(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103598
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】自動排液装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/18 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
F16K31/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086867
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2020011395の分割
【原出願日】2020-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】394020491
【氏名又は名称】ユーキャン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 磐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
(57)【要約】
【課題】大きな吸込み音が発生しにくい自動排液装置を提供する。
【解決手段】貯液槽16と、該貯液槽16内の液面に浮かぶフロート3と、吸液口6aが前記貯液槽16内で開口するとともに吸液作用源31と連結される吸液ノズル6と、前記フロート3の上下動に伴って前記吸液口6aを開閉する吸液口開閉弁4と、を備える自動排液装置であって、前記吸液ノズル6による前記吸液口開閉弁4の吸着作用を補助する磁石5を備え、これに対応して、前記磁石5にくっつく被吸着体4を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液槽と、該貯液槽内の液面に浮かぶフロートと、吸液口が前記貯液槽内で開口するとともに吸液作用源と連結される吸液ノズルと、前記フロートの上下動に伴って前記吸液口を開閉する吸液口開閉弁と、を備える自動排液装置であって、前記吸液ノズルによる前記吸液口開閉弁の吸着作用を補助する磁石を備え、これに対応して、前記磁石にくっつく被吸着体を備える、自動排液装置。
【請求項2】
前記磁石が前記吸液口を取り囲むように配設される、請求項1に記載の自動排液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯液槽から自動的に排出するための自動排液装置に関するものである。この自動排液装置は、例えば、ビル空調等における天井埋込型空調機や生鮮食料品用ショーケースなどのドレン排水を行う、ドレン排水装置として利用することができる。
【背景技術】
【0002】
前記の如き自動排液装置として、特許文献1に記載のものが公知となっている。この自動排液装置は、空調機等の液体発生源で生じる液体を受け入れる貯液槽を備える。貯液槽内には、液面に浮かぶフロートと、吸液ノズルと、吸液口開閉弁が配設される。吸液ノズルは、減圧タンク等の吸液作用源と連結される。吸液ノズルの吸液口は、貯液槽内に開口している。吸液口開閉弁は、連結部材によってフロートに連結され、フロートの上下動に伴って吸液ノズルの吸液口を開閉する。フロートの上下動はガイド部材で案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の如き自動排液装置を天井埋込型空調機のドレン排水装置として使用する場合、貯液槽は天井裏に配設されるので、貯液槽の配設作業の容易化の観点や、貯液槽のメンテナンスの際の分解、清掃、組立作業等の作業性の観点から、貯液槽内の構造をできるだけ簡素化して、貯液槽の小型化や軽量化を図ることが好ましい。
【0005】
また、安定した動作が得られるように、フロートの上下動を案内するガイド部材は、できるだけ小さい摩擦で作用することが好ましい。
【0006】
さらに、フロートは貯液槽内の液面の上下変位に応じて上下動するが、吸液ノズルによる吸液口開閉弁の吸着力とフロートの浮力とが拮抗する領域では、吸液口開閉弁が吸液ノズルの吸液口から離れるでもなし、吸液口を完全に閉じるでもなしの不安定な状態が生ずる場合がある。この状態においては、吸液ノズルの吸液口と吸液口開閉弁との間の、開いたり閉じたりする僅かな隙間から、僅かずつの液体が、吸液ノズルによる強力な吸液力で強制的に吸入される結果となり、この際に大きな吸込み音が発生しやすい。
【0007】
本発明は、前記の如き種々の課題の少なくとも一つを解決可能な自動排液装置を提供しようとするものである。本発明はまた、前記自動排液装置の配設構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動排液装置は、貯液槽と、該貯液槽内の液面に浮かぶフロートと、吸液口が前記貯液槽内で開口するとともに吸液作用源と連結される吸液ノズルと、前記フロートの上下動に伴って前記吸液口を開閉する吸液口開閉弁と、を備える自動排液装置であって、前記吸液ノズルによる前記吸液口開閉弁の吸着作用を補助する磁石を備え、これに対応して、前記磁石にくっつく被吸着体を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明においては、貯液槽内の液面の上下動に伴いフロートが上下動する。そして、吸液口開閉弁によって吸液口が開閉される。磁石の磁力が吸液ノズルによる吸液口開閉弁の吸着作用を補助するので、吸液口の閉塞時の液密性が向上する。また、磁石の磁力により、吸液口開閉弁による吸液口の開閉が瞬時に且つ確実に行われる。よって、大きな吸込み音の発生が防止される。
【0010】
好適な実施の一形態として、前記磁石が前記吸液口を取り囲むように配設される態様を例示する(請求項2)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る自動排液装置の貯液時の内部を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の自動排液装置の排液時の内部を示す縦断面図である。
【
図5】従来の自動排液装置の配設構造を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の一形態に係る自動排液装置の配設構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明に係る自動排液装置は、貯液槽内に液体が継続的又は断続的に流れ込む場合であって、貯液槽内の液面高さが所定レベルを超えないように、貯液槽内から自動的に液体を排出したい場面において広く使用できる。
【0014】
本発明に係る自動排液装置は、例えば、ビル空調等における天井埋込型空調機や、生鮮野菜・鮮魚等生鮮食料品の保冷・保湿用ショーケースなどの稼働によって生ずるドレンを自動的に回収するためのドレン排水装置として利用可能である。以下には、その一例として、ビル空調等における天井埋込型空調機(液体発生源)から発生するドレンを、貯液槽としてのドレンタンクから自動的に排出させる場合を例に取って、本実施の形態に係る自動排液装置を説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る自動排液装置としてのドレン排水装置50は、貯液槽としてのドレンタンク16を備える。ドレンタンク16は、建造物の各階又は各部屋等の天井ふところに配設された空調機17(
図6参照)の近くに配設される。ドレンタンク16の具体的な配設方法については後述する。
【0016】
ドレンタンク16の側面の上部には、ドレン導入筒1が横向きに配設される。空調機の作動で発生するドレンは、空調機のドレンポンプでドレン導入筒1へと供給されてドレンタンク16内に流れ込む。
【0017】
ドレンタンク16内の下部には、吸水ノズル(吸液ノズル)6が配設される。吸水ノズル6は、上向きに開口する吸水口(吸液口)6aを有する。吸水ノズル6はドレンタンク16内でホース10に連結され、このホース10は、ドレンタンク16の蓋体16aに支持されるドレン排水接手9に連結される。ドレン排水接手9は、ドレン吸引管23を介して吸液作用源としての回収タンク31に連通される。回収タンク31は、真空ポンプ32によって常時所定の減圧状態に保持される。回収タンク31の真空吸引作用によって、吸水ノズル6の吸水口6aには常に吸引力がはたらく。よって、吸水ノズル6はドレンタンク16内のドレン2を吸い込み、吸水ノズル6で吸引されるドレン2はホース10とドレン吸引管23とを通して回収タンク31に回収される。
【0018】
ドレン吸引管23の途中には、手動式の開閉バルブ33が介装される。この開閉バルブ33は、ドレンタンク16の保守点検時等の便宜のためのものである。
【0019】
ドレンタンク16内には、大きな浮力を有するフロート3が配設される。フロート3は、ドレンタンク16内のドレン2の水面に浮く。フロート3の下面には、吸水口開閉弁(吸液口開閉弁)4が配設される。吸水口開閉弁4は、フロート3の上下動に伴って吸水ノズル6の吸水口6aを開閉する。吸水口開閉弁4がフロート3の下面に配設されることで、フロート3と吸水口開閉弁4とを連結する連結部材が不要となり、部品点数の減少に貢献できる。これにより、ドレンタンク16の小型化・軽量化に貢献できる。
【0020】
図1に示すように、吸水口開閉弁4は、ドレンタンク16内へのドレンの流入によりドレン2が所定の水位(液面高さ)になるまでは、フロート3の自重と吸水ノズル6の吸引力と後述する磁力とによって、吸水ノズル6の吸水口6aを閉じている。そして、
図2に示すように、吸水口開閉弁4は、ドレンタンク2内の水位の上昇に伴うフロート3の上方変位に伴って、吸水ノズル6の吸水口6aを開放する。これにより、吸水口6aからドレン2が吸引されて水位が下がる。そして、吸水口開閉弁4は、ドレンタンク2内の水位の下降に伴うフロート3の下方変位に伴って、再び吸水ノズル6の吸水口6aを閉塞する。
【0021】
図示例では、板状の吸水口開閉弁4がフロート3の下面に直接固着されている。しかしこれには限定されず、フロート3の下面の少なくとも一部を滑らかに形成する等して吸水ノズル6の吸水口6aへの密着性を高めることにより、フロート3の下面の少なくとも一部をそのまま吸水口開閉弁として利用することもできる。
【0022】
ドレン排水装置50は、フロート3を上下に案内するガイド部材34を備える。このガイド部材34は、フロート3の下面の吸水口開閉弁4と吸水ノズル6の吸水口6aとが正対した状態が常に維持されるようにフロート3の上下動を案内する。
【0023】
ガイド部材34は、フロート3から上向きに延びる縦シャフト7と、この縦シャフト7を上下動自在に受け入れる軸受部材8と、を備える。縦シャフト7はフロート3に固着されている。縦シャフト7はフロート3の中央部を貫通し、フロート3の上面から上方へと垂直に延び出ている。限定はされないが、図示例では、縦シャフト7の下端が吸水口開閉弁4に固着されている。軸受部材8はドレンタンク16内の適宜の固定部35に固着される。軸受部材8は、上下一対の軸受片8a,8bを備え、各軸受片8a,8bに軸受孔が形成されている。これらの軸受孔に縦シャフト7が上下動自在に受け入れられる。
【0024】
ドレンタンク16内の水位の上下動に伴い、ガイド部材34に案内されてフロート3が垂直方向に移動し、吸水口開閉弁4によって吸水ノズル6の吸水口6aが開閉される。フロート3と一体の縦シャフト7は軸受部材8で案内されるので、それら相互間の摩擦が小さい。このため、フロート3の上下動が円滑に行われ、吸水口開閉弁4による吸水口6aの開閉が円滑に行われる等、安定した動作が得られる。また、縦シャフト7がフロート3から上向きに延びているので、横方向への無用な広がりが抑制され、ドレンタンク16の小型化・軽量化にも貢献できる。さらに、ガイド部材34がフロートの上部にあって水没しないので、汚染にも強い。
【0025】
ドレン排水装置50は、吸水ノズル6による吸水口開閉弁4の吸着作用を補助するための磁石5を備える。図示例の磁石5はリング状に成形され、吸水ノズル6の吸水口6aの周りを取り囲むように配設される。これに対応して、吸水口開閉弁4は、磁石にくっつく、鉄やニッケル等の強磁性体で形成される。この場合、吸水口開閉弁4自体が磁石5に吸着される被吸着体として作用する。吸水口開閉弁4には防錆処理を施しておくのが好ましい。磁石5はリング状の単体のものには限定されず、複数の磁石を吸水ノズル6の吸水口6aの周りに分布させて配設することもできる。また、吸水口開閉弁4自体を強磁性体で形成することに代えて、フロート3の下面に強磁性体からなる板状等の被吸着体を別途配設し、この被吸着体が磁石にくっつくようにしても良い。別例として、フロート3の下面の少なくとも一部を強磁性体で形成しても良い。さらに他の例として、磁石5をフロート3側に配設し、強磁性体からなる被吸着体を吸水ノズル6側に配設することもできる。
【0026】
磁石5を用いることにより、磁石5の磁力が吸水ノズル6による吸水口開閉弁4の吸着作用を補助するので、吸水口開閉弁4による吸水口6aの閉塞時の液密性が向上する。また、磁石5の磁力により吸液口開閉弁4による吸液口6aの開閉が瞬時に且つ確実に行われる。よって、吸水口開閉弁4が吸水ノズル6の吸水口6aから離れるでもなし、吸水口6aを完全に閉じるでもなしの不安定な状態が起こりにくい。
【0027】
具体的には、ドレンタンク16内の水位が下降してフロート3が吸水ノズル6の吸水口6aに近づくと、
図3に示すように、フロート3の自重12と磁石5の磁力13と吸水ノズルの吸着力14との和により、吸水口開閉弁4が吸水口6aに瞬時に吸着される。また、
図4に示すように、ドレンタンク16内の水位が上昇してフロート3の浮力が磁石5の磁力と吸水ノズル6の吸着力との和を上回った瞬間に、フロート3が一気に跳ね上がり、吸水口開閉弁4が吸水口6aから瞬時に引き離される。このように、磁石5の磁力の補助のおかげで、吸水口開閉弁4による吸水口6aの開閉が瞬時に且つ確実に行われる。よって、大きな吸込み音の発生が防止される。
【0028】
次に、ドレン排水装置50の配設構造又は配設方法について説明する。
【0029】
図5に示すように、従来のドレン排水装置70は、ドレンタンク21を、例えば、四本の吊りボルト22で天井裏の躯体フレームに対して固定するか、又は、図示しない取付ブラケットを用いて空調機17に対して固定するか、あるいは、天井裏の床面に直接設置する等の方法で配設されている。そして、従来のドレンタンク21は、空調機17の筒状のドレン排出口18にドレンホース19で連結し、抜け防止のために、ドレンホース19の両端をホースクランプ20で固定する必要があった。つまり、従来は、ドレンタンク21の設置作業と空調機17への接続作業(配管作業)の両方が必要であり、しかもそれぞれの作業が手間を要するものであった。
【0030】
これに対し、本実施の形態のドレン排水装置50は、前述の通り、ドレンタンク16の小型化・軽量化が可能な構成である。このため、本実施の形態のドレン排水装置50は、
図6に示すように、ドレンタンク16を空調機17に対して直接支持させることができる。これにより、吊りボルトや取付ブラケットを用いる従来に比べて、ドレンタンク16の設置作業やメンテナンス作業が容易となり、それらの作業性も向上するので、作業時間が大幅に短縮される。
【0031】
図6の例では、ドレンタンク16のドレン導入筒1が空調機17のドレン排出口18に対して直接連結されることで、ドレンタンク16が空調機17に支持される。このため、空調機17に対するドレンタンク16の取付作業が空調機17とドレンタンク16との間の配管作業を兼ねることになる。具体的には、ドレンタンク16のドレン導入筒1を空調機17のドレン排出口18に直接接続して、ホースクランプ20で固定する。これだけの作業で、ドレンタンク16の取付作業と空調機17への配管作業が完了する。よって、ドレン排水装置50の配設作業やメンテナンス作業が一層容易となり、それらの作業性も向上し、作業時間が従来と比べて大幅に短縮される。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ドレン導入筒(液体導入筒)
3 フロート
4 吸水口開閉弁(吸液口開閉弁)
5 磁石
6 吸水ノズル(吸液ノズル)
6a 吸水口(吸液口)
7 ガイド部材(縦シャフト)
8 ガイド部材(軸受部材)
16 ドレンタンク(貯液槽)
17 空調機(液体発生源)
18 ドレン排出口(液体排出口)
31 減圧状態の回収タンク(吸液作用源)
34 ガイド部材
50 ドレン排水装置(自動排液装置)
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、前記の如き種々の課題の少なくとも一つを解決可能な自動排液装置を提供しようとするものである。