(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103484
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B60W 50/04 20060101AFI20240725BHJP
G01S 7/497 20060101ALN20240725BHJP
G01S 17/86 20200101ALN20240725BHJP
【FI】
B60W50/04
G01S7/497
G01S17/86
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052942
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2019155405の分割
【原出願日】2019-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】細井 研一郎
(57)【要約】
【課題】故障発生時においても情報を好適に生成することが可能な情報処理装置、制御方法、プログラム及びプログラムを記憶した記憶媒体を提供する。
【解決手段】制御部13の演算ブロック17は、互いに異なる測定対象の測定物理量を測定する複数のセンサ(検出部)のそれぞれにより測定された測定物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1の測定情報と、第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2の測定情報とを生成する。そして、制御部13の異常判定ブロック18は、測定物理量の個々の異常を検出する。制御部13の出力制御ブロック19は、第1の測定情報と第2の測定情報とのうち、異常判定ブロック18が異常を検出した測定物理量を測定したセンサ(検出部)が測定する測定物理量を必須とする測定情報の出力を制限する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成手段と、
前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、
前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限手段と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定された情報の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、故障の発生時に対応可能なシステムが知られている。例えば、特許文献1には、複数のセンサを用いて車両の自動運転制御に関する操作量(メイン操作量)を演算するメインECUと、メインECUよりも少数のセンサを用いて自動運転制御に関する操作量(サブ操作量)を演算するサブECUとを備え、メインECUおよびサブECUの故障検出結果に基づき、メイン操作量またはサブ操作量のいずれか選択して車両の自動運転制御を行う自動運転制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自動運転制御装置では、2系統のシステムが必要となり、さらにメインECUとサブECUとで共通して使用されるセンサが1つでも故障した場合には一切機能しなくなるという問題があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、故障発生時においても情報を好適に生成することが可能な情報処理装置、制御方法、プログラム及びプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量の組合せに基づいて、複数の情報を生成する生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記複数の情報のうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を含む組合せに基づいて生成される情報を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された情報の出力を制限する制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、情報処理装置が実行する制御方法であって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成工程と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出工程と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出工程で異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、プログラムであって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係る運転支援システムの概略構成を示す。
【
図2】基準反射体と窓部を正面から観察した図である。
【
図4】実施例において制御部が実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態では、情報処理装置は、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限手段と、を備える。この態様によれば、情報処理装置は、異なる物理量の組み合わせで生成される第1情報と第2情報とのうち、異常と判定された物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する。これにより、情報処理装置は、故障の発生時において、出力すべき情報のうち一部の不正確となる情報の出力を制限することができる。
【0012】
上記情報処理装置の一態様では、前記制限手段は、前記物理量を必須とする情報について、前記情報生成手段による生成を禁止する。この態様により、情報処理装置は、不正確となる情報の出力を好適に制限することができる。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記制限手段は、前記物理量を必須とする情報の出力を停止し、前記物理量を必須としない情報の出力を継続する。この態様により、情報処理装置は、一部のセンサ等に故障が発生した場合であっても、正確さが維持できる情報については出力を続けることができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記制限手段は、前記物理量を必須とする情報に対し、信頼性に関するフラグ情報を付加して出力する。この態様により、情報処理装置は、不正確となる情報を出力先の装置又は処理ブロックが好適に識別できる態様により出力することができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記制限手段は、前記物理量を必須とする情報に関する警告を出力する。この態様により、情報処理装置は、不正確となる情報の存在を好適にユーザに認識させて、検査や修理等を促すことができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記物理量測定手段は、測域センサに設けられ、前記物理量は、前記測域センサにおいて光が射出される角度を制御するスキャナの角度、前記光の強度、前記光の戻り光の強度、又は前記光が射出されてから前記戻り光を受信するまでの時間のいずれかを含む。情報処理装置は、これらの物理量を測定する測域センサの異常発生時の出力を好適に制御することができる。好適な例では、前記第1情報と前記第2情報は、それぞれ、前記光が照射された物体の方向を示す情報、前記物体の位置情報、前記物体が再帰性反射材であるか否かを示す情報、前記物体の反射率を示す情報のいずれかである。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、情報処理装置は、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量の組合せに基づいて、複数の情報を生成する生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記複数の情報のうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を含む組合せに基づいて生成される情報を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された情報の出力を制限する制限手段と、を備える。この態様によれば、情報処理装置は、故障の発生時において、出力すべき情報のうち一部の不正確となる情報の出力を制限することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態では、情報処理装置が実行する制御方法であって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成工程と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出工程と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出工程で異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限工程と、を有する。情報処理装置は、この制御方法を実行することで、故障の発生時において、出力すべき情報のうち一部の不正確となる情報の出力を制限することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータが実行するプログラムであって、互いに異なる測定対象の物理量を測定する複数の物理量測定手段のそれぞれにより測定された物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1情報と、前記第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2情報とを生成する情報生成手段と、前記物理量の個々の異常を検出する異常検出手段と、前記第1情報と前記第2情報とのうち、前記異常検出手段が異常を検出した物理量を測定した物理量測定手段が測定する物理量を必須とする情報の出力を制限する制限手段としてコンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、故障の発生時において、出力すべき情報のうち一部の不正確となる情報の出力を制限することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
[装置構成]
図1は、本実施例に係る運転支援システムの概略構成を示す。運転支援システムは、自動運転を行う車両に搭載されるシステムであって、主に、測域センサであるライダ100と、運転支援装置150と、表示装置200とを有する。
ライダ100は、電磁波である光ビーム(「投射光」とも呼ぶ。)を投射し、当該投射光が物体に反射されて戻った光(「戻り光」とも呼ぶ。)を受光することで、投射光が照射された物体までの距離などを測定する。ライダ100は、測定により得られた測定情報「S10」を、運転支援装置150へ供給する。また、ライダ100は、故障が発生した際の警告を表示するための表示情報「S11」を、表示装置200へ供給する。ライダ100は、本発明における「情報処理装置」の一例である。
【0022】
運転支援装置150は、ライダ100から供給される測定情報S10に基づき、車両の自動運転などの運転支援に関する制御を行う。運転支援装置150は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)又は車両と電気的に接続した車載装置などである。
【0023】
表示装置200は、ライダ100から供給される表示情報S11に基づき所定の表示を行うディスプレイやプロジェクタ等である。また、表示装置200は、車両と接続するディスプレイ(ナビゲーション装置又は携帯端末を含む)であってもよい。また、表示装置200は、運転支援装置150と同一装置として構成されてもよい。
【0024】
次に、ライダ100の構成について、引き続き
図1を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、ライダ100は、主に、送信部1と、受信部2と、ビームスプリッタ3と、送信強度検出部4と、スキャナ5と、ピエゾセンサ6と、基準反射体7と、窓部8と、飛行時間検出部9と、メモリ11と、制御部13と、を有する。
【0026】
送信部1は、パルス状の投射光をビームスプリッタ3に向けて出射する光源である。送信部1は、例えば、赤外線レーザ発光素子を含む。送信部1は、制御部13から供給される駆動信号「S1」に基づき駆動される。
【0027】
受信部2は、例えばアバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode)であり、受光した光量に対応する検出信号「S2」を生成し、生成した検出信号S2を制御部13及び飛行時間検出部9へ供給する。
【0028】
ビームスプリッタ3は、送信部1から射出されるパルス状の投射光の大部分を透過し、一部を送信強度検出部4に向けて反射する。また、ビームスプリッタ3は、スキャナ5によって反射された戻り光を、受信部2に向けて反射する。
【0029】
送信強度検出部4は、送信部1から射出される投射光の発光強度を検出する。送信強度検出部4は、例えば、アバランシェフォトダイオードである。送信強度検出部4は、生成した検出信号「S3」を、制御部13へ供給する。
【0030】
スキャナ5は、例えば静電駆動方式のミラー(MEMSミラー)であり、制御部13から供給される駆動信号「S4」に基づき、傾き(即ち光走査の角度)が所定の範囲内で変化する。そして、スキャナ5は、ビームスプリッタ3を透過した投射光を基準反射体7又は窓部8へ向けて反射すると共に、基準反射体7又は窓部8から入射する戻り光をビームスプリッタ3へ向けて反射する。
【0031】
また、スキャナ5には、ピエゾセンサ6が設けられている。ピエゾセンサ6は、スキャナ5のミラー部を支持するトーションバーの応力により生じる歪みを検出する。ピエゾセンサ6は、生成した検出信号「S5」を、制御部13へ供給する。検出信号S5は、スキャナ5の向きの検出に用いられる。なお、ピエゾセンサ6に代えて、スキャナ5には、スキャナ5の向きを検出可能な任意のセンサが設けられてもよい。
【0032】
基準反射体7は、スキャナ5により光が走査される範囲内に配置され、送信部1が射出する投射光の波長(例えば赤外線波長)に対して所定の反射率により光を反射する。基準反射体7は、例えば、入射する投射光の大部分を吸収し、一部を反射する。基準反射体7により反射される光は、受信光の強度の異常検出のために用いられる。窓部8は、スキャナ5が反射した投射光を透過する。送信部1が赤外線の投射光を射出する場合には、窓部8は、赤外線波長の光を透過するように構成される。
【0033】
ここで、基準反射体7と窓部8の配置例について
図2を参照して説明する。
図2は、基準反射体7と窓部8を正面から観察した図である。
図2では、基準反射体7及び窓部8と重なる2次元平面上において、スキャナ5が投射光により走査する軌道が実線により明示されている。
図2に示すように、基準反射体7及び窓部8は、スキャナ5による投射光の走査範囲内に設けられている。また、基準反射体7は、窓部8に隣接し、かつ、投射光の走査範囲の側端に設けられている。このような配置によれば、基準反射体7は、ライダ100による計測範囲を実質的に狭めることなく、投射光を反射することができる。
【0034】
再び
図1に戻り、ライダ100の各構成要素について説明する。
【0035】
飛行時間検出部9は、受信部2から検出信号S2を受信すると共に、送信強度検出部4から検出信号S3を受信する。そして、飛行時間検出部9は、送信強度検出部4が投射光を検出してから、受信部2が戻り光を検出するまでの時間を、光の飛行時間(Time of Flight)として検出する。そして、飛行時間検出部9は、検出した飛行時間を示す検出信号「S6」を、制御部13へ供給する。なお、飛行時間検出部9は、制御部13の一部として構成されてもよい。
【0036】
メモリ11は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの各種のメモリにより構成される。メモリ11は、制御部13が所定の処理を実行するために必要なプログラムを不揮発的に記憶する。また、メモリ11は、制御部13により参照される判定テーブルTdを記憶している。判定テーブルTdの詳細については後述する。
【0037】
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサである。制御部13は、メモリ11に記憶されたプログラムを実行することで、所定の処理を実行する。制御部13は、機能的には、送信駆動ブロック15と、スキャナ駆動ブロック16と、演算ブロック17と、異常判定ブロック18と、出力制御ブロック19と、を含んでいる。
【0038】
送信駆動ブロック15は、送信部1を駆動する駆動信号S1を出力する。駆動信号S1は、送信部1に含まれるレーザ発光素子の発光時間と、当該レーザ発光素子の発光強度を制御するための情報を含む。送信駆動ブロック15は、駆動信号S1に基づき、送信強度検出部4から供給される検出信号S3が示す受光強度が所定の設定値となるように、送信部1に含まれるレーザ発光素子の発光強度を制御する。
【0039】
スキャナ駆動ブロック16は、スキャナ5を駆動するための駆動信号S4を出力する。この駆動信号S4は、スキャナ5の共振周波数に対応する水平駆動信号と、垂直走査するための垂直駆動信号と、を含む。またピエゾセンサ6から出力される検出信号S5を監視することで、スキャナ5の走査角度(すなわち投射光の投射方向)を検出する。
【0040】
演算ブロック17は、ライダ100の各構成要素から受信する検出信号に基づき、複数の測定対象に対して測定した物理量(「測定物理量」とも呼ぶ。)を取得する。そして、演算ブロック17は、取得した各測定物理量に基づき、ライダ100の周辺に存在する物体に関する測定情報を生成する。
【0041】
まず、演算ブロック17が測定情報の生成に用いる測定物理量について説明する。演算ブロック17は、受信部2から供給される検出信号S2に基づき、戻り光の光量(「受信光強度」とも呼ぶ。)を算出する。また、演算ブロック17は、送信強度検出部4から供給される検出信号S3に基づき、投射光の光量(「送信光強度」とも呼ぶ。)を算出する。また、演算ブロック17は、ピエゾセンサ6から供給される検出信号S5に基づき、スキャナ5のミラー部の向き(「スキャナ角度」とも呼ぶ。)を算出する。さらに、演算ブロック17は、飛行時間検出部9から供給される検出信号S6に基づき、飛行時間を算出する。
【0042】
次に、演算ブロック17が各測定物理量に基づき求める測定情報の具体例について説明する。測定情報は、複数の測定物理量の組み合わせから導出される情報であり、導出に用いられる測定物理量の組み合わせは、導出する測定情報毎に異なる。測定情報は、例えば、測定対象となる物体が存在する方向に関する情報(「物体方向情報」とも呼ぶ。)、測定対象となる物体の位置に関する情報(「物体位置情報」とも呼ぶ。)、測定対象となる物体が再帰性反射材(リフレクタ)であるか否かを示す情報(「リフレクタ検出情報」とも呼ぶ。)、測定対象となる物体の反射率を示す情報(「物体反射率情報」とも呼ぶ。)である。リフレクタは、車両に付属するリフレクタであってもよく、再帰性反射材により構成される道路標識であってもよい。これらの測定情報は、本発明における「第1情報」及び「第2情報」の一例である。
【0043】
異常判定ブロック18は、各測定物理量の異常判定を行う。例えば、異常判定ブロック18は、所定の適正値の範囲から外れた送信光強度が測定された場合、送信光強度に異常があると判定する。上述の適正値の範囲は、例えばメモリ11等に予め記憶されている。送信光強度に異常が発生する原因は、例えば、送信部1を構成するレーザダイオード(LD)若しくはLD駆動回路の異常、又は、送信強度検出部4を構成するフォトディテクタ若しくはその周辺回路の異常などが挙げられる。
【0044】
他の例では、異常判定ブロック18は、スキャナ5が基準反射体7上を投射光により走査するタイミング(即ち、予め設定された範囲内の電圧値をピエゾセンサ6が出力しているタイミング)において、所定の適正値の範囲から外れた受信光強度が測定された場合、受信光強度に異常があると判定する。上述の適正値の範囲は、例えばメモリ11等に予め記憶されている。受信光強度に異常が発生する原因は、例えば、受信部2を構成するアバランシェフォトダイオード若しくはその周辺回路の異常などが挙げられる。
【0045】
さらに別の例では、異常判定ブロック18は、スキャナ5が基準反射体7上を投射光により走査するタイミングにおいて、所定の適正値の範囲から外れた飛行時間が測定された場合、測定された飛行時間に異常があると判定する。上述の適正値の範囲は、例えばメモリ11等に予め記憶されている。飛行時間に異常が発生する原因は、例えば、送信強度検出部4の異常、又は、受信部2の回路異常(出力波形の歪み又はノイズ悪化等)が挙げられる。
【0046】
出力制御ブロック19は、演算ブロック17が算出した測定情報を、測定情報S10として運転支援装置150に出力する。この場合、出力制御ブロック19は、異常判定ブロック18が異常と判定した測定物理量(詳しくは、当該測定物理量を測定したセンサが測定する測定物理量)を必須とする測定情報(「異常測定情報」とも呼ぶ。)の出力を制限し、その他の測定情報の出力を継続する。後述するように、出力制御ブロック19は、異常測定情報を、判定テーブルTdを参照することで特定する。
【0047】
本実施例では、異常測定情報の出力を制限する一態様として、出力制御ブロック19は、演算ブロック17による異常測定情報の演算を禁止させることで、特定した異常測定情報を出力しないようにする。また、この場合、出力制御ブロック19は、表示装置200に対し、異常測定情報に関する使用ができない旨の警告画面を表示するための表示情報S11を生成し、生成した表示情報S11を表示装置200に供給する。
【0048】
制御部13は、本発明における「情報生成手段」、「異常検出手段」、「制限手段」及びプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0049】
[判定テーブル]
判定テーブルTdは、演算ブロック17が算出する各測定情報の生成に必須な(言い換えると、測定情報の精度を維持するために正確さが要求される)測定物理量の種類を示す情報である。判定テーブルTdは、異常測定情報を特定するために出力制御ブロック19により参照される。
【0050】
図3は、判定テーブルTdの一例を示す。
図3に示す判定テーブルTdは、ライダ100において測定される測定物理量と、当該測定物理量を用いて生成される測定情報との依存関係を示している。
図3では、測定情報の精度維持に正確さが要求される(即ち測定情報の生成に必須な)測定物理量の場合には、当該測定情報との対応部分に「〇」が記され、誤差があっても測定情報の精度維持への影響が低い(即ち測定情報の生成に必須でない)測定物理量の場合には、当該測定情報との対応部分に「△」が記されている。ここで、「精度維持」とは、必ずしも同一精度となる必要はなく、精度が低下しても所定の許容範囲内に精度が保たれる場合も含むものとする。
【0051】
図3に示すような判定テーブルTdを参照することで、出力制御ブロック19は、異常判定ブロック18がいずれかの測定物理量の異常を検知した場合に、異常測定情報を好適に特定することができる。具体的には、出力制御ブロック19は、異常がある測定物理量に対し、判定テーブルTdにおいて「〇」となる測定情報を、異常測定情報として特定することができる。
【0052】
ここで、判定テーブルTdが示す測定物理量と測定情報との精度の依存関係について補足説明する。
【0053】
例えば、精度の低下なく物体位置情報を導出するためには、スキャナ角度と飛行時間(即ち物体までの距離)が正確である必要がある。一方、物体方向情報を導出するには、走査中の方向の特定に必要なスキャナ角度が判り、かつ、閾値以上の受光強度が検出できれば良いから、飛行時間の精度が低下していても問題がない。また、一般的な物体については、投射光が物体で反射してライダ100に戻る光量は物体までの距離の二乗に反比例する。よって、物体反射率情報を精度よく導出するには、送信光強度と受信光強度と飛行時間が正確である必要がある。一方、再帰反射材により構成されたリフレクタについては、一般に、反射光が光源の方向へ戻るため、物体までの距離に依存する受信光の光量の損失が抑制される。よって、リフレクタ検出情報については、飛行時間(即ち物体までの距離)が不正確であっても、所定の送信光量に対応する受信光量が所定の閾値を超えるか否かを判定することで、好適に生成される。
【0054】
[処理フロー]
図4は、本実施例において制御部13が実行するフローチャートの一例である。
図4に示すフローチャートでは、一例として、制御部13は、異常測定情報を特定した場合に、その異常測定情報の生成を禁止すると共に、所定の警告を出力する。制御部13は、
図4に示すフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0055】
まず、制御部13の異常判定ブロック18は、ライダ100内の各センサから供給される検出信号に基づき、各測定物理量を取得する(ステップS11)。例えば、異常判定ブロック18は、検出信号S2、検出信号S3、検出信号S5、及び検出信号S6に基づき、受信光強度、送信光強度、スキャナ角度及び飛行時間を夫々取得する。
【0056】
次に、異常判定ブロック18は、ステップS11で取得した各測定物理量の異常の有無を判定する(ステップS12)。例えば、異常判定ブロック18は、測定物理量毎に設定される適正値の範囲から外れる測定物理量が存在するか否か判定する。そして、ステップS11で取得した各測定物理量に異常がない場合(ステップS12;No)、即ち、各測定物理量が夫々の適正値の範囲内である場合、演算ブロック17は、各測定物理量を用いて全ての測定情報を算出する(ステップS17)。そして、出力制御ブロック19は、演算ブロック17が算出した各測定情報を、測定情報S10として、運転支援装置150に出力する。この場合、運転支援装置150は、ライダ100から供給された測定情報S10に基づき、自動運転などの運転支援制御を行う。
【0057】
一方、ステップS11で取得したいずれかの測定物理量に異常がある場合(ステップS12;Yes)、出力制御ブロック19は、判定テーブルTdを参照することで、異常測定情報を特定する(ステップS13)。この場合、出力制御ブロック19は、異常がある測定物理量(詳しくは、異常がある測定物理量を測定したセンサが測定する測定物理量)を必須とする測定情報を、異常測定情報として特定する。そして、この場合、出力制御ブロック19は、演算ブロック17による異常測定情報の生成を禁止する(ステップS14)。
【0058】
そして、演算ブロック17は、異常測定情報以外の測定情報を生成し、出力制御ブロック19は、生成された測定情報を測定情報S10として運転支援装置150に出力する(ステップS15)。このとき、運転支援装置150は、ライダ100以外の他の外界センサの出力から異常測定情報と同様の情報を取得して自動運転を継続してもよく、ライダ100から供給された一部の測定情報に基づき限定的な自動運転(部分的な自動運転)を行ってもよい。
【0059】
そして、出力制御ブロック19は、異常測定情報が利用できない旨を示した警告画面を、表示装置200に出力する(ステップS16)。この場合、出力制御ブロック19は、自動運転が終了又は自動運転の機能が限定される場合には、その旨の警告についても表示装置200に出力してもよい。
【0060】
ここで、ステップS16の警告の出力の具体例について、
図5を参照して説明する。
【0061】
図5は、ステップS16において表示装置200が表示する警告画面の一例である。表示装置200は、制御部13の出力制御ブロック19が生成する表示情報S11に基づき、
図5に示す警告画面を表示している。
【0062】
この場合、出力制御ブロック19は、異常判定ブロック18が所定の測定物理量の異常を検知したことから、当該測定物理量を必須とする異常測定情報の使用ができない旨の警告を示す警告画面を表示装置200に表示させている。ここでは、送信光強度に異常があるとの異常判定ブロック18の判定結果に基づき、出力制御ブロック19は、判定テーブルTdを参照し、送信光強度を必須とするリフレクタ検出情報及び物体反射率情報が利用できないと判定する。よって、出力制御ブロック19は、物体反射率情報に対応する「周辺物体の反射率」、リフレクタ検出情報に対応する「道路標識」及び「周辺車両のリフレクタ」について、ライダ100により検出できない旨を表示装置200に表示させている。
【0063】
さらに、出力制御ブロック19は、自動運転に必要な道路標識の認識等ができないことから、自動運転を強制終了する旨、及び、販売店に連絡すべき旨を表示装置200に表示させる。この場合、出力制御ブロック19は、例えば、自動運転に必須な測定情報の種類を示す情報をメモリ11等に記憶しておき、当該情報を参照することで、自動運転を継続可能か否か判定する。そして、出力制御ブロック19は、自動運転を継続できないと判定した場合に、自動運転を強制終了する旨、及び、販売店に連絡すべき旨の警告を表示装置200に表示させる。また、出力制御ブロック19は、自動運転の自動化レベルを下げて自動運転を継続する場合には、自動運転の自動化レベルを下げる旨の警告を表示装置200に表示させてもよい。この場合、出力制御ブロック19は、例えば、自動運転の各自動化レベル毎に必須な測定情報の種類を示す情報をメモリ11等に記憶しておき、当該情報を参照することで、実行可能な自動運転の自動化レベルを判定する。
【0064】
なお、出力制御ブロック19の代わりに、運転支援装置150が警告画面に関する表示装置200の表示制御を行ってもよい。
【0065】
ここで、上述の実施例の効果について補足説明する。実施例では、制御部13は、異常判定ブロック18が異常と判定した測定物理量を利用して導出する測定情報を異常測定情報として特定し、特定した測定情報を予め導出しない(不正確な情報を導出しない)ようにする。これにより、制御部13は、一部のセンサが異常な測定物理量を検出したとしても、正確な測定情報のみを運転支援装置150に出力し、不正確な測定情報を出力しない。この場合、運転支援装置150は、ライダ100の他にカメラなどの他の外界センサが車両に設けられている場合には、出力されなかった測定情報をそれらの他の外界センサにより補完することで、自動運転を一時的に継続することも可能となる。また、運転支援装置150は、自動運転の継続が不可能な場合であっても、故障の影響なく正確に導出された一部の測定情報を手動運転の際の運転支援情報として用いることができる。例えば、運転支援装置150は、この場合、車両の進行方向に存在する障害物をドライバーに注意喚起するなどの目的で測定情報を利用することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施例に係るライダ100の制御部13の演算ブロック17は、互いに異なる測定対象の測定物理量を測定する複数のセンサ(検出部)のそれぞれにより測定された測定物理量のうちの第1の組合せに基づいて生成される第1の測定情報と、第1の組合せとは異なる第2の組合せに基づいて生成される第2の測定情報とを生成する。そして、制御部13の異常判定ブロック18は、測定物理量の個々の異常を検出する。制御部13の出力制御ブロック19は、第1の測定情報と第2の測定情報とのうち、異常判定ブロック18が異常を検出した測定物理量を測定したセンサ(検出部)が測定する測定物理量を必須とする測定情報の出力を制限する。これにより、制御部13は、ライダ100の故障の発生時において、出力すべき測定情報のうち一部の不正確となる測定情報の出力を制限しつつ、その他の測定情報の出力を継続することができる。
【0067】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0068】
(変形例1)
上記実施例では、出力制御ブロック19は、測定物理量が適正値の範囲を外れる異常値となる(精度不良となっている)場合に、異常測定情報の出力を制限した。これに対して、例えば飛行時間検出部9が完全に故障し飛行時間が一切検出できないなどの場合、出力制御ブロック19は、重大な故障が発生していると判断し、ライダ100の一切の機能を停止するようにしてもよい。即ち、この場合、出力制御ブロック19は、全ての測定情報の生成及び出力を禁止する。
【0069】
(変形例2)
ライダ100は、表示装置200の代わりに、又はこれに加えて、音出力装置により、異常測定情報に関する警告を出力してもよい。この場合、出力制御ブロック19は、異常判定ブロック18が測定物理量の異常を検知した場合に、異常測定情報の利用ができない旨の警告及び自動運転に関する警告を音出力部により出力させる。これによっても、ライダ100は、異常測定情報の存在を好適にユーザに知らせることができる。
【0070】
(変形例3)
図4のフローチャートにおいて、出力制御ブロック19は、ステップS13で異常測定情報の特定後、ステップS14で異常測定情報の生成を禁止した。これに代えて、出力制御ブロック19は、ステップS14で異常測定情報を生成後、当該異常測定情報に対して信頼性に関するフラグ情報を付加してもよい。
【0071】
この場合、出力制御ブロック19は、生成可能な全ての測定情報を生成し、生成した測定情報を、測定情報S10として運転支援装置150に送信する。この場合、出力制御ブロック19は、異常測定情報については、信頼性がない旨のフラグ情報を付して、運転支援装置150に送信する。この場合、運転支援装置150は、上述のフラグ情報に基づき異常測定情報を特定し、特定した異常測定情報を自動運転に用いるのを中止する。この態様によっても、出力制御ブロック19は、異常測定情報の利用を好適に制限することができる。
【0072】
(変形例4)
制御部13の演算ブロック17、異常判定ブロック18及び出力制御ブロック19が実行する処理を、運転支援装置150が代わりに実行してもよい。
【0073】
この場合、運転支援装置150は、判定テーブルTdを記憶する。そして、運転支援装置150は、例えば、ライダ100から各種の検出信号を受信することで、測定情報の生成を行う処理ブロック、測定物理量の異常判定を行う処理ブロック、及び、判定テーブルTdに基づき異常測定情報を特定し、自動運転等を行う他の処理ブロックに異常測定情報を出力するのを制限する処理ブロック等を有する。この態様であっても、運転支援装置150は、ライダ100の異常発生時に、異常測定情報を的確に特定し、当該異常測定情報に限定して運転支援制御への使用を停止することができる。この場合、運転支援装置150は、本発明の「情報処理装置」の一例である。
【0074】
(変形例5)
ライダ100の制御部13と同様の処理を、複数のセンサにより測定された複数の物理量(測定物理量)を組み合わせて複数の測定情報を生成する任意の装置又はシステムが実行してもよい。
【0075】
ここでは、一例として、複数の測定情報を表示部に表示する測定装置について考察する。
図6は、測定装置100Aの概略構成図を示す。測定装置100Aは、表示部10Aと、制御部13Aと、互いに異なる測定対象の物理量の測定を行う複数のセンサ15Aとを有する。
【0076】
この場合、測定装置100Aの表示部10Aを制御する制御部13Aは、測定装置100Aに備わる複数のセンサ15Aにより測定された複数の測定物理量を組み合わせることで、複数の測定情報を生成する。例えば測定装置100Aが体重計の場合、生成される複数の測定情報は、体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、筋質点数、基礎代謝量、体内年齢、体水分率、推定骨量、美脚度、皮下脂肪率などが該当する。
【0077】
そして、制御部13Aは、いずれかの測定物理量が適正値の範囲から外れた場合、当該測定物理量に異常があると判定し、当該測定物理量を必須とする情報の出力を制限する。具体的には、制御部は、異常がある測定物理量を用いて算出される情報を、表示部10Aに表示させず、異常がない測定物理量を用いて算出される情報のみ、表示部10Aに表示させる。
【0078】
このように、複数の測定物理量を組み合わせて複数の測定情報を生成する任意の装置又はシステムの制御部は、実施例の制御部13と同様の処理を実行してもよい。これにより、一部の測定物理量に異常があった場合であっても、残りの測定物理量により正確に導出可能な測定情報を好適に出力することができる。