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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103563
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】人工心臓弁のための送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024085631
(22)【出願日】2024-05-27
(62)【分割の表示】P 2021533266の分割
【原出願日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】62/778,159
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シー・ムラード
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アール・ビアラス
(57)【要約】
【課題】植え込み手技の実施中に人工弁の位置を正確に決定するための改善されたデバイスおよび方法が必要とされている。
【解決手段】送達装置は、ハンドルと、ハンドルから延在し、ハンドルに結合されている近位端部分、および遠位端部分を有する第1のシャフトと、第1のシャフトの上に同軸に延在し、ハンドルに結合されている近位端部分、および遠位端部分を有する第2のシャフトとを備えることができる。送達装置は、第2のシャフトの遠位端部分に結合され、半径方向に圧縮された状態で第1のシャフトの周りで位置決めされた人工弁に当接するように構成されているフレア状に張り出した端部を有する段部と、段部から延在する伸長部分と、人工弁が第1のシャフト上で半径方向に圧縮された構成をとるときに伸長部分上の人工弁内の場所に配設される少なくとも1つの放射線不透過性マーカーとをさらに備えることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達装置であって、
ハンドルと、
前記ハンドルから延在し、前記ハンドルに結合された近位端部分、および遠位端部分を有する第1のシャフトと、
前記第1のシャフトの上に同軸に延在し、前記ハンドルに結合された近位端部分、および遠位端部分を有する第2のシャフトと、
前記第2のシャフトの前記遠位端部分に結合された段部であって、半径方向に圧縮された状態で前記第1のシャフトの周りに位置決めされた人工弁に当接するように構成されているフレア状に張り出した端部を有する段部と、
前記段部から遠位に延在する伸長部分と、
前記人工弁が前記第1のシャフト上で半径方向に圧縮された構成をとるときに前記伸長部分上の前記人工弁内の場所に配設される少なくとも1つの放射線不透過性マーカーと、
を備える送達装置。
【請求項2】
前記伸長部分は、チューブ状部材である、請求項1に記載の送達装置。
【請求項3】
前記チューブ状部材は、前記第1のシャフトの上に同軸に延在する、請求項2に記載の送達装置。
【請求項4】
前記第1のシャフトの上に配設されるバルーンをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項5】
前記段部は、前記フレア状に張り出した部分の近位にある環状壁を備え、前記環状壁は1つまたは複数の半径方向に延在する開口部を備え、前記開口部は、前記段部の内側の膨張流体が前記1つまたは複数の開口部を外向きに通って前記バルーン内に流れることを可能にする、請求項4に記載の送達装置。
【請求項6】
前記段部は、第1の段部であり、前記送達装置は、前記第1のシャフトの前記遠位端部分に結合されている第2の段部をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項7】
前記第1の段部および第2の段部は、バルーン内に配設される、請求項6に記載の送達装置。
【請求項8】
前記伸長部分は、前記第1の段部に隣接する第1の場所から、前記第1の段部と前記第2の段部との間の軸方向にある第2の場所まで軸方向に延在する、請求項6に記載の送達装置。
【請求項9】
前記第2の場所は、前記第1の段部と前記第2の段部との間でおおよそ等距離である、請求項8に記載の送達装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの放射線不透過性マーカーは、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、およびこれらの組合せを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項11】
送達アセンブリであって、
クリンプされた構成と拡張された構成との間で半径方向に拡張可能なバルーン拡張可能な人工心臓弁と、
送達装置と、を備え、前記送達装置が、
ハンドルと、
前記ハンドルから延在し、前記ハンドルに結合された近位端部分、および遠位端部分を有する第1のシャフトと、
前記第1のシャフトの上に同軸に延在し、前記ハンドルに結合された近位端部分、および遠位端部分を有する第2のシャフトと、
前記第1のシャフトの上に配設されているバルーンと、
前記第1のシャフトの上に同軸に延在し、前記バルーン内に配設される近位段部および遠位段部と、
前記近位段部から延在する伸長部分と、
前記伸長部分上の少なくとも1つの放射線不透過性マーカーと、を備え、
前記人工心臓弁は、前記少なくとも1つの放射線不透過性マーカーが前記人工心臓弁内に位置決めされるように、前記近位段部と前記遠位段部との間で前記半径方向にクリンプされた構成で前記バルーン上に配設される、送達アセンブリ。
【請求項12】
前記近位段部は、前記第2のシャフトの遠位端部分に結合される、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記遠位段部は、前記第1のシャフトの遠位端部分に結合される、請求項11または12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの放射線不透過性マーカーは、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、およびこれらの組合せを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記第1のシャフトは、前記伸長部分を通って同軸に延在し、前記伸長部分に直接固定されない、請求項11から14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記伸長部分は、前記近位段部に接続されている近位端と、前記近位段部と前記遠位段部との間に軸方向に配置される遠位端と、を有する、請求項11から15のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項17】
人工心臓弁を植え込む方法であって、
患者の体内に、送達装置の遠位端部分と、前記送達装置の前記遠位端部分に結合されているバルーン拡張可能人工心臓弁とを半径方向にクリンプされた構成で挿入するステップであって、前記送達装置は、ハンドルと、前記ハンドルから延在する第1のシャフトと、前記ハンドルから前記第1のシャフトの上に延在する第2のシャフトと、前記第1のシャフトの上に延在する近位段部と、前記第1のシャフトの上に延在する遠位段部と、前記近位段部および遠位段部ならびに内側シャフトの上に配設されるバルーンと、前記近位段部から前記内側シャフトの上に同軸に延在する伸長部分と、人工弁内に配置されている前記伸長部分上の少なくとも1つの放射線不透過性マーカーと、を備える、ステップと、
前記送達装置の前記遠位端部分および前記人工弁を、前記患者の血管系を通して、植え込み部位まで遠位に前進させるステップと、
蛍光透視法を使用して前記放射線不透過性マーカーを前記植え込み部位に対して位置合わせするステップと、
前記植え込み部位で前記人工弁を拡張された構成に配備するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記植え込み部位は、前記患者の心臓の自然大動脈弁輪である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記植え込み部位に対して前記放射線不透過性マーカーを位置合わせする動作は、前記放射線不透過性マーカーを自然弁輪に位置合わせするステップを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2018年12月11日に出願した米国仮出願第62/778,159号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、人工心臓弁を植え込むための送達システムの実施形態に関するものである。
【背景技術】
【0003】
長年にわたって心臓弁膜症を治療するために人工心臓弁が使用されてきた。自然心臓弁(大動脈弁、肺動脈弁、および僧帽弁など)は、心臓血管系を通る適切な供給量の血液の前方流を確実にする重要な機能を果たす。これらの心臓弁は、先天性症状、炎症状態、または感染状態によって作用を弱められ得る。弁へのそのような損傷は、結果として、重大な心臓血管系副作用または死亡を引き起こし得る。長年にわたって、そのような疾患に対する決定的治療法は、心臓切開手術における弁の外科的修復または置換術であったが、そのような外科手術は多数の合併症を引き起こしがちである。従来の心臓切開手術にはいくつかの欠点が付随するため、経皮的および低侵襲的な外科アプローチが大きな注目を集めている。一技法においては、人工弁が、カテーテル法を用いるはるかに侵襲性の低い手技で植え込まれるように構成される。
【0004】
この技法では、人工弁がクリンプされた(crimped)状態で可撓性カテーテルの端部に載せられ、人工弁が植え込み部位に到達するまで患者の血管に通して送られる。次いで、カテーテル先端の人工弁は、人工弁が装着されるバルーンを膨らませることなどによって、欠陥のある自然弁の部位でその機能サイズまで拡張される。たとえば、参照により本明細書に組み込まれている、特許文献1および特許文献2は、カテーテルに載せて圧縮状態で経皮的に導入され、バルーンの膨張、または自己拡張型フレームもしくはステントの利用によって、所望の位置に拡張され得る折り畳み可能な経カテーテル心臓弁を記載している。
【0005】
経カテーテル心臓弁のための典型的な送達装置は、蛍光透視法の下で見ることができる放射線不透過性マーカーを有する。人工弁の送達時に、医師は、放射線不透過性マーカーを使用して、人工弁を植え込み部位に位置合わせすることができる。従来の送達装置を使用した場合、装置の一部に張力が加わる結果、放射線不透過性マーカーが人工弁に対してずらされ、その結果、人工弁が誤った位置に配備され得る。
【0006】
したがって、植え込み手技の実施中に人工弁の位置を正確に決定するための改善されたデバイスおよび方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,411,522号明細書
【特許文献2】米国特許第6,730,118号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書において説明されるのは、人工心臓弁を植え込むための送達アセンブリおよび方法の実施形態である。このアセンブリは、患者体内の植え込み部位に人工弁を正確に位置決めするために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
代表的な一実施形態において、送達装置は、ハンドルと、ハンドルから延在する第1のシャフトと、第1のシャフトの上に同軸に延在する第2のシャフトとを備えることができる。第1および第2のシャフトは、ハンドルに結合されている近位端部分、および遠位端部分を有することができる。送達装置は、第2のシャフトの遠位端部分に結合されている段部(shoulder)をさらに備えることができる。段部は、半径方向に圧縮された状態で第1のシャフトの周りに位置決めされた人工弁に当接するように構成されているフレア状に張り出した端部を有することができる。段部は、段部から遠位に延在する伸長部分と、人工弁が第1のシャフト上で半径方向に圧縮された構成にあるときに伸長部分上の人工弁内の場所に配設される少なくとも1つの放射線不透過性マーカーとをさらに備えることができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、伸長部分は、チューブ状部材、たとえば、第1のシャフトの上に同軸に延在するチューブ状部材であってよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、送達装置は、第1のシャフトの上に配設されるバルーンをさらに備える。いくつかの実施形態において、段部は、フレア状に張り出した部分の近位にある環状壁を含むことができる。環状壁は、段部の内側の膨張流体が1つまたは複数の開口部を外向きに通ってバルーン内に流れることを可能にする1つまたは複数の半径方向に延在する開口部を備えることができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、段部は、第1の段部とすることができ、送達装置は、第1のシャフトの遠位端部分に結合されている第2の段部をさらに備えることができる。第1および第2の段部は、バルーン内に配設できる。
【0013】
いくつかの実施形態において、伸長部分は、第1の段部に隣接する第1の場所から、第1の段部と第2の段部との間の軸方向にある第2の場所まで軸方向に延在する。第2の場所は、第1の段部と第2の段部との間でおおよそ等距離であるものとしてよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーは、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、およびこれらの組合せを含む。
【0015】
別の代表的な実施形態において、送達アセンブリは、クリンプされた構成と拡張された構成との間で半径方向に拡張可能なバルーン拡張可能人工心臓弁と、送達装置とを備えることができる。送達装置は、ハンドルと、ハンドルから延在する第1のシャフトと、ハンドルから第1のシャフトの上に同軸に延在する第2のシャフトと、バルーンとを備えることができる。第1および第2のシャフトは、ハンドルに結合されている近位端部分、および遠位端部分を有することができる。バルーンは、第1のシャフトの上に配設され得る。送達装置は、第1のシャフトの上に同軸に延在し、バルーン内に配設される近位段部および遠位段部をさらに備えることができる。近位段部は、近位段部から延在する伸長部分と、伸長部分上の少なくとも1つの放射線不透過性マーカーとを備えることができる。人工心臓弁は、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーが人工心臓弁内に位置決めされるように近位段部と遠位段部との間で半径方向にクリンプされた構成でバルーン上に配設され得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、近位段部は、第2のシャフトの遠位端部分に結合され、遠位段部は、第1のシャフトの遠位端部分に結合され得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーは、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、およびこれらの組合せを含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1のシャフトは、伸長部分を通って同軸に延在することができ、伸長部分に直接固定されない。伸長部分は、近位段部に接続されている近位端と、近位段部と遠位段部との間に軸方向に配置される遠位端とを有することができる。
【0019】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁を植え込む方法は、送達装置の遠位端部分を患者の体内に挿入することを含むことができる。バルーン拡張可能人工心臓弁は、半径方向にクリンプされた構成で送達装置の遠位端部分に結合され得る。送達装置は、ハンドルと、ハンドルから延在する第1のシャフトと、ハンドルから第1のシャフトの上に延在する第2のシャフトとを備えることができる。送達装置は、第1のシャフトの上に延在する近位段部と、第1のシャフトの上に延在する遠位段部と、近位段部および遠位段部および内側シャフトの上に配設されるバルーンとをさらに備えることができる。近位段部は、人工弁内に配置されている伸長部分上に少なくとも1つの放射線不透過性マーカーを有する内側シャフトの上に近位段部から同軸に延在する伸長部分を備えることができる。方法は、送達装置の遠位端部分および人工弁を、患者の血管系を通って植え込み部位まで遠位に前進させることと、蛍光透視法を使用して植え込み部位に対して放射線不透過性マーカーを位置合わせすることと、植え込み部位で人工弁を拡張された構成に配備することとをさらに含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、植え込み部位は、患者の心臓の自然大動脈弁輪であってよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、植え込み部位に対して放射線不透過性マーカーを位置合わせする動作は、放射線不透過性マーカーを自然弁輪に位置合わせすることを含むことができる。
【0022】
本開示の様々な革新的技術は、組み合わせてまたは別々に使用され得る。この「発明の概要」は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明される簡素化された形式の概念の選択を導入するために用意されている。この「発明の概要」は、請求されている主題の重要な特徴または本質的な特徴を識別することを意図されていない。本開示の前述のおよび他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照しつつ進む次の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】人工心臓弁の代表的な一実施形態の斜視図である。
図2】人工心臓弁を植え込むための送達装置の代表的な一実施形態の側面図である。
図3図2の送達装置の遠位端部分の側面図である。
図4図2の送達装置の一部分の断面図である。
図5図2の送達装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において説明されるのは、人工心臓弁などの補綴デバイスを、体内に通して、心臓内に送達し、心臓内に植え込むためのシステムおよび方法である。
【0025】
本明細書において開示されている人工弁は、半径方向に圧縮された構成と半径方向に拡張された構成との間で半径方向に圧縮可能および拡張可能であり得る。したがって、人工弁は、送達時には半径方向に圧縮された構成でインプラント送達装置上にクリンプされ、次いで、人工弁が植え込み部位に到達した後、半径方向に拡張された構成に拡張され得る。
【0026】
図1は、一実施形態による、例示的な人工弁10を示している。特定の実施形態において、人工弁10は、自然大動脈弁輪内に植え込まれ得るが、自然僧帽弁、自然肺動脈弁、および自然三尖弁内を含む、心臓内の他の場所に植え込まれてもよい。人工心臓弁10は、ステントまたはフレーム12と、フレームによって支持され、人工弁を通る血液の流れを調節するように構成されている弁構造14とを備える。
【0027】
いくつかの実施形態において、人工弁10は、自然大動脈弁に植え込まれるように適合されており、送達装置(たとえば、以下で説明されている送達装置100を参照)を使用して体内に植え込まれ得る。フレーム12は、ステンレス鋼、ニッケル系合金(たとえば、ニッケル-コバルト-クロム合金)、ポリマー、またはこれらの組合せなどの、可塑的拡張可能材料を含むことができ、したがって、たとえばバルーンを膨張させることによって送達装置が作動して人工弁がクリンプされた半径方向に圧縮された構成(図2)から半径方向に拡張された構成(図1)に拡張するときに、フレーム12が可塑的に拡張する。
【0028】
弁構造14は、フレームの内側に装着されている複数の弁尖16を含むことができる。各弁尖16の対向する側は、隣接する弁尖と対を形成し、弁構造の交連18を形成することができる。交連18は、補強部材20を介してフレームに装着され得る。人工弁10は、フレームの外側に装着されている封止部材22を備えることもできる。封止部材22は、人工弁を周囲組織から封止し、弁周囲の漏れを防止するかまたは最小に抑えるのに役立つように構成される。弁尖16は、ウシ心膜組織(または他の供給源からの心膜組織)などの自然組織、または様々な布もしくは非布材料(たとえば、ポリウレタン)のうちのいずれかなどの合成材料を含む、様々な好適な生体適合性材料のうちのいずれかから作ることができる。補強部材20および封止部材22は、望ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの布材料から作られるが、非布材料および自然組織も使用可能である。人工弁10のさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2018/0028310号において開示されている。本明細書において開示されているデバイスおよび方法のうちのいずれかを使用して配備され得る他のタイプの人工心臓弁は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,510,575号、米国特許第7,993,394号、および米国特許第9,393,110号に記載されている。
【0029】
図2は、例示されている人工心臓弁10などの、人工心臓弁を送達するように適合されている、一実施形態による、送達装置100を示している。人工心臓弁10は、たとえば、自然大動脈弁内に植え込まれるように適合されている人工大動脈弁であってよいが、他の実施形態では、人工弁10は、心臓の他の自然弁のうちのいずれか(自然僧帽弁、三尖弁、または肺動脈弁)に植え込まれ得る。
【0030】
例示されている実施形態の送達装置100は、一般的に、ハンドル102と、ハンドル102から遠位に延在する第1の細長シャフト104と、第1のシャフト104の上に同軸に延在する第2のシャフト106と、第2のシャフト106の上に同軸に延在する第3のシャフト108と、1つまたは複数の段部(shoulder)(たとえば、近位段部110および遠位段部112)と、ノーズコーン114(図3参照)とを備える。他の実施形態では、送達装置は、第1の段部(たとえば、近位段部)のみを備えることができる。
【0031】
第1のシャフト104は、例示されている実施形態において最も内側のシャフトであり、送達装置100の内側シャフトと称され得る。第2シャフト106は、例示されている実施形態における真ん中のシャフトであり、中間シャフト106と称され得る。同様に、第3のシャフト108は、例示されている実施形態において最も外側のシャフト108であり、送達装置100の外側シャフトまたは外側シースと称され得る。シャフト104、106、108は、患者の体内の植え込み部位における人工弁10の送達および位置決めを円滑にするために互いに対して軸方向および/または回転方向に移動可能であるものとしてよい。ハンドル102は、シャフト間の相対的移動を生じさせるように構成されている1つまたは複数の調整機構を備えることができる。たとえば、ハンドル102は、第2のシャフト106に動作可能に接続されている摺動可能調整レバー113を備えることができる。したがって、レバー113の軸方向の動きは、第1のシャフト104に関する近位方向および遠位方向の第2のシャフト106(および、したがって、人工弁10)の軸方向移動を引き起こすことができる。
【0032】
ノーズコーン114(図3)は、内側シャフト104の遠位端に接続され得る。ガイドワイヤ(図示せず)は、送達装置100が患者の血管系の内側でガイドワイヤ上を前進させられ得るように内側シャフト104の中央内腔およびノーズコーン114の内腔を貫通し得る。外側シャフト108は、装置を誘導して患者の血管系、および特に、大動脈弓に通すのを支援するために操作者によって曲率が調整され得る、操縦可能部分108dを備えることもできる。操縦可能部分108dは、少なくとも1つのプルワイヤによって制御デバイス(たとえば、ノブ116)に結合されるものとしてよく、プルワイヤを緊張および弛緩させることで、外側シャフト108の操縦可能セクション108d、ならびにしたがって第1および第2のシャフト104、106の対応する屈曲および非屈曲を引き起こす。送達装置の操縦に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2017/0065415号に記載されている。
【0033】
シャフト104、106、108の近位端は、ハンドル102に結合され得る。人工弁の送達時に、ハンドル102は、患者の血管系を通して送達装置を前進または後退させるように医師によって操縦され得る。いくつかの実施形態において、ハンドル102は、人工弁を拡張し、および/または配備するために送達装置100の異なる構成部を制御するための1つまたは複数の調整機構、たとえば、ノブ116およびレバー113、または他の作動機構を備えることができる。
【0034】
シャフト104、106、108は、シャフトを形成するために押し出し成形できる、ナイロン、またはポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標)として市販されている)を含む、様々なポリマーのうちのいずれかなどの、様々な好適な材料および技術のいずれかから形成することができる。他の例では、シャフト104、106、108のうちのいずれかは、金属(たとえば、ニチノール(登録商標)もしくはステンレス鋼)またはポリマーワイヤから形成される編組層、または1つもしくは複数の編組層と1つもしくは複数の押し出し成形ポリマー層の組合せを含み得る。シャフトは、その長さに沿ってシャフトの可撓性を変化させるために異なる材料から形成されている縦方向セクションを有することができる。第1のシャフト104は、ガイドワイヤとの滑り摩擦を最小にするためにポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)として市販されている)などの低摩擦材料から形成された内側ライナーまたは層を有することができる。
【0035】
膨張可能なバルーン118は、第1および第2のシャフト104、106の遠位端部分に沿って装着され、近位段部110および遠位段部112の上に延在し得る。図3に最もよく示されているように、バルーン118は、第2のシャフト106の外面に固定され得る近位端部分118pと、ノーズコーン114の外面または遠位段部112の外面に固定され得る遠位端部分118dとを有する。図2に描かれているように、人工弁10は、患者の血管系内に送達するために、バルーン118の上で段部110と段部112との間に半径方向にクリンプされ得る。人工弁100が所望の植え込み部位(たとえば、自然大動脈弁内)に到達した後、以下でより詳しく説明されるように、バルーン118が膨張し、人工弁を周囲組織に当たって半径方向に拡張することができる。
【0036】
送達装置100は、ハンドル102から延在する近位ポート120を備えることができる。第1および第2のシャフト104、106は、第1の環状空間122(図5を参照)が第2のシャフト106の全長に沿って第1のシャフト104と第2のシャフト106との間に画成されるようにサイズを決められ得る。使用時に、近位ポート120は、流体導管(たとえば、チュービング)に流体的に接続されるものとしてよく、次いで、これは、流体源(たとえば、生理食塩水などの膨張流体を入れた注射器)に流体的に接続され、それによりバルーン118を膨らませることができる。したがって、流体導管は、以下でより詳細に説明されるように、流体が送達装置を通って流れ、バルーン118を膨らませることができるように第1のシャフト104と第2のシャフト106との間の第1の環状空間122と流体的に連通することができる。ハンドル102は、たとえば、第1の環状空間122と流体的に連通する内部通路を有するフラッシュチューブであってよい側部アーム123をさらに備えることができる。
【0037】
送達装置100および送達装置を使用して人工弁を送達し配備するための方法に関するさらなる詳細は、たとえば、米国公開第2017/0065415号に記載されている。本明細書において開示されているデバイスにより人工心臓弁を植え込むために使用され得る送達装置の他の例は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2009/0281619号に記載されている。
【0038】
次に図3を参照すると、上で指摘したように、送達装置は、1つまたは複数の段部を備えることができる。例示されている実施形態において、送達装置100は、近位段部110および遠位段部112を備える。他の実施形態では、送達装置は、単一の段部、たとえば、近位段部110のみを備えることができる。
【0039】
遠位段部112は、第1または内側シャフト104の遠位端部分および/またはノーズコーン114に接続され得る。いくつかの実施形態において、ノーズコーン114および遠位段部112は、単一の構成部として一体形成され得る。他の実施形態では、ノーズコーン114および遠位段部112は、送達装置を組み立てる過程で、別々に形成され、互いに接続され得る。他の実施形態では、ノーズコーン114および遠位段部112は、第1のシャフト104に沿って互いに相隔てて並ぶものとしてよい。近位段部110は、第2のシャフト106の遠位端部分106d(図5)に接続され得る。近位段部110および遠位段部112は、バルーン118内に配設され得る。
【0040】
各段部110、112は、それぞれ、本体部124、126を備えることができる。いくつかの実施形態において、各段部は、それぞれ、フレア状に張り出した端部128、130をさらに備えることができる。遠位段部112のフレア状に張り出した端部130は、本体部126の近位端部分126pに配置され、近位段部110のフレア状に張り出した端部128は、本体部124の遠位端部分124dに配置され得る。各フレア状に張り出した端部128、130は、バルーン118上で圧縮されるか、またはクリンプされた構成にあるときの人工弁10の直径に等しいか、またはわずかに大きい直径を有することができる。段部110、112のフレア状に張り出した端部128、130は、バルーン118上にクリンプされたときに人工弁10を少なくとも部分的に受け入れるようにサイズを決められた空間を画成することができる。このようにして、フレア状に張り出した端部128、130は、植え込み手技において、送達装置100に関する移動に対して人工弁10を拘束するのに役立つ。
【0041】
フレア状に張り出した端部128、130は、各々、1つまたは複数のスロット132を備えることができる。例示されている実施形態において、各フレア状に張り出した端部は、フレア状に張り出した端部の周りで円周方向に等間隔に並ぶ4つのスロット132を備える。しかしながら、他の実施形態は、より多い、またはより少ない、数のスロットを備えることができる。スロット132は、フレア状に張り出した端部128、130の半径方向の圧縮を円滑にし、これは、送達装置の製造時および人工弁10のクリンプ時に有利である。フレア状に張り出した端部128、130は、バルーン118内に挿入するためにスロット132を使用してより小さな直径になるように半径方向に圧縮され、バルーン118の内側に入った後、拡張することを可能にし得る。それに加えて、スロット132は、以下でより詳細に説明されるように、バルーン118を通る流体の流れを円滑にすることができる。送達装置の段部および送達装置を使用して人工弁を送達し配備するための方法に関するさらなる詳細は、たとえば、参照により全体が本明細書に組み込まれている、米国公開第2013/0030519号および米国公開第2017/0065415号に記載されている。
【0042】
次に図4を参照すると、近位段部110の本体部124は、内腔を画成する環状の形状を有し得る。近位段部110の内腔は、近位段部110を貫通する段付き表面134により形成され得る。段付き表面134は、第1の環状リップ部136および第2の環状リップ部138により形成されるものとしてよく、近位内腔部分150a、中間内腔部分150b、および遠位内腔部分150cを画成する。
【0043】
次に図5を参照すると、第2のシャフト106の遠位端部分106dは、近位内腔部分150aの中に部分的に貫入し、第1の環状リップ部136に当接する。第2のシャフト106の遠位端部分106dは、接着剤、溶接、および/または摩擦もしくは締まり嵌めなどにより、近位段部110内にしっかり固定され得る。遠位内腔部分150cは、第1のシャフト104がそこを貫通することができるようにサイズを決めることができる。中間内腔部分150bおよび第1のシャフト104は、第2の環状空間140が、第1のシャフト104の外面と本体部124の内面との間で半径方向に、第1の環状リップ部136と第2の環状リップ部138との間で軸方向に画成されるようにサイズを決められるものとしてよい。第2の環状空間140は、膨張流体が第1の環状空間122を通って第2の環状空間140内に流れ込むことができるように第1の環状空間122と流体的に連通している。
【0044】
近位段部110は、近位段部110の外面と内面との間の環状壁に形成された1つまたは複数の開口部142を備えることができる。開口部142は、膨張流体が第2の環状空間140から開口部142を通って外向きに流れ、バルーン118内に流れ込むことができるように第2の環状空間140と流体的に連通するものとしてよい。たとえば、流体源からの膨張流体は、流体導管を通り、第1の環状空間122を通り、第2の環状空間140を通り、外向きに開口部142を通り、バルーン118内に流れ込むことで、バルーンを膨らませて人工弁10を配備することができる。段部110、112のフレア状に張り出した端部128、130内のスロット132は、膨張流体が遠位に、近位段部のフレア状に張り出した端部128を通り、人工弁10を貫通するバルーン118の領域を通り、遠位段部112のフレア状に張り出した端部130を通り、バルーンの遠位領域118d(図3)内に流れ込むことを円滑にし、それにより、バルーン118の均等な拡張を円滑にする。
【0045】
ここでまた図4を参照すると、近位段部110は、伸長部分144をさらに備えることができる。伸長部分144は、近位段部110の本体部124から遠位に延在することができる。伸長部分144は、たとえば、第1のシャフト104(図5)の遠位端部分104dの上に延在するチューブ状部材またはシャフトであってよい。伸長部分144は、近位段部の遠位内腔部分150c内に貫入し、その中にしっかり固定される近位端部分144pを有することができる。
【0046】
例示されている実施形態において、伸長部分144は、送達装置の長手方向軸に垂直な平面内で円筒形の形状および円形の断面プロファイルを有する。他の例では、伸長部分は、様々な他の形状のうちのいずれをも有することができる。たとえば、伸長部分144は、C字形状など、第1のシャフト104の周りに完全には延在しない送達装置の長手方向軸に垂直な平面内で断面形状を有することができる。別の実装形態では、伸長部分は、長方形または正方形の形状の断面プロファイルを有するビーム状の構成部などの、比較的平坦な構成部であってよく、第1のシャフト104の片側に沿って延在し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、伸長部分144は、圧縮された構成にあるときの人工弁10の長さの少なくとも半分に等しい長さで近位段部110から延在することができる。伸長部分144は、様々な好適な材料のうちのいずれから形成されてもよく、たとえば、伸長部分144は、伸長部分144と第1のシャフト104との間の擦過または引っ掻き傷が軽減されるようなポリマー(ナイロンまたはPebax)から形成され得る。
【0048】
例示されている実施形態では、伸長部分144は、近位段部110を伸長部分144の端部、たとえば近位端部分144pにオーバーモールドすることによって、近位段部110にしっかり固定される。他の実施形態では、端部144pは、たとえば、接着剤、溶接、および/または締まり嵌めを使用して、近位段部110の遠位内腔部分150c内にしっかり固定することができる。他の実施形態では、伸長部分144は、遠位内腔部分150c内に貫入することなく近位段部にしっかり固定され得る。
【0049】
代替的な一実施形態において、伸長部分144は、近位段部110の一部として一体形成されてよく、これは、伸長部分144および近位段部が、伸長部分144を近位段部110に固定する留め具、溶接部、または接着剤を伴わずに一体となった単一構造を有することを意味する。たとえば、近位段部110は、成形プロセス(たとえば、射出成形)によって形成されてよく、伸長部分144は、成形プロセスにおいて近位段部110の一部として形成される。
【0050】
伸長部分144は、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー146を含むことができる。放射線不透過性マーカー146は、人工弁10が近位段部110と遠位段部112との間で半径方向に圧縮された構成にあるときに伸長部分144上の人工弁10内の場所に配設され得る。たとえば、放射線不透過性マーカー146は、伸長部分144の遠位端部分144d上に配設されるか、または遠位端部分144dから延在し得る。
【0051】
従来の送達装置では、放射線不透過性マーカーは、典型的には、バルーンを貫通する最も内側のシャフト上に配設される。その結果、送達装置が大動脈弓の周りで操縦されるときの最も内側のシャフトの圧縮またはたわみによって引き起こされ得るような、人工弁に関する最も内側のシャフトの任意の移動は、人工弁内のその意図された位置から放射線不透過性マーカーを変位させることができ、これは、意図された配備位置での人工弁の正確な位置合わせを阻害し得る。
【0052】
しかしながら、例示されている実施形態において、放射線不透過性マーカー146は、伸長部分144によって、近位段部110に対して固定位置を有している。伸長部分144は、望ましくは、第1のシャフトの遠位端部分104dに固定されておらず、したがって、遠位端部分104dは、近遠位端部分が圧縮を受けるか、またはたわんだ場合に近位段部110に対して移動することができる。したがって、第1のシャフト104の遠位端部分104dが移動した結果、近位段部110および人工弁10に対してマーカー146が移動することはない。したがって、放射線不透過性マーカー146を伸長部分144上に留置することによって、医師は、人工弁10を、患者体内の選択された植え込み場所、たとえば自然大動脈弁輪に、知られている送達装置と比較してはるかに高い精度および正確さで位置決めすることができる。
【0053】
例示されている実施形態において、放射線不透過性マーカー146は、伸長部分144の遠位端部分144dの周りに環状に延在するマーカーバンドである。他の実施形態では、放射線不透過性マーカーは、一連の放射線不透過性バンドまたは放射線不透過性パターンであるものとしてよく、伸長部分144の長さに沿って配設され得る(たとえば、伸長部分144の長さに沿って互いから相隔てて並ぶものとしてよい)。また、放射線不透過性マーカーは、伸長部分144の周りに完全に延在する環状バンドである必要はない。その代わりに、放射線不透過性マーカーは、部分的バンド、または軸方向に延在する線など、様々な形状のうちのいずれをも含むことができる。さらに他の実施形態では、放射線不透過性マーカーは、伸長部分144の遠位端部分144dから延在することができる。放射線不透過性マーカー146は、たとえば、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、およびこれらの組合せを含み得る。
【0054】
他の実施形態では、放射線不透過性マーカー146の代わりに、またはそれに加えて、伸長部分144それ自体は、金、白金、放射線不透過性ニチノール(登録商標)、またはこれらの組合せなどの放射線不透過性材料を含むことができる。伸長部分144の一部または全部が、放射線不透過性材料から形成されてもよい。そのような実施形態では、伸長部分144の遠位端は、患者体内の選択された植え込み場所に人工弁10を位置決めするために使用され得る。
【0055】
送達装置100は、次の例示的な方式で、人工心臓弁、たとえば、人工心臓弁10を送達し、植え込むために使用され得る。人工弁10は、マーカーバンド146を含む伸長部分144が人工弁10内に配設されるように近位段部110と遠位段部112との間で、送達装置100の遠位端部分にクリンプされ得る。送達装置100の遠位端は(人工弁10とともに)、患者の血管系を通って、選択された植え込み部位(たとえば、自然大動脈弁輪)まで前進させられ得る。医師は、放射線不透過性マーカー146を使用して、たとえば、蛍光透視法を使用してマーカー146を可視化することによって、人工弁を植え込み部位に位置合わせすることができる。
【0056】
医師が、人工弁10が植え込み部位に望み通りに位置決めされたと決定した後、人工弁10は、配備され得る(たとえば、半径方向に拡張される)。人工弁を配備するために、供給源(たとえば、注射器)からの膨張流体は、圧力下で、第2のシャフト106の長さ部分を通って第1の環状空間122内に導入され、第2の環状空間140を通り、開口部142から出て、バルーン118内に入り、それにより、バルーン118を膨らませ、人工弁10を拡張して、自然弁輪と接触する。人工弁を植え込むための方法の他の例は、たとえば、米国公開第2017/0065415号に記載されている。
【0057】
上述したように、例示されている実施形態における伸長部分144の長さは、送達時にマーカー146が人工弁10の真ん中、または中間セクション(人工弁の流入端と流出端との間の中ほど)にあるように選択される。このようにして、マーカー146は、人工弁の中間セクションを患者の解剖学的構造の特定の場所または領域と位置合わせするために使用され得る。他の実施形態では、伸長部分144は、異なる長さを有することができ、マーカー146は、人工弁の流入端または流出端など、人工弁内の別の場所にあってもよく、それにより、人工弁の別のセクションを患者の解剖学的構造の特定の場所または領域と位置合わせすることを可能にする。特定の一実装形態において、伸長部分144は、近位段部110と遠位段部112との間の全長にわたって延在し、1つまたは複数のマーカー146が、人工弁の流入端、中間セクション、および流出端に対応する場所など、伸長部分144の長さに沿った選択された場所に位置決めされ得る。
【0058】
上述したように、近位段部110に対する放射線不透過性マーカー146の静止位置は、マーカーが人工弁10に対する意図された場所からずれることを防止し、したがって、近位段部110に関する第1のシャフト104の移動によって干渉が引き起こされることなく人工弁10が自然弁輪内に正確に位置決めされることを可能にする。
【0059】
一般的考慮事項
本発明を説明することを目的として、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規性のある特徴が説明されている。開示されている方法、装置、およびシステムは、いかなる形でも制限するものとして解釈されるべきでない。その代わりに、本開示は、単独のまた互いとの様々な組合せおよび部分的組合せの様々な開示されている実施形態のすべての新規性のある非自明の特徴および態様を対象とする。方法、装置、およびシステムは、特定の態様または特徴またはこれらの組合せに限定されず、また開示されている実施形態が1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを要求するものではない。
【0060】
開示されている実施形態のうちのいくつかの方法の動作は、発表の便宜のため特定の順次的順序で説明されているが、この説明の仕方は、特定の順序が以下に規定される特定の言語で要求されていない限り、並び替えを包含することは理解されるであろう。たとえば、順次的に説明されている動作は、場合によっては、並び替えられるか、または同時に実行され得る。さらに、簡単にするため、添付図面は、開示されている方法が他の方法と併せて使用され得る様々な仕方を示し得ない。それに加えて、説明では、開示されている方法を説明するために「提供する」または「達成する」のような言い回しを使用することもある。これらの言い回しは、実行される実際の動作の高水準の抽象化である。これらの言い回しに対応する実際の動作は特定の実装形態に応じて変わり得るものであり、当業者によって容易に認識可能である。
【0061】
本明細書において説明されているすべての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能な場合を除き、本明細書において説明されている他の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0062】
本出願および請求項で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことを示さない限り、複数形を含む。それに加えて、「含む、備える(include)」という語は「備える、含む(comprise)」を意味する。さらに、「結合される」および「関連付けられる」という語は、電気的に、電磁気的に、および/または物理的に(たとえば、機械的にもしくは化学的に)結合されるか、もしくは連結されることを一般的に意味し、特定の反対語がない限り結合されるか、または関連付けられている項目の間の中間要素の存在を除外しない。
【0063】
本出願の文脈において、「下側」および「上側」という語は、それぞれ、「流入」および「流出」という語と交換可能に使用される。したがって、たとえば、弁の下側端は流入端であり、弁の上側端は流出端である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「近位」という語は、ユーザにより近く、植え込み部位からより遠いデバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書で使用される場合、「遠位」という語は、ユーザからより遠く、植え込み部位により近いデバイスの位置、方向、または部分を指す。したがって、たとえば、デバイスの近位運動は、ユーザに向かうデバイスの運動であり、デバイスの遠位運動は、ユーザから遠ざかるデバイスの運動である。「長手方向」および「軸方向」という語は、他の形で明示的に定義されていない限り、近位方向および遠位方向に延在する軸を指す。
【0065】
本開示の原理が応用され得る多くの可能な実施形態に照らして、例示されている実施形態は、好ましい例にすぎず、本開示の範囲を制限するものとして解釈されるべきでないことは理解されるであろう。むしろ、本開示の範囲は、次の請求項によって定義される。
【符号の説明】
【0066】
10 人工弁
12 ステントまたはフレーム
14 弁構造
16 弁尖
18 交連
20 補強部材
22 封止部材
100 送達装置
102 ハンドル
104 第1の細長シャフト
104d 遠位端部分
106 第2のシャフト
106d 遠位端部分
108 第3のシャフト
108d 操縦可能部分
110 近位段部
112 遠位段部
113 摺動可能調整レバー
114 ノーズコーン
116 ノブ
118 バルーン
118d 遠位端部分
118p 近位端部分
120 近位ポート
122 第1の環状空間
123 側部アーム
124、126 本体部
124d 遠位端部分
126p 近位端部分
128、130 フレア状に張り出した端部
132 スロット
134 段付き表面
136 第1の環状リップ部
138 第2の環状リップ部
140 第2の環状空間
142 開口部
144 伸長部分
144d 遠位端部分
144p 近位端部分
146 放射線不透過性マーカー
150a 近位内腔部分
150b 中間内腔部分
150c 遠位内腔部分
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】