(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103555
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】設備状態監視システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240725BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240725BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G01M99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084888
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2022003330の分割
【原出願日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021109105
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 和明
(72)【発明者】
【氏名】小山 友二
(57)【要約】
【課題】それぞれの設備に振動センサなどを備えなくても監視対象となる複数の設備の異常を検出可能にする。
【解決手段】状態監視に用いる設備2の状態を示すデータをセンサデータとして出力するセンサ11と、センサデータの送信を行う通信部13、および、センサと通信部への電源供給を行う電源部12を有し、複数の設備に共通のセンサノード10を備える。また、通信部から送信されたセンサデータを受信する受信機20と、受信機で受信されたセンサデータを入力し、複数の設備が正常に動作している正常時のセンサデータに基づいて、複数の設備の正常時の状態を学習データとして学習すると共に、学習後にセンサノードから送信されたセンサデータが受信機で受信されると、センサデータが示す複数の設備の状態と学習データとを比較して、複数の設備の異常の発生もしくは異常の予兆を検出する状態検出部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備状態監視システムであって、
監視対象となる設備(2)の状態を示すデータをセンサデータとして出力するセンサ(11)と、前記センサデータの送信を行う通信部(13)、および、前記センサと前記通信部への電源供給を行う電源部(12)を有し、複数の前記監視対象に共通に適用されるセンサノード(10)と、
前記通信部から送信された前記センサデータを受信する受信機(20)と、
前記受信機で受信された前記センサデータを入力し、前記複数の監視対象が正常に動作している正常時の前記センサデータに基づいて、前記複数の監視対象の正常時の状態を学習データとして学習すると共に、学習後に前記センサノードから送信された前記センサデータが前記受信機で受信されると、該センサデータが示す前記複数の監視対象の状態と前記学習データとを比較して、前記複数の監視対象の異常の発生もしくは異常の予兆を検出する状態検出部(30)と、を含み、
前記電源部から前記センサおよび前記通信部への給電方式は、磁界を用いる方式、エナジーハーベストおよびモバイルバッテリー給電のいずれかであって、
前記センサノードは、移動体に配置され、該移動体と共に移動させられることで、前記複数の監視対象の状態を示す前記センサデータを取得する、設備状態監視システム。
【請求項2】
前記センサは、前記センサノードの周辺環境の変化を検出する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項3】
前記移動体は、搬送路(5)であり、
前記センサは、前記搬送路の姿勢の変化を検出する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項4】
前記移動体はワークおよび前記センサノードの少なくとも一方を挟持するチャック設備であり、
前記センサは、前記チャック設備の動作を検出する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項5】
前記移動体は、搬送路(5)であり、
前記センサは、振動センサおよび音センサを含み、
前記状態検出部は、前記振動センサで取得したデータおよび前記音センサで取得したデータのうち、前記振動センサで取得したデータを含むデータによって異常検出した場合は前記搬送路由来の異常と判定し、前記音センサで取得したデータのみによって異常検出した場合は前記搬送路由来とは異なる要因の異常と判定する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項6】
前記移動体は、搬送路(5)であり、
前記通信部は、前記搬送路の搬送速度に対応させて前記センサデータを加工して前記受信機に送信する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項7】
前記通信部は、前記センサデータに対してダウンサンプリング加工を可能であって、前記搬送速度が遅いほど前記ダウンサンプリング加工のサンプリング周波数を小さくする、請求項6に記載の設備状態監視システム。
【請求項8】
前記移動体は、搬送路(5)であり、
前記状態検出部は、前記センサで取得したデータに基づいて前記複数の監視対象の異常の発生個所を特定する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項9】
前記移動体は、複数の区間に分割された搬送路(5)であり、
前記状態検出部は、前記搬送路の正常時の前記センサデータに基づいて前記搬送路の位置を特定する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【請求項10】
前記状態検出部は、
前記監視対象が正常に動作している際の前記センサデータに基づいて、前記複数の監視対象それぞれにおける構成要素(2b)ごとの前記センサデータに含まれる特徴的な部分および時系列データの少なくとも一方を学習データとして学習する学習部(31c)と、
前記学習データのモデルを記憶するモデル記憶部(31d)と、
前記学習後に前記センサノードから送信された前記センサデータが前記受信機で受信されると、該センサデータが示す特徴的な部分および時系列データの少なくとも一方の前記学習データからの外れ具合を定量化した異常度合を算出する推論結果出力部(31e)と、
前記異常度合を予め設定した閾値と比較することで、前記複数の監視対象の異常の発生もしくは異常の予兆を検出し、その検出結果を出力する信号出力部(32)と、を含み、
前記信号出力部が出力する前記状態検出部での前記検出結果として前記監視対象の異常の発生もしくは異常の予兆を表示する表示装置(40)を有し、
前記表示装置は、異常発生箇所および異常予兆箇所を3Dマッピング表示で表示する、請求項1に記載の設備状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の異常を監視する設備状態監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、稼働している装置の異常を検出する装置の検査装置が知られている。例えば、特許文献1では、振動センサ、相関図生成部、深層学習部および判定部を備え、回転装置の状態を判定する装置の検査装置が提案されている。稼働している回転装置が有するベアリングの振動状態を複数の振動センサで検出すると、相関図生成部にて、複数の振動センサが出力する複数の加速度信号の相関を示す相関図を生成する。そして、深層学習部にて、相関図生成部が生成する相関図に基づく深層学習を行ったのち、判定部にて、深層学習の結果に基づいて回転部の状態を判定する判ことで、構成が異なる種々の装置の異常を検出可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検査装置では、生産ラインのような、稼働している装置が多数存在する環境で、多数の稼働している装置の異常を検出可能にするには多数の振動センサが必要になる。また、異常箇所や異常原因などの異常の詳細を検出するためには、設備の異常が複合的な要因により発生していることを踏まえると、複数種類のセンシングが必要であるため、センサ数が莫大となり、リアルタイムの監視が困難である。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、複数の監視対象の異常をそれぞれの監視対象に振動センサなどを備えなくても検出可能とする設備状態監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、設備状態監視システムであって、監視対象となる設備(2)の状態を示すデータをセンサデータとして出力するセンサ(11)と、センサデータの送信を行う通信部(13)、および、センサと通信部への電源供給を行う電源部(12)を有し、複数の監視対象に共通に適用されるセンサノード(10)と、通信部から送信されたセンサデータを受信する受信機(20)と、受信機で受信されたセンサデータを入力し、複数の監視対象が正常に動作している正常時のセンサデータに基づいて、複数の監視対象の正常時の状態を学習データとして学習すると共に、学習後にセンサノードから送信されたセンサデータが受信機で受信されると、該センサデータが示す複数の監視対象の状態と学習データとを比較して、複数の監視対象の異常の発生もしくは異常の予兆を検出する状態検出部(30)と、を含み、電源部からセンサおよび通信部への給電方式は、磁界を用いる方式、エナジーハーベストおよびモバイルバッテリー給電のいずれかであって、センサノードは、移動体に配置され、該移動体と共に移動させられることで、複数の監視対象の状態を示すセンサデータを取得する。
【0007】
このように、複数の監視対象について、少なくとも1つの共通のセンサノードを用いて複数の監視対象が正常に動作している正常時のセンサデータを状態検出部に伝え、正常時の学習データとして学習させている。このため、学習後にセンサノードから送信されたセンサデータが示す複数の監視対象の状態を学習データと比較することで、複数の監視対象の異常をそれぞれの監視対象に振動センサなどを備えなくても検出することが可能となる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかる設備状態監視システムのブロック図である。
【
図2A】2つのマイクをそれぞれの指向性が90°ずれるように配置した様子を示した模式図である。
【
図2B】2つのマイクを
図2Aの配置とした場合のポーラーパターンを示した図である。
【
図3A】2つのマイクを
図2Aの配置とした場合に音源をx軸とy軸の中間に配置した様子を示した図である。
【
図3B】
図3Aに示した音源から音を出力したときの各マイクでの受信音圧を示した図である。
【
図4A】2つのマイクを
図2Aの配置とした場合に音源をx軸上に配置した様子を示した図である。
【
図4B】
図4Aに示した音源から音を出力したときの各マイクでの受信音圧を示した図である。
【
図5】センサノードが3つの搬送路上を流れるように配置される場合を示す図である。
【
図8】センサノードの重心が鉛直方向の中央より上方側にある場合を示す図である。
【
図9】センサノードが振動抑制構造を有する一例を示す図である。
【
図10】振動抑制構造が貫通穴であることを示す図である。
【
図11】搬送路上に直接配置されるワークがセンサノードに置き換えられて配置される一例を示す図である。
【
図12】パレット上に配置されるワークがセンサノードに置き換えられて配置される一例を示す図である。
【
図13】治具上に配置されるワークがセンサノードに置き換えられて配置される一例を示す図である。
【
図14】ワークにセンサノードが直接取り付けられる配置の一例を示す図である。
【
図15】ワークにセンサノードが直接取り付けられる配置の一例を示す図である。
【
図16】パレットにセンサノードが直接取り付けられる配置の一例を示す図である。
【
図17】センサノードがワークにおける鉛直方向の中央より上方側に配置される一例を示す図である。
【
図18】センサノードがワークにおける進行方向の後方側に配置される一例を示す図である。
【
図19】設備状態監視システムがサーバを備える構成を示す図である。
【
図20】設備状態監視システムがトレーサビリティシステムとして機能する際の履歴情報の一例を示す図である。
【
図21】搬送路上に複数のセンサノードを配置したときの様子を示した図である。
【
図22】複合センサの他の構成例を示した図である。
【
図23】複合センサの他の構成例を示した図である。
【
図24A】複合センサに備えられる1つのセンサの構成例を示した図である。
【
図24B】
図10Aの構成のセンサにより複合センサを構成した場合の透過斜視図である。
【
図25】センサノードが搬送路上に設置された場合の様子を示した図である。
【
図26】センサノードで音圧を測定したときの周波数特性を示した図である。
【
図27】複数の区間に分割されている搬送路の位置を特定する方法を説明するための図である。
【
図28】状態検出部の機能ブロックなどの詳細を示した図である。
【
図29】搬送路に沿って各設備が配置されている様子を示した図である。
【
図30】
図29に示す搬送路上をセンサノードが移動する際に、各位置での異常度合を示した図である。
【
図31】表示装置での検出結果の表示例を示した図である。
【
図32】複数の搬送路の異常発生を検出する方法を説明するための図である。
【
図33】表示装置が表示する搬送路の異常発生の検出結果の一例を示す図である。
【
図34】状態検出部での検出結果に基づいて部品メーカに発注を掛ける様子を模式的に描いたブロック図である。
【
図35】エネルギー使用量と生産量との関係の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態の設備状態監視システムは、監視対象となる複数の設備の異常をセンサが備えられた共通のセンサノードを用いることにより監視するものである。
【0012】
図1に示すように、設備状態監視システム1は、監視対象となる設備2の状態監視を行うセンサノード10、受信部20、状態検出部30および表示装置40を有した構成とされている。そして、表示装置40に監視結果を表示し、例えば、その表示内容に基づいて作業者3が設備2の制御、修理、部品交換などを行うことで、設備2の状態を良好に保てるようにする。なお、
図1では設備2を1つだけ記載しているが、設備2は複数有り、数については任意である。
【0013】
〔センサノード10の構成〕
センサノード10は、複数の設備2の異常の監視を行うために少なくとも1つのセンサ11を備えたものであり、センサ11に加えて、電源部12や通信部13等を備えた構成とされている。
【0014】
センサ11は、音、振動もしくは加速度、角速度、温度、湿度、磁気、光、周辺画像、流量、圧力、臭気などのうちいずれか一つ以上を検出対象として検出する。これらのうちの複数を検出する場合もしくは同じ検出対象でも複数検出する場合には、センサ11が複数個備えられた複合センサとされる。センサ11は、半導体式センサなど、どのようなもので構成されていても良く、検出結果を示すセンシング信号などをセンサデータとして通信部13に出力している。このセンサ11でのセンサデータが設備2の状態監視に用いる物理量などの各種状態を示すデータに相当する。
【0015】
センサ11については、上記した検出対象に対応するものが適用される。例えば、音を検出する場合は音センサ、振動や加速度を検出する場合は振動センサ、角速度を検出する場合は角速度センサ、周辺雰囲気の温度や湿度を検出する場合は温湿度センサ、周辺の風量を検出する場合は流量センサがセンサ11として適用される。また、磁気を検出する場合は磁気センサ、光を検出する場合は光センサ、周辺画像を検出する場合はカメラ等で構成される画像センサがセンサ11として適用される。さらに、流量を検出する場合は流量センサ、圧力を検出する場合は圧力センサ、臭気を検出する場合は臭気センサがセンサ11として適用される。上記したように、センサ11については、検出対象が異なる複数種類のものとしても良いし、検出対象が同じものが複数個含まれていてもよい。複数個のセンサ11の検出対象が同じであっても、検出する方向や位置が異なっていれば、その方向や位置に対応したセンサデータを得ることができる。
【0016】
音センサの場合、音源の位置の特定のために、複数マイクを使用してもよい。方向特定の方法として、位相差・時間差を用いてもよいし、同じポーラーパターン、つまり指向性をもつ複数のマイクを異なる方向に向け、感度差による音圧差を利用して方向を特定してもよい。例えば、センサノード10の一方向を前方、その反対方向を後方、さらにその両側に向かう方向を左右方向とすると、前後左右の4方向に4つ単一指向性のマイクの指向性を向けるようにする。このようにすれば、例えば左から入力される音については、左マイクでは音圧大、前後マイクでは音圧中、右マイクでは音圧小、というように感度差による入力音圧の差が生じる。このため、あらかじめ把握しているポーラーパターンに基づいて、音源の方向を特定できる。
【0017】
2つのマイクを用いて音源の方向を特定する場合を例に挙げると、例えば
図2Aに示すように2つのマイク11a、11bをそれぞれの指向性が90°ずれるようにして配置する。この場合、
図2Bに示すように、マイク11aのポーラーパターン11cは0°の位置、つまりy軸の正方向の位置を基準音圧0dBとして、90°の位置、つまりx軸の正方向の位置に至る迄に音圧が徐々に低下するというパターンになる。逆に、マイク11bのポーラーパターン11dは90°の位置、つまりx軸の正方向の位置を基準音圧0dBとして、0°の位置、つまりy軸の正方向の位置に至る迄に音圧が徐々に低下するというパターンになる。この場合において、例えば
図3Aに示すようにx軸とy軸の中間に位置する45°の位置に音源4があったとすると、
図3Bに示すようにマイク11aとマイク11bの受信音圧はほぼ同じになる。また、例えば
図4Aに示すようにx軸上となる90°の位置に音源4があったとすると、
図4Bに示すようにマイク11bの受信音圧がマイク11aの受信音圧の2倍程度になる。このように、指向性をずらして配置した複数のマイク11a、11bでの受信音圧を比較することで、音源4の方位を特定できる。そして、音圧から音源4までの距離も判る。このため、複数のマイク11a、11bを用いた音センサにより、音源4の方位や距離を特定できる。
【0018】
また、振動センサの場合、音センサでは取得できない、搬送路のガタつき状態などを検出できる。振動センサによって検出対象の振動や加速度を検出できる。そして、振動センサによって振動や加速度に基づいて検出対象の異常を検出できる。また、センサノード10を搬送路に設置するような場合であれば、振動センサによって搬送路の振動を検出することができるが、センサ11として振動センサと音センサの両方を備えると、振動が搬送路由来のものであるか否かまで判る。すなわち、振動センサと音センサの両方で取得した各検出結果のデータもしくは振動センサのみで取得したデータによって異常検出した場合は搬送路由来の異常、音センサのみで異常検出した場合は搬送路由来ではなく、他の要因と判定できる。これにより、より明確に搬送路か他の要因かを切り分けられ、その異常が検出された設備2を特定できる。
【0019】
また、角速度センサの場合、監視対象の回転および向きの変化を角速度として検出できる。そして、角速度センサによって検出される監視対象の回転および向きに基づいて監視対象の異常を検出できる。また、センサノード10を、例えば、製品を搬送する搬送路上に配置したり、搬送路によって搬送される製品に配置したりするような場合であれば、角速度センサによって搬送路および製品の傾きや姿勢の変化を検出することができる。
【0020】
さらに角速度センサは、1方向の回転を検出する1軸角速度センサ、互いに直交する2方向の回転を検出する2軸角速度センサ、互いに直交する3方向の回転を検出する3軸角速度センサのうちの少なくとも1つの角速度センサを採用することができる。
【0021】
また、光センサの場合、光源の位置の特定のために、複数の受光部を使用してもよい。方向特定の方法として、光の位相差・時間差を用いてもよいし、複数の受光部を異なる方向に向け、受光量の差を利用して方向を特定してもよい。例えば、センサノード10を前方、後方および左右方向に4つの方向に受光部を向けるようにする。このようにすれば、例えば左から入力される光については、左受光部では受光量大、前後受光部では受光量中、右受光部では受光量小、というように受光量の差が生じる。このため、受光量の差に基づいて、光源の方向を特定できる。
【0022】
電源部12は、センサノード10に備えられる各部の電力供給源であり、例えばボタン電池やリチウム電池などによって構成されている。電源部12の形態としては、電磁誘電方式や磁界共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式などの磁界を用いる方式と、振動・光・熱・電磁波などのエナジーハーベスト系とモバイルバッテリー給電に分けられる。センサノード10の使用形態に応じて、例えば搬送体として使用されるのであれば、搬送体で求められる電力・伝送距離・大きさなどの項目から最適な給電方式を選択して電源部12を構成すればよい。
【0023】
通信部13は、センサ11から伝えられたセンサデータを無線通信などによって受信部20に送信する。通信部13の通信速度、通信距離、最適な周波数回り込み特性などから使用する周波数帯を選択している。また、通信部13にマイコンを搭載して、センサ11のセンシング信号に基づいて各種制御を行ってもよい。例えば、センサ11が音センサの場合は、既定の周波数における音圧が予め設定した閾値を超えたときのみ通信をするなど、センサデータを送信するか否かを決める制御を通信部13で行うようにしても良い。
【0024】
また、電源部12が同じ電池容量でも駆動時間を長くできるようにするのが好ましい。このため、データ通信を常に行うのではなく、通信部13のマイコンによって予め設定された閾値を超えたときを基準として、そのデータおよびその前後データのみを送信するなどの制御を行うと好ましい。例えば、前後データとして送信するデータ量については、前後10サイクル分などと適宜設定すればよい。このようにすれば、通信量を少なくできると共に、電源部12の電池の持ちを良くすることができる。
【0025】
また、センサ11から通信部13へ伝えられるセンサデータがセンサ11で検出されたセンサデータそのままである場合、すなわち、通信部13が受信するセンサデータが生値である場合、通信部13は、センサデータを加工して受信部20へ送信してもよい。通信部13がセンサデータを加工して送信する場合の一例について、
図5を参照して説明する。
【0026】
この一例では、
図5に示すように、振動センサを有するセンサノード10が3つの搬送路5a、5b、5c上を流れるように配置される。そして、この3つの第1搬送路5a、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cは、この順に連なっており、互いに異なる搬送速度で動くことで、センサノード10を自身が動作する際の搬送速度に同期させてセンサノード10を搬送する。この場合、通信部13は、センサ11から受信するセンサデータを、第1搬送路5a、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cそれぞれの搬送速度に対応させて受信部20へ送信してもよい。
【0027】
例えば、第1搬送路5aの搬送速度を第1速度v1、第2搬送路5bの搬送速度を第2速度v2、第3搬送路5cの搬送速度を第3速度v3として、第1速度v1が第2速度v2および第3速度v3よりも遅いとする。この場合、第1搬送路5aが動作する際に生じる振動は、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cそれぞれが動作する際に生じる振動より振動周期が遅くなる。このため、第1搬送路5aの異常発生、もしくは異常予兆を検出するための振動センサの必要なサンプリング周波数は、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cの異常発生、もしくは異常予兆を検出するためのサンプリング周波数に比較して小さくすることができる。
【0028】
したがって、通信部13は、第1搬送路5a、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cの全ての搬送路において同一のサンプリング周波数で検出されたセンサデータの生値を、受信部20へ送信しなくてもよい。そして、例えば、第2搬送路5bおよび第3搬送路5cに比較して搬送速度が遅い第1搬送路5aにおいて検出されたセンサデータの生値に対してダウンサンプリング加工をしたセンサデータを受信部20へ送信してもよい。このようにすれば、通信部13から受信部20へセンサデータを送信する際のデータ量が小さくなり、通信量を少なくできると共に、電源部12の電池の持ちを良くすることができる。
【0029】
ダウンサンプリング処理のサンプリング周波数は、第1搬送路5a、第2搬送路5b、第3搬送路5cそれぞれの搬送速度に応じて、予め作業者3が設定可能であってもよい。また、ダウンサンプリング処理のサンプリング周波数は、第1搬送路5a、第2搬送路5b、第3搬送路5cそれぞれの搬送速度およびサンプリング周波数に基づいて予め通信部13に設定される制御マップに基づいて通信部13が決定してもよい。さらに、ダウンサンプリング処理のサンプリング周波数は、センサノード10を用いて第1搬送路5a、第2搬送路5b、第3搬送路5cそれぞれの搬送速度を検出する検出作業を行い、当該検出作業で検出した各搬送路の搬送速度に基づいて、通信部13が決定してもよい。この場合、通信部13は、搬送速度の速い搬送路のサンプリング周波数に比較して搬送速度の遅い搬送路のサンプリング周波数に対してダウンサンプリング処理を行う。
【0030】
〔センサノード10の構成例〕
次に、センサノード10の構成の一例について、
図6および
図7を参照して説明する。
【0031】
図6は、センサ11を複合センサとした場合のセンサノード10の全体構成を示している。この図に示すように、センサ11と電源部12および通信部13が多面体形状、ここでは六面体形状で一体化されている。そして、これらの一体構造が六面体形状の筐体14内において筐体14の内壁面と当接して隙間が空かないようにして収容されることで筐体14に対して強固に固定され、センサノード10が構成される。筐体14は、使用環境に応じた素材で構成されており、例えば水がかかる環境においてセンサノード10が使用される場合であれば、センサ11などを守るために耐水性のある素材で設計される。なお、
図6では、筐体14内に配置されたセンサ11と電源部12および通信部13の一体化構造が判るように、筐体14を透過させて示してある。
【0032】
ところで、センサノード10が搬送路5の振動を検出するために振動センサを有する場合、センサノード10は、搬送路5の動作の影響によって生じる搬送路5の振動を検出する。しかし、搬送路5の動作以外の影響によって生じる振動は、振動センサが検出する搬送路5の振動のノイズになり得る。
【0033】
例えば、
図8に示すように、センサノード10の重心Cgがセンサノード10における鉛直方向の中央より上方側にあるとする。この場合においてセンサノード10に向かって流れる風がセンサノード10に衝突すると、この風によってセンサノード10自身が振動する虞がある。そして、センサノード10が風の衝突によって振動して、センサノード10が搬送路5以外の振動である自身の振動を検出すると、センサノード10自身の振動が、センサノード10が検出する搬送路5の振動に対するノイズとなる。
【0034】
また、センサノード10がセンサノード10の周囲の音を検出するために音センサを有する場合、センサノード10は、センサノード10の周辺環境の音圧の変化を、この音が発生することによってセンサノード10の周辺環境に生じる空気の振動として検出する。しかし、音圧以外の影響によって空気に生じる振動は、音センサが検出する空気の振動のノイズになり得る。例えば、センサノード10の周辺環境に風が流れてセンサノード10の周辺環境の空気が振動する場合、この風によって生じる振動が、センサノード10が音として検出する空気の振動に対するノイズとなる。また、センサノード10に向かって流れる風がセンサノード10に衝突することで生じる音もセンサノード10が検出するセンサノード10の周辺環境の音に対するノイズとなる。
【0035】
これら振動のノイズの発生要因となる風は、例えば、搬送路5の周辺環境に流れる自然風や、搬送路5の途中に設けられるエアブロー工程やクリーンルーム等に設けられる送風機によって発生させられる垂直層流等がある。
【0036】
これに対して、センサノード10は、センサノード10に向かって流れる風が存在する場合であっても、センサノード10が搬送路5の振動以外の要因によって振動することを抑制する振動抑制構造を有していてもよい。この振動抑制構造は、
図9に示すように、センサノード10の重心Cgの位置をセンサノード10における鉛直方向の中央より下方側に偏心させる構造であってもよい。
【0037】
具体的には、振動抑制構造は、センサノード10において比較的重量が大きい構成品である電源部12をセンサノード10における鉛直方向の中央より下方側に配置にする構造であってもよい。これにより、センサノード10の重心Cgを鉛直方向の中央より下方側に偏心させることができる。
【0038】
また、筐体14が、単位体積当たりの質量が互いに異なる複数の材料で形成される場合、振動抑制構造は、筐体14の鉛直方向の下方側を単位体積当たりの質量が大きい材料で形成し、上方側を単位体積当たりの質量が小さい材料で形成する構造であってもよい。これにより、センサノード10の重心Cgを鉛直方向の中央より下方側に偏心させることができる。
【0039】
さらに、振動抑制構造は、図示しないが、筐体14の大きさを鉛直方向の上方側に比較して下方側を大きくすることで、センサノード10の重心Cgを鉛直方向の下方側に偏心させる構造であってもよい。また、振動抑制構造は、センサノード10の筐体14における鉛直方向の中央より下方側にセンサノード10の重心Cgを偏心させる錘部材を取り付けることによって、センサノード10の重心Cgを鉛直方向の下方側に偏心させる構造であってもよい。
【0040】
センサノード10を、このような振動抑制構造を有する構造とすることで、センサノード10に向かって流れる風が存在する場合であっても、センサノード10が搬送路5に配置された際の配置に対する安定性を向上させることができる。したがって、センサノード10に向かって流れる風がセンサノード10に衝突することによって生じるセンサノード10自身の振動を低減することができる。
【0041】
また、振動抑制構造は、
図10に示すように、センサノード10に向かって流れる風が存在する場合であっても、当該風の影響を受け難くする流体設計構造であってもよい。具体的に、振動抑制構造は、センサノード10に向かって流れる風が存在する場合、センサノード10に向かって流れる風が流れる方向に対応した方向に貫通して形成される貫通穴141で構成されていてもよい。
【0042】
例えば、センサノード10に対して搬送路5の進行方向の前方側から後方側に向かって流れる風が存在する場合、貫通穴141は、この風が流れる方向に沿った方向である搬送路5の進行方向に沿って貫通させて形成されてもよい。
【0043】
センサノード10がこのような貫通穴141を有する構造とすることで、センサノード10に向かって流れる風が存在する場合であっても、当該貫通穴141によって風を搬送路5の進行方向の前方側から後方側へ受け流すことができる。したがって、センサノード10に向かって流れる風がセンサノード10に衝突することによって生じるセンサノード10自身の振動を低減することができる。
【0044】
また、貫通穴141に風を受け流すことで風がセンサノード10に衝突することで生じる音の発生も抑制することができる。このため、音センサが筐体14に対して進行方向の背面側や側面側に設けられている構成であっても、音センサによってセンサノード10の周辺環境の音を検出し易くできる。
【0045】
なお、貫通穴141は、搬送路5の進行方向の前方側から後方側に向かって流れる風を受け流すことが可能であれば、当該進行方向の前方側から後方側に向かって上方側または下方側に傾斜していてもよいし、左方側または右方側に傾斜していてもよい。また、センサノード10に向かって流れる風の影響を受け難くする流体設計構造は、センサノード10に貫通穴141が形成される構成とは異なってもよい。図示しないが、例えば、センサノード10の筐体14の形状を、搬送路5の進行方向の後方側から前方側に向かうにしたがい、当該進行方向に直交する筐体14の断面積が小さくなる形状とすることで、センサノード10に向かって流れる風の影響を受け難くできる。
【0046】
また、
図5等に示す例では、センサ11と電源部12および通信部13の一体化構造を六面体形状としているが、六面体形状とすることでセンサノード10の向き、つまりセンサ11の向きを設定し易くできる。このため、一体化構造を必ずしも六面体形状とする必要は無く、他の多面体形状としてもよい。
【0047】
センサノード10は、特定の場所に配置されていても複数の設備2を監視でき、複合センサとされていれば、より詳細に複数の設備2を監視できるが、移動体に設置されれば、移動させられることで複数の設備2を監視できる。例えば、センサノード10が生産設備などの監視に用いられる場合、移動体となる搬送路上に設置されれば、搬送体として移動させられる。例えば、搬送路となるベルトコンベアの上にセンサノード10を設置することで、センサノード10がベルトコンベア上のワークと共に搬送されるようにできる。また、センサノード10をAGV(Automatic GuidedVehicle)などの移動体に設置し、移動体と共に移動させることで周囲の設備2の状態監視を行ってもよい。
【0048】
センサノード10の組付法については任意であるが、センサ11として振動センサや音センサが含まれる場合、取得するセンサ信号のノイズを低減させるために、溶接やねじ止めなど、できるだけ強固な方法で設置箇所に固定するのが好ましい。勿論、設置場所によっては、センサノード10をマグネットや接着剤によって設置するようにしてもよい。
【0049】
ここで、移動体である搬送路5上に並んで配置され、搬送路5によって搬送される複数のワークWとともに、当該搬送路5上に配置されるセンサノード10の具体的な配置方法の一例について
図11から
図18を参照して説明する。ワークWは、例えば加工設備によって加工される加工対象物であってもよいし、製造中または製造後の製品であってもよい。
【0050】
搬送路5に配置されるこのセンサノード10は、搬送路5によって複数のワークWとともに搬送される。また、センサノード10が搬送路5上に配置される場合には、複数のワークWのうちの1つがセンサノード10に置き換えられて配置される場合と、複数のワークWのうちの1つにセンサノード10が取り付けられて配置される場合がある。
【0051】
そして、ワークWがセンサノード10に置き換えられて配置される例示としては、センサノード10およびワークWが互いに離隔されて配置される
図11から
図13に示す3つの形態がある。ワークWがセンサノード10に置き換えられて配置されるこれら3つの形態では、搬送路5における本来の搬送体であるワークWの代わりにセンサノード10が搬送体となる。
【0052】
また、センサノード10がワークWに取り付けられる例示として、搬送路5上に直接配置されるワークWに取り付けられる
図14に示す1つの形態と、パレットPを介して搬送路5上に配置されるワークWに取り付けられる
図15、
図16に示す2つの形態とがある。センサノード10がワークWに取り付けられるこれら3つの形態では、搬送路5における搬送体であるワークWとともにセンサノード10も搬送体となる。
【0053】
センサノード10およびワークWが互いに離隔されて搬送される3つの形態のうち、
図11に示す第1の形態は、ワークWが搬送路5上に直接配置される場合に採用される。そして、センサノード10は、搬送路5上に配置されて搬送体として搬送される。
【0054】
このようなワークWが搬送路5上に直接配置される場合において、ワークWを加工設備で加工するため、当該ワークWを搬送路5上から加工設備へ移動させることがある。そしてこの場合、ワークWは、例えば、搬送路5の周辺に配置された不図示のチャック設備によって挟持されて持ち上げられることで加工設備へ移動させられる。
【0055】
これに対して、
図11に示す第1の形態のようにセンサノード10がワークWに置き換えられて配置される場合、センサノード10を当該チャック設備によってワークWと同様に挟持させることによって、チャック設備の監視することができる。例えば、センサノード10は、チャック設備に挟持される部位に圧力センサを有する構成とされる場合、圧力センサによって挟持される際の圧力を検出することで、チャック設備が正常に動作するかの監視を行うことができる。また、センサノード10は、角速度センサを有する構成とされる場合、チャック設備に挟持されて持ち上げられた際のセンサノード10の姿勢を検出することで、チャック設備が正常に動作するか否かの監視を行うことができる。
【0056】
また、センサノード10およびワークWが互いに離隔されて搬送される3つの形態のうち、
図12に示す第2の形態は、ワークWがパレットP上に配置されて搬送されるとともに、ワークWおよびセンサノード10の形状が同一である場合に採用される。この場合、センサノード10は、パレットP上に配置される複数のワークWのうちの1つと置き換えられる。そして、ワークWおよびセンサノード10は、パレットPを介して搬送路5上に配置されて搬送体として搬送される。なお、
図12に示す第2の形態は、ワークWにおけるパレットPに固定される部位とセンサノード10におけるパレットPに固定される部位それぞれの部位の形状が同一である場合に適用されてもよい。
【0057】
そして、センサノード10およびワークWが互いに離隔されて搬送される3つの形態のうち、
図13に示す第3の形態は、ワークWがパレットP上に配置されて搬送されるとともに、ワークWおよびセンサノード10の形状が互いに異なる場合に採用される。この場合、センサノード10は、パレットP上に配置される複数のワークWのうちの1つと置き換えられ、センサノード10自身をパレットPに固定するための治具Jとともに配置される。そして、センサノード10は、パレットPおよび治具Jを介して搬送路5上に配置されて搬送体として搬送される。
【0058】
また、センサノード10が搬送路5上に直接配置されるワークWに取り付けられる形態を
図14に示す。また、パレットPを介して搬送路5上に配置されるワークWにセンサノード10が取り付けられる2つの形態を
図15および
図16に示す。パレットPを介して搬送路5上に配置されるワークWに取り付けられる場合、センサノード10がワークWに直接取り付けられる場合と、センサノード10がパレットPを介してワークWに取り付けられる場合とがある。そして、センサノード10は、ワークWとともに搬送体として搬送路5上に配置されて搬送される。
【0059】
このようにセンサノード10がワークWとともに搬送体として搬送される場合、ワークWを加工設備で加工する際に、センサノード10が取り付けられた状態のワークWに対しても加工を行うことができる。また、ワークWを加工する際の加工状態をセンサノード10が検出することで、加工設備が正常に動作するかの監視を行うことができる。例えば、センサノード10が振動センサを有する場合、加工設備がワークWを加工する際の振動をセンサノード10が検出することで、加工設備が正常に動作するかの監視を行うことができる。
【0060】
ところで、搬送路5を監視するために当該搬送路5の振動を検出する場合、ワークWとともに搬送体として搬送されるセンサノード10に対して振動センサを有する構成にして、搬送路5上に配置することが考えらえる。そして、センサノード10およびワークWが搬送路5上に配置される場合、搬送路5の振動とは異なる要因によってセンサノード10およびワークWが一体となった搬送体自身が振動すると、振動センサが検出する搬送路5の振動のノイズになり得る。
【0061】
これに対して、センサノード10は、センサノード10およびワークWが一体となった搬送体としての重心の位置が鉛直方向の下方側に偏心するように取り付けられてもよい。例えば、搬送路5上に直接配置されるワークWにセンサノード10が取り付けられる場合、センサノード10は、
図14に示すように、ワークWにおける鉛直方向の中央より下方側に配置されてもよい。また、パレットPを介して搬送路5上に配置されるワークWにセンサノード10が取り付けられる場合、センサノード10は、
図16に示すように、ワークWではなくパレットPに取り付けられてもよい。
【0062】
これによれば、センサノード10およびワークWが一体となった搬送体が、搬送路5の振動とは異なる要因によって振動し難くできる。このため、センサノード10およびワークWが一体となった搬送体自身の振動に起因する振動のノイズを抑制できる。
【0063】
また、ワークWまたはパレットPに取り付けられたセンサノード10が搬送路5の振動を検出する場合、センサノード10は、搬送路5の振動を検出し易い場所に取り付けてもよい。具体的に、センサノード10は、ワークWまたはパレットPが搬送路5の振動によって搬送路5と一体に振動する際に、ワークWまたはパレットPにおける振動量が大きくなり易い位置に取り付けられてもよい。ここで、ワークWまたはパレットPが搬送路5と一体に振動する場合、ワークWまたはパレットPは、搬送路5からの距離が遠い部位ほど搬送路5と一体に振動する際にその振動量が大きくなり易い。
【0064】
例えば、搬送路5上に直接配置されるワークWにセンサノード10が取り付けられる場合、センサノード10は、
図17に示すように、ワークWにおける鉛直方向の中央より上方側に配置されてもよい。また、図示しないが、パレットPを介して搬送路5上に配置されるワークWにセンサノード10が取り付けられる場合、センサノード10は、パレットPにおける鉛直方向の中央より上方側に取り付けられてもよい。
【0065】
これによれば、このようにセンサノード10が取り付けられない場合に比較して、ワークWまたはパレットPにおけるセンサノード10が取り付けられる部位と搬送路5との距離を大きくできるので、センサノード10は、搬送路5の振動を検出し易くなる。
【0066】
また、ワークWおよびセンサノード10が搬送路5によって搬送される場合、例えば、ワークWを搬送路5上で加工するために、搬送路5の途中に設けられた不図示のストッパによってワークWの搬送を停止させたり、開始させたりすることがある。
【0067】
この場合、搬送路5の動作が維持された状態で、ストッパの開閉動作によってワークWの搬送における停止および開始が制御されることがある。すると、ワークWの搬送は、ストッパの閉鎖によって急停止するとともに、ストッパの開放によって急開始される。そして、このようなストッパによってワークWの搬送を急停止または急開始させる場合、ワークWが急停止または急開始する際に、ワークWにおける進行方向の後方側が慣性によって持ち上げられる場合がある。このような慣性によってワークWが持ち上げられる動作は、ワークWに取り付けられたセンサノード10が振動を検出する場合、振動センサが検出する搬送路5の振動のノイズになり得る。
【0068】
これに対して、センサノード10がワークWとともに搬送体として搬送される場合、センサノード10は、搬送路5によってワークWが搬送される方向を進行方向としたとき、ワークWにおける進行方向の前方側に配置されてもよい。例えば、
図14から
図17において、紙面左側から右側に向かってワークWが搬送される場合、
図14から
図17に示すように、センサノード10は、ワークWにおける進行方向の前方側の面またはパレットPにおける進行方向の前面に配置されてもよい。
【0069】
これによれば、ワークWにおける進行方向の後方側が持ち上げられる場合であっても、センサノード10の振動が抑制されるので、ワークWの振動に起因するノイズの影響を受け難くできる。
【0070】
または、ストッパによって搬送が急停止または急開始するワークWの挙動を検出したい場合、センサノード10は、ワークWにおける進行方向の後方側に配置されてもよい。例えば、
図18において、紙面左側から右側に向かってワークWが搬送される場合、
図18に示すように、センサノード10は、ワークWにおける進行方向の後方側の面に配置されてもよい。
【0071】
これによれば、ワークWにおける進行方向の後方側が持ち上げられる際に、センサノード10もワークWと一体に持ち上げられやすい構造となるので、ワークWの振動に起因するセンサノード10の挙動を検出し易くできる。
【0072】
ところで、
図6に示すセンサノード10については、センサ11を複数備えた複合センサとしているが、複数の無線センサ基板15によって複合センサを構成している。具体的には、六面体形状の1面以上に無線センサ基板15を配置することで複合センサを構成している。無線センサ基板15には、
図7に示すように、1種類のセンサ11と通信部13に加えて、例えば抵抗やコンデンサ、マイクロコンピュータなどの他の電子部品15aが実装されている。そして、無線センサ基板15は、電源部12からの電力供給に基づき、通信部13を通じて、センサ11での検出結果を示すセンサデータを対応の受信部20へ送信する機能を有している。なお、
図7で示した無線センサ基板15の数は
図6と一致していないが、図の簡略化のためであり、
図7では、センサノード10に備えた無線センサ基板15のうち紙面手前側に位置するものと、紙面向こう側に位置するもののみを示してある。
【0073】
複合センサの中央部に電源部12が配置されており、その電源部12と各無線センサ基板15とが電気的に接続されることで、電源部12からの電力供給が行われ、複合センサが動作する。
図6および
図7では、電源部12を六面体形状としており、六面のうちのセンシングを行いたい面に無線センサ基板15が配置され、六面のうち無線センサ基板15が配置される面に給電用端子12aを露出させてある。そして、無線センサ基板15の裏面側に、電源部12の給電用端子12aに接触させる電池コネクタ15bが備えられ、電源部12に無線センサ基板15を取付けると、センサ11や通信部13などへの電力供給が行えるようになっている。
【0074】
また、電源部12を多面体形状としつつ、その各面に無線センサ基板15を取付けた構造としているため、電源部12をセンサノード10が構成する多面体形状の中央部に配置した状態になる。このように配置することで、多面体形状ではない形状とした場合と比較して、無線センサ基板15の数を同じとした場合の電源部12となる領域の体積を大きくすることができる。このため、電源部12の電池容量を多くでき、よりセンサノード10の駆動時間を長くできる。つまり、センサノード10を最小の形状としつつ、最大の駆動時間とすることが可能となる。
【0075】
また、センサノード10は、複合センサを筐体14に収納した状態でも充電できるように、ワイヤレス給電できるものが好ましい。また、有線給電とする場合、センサノード10を構成する多面体形状の1面を充電コネクタが接続できる面にすればよい。
【0076】
さらに、すべての無線センサ基板15の大きさを揃えておくこと、もしくは、電源部12が構成する多面体形状の一面より小さい寸法とすることで、すべての面に無線センサ基板15が設置可能となる。このため、センサ11のセンシング対象にとって優位な面、例えば感度が高くなる面に無線センサ基板15を設置できる。例えば、センサノード10が正六面体の場合、6個の無線センサ基板15を搭載可能な複合センサになる。
【0077】
センサ11を音の検出を行うマイクとする場合、正六面体のうちのセンサノード10の移動方向の前後左右4つの面に無線センサ基板15を搭載すれば、アレイ信号処理を用いてビームフォーミングを行うことが可能となる。
【0078】
センサ11を環境雰囲気の温度や湿度を検出する温度センサや湿度センサとする場合、正六面体のうちの底面以外に無線センサ基板15を配置することで、環境雰囲気を捉えることができる。また、底面以外の複数面は、センサノード10を搬送路に設置した場合に、伝熱による搬送路の温度影響を受けにくい。このため、温度センサを底面以外の複数面に無線センサ基板15を配置すると好ましい。また、センサ11として、温度センサを2つ配置すると共に、流量センサを合わせて配置すれば、流量センサによってセンサノード10の周辺の風量を測定できると共に、2つの温度センサで検出された温度の差から風邪の向きを測定できる。これにより、設備2内のダウンフロー管理などができる。
【0079】
センサ11を振動センサとする場合、多面体形状の上面に設置すると、モーメントが大きくなり、複合センサの傾きに対する感度が良くなる。このようにすれば、微細なワークの傾きや、搬送路のがたつきを検知でき、より早期に設備2の異常の予兆を推論することが可能となる。
【0080】
また、センサ11を温度センサ、湿度センサ、振動センサとする場合、設備2の状態を監視するのに加えて、センサ11を製品に取り付けることで、当該製品の製造履歴や完成後の搬送状態等の履歴を管理するトレーサビリティシステムに用いることができる。例えば、
図19に示すように、設備状態監視システム1が、センサノード10が検出した各種センサデータを受信するサーバ60を備えるとする。このサーバ60は、センサノード10と通信可能に構成される。サーバ60は、図示しないCPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等を備えたマイクロコンピュータ等で構成されたものである。そして、サーバ60は、CPUがROM等からプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。本実施形態におけるサーバ60は、記憶部として機能する。
【0081】
サーバ60は、例えば、センサノード10から受信する製品の製造中における環境雰囲気の温度、湿度、振動等のセンサデータとしての情報と、当該受信する情報の受信時刻とを紐づけして記憶する。これにより、
図20に示すように、設備状態監視システム1を、製品がどのような環境雰囲気下で製造されたのかを示す製造中の各種情報の履歴を把握するトレーサビリティシステムとして用いることができる。
【0082】
また、センサノード10を完成後の製品に取り付けると、センサノード10が検出する完成後の製品に関するセンサデータとしての情報と、当該情報の検出時刻とを紐づけすることで、完成後の製品の状態に関する情報をサーバ60に記憶させることもできる。
【0083】
例えば、製品完成後から梱包されるまでの梱包期間、梱包から輸送車に積み込まれるまでの保管期間、輸送車によって輸送される間の輸送期間それぞれの期間における環境雰囲気の温度、湿度、振動等の各種情報の履歴をサーバ60に記憶させることもできる。これにより、
図20に示すように、製品がどのような環境雰囲気下で保管および輸送されたのかを把握することができる。サーバ60に記憶させる各種履歴情報は、温度、湿度、振動に限定されるものではなく、センサ11の構成に応じて、音、加速度、角速度、磁気、光、周辺画像、流量、圧力、臭気等の情報であってもよい。
【0084】
また、サーバ60に記憶させる各種履歴情報は、製品の製造に関係する作業者3が閲覧可能に、後述の表示装置40に表示されてもよいし、当該表示装置40とは異なる表示器に表示されてもよい。また、サーバ60に記憶させる各種履歴情報は、製品を購入した購入者が閲覧可能に構成されてもよい。このように、センサノード10が検出する各種情報をトレーサビリティシステムが記憶する情報に採用することもできる。
【0085】
なお、サーバ60は、後述の状態検出部30が備える構成であってもよいし、状態検出部30とは別体に設備状態監視システム1が備える構成であってもよい。また、センサノード10から受信するセンサデータに紐づけする受信時刻に関する情報は、サーバ60自身が有する時刻情報が用いられてもよい。そして、センサノード10自身が時刻情報を取得可能な場合、センサノード10から受信するセンサデータに紐づけする受信時刻に関する情報は、センサノード10からセンサデータと一緒に送信される時刻情報が用いられてよい。また、センサノード10から受信するセンサデータに紐づけする受信時刻に関する情報は、作業者3が作業を行う際に操作されるセンサノード10とは別体の装置(例えば、RF-IDリーダ)等から送信される作業者3の作業内容に基づいた情報が用いられてもよい。
【0086】
センサノード10を多面体形状の複合センサとする場合において、多面体形形状の面数よりも多く無線センサ基板15を用いたい場合には、複数のセンサノード10を用いることで対応することもできる。
【0087】
また、複数のセンサノード10を用いる場合、例えば
図21に示すように搬送路5の異なる位置に配置した各センサノード10にマイクを配置してアレイを構成すれば、マイク間の距離に基づいて、検出した音の発生源の距離や位置を測定できる。この場合、アレイ状に配置される各マイク間の距離やマイクの個数については任意であり、検出対象とする音に応じて選択することができる。例えば、より遠くの設備2の音を検出対象とする場合には、マイク間の距離を長くするとよい。また、より正確に音の発生源の位置を特定するにはマイクの個数を多くするとよい。
【0088】
また、センサノード10を複合センサとする場合、各無線センサ基板15の間で通信をすることもできる。その場合、各無線センサ基板15において、通信を行うことでセンサデータを送信するトリガーを共用することもできる。例えば、センサ11での検出結果が所定のしきい値を超えることをセンサデータの送信トリガーとすることがある。その場合、そのトリガーをセンサノード10の移動方向の先端に位置する無線センサ基板15において取得し、他の無線センサ基板15に通信で伝える。無線センサ基板15において、トリガーを取得するには、センサ11のセンシング信号を信号処理したり、各種演算を行ったりする必要があり、電力消費が発生する。このため、1つを主の無線センサ基板15としてトリガーを取得し、それを他の無線センサ基板15のトリガーとして共用すれば、他の無線センサ基板15は通信に必要な消費電力だけでトリガーを取得できるため、消費電力を低減できる。
【0089】
さらに、主の無線センサ基板15が何らかの不具合により起動しなくなることも考えられる。このため、他の無線センサ基板15が主の無線センサ基板15との通信に基づいて主の無線センサ基板15に不具合が発生したことを検知すると、他の無線センサ基板15が新たに主の無線センサ基板15に切り替わるようにするとよい。このようにすれば、主の無線センサ基板15に不具合が発生しても、他の無線センサ基板15によりトリガー取得を継続でき、不具合が起きていない無線センサ基板15に備えられたセンサ11のセンシングを止めずに設備監視ができる。なお、ここでいう無線センサ基板15については、1つのセンサノード10に備えられた複数の無線センサ基板15において行うこともできるが、複数のセンサノード10に備えられた複数の無線センサ基板15において行ってもよい。
【0090】
なお、センサノード10の大きさについては、使用搬送路や取付場所の制約に応じて決められている。
【0091】
〔センサノード10の他の構成例〕
図6に示す構成では、センサ11について、1枚の無線センサ基板15上に1つセンサ11を配置したものを六面体形状の各面に設置することで複合センサを構成しているが、他の構造によって複合センサを構成してもよい。
【0092】
例えば、
図22に示すように、1枚の基板16上に複数のセンサ11を搭載したものであってもよい。この図では、例えば基板16上に電池で構成された電源部12についても設置してあり、電源部12の周囲に複数のセンサ11を配置した構造としている。
図23に示すように、1つのセンサ11が実装された拡張ボード17aをメインボード17bへ複数実装したものでもよい。この図では、メインボード17bのうち拡張ボード17aが実装される場所以外の領域に電池で構成された電源部12を配置してあり、電源部12の周囲に拡張ボード17aを配置した構造としている。
図24Aに示すように1つのセンサ11を実装した基板18を
図24Bに示すように複数枚組み合せることで複合センサを構成してもよい。例えば、基板18を複数枚スライド収納できる収納ボックス19を用意し、センサ11を実装した基板18を収納ボックス19内に複数枚収納する。その場合、
図24Aに示すように、各基板18に対して電池などで構成される電源部12を備えても良いし、複数枚の基板18のうちの一部に電源部12を備えておき、他の基板18に対しても電力供給が行われる構成としてもよい。
【0093】
ただし、大きさに制限がある場合、電源部12からの電力供給やセンサ11の数などに制限が生じることから、
図6のような多面体形状とするのが好ましい。
【0094】
なお、無線センサ基板15および他の構成例で示したセンサ11が備えられた各基板については、各センサ11の自己診断機能を持っていてもよい。学習時のセンサデータと運用時のセンサデータのセンサ感度が同じか否か、センサ自身が故障しているか否かなどを診断する機能があることで、異常度合の判別の信頼度を高められる。また、このような自己診断機能に基づいて、例えば温度補正機能を持たせることもできる。センサ11は温度特性を持つため、環境温度に応じたセンサ感度補正ができる。つまり循環炉のような温度変化のある環境においても、自己診断機能に基づく温度補正を行うことで、より精度良いセンシングを行うことが可能になり、有効である。
【0095】
〔センサノード10の位置特定〕
センサノード10を設備2やその近傍に設置して移動体に設置しない場合には、その設置場所がセンサノード10の位置として特定される。
【0096】
センサノード10を移動体に設置する場合、例えば搬送路5上にセンサノード10を搬送体として設置する場合には、移動体の場所の特定を行う必要がある。移動体の場所の特定には、例えば等速度で動く搬送路5上に設置した搬送体であれば、時刻をトリガーにして位置を特定する。すなわち、移動速度に基づいてセンサノード10がどの程度移動するか把握できるため、例えばセンサノード10の移動開始からの経過時間を測定することで、センサノード10の位置を特定できる。そして、例えばセンサ11として音センサを適用し、その時にどの方向から音が伝わってきているかを測定することで検出したい箇所をピックアップする。また、例えば、センサ11として光センサを適用し、その時にどの方向から光が照らされているか測定し、受光する光量によってセンサノード10の位置を特定してもよい。等速度で動かない搬送路であれば、センサ11として、画像解析装置、RF-IDリーダ、光学マーカ等を利用し、センサノード10の位置を特定するとよい。
【0097】
また、設備2側に特定の音、例えば正弦波で表現される音などが一定の音圧で鳴るスピーカを設置しておき、センサノード10がスピーカに最も近づいたときにその周波数の音圧が最大化することを利用して位置特定することもできる。例えば、
図25に示すように、センサノード10が搬送路5上に設置された場合を想定してみる。搬送路5の近辺に音源となるスピーカ6を設置している。この場合に、図中矢印で示したように、搬送路5上においてセンサノード10が紙面左側から右側に移動させられると、スピーカ6の近傍において音圧が最大化する。具体的には、スピーカ6から2000Hzの音を出力させていたとすると、
図26に示すように、2000Hzの近傍での音圧を測定する。この図の場合、7.5秒の時点で最も音圧が高くなったことから、そのときをセンサノード10が最もスピーカ6の近傍に位置したタイミングとして、センサノード10の位置を特定できる。
【0098】
また、スピーカ6ではない実際に鳴っている音と区別するために、超音波域を使用することもできる。その場合、センサ11として、高周波用マイクを設置すれば良い。
【0099】
また、動く搬送路5が、
図27示すように複数の区間に分割されている場合、後述の状態検出部30が学習する搬送路5の正常時のデータに基づいて、搬送路5の位置を特定してもよい。例えば、搬送路5が
図27に示すように第1搬送区間R1、第2搬送区間R2、第3搬送区間R3、第4搬送区間R4に分割されているとする。この場合、状態検出部30は、第1搬送区間R1~第4搬送区間R4までの各区間における搬送路5の状態を表す各種データを学習してモデルを記憶しておく。そして、当該モデルとセンサノード10から送信されるセンサデータとを比較して搬送路5の位置を特定してもよい。搬送路5の状態を表す各種データは、センサノード10が検出する振動、加速度、角速度、温度、湿度、電磁場、音、光量、力、トルク、周辺画像等を用いることができる。
【0100】
このように、状態検出部30が学習する搬送路5のデータに基づいて搬送路5の位置を特定する場合、センサノード10が位置を特定するための音源や光源を発生させる装置を不要にすることができる。
【0101】
〔受信部20〕
受信部20は、センサノード10から送信されるセンサデータを受信したり、設備2から伝えられる各種信号、例えば設備記憶信号や設備動作信号を受信する。
図1では、受信部20と後述する状態検出部30を別構成で示してあるが、パーソナルコンピュータなどのように、受信機能も各種演算処理機能も有しているものによって、受信部20および状態検出部30を構成することもできる。
【0102】
〔状態検出部30〕
状態検出部30は、監視対象となる設備2の各構成要素の状態を検出し、設備2の構成要素毎に異常であることや異常の兆候があることを検出して、それを表示装置40などに出力する。例えば、状態検出部30は、各設備2が正常に作動している正常時の各構成要素のデータを学習してモデルを記憶しておき、異常監視の際には、設備2の使用時の各構成要素のデータを取得して学習したモデルと比較し、各構成要素の状態を検出ている。そして、状態検出部30は、このような機能を検出対象とする構成要素ごとに有している。
【0103】
図28は、状態検出部30の機能ブロックなどの詳細を示したブロック図である。
【0104】
この図に示すように、状態検出部30は、検出対象となる構成要素ごとに備えられた複数の機械学習部31と信号出力部32とを有した構成とされている。
図28では、複数の機械学習部31のうちの1つについてのみ、機能ブロックの詳細を示したが、実際には同様のブロック構成のものが複数備えられている。機械学習部31で設備2における異常の発生やその予兆について推論を行い、構成要素ごとの機械学習部31での推論結果を1つの信号出力部32で総括的に処理することで、各設備2の異常監視を行っている。
【0105】
ここでいう検出対象となる構成要素とは、監視対象とする設備2中において、異常発生の要因となり得る要素のことであり、センサデータに基づいて検出しておくべき検出対象となる要素である。構成要素は、作業者3によって決められた設備2中の特定の場所であっても、設備2ごとに区切られた区画でもよい。作業者3によって検出対象となる構成要素を決める場合は、熟練者の勘やコツによってチェックされているような箇所を頼りにすると壊れやすい箇所と特定しやすい。また、視線を検知できるメガネなどを熟練者にかけてもらい、点検作業などを観察すると勘やコツの可視化に便利である。
【0106】
機械学習部31は、状態観測部31a、ラベルデータ推測部31b、学習部31c、モデル記憶部31dおよび推論結果出力部31eを有した構成とされている。
【0107】
状態観測部31aは、センサノード10から伝えられるセンサデータを入力し、検出対象となる構成要素の状態を表す状態変数として観測して、その観測データを学習部31cや推論結果出力部31eに伝える。また、状態観測部31aは、設備2に元々備え付けられている各種センサ2aのセンシング信号が示す検出結果をセンサデータとして入力することもできる。その場合、状態観測部31aは、その備え付けのセンサ2aの検出結果もセンサノード10から伝えられるセンサデータと同様に取り扱って、検出対象となる構成要素の状態を表す状態変数として観測する。備え付けのセンサ2aが検出する物理量や状態としては、電圧、電流、位置変位、速度、振動もしくは加速度、温度、湿度、電磁場、音、光量、力、トルク、周辺画像、距離、流量、pH、圧力、粘度、臭気などが挙げられる。なお、設備2に備え付けのセンサ2aについては、複合センサでも単一のセンサでもいずれでもよく、状態検出部30との通信形態も有線であっても無線であってもいずれでもよい。
【0108】
ラベルデータ推測部31bは、実際の設備2の動作状態データとなる設備記憶信号や設備動作信号をラベルデータとして取得し、学習部31cなどに伝える。設備記憶信号は、設備2がどのように処理されたかを示す信号である。設備2に異常が検出されたときに設備状態監視システム1の検出結果に従って異常対応した場合に、ラベルデータ推測部31bが設備記憶信号として記憶する。また、その検出結果に従わずに作業者3が直接、勘やコツに基づき異常対応した場合にも、ラベルデータ推測部31bが設備記憶信号として記憶する。そして、その履歴をフィードバックすべく、ラベルデータ推測部31bに設備記憶信号が伝えられている。設備動作信号は、設備2に対して異常対応の処理が為された際に、その設備2がどのような動作を行ったかを示す信号である。設備動作信号は、設備2がどのように処理されたときにどのような状態になったかを示すものであることから、設備記憶信号と対応付けてラベルを付したラベルデータとされる。
【0109】
例えば、ラベルデータ推測部31bは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などで取得できる設備2の動作トリガーを動作状態データとして取得する。また、作業者3による5M1E、つまり人、装置、材料、方法、測定および環境を動作状態データとして取得するようにしてもよい。例えば、何月何日に設備2に発生した異常について、どの設備2のどこが、どの様に、なぜ異常であるのか、どの作業者3がどのような方法で対処したのかなどが設備記憶信号として表される。また、それによって設備2がどのような動きをしたかが設備動作信号として表される。ラベルデータ推測部31bで取得したラベルデータについては、後述する学習部31cでの学習においてのみ使用してもよいし、推論結果出力部31eでの推論時にも使用してもよい。推論結果出力部31eでの推論に使用される場合、ラベルデータが推論結果出力部31eに伝える。
【0110】
学習部31cは、状態観測部31aからの観測データが示す状態変数や、ラベルデータ推測部31bからのラベルデータが示す設備2の動作状態から、検出対象となる構成要素の異常度を推定するモデルを作成する。例えば、学習部31cは、監視対象の設備2が正常に動作している際の各種物理量や設備2の動作状態に基づいて正常時のモデルを作成している。また、学習部31cにて、異常時の各種物理量や設備2の動作状態に基づいて異常時のモデルを作成してもよい。
【0111】
学習部31cが使用する学習データとしては、ある物理量の変動量、振幅、変動時間、変動回数、周波数、異常を示す信号を出力する規定値からのずれ量の少なくとも1つに基づいて抽出された特徴的な部分や、その時系列データが挙げられる。学習に用いるのは、1つのセンサデータだけでもよいし、複数の物理量の特徴的な部分や時系列データの組を学習・推定対象とする状態変数であってもよい。機械学習によって得られた特徴量の時系列推移も含まれる。例えば、主成分分析やt-SNE(T-distributed Stochastic Neighbor Embedding)などの教師無し機械学習による次元削減によって得られた特徴量も含む。さらには、学習部31cは、複数の物理量を用いて、過去のデータから重み付けを行って学習を行ってもよい。また、ラベルデータで取得した設備2の動作状態も合わせて学習させることで、より監視したい箇所、動作に限定したモデルができる。また、ラベルデータが無くても、状態観測部31aからの観測データのみを学習データとしてもよい。
【0112】
モデル記憶部31dは、学習部31cで作成したモデル、つまりモデルとなる学習データを基準となるモデルとして記憶しておく部分である。具体的には、学習部31cは、検出対象となる構成要素の異常度を推定するための基準となるモデルとして、監視対象となる設備2が正常である時のモデルを記憶している。また、学習部31cで異常が発生した時のモデルも作成していれば、それも異常が発生したときの基準となるモデルとしてモデル記憶部31dに記憶している。
【0113】
推論結果出力部31eは、記憶したモデルの学習データに基づき、監視対象とする設備2の監視時の動作状態を推論する。推論結果出力部31eは、設備2の動作状態の推論を行う際に、観測データとラベルデータを入力し、記憶したモデルの学習データに加えて、観測データとラベルデータを用いて設備2の動作状態の推論を行うこともできる。ここでの動作状態は、正常時の学習データからどれだけ離れているかという正常状態からの外れ具合を意味している。推論結果出力部31eは、その外れ具合を「異常度合」として定量化し、それを推論結果として出力している。
【0114】
例えば、監視時にセンサノード10から送られてきたセンサデータの生値の変化または物理量の値に対する統計的処理を行って求めた判定値が「異常度合」の値となる。「異常度合」については、1つのセンサ11から検出された1つの物理量から求めた判定値や生値の変化であってもよいし、複数のセンサ11から検出された複数の物理量に基づく複合的な判定値や生値の変化であっても良い。
【0115】
「異常度合」については、今現在の値、つまり今現在設備2に異常が発生しているかの判定に用いられる値だけでなく、今後想定される値、つまり設備2の異常の予兆に用いられる値についても推論することができる。今現在の「異常度合」は、例えば、今現在の観測データと学習データとを比較することにより算出される。また、今後想定される「異常度合」は、今現在の観測データから将来的な観測データを想定し、その想定される観測データと学習データとを比較することで算出可能で、今現在の「異常度合」からも算出可能である。今後想定される「異常度合」については、モデル記憶部31dに過去の動作状態データと設備2の状態とを対応付けて学習しておくことで、経過時間に応じた「異常度合」を算出できる。そして、推論結果出力部31eは、その推論結果を信号出力部32に出力している。
【0116】
信号出力部32は、推論結果出力部31eから伝えられる「異常度合」に基づいて、設備2に異常が発生していること、もしくは異常の予兆があることを判定し、その判定結果を表示装置40に伝える。例えば、信号出力部32には、センサデータの生値の変化または物理量の値に対する統計的処理を行って求めた判定値で示される「異常度合」に対応する閾値が予め記憶されている。そして、信号出力部32は、「異常度合」の値が予め記憶しておいた閾値を超えている場合に、異常が発生もしくは異常の予兆が発生していると判定している。異常の予兆については、将来的に異常が発生し得るという可能性だけでなく、異常発生までの残り時間を推論することもできる。例えば、上記したように、経過時間に応じた「異常度合」を算出することで、「異常度合」が閾値を超えるのに掛かる経過時間を把握できる。これに基づいて、異常発生までの残り時間を推論できる。
【0117】
また、信号出力部32は、異常発生箇所、つまり異常が発生した構成要素についても推論できる。上記した「異常度合」から、設備2のどの構成要素で異常もしくはその予兆が発生しているかを特定できる。さらに、信号出力部32は、構成要素ごとの異常度合の値をみることで、異常度合が一番大きい構成要素が故障箇所と判定でき、異常の予兆の発生箇所を判別できる。
【0118】
例えば、センサ11として音センサを用いている場合において、音センサデータに異常の特徴量が出ている場合、その特徴量に着目することで、複数マイクによる音源方位を特定でき、より細かな異常予兆発生個所の特定ができる。例えば、
図29に示すように、センサノード10が搬送路5上を移動させられる場合において、各設備2の前を通過する場合に、位置(3)の設備2が異常音を発している場合を想定してみる。この場合、センサノード10が位置(1)~(6)に移動する際に、音センサにて異常音が検出されるが、異常音が位置(3)から遠い位置では小さな音でしか検出されず、位置(3)に近い位置ほど大きな音として検出される。このため、音センサの検出結果が示す位置と「異常度合」との関係が
図30のように表され、最も「異常度合」が高い位置(3)の設備2で異常音を発していることが判る。音センサデータに現れる異常の特徴量、
図29の例で言えば音の大きさに基づいて、推論結果出力部31eで各位置での「異常度合」が算出される。このため、推論結果出力部31eが算出した「異常度合」を異常音が発している際に想定される閾値と比較し、「異常度合」が閾値を超えた位置(3)の設備2に異常が発生していると判定することができる。なお、ここでは、音センサを例に挙げたが、音センサ以外であっても同様に、センサデータから得られる特徴量に着目して、異常の特徴量が出ている場合に、その異常の発生個所を特定することができる。
【0119】
〔表示装置40〕
表示装置40は、信号出力部32から伝えられる判定結果に応じた表示を行うものであり、例えばディスプレイなどで構成される。表示装置40は、信号出力部32から異常が発生したこと、もしくは異常の予兆があることが伝えられると、それを表示する。また、表示装置40は、信号出力部32から設備2に異常が無いという判定結果が伝えられる形態とされている場合には、その旨の表示を行うこともできる。
【0120】
表示装置40による表示方法については作業者3側で任意に設定でき、異常発生箇所もしくは異常予兆箇所を名称で表示してもよいが、3Dマッピング表示とすることで、作業者3に感覚的に該当箇所を把握させることが可能となる。また、AR(Augmented Reality)を用いた表示を行えば、作業者3が設備2をメンテナンスしながら、異常予兆箇所を確認したり、レコメンド修理を視覚的に確認したりすることもできる。さらに、表示装置40は、センサノード10に音センサが用いられている場合、当該音センサが検出した設備2の音を出力可能に構成されてもよい。これにより、作業者3が設備2をメンテナンスしながら、異常音を確認して、聴覚的に設備2の異常を確認することもできる。
【0121】
例えば、
図31に示すように、表示装置40を構成するディスプレイの左側に、設備2における検出対象となる構成要素2bを把握できる形態で表示する。ここで示した設備2中の構成要素2bは、異なる複数の設備2それぞれで検出対象としたい場所であっても良いし、1つの同じ設備2中において検出対象としたい複数の場所であってもよい。そして、ディスプレイ上の右側に、各構成要素2bと対応する経過時間に対応する「異常度合」を示す。このようにして、表示装置40を通じて、作業者3に、監視したい設備2の構成要素2bの「異常度合」が今後どのように変化していくか把握させることが可能となる。
【0122】
また、設備状態監視システム1が設備2の異常の発生、もしくは異常の予兆を検出した際の表示装置40が表示する内容の他の例の詳細について、
図32および
図33を参照して説明する。これらの図に示す例では、設備状態監視システム1が連続して連なる第1搬送路51、第2搬送路52、第3搬送路53、第4搬送路54それぞれの異常の発生、もしくは異常の予兆を検出するため、センサ11に3軸角速度センサが適用されている。そして、センサノード10は、第1搬送路51、第2搬送路52、第3搬送路53、第4搬送路54の順に搬送される際に、第1搬送路51~第4搬送路54それぞれにおいて、互いに直交する3方向の角速度を検出する。
【0123】
機械学習部31は、センサノード10が検出する第1搬送路51~第4搬送路54それぞれの動作状態に関する情報から、第1搬送路51~第4搬送路54それぞれの異常度を推定するモデルを作成する。そして、表示装置40は、第1搬送路51、第2搬送路52、第3搬送路53、第4搬送路54それぞれの異常の発生、もしくは異常の予兆の発生を検出結果として表示する。
【0124】
具体的に、表示装置40は、第1搬送路51から第4搬送路54に至るまでにセンサノード10が搬送される際の各搬送路51、52、53、54で搬送される時間に対応する検出結果を表示する。検出結果の表示内容は、3軸角速度センサが検出した3方向それぞれの角速度の経時変化の情報であってもよいし、3軸角速度センサが検出した3方向それぞれの角速度に基づいて算出されるセンサノード10の姿勢の経時変化を示す3次元モデルであってもよい。表示内容がセンサノード10の姿勢の経時変化を示す3次元モデルである場合、作業者3は、より視覚的に設備2の異常状態を把握し易くなる。
【0125】
ところで、センサノード10の姿勢の経時変化を3次元モデルへ算出する際に、実際のセンサノード10の姿勢と3次元モデルで算出するセンサノード10の姿勢との間に誤差が生じる虞がある。そして、当該誤差は、3次元モデルの算出に用いるセンサノード10の検出期間が長期間に渡るほど、誤差が積み上げられて大きくなり易い。
【0126】
このため、センサノード10が有する3軸角速度センサとは異なる角速度センサをセンサノード10に追加して誤差を補正してもよいし、角速度センサとは異なるセンサ(例えば、3軸地磁気センサ)をセンサノード10に追加して誤差を補正してもよい。また、第1搬送路51~第4搬送路54の順に搬送される際にセンサノード10の姿勢が一意に定まる箇所が存在する場合、この一意に定まるセンサノード10の姿勢を基準に、センサノード10の3次元モデルを算出して積み上げられる誤差を低減させてもよい。
【0127】
さらに、表示装置40は、第1搬送路51~第4搬送路54のそれぞれの検出結果を表示すると共に、
図33に示すように、画像センサが撮像したセンサノード10の画像を表示してもよい。
【0128】
なお、第1搬送路51、第2搬送路52、第3搬送路53、第4搬送路54それぞれの異常の発生、もしくは異常の予兆が検出可能であれば、センサ11に適用される角速度センサは、2軸角速度センサであってもよし、1軸角速度センサであってもよい。
【0129】
また、表示装置40は、異常の発生、もしくは異常の予兆を検出した際に、センサデータの経時変化を表示可能であってもよい。例えば、第1搬送路51において異常の予兆が検出された際に、検出された時点から1時間前、1日前、1カ月前等に遡った時点に至るまでの期間のうちの所定の期間におけるセンサノード10が検出する第1搬送路51のセンサデータを表示してもよい。この場合、表示装置40は、ディスプレイ上に表示される再生開始スイッチ41および操作停止スイッチ42を作業者3が操作することで、センサデータの経時変化の表示を再生および停止可能に構成されてもよい。また、表示装置40は、ディスプレイ上に表示される再生速度調整スイッチ43を作業者3が操作することで、センサデータの経時変化を表示する際の再生速度の倍率を調整可能に構成されてもよい。
【0130】
このように、センサノード10が検出するセンサデータを表示装置40に表示することによって、センサノード10の姿勢の変化を作業者3が視覚的に確認できる。ところで、本実施形態の設備状態監視システム1によって設備2の異常の発生、もしくは異常の発生の予兆が検出された場合、設備2は、作業者3によって速やかに点検対応等の実施が必要となることが考えられる。そして、作業者3が設備2の点検を行う場合、当該設備2の稼働の停止が必要となる場合がある。
【0131】
しかしながら、必ずしも設備2の点検が必要でない場合であっても、外部環境の変化等に起因して、設備状態監視システム1が設備2の異常の発生、もしくは異常の発生の予兆を検出することも考えられる。このため、設備状態監視システム1が設備2の異常の発生、もしくは異常の発生の予兆を検出しても、設備2の点検が必要でない場合、設備2の稼働を停止させないことが望ましい。
【0132】
これに対して、設備状態監視システム1が設備2の異常の発生、もしくは異常の発生の予兆を検出した場合であっても、表示装置40に表示されるセンサデータを作業者3が確認することで、作業者3が設備2の点検の実施の必要性を判断することができる。例えば、設備状態監視システム1によって設備2の異常の予兆が検出された際に、作業者3がセンサデータの経時変化を確認することで、作業者3による設備2の点検の実施の必要性を判断させ易い。これにより、設備2の不要な稼働停止を回避して設備停止時間を削減することによって、生産効率を向上させることができる。
【0133】
また、設備2の異常は日常的に発生するものでないため、設備状態監視システム1が異常の発生、もしくは異常の予兆の発生を日常的に検出する可能性は低い。しかし、日常的にセンサノード10が検出するセンサデータを作業者3が表示装置40で視覚的、もしくは聴覚的に確認することで、点検を実施する作業者3が初心者であっても、作業者3の設備2の点検実施の必要性を判断し易くできる。すなわち、設備状態監視システム1を設備2の点検を行う作業者3の教育に用いることができる。
【0134】
特に、設備2の異常の判断は、作業者3の感覚的な判断に左右されるため、作業者3の熟練度による影響が出やすい。しかし、設備2の異常を判断するためのセンサデータを視覚的、もしくは聴覚的に作業者3に確認させることで、熟練度の高い作業者3の感覚的な判断を熟練度の低い作業者3へ伝達させ易くできる。すなわち、熟練度の高い作業者3が感覚的に捉えていた勘やコツを、設備状態監視システム1を通じて熟練度の低い作業者3へ教育することができる。
【0135】
〔設備状態監視システム1の作動〕
以上のようにして、設備状態監視システム1が構成されている。続いて、このように構成された設備状態監視システム1の動作について説明する。
【0136】
まず、予め、監視対象となる設備2が正常に動作している際に、センサノード10より、センサ11のセンシング信号などで構成されるセンサデータを送信させる。これが受信部20に受信され、状態検出部30に伝えられる。設備2に備え付けのセンサ2aがある場合には、そのセンサ2aのセンシング信号が示す検出結果についてもセンサデータとして入力することもできる。一方、設備2を作動させる際には、作業者3がその設備2を駆動させることになるため、そのときの動作状態データとなる設備記憶信号や設備動作信号が状態検出部30に入力される。
【0137】
これにより、センサデータが状態観測部31aに入力されると共に、設備記憶信号および設備動作信号がラベルデータ推測部31bに入力される。そして、これらが学習部31cに伝えられることで、設備2が正常に動作しているときの各構成要素のデータが学習され、モデルが作成されて、そのモデルがモデル記憶部31dに記憶される。ラベルデータから設備2の状態も合わせて学習させることができるため、より監視したい箇所、動作に限定したモデルを作成することができる。また、センサノード10が搬送路5のような移動体に設置されることで移動させられる場合には、センサノード10の位置についても特定し、センサデータが得られたときのセンサノード10の位置と対応付けしたモデルが作成される。
【0138】
そして、モデル記憶部31dにモデルが記憶されると、その後は、センサノード10を用いての監視対象となる設備2の異常の発生もしくはその予兆の監視を行う。つまり、センサノード10からのセンサデータ、さらに必要に応じて設備2に備え付けられたセンサ2aからのセンサデータが状態検出部30に伝えられ、そのセンサデータが示す各構成要素2bのデータが推論結果出力部31eに伝えられる。これにより、推論結果出力部31eにおいて、各構成要素2bのデータとモデルとなる学習データとが比較され、各構成要素2bの「異常度合」が算出されると共に、今後の経過時間に応じた「異常度合」が算出され、信号出力部32に伝えられる。
【0139】
続いて、信号出力部32において、推論結果出力部31eから伝えられた各構成要素2bの「異常度合」を予め記憶しておいた対応する閾値と比較する。そして、現在の「異常度合」が閾値を超えている場合には設備2に異常が発生していると判定され、将来的な「異常度合」が閾値を超えている場合には設備2にいつ異常が発生する可能性があるかという異常の予兆が発生していると判定される。
【0140】
このようにして、信号出力部32による判定が行われると、異常の発生もしくはその予兆が判定された等の判定結果が表示装置40に伝えられ、表示装置40による表示が行われる。そして、異常が発生していなければ各設備2が正常であるという表示が行われる。また、異常が発生していたり、異常の予兆が発生していたりする場合には、その設備2が表示されたり、異常発生箇所もしくは異常予兆箇所が3Dマッピング表示などで表示される。さらに、異常の予兆が発生した場合には、表示装置40に異常発生までの残り時間についても表示される。
【0141】
これにより、作業者3は、表示装置40の表示に基づいて、設備2が正常であるか異常であるかを確認することができ、異常が発生していたり、異常の予兆があったりする場合には、それに対処することが可能となる。
【0142】
また、異常発生箇所もしくは異常予兆箇所を特定できることから、交換部品を推定し、自動的にメーカへ交換部品の発注が行われるようにしてもよい。異常の予兆に関しては、いつ頃異常が発生し得るかという異常発生時期が判るため、異常発生時期に応じて交換部品の納期を設定して発注が行われるようにすることもできる。このようにすることで、無駄な在庫を抱えることなく、また異常が発生する前にメンテナンス準備を整えておくことも可能となる。
【0143】
例えば、
図34に示すように、状態検出部30から交換部品を製造している部品メーカAに対して納期を設定して交換部品の発注を掛けるようにする。これにより、部品メーカAは、その納期に交換部品の納入が間に合うように、交換部品の製造に必要な部品を製造している各部品メーカB、Cに対して納期を決めて発注を掛けておくことが可能となる。そして、各部品メーカB、Cについても、その部品を部品メーカAの納期に間に合うように納入できるように、さらに関連する部品メーカに発注を掛けておくことができる。このように、交換部品に関わる各部品メーカへの部品の発注を事前に行っておくことができる。
【0144】
また、同製品を複数ラインで製造している場合に、異常の予兆に基づいて、ライン毎の生産目標台数を再設定することもできる。例えば、1つのラインで異常の予兆が判定された場合に、メンテナンスの為の設備停止時間から日当たりや月当たりの生産目標台数を最小稼働時間で達成できるように、ライン毎の生産目標台数の再設定を行う。これにより、異常の予兆まで考慮した適切な生産目標台数を設定することが可能となる。
【0145】
さらに、設備状態監視システム1が適用される工場において、全体の消費エネルギーと生産台数の相関図を取得していれば、生産台数と消費エネルギーとの関係に基づいて、エネルギー使用状況の要因の切り分けを行うこともできる。例えば、
図35中の折れ線グラフで示すように、一部の設備2について稼働させたり停止させたりすることで生産台数に増減があるのにもかかわらず、棒線グラフで示すように、エネルギー使用量が変化していないような状況があったとする。具体的には、設備2の稼働中には状態(1)、(3)のように生産台数とエネルギー使用量とが相関し、設備2を停止させると状態(4)のように生産台数の減少に伴ってエネルギー使用量が減少する。しかしながら、状態(2)のように設備2を停止させて生産台数が減少しているにもかかわらず、エネルギー使用量が減少していない場合には、停止させた生産に関わっていない設備2の待機電力が大きい可能性がある。
【0146】
このような場合、状態検出部30において該当する設備2に備えられる構成要素2bの「異常度合」の値が大きく現れ、信号出力部32で異常の発生が判定されることになるが、生産台数とエネルギー使用量との関係からも異常の発生を検出できる。
【0147】
また、フィードバック制御をして設備2の一定動作を保っている場合、生産台数とエネルギー使用量とが相関するが、それでも想定以上にエネルギー使用量が増加することもある。例えば、潤滑不足や汚れなどによる摩擦大などの外乱が発生して設備2の出力が徐々に大きくなる場合がある。
【0148】
したがって、設備2の生産台数とエネルギー使用量の時系列変化を設備状態監視システム1で検知すれば、エネルギー使用量における時系列変化が生じたときの要因特定につなげることができる。
【0149】
以上説明したように、本実施形態の設備状態監視システム1では、少なくとも1つの共通のセンサノード10を用いて、複数の設備2が正常に動作している正常のセンサデータを状態検出部30に伝えている。そして、状態検出部30に複数の設備2の正常時の状態を学習データとして学習させている。このため、学習後にセンサノード10から送信されたセンサデータが示す複数の設備2の状態を学習データと比較することで、それぞれの監視対象に振動センサなどを備えなくても監視対象となる複数の設備2の異常の発生やその予兆を検出できる。
【0150】
さらに、設備2の構成要素2bの状態を「異常度合」として表し、構成要素2b毎に異常であることや異常の兆候があることを検出している。このため、複数の設備2のうちのどの設備2のどの構成要素2bに異常が発生もしくはその予兆があるのかを特定することができる。
【0151】
また、生産設備のような製品搬送のための搬送路5がある場合、監視対象となる設備2の数をより多くできるように、センサノード10を搬送路5と共に移動する搬送体として適用する。これにより、生産設備の製品の製造のはじめから終わりまでの設備2の状態を監視することができる。そして、このような生産設備として備えられる複数の設備2の監視を少なくとも1つの共通のセンサノード10によって行うことが可能となる。
【0152】
また、センサノード10に備えるセンサ11を複合センサとし、複数のセンサデータを用いて複合的な処理を行うことで、より精度良く設備2の異常の発生やその予兆を検出することが可能となる。複合的な処理としては、各センサデータの相関を含めた処理を行うことなどが挙げられる。
【0153】
2020年から運用を開始した、気候変動問題に関する国際的な取り組み「パリ協定」によると、今世紀後半のカーボンニュートラルを実現するために、排出削減に取り組むことが求められている。その中で、製品の製造工程で工場から排出されるCO2排出量をゼロにする動きが活発化している。突発故障やメンテナンスなどによる設備停止時間などの生産のムダをなくすことがCO2排出量の低減に重要であり、本実施形態で説明した設備状態監視システム1により設備2の異常の発生やその予兆を検出することで、それを実現できる。すなわち、設備状態監視システム1の適用により、異常発生前に部品の発注・供給ができ、無駄な在庫を持たずして、メンテナンスによる設備停止時間を最小化することができ、CO2排出量削減に大幅に貢献できる。
【0154】
そして、複合センサを搬送路5で搬送することで、各設備2にセンサを設置しなくても、複合センサ1つだけで複数の設備2の状態を監視できる。さらに複合センサを構成するセンサ11の種類の組合せについては適宜選択可能であり、種類によってセンサ11の配置場所を変えることで、センサ性能を最大限に活かすことができる。特に、無線センサ基板15を複数備えることで複合センサを構成すれば、無線センサ基板15の配置場所や組合せに基づいて、センサ性能を最大限に活かす構造を容易に実現できる。
【0155】
また、センサノード10を
図6および
図7に示す構成、つまり複合センサを複数の無線センサ基板15によって構成すると共に多面体形状とし、各面のうち少なくとも1面以上に無線センサ基板15を配置した構成としている。また、センサノード10は、無線センサ基板15を1種類のセンサ11と通信部13が実装された構造とされ、電源部12から電源を供給するとセンサデータを対応の受信部20へ送信する機能を有している。そして、複合センサの中央部に電源部12を配置し、電源部12と無線センサ基板15とを接続することで電源供給を行って、複合センサが動作する構成としている。
【0156】
このような構成とすることで、電源部12の電池容量を多くでき、よりセンサノード10の駆動時間を長くできる。つまり、センサノード10を最小の形状としつつ、最大の駆動時間とすることが可能となる。
【0157】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0158】
例えば、センサノード10の構成例として
図6、
図22、
図23、
図24Bの構成を例に挙げて説明したが、これらの図に示した構成と異なる構成とされていてもよい。例えば、
図6では、センサノード10を正六面体で構成した例を示したが、他の多面体形状で構成しても良い。また、
図6などでは、各無線センサ基板15にセンサ11と通信部13を共に実装した構造としたが、各無線センサ基板15が同じ構造である必要は無い。例えば、複数の無線センサ基板15に対して通信部13が1つのみ備えられていて、複数のセンサ11のセンサデータの送信を1つの通信部13によって行う構造とされていても良い。
【0159】
さらに、上記実施形態では、複数の設備2を監視対象とする設備状態監視システム1について例に挙げたが、複数の監視対象であれば良く、1つの設備2内における異なる構成要素を監視対象としてもよい。例えば、XYステージと加工ヘッドのように、同じ設備2中における異なる部分を監視対象の構成要素とする場合でも構わない。また、ここで説明した設備状態監視システム1の学習済みモデルや、推論結果などを用いて、他のシステムの状態監視を行うことも可能である。例えば、同じ監視対象に対して設備状態監視システム1を適用する場合、システム構築のためのモデル用の監視対象を用いて学習などを行っておき、それを他のシステムの状態監視に用いることもできる。
【0160】
また、上記実施形態で説明した設備状態監視システム1については、構成する各部が1つの場所に備えられたものである必要は無い。例えば、設備2を備える工場内にセンサノード10、受信部20、状態検出部30を備え、工場外に表示装置40を備える。そして、状態検出部30から結果を示すデータが外部のクラウドなどに伝えられるようにしておき、クラウドからそのデータが表示装置40に取り込まれるようにする。このような形態であっても、設備状態監視システム1として成立する。
【符号の説明】
【0161】
1…設備状態監視システム、2…設備、2a…センサ、2b…構成要素、3…作業者3
5…搬送路、10…センサノード、12…電源部、13…通信部、14…筐体
15…無線センサ基板、20…受信部、30…状態検出部、31…機械学習部
31a…状態観測部、31b…ラベルデータ推測部、31c…学習部
31d…モデル記憶部、31e…推論結果出力部、32…信号出力部
40…表示装置