(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010362
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】複合加工機用工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/12 20060101AFI20240117BHJP
B23C 5/26 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B23Q3/12 F
B23C5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111658
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
(72)【発明者】
【氏名】林 修司
【テーマコード(参考)】
3C016
3C022
【Fターム(参考)】
3C016FA31
3C022PP00
(57)【要約】
【課題】加工中の負荷に対する工具の保持剛性を高めつつ、工具交換の際におけるグラつき等の発生を抑制し安定した状態を維持することが可能な複合加工機用工具ホルダを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる複合加工機用工具ホルダ(工具ホルダ100)の構成は、複合加工機の工具主軸20に着脱自在であるとともに内部に第1流路が形成されたツールホルダ110と、ツールホルダ110に保持される工具10と、ツールホルダ110に対し回動自在なブラケット120とを具備し、ブラケット120は、バネ128によって穴114bに付勢されることにより穴114bに嵌入されるとともに第1流路130及び第2流路132を介した流体の供給により穴114bから脱却される回転止めピン140を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合加工機の工具主軸に着脱自在であるとともに内部に第1流路が形成されたツールホルダと、
前記ツールホルダに保持される工具と、
前記ツールホルダに対し回動自在なブラケットと、
前記ツールホルダの外周面に形成された穴と、
を具備し、
前記ブラケットは、
前記ツールホルダの前記工具より前記工具主軸側に第1の軸受を介して回動支持された第1連結部と、
前記ツールホルダの前記工具より前記工具主軸とは反対側の先端側に第2の軸受を介して回動支持された第2連結部と、
前記工具主軸の回転止め溝に嵌合自在な嵌合部と、
内部に形成され前記第1流路に連通する第2流路と、
バネによって前記穴に付勢されることにより前記穴に嵌入されるとともに前記第1流路及び前記第2流路を介した流体の供給により前記穴から脱却される回転止めピンと、
を有し、
前記ブラケットは、前記回転止め溝に対して前記嵌合部が嵌合するとともに、前記第1流路及び前記第2流路を介した前記流体の供給により前記穴から前記回転止めピンが脱却された際、前記第1の軸受及び前記第2の軸受により前記ツールホルダの回動に対して非連動であるとともに、
前記回転止め溝から前記嵌合部が脱却され、さらに前記穴に前記回転止めピンが嵌入された際、前記ツールホルダに固定されることを特徴とする複合加工機用工具ホルダ。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記第2連結部が前記第1連結部に対して分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合加工機用工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合加工機において工具の保持に用いられる複合加工機用工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
複合加工機では、ワークを加工する工具を工具ホルダによって保持している。工具にはワークの加工中に負荷がかかる。このため、特に工具長が長い工具では、一端のみが工具ホルダによって保持された状態すなわち片持ちの状態であると、加工中にかかった負荷によって工具に曲がりが生じ、加工精度の低下を招くことがある。
【0003】
そこで例えば特許文献1には、「被加工物を加工する刃部と、前記刃部を支持するとともに固定ホルダにより第1の軸受を介して回転可能に支持される支持部と、前記固定ホルダに設けられ前記刃部をその先端側で回転可能に支持する支持部材と、を具備する」刃部付き工具が開示されている。特許文献1によれば、「この刃部付き工具によれば、刃部はその支持部が固定ホルダで第1の軸受により支持されるとともに、刃部の先端側が固定ホルダに設けられた支持部材により支持される」構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複合加工機では、加工処理の種類によって工具が交換される。ここで、特許文献1の刃部付き工具では、刃部、チャック部、ATC溝部、およびテーパ部は各々連結されている。また、固定ホルダおよびそれに設けられた支持部材は、刃部-テーパ部に対して回転可能すなわちフリーな状態となっている。よって、工具を交換する際に、刃部-テーパ部に対して固定ホルダおよび支持部材が回動し、グラつきが生じる等の不安定な状態となってしまう。特にATC(オートツールチェンジャ)によって工具を交換するとき、支持部材の位置が決まらないために支持部材とATCが衝突したり、つかみ損ねたりしてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、加工中の負荷に対する工具の保持剛性を高めつつ、工具交換の際におけるグラつき等の発生を抑制し安定した状態を維持することが可能な複合加工機用工具ホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる複合加工機用工具ホルダの代表的な構成は、複合加工機の工具主軸に着脱自在であるとともに内部に第1流路が形成されたツールホルダと、ツールホルダに保持される工具と、ツールホルダに対し回動自在なブラケットと、ツールホルダの外周面に形成された穴と、を具備し、ブラケットは、ツールホルダの工具より工具主軸側に第1の軸受を介して回動支持された第1連結部と、ツールホルダの工具より前記工具主軸とは反対側の先端側に第2の軸受を介して回動支持された第2連結部と、工具主軸の回転止め溝に嵌合自在な嵌合部と、内部に形成され第1流路に連通する第2流路と、バネによって穴に付勢されることにより穴に嵌入されるとともに第1流路及び第2流路を介した流体の供給により穴から脱却される回転止めピンと、を有し、ブラケットは、回転止め溝に対して嵌合部が嵌合するとともに、第1流路及び第2流路を介した流体の供給により穴から回転止めピンが脱却された際、第1の軸受及び第2の軸受によりツールホルダの回動に対して非連動であるとともに、回転止め溝から嵌合部が脱却され、さらに穴に回転止めピンが嵌入された際、ツールホルダに固定されることを特徴とする。
【0008】
ブラケットは、第2連結部が前記第1連結部に対して分割可能自在に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工中の負荷に対する工具の保持剛性を高めつつ、工具交換の際におけるグラつき等の発生を抑制し安定した状態を維持することが可能な複合加工機用工具ホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態にかかる複合加工機用工具ホルダの部分断面図である。
【
図2】
図1に示す複合加工機用工具ホルダのワーク加工中の状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる複合加工機用工具ホルダの部分断面図であり、加工停止中の状態を例示する図である。
図2は、
図1に示す複合加工機用工具ホルダのワーク加工中の状態を例示する図である。
図1および
図2に示す本実施形態の複合加工機用工具ホルダ(以下、工具ホルダ100と称する)は、複合加工機(全体は不図示)において工具10の保持に用いられる。
【0013】
本実施形態にかかる工具ホルダ100は、ツールホルダ110、ブラケット120および回転止めピン140を含んで構成される。ツールホルダ110は、工具主軸20に取り付けられるシャンクテーパ部112と、シャンクテーパ部112に連設された第1部位114(シャンクストレート部)と、ツールホルダ110の延在方向に沿って第1部位114に連設された第2部位116と、第2部位116に連設され外周に工具が取り付けられる第3部位117と、第3部位に連設された第4部位118とを有している。第1部位114の外周面には、ATC用の溝114aが形成されている。
【0014】
また、第1部位114の外周面に穴114bが形成されている。さらに、ツールホルダ110の内部には、第1部位114~第4部位118を貫通するように第1流路130が形成されている(いわゆるセンタースルー方式)。
【0015】
ブラケット120は、第1部位114(ツールホルダ110の工具10より工具主軸20側)に第1の軸受160を介して回動支持された第1連結部122と、第4部位118(ツールホルダ110の工具10より先端側)に第2の軸受162を介して回動支持された第2連結部124と、を有している。かかる構成によれば、工具10はその両端がブラケット120に軸支された状態となる。
【0016】
ブラケット120のうち、工具主軸20(破線で図示)と対向する面に回転止めブロック150が設けられている。回転止めブロック150は、工具主軸20の本体部に形成された溝22(破線で図示)に勘合されている。これにより、ワークの加工中にはブラケット120は工具主軸20の本体に回転不能に保持された状態となる。
【0017】
またブラケット120には、ツールホルダ110の穴114bに係合可能な回転止めピン140が取り付けられている。回転止めピン140はシリンダ126内を移動可能なピストン構造を有している。回転止めピン140はバネ128によって穴114bに向かって付勢されている。
【0018】
ブラケット120の内部には、第1流路130からシリンダ126に連通する第2流路132が形成されている。第1流路130から第2流路132を介してシリンダ126に流体の圧力が供給されると、回転止めピン140がバネ128の付勢力に抗して図中上方に移動し、ツールホルダ110の穴114bから脱却する。
【0019】
またブラケット120は、第2連結部124が他の部位とは別部材となっていて、ボルト170によって締結および分割可能に構成されている。これによりツールホルダ110に対して工具10を交換可能になっている。
【0020】
上記構成によれば、ワークを加工する際に工具ホルダ100を工具主軸20に装着すると、まずブラケット120の回転止めブロック150が工具主軸20の溝22と嵌合し、ブラケット120が工具主軸20に回転固定される。そして
図2に示すように工具主軸20から第1流路130および第2流路132を介して流体(ハッチングで図示)をシリンダ126に供給すると、回転止めピン140はツールホルダ110の穴114bから脱却し、回転止めピン140と穴114bとの係合が解除された状態となる。したがって、ブラケット120は工具主軸20に回転固定され、ブラケット120とツールホルダ110とは第1の軸受け160、第2の軸受け162により回転自在となるため、工具10を回転させる際に、工具10とブラケット120の供回りが抑制される。
【0021】
そして工具10を回転させて加工するとき、工具10はその両端がブラケット120に軸支された状態となるため、ツールホルダ110のラジアル方向の力(切削抵抗の主分力)に対する保持剛性が高くなっている。したがって加工精度の低下を抑えることが可能となる。
【0022】
ワークの加工が終了すると、回転止めピン140と穴114bが係合する位相(主軸原点)で工具主軸を停止する。そして工具主軸20からの流体の供給を停止すると、回転止めピン140はバネ128によって付勢されて穴114bに係合し、ツールホルダ110とブラケット120とが回転固定された状態となる。
【0023】
これにより、工具ホルダ100を工具主軸20から取り外しても(回転止めブロック150が溝22から外れても)、ツールホルダ110とブラケット120の回転は固定されたままとなる。したがって工具を交換する際におけるブラケット120のグラつき等の発生を抑制し、安定した状態を維持することができるため、ATC(オートツールチェンジャ)による工具10の交換作業を確実に行うことが可能となる。
【0024】
なお本実施形態では、回転止めピン140を流体の圧力によって移動させて、ツールホルダ110の穴114bから脱却させるように説明した。この変形例として、ブラケット120の端部に回転レバーを突出させておき、工具ホルダ100を工具主軸20に装着した際に回転レバーを工具主軸20に押し当てて回転止めピン140を移動させても良い。これにより流体の制御をすることなく、ツールホルダ110の着脱に応じてブラケット120の回転固定と回転自在を切り替えることができる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、複合加工機において工具の保持に用いられる複合加工機用工具ホルダとして利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…工具、12…工具側流路、20…工具主軸、22…溝、100…工具ホルダ、110…ツールホルダ、112…シャンクテーパ部、114…第1部位、114a…溝、114b…穴、116…第2部位、117…第3部位、118…第4部位、120…ブラケット、122…第1連結部、124…第2連結部、126…シリンダ、128…バネ、130…第1流路、132…第2流路、140…回転止めピン、150…回転止めブロック、160…第1の軸受、162…第2の軸受、170…ボルト