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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010358
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】床面仕上げ用コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20240117BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111652
(22)【出願日】2022-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年6月15日に発行されたDVD「コンクリート工学年次論文集第44巻(2022)」 (2)令和4年7月11日に発表した動画が掲載されたコンクリート工学年次大会2022(千葉)のウェブサイト(https://confit.atlas.jp/guide/event/jci2022/subject/1019/tables?cryptoId=)
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 一裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】浦野 真次
(72)【発明者】
【氏名】大島 佑介
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB32
4G056CD64
4G112PB10
4G112PB17
4G112PC05
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】ブリーディングを抑制し、可使時間を延長できるコンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法であって、下記(A)~(D)の特徴を有するコンクリートの製造方法。
(A)遅延剤とブリーディング抑制剤とを、順次若しくは同時にベースコンクリートに添加する工程を含み、
(B)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との混合比率が、質量比で2:8~8:2の範囲であり、
(C)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との合計添加率が、前記ベースコンクリート中のセメント量の0.05~1.0質量%であり、
(D)現場添加型である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法であって、下記(A)~(D)の特徴を有するコンクリートの製造方法。
(A)遅延剤とブリーディング抑制剤とを、順次若しくは同時にベースコンクリートに添加する工程を含み、
(B)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との混合比率が、質量比で2:8~8:2の範囲であり、
(C)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との合計添加率が、前記ベースコンクリート中のセメント量の0.05~1.0質量%であり、
(D)現場添加型である。
【請求項2】
前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤とを、コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車内のベースコンクリートに直接、あるいは、水溶性の袋に入れて投入することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤とを、20℃を超え、40℃以下の環境温度でベースコンクリートに添加する、請求項1または2に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法で製造されたコンクリートを用いた床コンクリートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築分野等で使用されるコンクリート、特に、コンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法に関する。なお、本発明のコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【背景技術】
【0002】
建設業界は、いわゆる3K(危険、キツイ、汚い)作業が多い業界と言われている。国土交通省は、「国土交通白書」や「重点政策」の中で、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望がもてる)を目指すとし、建設業界の改革を掲げている。例えば、コンクリート工においても、「i-Construction」というキーワードの下、作業の効率化や、省力化・軽労化を推進していく方針である。
【0003】
コンクリート工では、コンクリートを打設した後、表面仕上げを行う。この表面仕上げの良否はコンクリートのひび割れや強度に影響し、最終的にはコンクリート構造物の耐久性にまで影響する。コンクリートの表面仕上げとしては、金属ゴテや木ゴテやプラスティック製のコテや硬質ゴム製のコテ等で平滑にするコテ仕上げ、表面仕上げ用のバイブレータ等で平滑にするバイブレータ仕上げ等が挙げられるが、主にコテを用いて行われる。
【0004】
このコテ等によるコンクリートの仕上げについて、最終の表面仕上げ作業の開始時はブリーディングが引き始めた時期が最適な時期とされている。ブリーディングは、コンクリートの練り混ぜ水の一部が材料分離し、コンクリート表面に浮かび上がってくる現象である。ブリーディング量が過剰であると、コンクリート構造物表層の品質低下を招く上、仕上げ作業の開始が遅れることとなる。また、ブリーディングが引き始める時期はコンクリートの凝結始発時間の直前でもある。
【0005】
ブリーディングを抑制したコンクリートの製造方法としては、減水剤を使用し、単位水量を低減する方法が知られている。例えば、デュータンガム、ポリアルキレンオキサイド鎖を有する水溶性ポリマー及び減水剤をフレッシュコンクリートに添加する方法(特許文献1)やグリコール系、アクリル系またはバイオポリマー系の増粘剤と高性能AE減水剤が配合された混和剤を用いる方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-148438号公報
【特許文献2】特開2012-200947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような製造方法では、コンクリートの凝結始発時間が短すぎる等、適度に調整することができず、特に、夏場などの高い環境温度下では、セメントの水和反応が促進されるため、さらに凝結始発時間が短くなりやすく、作業人員を増員する等の必要が生じるため、生産性が向上しない。
そこで、本発明は、ブリーディングを抑制し、可使時間を延長できるコンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を行なったところ、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] コンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法であって、下記(A)~(D)の特徴を有するコンクリートの製造方法。
(A)遅延剤とブリーディング抑制剤とを、順次若しくは同時にベースコンクリートに添加する工程を含み、
(B)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との混合比率が、質量比で2:8~8:2の範囲であり、
(C)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との合計添加率が、前記ベースコンクリート中のセメント量の0.05~1.0質量%であり、
(D)現場添加型である。
[2] 前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤とを、コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車内のベースコンクリートに直接、あるいは、水溶性の袋に入れて投入することを特徴とする上記[1]に記載のコンクリートの製造方法。
[3] 前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤とを、20℃を超え、40℃以下の環境温度でベースコンクリートに添加する、上記[1]または[2]に記載のコンクリートの製造方法。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法で製造されたコンクリートを用いた床コンクリートの施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリートの製造方法により、ブリーディングが抑制し、可使時間を延長できるコンクリート床面の仕上げ用コンクリートを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書で使用する「部」や「%」は特に規定のない限り質量基準である。また、以下では表面仕上げの好ましい一例として、コテ仕上げを挙げて説明するが、他の表面仕上げについても同様なことがいえる。
【0012】
本発明のコンクリートの製造方法は、コンクリート床面の仕上げ用コンクリートの製造方法であって、下記(A)~(D)の特徴を有する。
(A)遅延剤とブリーディング抑制剤とを、順次若しくは同時にベースコンクリートに添加する工程を含み、
(B)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との混合比率が、質量比で2:8~8:2の範囲であり、
(C)前記遅延剤と前記ブリーディング抑制剤との合計添加率が、前記ベースコンクリート中のセメント量の0.05~1.0質量%であり、
(D)現場添加型である。
【0013】
本発明のコンクリートの製造方法は、(A)遅延剤とブリーディング抑制剤とを、順次若しくは同時にベースコンクリートに添加する工程を含む。
遅延剤とブリーディング抑制剤とを、同時にベースコンクリートに添加する場合は、工程が煩雑にならないため好適である。遅延剤とブリーディング抑制剤とを順次に添加する場合は、添加の順番は特に限定されず、先に遅延剤を添加してもよく、先にブリーディング抑制剤を添加してもよい。
当該工程において、添加後のコンクリートの凝結始発時間は、遅延剤およびブリーディング抑制剤の混合比率、添加率、ならびにベースコンクリート製造後から遅延剤およびブリーディング抑制剤を添加するまでの時間によって調整することができる。
【0014】
本発明で使用する遅延剤とは、ベースコンクリートに添加後、コンクリートの凝結を遅延する混和剤であり、その種類は特に限定はされないが、ブリーディング抑制剤との組み合わせの観点から、オキシカルボン酸やその塩が好ましく、オキシカルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸がより好ましく、中でも酒石酸がさらに好ましい。オキシカルボン酸の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。遅延剤は、1種のみ、または2種以上を混和させてもよい。
なお、メチロールメラミン縮合物、メラミンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等のメラミン系化合物を含まないことが好ましい。
【0015】
遅延剤は、粉末であることが好ましく、その平均粒径は限定されるのではないが、通常、1000μm以下がこの好ましく、600μm以下がより好ましい。遅延剤の平均粒径が1000μm以下であることで、可使時間を延長しやすい。なお、本実施形態において、平均粒径の測定は、例えば、堀場製作所社製レーザ回折/散乱式粒度分布計により測定することができる。遅延剤の平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば5μmである。
【0016】
本発明で使用するブリーディング抑制剤とは、コンクリート打設後に発生するブリーディングを抑制する効果を有する混和剤であり、その種類は特に限定されないが、遅延剤との組み合わせの観点から、金属硫酸塩が好ましく、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバンがより好ましく、中でも硫酸アルミニウムがさらに好ましい。ブリーディング抑制剤は、1種のみ、または2種以上を混和させてもよい。なお、本実施形態においてカリウムミョウバンとは、ミョウバンの一種で、カリウムイオン、アルミニウムイオン及び硫酸イオンを含む複塩である。一般式AlK(SO・nHOで表され、式中のnが0~12のいずれのものも使用可能である。
【0017】
ブリーディング抑制剤は、粉末であることが好ましく、その平均粒径は限定されるのではないが、通常、500μm以下が好ましく、325μm以下がより好ましい。ブリーディング抑制剤の平均粒径が500μm以下であることで、コテ仕上げ性が良好となり、コテ仕上げ後のブリーディングが収まりやすい。ブリーディング抑制剤の平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば5μmである。
【0018】
本発明におけるベースコンクリートとは、少なくとも、セメント、骨材および水を含む組成物である。
ここで、セメントとしては、通常市販されている普通、早強、中庸熱、および超早強などの各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)を挙げることができる。
また、骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、および珪砂等の細骨材、ならびに川砂利、山砂利、および石灰砂利等の粗骨材が使用可能である。
上記遅延剤及びブリーディング抑制剤以外の混和材料等も特に限定されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0019】
本発明のコンクリートの製造方法は、(B)遅延剤とブリーディング抑制剤との混合比率が、質量比で2:8~8:2である。
遅延剤とブリーディング抑制剤の混合比率が上記範囲外であると、ベースコンクリートと比較して、可使時間の延長、および/または、ブリーディング抑制の効果を発揮することができない。
【0020】
本発明のコンクリートの製造方法は、(C)遅延剤とブリーディング抑制剤との合計添加率が、ベースコンクリート中のセメント量の0.05~1.0質量%である。
遅延剤とブリーディング抑制剤との合計添加率が0.05質量%未満であると、可使時間の延長効果に乏しくまた、ブリーディングを抑制することができなくなり、1.0質量%を超えると、可使時間が過剰に延長され、作業の待ち時間が増えるため、生産性が低下することとなる。
【0021】
本発明のコンクリートの製造方法は、(D)現場添加型である。
本発明の製造方法における「現場添加型」とは、生コン工場等で製造されたコンクリートが、アジテータ車等により土木工事現場や建設現場等の施工現場に運搬され、施工現場にて遅延剤およびブリーディング抑制剤等をベースコンクリートに添加する方式をいう。この時、施工現場にて遅延剤およびブリーディング抑制剤等を、コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車中のベースコンクリートに直接、あるいは、水溶性の袋に入れて投入してもよい。
【0022】
遅延剤およびブリーディング抑制剤等をアジテータ車に直接投入する場合は、具体的には、コンクリートアジテータ車が到着してから直ぐに、手動でアジテータ車に投入してもよいし、5~10m程度のホースを用いてコンプレッサーによる圧縮空気を利用して圧送してもかまわない。この場合、例えば、エクセア社製空気搬送機「ラインバック」が利用可能である。
【0023】
また、水溶性の袋とは、例えば、水溶紙で構成された包袋が使用可能であり、その原料が木材パルプを含むことが好ましく、さらに、多糖類、セルロース、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロース、および、でんぷんからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことがより好ましい。木材パルプと上記添加剤との合計に対する木材パルプの含有量は75~95%であることが好ましく、80~90%であることがより好ましい。木材パルプと上記添加剤との合計に対する添加剤の含有量は、5~25%が好ましく、10~20%がより好ましい。
【0024】
水溶性の袋の寸法は、横15~35cmが好ましく、20~30cmがより好ましい。縦は10~50cmが好ましく、15~40cmがより好ましい。幅(袋の底部の奥行き)は5~20cmが好ましい。袋の寸法が上記範囲であることで、遅延剤およびブリーディング抑制剤の封入量が250g/L以上1200g/L以下で封入しやすくなる。水溶性の袋の寸法が、上記下限値以上であると、1mあたりの添加袋数の過剰な増加を防ぐことができる。上記上限値以下であると、分散するまでの時間も短くなり、また、コンクリート練り混ぜ後に十分分散しなかったり、空気圧送をした場合、圧送管内で引っ掛かり破袋したりすることを防ぐことができる。
水溶性の袋の開口部は、遅延剤およびブリーディング抑制剤を充填した後は、ヒートシール、接着剤シール、糸縫いシールといった手段でシールされることが好ましい。
【0025】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合してもよいし、あらかじめその一部、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾動ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、プロシェアミキサ、及びナウターミキサ等が挙げられる。
【0026】
本発明のコンクリートの製造方法により製造されたコンクリートを用いて床コンクリートを施工することができる。本発明のコンクリートの製造方法により製造されたコンクリートを用いた床コンクリートの施工方法によれば、床表面のコテ仕上げ性が良好な床コンクリートを施工することができる。
【0027】
本発明の製造方法により製造されたコンクリートの凝結始発時間は、JIS A 1147:2019に準拠し、測定することができる。本発明の製造方法により、コンクリートの凝結始発時間を適宜調整することができる。例えば、ベースコンクリートとの差が20~540分の範囲で調整することが可能であり、環境温度や作業規模に合わせて調整することができる。夏場等の比較的温度の高い温暖期においては、セメントの水和反応の速度が促進されるため、凝結始発時間を、ベースコンクリートの始発時間から、好ましくは20分以上、より好ましくは50分以上、さらに好ましくは90分以上であって、好ましくは500分以下、より好ましくは450分以下の範囲で遅延させることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法により製造されたコンクリートの凝結始発時間は、環境温度に応じて変更することができる。本発明における環境温度とは、遅延剤およびブリーディング抑制剤をベースコンクリートに添加する際の温度、すなわち施工現場の温度であり、本実施形態においては、20℃を超え、40℃以下のであることが好ましく、本実施形態の製造方法により製造されたコンクリートの凝結始発時間は、例えば、環境温度25℃において、2~10時間であることがより好ましい。また、環境温度35℃においては、5~8時間であることがより好ましい。環境温度によって、組成物に含まれるセメントの水和反応の速度が異なるため、適切な凝結始発時間とすることが好ましい。本発明によれば、夏場等の高めの環境温度であっても、適切な凝結始発時間とすることができる。
【0029】
本発明の製造方法により製造されたコンクリートのブリーディング量は、JIS A 1123:2012に準拠し測定することできる。本発明の製造方法によって、遅延剤とブリーディング抑制剤とが添加されたコンクリートのブリーディング量は、ベースコンクリートのブリーディング量の100%未満であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。ブリーディング量が上記範囲にあると、コテ仕上げを良好に行いやすく、表面剥離等によるコンクリートの品質低下を防ぎやすい。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下に記載する工程は、すべて35℃の環境温度下にて実施した。
【0031】
[ベースコンクリートの製造]
下記の材料を用い、単位セメント量310kg/m、単位水量170.5kg/m、s/a=43%、空気量4.5±1.5%、スランプ12±2.5cm、減水剤添加率:セメント×1.0%のベースコンクリートを、50Lの2軸ミキサを用いて製造した。
【0032】
[ベースコンクリート材料]
ベースコンクリートの製造に使用した材料は下記のとおりである。
・セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3200cm/g。
・粗骨材:砕石、密度2.64g/cm
・細骨材:砕砂、密度2.62g/cm
・水:水道水
・減水剤:リグニン系減水剤、GCP株式会社製
【0033】
[コンクリートの製造]
下記の材料A及びBを、表1に記載のセメント量に対する添加率および混合比率(AとBの質量比)で、コンクリート練り上げが完了した2軸ミキサ内に、直接投入する方法(a)と、水溶性の袋に入れて投入する方法(b)の2種類の方法により同時に添加し、コンクリートを製造した。製造したコンクリートに対し実施した各計測の結果を表1に併記する。
【0034】
A 遅延剤:酒石酸、試薬
B ブリーディング抑制剤:硫酸アルミニウム、試薬、乾燥品
【0035】
[試験方法]
始発時間については、JIS A 1147:2019に準拠し測定した。
【0036】
相対ブリーディング比については、JIS A 1123:2012に準拠してブリーディング量を測定し、得られたブリーディング量と、ベースコンクリート(参考例1)のブリーディング量との比を相対ブリーディング比とした。相対ブリーディング比が低いほど、ブリーディングが抑制されていることを意味する。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に記載の結果より、本発明のコンクリートの製造方法によれば、コンクリートのブリーディングを抑制し、可使時間を延長できるコンクリートを製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のコンクリートの製造方法を用いることで、ブリーディングを抑制し、可使時間を延長することが可能となり、土木、建築分野に好適であり、作業員の業務効率化につながり、建設現場の効率を向上できるといった効果を奏する。