IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ボールペン 図1
  • 特開-ボールペン 図2
  • 特開-ボールペン 図3
  • 特開-ボールペン 図4
  • 特開-ボールペン 図5
  • 特開-ボールペン 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010349
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20240117BHJP
   B43K 7/08 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B43K1/08
B43K7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111638
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔
(72)【発明者】
【氏名】石井 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA13
2C350NA10
(57)【要約】
【課題】 落下やノック等の衝撃が加わった場合でも、インクの前方移動に伴うボールの脱落を十分に防止することができるボールペンの提供を課題とする。
【解決手段】 リフィルに、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップと、インクを収容する収容管と、筆記チップを収容管の先端に取り付け収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手とを備え、リフィルを軸本体に収容したボールペンであって、継手の後端部に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有し、ボールペンチップを把持する継手の後端側にノックや落下時の衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することで耐衝撃性能を向上させたボールペン。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフィルに、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップと、インクを収容する収容管と、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手とを備え、前記リフィルを軸本体に収容したボールペンであって、
前記継手の後端部に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペン。
【請求項2】
リフィルに、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップと、インクを収容する収容管と、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手とを備え、
前記リフィルを収容する軸本体と、前記リフィルを後方へ付勢するコイルスプリングと、前記軸本体の後部に設けられるとともに、前記リフィルの後方に配置され、前記リフィルと連動するノック部と、を有し、該ノック部を前方に押圧してリフィルを前記軸本体の先端から突出させることによって筆記位置となるノック式のボールペンであって、
前記リフィルに収容されるインクの最大容量が0.5ml以上とされ、
前記筆記チップの先端には、前記筆記ボールを抱持するカシメ部が設けられ、前記カシメ部の筆記ボールを保持する力が前記ノック部を押圧する際のノック荷重以下とされ、
前記筆記ボールが前記ホルダー内で前記筆記チップの軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上クリアランス未満とされ、
前記筆記チップを把持する継手の後端側にノックや落下時の衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペン。
【請求項3】
筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップ、インクを収容する収容管、及び、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手を備えたリフィルと、
前記筆記チップ先端を、軸本体の先端部から突出させた状態で前記リフィルを収容する軸本体と、前記軸本体の先端部を着脱可能に覆うキャップと、を有したキャップ式のボールペンであって、
前記リフィルに収容されるインクの最大容量が0.5ml以上とされ、
前記筆記ボールが前記ホルダー内で前記筆記チップの軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上クリアランス未満とされ、
前記筆記チップを把持する継手の後端側に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペン。
【請求項4】
前記筆記チップのホルダーの先端には前記筆記ボールを抱持するカシメ部が設けられ、前記ホルダーの内部空間には、前記ホルダーの先端に設けられるとともに前記筆記ボールが挿入されるボールハウス、前記ホルダーの後端から先端方向へ前記ボールハウスの近傍まで設けられたバック孔、及び、該バック孔と前記ボールハウスとを連結するインク誘導孔が形成されており、
前記バック孔内には、前記筆記ボールを先端方向に付勢する弾発部材が挿入されており、該弾発部材の先端部分は、先端方向に直線状に伸び前記インク誘導孔を通って前記筆記ボールの後端に当接しこれを付勢する付勢部として形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のボールペン。
【請求項5】
前記衝撃抑制部材は、前記継手の後端部に収容管内に臨むように設置され、前記継手及び収容管同士を連通する中空部を有するものであって、前記収容管内に臨む後部で径方向の中央を塞ぎかつ周辺部が開口した遮蔽構造として、周辺部の開口から前方内部の中空部内に連続する蛇行通路形状を形成したことを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載のボールペン。
【請求項6】
前記衝撃抑制部材は、前記継手の後端部に収容管内に臨むように設置され、前記継手及び収容管を連通する中空部を有するものであって、前記中空部の内径が収容管外径に対して5~30%の範囲であることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載のボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、剪断減粘性インクを用いたボールペンにおいて、含有する粒子が大きかったりする場合、十分な描線濃度を得るために大流量のボールペンチップが求められている。
【0003】
ボールペンチップにおいて、大きな流路を確保するにはボールハウス内での筆記ボールの移動距離(以下クリアランスとする。)を大きくすることが挙げられるが、チップカシメ部のボールを保持する力は損なわれていく。
【0004】
特に、剪断減粘性インクの場合、落下やノック等の衝撃が加わるとインク後端部のフォロワーの弾性によりインクがチップ側への前方移動を行う。その際、インク収容管(チューブ)壁面抵抗があるため、収容管中心部におけるインク移動量が壁面の近接部より大きくなり、移動したインクの衝撃がボール先端へ大きなダメージを与える。そのため、ボール保持力の弱いチップでは筆記ボールがボールハウスから脱落する可能性があった。
【0005】
ボールハウスからボールが脱落するのを防止するため、ボールの後方にボールをチップ先端部の内壁に押圧するコイルスプリングを設けて、ボールハウスから筆記ボールが脱落しにくくしたボールペンが開示されている(特許文献1参照)。このボールペンは、使用するインキが粒子の大きさが0.1~80(μm)の顔料を含有したものであり、チップ先端部の内壁に、ボールと略同形のシール面を設け、ボールの縦方向のクリアランスが30~80(μm)、100(m)当たりのインキ消費量が、200~800(mg)とするとともに、チップ先端部のボールの保持力がボールペンリフィルを軸筒後端側に付勢するコイルスプリングの押圧力よりも大きいものとして、チップ先端部からボールが脱落することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-240503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のボールペンは、ボールハウスから筆記ボールが脱落しにくいものの、必要以上にインクを消費する虞があり十分な筆記距離が得られなかった。また、筆記時にカシメ部と紙面とが接触してカシメ部が摩耗するだけでなく、紙の繊維が擦れて、削り取られた紙の繊維が筆記ボールの回転とともにボールハウス内に侵入し、インクの通路を塞ぐことがある等の問題があった。
【0008】
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであって、落下やノック等の衝撃が加わった場合でも、インクの前方移動に伴うボールの脱落を十分に防止可能なボールペンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、リフィルに、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップと、インクを収容する収容管と、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手とを備え、前記リフィルを軸本体に収容したボールペンであって、前記継手の後端部に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペンである。
【0010】
本発明は、リフィルに、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップと、インクを収容する収容管と、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手とを備え、前記リフィルを収容する軸本体と、前記リフィルを後方へ付勢するコイルスプリングと、前記軸本体の後部に設けられるとともに、前記リフィルの後方に配置され、前記リフィルと連動するノック部と、を有し、該ノック部を前方に押圧してリフィルを前記軸本体の先端から突出させることによって筆記位置となるノック式のボールペンであって、前記リフィルに収容されるインクの最大容量が0.5ml以上とされ、前記筆記チップの先端には、前記筆記ボールを抱持するカシメ部が設けられ、前記カシメ部の筆記ボールを保持する力が前記ノック部を押圧する際のノック荷重以下とされ、前記筆記ボールが前記ホルダー内で前記筆記チップの軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上クリアランス未満とされ、前記筆記チップを把持する継手の後端側にノックや落下時の衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペンである。
【0011】
本発明は、筆記ボールをホルダー先端に抱持する筆記チップ、インクを収容する収容管、及び、前記筆記チップを前記収容管の先端に取り付け前記収容管内のインクを筆記チップに流通させる継手を備えたリフィルと、前記筆記チップ先端を、軸本体の先端部から突出させた状態で前記リフィルを収容する軸本体と、前記軸本体の先端部を着脱可能に覆うキャップと、を有したキャップ式のボールペンであって、前記リフィルに収容されるインクの最大容量が0.5ml以上とされ、前記筆記ボールが前記ホルダー内で前記筆記チップの軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上クリアランス未満とされ、前記筆記チップを把持する継手の後端側に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材を有することを特徴とするボールペンである。
【0012】
本発明において、前記筆記チップのホルダーの先端には前記筆記ボールを抱持するカシメ部が設けられ、前記ホルダーの内部空間には、前記ホルダーの先端に設けられるとともに前記筆記ボールが挿入されるボールハウス、前記ホルダーの後端から先端方向へ前記ボールハウスの近傍まで設けられたバック孔、及び、該バック孔と前記ボールハウスとを連結するインク誘導孔が形成されており、前記バック孔内には、前記筆記ボールを先端方向に付勢する弾発部材が挿入されており、該弾発部材の先端部分は、先端方向に直線状に伸び前記インク誘導孔を通って前記筆記ボールの後端に当接しこれを付勢する付勢部として形成されていることが好適である。
【0013】
本発明において、前記衝撃抑制部材は、前記継手の後端部に収容管内に臨むように設置され、前記継手及び収容管同士を連通する中空部を有するものであって、前記収容管内に臨む後部で径方向の中央を塞ぎかつ周辺部が開口した遮蔽構造として、周辺部の開口から前方内部の中空部内に連続する蛇行通路形状を形成したことが好適である。
【0014】
本発明において、前記衝撃抑制部材は、前記継手の後端部に収容管内に臨むように設置され、前記継手及び収容管を連通する中空部を有するものであって、前記中空部の内径が収容管外径に対して5~30%の範囲のものであることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、継手の後端部に衝撃に伴うインクの移動を衝撃抑制部材によって抑制するので、落下やノック等の衝撃が加わった場合でも、インクの前方移動に伴うボールの脱落を十分に防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るボールペンの説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90度回転させて側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
図2】第1実施形態に係るリフィルの説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が衝撃抑制部材周辺の拡大断面図である。
図3】第1実施形態に係る衝撃抑制部材の部品図であって、(a)が前方斜視図、(b)が前方からの視図、(c)がやや後方からの斜視図、(d)が側面図、(e)が(d)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が(d)のF-F線に沿う横断面図、(g)が後方からの斜視図、(h)が後方からの視図である。
図4】第2実施形態に係るボールペンの説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90度回転させて側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
図5】第2実施形態に係るリフィルの説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が衝撃抑制部材周辺の拡大断面図である。
図6】第2実施形態に係る衝撃抑制部材の部品図であって、(a)が前方斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が側面図、(d)が(c)のD-D線に沿う縦断面図、(f)が後方からの視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係るボールペンについて添付図面を参照して説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は第1実施形態に係るノック式のボールペンの全体説明図、図2はリフィルの説明図、図3は衝撃抑制部材の部品図である。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態に係るノック式のボールペンは、リフィル10に、筆記ボール12をホルダー14先端に抱持する筆記部となる筆記チップ(ボールペンチップ)16と、インクを収容する収容管(インク収容管とも称する)18と、筆記チップ16を収容管18の先端に取り付け収容管18内のインクを筆記チップ16に流通させる継手20とを備え、リフィル10を軸本体22に収容したボールペンに関するものでる。
【0020】
図2に示すように、継手20の後端部にノックや落下時の衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材24を有する。継手20は、概略管状であって、前部内に筆記チップ16を嵌入し、流路途中に流路径を絞る絞り部20aが設けられ、後部外周に収容管18先端面に当接して位置決めするためのフランジ20bが外径方向に突出して形成され、後部内にノックや落下時等の衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材24が嵌入している。なお、絞り部20aによっても流路径が他の部分よりも縮径されているので、衝撃によるインク移動を抑制する作用を奏する。
【0021】
〔衝撃抑制部材24〕
第1実施形態に係る衝撃抑制部材24は、図2に示すように、衝撃に伴うインクの移動を抑制するインク流路を蛇行させ、かつ、後方中央を塞いだ構造としたものである。
【0022】
詳細には第1実施形態に係る衝撃抑制部材24は、図2図3に示すように、継手20の後端部に収容管18内に臨むように設置され、継手20及び収容管18同士を連通する中空部24aを有するものである。
衝撃抑制部材24は、収容管18内に臨む後部で径方向の中央を塞ぎかつ周辺部が開口した蓋状の遮蔽構造24bを有し、遮蔽構造24bの周辺部の4箇所(単数、複数でもよい)に形成された開口24b1から前方内部の中空部24a内に連続する蛇行通路(インク流路、チャンネル)ch(図2図3に2点鎖線で示す)が形成されたものである。
【0023】
図3(e)、(f)の各断面図を見て理解されるように、衝撃抑制部材24において後端部の遮蔽構造24bの外周から前方に向けて中空部24aに至るように4箇所が横断面矩形に切り込まれて開口24b1が形成される。図2図3に示すように、開口24b1から中空部24aに至る蛇行通路chは、開口24b1から衝撃抑制部材24の後端の遮蔽構造24bよりも前位置で内周方向に向き、中空部24aに繋がる構造の、概略クランク状に蛇行した通路形状に形成されている。
【0024】
なお、衝撃抑制部材24は、外周面が先細のテーパー状に形成され、継手20内に嵌入しやすくしている。
【0025】
〔リフィル10〕
リフィル10は、図1図2に示すように、先端に筆記部である筆記チップ16を備える。この場合、筆記チップ16が継手20の先端部内に嵌入し、継手20が収容管18の先端部に嵌入して、筆記チップ16が継手20を介して収容管18先端に備えられている。なお、収容管18内には収容するインク(図示省略)の乾燥を防ぐなどするための液状等のフォロワー18aがインクの後方に収容されている。
【0026】
実施形態に係るボールペンは、図1に示すように、リフィル10を収容する軸本体22内には、リフィル10を後方へ付勢するコイルスプリング26と、軸本体22の後部に設けられるとともに、リフィル10の後方に配置され、リフィル10と連動するノック部28と、を有し、ノック部28を前方に押圧してリフィル10を軸本体22の先端の開口22aから筆記チップ16のホルダー14先端を突出させることによって筆記位置となるノック式のボールペンである。ノック方式構造は周知のカーンノック式とすることができる。
【0027】
軸本体22の、前部外周部を覆って柔らかいエラストマー部22bが設けられ、後部外周部にポケットに挟んで固定するためのクリップ22cが突出して設けられている。
【0028】
〔筆記チップ16〕
筆記チップ16は、図1図2に示すように、筆記ボール12と、筆記ボール12を先端に抱持するホルダー14と、を備える。
【0029】
図2に示すように、筆記チップ16において、ホルダー14の先端には筆記ボール12を抱持するカシメ部14aが設けられ、ホルダー14の内部空間には、ホルダー14の先端に設けられるとともに筆記ボール12が挿入されるボールハウス14b、ホルダー14の後端から先端方向へボールハウス14bの近傍まで設けられたバック孔14c、及びバック孔14cとボールハウス14bとを連結するインク誘導孔14dが形成されている。
【0030】
ボールハウス14bは、詳細の図示を省略するが、軸心とほぼ平行な円筒面と、円筒面に連続して後方へ向かって縮径する円錐面である底面と、底面に筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、を有している。インク誘導孔14dの周囲に等配された複数箇所には、ボールハウス14b側から後方に向かって穿設された放射状の溝であるインク溝が形成されている。
【0031】
バック孔14c内には、筆記ボール12を先端方向に付勢する弾発部材30が挿入されており、弾発部材30の先端部分は、先端方向に直線状に伸びインク誘導孔14dを通って筆記ボール12の後端に当接しこれを付勢する付勢部として形成されている。
【0032】
リフィル10に収容されるインクの最大容量が0.5ml以上であって、カシメ部14aの筆記ボール12を保持する力は、ノック部28を押圧する際のノック荷重以下である。
【0033】
筆記ボール12がホルダー14内で筆記チップ16の軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上でクリアランス未満であって、リフィル10の先端部を軸本体22の先端部(先端の開口22a)から繰り出し、または、内部への引き込みを行うノック機構を有したノック式ボールペンである。
【0034】
筆記チップ16を把持する継手20は、その後端側にノックや落下時の衝撃に伴うインクの移動を抑制することを目的とした衝撃抑制部材24を有する。
衝撃抑制部材24は、後端の蓋状の遮蔽構造24b周囲の開口24b1から中空部24aに至る蛇行通路ch(図2図3に2点鎖線で示す)が、開口24b1から衝撃抑制部材24の後端の遮蔽構造24bよりも前位置で内周方向に向き、中空部24aに繋がる構造の、概略クランク状に蛇行した通路形状に形成されている。したがって、実施形態のボールペンに落下や、ノック等の衝撃が加わった場合でも、蛇行通路chを通るインクの勢いを削減し緩和して、インクの前方移動に伴うボールの脱落を十分に防止することができる。
【0035】
つまり、落下衝撃等のリフィル10に衝撃が加わった場合に、収容管18内のインクとフォロワー18aが急激に動き、筆記ボール12が内部より押し出されるメカニズムがある。収容管18内においては、周辺部では壁面への管抵抗によって移動が少なく、一方、中心部でインクとフォロワー18aの移動量が最も大きい。衝撃抑制部材24は、このような現象に対応して、中心部のインクの動きを筆記チップ16に伝わりにくくするため、蓋状の遮蔽構造24bでインクの衝撃を受け止め、さらに蛇行通路chで蛇行させて衝撃を緩和したものであって、その作用効果を得つつ筆記チップ16側にインクが十分に流通するようにしたものである。ノック操作時の衝撃も同様の原理で緩和できる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図4は第2実施形態に係るキャップ式のボールペンの全体説明図、図5はリフィルの説明図、図6は衝撃抑制部材の部品図である。図1図2に示す第1実施形態のボールペンと同様部分に同一符号を付する。
【0037】
第2に実施形態のボールペンは、図4に示すように、筆記ボール12をホルダー14先端に抱持する筆記チップ16、インクを収容する収容管18、及び、筆記チップ16を収容管18の先端に取り付け、収容管18内のインクを筆記チップ16に流通させる継手20を備えたリフィル34と、筆記チップ16先端を、軸本体36の先端部の開口36aから突出させた状態でリフィル34を収容する軸本体36(先軸36fが後軸36r前部内に螺合や嵌入して一体になっている。)と、軸本体36の先端部を着脱可能に覆うキャップ38と、を有したキャップ式のボールペンである。
【0038】
リフィル34に収容されるインクの最大容量が0.5ml以上であり、筆記ボール12がホルダー14内で筆記チップの軸線方向に移動可能な量であるクリアランスが80μm未満であって、収容されるインクに含まれる色材の平均粒子径が0.1μm以上クリアランス未満であって、筆記チップ16を把持する継手20の後端側に衝撃に伴うインクの移動を抑制する衝撃抑制部材40を有する。なお、収容管18の後端には、開口した尾栓18bが嵌入している。
【0039】
衝撃抑制部材40は、図5に示すように、継手20の後端部に収容管18内に臨むように設置され、継手20及び収容管18を連通する中空部40aを有するものであって、中空部40aの内径が収容管18外径に対して5-30%の範囲のものである。
【0040】
具体的には、図6に示すように衝撃抑制部材40は、前端面が中空部40aに向かってすり鉢状にテーパー40cが形成され、後端の外周にフランジ40bが径方向外側に突出形成される。衝撃抑制部材40は、継手20の後部内に前部が嵌入し後端部にフランジ40bが継手20の後端に当接して、継手20内に嵌入しすぎないように位置決めしている。
衝撃抑制部材40は、中空部40aの内径が収容管18外径に対して5-30%の範囲のものとしている。したがって、実施形態のボールペンが落下等の衝撃が加わった場合でも、中空部40aが細径であるので中空部40aを通るインクの勢いを削減し緩和して、インクの前方移動に伴うボールの脱落を十分に防止することができる。
【0041】
本発明において、リフィル内に収容するインクの粘度域によって、継手の後端に追加する衝撃抑制部材の最適な構成が異なるものになっている。
【0042】
下記に各粘度域での最適な実施形態を示す。
【0043】
〔第1実施形態に係るインクの粘度域〕
第1実施形態に係るノック式のボールペンでは、1rpmでの粘度が600mPa・s(25℃)、10rpmでの粘度が120mPa・s(25℃)、100rpmでの粘度が37mPa・s(25℃)でせん断減粘指数が0.40の水性ゲルインクの中では比較的低粘度の領域においては、落下やノック等の衝撃に伴うインクの移動量が比較的大きいため、衝撃抑制部材24の中央を塞ぐ必要があり、図1~3のような形状となる。なお、インク粘度は100rpmで10―200mPa・sとすることが望ましい。
【0044】
〔第2実施形態に係る粘度域〕
第2実施形態係るキャップ式のボールペンでは、1rpmでの粘度が1150mPa・s(25℃)、10rpmでの粘度が200mPa・s(25℃)、100rpmでの粘度が50mPa・s(25℃)でせん断減粘指数が0.32の水性ゲルインクの中では比較的高粘度の領域においては落下やノック等の衝撃に伴うインクの移動量が比較的小さいため、衝撃抑制部材40の中央を塞ぐ必要はなく、図4図6のように中空部40a流路を狭める形状となる。なお、インク粘度は100rpmで10―200mPa・sとすることが望ましい。
【0045】
その際、衝撃抑制部材40の内径が収容管18外径に対して5~30%の範囲で特に効果を発揮する。
【実施例0046】
第1実施形態において示したボールペンについてボールペンチップに用いられる筆記ボール12の直径Aを0.38mmとし、インクとして、市販の水性ゲルボールペン(UMN-S-38、三菱鉛筆製)に使用される黒のインクを用いる。図1図3に示すように、継手20後端側に図3に示す形状の、具体的には後端の蓋状の遮蔽構造24bの開口24b1を除く中心部が1mm四方の流路衝突部を設け、開口24b1の幅が0.5mmの蛇行した流路を4つ設けた形状とする衝撃抑制部材24を搭載したリフィル10を当製品の軸(軸本体22)に入れた状態でコンクリートの地面に1mの高さから軸後端より落下させ、ボール飛びの有無を確認した。表1にボールが飛ぶまでに要した落下回数を示した。各回の試験においては、軸後端を下向きにして、コンクリートの地面上に1mの高さからボールペンを落下させて、ボール(筆記ボール12)飛びの有無を確認した(試験数(n=5))。表2にボールが飛ぶまでに要した落下回数の平均値を示した。
【表1】
【0047】
表1に示されるように、衝撃抑制部材を有することで耐ボール飛び効果が著しく向上したことを確認した。またインク流出量においては、衝撃抑制部材を有してもJIS S 6061に準拠した筆記試験機(筆記速度4.5m/min,筆記角度60°、筆記力1N)での筆記における著しい低下は確認されなかった。
【実施例0048】
第2実施形態において示したボールペンについてボールペンチップに用いられる筆記ボールの直径Aを0.7mm、インク収容管の外径を6mmとし、インクとして、市販の水性ゲルボールペン(URR-100-07、三菱鉛筆製)に使用される黒のインクを用いて、衝撃抑制部材を使用しない場合と、衝撃抑制部材として図4図5に示すように継手後端側に衝撃抑制部材(中空部の内径7種類)を搭載したリフィル34を当製品の軸(軸本体36)に入れた状態の本発明品について、ボール飛びの有無の試験を行った。各回の試験においては、軸後端を下向きにして、コンクリートの地面上に1mの高さからボールペンを落下させて、ボール(筆記ボール12)飛びの有無を確認した(試験数(n=5))。表2にボールが飛ぶまでに要した落下回数の平均値を示した。
【表2】
【0049】
表2に示されたように、中空部の内径が収容管外径に対して5%以上の衝撃抑制部材を有することで耐ボール飛び効果が著しく向上したことを確認した。
【0050】
なお、第1実施形態、第2実施形態を例示したが、本発明は、これに限定されず本発明の範囲内で自由に変形実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のボールペンは、ノック式やキャップ式等の各種のボールペンに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 リフィル
12 筆記ボール
14 ホルダー
16 筆記チップ
18 収容管
20 継手
22 軸本体
24 衝撃抑制部材(第1実施形態)
26 コイルスプリング
28 ノック部
30 弾発部材
34 リフィル
36 軸本体
38 キャップ
40 衝撃抑制部材(第2実施形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6