(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103559
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】誘導電力伝達用の導体配置、誘導電力伝達装置、及び誘導電力伝達用の導体配置の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240725BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240725BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240725BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240725BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240725BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 F
H01F5/00 R
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60L53/12
B60L5/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085466
(22)【出願日】2024-05-27
(62)【分割の表示】P 2021534162の分割
【原出願日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】1821029.4
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516149435
【氏名又は名称】ボンバルディアー プリモーフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bombardier Primove GmbH
【住所又は居所原語表記】Eichhornstrasse 3, 10785 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド ヴォロノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ツァインスキ
(57)【要約】
【課題】導体配置内での電磁相互作用を低減した誘導電力伝達用の導体配置、誘導電力伝達装置、及び誘導電力伝達用の導体配置の形成方法等を提供する。
【解決手段】誘導電力伝達用の導体配置等に関し、長手方向軸に沿って配置され、少なくとも1つの導体で形成された少なくとも3つのコイルを備えており、互いに対向して配置され、各コイルの導体セクションが長手方向軸に沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッドを含み、シールドアセンブリの一部として、磁化可能材料物を有しており、磁化可能材料物が、第1~第3のコイル上部及び側面と、第3のコイルの下部と、を覆うように配置されており、少なくとも2つの導体セクションの間に配置されており、かつ、磁化可能材料物は、所定の突起として形成され、当該突起は、巻線ヘッドの長さの少なくとも半分の長さで突出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導電力伝達用の導体配置であって、
当該導体配置が、長手方向軸(LO)に沿って配置され、少なくとも1つの導体で形成された少なくとも3つのコイルである第1~第3のコイルを備えており、
前記長手方向軸(LO)に直交する方向を横方向軸(LA)として、当該横方向軸(LA)に沿って、互いに対向して配置され、前記第1~第3のコイルの各々の導体セクションが、前記長手方向軸(LO)に沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッド(W)を含んでおり、
前記巻線ヘッド(W)に沿って延出するシールドアセンブリの一部として、磁化可能材料物を有しており、
前記第3のコイルを、下側に配置した場合に、前記磁化可能材料物が、前記第1~第3のコイルの上部及び側面と、前記第3のコイルの下部と、を覆うように配置されており、
前記磁化可能材料物は、少なくとも1つの前記巻線ヘッド(W)の内部において、前記第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、非平行な軸に沿って見たときに、少なくとも2つの前記導体セクションの間に配置されており、かつ、
前記第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、少なくとも部分的に平行に延出し、横方向軸に沿って突出する突起として形成されており、
前記突起は、前記巻線ヘッドの長さの少なくとも半分の長さで突出していることを特徴とする誘導電力伝達用の導体配置。
【請求項2】
前記第3のコイルが、前記長手方向軸(LO)に沿って見たときに、前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導電力伝達用の導体配置。
【請求項3】
前記第3のコイルが、前記第1のコイル及び前記第2のコイルと比較して小さい、前記横方向軸(LA)に沿ってなる横方向の寸法を有しており、当該横方向の寸法が、2つの前記巻線ヘッド(W)の間に延出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導電力伝達用の導体配置。
【請求項4】
前記磁化可能材料物が、各巻線ヘッド(W)の内部において、前記第3のコイルの前記導体セクションと、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの一方の前記導体セクションとの間に、配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導電力伝達用の導体配置。
【請求項5】
前記横方向軸(LA)に沿った平面で切断した場合に、前記上部に配置された前記磁化可能材料物の前記横方向の寸法が、前記導体配置の下部に配置された前記磁化可能材料物及び2つの前記導体セクションの間に配置された前記磁化可能材料物の前記横方向の寸法よりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導電力伝達用の導体配置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の誘導電力伝達用の導体配置を備えている誘導電力伝達装置であって、
電磁界を発生させるように構成された一次側と、電磁界を受信するように構成された二次側とを備えており、それによって前記二次側で磁気誘導を生成し、
前記一次側及び前記二次側の少なくとも一方が、前記導体配置を備えていることを特徴とする誘導電力伝達装置。
【請求項7】
前記二次側が、陸上車両に搭載され、前記一次側が、前記陸上車両の周囲に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の誘導電力伝達装置。
【請求項8】
誘導電力伝達用の導体配置の形成方法であって、
当該導体配置を形成するために、少なくとも3つのコイルである第1~第3のコイルを長手方向軸(LO)に沿って配置する工程と、
前記長手方向軸(LO)に直交する方向を横方向軸(LA)として、当該横方向軸(LA)に沿って、互いに対向して配置され、前記第1~第3のコイルの各々の導体セクションが、前記長手方向軸(LO)に沿っているとともに、互いに沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッド(W)を形成する工程と、
前記巻線ヘッド(W)に沿って延出するシールドアセンブリの一部として、磁化可能材料物を配置する工程と、
前記第3のコイルを、下側に配置する場合に、前記磁化可能材料物を、前記第1~第3のコイルの上部及び側面と、前記第3のコイルの下部と、を覆うように配置する工程と、
前記磁化可能材料物を、少なくとも1つの前記巻線ヘッド(W)の内部において、前記第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、非平行な軸に沿って見たときに、少なくとも2つの前記導体セクションの間に配置する工程と、
前記磁化可能材料物を、前記第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、少なくとも部分的に平行に延出し、横方向軸に沿って突出する突起として形成する工程と、
前記突起を、前記巻線ヘッドの長さの少なくとも半分の長さで突出させる工程と、
を含むことを特徴とする誘導電力伝達用の導体配置の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電力伝達用の導体配置(導体構成や導体配列と称する場合がある。)、誘導電力伝達装置(誘導電力伝達配置や誘導電力伝達システムと称する場合がある。)、及び誘導電力伝達用の導体配置の形成方法、特に電磁相互作用を低減した誘導電力伝達用の導体配置等に関する。
より具体的には、本発明は、特に、車両への誘導電力伝達の分野に関する発明である。かかる車両としては、路面走行用車両等(例えば、自動車、トラック、バス)の陸上車両、又は列車やトラム等の軌道系車両とすることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、特に軌道系車両及び/又は路面走行用車両は、誘導電力伝達によって伝達される電気エネルギーによって作動し、特に推進力を得ることができる。
このような車両は、交流電磁界を受信し、電磁誘導により交流電流を生成するように適合された受信装置を含む車両のトラクションシステム又はトラクションシステムの一部である回路構成(回路配置)を含むことができる。
更に、このような車両は、交流を直流に変換するように適合された整流器を含むことができる。
この直流は、トラクション・バッテリーの充電や電気機械の作動に使用することができる。そして、後者の場合、直流はインバータによって交流に変換される。
【0003】
又、誘導電力の伝達は、例えば、2セットの三相巻線を使用して行われる。
すなわち、第1のセットの巻線である一次巻線は、地上に設置され、ウェイサイドパワーコンバーター(Wayside Power Converter、以下、単に、WPCと称する場合がある。)から給電される。
一方、第2セットの巻線である二次巻線は、車両に設置される。例えば、路面走行用車両の場合は、その複数の車両における台車のうちの一部の下側に、取り付けることができる。
かかる第2セットの巻線又は一般的に二次側は、しばしばピックアップ構成又はレシーバーと呼ばれる。
そして、第1セットの巻線及び第2セットの巻線は、それぞれ電気エネルギーを車両に伝達するための高周波トランスを形成している。
これは、車両が動いていない静的状態でも、車両が動いている動的状態でも、行うことができる。
【0004】
又、一次巻線及び二次巻線は、それぞれ複数のコイルで形成される導体配置を示している。そして、各導体配置、特に各コイルは、相線とも呼ばれる電気導体、例えばケーブルで形成することができる。
【0005】
一次巻線と二次巻線の間に大きなクリアランスがあるため、形成されたトランスの動作特性は、エアギャップが無視できるか、或いは小さい密閉された磁気コアを持つ従来のトランスの動作特性とは異なっている。
すなわち、エアギャップが大きいと、相互誘導結合が小さくなり、インダクタンスのリークが大きくなる。
【0006】
かかるインダクタンスのリークは、通常、それぞれの導体配置の各コイルとの直列インダクタンスとして作用する。そのため、高出力を伝達するためには、例えばkHzの動作周波数においてインダクタのリアクタンスを補償するために、適切なキャパシタンスを有する必要がある。
高周波トランスの二次側では、主インダクタンス又は相互インダクタンス及び/又はインダクタンスのリークからなるインダクタンスと、補償容量からなるキャパシタンスの組み合わせが共振回路を形成していることが好ましい。
共振回路の自然共振周波数が動作周波数と等しくなるように、インダクタンスとキャパシタンスのインピーダンス値を選択すると、完全なインピーダンスキャンセルが起こることになる。
このような共振回路は「同調」と呼ばれ、それぞれ調整された回路の例は、例えば、本出願人の先の特許出願である特許文献1に開示されている。
【0007】
又、導体配置内に複数のコイルが存在し、それぞれが補償容量を構成している場合、一般的には各コイルが同調した共振回路を形成することが好ましい。
具体的には、これらのコイルは、同じ動作周波数に調整されているか、より一般的には、共通の動作点で動作可能であることが好ましい。
【0008】
そこで、まずは、コイル間の電磁相互作用のため、これを実現するのが難しい場合があり、コイルは、通常、導体配置内で互いに近接して配置されている。
このような電磁相互作用は、特に、コイルの磁界が互いに影響し合うことによるコイルのインダクタンスの違いに関連し、かつその結果として生じることがある。
【0009】
又、温度変化や経年変化により、補償容量の許容値が大きくなり、各コイルが形成する共振回路の共振周波数が変化する場合がある。
特に、各回路の補償容量が異なる場合には、各回路の共振動作に異なる影響を与え、共振回路が不調になる場合がある。
その結果、変更された共振周波数は、動作周波数や他の回路の共振周波数と一致しなくなる場合がある。
このような現象は離調と呼ばれるが、誘導電力伝達装置(誘導電力伝達システム)の全体的な性能と電力伝達能力を逸脱させることになる。
又、トランスの一次側に反射する二次側のインピーダンスが容量性になる場合がある。
その結果、WPCの電圧に対して電流が先行することになり、この電流が先行すると半導体スイッチのソフトスイッチング状態がなくなり、電力損失が大幅に増加するため、非常に好ましくない。
しかも、このような動作条件では、WPCが過熱してオフになり、必要な電力供給が妨げられてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】GB2507533 A(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、所定導体配置の構成や所定導体配置の形成方法によって、一次側の導体配置又は二次側の導体配置の操作性を、改善することであり、特に所望の共振動作を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の目的は、添付の特許請求の範囲における独立請求項で定義された主題としての発明によって解決される。
又、有利な実施形態の発明については、従属請求項で定義されている。
なお、本明細書の上記序論部分で言及された発明の特徴は、言及されていない場合であっても、或いは技術常識として、他から明らかな場合には、個別に又はそれらの任意の組み合わせで、現在開示されている解決策にも提供され得る。
【0013】
又、本発明の基本的な考え方によれば、導体配置のコイル間の望ましくない電磁相互作用を制限するための解決策が提案されており、導体配置は誘導電力の伝達に使用される。
言い換えれば、本発明は、少なくともいくつかのコイルの少なくとも部分的な電磁デカップリングを可能にする。従って、コイルのインダクタンスを同様のレベルに維持することができる。このようにして、回路の同様の動作点及び共振周波数を達成することができる。
【0014】
又、本発明者らは、導体配置のコイル間の電磁相互作用の観点から、上述の離調は特に逆効果であることを確認した。
具体的には、あるコイルが比較的強い離調を起こした場合、電磁相互作用によって他のコイルに影響を与え、それによって導体配置全体が更に離調する可能性がある。
繰り返しになるが、本発明によれば、電磁相互作用を制限することにより、導体配置全体が更に離調するのを制限したり、或いは防止したりすることができる。
【0015】
例えば、電磁デカップリングは、少なくとも1つのコイルの周囲の透磁率を高めて、そのコイルから発生する電磁界をコイルの近くに集中させたり、他のコイルへの影響を制限するなど、所望の方法で誘導したりすることで実現できる。
又、例えば、限られた長さの閉じた磁力線を作ることで、電磁界、特にその磁束をコイルの近くに保つことができる。
【0016】
或いは、コイルの周囲の透磁率を低下させるべく、例えば、大きなエアギャップを設けることにより、コイルの磁束が隣接するコイルに影響を与える範囲を制限することができる。例えば、コイルの磁束が、容易に転送されないか、別の言い方をすれば、全く到達しないと言える。
従って、例えば、あるコイルと、他のコイルとの距離を、少なくとも一方向に局所的に長くすることが好ましい。
いくつかの実施形態によれば、この距離は、上述した透磁率の増加を達成するために、結果として生じるギャップに磁化可能材料物を配置するために使用することが好ましい。
このように、上記の透磁率に関する両方の利点を組み合わせることで、望ましくない相互作用を確実に防止することができる。
【0017】
なお、ここでいう透磁率とは、磁界の強さをH、磁束密度をBとしたときに、磁界の強さと磁束密度の間の関係を、B=μHという関係式で表したときの定数μであって、隣接するコイルから発生する磁界の形成や拡大をサポートするコイルの周囲の能力を意味している。
【0018】
このようにコイル間の電磁相互作用を制限することで、離調のリスクが制限され、一般的に全てのコイルの共通動作点を維持することが容易になる。
特に、1つのコイルが経年劣化や温度変化の影響を受けたときに、いずれかのコイルが制御不能な離調を起こすリスクを抑えることができる。
【0019】
更に、上述の対策を導入することは、いわゆる巻線の頭の部分である巻線ヘッドにおいて、特に効果的であることが明らかになっている。
これは、これらの巻線ヘッドでは、コイルが近接しているためである。
又、巻線ヘッドの磁束は、導体配置の中央部(後述するアクティブセクションを含む部分)に比べて、例えば3~5倍程度大きくなることがある。
すなわち、例えば、この領域に既知の電磁シールドアセンブリを設けることにより、巻線ヘッドにフェライト又は他の磁化可能材料物の濃度が高くなるためである。
従って、巻線ヘッドの領域でコイルを互いに電磁デカップリングするための本発明の手段を提供する場合には、離調を制限することを特に良好に達成することができる。
【0020】
より詳細には、誘導電力伝達用の導体配置が提案されており、例えば、列車や路面走行用車両等の陸上車両への誘導電力伝達用の導体配置が提案されている。
導体配置は、長手方向軸に沿って、例えば互いに隣り合って配置され、少なくとも1つの導体で形成されることが好ましく、各コイルが1つの個別の導体で形成されることがより好ましい。そのため、少なくとも3つのコイルを備えることが好ましい。
導体配置につき、互いに対向して配置された少なくとも2つの巻線ヘッドからなり、それぞれのコイルの導体セクションが長手方向に沿って互いに延びていることが好ましい。
ここで、2つの、又はそれぞれの巻線ヘッドのうち少なくとも1つの巻線ヘッド内で、長手方向軸に沿って延出する第1のコイル(以下、外側コイルと称する場合がある。)及び第2のコイル(以下、外側コイルと称する場合がある。)の導体セクションが、互いに所定距離(第1の距離)で配置されている。
従って、第1の距離は、ゼロに等しいかそれよりも大きい程度である。従って、長手方向軸に沿って延出する第3のコイル(以下、中央コイルと称する場合がある。)の導体セクションは、更なる導体セクションに対して、すなわち、長手方向軸に沿って延出する第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションに対して、第2の距離で配置されている。かかる第2の距離は、第1の距離よりも大きくなっている。
【0021】
又、言い換えれば、第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションは、第3のコイルの導体セクションよりも互いに近い位置に配置されていることが好ましい。
第2の距離は、互いに同等であってもよく、一般的にはゼロとは異なる。以下、単数形で1つの第2の距離のみに言及する場合、他に明らかになっていない、又は言及されていない場合、これは両方の第2の距離に関連している場合がある。
又、2つの第2の距離を定義する代わりに、第1のコイルと第3のコイルの間の距離に関連する第2の距離と、第2のコイルと第3のコイルの間の距離に関連する第3の距離を定義することができ、これらの距離は再び第1の距離よりも大きくなる。
【0022】
又、言い換えれば、2つの導体セクション(第1のコイル及び第2のコイルの導体セクション)は、定義された軸に沿って互いに近い、或いは同じ位置に、すなわち、第1の距離で配置されていることが好ましい。
一方、第3のコイルの更なるなる導体セクションは、第1の距離に比べて大きな距離として配置される。
なお、第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションのいずれかに対する更なる導体セクションの距離は、第1の距離よりも大きいことが好ましい。
【0023】
従って、第2の距離は、第1の距離の少なくとも1.5倍、又は第1の距離の少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は最大20倍であることが好ましい。
更に、又は代替的に、第1の距離は、巻線ヘッド内のコイルの長手方向のセクションの長さの10%未満、5%未満、又は2%未満であることが好ましく、第2の距離はそれよりも大きいことが好ましい。例えば、第1の距離の1.5倍である。
【0024】
一般的に、第1の距離及び第2の距離は、コイルの同等の特性が達成されるように、例えば、望ましくない相互作用を適宜制限することによって、選択することが好ましい。
このような特性は、インダクタンス、共振挙動、誘導電流の振幅及び/又は周波数等である。
この明細書の流れでは、残りのコイルとの距離が大きいコイルは、例えばその間に配置されることによって、他のコイルとの最も及び/又は最大の相互作用にさらされるコイルである可能性がある(以下の説明を参照)。
【0025】
なお、本明細書の開示において、コイルの導体セクション、特に巻線ヘッド内のコイルの導体セクションに言及する場合、以下の各事例で具体的に言及されていない場合があっても、これは一般的に長手方向軸に沿って延出する導体セクションに関係する可能性がある。
従って、以下の巻線ヘッド内の導体セクションに言及する際には、巻線ヘッドに含まれる、又は少なくとも巻線ヘッドにつながる可能性のある横方向の導体セクションは考慮されない可能性がある。
【0026】
更に、長手方向軸に沿ったこのような導体セクションの延長は、長手方向軸に対して、平行な直線的な延長に限定されるものではない。すなわち、任意であり得る。むしろ、導体セクションは、その延長の1つの、例えば、ベクトル方向成分、好ましくは支配的なものが、長手方向軸に沿って延びている限り、長手方向軸に沿って延びていると考えることができる。
これは、例えば、楕円形状のコイルや、巻線ヘッド内の導体セクションの一般的に湾曲した延長部に関するものである。
従って、導体セクションは、長手方向軸に直交して延びる横方向軸に沿って延びていない、又は、より少ない又は支配的な程度でしか延びていない限り、長手方向軸に沿って延びていると考えることができる。
同様に、任意の導体セクションは、長手方向軸に沿って互いに離間している2つの導体セクション及び/又はコイルの2つの領域を接続する場合には、長手方向軸に沿って延びているとみなすことができる。
このような構成は、接続されるセクション又は領域の間に延出する導体セクションの正確なコース又は延長に関係なく、有効であるかもしれない。
【0027】
巻線ヘッドとは、一般的に、巻線方向から見て、コイルの延出する方向が逆になっている領域を指す。例えば、導体は上方に向かって巻線ヘッドに入り、反対側の巻線ヘッドに向かって下方に向かって巻線ヘッドから出ることがある。
【0028】
又、コイルは、相巻線、又は導体配置の極と呼ばれることもある。そして、一般的に、コイルは、導体によって形成された少なくとも1つの完全又は大部分が閉じたループ又は巻線から構成されている。例えば、ループ又はコイルの開き角度は90°に等しいか、又はそれ以下であり、従って大部分が閉じられていることが好ましい。
コイルは、複数の完全又は大部分が閉じた複数のターン(巻き)、例えば、1つのコイルにつき少なくとも2つのターンで構成されていることが好ましい。
かかるターンの開口角又はセクションは、互いに重ならないように、例えば、コイルの異なる、好ましくは反対側に配置されることによって、配置されていることが好ましい。
【0029】
又、コイルは、導体によって形成されていることが好ましい。好ましくは、少なくともいくつかの、好ましくはすべてのコイルが、個々の導体、すなわち、1つのコイルにつき1つの導体によって形成される。
かかる導体は、三相構造における相線と称せられることもあり、又、ケーブルと称せられることもある。一般的に、各コイルは、三相交流電流の一相を二次側で生成したり、又は一次側で三相交流電流の一相によって動作させたりすることが好ましい。
【0030】
導体配置につき、長手方向軸と、好ましくは、長手方向軸に対して斜めに、例えば直交して延出する横方向軸とを有することが好ましい。
両軸は、複数のコイルの少なくとも1つが形成される平面内に、又はその平面に平行に延出していることが好ましい。
なお、「コイルが形成されている平面」とは、コイルが形成されている任意の主平面、又は主平面としての例えば、コイルによって覆われた又は囲まれた領域の少なくとも50%を含む平面、及び/又はコイルの導体長の少なくとも50%を含む平面に関するものであることが好ましい。
更に、又は代替として、上記の表現は、巻線ヘッドの間に延出するコイルの平面、及び/又は、以下に更に詳しく説明するように、コイルのアクティブセクションを含む平面に関するものであることが好ましい。
【0031】
又、コイルは、例えば、導体配置を長手方向軸に沿って見た場合に、長手方向軸に沿って互いに隣接して配置されていることが好ましい。
但し、条件によっては、逆に長手方向軸に沿って、互いにずれている配置であることも好ましい。
これには、少なくともいくつかのコイルの間に距離、ピッチ、又は空間が存在することが含まれる。しかしながら、好ましくは、コイルは少なくとも部分的に互いに重なり合っており、長手方向軸に沿って隣り合って配置されても、長手方向軸に沿って見たときにコイルの順序が明らかである限り、部分的な重なり合いも含まれる。好ましくは、横方向軸に沿って、コイルのそれぞれの変位は存在しない。
【0032】
一般的に、コイルの中心、例えば、幾何学的中心及び/又はコイルで囲まれた領域の中心は、長手方向軸に沿って互いに隣接して配置されていることが好ましいが、その間に距離があることがより好ましい。
かかる距離は、長手方向に沿って隣接する2つのコイルのうちの少なくとも1つの寸法の少なくとも4分の1、例えば、かかる寸法の約半分又は3分の1とすることができる。
更に、それぞれの中心は、長手方向軸に一致するか、又は長手方向軸に沿って延出する共通の直線に沿って配置されていることが好ましい。
【0033】
各コイルは、長方形状又は楕円形状であることが好ましく、各コイルは同じ寸法及び形状を有していることがより好ましい。
各コイルは、互いに対向及び/又は平行に配置された2組のセクションを有していることが好ましく、一方のペアは巻線ヘッドの一部であり、他方のペアはいわゆるアクティブセクションである。
更に、又は代わりに、各コイルは、2つの比較的に長いセクションと2つの比較的に短いセクションを有していることが好ましく、かかる長いセクションは、好ましくは互いに対向及び/又は平行して延出しており、同様のことが好ましくは短いセクションにも適用される。長い部分はアクティブセクションであり、短い部分は巻線ヘッドの一部であることが好ましい。
【0034】
コイルのアクティブセクションは、誘導電力の伝達に関するコイルの特性を定義又は支配することができる。
加えて、又は代替として、アクティブセクションは、誘導電力伝達中に、例えば、一次側と二次側のそれぞれの他方に配置された更なる導体配置と相互作用(及び/又は協調)することによって、共振電磁場を生成するように構成されていることが好ましい。
一般的に、かかるアクティブセクションは、コイルの長いセクション及び/又はコイルのいわゆるポールレッグ(極脚)の少なくとも一部によって形成されるか、又はそれらを形成することが好ましい。
又、かかるアクティブセクションは、導体配置の横方向軸に沿って延出していることが好ましく、又、導体配置の長手方向軸(縦方向軸)に沿って延出する更なる短い巻線ヘッドセクションによって接続されていることが好ましい。
【0035】
すなわち、各コイルは、長手方向軸及び横方向軸に沿って、或いは平行に延出するセクションやセグメントを有することが好ましいが、特に、長手方向に沿った2つのセクションと横方向に沿った2つのセクションを有することが好ましい。
横方向軸に平行に延出するセクションは、アクティブセクションとも呼ばれる。横方向軸は、好ましくは長手方向軸に直交して延び、長手方向軸を横切ることが好ましい。
【0036】
コイルは、実質的に平らな構造として形成されていることが好ましい。
従って、これらのコイルは、共通の2次元平面内及び/又は平面に平行に配置されていることが好ましい。
かかる平面は、導体配置の上述の横方向及び長手方向軸(縦方向軸)で構成されていることが好ましい。
共通の平面内に延在する場合、当該平面は、例えば、導体の厚さ(例えば、その直径)によって定義される、限られた厚さを有することができることを理解されたい。
一方、少なくとも2つのコイル間の重なり、積層、交差の位置では、平面の厚さは、導体の厚さ又はそれらの直径のそれぞれの倍数によって定義されていることが好ましく、例えば、それぞれの交差では、複数の導体セクションが互いに重なり合って配置されるからである。
【0037】
既知の解決策によれば、巻線ヘッドを形成するコイルの導体セクションの少なくとも一部は、当該コイルのアクティブ部を形成する導体セクションとは異なる場所、例えば、異なる垂直高さに配置されていることが好ましい。
例えば、これらの異なる導体セクションは、互いに相対的に角度がついていることが好ましい。
この場合、コイルが形成される平面は、両方の高さレベルを構成するような厚さを有していることが好ましく、上述したように、巻線ヘッドの間に延び、従ってアクティブセクションを構成する主平面に関連していることも好ましい。
【0038】
一般的に、横軸(横方向軸)及び縦軸(縦方向軸)は、いずれも垂直軸(垂直方向空間軸)に対して垂直に配向することができる。かかる垂直軸は、好ましくは、第1及び第2の側面の他方に向かって配向し、及び/又は、電力伝達の主な方向に平行に延出することが好ましい。
又、垂直軸は、重力の方向に沿って配向してもよいが、好ましくは、それとは反対に配向することが好ましい。
「上」、「下」、「横」又はそれらのそれぞれの等価物などの方向を指す本開示で使用される方向に関する用語は、前述の縦軸、横軸、及び縦軸において、関連して用いることができる。
【0039】
第1のコイル、第2のコイル、第3のコイルへの言及が、特になされていないか、或いは、他に明らかでない場合、一般的に交換可能である。すなわち、第1、第2、第3の用語は、明確な順序を定義しているわけではない。
更に、好ましい実施形態では、コイルの1つは、長手方向軸に沿って他のコイルの間に配置されており、すなわち、他のコイルに対してより大きな距離に配置されている第3のコイルである。
【0040】
より正確には、本発明の配置及び方法の一実施形態によれば、第3のコイルは、長手方向軸に沿って見たときに、第1のコイルと第2のコイルの間に少なくとも部分的に配置されていることが好ましい。
これは、中央側のコイルが、更に外側のコイルとの電磁相互作用によって最も影響を受ける可能性が高いという点で有益である。
従って、導体配置内の全体的な電磁相互作用を大幅に減少させることができるので、本発明の手段を用いて中央コイルを外側コイルから切り離すことが、特に有利である。
【0041】
一般的に、第1の距離及び第2の距離は、任意の共通の軸に沿って測定することが好ましく、以下の実施形態によれば、特に垂直軸又は水平軸、例えば、横方向軸に沿って測定することができる。
【0042】
具体的には、本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の一態様によれば、第1の距離及び第2の距離は、複数のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対し、平行な軸に沿って延出していることが好ましい。
かかる平面は、上述したような主平面であることが好ましい。又、かかる平面は、所定の垂直軸(空間軸)に対して直交するように延出する水平面であることが好ましい。
一方、距離が測定される軸は、上述したように、横方向軸であることが好ましい。このように構成することによって、コイルの水平方向の変位を提供することができる。
【0043】
従って、所定軸に沿って、巻線ヘッド内で、2つのコイル又はその導体セクションをそれぞれ、好ましくは同じ位置、例えば、同じ横方向の位置に配置することが好ましい。
一方、第3のコイルの導体セクションを、他の導体セクションと比較して異なる横方向の位置に配置することが好ましい。
特に、異なる横方向の位置は、導体配置の幾何学的中心に対して、より内側に、及び/又は、幾何学的中心により近い位置に配置することができる。
【0044】
従って、例えば、第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションが、それぞれ巻線ヘッドの外側セクションを形成し、第3のコイルの導体セクションが、内側導体セクションを形成していることが好ましい。
かかる内側導体セクションは、例えば、反対側の巻線ヘッドに面していることが好ましく、逆に外側セクションよりも近くに位置していることが好ましい。
【0045】
これに関連して、第3のコイルは、第1のコイル及び第2のコイルに比べて縮小された横方向の寸法、別の言い方をすれば、縮小された高さを有していることが好ましい。そして、かかる横方向の寸法は、巻線ヘッドの間に延出していることが好ましい。
具体的には、横方向の寸法は、好ましくは長手方向軸に直交して延出する上述の横方向軸に沿って測定されることが好ましい。
コイルの実用的な寸法を考慮した場合、これはコイルの特性、例えば誘導電流に大きな影響を及ぼさないかもしれない。
しかしながら、この限られた寸法を補うために、第3のコイルの他の測定値や特性を適宜調整することも可能である。そのためには、第3のコイルの導体において、例えばその直径及び/又は長手方向軸に沿った長手方向の寸法を調整し、特に大きくすることが好ましい。
【0046】
或いは、第1の距離及び第2の距離は、複数のコイルの少なくとも1つが形成される平面に非平行な軸に沿って延出していることが好ましい。特に、第1の距離及び第2の距離は、垂直軸に沿って延出していることが好ましい。
よって、例えば、第1~第3のコイルの導体セクションは、巻線ヘッド内で互いに上に配置されていることが好ましく、別の言い方をすれば、互いに上に配置されていることが好ましい。しかしながら、それらは、互いに異なる距離だけ離れていることが好ましい。
特に、2つのコイル(第1のコイル及び第2のコイル)は互いに近接して配置されていることが好ましく、一方、残りの第3のコイルは、それよりも大きな、第2の距離で配置されていることが好ましい。
こうすることで、この第3のコイルと、第1のコイル及び第2のコイルのいずれかとの間の電磁相互作用を制限することができる。
【0047】
上述のように、第1の距離と第2の距離は、一般的に垂直方向の距離であり、すなわち垂直軸に沿って測定されることが好ましい。
【0048】
又、本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の更なる実施形態によれば、各巻線ヘッド内で、第3のコイルの導体セクションと第1のコイル及び第2のコイルの一方の導体セクションとの間に磁化可能材料物が配置されることが好ましい。
具体的には、磁化可能材料物は、第3のコイルと、第1のコイル及び第2のコイルのそれぞれ隣接する1つとの間に配置されていることが好ましい。そのためには、残りのコイルに対する第3のコイルの距離を長くすることが特に有効である。
より具体的には、巻線ヘッド(W)に沿って延出するシールドアセンブリの一部として、磁化可能材料物を有しており、第3のコイルを、下側に配置した場合に、磁化可能材料物が、第1~第3のコイルの上部及び側面と、前記第3のコイルの下部と、を覆うように配置されており、少なくとも1つの前記巻線ヘッド(W)の内部において、第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、非平行な軸に沿って見たときに、少なくとも2つの導体セクションの間に配置されており、かつ、磁化可能材料物は、第1~第3のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、少なくとも部分的に平行に延出し、横方向軸に沿って突出する突起として形成されており、突起は、巻線ヘッドの長さの少なくとも半分の長さで突出している構成である。
【0049】
一般的に、磁化可能材料物は、磁束に対して完全に透過性ではないため、電磁場、より正確には隣接するコイルの磁束を所望の方法で誘導することができる。代わりに、磁束は少なくとも部分的に磁化可能材料物の方向に導かれることがある。
従って、かかる磁化可能材料物は、各コイルの近くに磁束を集中させるのに役立ち、その結果、隣接するコイルを互いに磁気的にシールドすることができる。
好ましくは、閉ざされた又は短い磁力線が形成されるような方法で行われる。又、磁化可能材料物は、例えば、磁束及び特に各電磁界の磁力線を適宜誘導することにより、隣接するコイルの磁界が互いに交差することを回避又は少なくとも制限することができる。
【0050】
本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の一例では、磁化可能材料物は、第3のコイルの周りの閉じた磁力線の形成が促進されるように、配置されることが好ましい。
更に、又は代わりに、第1のコイル及び/又は第2のコイルの閉じた磁力線の形成が促進されるように、磁化可能材料物を配置することが好ましい。
そのために、磁化可能材料物は、第3のコイルと、第1のコイル及び第2のコイルの少なくとも一方との間に延出する突起を形成していることが好ましい。
かかる突起は、例えば、横方向軸に沿って突出していることが好ましく、長手方向軸に沿って規定の長さ、例えば、巻線ヘッドの長さの少なくとも半分で延出していることが好ましい。
一般的に、磁化可能材料物は、巻線ヘッド内で、第3のコイル、及び/又は第1のコイルと第2のコイルの少なくとも1つ、或いは、好ましくは両方を、少なくとも2つの側面、好ましくは3つの側面で取り囲んでいる。
【0051】
一般に、磁化可能材料物は導電性が小さく、例えば、フェライトであることが好ましい。その結果、シールド材に誘導される電流の影響が低減される。
【0052】
より一般的に言えば、磁化可能材料物は、強磁性、常磁性又はフェリ磁性であることが好ましい。
かかる磁化可能材料物は、少なくとも10の磁化率を有することが好ましく、少なくとも50の磁化率を有することがより好ましい。
【0053】
本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の更なる実施形態では、複数のコイルの少なくとも1つが形成されている平面に非平行な軸に沿って見たときに、磁化可能材料物が、それぞれの導体セクションの間に配置されることが好ましい。
【0054】
上述したように、本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の実施形態によれば、磁化可能材料物は、突起物として形成される。
かかる突起物は、コイルの少なくとも1つが形成されている平面に対して、少なくとも部分的に、平行に延出していることが好ましく、より具体的には、ある方向に突起していることが好ましい。
例えば、かかる突起物は、第3のコイルと、第1のコイル及び第2のコイルの少なくとも一方との間に形成される空間に水平に突出していることが好ましい。
【0055】
本発明の導体配置及び導体配置の形成方法の一態様によれば、磁化可能材料物は、各巻線ヘッドに沿って延出するシールドアセンブリの一部であることが好ましい。
かかるシールドアセンブリは、一般に、導体配置によって生成される電磁場から周囲を遮蔽するように構成されていることが好ましい。
それぞれのシールドアセンブリの例は、例えば、本出願人の先の開示であるEP2841293 B1公報に見出すことができる。
導体セクションの間に延出する磁化可能材料物は、シールドアセンブリの一部として直接配置及び/又は形成することができるので、この態様は、コストの面で有益である。従って、磁化可能材料物を所望の方法で配置するために、固定具の追加の運搬部材を必要としない。
【0056】
製造コストを更に抑えるためには、上述の方法で導体セクションの間に配置された磁化可能材料物、例えば、突起物が、シールドアセンブリのより大きな部分を形成する一体型の設計を提供することが好ましい場合がある。
例えば、かかる突起物は、例えば巻線ヘッドに沿って長手方向に延出する細長いシールド部材から突出していることが好ましい。
かかる細長いシールド部材は、導体セクションの間に配置された材料とは別に、導体配置の外側及び/又は上部、ならびにその側面を覆うように、C字型、U字型、又はL字型の少なくとも一つの断面を有していることが好ましい。
【0057】
又、各巻線ヘッドの中で、第3巻線の導体セクションの、第1巻線及び第2巻線とは反対側の面に、磁化可能材料物を配置していることが好ましい。
又、各巻線ヘッド内で、第3巻線の導体セクションの外部に面する側、特に一次側又は二次側の他方を、それぞれの磁化可能材料物で覆ったり、シールドしたりすることが好ましい。
又、垂直軸に対して、磁化可能材料物は、第3巻線の導体セクションの下に配置されていることが好ましい。
更に、それぞれの磁化可能材料物は、第1及び/又は第2のコイルの垂直方向の上に配置されていることが好ましい。コイルの上下にあるこれらの材料は、磁化可能材料物の更なる部分によって互いに接続されていることが好ましく、それによって全体的なCプロファイルが形成される。
【0058】
これは、好ましくは、そのような材料の水平な突起によって行うことができ、この突起は、それぞれの材料が上述の方法で導体セクションの間にも配置されている場合には、当該それぞれの材料と平行に延出することが好ましい。
それぞれの材料は、シールドアセンブリの断面プロファイルの水平方向の脚部、例えば、それぞれの外形であるCプロファイル又はEプロファイルの下側の脚部を形成することが好ましい。
なお、Eプロファイルは、上述の方法で導体セクションの間に磁化可能材料物を提供する場合に達成されることがあり、この場合、磁化可能材料物は、Eプロファイルの中間脚部又は中間突起部を形成する。いくつかの一般的な態様として、シールドアセンブリは、E断面プロファイルを有していることが好ましい。
【0059】
本明細書に記載されたプロファイルのいずれも、シールドアセンブリの断面プロファイルであることが好ましい。
かかる断面の平面は、巻線ヘッド内の導体セクションに対して直交して延出していることが好ましく、及び/又は、水平な空間平面に対して直交して延出していることが好ましい。
【0060】
又、本発明は、長手方向軸に沿って配置され、少なくとも1本の導体で形成された少なくとも3つのコイルを含む導体配置に関する。
かかる導体配置が、互いに対向して配置され、各コイルの導体セクションが長手方向軸に沿っているだけでなく互いに沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッドを含んでおり、磁化可能材料物が、少なくとも1つの巻線ヘッドの内部の少なくとも2つの導体セクションの間に配置されていることを特徴とする。
【0061】
本発明の導体配置は、第1及び第2の距離からなる導体配置に関して議論された、上述又は以下に議論された特徴、実施形態、及び態様のいずれかを含んでいることが好ましい。
具体的には、同様に称される特徴に関して上述した定義、説明、実施形態、及び変形は、磁化可能材料物からなる本導体配置にも適用されることが好ましい。
【0062】
より具体的には、上述した第3のコイル、例えば、長手方向に沿って複数のコイルの間に配置されたコイルの導体セクションと、第1のコイル及び第2のコイルの一方との間に着磁可能な材料を配置していることが好ましい。
又、磁化可能材料物は、例えば水平方向の突起物として形成されていることが好ましい。
しかしながら、相違点は、第1及び第2の距離からなる導体配置とは逆に、巻線ヘッド内の導体セクションのそのような不均等な間隔が必須ではないことである。それどころか、導体セクションの間隔が等しい、又は一般的に異なる場合でも、少なくとも2つの導体セクションの間(例えば垂直方向の間)、特に長手方向軸に沿って延出するセグメントの間に磁化可能材料物を配置すると、本発明の利点が少なくとも部分的に達成されることが決定されている。
【0063】
本発明は更に、電磁場を生成するように構成された一次側と、電磁場を受信するように構成された二次側とを備え、それによって二次側で磁気誘導を生成する誘導電力伝達装置であって、一次側及び二次側の少なくとも一方が、所定の導体配置を備えている誘導電力伝達装置に関する発明である。
一次側及び二次側は、一般的に、上述及び後述の例のいずれかに従って構成されていることが好ましい。
例えば、一次側は静止していて、例えば周囲に設けられていることが好ましく、一方、二次側は可動していて、例えば車両に搭載されていることが好ましい。
なお、本発明の一般的な側面として、本明細書に開示されている導体配置は、一次側及び二次側のいずれにおいても使用することができ、一方、コイル間の電磁相互作用を制限することは、二次側において特に有益である。
【0064】
要約すると、二次側は陸上車両に搭載して配置し、一次側は陸上車両の周囲、例えば、陸上車両が移動する地面に配置することが好ましい。
【0065】
又、本発明は、誘導電力伝達用の導体配置を形成する方法に関する。
この形成方法は、導体配置の少なくとも3つのコイルを、コイルが長手方向軸に沿って配置されるように形成することが好ましい。
そして、互いに対向して配置され、各コイルの導体セクションが、長手方向に沿っているだけでなく互いに沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッドが形成されていることが好ましい。
そして、2つの巻線ヘッドのうち少なくとも1つの巻線ヘッド内で、長手方向軸に沿って延出する第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションが、互いに第1の距離で配置されていることが好ましい。
更に、第1の距離はゼロに等しいかそれよりも大きく、長手方向軸に沿って延出する第3のコイルの導体セクションは、更なる導体セクション、すなわち第1のコイル及び第2のコイルの導体セクションに対して第2の距離で配置され、第2の距離は第1の距離よりも大きくなるようにすることが好ましい。
【0066】
又、本発明は、更なる誘導電力伝達用の導体配置の形成する方法に関する。
この形成方法は、導体配置の少なくとも3つのコイルを、コイルが長手方向軸に沿って配置されるように形成することが好ましい。
そして、互いに対向して配置され、各コイルの導体セクションが、長手方向に沿っているだけでなく互いに沿って延出する、少なくとも2つの巻線ヘッドが形成されていることが好ましい。
そして、磁化可能材料物を、少なくとも1つの巻線ヘッド内の、例えば、長手方向軸に沿って延出する、少なくとも2つの導体セクションの間に配置されることが好ましい。
【0067】
本発明の導体配置の形成方法によれば、以前及びその後に説明した相互作用、動作状態、及び機能のいずれかを提供するために、任意の更なるステップ、任意の展開、又は任意の更なる特徴を含んでいることが好ましい。
具体的には、導体配置の特徴に関する前後の説明及び展開のいずれも、同等の方法の特徴にも適用することが好ましいい。
そして、一般的に、導体配置の形成方法は、前後の実施例のいずれかによる導体配置で実現及び/又は実施されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による誘導電力伝達装置の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の二次側又は導体配置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、先行技術による二次側の巻線ヘッドの詳細図である。
【
図4】
図4は、
図2による二次側の巻線ヘッドの詳細図である。
【
図5】
図5は、本発明の更なる実施形態による二次側の巻線ヘッドの詳細図である。
【
図6】
図6は、本発明の更に別の実施形態による二次側の巻線ヘッドの詳細図である。
【
図7】
図7は、
図6の実施形態の一部を、上方から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下では、本発明の一実施形態を、添付の概略図を参照して説明する。その種類及び/又は機能に関して互いに対応する特徴は、図全体を通して同じ参照符号を割り当てることができる。
【0070】
図1に、本発明の一実施形態による誘導電力伝達装置100が概略的に示されている。
かかる誘導電力伝達装置100は、車両4としての電気自動車等を誘導的に充電するように構成されている。
又、車両4は、道路や軌道トラック等の軌道2の上を走行するための車輪7a、7bを備えていることが好ましい。
例えば、このような車両4は、自家用車やバス等の路面走行用車両としての陸上車両であることが好ましく、鉄道車両のような軌道上の車両であることも好ましい。なお、
図1では、道路や鉄道の詳細は示されておらず、適宜省略してある。
【0071】
又、軌道2と組み合わされた、例えば、埋め込まれた導電性材料の配置態様も好ましい。例えば、動作中に、三相交流の三相を運ぶための相導体1a、1b、1cがある。
かかる相導体1a、1b、1cは、それぞれが外側コイル92(以下、第1のコイルや第2のコイルと称する場合がある。)、中央コイル94(以下、第3のコイルと称する場合がある。)である誘導電力伝達用の導体配置90を形成している(以下、
図2の説明を参照)。
【0072】
軌道2に埋め込まれている、又は軌道2の一部である導電性材料の配置態様とともに、導体配置90は、誘導電力伝達装置100の一次側102を形成し、別の言い方をすれば、一次側導体アセンブリを形成する。
動作中、一次側102は、電磁場を生成する。磁力線F(以下、磁束線と称する場合がある。)は、
図1に模式的に示されている。しかしながら、磁力線Fは完全には示されていない。むしろ、車両4に搭載された誘導電力伝達装置100の一次側102と二次側104との間のギャップにおける磁界のほぼ均質な領域のみが磁束線によって図示されている。
【0073】
車両4は、電磁場を受信し、磁気誘導によって電気エネルギーを生成するための受信機4bを備える。この目的のために、受信機4bは、誘導電力伝達装置100の二次側104であって、別の言い方をすれば、二次側導体アセンブリを構成する。
図示された具体的な実施形態では、この二次側104は、三相交流電流を生成するための3つの相線5a、5b、5cからなることが好ましい。
すなわち、これらの相線5a、5b、5cは、細長い電気導体の複数の巻線からなるコイルであることが好ましく、従って、上述した導体配置90の外側コイル92、中央コイル94を表している。
任意に、これらの相線5a、5b、5cは、複数コイルから構成されていることが好ましく、より正確には、複数のコイルによって形成されていることが好ましい。
【0074】
又、
図1には、受信機4bによって生成された電気エネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵器4aが模式的に示されている。
かかる生成された電気エネルギーを任意の電気消費者に提供するために使用することができるが、車両4に搭載された他の電気及び/又は電子部品は、
図1には示されておらず、適宜省略してある。
【0075】
図2は、
図1の誘導電力伝達装置100の一次側102又は二次側104の上方から見た平面図、又は下方から見た底面図のいずれかを模式的に示している。
特に、それぞれの一次側102又は二次側104における導体配置90の上方から見た平面図又は下方から見た底面図を示している。
一次側と二次側とを接続する方向、すなわち、
図1に示されるように、その間を延びる磁力線Fの方向は、
図2の画像平面に対して垂直に延出していることが好ましい。
又、
図1では、それぞれの導体配置90の外側部材としての相線5c、5a及び相導体1c、1aは、
図2の外側コイル92に対応しており、一方、中央部材としての相線5b、相導体1bは、
図2の中央コイル94に対応している。
【0076】
図2では、長手方向軸LОが示されている。
かかる長手方向軸LОは、
図1の左から右へ、例えば、軌道2と平行に延出していることが好ましい。
又、長手方向軸LОに対して、直交して延出する横方向軸LAが示されている。
図1では、横方向軸LAは、この図の平面に対して直交して、例えば、観察者の方に向かって延出することになる。
横方向軸LA及び長手方向軸LОは、水平面内に延出するか、又は水平面を規定する。
なお、当該水平面は、外側コイル92及び中央コイル94の少なくともアクティブセクションAが形成されている平面に相当する。
上述したように、これは、外側コイル92及び中央コイル94が形成される主平面と考えることが好ましい。
更に、垂直方向空間軸Zは、横方向軸LA及び長手方向軸LОの両方に直交して延出しており、
図2において観察者の方を向いている。なお、
図1では、垂直方向空間軸Zの向きも描かれている。
【0077】
又、外側コイル92及び中央コイル94は、それぞれ明確な線で示されている。
具体的には、外側コイル92は点線と破線で示され、一方、中央コイル94は連続線で示されている。
各コイルは、楕円形状又は長方形状の閉じた電気導体配置として形成されており、この導体はケーブルであることがわかる。
外側コイル92及び中央コイル94は、同様の形状と大きさであるが、一致して配置されていないことも好ましい。代わりに、長手方向軸LОに沿って互いに相対的にシフトしているが、横方向軸LAに沿って同じ高さに配置されていることも好ましい。
【0078】
外側コイル92及び中央コイル94は、横方向軸LAに沿って延出する2つの長い導体セクションと、長手方向軸LОに沿って延出する2つの短い導体セクションとからなり、それぞれの導体セクションの対は、互いに平行であるとともに、互いに反対側に位置していることが好ましい。
横方向軸LAに沿って延出する導体セクションは、それぞれの外側コイル92及び中央コイル94のアクティブセクションAを形成しており、従って全体の導体配置のアクティブセクションAを形成している。長手方向軸LОに沿って延出する導体セクションは、アクティブセクションAを接続する2つの対向する巻線ヘッドWを形成する。
具体的には、アクティブセクションAは、長手方向軸LОに沿って互いに離間している。
しかしながら、それらは、巻線ヘッドの導体セクションによって接続されている。アクティブセクションAの間の長手方向のギャップを埋めるために、巻線ヘッドの導体セクションは、楕円形状の巻線の場合には湾曲していても、長手方向軸LОに沿って延出している。説明のために、
図2では、巻線ヘッドWの比較的大きな領域が包囲されている。
但し、厳密な意味では、各3つの外側コイル92及び中央コイル94の短い導体セクションが互いに沿って延出する領域のみが、実際の巻線ヘッドWを表すと考えられる。
これは、包囲された領域のそれぞれにおける中央コイル94の短い長手方向の導体セクションの領域に相当する。なお、長手方向軸LОに沿って延出する導体セクションのみが、実施形態の文脈では「巻頭内/巻頭の導体セクション」などとして参照される。
【0079】
従って、
図2の例では、外側コイル92及び中央コイル94は、横方向軸LAに沿って同じ位置、すなわち同じ高さに配置されている。しかしながら、それらは、長手方向軸LОに沿って順次、特に隣り合って配置されている。
【0080】
より詳細には、外側コイル92及び中央コイル94のそれぞれについて、幾何学的中心92M、94Mが示されており、言い換えれば、外側コイル92及び中央コイル94の円相当の面積の中心、すなわち、外側コイル92及び中央コイル94によって囲まれた領域の中心が示されている。
かかる中央コイル94は、特にその幾何学的中心94Mに関して、長手方向軸LОに沿った外側コイル92の間、特にこれらの外側コイル92の幾何学的中心92Mの間に配置されていることが分かる。
【0081】
従って、外側コイル92及び中央コイル94、特にそれらの幾何学的中心92M、94Mは、互いに間隔を空けて配置されており、言い換えれば、長手方向軸LОに沿って互いに等しい距離、例えば、各外側コイル92及び中央コイル94の長手方向寸法、すなわち、幅の3分の1だけ相対的に変位していることが好ましい。
【0082】
図2に描かれている導体配置の一般的な結果として、各外側コイル92及び中央コイル94は、一次側102又は二次側104のどちらを考慮するかに応じて、動作中に三相交流電流の異なる相を生成するか、又は三相交流電流の1相を運ぶことができるコイルを形成することが好ましい。
【0083】
更に、
図2には、磁化可能材料物として、磁性材料で作られたシールドアセンブリ96が示されている。以下の図から明らかなように、かかるシールドアセンブリ96は、垂直方向空間軸Zに対して、巻線ヘッドWの少なくとも一部を覆ったり、その下に延出したりしていることが好ましい。
又、シールドアセンブリ96は、巻線ヘッドWの外側に、かつ巻線ヘッドWに沿って延出しているようにしか描かれていないが、導体配置90を全面的に囲んでいることが好ましい。
例えば、
図2に描かれた長手方向のセクションを追加の横方向のセクション(図示せず)で接続することにより、全体的に長方形の外形を有していることが好ましい。
又、シールドアセンブリ96の少なくとも一部は、一次側102又は二次側104のそれぞれの他方において、更なる導体配置90から離れる方向を向いた導体配置90の側面に沿って延出していることが好ましい。シールドアセンブリ96の例は、上述の先の開示であるEP2841293 B1公報に見出すことができる。
【0084】
以下では、本発明の実施形態による導体配置90を通る断面について説明する。
かかる断面の平面は、横方向軸LA及び垂直方向空間軸Zを含み、又は横方向軸LAと平行に延出している。又、断面は、巻線ヘッドWのうちの1つのみを描いているが、それぞれ反対側の巻線ヘッドWも同様に構成されていることを理解されたい。このことは、以下の図において、描かれた部材や構成要素が鏡像化されている対称軸Sによって示されている。
更に、以下の断面図は二次側104に関するものであるが、例えば、描かれた導体配置90を単に上下逆にすることで、一次側102も同一の方法で構成することができる。
【0085】
しかしながら、最初に、先行技術の解決策の一例を
図3に示す。より正確には、先行技術の導体配置90の巻線ヘッドWの断面が示されている。
異なる態様の外側コイル92及び中央コイル94は、
図2の場合と同様の線種(すなわち、点線、破線、連続線)で表されている。これらの外側コイル92及び中央コイル94のアクティブセクションAの一部を見ることができる。
巻線ヘッドWの領域では、外側コイル92及び中央コイル94の導体セクションは、アクティブセクションAに対して角度がついており、反対側のアクティブセクションAに向かって
図3の平面内に延出している、すなわち、観察者から離れた方向を向いている。
【0086】
一般的に知られている方法では、各外側コイル92及び中央コイル94の導体セクションは、互いに垂直に配置されているか、言い換えれば、所定軸に沿って垂直に積層されている(各垂直方向空間軸Zを参照)。
このため、巻線ヘッドWの内部の隣接する導体セクションは、互いに垂直方向に間隔を空けて配置されている。この間隔は規則的であり、すなわち、導体セクションは、それぞれの直接隣接する導体セクションに対して同じ垂直方向の距離を有している。
又、距離は比較的小さく、例えば数cm程度であって、隣接する導体セクション間で接触する場合には存在しない。
接触させたくない場合は、隣接する導体セクションの間にプラスチックなどの電気的に絶縁された材料のスペーサーを配置することができる。
【0087】
更に、磁化可能材料物110を含むシールドアセンブリ96を備えることが示されている。
かかるシールドアセンブリ96は、導体配置90の垂直方向の上側を覆っており、側縁の近くに、巻線ヘッドWを受け入れるための拡大された角度を有する所定領域112を有する。
なお、シールドアセンブリ96は、巻線ヘッドWの横方向の外縁、言い換えれば、横方向の面114も覆っている。
【0088】
又、
図3は、巻線ヘッドWの領域に生じる磁力線116の主なコースを示しており、かかる磁力線116は、導体配置90を動作させるとき、すなわち、電気エネルギーをそこに誘導的に伝達するときに生じるものである。
シールドアセンブリ96の形状により、発生した電磁フラックスの大部分は周囲に入らず、シールドアセンブリ96の形状に沿っている。
具体的には、鉛直上向きに巻線ヘッドWを離れた後、磁力線116は、巻線ヘッドWの横方向の面114を覆うこのシールドアセンブリ96の部分を介して、巻線ヘッドWの下部に向かって案内される。このようにして、磁力線116の閉じた円が生成される。
【0089】
しかしながら、本発明者らは、これらの磁力線116が、巻線ヘッドWに存在するすべての導体セクションを介して延出し、従って、全ての外側コイル92、中央コイル94を介して延出することを観察している。
その結果、これらの外側コイル92及び中央コイル94が実際には交流の独立した相を生成することになっているにもかかわらず、外側コイル92及び中央コイル94間の電磁相互作用が強くなる。特に中央コイル94は、外側コイル92の間に配置されているため、そのアクティブセクションAの領域ですでに強い電磁相互作用を経験している。
【0090】
本発明は、外側コイル92及び中央コイル94の少なくとも一部を電磁気的に切り離すことにより、これらの問題を克服しようとするものであり、例えば以下の実施形態によれば、外側コイル92及び中央コイル94の少なくとも一部を電磁気的に切り離すことができる。
【0091】
すなわち、
図4では、
図3と同様の断面が示されている。この場合、外側コイル92の導体セクションのみが、巻線ヘッドWの内部で互いに近接して配置されている。
具体的には、互いに比較的小さな第1の距離D1で配置されており、その距離は、数cm(例えば5cm以下)であることが好ましく、ゼロであることも好ましい。
一方、中央コイル94の導体セクションは、巻線ヘッドWの内部において、外側コイル92の各導体セクションに対してより大きな第2の距離D2で配置されている。なお、第2の距離D2は、もちろん互いに異なるが、中央コイルの導体セクションと他の導体セクションとの距離に関連することを示すために、同様のラベルが付けられている。
更に、第1の距離D1、第2の距離D2は、
図3の座標系から明らかなように垂直方向の距離であり、これは更に
図4~
図6のそれぞれについても有効である。
【0092】
従って、巻線ヘッドWの内部では、外側コイル92の導体セクションは、中央コイル94の導体セクションとの位置(第2の距離D2)よりも互いに近い位置(第1の距離D1)に配置されている。
外側コイル92と中央コイル94との間に生じるエアギャップにより、これらの外側コイル92及び中央コイル94間の電磁相互作用、特に外側コイル92の中央コイル94に対する望ましくない影響を制限することができる。
【0093】
従って、
図3に描かれているように、外側コイル92及び中央コイル94の間の距離を調整することは、シールドアセンブリ96の後述する更なる特徴にかかわらず、そのような本発明の実施形態を表している。
【0094】
それにもかかわらず、更なる有利な実施形態は、シールドアセンブリ96の図示された設計によって形成され、特に、巻線ヘッドWの導体セクションの間に延出する磁化可能材料物110の部分によって形成される。
【0095】
より詳細には、
図3は、シールドアセンブリ96が、巻線ヘッドWの内部の導体セクションの横方向の面114を覆う部分を再び有していることを示している。
なお、外側コイル92の導体セクションと中央コイル94の導体セクションとの間の位置には、水平方向に、すなわち横方向軸LAに沿って突出し(
図3参照)、巻線ヘッドWの長さに沿って、すなわち長手方向軸LОに沿って(
図3参照)、延出する磁化可能材料物110の突起が形成されている。
従って、磁化可能材料物110のかかる突起は、このようにして、外側コイル92及び中央コイル94の間の増加した第2の距離D2によって形成されるエアギャップに延出することが好ましい。
すなわち、垂直方向空間軸Zに沿って見た場合、かかる突起状の磁化可能材料物110は、外側コイル92と中央コイル94の導体セクションの間に配置されることが好ましい。
【0096】
以下の
図5から明らかなように、磁化可能材料物110のそれぞれの保護を提供することは、それ自体が本発明の実施形態を表している。
この特徴は、巻線ヘッドWの内部でこれらの外側コイル92及び中央コイル94を互いに遮蔽することによって、特に外側コイル92と中央コイル94との間の電磁相互作用を制限するのに役立つことがある。
具体的には、
図4に関して以下で説明するように、外側コイル92及び中央コイル94のそれぞれの磁力線116をそれぞれの外側コイル92及び中央コイル94の近くに集中させるのに役立つことがある。
しかしながら、中央コイル94に関しては、シールドアセンブリ96が、当該中央コイル94の側方面及び下面を覆っていないために、
図4の実施形態と比較して、このことがより少ない程度に達成され得る。
【0097】
図4に戻って説明すると、シールドアセンブリ96は、中央コイル94の横方向の面114も覆い、外側コイル92及び中央コイル94の間で水平方向の突起と平行に延出する磁化可能材料物110の更なる水平方向の突起120を構成していることが理解される。
このように、シールドアセンブリ96の横方向の角度のついた部分、或いは一般的には、巻線ヘッドWを遮蔽する、或いは取り囲む、シールドアセンブリ96の部分は、E字型の断面を有していることが好ましい。
正確な構成に応じて、かかるE字型断面の脚部は異なる長さを有していることが好ましい。例えば、
図4では、上側の脚は、磁化可能材料物110のそれぞれの突起120によって形成される中央及び下側の脚よりも長いことが好ましい。
【0098】
外側コイル92及び中央コイル94の横方向の面114のそれぞれは、巻線ヘッドWの内部で、従って、シールドアセンブリ96によって部分的に囲まれ、より具体的には、3つの側面で囲まれている。
これは、これらの外側コイル92及び中央コイル94によって生成される電磁場をその近くに集中させるのに役立つ。
より正確には、
図4に描かれているように、磁力線116の大部分は、シールドアセンブリ96によって、特に導体セクションの間の水平方向の突出部の助けを借りて誘導され、それぞれの磁力線116の閉じた円を生成することができる。
特に、外側コイル92の磁力線116の大部分が中央コイル94を通って延出することを避けることができ、その結果、これらの外側コイル92及び中央コイル94間の電磁相互作用を制限することができる。
【0099】
本発明の更なる実施形態を
図6に示す。この場合、巻線ヘッドWの内部の導体セクションは、垂直方向ではなく水平方向に離間しており、より正確には、横方向軸LAに沿って、すなわち、外側コイル92及び中央コイル94の少なくともアクティブセクションが形成されている平面内で、離間していることが好ましい。
具体的には、中央コイル94の導体セクションは、横方向軸LAに沿って外側コイル92の導体セクションから、
図6に描かれている第2の距離D2だけ離間していることが好ましい。
この距離は、特に、これらの導体セクションの横方向の面114に関するものであり、言い換えれば、これらの横方向の面114の間で測定されるものである。
一方、導体セクション間の垂直方向の距離は、
図3による等距離の間隔のように、規則的にすることができる。
これにより、特に巻線ヘッドWの垂直方向のサイズが制限されるが、垂直方向の距離は、巻線ヘッドWの内部の外側コイル92及び中央コイル94の間で特に強い電磁デカップリングを実現するために、
図4及び
図5の実施形態に従って構成することもできる。
【0100】
なお、
図6では、外側コイル92の導体セクション間の水平/横方向の距離はゼロである。従って、これらの導体セクション間のそれぞれの第1の距離D1は、
図6には描かれていない。
又、外側コイル92及び中央コイル94の間の水平/横方向の第2の距離D2は、これらの外側コイル92の両方に関して同等であることが好ましい。
従って、本請求項の文言では、中央コイル94の、外側コイル92の更なる導体セクションのそれぞれに対する第2の距離D2は、このように互いに等価である。
【0101】
一方で、シールドアセンブリ96は、
図3の例と同様に構成されていることが好ましい。
これは、磁力線116が、巻線ヘッドWの内部の全ての導体セクションを介して同様に案内されることも意味するが、第2の距離D2により、当該磁力線116の水平方向の長さが長くなることが好ましい。
これは、特に、水平方向の第2の距離D2によって形成されるエアギャップの領域において、磁束が弱くなることを意味する。この場合も、外側コイル92及び中央コイル94間の電磁相互作用が制限され、特に外側コイル92の中央コイル94に対する影響が制限されることになる。
【0102】
図7では、上方から見た場合の、シールドアセンブリ96のない
図6の導体配置90が示されている。
ここでも、外側コイル92に対する中央コイル94の水平方向の変位を見ることができる。
なお、用語「外側」は、長手方向軸LОに沿った外側コイル92の位置に関するものである。
記載された対称軸Sから明らかなように、中央コイル94の横方向の寸法は、外側コイル92に比べて小さくなっている。
但し、このような構成は、実際に関連する寸法、例えば、描かれているよりも長手方向軸に沿ってはるかに大きな寸法を考慮すると、外側コイル92、及び中央コイル94の特性に大きな影響を与えないと言える。
従って、このような外側コイル92、及び中央コイル94であっても、電磁界にさらされたときに、やはり同等の電流が誘導されることになる。
【符号の説明】
【0103】
1a、1c:相導体(外側部材)、1b:相導体(中央部材)、2:軌道、4:車両、4a:エネルギー貯蔵器、4b:受信機、5a、5c:相線(外側部材)5b:相線(中央部材)、7a、7b:車輪、90:導体配置、92:外側コイル(第1のコイル、第2のコイル)、92M:幾何学的中心、94:中央コイル(第3のコイル)、94M:幾何学的中心、96:シールドアセンブリ、100:誘導電力伝達装置、102:一次側、104:二次側、110:磁化可能材料物、112:拡大された角度を有する所定領域、114:横方向の面、116:磁力線、120:突起、A:アクティブセクション、D1:第1の距離、D2:第2の距離、F:磁力線(磁束線)、LA:横方向軸、LO:長手方向軸、S:対称軸、W:巻線ヘッド、Z:垂直方向空間軸