(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010360
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】視野角制御体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240117BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240117BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240117BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G02B5/00 B
B32B7/023
B32B27/00 101
B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111654
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】岩間 進
(72)【発明者】
【氏名】今井 剛
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 直也
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA10
2H042AA26
4F100AK45A
4F100AK45E
4F100AK52C
4F100AN02C
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13C
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100EJ17C
4F100GB32
4F100JK03C
4F100JK08C
4F100JK12C
4F100JL04
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JN01C
4F100JN02C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 可視範囲を狭めるために肉厚にされたり、例え画像表示装置の設置環境が高温になっても反りや変形の発生するおそれを払拭することのできる視野角制御体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の光透過帯3と遮光帯4が交互に並ぶルーバー層2と、ルーバー層2の両面にそれぞれ積層される一対の接着層5と、この一対の接着層5にそれぞれ積層接着される光透過性の一対のポリカーボネート樹脂フィルム6とを備えて可視角度を制御するシート形の視野角制御体であり、ルーバー層2の光透過帯3を光透過性のシリコーンゴムによりそれぞれ形成するとともに、ルーバー層2の遮光帯4を着色されたシリコーンゴムにより形成し、遮光帯4の遮光帯幅を10μm以上20μm以下とする。ルーバー層2がシリコーンゴムなので、熱による反りや変形のおそれを払拭できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のダッシュボードの助手席側の画像表示装置に嵌め合わされ、可視角度を所定の範囲内に制御することにより運転手が助手席側の画像表示装置を覗き見するのを規制する視野角制御体であって、
複数の光透過帯と遮光帯とが交互に並ぶルーバー層と、このルーバー層の両面にそれぞれ積層される複数の接着層と、この複数の接着層にそれぞれ積層接着される光透過性の複数のポリカーボネート樹脂フィルムとを含み、
ルーバー層の光透過帯を光透過性のシリコーンゴムによりそれぞれ形成するとともに、ルーバー層の遮光帯を着色されたシリコーンゴムにより形成し、ルーバー層の遮光帯幅を10μm以上としたことを特徴とする視野角制御体。
【請求項2】
ルーバー層の厚みを光透過帯幅で除した光透過帯のアスペクト比を5以上13以下とした請求項1記載の視野角制御体。
【請求項3】
シリコーンゴムは、JIS K 6253に準拠して測定した場合の硬さ(タイプAデュロメータ)が73以上83以下、JIS K 6251に準拠して測定した場合の引張り強さが7.5MPa以上13.5MPa以下、JIS K 6251に準拠して測定した場合の切断時伸びが270%以上490%以下、JIS K 6252に準拠して測定した場合の引き裂き強さが8kN/m以上28kN/m以下である請求項1又は2記載の視野角制御体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の視野角制御体の製造方法であって、複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して積層体を構成し、この積層体を加圧した後に切断してルーバー層を形成し、このルーバー層の両面に接着層となる光透過性のシリコーンゴムをそれぞれ積層するとともに、この接着層となるシリコーンゴムに光透過性のポリカーボネート樹脂フィルムをそれぞれ積層接着することを特徴とする視野角制御体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転中等に運転手が助手席側の画像表示装置を覗き見するのを規制することのできる視野角制御体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の四輪自動車には様々な機器が装備されるが、その一つとして、エンターテイメント用モニターがあげられる。このエンターテイメント用モニターは、自動車のダッシュボードの助手席側、あるいは運転席や助手席の背面上部に設置され、各種の映像を表示したり、音楽を流してドライブを快適にする。
しかしながら、エンターテイメント用モニターが自動車のダッシュボードの助手席側に設置される場合、快適なドライブが期待できるものの、運転席の運転手が自動車の運転中に助手席側のエンターテイメント用モニターの映像を横から覗き見し、その結果、運転が集中力・注意力の低下した漫然運転となり、不測の事態を招くおそれが考えられる。
【0003】
このような懸念を払拭する手段としては、助手席側のエンターテイメント用モニターに可視角度(可視範囲)を制御する視野角制御体を取り付け、この視野角制御体により、可視角度を狭めて運転手が助手席側のエンターテイメント用モニターを視認するのを困難とし、覗き見を規制する方法があげられる。
従来における視野角制御体は、図示しないが、複数の透過領域と吸収領域とが交互に並ぶルーバー層を備えた光制御フィルムに形成(特許文献1、2参照)され、可視角度を狭める場合にはルーバー層が肉厚に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021‐507285号公報
【特許文献2】国際公開W02018/225714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における視野角制御体は、以上のように形成され、ルーバー層が複数の透過領域と吸収領域により配列形成され、可視角度を狭める場合には肉厚とされるので、反りの発生するおそれがある。特に、特許文献1の光制御フィルムの場合には、複数の透過領域と吸収領域の高さが異なり、表裏(上下)が対称ではないので、反りやすいという問題がある。この問題は、エンターテイメント用モニターの画像表示部に視野角制御体を隙間なく貼着して一体化するのではなく、製造コストを削減するため、エンターテイメント用モニターの保持枠に別体の視野角制御体を嵌合する場合には、視野角制御体の反りにより可視角度の制御が困難になるので深刻となる。
【0006】
また、視野角制御体を取り付けるエンターテイメント用モニターが自動車のダッシュボードに設置される場合、ダッシュボードが太陽光に当たりやすい位置にあり、車内でも80℃前後の高温になることがあるので、高温により視野角制御体に大きな反りが発生することがある。視野角制御体に大きな反りが発生すると、エンターテイメント用モニターの構成部品等を圧縮し、その結果、ニュートンリング等の問題が発生して視認性を低下させることとなる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、可視範囲を狭めるために肉厚にされたり、例え画像表示装置の設置環境が高温になっても反りや変形の発生するおそれを払拭することができる視野角制御体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、自動車のダッシュボードの助手席側の画像表示装置に嵌め合わされ、可視角度を所定の範囲内に制御することにより運転手が助手席側の画像表示装置を覗き見するのを規制するものであって、
複数の光透過帯と遮光帯とが交互に並ぶルーバー層と、このルーバー層の両面にそれぞれ積層される複数の接着層と、この複数の接着層にそれぞれ積層接着される光透過性の複数のポリカーボネート樹脂フィルムとを含み、
ルーバー層の光透過帯を光透過性のシリコーンゴムによりそれぞれ形成するとともに、ルーバー層の遮光帯を着色されたシリコーンゴムにより形成し、ルーバー層の遮光帯幅を10μm以上としたことを特徴としている。
【0009】
なお、ルーバー層の厚みを光透過帯幅で除した光透過帯のアスペクト比を5以上13以下とすることができる。
また、ルーバー層の厚みを遮光帯幅で除した遮光帯のアスペクト比を16以上97以下とすることができる。
また、ルーバー層の光透過帯と遮光帯を略同じ高さに形成してルーバー層の表裏を対称とすることもできる。
【0010】
また、シリコーンゴムは、JIS K 6253に準拠して測定した場合の硬さ(タイプAデュロメータ)が73以上83以下、JIS K 6251に準拠して測定した場合の引張り強さが7.5MPa以上13.5MPa以下、JIS K 6251に準拠して測定した場合の切断時伸びが270%以上490%以下、JIS K 6252に準拠して測定した場合の引き裂き強さが8kN/m以上28kN/m以下であると良い。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2記載の視野角制御体の製造方法であって、
複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して積層体を構成し、この積層体を加圧した後に切断してルーバー層を形成し、このルーバー層の両面に接着層となる光透過性のシリコーンゴムをそれぞれ積層するとともに、この接着層となるシリコーンゴムに光透過性のポリカーボネート樹脂フィルムをそれぞれ積層接着することを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における画像表示装置には、少なくともエンターテイメント用モニター、サンバイザー用モニター、フリップダウンモニター、DVDプレイヤー等が含まれる。また、ルーバー層の遮光帯幅は、四捨五入により10μmや20μmになる数値も含まれる。光透過帯のアスペクト比も、四捨五入により5あるいは13になる数値が含まれる。また、シリコーンゴムの物性値も、作用効果に相違がないのであれば、近似値が含まれる。さらに、本発明に係る視野角制御体は、表裏対称であるのが望ましく、全光線透過率が測定角度20°~-20°の範囲で60%以上80%以下、好ましくは60%以上77%以下が良い。
【0013】
本発明によれば、ルーバー層が耐熱性に優れるシリコーンゴムにより形成されるので、熱による反りや変形のおそれを抑制することができる。また、シリコーンゴムの他、ポリカーボネート樹脂フィルムが90℃以上の優れた耐熱性を発揮するので、高温により視野角制御体に大きな反りが発生するのを防ぐことができる。また、遮光帯の遮光帯幅が9μm以下ではなく、10μm以上の厚みなので、遮光帯による充分な遮光効果が期待できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可視範囲を狭めるために肉厚にされたり、例え画像表示装置の設置環境が高温になっても反りや変形の発生するおそれを払拭することができるという効果がある。したがって、自動車の運転中に運転手が助手席側の画像表示装置の映像を横から覗き見し、漫然運転となるのを有効に防止することができる。また、ルーバー層の遮光帯幅が10μm以上なので、光線漏れのおそれを有効に排除することができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、光透過帯のアスペクト比を5以上13以下とするので、可視範囲の拡大に伴う運転手の覗き見を防止することができる。また、可視範囲が過剰に狭くなり、助手席側の画像表示装置が視認不能になるのを防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、シリコーンゴムの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さの数値限定により、視野角制御体の反りや変形を防止することが可能になる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートを交互に積層して積層体を構成し、この積層体を加圧した後に切断してルーバー層を形成するので、複数の光透過帯と遮光帯を交互に並べ備えたルーバー層を迅速かつ容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る視野角制御体の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【
図2】本発明に係る視野角制御体の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【
図3】
図2のIII部を拡大して示す断面説明図である。
【
図4】本発明に係る視野角制御体の製造方法の実施形態における積層体を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図4の積層体を加圧した後に切断してルーバー層を形成した状態を示す説明図である。
【
図6】
図5のルーバー層の両面に接着層となるシリコーンゴムをそれぞれ積層した状態を示す説明図である。
【
図7】
図5の接着層となるシリコーンゴムにポリカーボネート樹脂フィルムをそれぞれ積層接着した状態を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る視野角制御体の実施例における光学特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における視野角制御体1は、
図1ないし
図7に示すように、複数の光透過帯3と遮光帯4が配列されたルーバー層2と、このルーバー層2の両面にそれぞれ積層される光透過性の一対の接着層5と、この一対の接着層5にそれぞれ積層接着される光透過性の一対のポリカーボネート樹脂フィルム6とを備えて可視角度θ1を制御する好ましくは表裏対称のシートであり、自動車のダッシュボードにおける助手席側のエンターテイメント用モニターに取り付けられ、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0019】
視野角制御体1は、特に限定されるものではないが、例えば助手席のエンターテイメント用モニターの大きさ(12.3インチワイドや11インチワイド等)に対応する大きさで表裏対称の平面矩形に形成され、自動車の運転手が助手席のエンターテイメント用モニターを視認するのを確実に防ぐ観点から、可視角度θ1を15°以上30°以下、好ましくは20°以上30°以下、より好ましくは20°、25°、あるいは30°の範囲内に制御するよう機能する。この視野角制御体1は、
図1に示すように、平面矩形、具体的には平面長方形に形成されるが、周縁部の少なくとも一部分に切り欠きが形成されたり、周縁部の少なくとも一部分が曲線に形成されたり、あるいは四隅部の少なくとも一隅部が面取り加工されても良い。
【0020】
視野角制御体1は、助手席側のエンターテイメント用モニターの光線を透過するが、全体の光透過率(全光線透過率)が55%以上100%以下、好ましくは60%以上80%以下、より好ましくは60%以上77%以下、より好ましくは64%以上71.5%以下であるのが良い。これは、全体の光透過率が55%未満の場合には、助手席からのエンターテイメント用モニターに対する視認性が悪化するからである。全体の光透過率は、公差を考慮すると、視野角制御体1の可視角度θ1が20°の場合には60%以上68%以下、望ましくは64%前後が好適であり、視野角制御体1の可視角度θ1が30°の場合には66.5%以上76.5%以下、望ましくは71.5%前後が好適である。
【0021】
ここでいう光透過率は、光源としてJIS Z 8720に規定されるD65を用い、光源から出射された検査光の強度を受光センサーで測定する装置において、検査光の光路上に被測定物が無い状態での受光センサーの出力値をA、検査光の光路上に被測定物をセットし、被測定物を透過した透過光が受光センサーで受光される状態での出力値をBとするとき、光透過率=(B/A)×100(単位:%)で求められる値である。
【0022】
なお、エンターテイメント用モニターの光線の波長は、可視光の全範囲380nm以上830nm以下であっても良いし、その一部でも良い。
【0023】
ルーバー層2は、
図3に示すように、複数の光透過帯3と遮光帯4とが交互に一列に繰り返し配列されることで形成され、各光透過帯3から隣接する遮光帯4までのピッチが52μm以上141μm以下に設定されており、厚みが0.24mm以上1.45mm以下、好ましくは0.51mm前後、0.62mm前後、あるいは1.20mm前後とされる。
【0024】
光透過帯3と遮光帯4の設置角度は、それぞれ0°以上1°以下に調整される。また、各光透過帯3から隣接する遮光帯4までのピッチは、公差を考慮すると、52μm以上141μm以下であるが、高い遮光比率を得るためには、好ましくは60μm以上132μm以下、より好ましくは60μm前後、75μm前後、110μm前後、130μm前後、さらに好ましくは110μmが最適である。ルーバー層2の厚みは、可視角度θ1が20°と小さい場合には、光線の回析の影響が大きくなるので、大きく厚くなる。ルーバー層2の厚みが0.24mm以上1.45mm以下なのは、この範囲内であれば、可視角度θ1を簡易に調整したり、容易に製造することができるからである。
【0025】
ルーバー層2の厚みは、例えば可視角度20°の視野角制御体1の場合には、0.57mm以上1.45mm以下、好ましくは1.2mm前後とされる。これに対し、可視角度25°の視野角制御体1の場合には、0.29mm以上0.74mm以下、好ましくは0.39mm以上0.74mm以下、より好ましくは0.62mm前後とされる。また、可視角度30°の視野角制御体1の場合には、0.24mm以上0.62mm以下、好ましくは0.51mm以上0.62mm以下、より好ましくは0.51mm前後とされる。
【0026】
ルーバー層2は、各光透過帯3が90℃以上の耐熱性、耐寒性、耐湿性、耐環境特性、柔軟性、透明性等に優れ、反りや変形の防止に資する透明のシリコーンゴムにより形成され、各遮光帯4が透明のシリコーンゴムに遮光性の着色が施されたシリコーンゴムにより形成されており、これら光透過帯3と遮光帯4が同じ高さに形成されることで表裏対称とされる。
【0027】
シリコーンゴムとしては、例えば分子鎖末端がヒドロキシシリル基又はビニルシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと有機過酸化物とからなる、一般にミラブルゴムと呼ばれるシリコーンゴム組成物;分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンに、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(すなわちSiH結合)を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を配合した、いわゆる付加反応型のオルガノシリコーンゴム組成物等があげられる。シリコーンゴムの具体例としては、KE‐153U〔信越化学工業社製:製品名〕等があげられる。
【0028】
シリコーンゴムは、JIS K 6268に準拠して23℃の条件下で測定した場合の密度が1.21g/cm3以上1.25g/cm3以下、好ましくは1.24g/cm3前後が良い。また、視野角制御体1の反りや変形を防止する観点から、JIS K 6253に準拠してゴム・プラスチック硬度計(デュロメータ)で測定した場合の硬さ(タイプAデュロメータ)が73以上83以下、好ましくは78以上79以下が良い。また、反りや変形を防止する観点から、JIS K 6251に準拠して測定した場合の引張り強さが7.5MPa以上13.5MPa以下、好ましくは10.5MPa前後が良い。
【0029】
シリコーンゴムは、JIS K 6251に準拠して測定した場合の切断時伸びが270%以上490%以下、好ましくは310%以上380%以下が望ましい。また、反りや変形を防止するため、JIS K 6252に準拠して測定した場合の引き裂き強さ(クレセント形)が8kN/m以上28kN/m以下、好ましくは13kN/m以上18kN/m以下が良い。これらの測定には、エムアンドケー株式会社やアイ・テイー・エス・ジャパン株式会社等の測定機器や試験機を使用することができる。
【0030】
各光透過帯3は、透明のシリコーンゴムにより縦長の断面矩形に形成され、助手席のエンターテイメント用モニターの光線を透過する。この光透過帯3の光透過帯幅は、覗き見防止性と視認性とを両立させる観点から、設計上37μm以上126μm以下、好ましくは45μm以上115μm以下、より好ましくは45μm前後、60μm前後、95μm前後、あるいは115μm前後に設定される。
【0031】
係る光透過帯幅でルーバー層2の厚みを除した光透過帯3のアスペクト比は、5以上13以下、好ましくは5.2以上12.8以下、より好ましくは5.3以上12.7以下が良い。これは、アスペクト比が5未満の場合には、可視範囲が拡大し、運転手の覗き見が可能になるからである。これに対し、アスペクト比が13を越える場合には、可視範囲が過剰に狭くなり、その結果、助手席において視認位置が左右に少しずれるだけで視野範囲外となり、助手席のエンターテイメント用モニターが視認不能になるからである。また、光透過帯3のみに対して光線を入射させた場合の光透過率は、75%以上、好ましくは75%以上100%以下、より好ましくは85%以上100%以下が良い。
【0032】
各遮光帯4は、遮光性の着色が施されたシリコーンゴムにより光透過帯3よりも細い縦長の断面矩形に形成され、助手席のエンターテイメント用モニターの光線を遮光する。シリコーンゴムは、上記物性値を有する光透過帯用のタイプに顔料や染料等の着色剤が添加されることにより遮光性の色彩を有する。着色剤の具体例としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料あるいは無機顔料があげられるが、遮蔽性に優れる黒色のカーボンブラックが最適である。着色剤として黒色の顔料を用いない場合には、遮光性を確保するために白色の顔料を併用することが好ましい。また、着色剤は、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用しても良い。
【0033】
遮光帯4は、隣接する光透過帯3と同じ高さとされるが、光線漏れを確実に防止する観点から、遮光帯幅が公差を考慮して10μm以上、好ましくは10μm以上20μm以下、より好ましくは15μm以上20μm以下、さらに好ましくは15μmに設定される。最適な遮光帯幅15μmでルーバー層2の厚みを除した遮光帯4のアスペクト比は、16以上97以下、好ましくは34以上80以下が最適である。
【0034】
遮光帯4のアスペクト比は、16以上97以下の範囲が好ましいが、例えば可視角度20°の視野角制御体1の場合には、38以上97以下が望ましい。これに対し、例えば可視角度30°の視野角制御体1の場合には、16以上41以下が望ましい。
【0035】
各接着層5は、
図3に示すように、接着性を有する透明のシリコーンゴムにより形成され、ルーバー層2の表裏両面とポリカーボネート樹脂フィルム6とを接着して助手席のエンターテイメント用モニターの光線を透過する。透明のシリコーンゴムには、90℃以上の耐熱性、耐寒性、耐湿性、耐環境特性、柔軟性、透明性等に優れ、反りや変形の防止に資するシリコーン系接着剤や粘着性のシリコーンゴムシート等が該当する。シリコーン系接着剤の具体例としては、例えばKE‐1825〔信越化学工業社製:製品名〕やKE‐1056〔信越化学工業社製:製品名〕等があげられる。
【0036】
接着層5の厚みは、10μm以上30μm以下、好ましくは20μm以上30μm以下、より好ましくは20μm前後又は30μm前後に設定される。また、接着層5のみに対して光線を入射させた場合の光透過率は、75%以上、好ましくは75%以上100%以下、より好ましくは85%以上100%以下が良い。
【0037】
各ポリカーボネート樹脂フィルム6は、
図3に示すように、90℃以上の耐熱性、耐候性、耐衝撃性、寸法精度、透明性に優れ、反りにくく、変形しにくいという特徴を有しており、助手席のエンターテイメント用モニターの光線を透過する。この透明のポリカーボネート樹脂フィルム6の厚みは、取付スペースを抑制したり、反りを防ぐ観点から、0.1mm以上、好ましくは0.1mm以上0.2mm以下、より好ましくは0.189mm以上0.2mm以下、さらに好ましくは0.195mm以上0.2mm以下、さらにまた好ましくは0.2mm前後程度に設定される。ポリカーボネート樹脂フィルム6のみに対して光線を入射させた場合の光透過率は、75%以上、好ましくは75%以上100%以下、より好ましくは85%以上100%以下が良い。
【0038】
このような視野角制御体1は、助手席側のエンターテイメント用モニターの保持枠に別部品として嵌合されてバックライト側に位置し、可視角度θ1を20°以上30°以下の範囲内に制御することにより運転席の運転手が助手席側のエンターテイメント用モニターを横から覗き見するのを有効に規制する。この視野角制御体1の可視角度θ1は、特に限定されるものではないが、JIS K 7361に準拠したメーター等により測定することができる。また、
図2に示す視野角制御体1の最大光線透過率角度θ2は、特に限定されるものではなく、助手席の位置と助手席のエンターテイメント用モニターの位置関係により調整される。この最大光線透過率角度θ2も、JIS K 7361に準拠したヘーズメーター等により測定することができる。
【0039】
上記構成において、視野角制御体1を製造する場合には、先ず、透明の光透過帯用シリコーンゴムシート10と黒色に着色された遮光帯用シリコーンゴムシート11とをそれぞれ複数枚用意し、これら複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシート10と遮光帯用シリコーンゴムシート11とを交互に積層して積層体12を構成する(
図4参照)。光透過帯用シリコーンゴムシート10と遮光帯用シリコーンゴムシート11は、押出成形法、カレンダー成形法、プレス成形方法により製造することができる。また、光透過帯用シリコーンゴムシート10と遮光帯用シリコーンゴムシート11とは、熱圧着するのが好ましいが、確実な接着が期待できるシリコーン系の透明な接着剤により交互に積層接着しても良い。
【0040】
次いで、積層体12を加熱加圧してブロック体を構成し、このブロック体を切断してシート形のルーバー層2を形成(
図5参照)し、このルーバー層2の表裏両面に接着層5となる透明のシリコーンゴム13をそれぞれ積層(
図6参照)する。透明のシリコーンゴム13は、硬化後の光透過率が高く、確実な接着が期待できるシリコーン系接着剤が最適である。このシリコーン系接着剤としては、ルーバー層2に塗布されて硬化した後の光透過率が65%以上、好ましくは65%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下の接着剤が最適である。
【0041】
こうしてルーバー層2の表裏両面に接着層5となる透明のシリコーンゴム13を積層したら、各シリコーンゴム13にポリカーボネート樹脂フィルム6を積層接着(
図7参照)してシリコーンゴム13を乾燥硬化させ、ルーバー層2の表裏両面と一対のポリカーボネート樹脂フィルム6とを強固に接着し、各ポリカーボネート樹脂フィルム6の不要部分を除去すれば、視野角制御体1を製造することができる。この際、ポリカーボネート樹脂フィルム6に接着層5となる透明のシリコーンゴム13を塗布して積層し、ルーバー層2の表裏両面にポリカーボネート樹脂フィルム6を接着層5を介しそれぞれ積層して乾燥硬化させても良い。
【0042】
上記によれば、光透過帯3のアスペクト比が5以上13以下なので、ルーバー層2を肉厚にして可視角度θ1を大幅に狭めることができる。したがって、自動車の運転中に運転手が助手席側のエンターテイメント用モニターの映像を横から覗き見し、漫然運転となるのを有効に防止することができる。また、ルーバー層2と接着層5が耐熱性に優れるシリコーンゴムにより形成され、ルーバー層2の光透過帯3と遮光帯4が同じ高さでルーバー層2の表裏が対称なので、熱による反りや変形のおそれを有効に払拭することができる。
【0043】
また、視野角制御体1を取り付けるエンターテイメント用モニターが自動車のダッシュボードに設置される場合、ダッシュボードが80℃前後の高温になることがあるが、シリコーンゴムとポリカーボネート樹脂フィルム6が90℃以上の優れた耐熱性を発揮するので、高温により視野角制御体1に大きな反りが発生するのを有効に防止することが可能となる。したがって、視野角制御体1にニュートンリング等の問題が発生して視認性を低下させることがない。
【0044】
また、製造コストを削減するため、エンターテイメント用モニターの保持枠に別体の視野角制御体1を嵌合する場合にも、可視角度θ1の制御が困難になることがない。また、シリコーンゴムが優れた着色性を発揮するので、隠蔽力に優れる遮光帯4を容易に得ることが可能となる。さらに、遮光帯幅が1μm、5μm、9μm等ではなく、10μm以上なので、遮光帯4による優れた遮光効果が期待でき、遮光帯4からの光線漏れのおそれを確実に排除することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では助手席側のエンターテイメント用モニターの保持枠に視野角制御体1を嵌合してバックライト側に位置させたが、エンターテイメント用モニターに視野角制御体1を取り付けて表面側に位置させても良い。また、エンターテイメント用モニターに光線を均一にするプリズムシートを取り付けて光線を収束し、この収束した光線を視野角制御体1に入射させても良い。また、一対のポリカーボネート樹脂フィルム6のうち、少なくとも一方のポリカーボネート樹脂フィルム6に、光線が反射して映りこんで眩しく見えづらくなるのを防止するアンチグレア(AG)コート処理を施したり、ハードコート処理等を施しても良い。さらに、一対のポリカーボネート樹脂フィルム6のうち、少なくとも一方のポリカーボネート樹脂フィルム6に保護用のアクリル板を積層しても良い。
【実施例0046】
以下、本発明に係る視野角制御体及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
可視角度20°の視野角制御体を製造するため、先ず、透明の光透過帯用シリコーンゴムシートと黒色に着色された遮光帯用シリコーンゴムシートとをそれぞれ複数枚用意し、これら複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して熱圧着することにより積層体を構成した。各光透過帯用シリコーンゴムシートは、厚さ95μmのKE153U〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。これに対し、遮光帯用シリコーンゴムシートは、シリコーンゴム100質量部にカーボンブラック15質量部が配合された厚さ15μmのKE153U〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。
【0047】
積層体を構成する際、積層体に使用する光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さ(クレセント形)を測定して表1に記載した。測定の結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは78、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは380%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは18kN/mであった。
【0048】
次いで、積層体を加熱加圧してブロック体を構成し、このブロック体を切断して厚さ1.2mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂(PC樹脂)フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が20°の視野角制御体を製造した。シリコーン系接着剤は、KE‐1825〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。
【0049】
製造した視野角制御体を測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕により測定したところ、表2、表3に示すように、外形サイズが288mm×108mm、ルーバー層の光透過帯幅が95μm、遮光帯幅が15μm、光透過帯から隣接する遮光帯までのピッチが110μm、接着層の厚みが30μmであった。また、光透過帯のアスペクト比は、計算したところ12.6であった。
【0050】
視野角制御体の可視角度は、JIS K 7361に準拠したヘーズメーターHM‐150〔村上色彩技術研究所製:製品名〕に回転テーブルを付設して改造し、測定したところ20°であるのを確認した。具体的には、ヘーズメーターHM‐150の対向する光源部と受光部とを備えたサンプルセット部分内に回転テーブルを付設し、この回転テーブルに測定サンプルサイズ□50mmの視野角制御体を搭載して回転させ、可視角度を最大光線透過率角度と共に測定した。この際、透過率を測定した後に測定サンプルの視野角制御体を1°回転させる作業を繰り返した。可視角度(可視範囲)は、ヘーズメーターHM‐150の測定値にて全光線透過率が1%以上の範囲とした。
【0051】
視野角制御体を製造したら、この視野角制御体を3個用意して反りと外形の寸法変化を測定し、○×評価した。測定は、120℃、240時間の条件下で測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕を用いて実施した。また、○×評価は、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められない場合には○、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められ、実用上問題となる場合には×とした。
【0052】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、可視角度20°の視野角制御体を製造するため、先ず、透明の光透過帯用シリコーンゴムシートと黒色に着色された遮光帯用シリコーンゴムシートとをそれぞれ複数枚用意し、これら複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して熱圧着することにより積層体を構成した。各光透過帯用シリコーンゴムシートは、厚さ45μmのKE153U〔信越化学工業社製:製品名〕に変更した。
【0053】
積層体を構成する際、積層体に使用する光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。測定の結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは78、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは380%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは18kN/mであった。
【0054】
次いで、積層体を加熱加圧してブロック体を構成し、このブロック体を切断して厚さ0.57mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が20°の視野角制御体を製造した。シリコーン系接着剤は、KE‐1825〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。
【0055】
製造した視野角制御体を測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕により測定したところ、表2、表3に示すように、外形サイズが288mm×108mm、ルーバー層の光透過帯幅が45μm、遮光帯幅が15μm、光透過帯から隣接する遮光帯までのピッチが60μm、接着層の厚みが30μmであった。また、光透過帯のアスペクト比は、計算したところ12.7であった。
【0056】
視野角制御体の可視角度は、JIS K 7361に準拠したヘーズメーターHM‐150〔村上色彩技術研究所製:製品名〕に回転テーブルを付設して改造し、測定したところ20°であるのを確認した。具体的には、ヘーズメーターHM‐150の対向する光源部と受光部とを備えたサンプルセット部分内に回転テーブルを付設し、この回転テーブルに測定サンプルサイズ□50mmの視野角制御体を搭載して回転させ、可視角度を最大光線透過率角度と共に測定した。この際、透過率を測定した後に測定サンプルの視野角制御体を1°回転させる作業を繰り返した。可視角度(可視範囲)は、ヘーズメーターHM‐150の測定値にて全光線透過率が1%以上の範囲とした。
【0057】
視野角制御体を製造したら、この視野角制御体を3個用意して反りと寸法変化を測定し、○×評価した。測定は、120℃、240時間の条件下で測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕を用いて実施した。また、○×評価は、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められない場合には○、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められ、実用上問題となる場合には×とした。
【0058】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様であるが、可視角度25°の視野角制御体を製造するため、ブロック体を切断して厚さ0.62mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が25°の視野角制御体を製造した。この視野角制御体の光透過帯のアスペクト比は、計算したところ6.5であった。
【0059】
視野角制御体を製造する際、積層体に使用する透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。測定の結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは79、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは310%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは13kN/mであった。視野角制御体を製造したら、実施例1と同様、視野角制御体を3個用意して視野角制御体の反りと寸法変化を測定し、○×評価した。
【0060】
〔実施例4〕
基本的には実施例3と同様であるが、可視角度25°の視野角制御体を製造するため、先ず、透明の光透過帯用シリコーンゴムシートと黒色に着色された遮光帯用シリコーンゴムシートとをそれぞれ複数枚用意し、これら複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して熱圧着することにより積層体を構成した。各光透過帯用シリコーンゴムシートは、厚さ60μmのKE153U〔信越化学工業社製:製品名〕に変更した。
【0061】
積層体構成の際、積層体に使用する光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。測定の結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは79、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは310%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは13kN/mであった。
【0062】
次いで、積層体を加熱加圧してブロック体を構成し、このブロック体を切断して厚さ0.39mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が25°の視野角制御体を製造した。シリコーン系接着剤は、KE‐1825〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。
【0063】
製造した視野角制御体を測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕により測定したところ、表2、表3に示すように、外形サイズが288mm×108mm、ルーバー層の光透過帯幅が60μm、遮光帯幅が15μm、光透過帯から隣接する遮光帯までのピッチが75μm、接着層の厚みが30μmであった。また、光透過帯のアスペクト比は、計算したところ6.5であった。視野角制御体を製造したら、実施例1と同様、視野角制御体を3個用意して視野角制御体の反りと寸法変化を測定し、○×評価した。
【0064】
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様であるが、可視角度30°の視野角制御体を製造するため、ブロック体を切断して厚さ0.51mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が30°の視野角制御体を製造した。この視野角制御体の光透過帯のアスペクト比は、計算したところ5.4であった。
【0065】
視野角制御体を製造する際、積層体に使用する光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。その結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは79、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは310%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは13kN/mであった。視野角制御体を製造したら、実施例1と同様、視野角制御体を3個用意して視野角制御体の反りと寸法変化を測定して評価した。
【0066】
〔実施例6〕
基本的には実施例5と同様であるが、可視角度30°の視野角制御体を製造するため、先ず、透明の光透過帯用シリコーンゴムシートと黒色に着色された遮光帯用シリコーンゴムシートとをそれぞれ複数枚用意し、これら複数枚の光透過帯用シリコーンゴムシートと遮光帯用シリコーンゴムシートとを交互に積層して熱圧着することにより積層体を構成した。各光透過帯用シリコーンゴムシートは、厚さ115μmのKE153U〔信越化学工業社製:製品名〕に変更した。
【0067】
積層体構成の際、積層体の光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。測定の結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは79、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは310%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは13kN/mであった。
【0068】
次いで、積層体を加熱加圧してブロック体を構成し、このブロック体を切断して厚さ0.62mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に厚さ0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリカーボネート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が30°の視野角制御体を製造した。シリコーン系接着剤は、KE‐1825〔信越化学工業社製:製品名〕を使用した。
【0069】
製造した視野角制御体を測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕により測定したところ、表2、表3に示すように、外形サイズが288mm×108mm、ルーバー層の光透過帯幅が115μm、遮光帯幅が15μm、光透過帯から隣接する遮光帯までのピッチが130μm、接着層の厚みが30μmであった。また、光透過帯のアスペクト比は、計算したところ5.4であった。
【0070】
視野角制御体を製造したら、この視野角制御体を3個用意して反りと寸法変化を測定し、○×評価した。測定は、120℃、240時間の条件下で測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕を用いて実施した。また、○×評価は、視野角制御体に反りや外形変化が殆ど認められない場合には○、視野角制御体に反りや外形変化が認められるが、実用上問題ない場合には○、視野角制御体に反りや外形変化が認められ、実用上問題となる場合には×とした。
【0071】
〔比較例1〕
視野角制御体を得るため、ルーバー層の代わりに市販されているアクリル樹脂の樹脂シートを比較用に用意し、この樹脂シートをそのまま視野角制御体とした。この視野角制御体を測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕により測定したところ、外形サイズが288mm×108mm、樹脂シートの厚みが0.5mmであった。
【0072】
視野角制御体を製造したが、この視野角制御体は、ルーバー層とポリカーボネート樹脂フィルムが省略されているので、光透過帯と遮光帯のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さの測定をしなかった。また、視野角制御体を3個用意して反りと外形の寸法変化を測定し、○×評価した。測定は、120℃、240時間の条件下で測定顕微鏡〔株式会社ミツトヨ製:製品名MF‐UB4020B〕を用いて実施した。また、○×評価は、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められない場合には○、視野角制御体に0.5mmを越える反りや外形変化が認められ、実用上問題となる場合には×とした。
【0073】
〔比較例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、可視角度20°の視野角制御体を製造するため、ブロック体を切断して厚さ1.2mmのルーバー層をシート形に形成するとともに、このルーバー層の表裏両面に透明の接着層となるシリコーン系接着剤を塗布し、各シリコーン系接着剤に反りやすい厚さ0.188mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)フィルムを積層接着して乾燥硬化させ、各ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの不要部分を除去して可視角度が20°の視野角制御体を製造した。この視野角制御体の光透過帯のアスペクト比は、計算したところ12.6であった。
【0074】
視野角制御体を製造する際、製造に用いる光透過帯用のシリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ)、引張り強さ、切断時伸び、及び引き裂き強さを測定して表1に記載した。その結果、JIS K 6253に準拠して測定したシリコーンゴムシートの硬さは78、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引張り強さは10.5MPa、JIS K 6251に準拠して測定したシリコーンゴムシートの切断時伸びは380%、JIS K 6252に準拠して測定したシリコーンゴムシートの引き裂き強さは18kN/mであった。また、比較例1と同様、視野角制御体を3個用意して視野角制御体の反りと寸法変化を測定し、○×評価した。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
〔評 価〕
各実施例の視野角制御体の場合、可視角度を適切に狭めることができた。また、各実施例の視野角制御体の反りと寸法変化を測定したところ、反りや寸法変化が0.5mm以下で殆ど認められなかった。これらの効果は、最も製品化の可能性が高い実施例2、4、5で顕著であった。したがって、エンターテイメント用モニターの保持枠に各実施例の視野角制御体を嵌合した場合、可視角度の制御が困難になるのを防止できると推測される。
【0079】
また、各実施例の視野角制御体の光学特性を測定して
図8にグラフ化した。その結果、視野角制御体の全光線透過率は、測定角度10°~-10°の範囲で60%以上70%以下であり、測定角度20°~-20°の範囲で68%以上75%以下であった。視野角制御体の可視角度は、実施例1同様、ヘーズメーターHM‐150の測定値にて全光線透過率が1%以上の範囲とした。以上の光学特性から、エンターテイメント用モニターの保持枠に実施例の視野角制御体を嵌合すれば、助手席からのエンターテイメント用モニターに対する視認性が悪化するのを防止できると推測される。
【0080】
これに対し、比較例1の視野角制御体の場合、視野角制御機能を有しない単なるアクリル樹脂の樹脂シートを用いたので、可視角度を狭めることができなかった。また、視野角制御体の反りと寸法変化を測定したところ、反らないものの、-5.6mm以上の大きな寸法変化が認められ、実用性に深刻な疑義が生じた。したがって、エンターテイメント用モニターの保持枠に比較例1の視野角制御体を嵌合した場合、可視角度の制御が困難になると推測される。また、アクリル樹脂の樹脂シートにポリカーボネート樹脂フィルムを積層接着すると、アクリル樹脂シートの大きな寸法変化に伴い、反りが大きくなると推測される。
【0081】
また、比較例2の視野角制御体の反りと寸法変化を測定したところ、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いたので、3mm以上の反りや1.2mm以上の寸法変化が認められ、実用性に疑義が生じた。したがって、エンターテイメント用モニターの保持枠に比較例2の視野角制御体を嵌合した場合、比較例1同様、可視角度の制御が困難になると推測される。