酸化物又は非導電性n型ポリマー(例えば、
図15に示されるPEDOT:PSS)を、不均衡構成でイオン貯蔵材料として使用する場合、対電極に印加される電荷均衡電圧は、より負側に拡張される。しかしながら、n-PBDFの極めて低い還元電位によって、電場応答性電位窓をp型ポリマーと厳密に調和させることができ、対電極に印加される電圧は遥かに負ではなくなる。低い還元電位及び狭い動作電圧によって、p型エレクトロクロミックポリマーとn-PBDFとの両方における過酸化によって起こる電気化学的劣化が防止され、ECDにより良好なサイクル安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、開示されるECDは、3ボルト未満で動作する。いくつかの実施形態では、開示されるECDは、2ボルト未満、又は1.5ボルト未満、又は1ボルト未満で動作する。
【0051】
全ポリマー装置における使用
開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、無機系電子機器と全ポリマー電子機器との両方に適用することができる。従来、無機系透明導電性材料が使用される。しかしながら、不良な機械的可撓性及び加工不適合性等の様々な問題に見舞われる。安価、可撓性、折り曲げ性、軽量性、低エネルギー消費及び調節可能な光電子特性に起因して、新興の全ポリマー電子機器は、高度な装着型及び携帯型の電子機器の開発において、重大な前進をなしうる。数十年間、PEDOT:PSSは明らかに、高い加工性、水溶液コーティング、空気中及び水中での安定性、並びに高い電気伝導性等の数多くの利点を、光透過性とともに提供しており、全ポリマー電子機器における特別なポリマー導体となっている。加えて、高い疑似静電容量的性質によって、様々な電気化学装置、例えば、スーパーキャパシタ及びエネルギーコンバータに応用することができる。しかしながら、全ポリマーエレクトロクロミック装置のための、透明で色変化が最小限の電場応答性導体、及びイオン貯蔵としてのPEDOT:PSSについての困難な課題は、i)ドーピング状態では透明であるが、脱ドーピングされると青色を帯びた色に明らかにスイッチすること、ii)後処理なしでは相対的に低い導電性、及びiii)電場応答性電圧を、他の標準的なカソード発色性p型エレクトロクロミックポリマーに調和させるのが困難なことである。その一方で、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、空気/水安定性、様々な基材/電解質/EC材料との高い適合性、高いパターニング性、高い伝導性(1000Scm-1超)、色変化が最小限の透過性、及び高い静電容量を有し、したがって、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、全ポリマー電子機器における透明ポリマー導体及びキャパシタになることが実証された。上に述べたように、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、もっぱら導電層若しくはイオン貯蔵層として、又は導電層とイオン貯蔵層との両方として、及び/又は回路における電気的相互接続として使用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、開示されるn-PBDFは、エレクトロクロミック装置において、透明導体及びイオン貯蔵層に使用される。重合及びインク調製方法において、PBDFは、水の酸化を通じて、直ちに還元的ドーピングを受けてn-ドープPBDFを生じ、非常に安定的に電気伝導性が増強し、可視領域における低い吸光係数をもたらす。いくつかの実施形態では、n-PBDFは、光パターニング性ECP-B及び固体電解質と組み合わせて、全ポリマーECDを製作するために使用される。透明な静電容量性n-PBDFポリマー導体は、対電極及び作用電極の両方において、従来の酸化物系イオン貯蔵層及びITOに首尾よく取って代わることができる。n-PBDFが導入される場合、全ポリマーECDは、p型エレクトロクロミックポリマーとイオン貯蔵n-PBDF層との間の酸化還元反応の際に、小さな動作電圧範囲において、明らかな吸光度の変化を示す(
図18(A)に示される)。エレクトロクロミックポリマーの還元の際、対電極におけるn-PBDFの脱ドープによって、電荷が補完的に均衡するにもかかわらず、可視領域におけるPBDFの吸光が少ないため、ECDは、ECP-Bの純粋な青色を示す。ECDの退色状態では、ドーピングされたn-PBDFは、非常に透明な性質に寄与し、高い光学的コントラストをもたらす。PBDFが対電極のみに取って代わった対照装置、又は従来のVO
xイオン貯蔵層及びITO導体をベースとするものと比較して、全ポリマーECDの作用電極では、装置が退色状態にあると、n-PBDFの部分的脱ドーピングが観測され、500nmにおける吸光度がわずかに上昇し、NIR範囲(700~800nm)においては相対的に大きく上昇する。しかしながら、部分的に脱ドープしたn-PBDF由来の500nmにおけるショルダーピークは小さな吸光であり、残りの支配的な吸光は、主として近IR領域に局在しており、可視領域における光学的コントラスト及び色表示に影響しない。DPSCプロセスにおける安定で可逆的な透過率変化は、高い光学的コントラスト、及び作用電極と対電極との両方において、ポリマー静電容量性導体へのイオン液体の挿入及び取り出しが促進されることを示す(
図18(B)に示されるように)。
【0053】
エネルギー効率の観点から、着色及び退色効率は、全ポリマーECDでは、光学的コントラストの95%変化において計算される。全ポリマーECDのエレクトロクロミック効率は、610nmにおける退色及び着色において、それぞれ760cm2C-1及び560cm2C-1である。その効率的なエレクトロクロミック挙動は、大部分の金属酸化物系エレクトロクロミック材料及びエレクトロクロミックポリマーよりも良好である。n-PBDFの低い還元電位によって、対電極材料として多くの利点、例えば、電気化学的範囲全体で透明な性質及び低い動作電圧が可能になるが、反対に、開回路条件下で、全体的な電気的中性を維持するために、有害な自己退色現象を起こすこともある。p型エレクトロクロミックポリマーと導電性n-PBDFとの間のエネルギーレベルが厳密に調和することに起因して、電子がエレクトロクロミックポリマーからn-PBDFへ自発的に移動し、ポリマー/電解質界面において、追加の電荷形成のために、エレクトロクロミックポリマーの意図的でない酸化が起こる。したがって、低LUMOのn型ポリマーを使用する場合、ポリマーと電解質との間が密集したEDLは、自己退色挙動を抑制するために、より重要である。流体イオン液体をベースとする光架橋性固体電解質は、エレクトロクロミックポリマーフィルムとの強い相互作用によって、高密度のEDLを形成することができる。
【0054】
装置における作用電極若しくは対電極のいずれか、又は作用電極と対電極との両方として、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーを使用する場合、エレクトロクロミック装置は高い双安定性を示す。いくつかの実施形態では、開示される装置は、各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、5%未満の透過率減衰ΔTを有する。いくつかの実施形態では、開示される装置は、各還元電位又は酸化電位のバイアスにおける開回路電位下において、1000秒の動作の間に、4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満の透過率減衰ΔTを有する。いくつかの実施形態では、作用電極と対電極との両方としてn-PBDFを使用する場合、全ポリマーECDは、還元電位を+1Vから-0.6Vまで変動させたとき、1000秒の間にΔT減衰が0.7%未満である、残留電荷による良好な双安定性を示す(
図18(C))。しかしながら、開回路電位における透過率変化は、-1.2Vという高い電気化学的還元電位においては、比較的大きい(1000秒の間にΔT減衰は約3%)。これは、作用電極のn-PBDFに起因する、厚いエレクトロクロミックポリマー層への、遅いが無視できない流体イオンの浸透、及びより強い自己退色効果に端を発しうる。実際に、作用電極としてのITOとともに、対電極としてのみn-PBDFを使用したECDには、不安定な双安定性は観測されず(600秒の間にΔT減衰は0.3%未満)、これは、従来のVO
xイオン貯蔵層をベースとするECDと同様である。
【0055】
作用電極のエレクトロクロミックポリマーとn-PBDF導体との間の界面における、遅い酸化還元挙動に由来する効果も、着色及び退色プロセス中の電気化学的動力学に観測される。DPSC特性評価において、全ポリマーECDの着色及び退色スイッチング速度は、完全な光学的コントラストの95%に達するまでの時間の関数、t
95%として概算される。作用電極にn-PBDFを導入すると、とりわけ着色プロセスにおいて、透過率スイッチング速度が減少する。例えばn-PBDF対電極とITO作用電極とを有するECDでは、t
Bは約2.8秒、t
Cは約4.2秒であり、一方で、例えば作用電極と対電極との両方としてn-PBDFを有するECDでは、t
Bは約3.2秒、t
Cは約8.7秒である。着色プロセスにおいて、ドーピングされた液体イオンは、エレクトロクロミックポリマー層の外に移動して、電荷の中性を調整する。n-PBDFとエレクトロクロミックポリマーとの間の酸化還元反応及び電荷移動は、迅速なイオンの運動を妨げ、遅い透過率の差をもたらす。シースルーディスプレイのエレクトロクロミック性能における定量比較を、
図19(A)~
図19(B)に示す。対電極としてのみn-PBDFを使用したECDは、従来のITO/VO
x系ECDと比較して、同等の光学的コントラスト及びエレクトロクロミックスイッチング時間を示し、これは、透明ポリマー導体が、酸化物系電極及びイオン貯蔵層に、首尾よく取って代われることを示す。しかしながら、作用電極と対電極との両方としてn-PBDFを用いた全ポリマーECDは、とりわけ着色プロセスにおいて、相対的に低減したエレクトロクロミック効率を示す。着色プロセスにおけるより長いスイッチング時間と同様に、これは、作用電極における電荷移動、及びより多くの電荷を必要とする追加の酸化還元反応から生じる。作用電極における酸化還元挙動にもかかわらず、作用電極と対電極との両方としてn-PBDFを有する全ポリマーECDは、作用電極と対電極との両方において色変化が最小限の特性を有する、優れた色表示を示す(
図19(C))。これらは、退色状態では、色座標のa
*及びb
*がゼロに近い、非有色状態を示す。加えて、退色状態から有色状態では、a
*軸に小さな色変化が観測され、これは、全ポリマープラットフォームにおけるECP-Bの純粋な色表示を示している。
【0056】
いくつかの実施形態では、ECD、例えば非パターニングECDを製作するために、エレクトロクロミックポリマー(20~40mg)を1mLのクロロホルムに溶解させ、一晩連続して撹拌する。PBDFインクを、DMSO溶液中で調製する。PBDFインクを、UV-オゾン処理されたガラス又はPET基材上にスピンコーティングする。調製したエレクトロクロミックポリマー溶液を、ITO又はPBDF堆積基材上にスピンコーティングする。VOx系イオン貯蔵層を、他の事前にすすいだITO基材上に製作する。パターニング性固体電解質を用いない従来のECD作製の場合、PEGDA、0.2MのLiTFSIを有するPC、及びHMPPを、5:5:1の体積比で混合する。10分間撹拌した後、イオン貯蔵層を堆積させた基材上に、溶液を滴下する。エレクトロクロミックポリマーを堆積させた基材を裏返した後、その上に移す。電解質前駆体溶液が一様になるように数秒間待機した後、UV光照射下(約2000mJcm-2、405nm)で電解質を架橋させる。電気的接触用に、両面の導電層に銅テープを適用する。パターニング性固体電解質を用いたECD作製の場合、PEGDA、TT、EMIT-TFSI及びHMPPを、1:1:2:0.1の質量比で混合する。10分間撹拌した後、イオン貯蔵層上又はエレクトロクロミック層上に、前駆体溶液を滴下する。UV光照射下(約300mJcm-2、405nm)で電解質を架橋させる。いくつかの実施形態では、2つの導電性(対電極及び作用電極)のために、同じ厚さを有する、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーフィルムを別々に使用する。いくつかの実施形態では、作用電極(例えば約20nm)よりもわずかに厚い導電フィルム(例えば約30nm)を、対電極に使用して、電気化学的反応において、エレクトロクロミックポリマーフィルムと電荷を均衡させる。
【0057】
ディスプレイにおける使用及びパターニングディスプレイ
ディスプレイは、現在のデジタルランドスケープにおける中心的な役割を果たし、通信、娯楽及び情報伝達のための主要なインターフェースとしての役割を果たす。LED及びLCDのような発光ディスプレイは、鮮やかな色、高い輝度及び鮮明な解像度に起因して、普及している。しかしながら、これらには、大きなエネルギー消費、及び明るい人工的な光に長時間曝されることによる、目の緊張の可能性を含めた欠点がある。この文脈において、透過型非発光ディスプレイである、エレクトロクロミックディスプレイの開発は不可欠である。これらのディスプレイは、シースルーエレクトロクロミックディスプレイのような、有望な別の選択肢を提供する。シースルーエレクトロクロミックディスプレイは、それ自体が発光するのではなく、自然の光を調節するため、低電力消費、屋外での可読性、及び目の緊張の低減を特徴とする。この技術は、より持続的で快適な視覚体験への地ならしをするだけではなく、機能性を審美的アピールとブレンドした、スマートデバイス及び建築設計における革新的な応用への新たな道を拓くものでもある。しかしながら、シースルー透過型エレクトロクロミックディスプレイの開発は、主として、プロセス上の要件が相容れない複数の層を製作することの複雑さに起因する、重大な課題を生じる。透明導体、イオン貯蔵材料、固体状電解質及びエレクトロクロミック層は、各々別個の製造条件及び材料を要し、これらの成分をパターニング、スケーリング及び集積してまとまった単位にするのは複雑となっている。この複雑さは、しばしば技術的なハードルをもたらし、商業用途に好適な、一様に働く大規模なエレクトロクロミックディスプレイを生産するのは困難となる。クロストーク及び応答時間を低減する方法も、エレクトロクロミックディスプレイに対する課題をもたらす。開示される技法は、溶液加工性という特別な特性の使用によって、クロストークが大きく低減し、電力消費が少なく、双安定性が大きい、まさしく最初のシースルー全ポリマー可撓性エレクトロクロミックディスプレイの製作を可能にするが、溶液加工性によって、パターニング性の固体状電解質及び特別な作製方法と合わせて、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマー薄膜において、n-PBDFを溶液中で加工すること、様々な基材、電解質及びEC材料との高い適合性、セグメント型及びピクセル型EC装置/ディスプレイの製造を可能にする高いパターニング性、高い導電層、大量の電荷を貯蔵できること、低分子量、可撓性、並びに容易に調節可能な特性が可能となる。開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーの化学構造は、理論上、溶解性が乏しく、溶液加工は困難であると予測されるが、しかしながら、開示される技法によって首尾よく溶液加工可能となっており、これによって適合性の加工が可能となり、製造に非常に望ましい。本発明者らは、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーが、様々な基材、電解質及びEC材料との高い適合性を有することを発見している。この発見によって、開示されるn-有機導電性ポリマーを様々な基材上に容易に堆積させ、パターニングできるだけではなく、電解質及びエレクトロクロミック材料を開示される導電性層上に容易に堆積させ、パターニングすることもできる。従来、電解質のパターニングは特に、マイクロスケールで一様な厚さを有する平滑な表面を形成するのが困難であることに起因して、エレクトロクロミックディスプレイについて大きな課題をもたらす。したがって、従来は、電解質溶液を分離するための追加のパターニングされた鋳型を要し、これによって加工の複雑さが増加するだけでなく、コスト上好ましくなかった。加えて、電解質は様々な溶媒によって容易に膨潤することがあり、電解質に溶液系加工を使用するのは困難である。しかしながら、本発明者らは、n-ドープ有機導電性ポリマー上の電解質を、首尾よくパターニングすることができる。本発明の方法は、溶液加工可能であり、単純で、製造を振替可能であり、コスト対効果が高く、これらはすべて、商業化が上首尾となるために非常に望ましい。開示される技法において、本発明者らは、すべてのポリマー層(すなわち、導電層、イオン貯蔵層、電解質層、エレクトロクロミック層)に適合するパターニングを実証している。この方法は、低コストで高性能EC装置/ディスプレイを製造することを可能にするだけではなく、パッシブマトリックスエレクトロクロミックディスプレイに通例観測される、クロストークの問題を大きく低減することもできる。本発明者らは、回路におけるパッシブマトリックス構造、及び光メモリ効果(すなわち、双安定性)とともに、開示されるn-ドープ共役ポリマーの高い導電性及び容量を使用して、低い動作電圧を有する、開示されるエレクトロクロミック装置/ディスプレイを首尾よく生産する。開示されるEC装置/ディスプレイは、低頻度の情報更新によるエネルギー節約型ディスプレイ、及び更には情報貯蔵における利用についての見込みを示す。加えて、エレクトロクロミックポリマーと、電極としての開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーとの両方における、素早いイオンの運動及び高い導電性とに起因して、開示されるエレクトロクロミックディスプレイは、数秒以内に色が完全にスイッチする素早い応答時間を提示する。これらの発見に基づいて、本発明者らは、ピクセル/セグメントを有する又は有しない高性能全ポリマーEC装置/ディスプレイを、初めて首尾よく生産している。更に、本発明者らは、ピクセル/セグメントを有する高性能シースルー全ポリマーEC装置/ディスプレイを、初めて首尾よく生産している。高い可撓性及びヒトに優しい性質のため、シースルーディスプレイの実証において、n-PBDFを含む透明ポリマー成分は、例えば、エレクトロクロミック活性材料、電解質、イオン貯蔵層及び電極に利用される。
【0058】
いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、パターニングされた装置、例えば、パターニング全ポリマー系エレクトロクロミックディスプレイに製作することができる。パターニングエレクトロクロミックディスプレイは、セグメント型ディスプレイであってもピクセル型ディスプレイであってもよく、開示される技法によって、いずれも首尾よく生産されている。いくつかの実施形態では、開示されるパターニングされた装置における、エレクトロクロミックポリマー、固体電解質及び開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーフィルムのパターニングは、in situフォトリソグラフィを使用して製作される。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックポリマー(20~40mg)及び光架橋剤(5質量%、例えば、ビス(フルオロフェニルアジド(bisFA)架橋剤、光架橋を介して、大きな耐溶媒性を誘導する)を、1mLのクロロホルムに溶解させ、一晩連続して撹拌する。フォトマスクを用いたUV光照射下で(約2000mJcm-2;405nm)、スピンコーティングフィルムを架橋させる。トルエンを使用して、非曝露領域を除去する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ用途における種々の色表現の実証のために、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン) (PProDOT)をベースとする5色のECポリマーを研究する。エレクトロクロミックポリマー(ECP)は、シアン色、マゼンタ色、黄色、黒色及び青色について、それぞれECP-C、ECP-M、ECP-Y、ECP-BK及びECP-Bと表される。シースルーディスプレイ用途のために、すべてのエレクトロクロミック成分の光学特性を調査する。ECPフィルムはすべて、電気化学的反応において、可逆的な吸光変化を呈する。アジド分子による強力な光架橋にもかかわらず、これらは、還元状態において、正確な画像に対応する鮮明な5色のスペクトル表現を伴う、ほとんど変化のない吸光度を示す。これらは、正バイアスを印加されると、可視吸光度の大幅な減少を示し、非常に透明な状態となる。
【0059】
いくつかの実施形態では、固体電解質層を製作するために、同じ方法を使用して電解質前駆体溶液を調製する。アクリレート基の光重合は、イオン液体及びチオールモノマーの存在下で遂行される。チオールモノマーによって、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)において、連鎖成長と逐次成長との両方でフリーラジカル光重合させることができ、フォトリソグラフィプロセスにおける重合時間が低減し、高いエネルギー効率が得られる。加えて、追加の極性溶媒を用いずにイオン液体を使用すること、及びチオール分子の添加によって、ディスプレイ用途における様々な表面(例えば、金属酸化物、ガラス、ITO及びポリマー層)に対する前駆体溶液の濡れ性が増強し、単純なスピンコーティング法を使用して、最大数十ナノメートルの厚さのサイズ調節可能なパターニング固体電解質層を製作することができる。調製した前駆体溶液を、ITO又はドープ有機導電性ポリマーを堆積させた基材上にスピンコート又はドロップキャストした後、フォトマスクを用いて選択的UV光架橋を行う(約300mJcm-2、405nm)。非曝露領域を、DI水によって掃除する。シースルーディスプレイ用途のために、チオール分子とPEGDAとイオン液体とにおける異なるブレンド比に応じた、パターニング性固体電解質層の透過率スペクトルを調査する。ブレンドしたチオール及びイオン液体は、ポリマーマトリックス系全体の光透過性を摂動させず、これによって、可視領域全体における高い透過率(98%超)が生じる。あるイオン伝導度の光パターニング性固体電解質を使用して、ECP-B、従来の金属酸化物系電荷均衡材料、VOx及びITOを堆積させたガラスを用いて、ECDを製作する。着色状態と退色状態との両方における静的吸光度を検討する場合、ピーク形状、強度及びスペクトルの光学的コントラストの観点で、異なるブレンド比を用いた固体電解質の条件による、明らかな変化はない。動的な光学特性は、二重電位ステップクロノアプソープトメトリー(DPSC)特性評価において、ECP-Bフィルムにおける透過率の変化について記録する。ECP-B装置に基づくエレクトロクロミック動力学は、イオン液体装填量の増加として、直接的に増強させることができ、75質量%のイオン液体装填では、それぞれ3.5秒及び3.9秒の短い退色及び着色時間をもたらす。これは、ポリマーネットワークの存在が、液体イオンの運動及びそれによって生じるイオン伝導性に対して、有害な効果を生じないことを示す。イオン伝導性はまた、ポリマーゲル系固体電解質層にチオールモノマーを添加することによっても上昇するが、これは、チオールモノマーの存在によって、連鎖成長機構によるアクリレート光重合の架橋が低減すること、及びUV光の架橋する力が低減することに端を発しうる。
【0060】
開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、エレクトロクロミック装置中のイオン貯蔵層を導電させる導体、及び電気的相互接続に使用される。重合及びインク調製方法において、例示的な有機導電性ポリマーであるPBDFは、水の酸化を通じて、直ちに還元的ドーピングを受けてn-ドープPBDF(n-PBDF)を生じ、非常に安定的に電気伝導性が増強し、可視領域における低い吸光係数をもたらす。いくつかの実施形態では、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーフィルムのパターニングは、従来のフォトリソグラフィを、反応性イオンエッチング(RIE)ドライプロセス及びエッチング阻止層と組み合わせて使用して製作される。いくつかの実施形態では、事前に堆積させたn-PBDFフィルム上に、エッチング阻止層としてAZ1518(Microchemicals社)をスピンコーティングして(5000rpm、45秒)、110℃で2分間焼成して、残留溶媒を除去する。次いで、マスクレスアライナー(Heidelberg社 MLA150)を使用して、フォトレジストフィルムを近UV光(405nm、100mJcm-2)に曝露する。現像溶液(Microposit社、MF-26A)中で、45秒間、被膜を現像する。DI水ですすいだ後、パターニングされたフィルムをエッチングプラズマに30分間曝露して、非保護ポリマー層を除去する。プラズマエッチングの後、残存するフォトレジストフィルムをすべて、アセトンで除去する。導電性ポリマーフィルムは、熱処理及びフォトリソグラフィプロセスにおける垂直溶液加工の結果、化学的にも機械的にも堅牢であり、鋭い辺縁を有する明瞭なマイクロスケールのパターニングをもたらす。
【0061】
パターニングされたエレクトロクロミック装置又はディスプレイを製作するため、第1の導電層を第1の基材上にコーティングするが、第1の導電層は、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーを含み、これをパターニングして、第1の領域と、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続とを形成する。第2の透明導電層を第2の基材上にコーティングし、第2の導電層をパターニングして、第2の領域と、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続とを形成する。電気的相互接続は、領域の正確な活性化及び制御のための経路を提供する。次いで、以下の1つ:a)第1の領域の各々の上に第1の電解質層を形成する工程であって、第1の電解質層同士が互いに分離している、工程;第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に第2の電解質層を形成する工程であって、第2の電解質層が互いに分離している、工程;及び第1の電解質層が、第2の電解質層と位置が揃い、接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はb)第1の領域の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;電解質層の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;及びエレクトロクロミック層が第2の領域と位置が揃い、接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、又はc)第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;及び電解質層が第1の領域と位置が揃い、接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、を実行する。いくつかの実施形態では、パターニングは、フォトリソグラフィ又は印刷法(例えばインクプリンティング)によって実行する。パターニングをしない同様の製作方法は、非パターニングエレクトロクロミック装置を作製するために使用される。電解質層及び第2の導電層のパターニングをしない同様の製作方法は、セグメント型エレクトロクロミック装置を作製するために使用される。
【0062】
いくつかの実施形態では、パターニングされたエレクトロクロミック装置/ディスプレイ、例えば、
図20に図示される全ポリマーピクセル型エレクトロクロミックディスプレイを作製するために、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーが、第1及び第2の導電層に含まれ、上に言及した工程が使用される。開示されるn-ドープ有機導電性ポリマー導体ラインは、言及した、作用電極、イオン貯蔵導電層(対電極)及び電気的相互接続として機能するn-ドープ有機導電性ポリマーフィルムをパターニングすることによって製作する。作用電極の上に、エレクトロクロミックポリマーフィルムをスピンコーティングし、in situフォトリソグラフィを使用してパターニングする。2色(又は4色)ディスプレイを作製するためには、導電層パターニング基材に対して、同じ方法を2回(4回)繰り返す。前駆体溶液を、イオン貯蔵導電層(対電極)とエレクトロクロミックポリマーとの両表面の上に滴下した後、滴下した前駆体溶液上にフォトマスクを用いて、UV光架橋を行う。アセトンを使用して、非曝露領域を除去する。2つの基材を注意深く組み立て、ロータリーポンプを1時間使用して、真空処理する。いくつかの実施形態では、非パターニングエレクトロクロミック装置を作製するために、パターニングをせずに、上に記載した、及び
図20における同様の製作方法が使用される。
【0063】
全ポリマーECDにおける容量性電極用途のために、いくつかの実施形態では、ジメチルスルホキシド(DMSO)中のポリマー分散液の単純スピンコーティングを使用して、透明n-PBDFフィルムを製作する。作用電極(約20nm)よりもわずかに厚いn-PBDFフィルム(約30nm)を、対電極として使用して、電気化学的反応において、エレクトロクロミックポリマーフィルムと電荷を均衡させる。両n-PBDFフィルムは、可視領域全体において80%よりも高い透過率を有する、非常に透明な性質を示す(
図21)。n-PBDFフィルムの光透過性は、ITOに匹敵し、容量性金属酸化物を堆積させたITOフィルムを凌駕する。
【0064】
いくつかの実施形態では、開示されるピクセル型エレクトロクロミックディスプレイは、パッシブマトリックス構造を採用する。パッシブマトリックス構造は、開示される全ポリマーECDにおいて、優れた光メモリ効果を通じた低エネルギー動作を利用するために選択される。しかしながら、パッシブマトリックス駆動では、電解質層を通じた意図的でないピクセル間の電荷移動のため、深刻な画像クロストークが生じることがある。したがって、個々のピクセルをある程度分離するために、8×8マトリックスピクセルを有するパッシブマトリックスベースのディスプレイの製作の場合、各ピクセルに関して、in situフォトリソグラフィによって固体電解質をパターニングする(
図22(A)~
図22(B)参照)。それぞれ作用電極及び対電極のために、固体電解質フィルムを、光パターニングされたエレクトロクロミックポリマーとn-PBDFフィルムとの両方の上に、首尾よく堆積させる。次いで、第1の電解質層が第2の電解質層と位置が揃い、接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させて、装置を作製する。
【0065】
エレクトロクロミックパッシブマトリックスディスプレイのピクセル製作について、フォトリソグラフィによるパターニングによって、固体電解質、開示される導体、及びエレクトロクロミックポリマー層のすべてを明瞭に局限化し、画然とした辺縁とすることができる。本発明の技法によって、ECディスプレイ/装置の製作が容易でコスト効率的となり、開示される技法、例えば、溶液加工性、及びエレクトロクロミックディスプレイにおける層に適合するパターニングを使用することによって、クロストークが大きく低減する。開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーは、導電層、イオン貯蔵層及びディスプレイ回路における電子的相互接続として同時に機能することができるため、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーをパターニングするという1度の単一工程で、1つの3機能集積層が得られ、方法の複雑さ及びコストが更に低減する。
【0066】
図22(A)及び
図22(B)を参照すると、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための例示的方法が提供される。
図22(A)では、導電フィルム(例えば、n-PBDFフィルム又は他の好適な導電フィルム)を、基材上に堆積させる。基材は、剛性(例えば、ガラス、金属等)であっても、可撓性(例えばプラスチック)であってもよい。基材は、透明であっても、半透明であっても、反射性であってもよい。次いで、導電フィルム上でパターニング加工を実行する。このパターニング加工では、フォトレジストフィルムを導電フィルム上に堆積させ、領域及びピクセルを含む所望のパターンを有するフォトマスクを通して、フォトレジストフィルムをUV光に曝露することを含むリソグラフィ工程、並びに領域又はピクセルの間の相互接続を実行する。次いで、曝露されたフォトレジストフィルムを現像して、導電フィルム上にフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンを、導電フィルムをエッチングするためのマスクとして使用してエッチング加工(例えばドライエッチング)を実行して、所望のパターンを形成する。次いで、残存するフォトレジストを除去する。パターニング加工によって、異なる領域(例えばピクセル若しくはセグメント)及び/又は異なる電気的相互接続上の導電層を、分離することができる。いくつかの実施形態では、上記方法は、ピクセル型装置を形成するためだけではなく、セグメント型装置を形成するために使用することもできる。いくつかの実施形態では、導電フィルム上での上記パターニング加工は、非パターニングエレクトロクロミック装置を形成する場合、省略することができる。
【0067】
基材上の導電フィルムのパターニング加工に続いて、エレクトロクロミックポリマー(ECポリマー)層を基材上にコーティングする。次いで、PEポリマー層上でリソグラフィ法(ECポリマー層上でのフォトマスクを通したUV曝露、及びUV曝露後のウェットエッチングによる非硬化ECポリマー層の除去を含む)を実行して、ECポリマー層をパターニングする。このパターニング加工によって、ピクセル又はセグメントの各々の上のECポリマー層を、分離することができる。2色(又はより多くの色の)ディスプレイを作製するためには、導電層パターニング基材に対して、同じ方法を2回(又はより多くの回数)繰り返す。
図22(A)に示されるように、領域又はピクセルの間の相互接続から、ECポリマーが除去されることに留意されたい。非パターニングエレクトロクロミック装置を形成するためには、パターニング加工をせずに、ECポリマー層のコーティングのみを実行する。
【0068】
次に、電解質溶液を基材上にコーティングして、電解質フィルムを形成する。次いで、電解質フィルム上でリソグラフィ法(電解質フィルム上でのフォトマスクを通したUV曝露、及びUV曝露後のウェットエッチングによる非硬化電解質フィルムの除去を含む)を実行して、電解質フィルムをパターニングする。このパターニング加工によって、ピクセル又はセグメントの各々の上の電解質フィルムを、分離することができる。
図22(A)に示されるように、領域又はピクセルの間の相互接続から、電解質フィルムが除去されることに留意されたい。セグメント型又は非パターニングエレクトロクロミック装置を形成するためには、パターニング加工をせずに、電解質溶液のコーティングのみを実行する。この工程は、EC装置又はディスプレイ、例えば、
図22(A)におけるパッシブマトリックスベースのEC装置又はディスプレイのための作用電極を形成することで終わる。
【0069】
ここで、
図22(B)を参照すると、対電極基材を形成するための方法を図示している。
図22(B)に示されるように、導電フィルム(例えば、n-PBDFフィルム又は他の好適な導電フィルム)を、基材上に堆積させる。基材は、剛性(例えば、ガラス、金属等)であっても、可撓性(例えばプラスチック)であってもよい。基材は、透明であっても、半透明であっても、反射性であってもよい。次いで、導電フィルム上でパターニング加工を実行する。このパターニング加工では、フォトレジストフィルムを導電フィルム上に堆積させ、領域及びピクセルを含む所望のパターンを有するフォトマスクを通して、フォトレジストフィルムをUV光に曝露することを含むリソグラフィ工程、並びに領域又はピクセルの間の相互接続を実行する。次いで、曝露されたフォトレジストフィルムを現像して、導電フィルム上にフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンを、導電フィルムをエッチングするためのマスクとして使用してエッチング加工(例えばドライエッチング)を実行して、所望のパターンを形成する。次いで、残存するフォトレジストを除去する。パターニング加工によって、異なる領域(例えばピクセル若しくはセグメント)及び/又は異なる電気的相互接続上の導電層を、分離することができる。いくつかの実施形態では、導電フィルム上での上記パターニング加工は、セグメント型又は非パターニングエレクトロクロミック装置を形成する場合、省略することができる。
【0070】
次に、電解質溶液を基材上にコーティングして、電解質フィルムを形成する。次いで、電解質フィルム上でリソグラフィ法(電解質フィルム上でのフォトマスクを通したUV曝露、及びUV曝露後のウェットエッチングによる非硬化電解質フィルムの除去を含む)を実行して、電解質フィルムをパターニングする。このパターニング加工によって、ピクセルの各々の上の電解質フィルムを、分離することができる。
図22(B)に示されるように、領域又はピクセルの間の相互接続から、電解質フィルムが除去されることに留意されたい。セグメント型又は非パターニングエレクトロクロミック装置を形成するためには、パターニング加工をせずに、電解質溶液のコーティングのみを実行する。この工程は、EC装置又はディスプレイ、例えば、
図22(B)におけるパッシブマトリックスベースのEC装置又はディスプレイのための対電極を形成することで終わる。
【0071】
作用電極基材と対電極基材とを調製した後、
図20に示されるように、作用電極基材上の電解質層が、対電極基材上の電解質層と位置が揃い、接触するように、2つの基材を積層させることができる。この積層方法では、2つの電解質層同士を接触させることによってエレクトロクロミック装置を形成して、接触界面が同じ電解質によって形成されるため、EC装置の歩留まり及び性能を改善する。この方法は多くの重要な界面、例えば、導電層と電解質若しくはイオン貯蔵層との間、導電層とエレクトロクロミック層との間、又は電解質層とエレクトロクロミック層との間における、潜在的な異物混入を排除する。いくつかの実施形態では、パターニング後の2つの電解質層はゲル状に見え、これによって、単純に真空処理を用いて容易に組み立てることができる。この積層方法はまた、一様となった電解質層の形成を可能にする。
【0072】
いくつかの実施形態では、電解質フィルム/層とエレクトロクロミック層とは、同じ基材上に形成することができる。例えば、電解質フィルム/層とエレクトロクロミック層とを、両方とも第1の基材上に形成する場合、第1の基材上のエレクトロクロミック層が、第2の基材上の導電層と位置が揃い、接触するように、2つの基材を積層させる。いくつかの実施形態では、電解質フィルム/層とエレクトロクロミック層とを、両方とも第2の基材上に形成する場合、第2の基材上の電解質層が、第1の基材上の導電層と位置が揃い、接触するように、2つの基材を積層させる。
【0073】
in situパターニングによる固体電解質の局限化を使用した、パッシブマトリックスベースの全ポリマーエレクトロクロミックディスプレイについて、クロストークの最小化を実証するために、数秒間、正電圧(+1.0V)を用いてすべてのピクセルを完全な退色状態に設定した後、負電圧(-0.8V)を印加して、ある特定の行及び列の電極ラインの交点における標的ピクセルを点灯させる(有色にする)。負電圧を10秒間印加した場合、標的ピクセルのみが、明確な着色を示すが、隣接する8つのピクセルにおける明確な色変化はなく、これは、発明者らの電解質局限化パッシブマトリックスエレクトロクロミック装置において、信号クロストークが大きく低減したことを示している(
図23(A))。その一方で、電解質が局限化されていないエレクトロクロミックディスプレイにおいては、非常に深刻なクロストークが観測される。標的ピクセルを退色させるために、交差する2つの電極のみに対して消灯電圧(+1.0V)を印加したにもかかわらず、作用電極及び対電極のライン上で周囲のピクセルに影響を及ぼし、1秒でこれらを完全に退色させる。エレクトロクロミックポリマーがパターニングされたエレクトロクロミックディスプレイにおいても、重大で素早いクロストークも観測されるが、これは、クロストークが、非局限化電解質層を通じた、同じ行又は列の電極を共有するピクセルにおける望ましくない電荷移動に端を発することを示している。電解質局限化エレクトロクロミックディスプレイにおけるクロストークの抑制は、
図23(B)に示される複数ピクセルの着色プロセス及び退色プロセスにおいても確認される。1ピクセル空けた2つの標的ピクセルに10秒間、-0.8Vのバイアスをかけた場合、深刻なクロストークはなく、明確な青色を示す。
【0074】
高い双安定性も実証される。4つの標的ピクセルに30秒間隔で、退色電圧(+1.0V)を印加した場合。これらは、標的ピクセルにおける明らかな色の退色を示し、高い光メモリに起因して、開回路電位において退色の透過率を維持する。高い製造コスト、複雑な装置構造及び大きな空間を要する、アクティブマトリックス駆動のための薄膜トランジスタを使用せずに、発明者らのエレクトロクロミックディスプレイが信号を保持することは、注目に値する。いくつかの実施形態では、パッシブマトリックスベースのディスプレイは、-0.8Vの電圧を10秒間印加した場合、同様の色表示を示し、開回路電位において1000秒間変わらず、これは、ディスプレイが高い双安定性を有することを意味する。高い双安定性によって、パッシブマトリックス駆動は、ピクセル型ディスプレイ用途におけるエネルギー消費を、大幅に低減することができる。傑出した双安定性によって、優れたエネルギー節約型ディスプレイへの応用が可能になる。着色又は退色プロセスの各々についてのエネルギー消費を、パッシブマトリックスディスプレイの単一ピクセルのクロノアンペロメトリー応答における電流プロファイルから記録する。注目すべきことに、1回の色のスイッチに要するエネルギーは、わずか0.71±0.05mJcm-2である。静的コンテンツが関与するシナリオでは、コンテンツが更新されない場合、電力消費は、1000秒間にわたっておよそ0.7μWcm-2のままである。報告されているディスプレイと比較して、全ポリマーエレクトロクロミックディスプレイは、超低電力消費レベルを実証しており、低頻度の情報更新が関与する用途に特に有利である。この効率は、スイッチングプロセス及び更新プロセスの間にのみ、エネルギーが消費されるという事実に起因する。
【0075】
1つの標的ピクセル、2つの作用電極ライン共有ピクセル、2つの対電極ライン共有ピクセル、及び4つの斜めのピクセルを含む9つのピクセルについて、吸光スペクトルを定量的に記録する。静的吸光測定については、標的ピクセルに電圧を30秒間印加した後に、スペクトルを測定する。印加負電圧が-0.6Vから-1.0Vに上昇するにつれて、標的ピクセルの着色はより著しくなる。しかしながら、作用電極及び対電極ラインを共有するピクセルでは、斜めの位置とは異なり、小さな吸光の上昇を観測している。写真画像においても、小さな色の変化が確認される。小さなクロストークの起源を解明するため、非パターニングディスプレイ、エレクトロクロミックポリマーのみパターニングしたディスプレイ、及び電解質局限化エレクトロクロミックディスプレイにおいて、標的着色プロセスにおける動的吸光度変化を測定する。非パターニングエレクトロクロミックディスプレイにおける標的ピクセルに電圧を印加した場合、作用電極及び対電極ライン共有ピクセルにおける吸光強度の変化は、標的ピクセルにおける吸光度変化と比較して、1~4秒間で100%前後(Δabs)に達する。ポリマーのパターニングは、隣接するピクセルにおけるスイッチング速度をわずかに遅延させるが、これらは5秒で完全な発色及び退色状態を示す。その一方で、電解質局限化エレクトロクロミックディスプレイでは、作用電極及び対電極ライン共有ピクセルにおける動的吸光変化は、標的ピクセルにおける変化と比較して約20%で飽和し、これは、残存するクロストークが、電解質層を通じた電荷移動ではない、他の機構から発生することを示している。発明者らは、電解質パターニングディスプレイにおいて、隣接ピクセルに記録される電圧由来のクロストークの別の根源を見出している。作用電極又は対電極ラインを共有するピクセルは、標的ピクセルにバイアスを印加すると、マトリックスに関係する電極を介したピクセル間の相互作用から生じる、小さいが明確な電圧変化を示す。電気回路の設計における電圧伝達効果は、更なる電気的用途の場合、集積回路又はプリント回路基板に半導体ダイオードを導入することによって解決することができる。
【0076】
電気回路における問題は、非局限化電解質における望ましくない電荷移動と比較して相対的に小さく(約20%)、したがって、リアルタイムピクセル型画像ディスプレイが、パッシブマトリックスエレクトロクロミックディスプレイを使用して、対電極ラインに沿って標的ピクセルに電圧を順次印加することによって実証される。高度な処理チップがないことに起因して、電圧は約10秒の間隔で印加されるが、全ポリマーエレクトロクロミックディスプレイは、優れた光メモリを使用して、良好な解像度の「P」及び「U」のピクセル型文字グラフィックを呈する。エレクトロクロミックディスプレイは、クロストークが低減し、可逆的に画像が変化する、望ましいグラフィックを首尾よく実証している。大きな光メモリのために、表示されたコンテンツを維持するのに追加のエネルギー消費を要しない。全ポリマー非発光ディスプレイにおける、効率的なエネルギー消費及びピクセル型画像映写を通じて、発明者らの知見は、エネルギー節約型でオンチッププラットフォームにおける、コンパクトシースルーピクセル型ディスプレイの実現のための新たな可能性を切り拓くものである。
【0077】
いくつかの実施形態では、全ポリマーエレクトロクロミック成分のフォトリソグラフィパターニングを通じて、セグメント型グラフィック生成のための透過型ディスプレイが実現される。まず、青又はマゼンタの2種のエレクトロクロミックポリマーを、望みのグラフィック表示のための選択的UV光曝露によって、直接パターニングする。ECP-B溶液を光架橋剤とともにスピンコーティングした後、フィルムを選択的UV光に曝露し、溶液中で処理して、非架橋ポリマー層を除去する。他方のECP-Mパターンを、同じ方法を通じて現像する。ポリマー鎖が光架橋されていることによる大きな耐溶媒性に起因して、マイクロスケールにおいてさえクロストークのない、精巧なパターンを形成することができる。パターニングエレクトロクロミックディスプレイは、外因性の電位に応じた、透過性の「長く続く」グラフィックと透明な空白との間の光変調による、並外れたシースルー特性を示す。
【0078】
いくつかの実施形態では、可撓性全ポリマーECDの製作は、ポリマー導体をプラスチック基材上に堆積させることによって開始される。n-PBDFフィルムは、DMSO溶液のスピンコーティングを使用して、可撓性ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、追加の熱処理なしで容易に形成され、可撓性プラスチック基材への高い適合性が示唆される。他のエレクトロクロミック成分を、同様に剛性ECDに堆積させる。可撓性の特性評価を様々な曲げ半径で実施して、全ポリマーECDの機械的可撓性及び動作安定性を調査する。曲げ試験は、5種の曲げ半径(すなわち、4.0、2.5、2.0、1.4及び0.5cm)で実行する。初期状態を含む様々な半径の有色状態と退色状態との両方における、全ポリマーECDの吸光度スペクトルに基づいて、全ポリマーECDは、1.4cmに至るまでの様々な曲げ半径において、非常に安定な色スイッチングを示す。酸化還元反応におけるECDの過渡電流を記録することによって、異なる曲げ半径における電気化学的安定性を試験する。これらは、曲げ半径が増大するにつれて、非常に安定な、相対的に増強された過渡電流を呈する。これは、引張ひずみの増加によって装置がより薄くなること、とりわけ、電解質の厚さが変化することから発生うる。分光計のビームと検出器との間の直線状経路に、曲がった試料をセットすることは困難であるため、より小さな曲げ半径条件における光学濃度は記録できなかった。代わりに、5mmの曲げ半径を有する全ポリマー装置の写真画像に示されるように、大きく曲がった状態における色のスイッチングを実証する。これらは、小さな電気的バイアスによって、安定で可逆的な色のスイッチングを示す(着色プロセスについては-1.2V、退色プロセスについては+1.2V)。更に、曲げサイクル試験を実施して、5mmの曲げ半径における、装置の機械的安定性を調査する。曲げサイクルの前、100回後、1000回後及び10,000回後の全ポリマーECDの吸光度及び過渡電流をモニタリングする。エレクトロクロミックポリマーの酸化においては、過渡電流のわずかな低減を実証しているが、還元過渡電流、スイッチング時間、並びにECDの着色及び退色の両方における静的吸光度においては無視できる程度の変化である。この結果は明らかに、反復的且つ過酷な曲げ条件の場合でさえ、可撓性及び動作上の電気化学的安定性における全ポリマーECDの有効性を示している。
【0079】
全ポリマーECDにおける、高い光学的コントラスト、無彩色の色表現、信頼の置ける可撓性及び光パターニング性の性質等の利点を考慮しながら、ここで開発される全ポリマー系を使用して、紙状シースルーエレクトロクロミックディスプレイを注意深く製作する。実用的なグラフィック生成のために、可撓性全ポリマーエレクトロクロミックディスプレイ用の、より精巧な設計のポリマー導体とエレクトロクロミックポリマーとの両方をパターニングする。ヒトの皮膚に取り付けられた全ポリマーディスプレイの一例は、透明n-PBDF導体層上に、設計された、透過性エレクトロクロミックポリマーのグラフィックを呈する。更に、
図24に図示されるように、すべての数字を表すための2つの7セグメントディスプレイ、並びに他に「ハート」、アルファベット及び「1」のグラフィックディスプレイを動作させるために、プラスチック基材上に、15個のPBDF導体及び接触ラインをまず堆積させ、従来のフォトリソグラフィを使用してパターニングする。パターニングされたn-PBDF導体ライン上に、2色のECPを堆積させ、選択的UV光によって直接的にパターニングする。共通カソードとして、他方のPET基材上にn-PBDFを堆積させ、電解質前駆体溶液を滴下したアノード基材にかぶせた後、電解質の架橋のためにUV光を照射する。エレクトロクロミックグラフィックは、特定用途向けマルチピクセル型マルチチャンネル制御装置を使用して、n-PBDF接触ラインと共通カソードとを通じた電力供給によって、デジタルで駆動される。全ポリマーエレクトロクロミックディスプレイは、セグメントの選択的駆動によって異なる「数字」及びグラフィックを首尾よく表し、酸化還元反応を通じて数秒で更新することができる。実用上の応用可能性を実証するために、全ポリマープラットフォームの特質を使用して、時計バンド上、及びリング状構造を用いてヒトの皮膚上で可撓性シースルーディスプレイを利用する(
図25(A)~
図25(B))。信頼の置ける可撓性及び堅牢な電気化学的安定性によって、全ポリマーディスプレイは、曲げ条件において、1.5cmの曲げ半径を有するリング状構造を使用してヒトの指上でさえ、良好な解像度のリアルタイム透過型グラフィック表示を呈する。透明/容量性n型導体を使用した可撓性全ポリマー電子機器は、複合系において更に開発された次世代光電子機器に有用であると期待される。
【0080】
容量性透明有機導体として、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーを採用することは、可撓性エレクトロクロミックディスプレイを製作するための新規戦略を表し、他の電気化学的装置の開発を前進させることが期待される。開示されるn-ドープ有機導電性は、電気化学的電位窓の範囲において、高い光透過率及び色変化が最小限の透過性を保持しながら、高い導電特性及び容量特性を呈し、エレクトロクロミック装置の対電極として透明導体及びイオン貯蔵材料として同時に、並びに装置の透明作用電極及び電気的相互接続として、両方の役割を果たす。加えて、低い還元電位では、電位窓がp型エレクトロクロミックポリマーに良好に調和することによって、周囲条件における動作が安定となる。ECP及び固体電解質におけるin situフォトリソグラフィパターニングによって、セグメント型用途とピクセル型用途との両方について、明確なクロストークがない、パターニングされた装置(例えば全ポリマーディスプレイ)を現像することができる。これらのフォトパターニング性エレクトロクロミック成分は、非常に透明であり、優れた屋外での可読性、及び発光型でない目に優しいモード、及び並外れたエネルギー節約能力を有するシースルーディスプレイ用途をもたらす。加えて、エレクトロクロミック装置は、イオン液体によって形成される堅牢で高密度のEDLであるため、優れた双安定性(例えば光メモリ)を呈する。発明者らの結果は、全ポリマープラットフォームを通じた、生体親和性がある可撓性光電子機器のための、商業的に実行可能な実用的解決策としての役割を果たしうる、透明な、導電性ポリマー導体、及び光パターニング性エレクトロクロミック成分への上首尾なアプローチを実証している。
【0081】
ここで、
図26を参照する。
図26は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法260のフローチャートである。2602において、第1の基材上に第1の導電層を形成する。第1の導電層は、n-PBDFフィルムを含む、上記n-ドープ有機導電性ポリマー、又は他の好適な導電性フィルム、例えばITOであってもよい。基材は、剛性(例えば、ガラス、金属等)であっても、可撓性(例えばプラスチック)であってもよい。基材は、透明であっても、半透明であっても、反射性であってもよい。2604において、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する。第1の電解質層は、固体電解質、ゲル状固体電解質又はゲル電解質でありうる。2606において、第2の基材上に第2の導電層を形成する。第2の導電層は、第1の導電層と同じであっても、異なってもよい。第2の基材は、第1の基材と同じであっても、異なってもよい。2608において、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する。2610において、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する。いくつかの実施形態では、第2の電解質層は、第1の電解質と同じ材料を含んでも、異なる材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2の電解質層は、第1の電解質の厚さと同じ厚さを有しても、異なる厚さを有してもよい。2612において、第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させて、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成する。いくつかの実施形態では、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程は、基材の一方又は両方に対して、少なくとも1種のシーラントを辺縁に塗布することを含む。開示される技法は、2つの電解質層同士を接触させることによってエレクトロクロミック装置を形成して、接触界面が同じ電解質によって形成されるため、EC装置の歩留まり及び性能を改善することができる。この方法は多くの重要な界面、例えば、導電層と電解質若しくはイオン貯蔵層との間、導電層とエレクトロクロミック層との間、又は電解質層とエレクトロクロミック層との間における、潜在的な異物混入を排除する。いくつかの実施形態では、パターニング後の2つの電解質層はゲル状に見え、これによって、容易に組み立てることができる。
【0082】
図27は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法270のフローチャートである。操作2602、2604、2606及び2612は、
図26に関して説明したものと同じであり、簡潔にするために更には記載しない。2606に続いて、2614において、第2の導電層をパターニングして、第2の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第2の導電層をパターニングする工程は、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続も形成する。第2の領域同士は、第2の電気的相互接続の箇所を除いて、互いに分離していてもよい。次いで、
図26の操作2608に示される、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程は、2608aにおいて、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程を含んでもよい。エレクトロクロミックフィルム同士は、互いに分離している。操作2608aに続いて、
図26の操作2610に示される、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、2610aにおいて、エレクトロクロミックフィルム及び/若しくは第2の電気的相互接続の各々の上に、並びに/又は隣接する第2の領域同士の間の間隙に、第2の電解質層を形成する工程を含んでもよい。
【0083】
図28は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法280のフローチャートである。操作2602、2606、2614及び2608aは、
図27に関して説明したものと同じであり、簡潔にするために更には記載しない。操作2602に続いて、2616において、第1の導電層をパターニングして、第1の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層をパターニングする工程は、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続を形成する。第1の領域同士は、第1の電気的相互接続の箇所を除いて、互いに分離していてもよい。次いで、
図27の操作2604に示される、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程は、2604aにおいて、第1の電解質層をパターニングして、第1の領域の各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程を含んでもよい。第1の電解質フィルム同士は、互いに分離している。操作2608aに続いて、
図26の操作2610に示される、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、2610bにおいて、第2の電解質層をパターニングして、エレクトロクロミック層の各々の上に第2の電解質フィルムを形成する工程を含んでもよい。第2の電解質フィルム同士は、互いに分離している。
図26の操作2612に示される、第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程は、2612aにおいて、第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の電解質フィルムは、第2の電解質フィルムと位置が揃っている。第1の電解質フィルムが、対応する第2の電解質フィルムのみと接触し、この第2の電解質フィルムが隣接する第2の電解質フィルムと接触しないように、第1の電解質フィルムは、第2の電解質フィルムと一対一で位置が揃っていてもよい。
【0084】
図29は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法290のフローチャートである。操作2602、2604、2606、2608、2610及び2612は、
図26に関して説明したものと同じであり、簡潔にするために更には記載しない。操作2602と2604との間に、方法290は、操作2618において、第1の導電層上にイオン貯蔵層を形成する工程を更に含む。したがって、操作2604における、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程は、実際上、イオン貯蔵層上に第1の電解質層を形成する工程となる。すなわち、操作2618によって、第1の導電層と第1の電解質層との間にイオン貯蔵層を形成することができる。
【0085】
図30は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法300のフローチャートである。操作2602、2604、2606、2612及び2618は、
図30に関して説明したものと同じであり、簡潔にするために更には記載しない。2606に続いて、2614において、第2の導電層をパターニングして、第2の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第2の導電層をパターニングする工程は、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続も形成する。第2の領域同士は、第2の電気的相互接続の箇所を除いて、互いに分離していてもよい。次いで、
図26の操作2608に示される、第2の導電層上にエレクトロクロミック層を形成する工程は、2608aにおいて、エレクトロクロミック層をパターニングして、第2の領域の各々の上にエレクトロクロミックフィルムを形成する工程を含んでもよい。エレクトロクロミックフィルム同士は、互いに分離している。操作2608aに続いて、
図26の操作2610に示される、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、2610aにおいて、エレクトロクロミックフィルム及び/若しくは第2の電気的相互接続の各々の上に、並びに/又は隣接する第2の領域同士の間の間隙に、第2の電解質層を形成する工程を含んでもよい。
【0086】
図31は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法310のフローチャートである。操作2602、2606、2614及び2608aは、
図30に関して説明したものと同じであり、簡潔にするために更には記載しない。操作2602に続いて、2616において、第1の導電層をパターニングして、第1の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層をパターニングする工程は、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続も形成する。第1の領域同士は、第1の電気的相互接続の箇所を除いて、互いに分離していてもよい。次いで、
図30の操作2618に示される、第1の導電層上にイオン貯蔵層を形成する工程は、2618aにおいて、イオン貯蔵層をパターニングして、第1の領域の各々の上にイオン貯蔵フィルムを形成する工程を含んでもよい。イオン貯蔵フィルム同士は、互いに分離している。次いで、
図30の操作2604に示される、第1の導電層上に第1の電解質層を形成する工程は、2604aにおいて、第1の電解質層をパターニングして、第1の領域の各々の上に第1の電解質フィルムを形成する工程を含んでもよい。第1の電解質フィルム同士は、互いに分離している。操作2608aに続いて、
図26の操作2610に示される、エレクトロクロミック層上に第2の電解質層を形成する工程は、2610bにおいて、第2の電解質層をパターニングして、エレクトロクロミック層の各々の上に第2の電解質フィルムを形成する工程を含んでもよい。第2の電解質フィルム同士は、互いに分離している。
図26の操作2612に示される、第1の電解質層が第2の電解質層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程は、2612aにおいて、第1の電解質フィルムが第2の電解質フィルムと接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の電解質フィルムは、第2の電解質フィルムと位置が揃っている。第1の電解質フィルムが、対応する第2の電解質フィルムのみと接触し、この第2の電解質フィルムが隣接する第2の電解質フィルムと接触しないように、第1の電解質フィルムは、第2の電解質フィルムと一対一で位置が揃っていてもよい。
【0087】
図32は、1つの例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法320のフローチャートである。3202において、第1の基材上に第1の導電層をコーティングする。第1の導電層は、n-PBDFフィルム又は他の好適な導電性フィルム、例えばITOを含む、上記n-ドープ有機導電性ポリマーであってもよい。基材は、剛性(例えば、ガラス、金属等)であっても、可撓性(例えばプラスチック)であってもよい。基材は、透明であっても、半透明であっても、反射性であってもよい。3204において、第1の導電層をパターニングして、第1の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層をパターニングする工程は、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続も形成する。3206において、第2の基材上に第2の導電層をコーティングする。第2の導電層は、第1の導電層と同じであっても、異なってもよい。第2の基材は、第1の基材と同じであっても、異なってもよい。3208において、第2の導電層をパターニングして、第2の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第2の導電層をパターニングする工程は、隣接する第2の領域同士の間の第2の電気的相互接続も形成する。方法320は、次いで、操作3210又は3212に分岐する。3210において、この方法は、以下の操作:第1の領域の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;電解質層の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;及びエレクトロクロミック層が第2の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程。3212において、この方法は、以下の操作を含む:第2の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層の各々の上に電解質層を形成する工程であって、電解質層同士が互いに分離している、工程;及び電解質層が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、を含む。
【0088】
図33は、別の例示的実施形態による、エレクトロクロミック装置/ディスプレイを形成するための方法330のフローチャートである。3302において、第1の基材上に第1の導電層をコーティングする。第1の導電層は、上記n-ドープ有機導電性ポリマーであってもよく、これには、n-PBDFフィルム又は他の好適な導電性フィルム、例えばITOを含む、上記n-ドープ有機導電性ポリマーを含む。基材は、剛性(例えば、ガラス、金属等)であっても、可撓性(例えばプラスチック)であってもよい。基材は、透明であっても、半透明であっても、反射性であってもよい。3304において、第1の導電層をパターニングして、第1の領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の導電層をパターニングする工程は、隣接する第1の領域同士の間の第1の電気的相互接続も形成する。3306において、第2の基材上に第2の導電層をコーティングする。第2の導電層は、第1の導電層と同じであっても、異なってもよい。第2の基材は、第1の基材と同じであっても、異なってもよい。方法330は、次いで、操作3308又は3310に分岐する。3308において、この方法は、以下の操作:第1の領域の各々の上にエレクトロクロミック層を形成する工程であって、エレクトロクロミック層同士が互いに分離している、工程;エレクトロクロミック層上に電解質層を形成する工程;及び電解質層が第2の導電層と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程。3310において、この方法は、以下の操作を含む:第2の導電層上に電解質層を形成する工程;電解質層上にエレクトロクロミック層を形成する工程;エレクトロクロミック層をパターニングして、電解質層上に複数のエレクトロクロミック層領域を形成する工程;及びエレクトロクロミック層領域が第1の領域と接触するように、第1の基材と第2の基材とを積層させる工程、を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、上記パターニング操作の1つ又はすべてを、フォトリソグラフィ又は印刷法(例えばインクプリンティング)によって実行する。
【0090】
開示される電気化学装置は、透明導体、及び/又はイオン貯蔵層、及び/又は電子回路における電気的相互接続としての役割を果たす、開示されるn-ドープ有機導電性ポリマーを含む。開示されるエレクトロクロミック装置は、エネルギー貯蔵装置、生体電子工学、バイオセンサ、及び光電子装置を含む群から選択される。
【0091】
上述の本開示の記載は、例証及び説明のために提供されている。本開示は、網羅的であること、又は厳密な開示された形態に限定することを意図するものではない。本開示の幅広さ及び範囲は、上記の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。当業者には、多くの修正及び変形が明らかであろう。修正及び変形としては、本開示の特質の任意の関連する組合せが挙げられる。実施形態は、本開示の原理及びその実践的な応用を最も良好に説明するために選択及び記載されており、これによって、当業者は、様々な実施形態について、及び企図される特定の使用に好適な様々な修正によって、本開示を理解することができる。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって定義されることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
100 エレクトロクロミック装置
102 第1の絶縁性基材
104 第1の導電層
106 イオン貯蔵層
108 電解質層
110 エレクトロクロミック層
112 第2の導電層
114 第2の絶縁性基材
116 回路配線
CE 対電極
RE 参照電極
WE 作用電極
600 エレクトロクロミック装置
602 第1の絶縁性基材
604 第1の導電層
606 イオン貯蔵層
608 電解質層
610 エレクトロクロミック層
612 第2の導電層
614 第2の絶縁性基材
616 回路配線
800 エレクトロクロミック装置
802 第1の絶縁性基材
804 n-ドープ有機導電性ポリマーを含む層
806 電解質層
808 エレクトロクロミック層
810 導電層
812 第2の絶縁性基材
814 回路配線
1300 エレクトロクロミック装置
1302 第1の絶縁性基材
1304 第1の導電層
1306 第1のエレクトロクロミック層
1308 電解質層
1310 第2のエレクトロクロミック層
1312 第2の導電層
1314 第2の絶縁性基材
1316 回路配線
【外国語明細書】