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特開2024-103632C/EBPアルファsaRNAを含む併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103632
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】C/EBPアルファsaRNAを含む併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20240725BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240725BHJP
【FI】
A61K31/713
A61K39/395 U
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P1/16
A61K31/713 ZNA
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087660
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2020570030の分割
【原出願日】2019-06-14
(31)【優先権主張番号】62/685,627
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/731,532
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,533
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512325200
【氏名又は名称】ミナ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ライトフット、ヘレン エル.
(72)【発明者】
【氏名】リーバイ、ヴィカシュ
(72)【発明者】
【氏名】セトロム、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブレイキー、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】タン、チュン ピン
(57)【要約】
【課題】C/EBPαを標的とするsaRNAおよび少なくとも1つの追加の活性剤を含む医薬組成物を提供すること。
【解決手段】対象の癌を治療するための医薬組成物は、単離された合成saRNAと少なくとも1つの追加の活性剤とを含み、前記saRNAがC/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートし、前記saRNAは配列番号1(CEBPA-51)の配列を含む鎖を含み、前記追加の活性剤はペンブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、またはニボルマブである。
【選択図】 図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、単離された合成saRNAと少なくとも1つの追加の活性剤とを含み、前記医薬組成物は前記対象に投与されるものであり、
前記saRNAがC/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートし、前記saRNAが配列番号1(CEBPA-51)の配列を含む鎖を含み、
前記追加の活性剤がペンブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、またはニボルマブである、医薬組成物。
【請求項2】
前記C/EBPα遺伝子の発現が、少なくとも20%、50%、100%、2倍、3倍、4倍または5倍アップレギュレートされる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記saRNAが二本鎖であり、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含む、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記saRNAのアンチセンス鎖が配列番号1(CEBPA-51)の配列を含み、前記saRNAのセンス鎖が、配列番号2(CEBPA-51)の配列を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記saRNAがMTL-CEBPAとして投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記saRNAは、前記追加の活性剤と同時にまたは順次に投与されるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記追加の活性剤が、ペンブロリズマブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記対象がさらに高周波アブレーション(RFA)治療を受ける、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象がsaRNA治療の前にRFA治療を受ける、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記癌が、肝細胞癌(HCC)、大腸癌、胃癌、皮膚癌、膵臓癌、頭頸部癌、子宮頸癌、および前立腺癌から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、肝細胞癌(HCC)または大腸癌である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記癌が、肝細胞癌(HCC)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヌクレオチド、特にsaRNAと、C/EBPαおよびC/EBPα経路をモジュレートするための組成物、ならびに代謝障害、癌を含む過剰増殖性疾患を治療することおよび幹細胞系統をレギュレートすることのような治療用途で同組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα、Cs/EBPアルファ、C/EBPA、またはCEBPA)は、ヒトおよびラットにわたり保存されるロイシンジッパータンパク質である。この核転写因子は、肝細胞、骨髄単球、脂肪細胞、並びに他のタイプの乳腺上皮細胞に豊富に存在している[非特許文献1]。それは、N末端部分の2つのトランス活性化ドメインと、C末端部分の他のC/EBPファミリーメンバーとの二量化を媒介するロイシンジッパー領域およびDNA結合ドメインとで構成される。C/EBP転写因子ファミリーの結合部位は、正常な肝細胞機能の維持および傷害への反応に関与する多くの遺伝子のプロモータ領域に存在する。C/EBPαは、免疫および炎症反応、発生、細胞増殖、抗アポトーシス、ならびにいくつかの代謝経路に関与するいくつかの肝臓特異的遺伝子の転写において多面発現効果を有する[非特許文献2]。それは肝細胞の分化状態の維持に不可欠である。それはアルブミン転写を活性化すると共に、尿素産生に関与する複数のオルニチン回路酵素をコードする遺伝子の発現を調整し、したがって正常な肝機能に重要な役割を果たしている。
【0003】
成体肝臓において、C/EBPαは、最終分化肝細胞で機能することが明らかにされているが、一方で、急速増殖肝腫細胞はC/EBPαの一部のみを発現する[非特許文献3]。C/EBPαは、レチノブラストーマのアップレギュレーションとCdk2およびCdk4の阻害とを介する細胞増殖の強い阻害剤であるp21をアップレギュレートすることが知られている[非特許文献4、非特許文献5]。肝細胞癌(HCC)において、C/EBPαは、抗増殖特性を有する腫瘍サプレッサーとして機能する[非特許文献6]。
【0004】
C/EBPα mRNAまたはタンパク質のモジュレーションを研究するためにさまざまなアプローチが行われている。C/EBPαタンパク質は、翻訳後のリン酸化およびSUMO化によりレギュレートされることが知られている。たとえば、FLT3チロシンキナーゼ阻害剤および細胞外シグナル調節キナーゼ1および/または2(ERK1/2)は、C/EBPαのセリン21リン酸化を阻止し、C/EBPαタンパク質の顆粒球分化能を増加させる[非特許文献7、非特許文献8]。加えて、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-酸(CDDO)によりC/EBPα翻訳を効率的に誘導可能であり、それにより、C/EBPαタンパク質アイソフォームの比がp30形よりも全長p42形が有利になるように変化するために顆粒球分化が誘導される[非特許文献9]。
【0005】
C/EBPα遺伝子は、染色体19q13.1に位置するイントロンのない遺伝子である。ほとんどの真核細胞は、遺伝子発現をレギュレートするための機序としてRNA相補性を使用する。一例は、二本鎖低分子干渉RNAを用いてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)により遺伝子発現をノックダウンするRNA干渉(RNAi:RNA interference)経路である。現在では、低分子二本鎖RNAオリゴヌクレオチドはまた、遺伝子のプロモータ領域を標的としてこれらの遺伝子の転写活性化を媒介する能力を有することが確立されており、RNA活性化(RNAa:RNA activation)、アンチジーンRNA(agRNA)、または低分子活性化RNA(saRNA)と呼ばれてきた[非特許文献10]。遺伝子のsaRNA誘導活性化は、マウス、ラット、および非ヒト霊長類を含む他の哺乳動物種で保存されており、遺伝子の内因性アップレギュレーションの影響を研究するための一般的な方法に急速になりつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】レクストロム-ハイムズ(Lekstrom-Himes)ら、J.Bio.Chem.、1998年、第273巻、p.28545~28548
【非特許文献2】ダーリントン(Darlington)ら、Current Opinion of Genetic Development、1995年、第5巻、第5号、p.565~570
【非特許文献3】ウメク(Umek)ら、Science、1991年、第251巻、p.288~292
【非特許文献4】ティムケンコ(Timchenko)ら、Genes&Development、1996年、第10巻、p.804~815
【非特許文献5】ワング(Wang)ら、Molecular Cell、2001年、第8巻、p.817~828
【非特許文献6】イアコバ(Iakova)ら、Seminars in Cancer Biology、2011年、第21巻、第1号、p.28~34
【非特許文献7】ラドムスカ(Radomska)ら、Journal of Experimental Medicine、2006年、第203巻、第2号、p.371~381
【非特許文献8】ロス(Ross)ら、Molecular and Cellular Biology、2004年、第24巻、第2号、p.675~686
【非特許文献9】コシュミーダ(Koschmieder)ら、Blood、2007年、第110巻、第10号、p.3695~3705
【非特許文献10】リー(Li)ら、PNAS、2006年、第103巻、p.17337~17342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、saRNAを用いて治療目的にてC/EBPαの標的化モジュレーションを行う必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、CEBPA-saRNA分子および少なくとも1つの追加の活性剤を含む併用療法を提供する。併用療法を調製および使用する方法も提供される。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の詳細な説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CEBPA-saRNA分子および少なくとも1つの追加の活性剤を含む医薬組成物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のsaRNAの機能に関与する核酸部分間の関係を示す概略図である。
図2】実施例4の研究デザインのタイムラインである。
図3】実施例4で考察した腫瘍浸潤ヘルパーTリンパ球の変化を示す。
図4】実施例4で考察した腫瘍浸潤細胞傷害性Tリンパ球の変化を示す。
図5】実施例4で考察したRFA処置を行わない場合の腫瘍浸潤ナチュラルキラーT細胞の変化を示す。
図6】実施例4で考察したRFA処置を行う場合の腫瘍浸潤ナチュラルキラーT細胞の変化を示す。
図7A】実施例5で考察した腫瘍体積の変化を示す。
図7B】実施例5で考察したAFPの変化を示す。
図8A】研究期間にわたる群内の各動物のCT26腫瘍サイズ、ならびに実施例7で考察した研究における18、21および23日目の散布図を示す。
図8B】研究期間にわたる群内の各動物のCT26腫瘍サイズ、ならびに実施例7で考察した研究における18、21および23日目の散布図を示す。
図8C】研究期間にわたる群内の各動物のCT26腫瘍サイズ、ならびに実施例7で考察した研究における18、21および23日目の散布図を示す。
図8D】研究期間にわたる群内の各動物のCT26腫瘍サイズ、ならびに実施例7で考察した研究における18、21および23日目の散布図を示す。
図9A】MTL-CEBA+Nexavar(登録商標)(左パネル)およびMTL-CEBPA+抗PD1(右パネル)処置動物の第3週の腫瘍重量を示す。
図9B-1】MTL-CEBA+抗PD1(上部パネル)およびMTL-CEBPA+Nexavar(登録商標)(下部パネル)処置動物の第3週の腫瘍体積を示す。
図9B-2】MTL-CEBA+抗PD1(上部パネル)およびMTL-CEBPA+Nexavar(登録商標)(下部パネル)処置動物の第3週の腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、治療目的のためにC/EBPα遺伝子発現および/または機能をモジュレートするための組成物、方法、およびキットを提供する。これらの組成物、方法およびキットは、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築物を含む。
【0012】
C/EBPαタンパク質は、代謝プロセスおよび細胞増殖のクリティカルなレギュレータとして知られる。C/EBPα遺伝子をモジュレートすることは、治療目的で大きい可能性を有する。本発明は、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築物を提供することにより、こうした必要性に取り組むものであり、ここで、核酸構築物は、修飾されている、もしくは修飾されていない、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAを含み得る。
【0013】
本明細書で用いられるC/EBPα遺伝子は、コード鎖と鋳型鎖とを含む二本鎖DNAである。それはまた、本出願において標的遺伝子と称され得る。
文脈における「C/EBPα転写物」、「C/EBPα標的転写物」、または「標的転写物」という用語は、C/EBPαタンパク質をコードするC/EBPα mRNAでありうる。C/EBPα mRNAはC/EBPα遺伝子の鋳型鎖から転写され、ミトコンドリアに存在しうる。
【0014】
C/EBPα遺伝子のコード鎖から転写されるC/EBPα遺伝子のアンチセンスRNAは、本明細書において、以降は標的アンチセンスRNA転写物と称される。標的アンチセンスRNA転写物は、長い非コードアンチセンスRNA転写物であり得る。
【0015】
本発明の文脈における「低分子活性化RNA(small activating RNA)」、「低分子活性化RNA(short activating RNA)」または「saRNA」という用語は、特定の遺伝子の発現をアップレギュレートするまたはそれに対する正の作用を有する一本鎖または二本鎖のRNAを意味する。saRNAは、14~30ヌクレオチドの一本鎖であり得る。saRNAは、各々の鎖が14~30ヌクレオチドを含む二本鎖であり得る。この遺伝子は、saRNAの標的遺伝子と呼ばれる。C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートするsaRNAは「C/EBPα-saRNA」と称され、C/EBPα遺伝子はC/EBPα-saRNAの標的遺伝子である。
【0016】
文脈における「標的」または「標的化」という用語は、C/EBPα遺伝子に対する作用を有することを意味する。作用は直接的または間接的であり得る。直接的な作用は、C/EBPα標的アンチセンスRNA転写物との完全なまたは部分的なハイブリダイゼーションにより引き起こされ得る。間接的な作用は、上流または下流であり得る。
【0017】
C/EBPα-saRNAは、生物学的プロセスまたは活性に対する下流作用を有し得る。そのような実施形態において、C/EBPα-saRNAは、第2の非標的転写物に対する作用(アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれか)を有し得る。
【0018】
文脈における「遺伝子発現」という用語は、C/EBPα遺伝子からC/EBPα mRNAを生成する転写工程またはC/EBPα mRNAからC/EBPαタンパク質を生成する翻訳工程を含み得る。C/EBPα mRNAの増加およびC/EBPαタンパク質の増加はいずれも、C/EBPα遺伝子発現の増加または正の作用の指標となる。
【0019】
遺伝子の「アップレギュレーション」または「活性化」とは、遺伝子の発現レベル、遺伝子によりコードされるポリペプチドのレベルもしくはその活性、または遺伝子の鋳型鎖から転写されるRNA転写物のレベルが本発明のsaRNAの不在下で観測されるよりも増加することを意味する。本発明のsaRNAは、標的遺伝子の発現に対する直接的または間接的なアップレギュレート作用を有し得る。
【0020】
一実施形態において、本発明のsaRNAは、増殖細胞で効力を示し得る。細胞に関して本明細書で使用される場合、「増殖する(proliferating)」とは、急速に成長および/または複製する細胞を意味する。
【0021】
I.本発明の組成物
本発明の一態様は、CEBPA遺伝子をアップレギュレートするsaRNA、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。このようなsaRNAは、以下において、「C/EBPα-saRNA」または「本発明のsaRNA」と称され、本出願において交換可能に使用される。
【0022】
C/EBPα-saRNAは14~30ヌクレオチドを有し、C/EBPα遺伝子の鋳型鎖上の標的配列に少なくとも80%、90%、95%、98%、99%または100%相補的である配列を含む。標的配列は、saRNAおよび/またはsaRNAの逆相補体と同じ長さ、すなわち同じ数のヌクレオチドを有していてもよい。saRNA、標的遺伝子、標的遺伝子のコード鎖、標的遺伝子の鋳型鎖、標的配列/標的部位、および転写開始部位(TSS)の関係を図1に示す。
【0023】
いくつかの実施形態において、標的配列は、少なくとも14ヌクレオチドかつ30ヌクレオチド未満を含む。
いくつかの実施形態において、標的配列は19、20、21、22、または23ヌクレオチドを有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、標的配列の位置は、鋳型鎖のプロモータ領域内に位置する。
いくつかの実施形態において、C/EBPα-saRNAの標的配列は、C/EBPα遺伝子の鋳型鎖のTSS(転写開始部位)コア内に位置する。本明細書で使用される「TSSコア」または「TSSコア配列」は、TSS(転写開始部位)の2000ヌクレオチド上流と2000ヌクレオチド下流との間の領域を指す。したがって、TSSコアは4001ヌクレオチドを含み、TSSはTSSコア配列の5’末端から位置2001に位置する。CEBPA TSSコア配列を以下の表に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSの1000ヌクレオチド上流と1000ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSの500ヌクレオチド上流と500ヌクレオチド下流との間に位置する。いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSの250ヌクレオチド上流と250ヌクレオチド下流との間に位置する。
【0027】
いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSの100ヌクレオチド上流と100ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態において、標的配列はTSSコア内のTSSの上流に位置する。標的配列は、TSSの上流の2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、または100ヌクレオチド未満であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、標的配列はTSSコア内のTSSの下流に位置する。標的配列は、TSSの下流の2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、または100ヌクレオチド未満であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSコアのTSSの周囲の+/-50ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSコアのTSSに実質的に重複する。いくつかの実施形態において、標的配列は、TSSコアのTSSで開始もしくは終了する。いくつかの実施形態において、標的配列は、上流方向または下流方向のいずれかの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19ヌクレオチドがTSSコアのTSSに重複する。
【0030】
鋳型鎖の標的配列の位置は、標的配列の5’末端の位置により定義される。標的配列の5’末端は、TSSコアの任意の位置にあってもよく、標的配列はTSSコアの位置1~位置4001まで選択された任意の位置から開始してもよい。本明細書での参照のために、標的配列の最も5’側の末端がTSSコアの位置1~位置2000にある場合、標的配列はTSSの上流にあると見なされ、標的配列の最も5’側の末端が位置2002~4001にある場合、標的配列はTSSの下流にあると見なされる。標的配列の5’末端がヌクレオチド2001にある場合、標的配列はTSS中心配列であると見なされ、TSSの上流でも下流でもない。
【0031】
さらなる参考のために、例えば、標的配列の5’末端がTSSコアの位置1600にある場合、すなわち、TSSコアの1600番目のヌクレオチドである場合、標的配列はTSSコアの位置1600から開始し、TSSの上流にあると見なされる。
【0032】
一実施形態において、本発明のsaRNAは二本鎖を形成する2つの鎖を有し、一方の鎖はガイド鎖である。saRNA二本鎖(duplex)は二本鎖(double-stranded)saRNAとも称される。本明細書で用いられる二本鎖saRNAまたはsaRNA二本鎖は、鎖間ハイブリダイゼーションが二本鎖構造の領域を形成可能な2本以上の、好ましくは2本の鎖を含むsaRNAである。二本鎖saRNAの2つの鎖は、アンチセンス鎖またはガイド鎖、およびセンス鎖またはパッセンジャー鎖と称される。
【0033】
いくつかの実施形態において、C/EBPα-saRNAは、ミナ セラピューティクス リミテッド(MiNA Theraputics Limited)への国際公開第WO2015/075557号または第WO2016/170349号(両文献の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている任意のC/EBPα-saRNAから構成されていてもよく、例えば、それぞれ、国際公開第WO2016/170349号に開示されている表1、表1A、表3-1および表3-2のsaRNA、AW51およびCEBPA-51である。
【0034】
いくつかの実施形態において、C/BPα-saRNAは改変されていてもよく、そしてミナ セラピューティクス リミテッドへの国際公開第WO2016/170349号に開示された任意の改変を含み得る。
【0035】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、C/EBPαをアップレギュレートするsaRNA二本鎖であるCEBPA-51(またはCEBPA51)である。その設計、配列、および組成物/製剤は、ミナ セラピューティクス リミテッドへの国際公開第WO2016/170349号の詳細な説明および実施例に開示されている。CEBPA-51のセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列を表1に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
鎖のアライメントを表2に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
CEBPA-51をリポソーム(Marina Biotech社所有のNOV340 SMARTICLES(登録商標)技術)にカプセル化してMTL-CEBPAを作製する。NOV340 SMARTICLES(登録商標)の脂質成分は、1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステリル-ヘミサクシネート(CHEMS)、および4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロールヘミサクシネート(MOCHOL)から構成されている。NOV340 SMARTICLES(登録商標)は6:24:23:47のモル比でのPOPC、DOPE、CHEMSおよびMOCHOLからなる。これらのナノ粒子は生理学的pHでアニオン性であり、それらの特定の脂質比はリポソームに「pH調整可能」な特性と電荷を与え、これは微小環境の周囲のpHに応じて変化し、生理学的膜を通過する移動を促進する。SMARTICLES(登録商標)ナノ粒子は、約50~150nm、または約100~120nmの平均直径を有し、広範な即時の肝隔離を避けるための大きさになっており、静脈注射後の長時間の全身分布と血清安定性の向上を促進し、肝臓、脾臓、骨髄における高レベルの広い組織分布につながることが報告されている。
【0040】
MTL-CEBPAはまた、ショ糖やリン酸塩などの緩衝液形成賦形剤も含む。MTL-CEBPAの定性および定量組成(2.5mg/mL)を表3に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
投与
CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物は、治療上有効な結果をもたらす任意の経路によって投与することができる。投与経路としては、限定されるものではないが、以下のものが含まれる;腸内、胃腸内、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜上)、脳内(大脳に)、脳室内(脳室に)、上皮(皮膚への塗布)、皮内(皮膚自体に)、皮下(皮膚の下に)経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈に)、動脈内(動脈に)、筋肉内(筋肉内に)、心臓内(心臓に)、骨内注入(骨髄に)、髄腔内(脊柱管内に)、腹腔内(腹膜への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通して)、海綿体内注射(陰茎の基部に)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身への分布のための無傷の皮膚を通しての拡散)、径粘膜(粘膜からの拡散)、吹送(強く息を吐く)、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上に)または点耳。特定の実施形態において、組成物は、それらが血液脳関門、血管関門、または他の上皮関門を通過することを可能にする方法で投与され得る。2012年12月14日に出願された国際公開第WO2013/090648号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示された投与経路は、本発明のsaRNAを投与するために使用され得る。
【0043】
投薬
いくつかの実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物は、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回または4日に1回、投与される。
【0044】
いくつかの実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物の少なくとも2用量が、対象に投与される。対象は、肝臓癌、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂肪症、肝障害、肝不全、または肝線維症などの肝疾患に罹患している可能性がある。投与間隔は7日未満である。一実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAは、24時間ごとに投与される。一実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAは、48時間ごとに投与される。
【0045】
いくつかの実施形態において、患者は、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物の少なくとも2用量、例えば、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、または10用量、を受ける。
【0046】
いくつかの実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物は、少なくとも2日間、例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、8日間、9日間、10日間、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間、投与される。
【0047】
一実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAは、24時間ごとに、少なくとも2日間、例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、8日間、9日間、10日間、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間、投与される。
【0048】
一実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAは、48時間ごとに、少なくとも2日間、例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、8日間、9日間、10日間、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間、投与される。
【0049】
いくつかの実施形態において、CEBPA-51および/またはMTL-CEBPAなどのC/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物は、60分にわたる静脈内注入を介して投与される。用量は約20~約160mg/mである。
【0050】
本出願に開示される投薬レジメンは、C/EBPα-saRNAまたはC/EBPα-saRNA組成物で治療することができる任意の適応症または障害に適用することができる。
【0051】
II.使用方法
本発明の一態様は、C/EBPα-saRNA、並びにC/EBPα-saRNA及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を使用するための方法を提供する。C/EBPα-saRNAはC/EBPα遺伝子発現をモジュレートする。一実施形態において、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ増加する。さらに好ましい実施形態において、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する。
【0052】
一実施形態において、本明細書に記載のsaRNAの遺伝子発現の増加は増殖細胞で示される。
代謝調節
肝細胞は一般に、いくつかの重要な機能の維持に重要であると認識されている。たとえば、肝細胞は、炭水化物と脂質の代謝、および外因性および内因性の化合物の解毒を調節することができる。C/EBPαは、脂肪細胞、II型肺胞細胞、および肝細胞を含む、多くの細胞型の分化に重要な役割を果たすさまざまな組織で発現される。マウスでは、C/EBPαは、脂肪組織、肝組織および肺組織に最も豊富に見いだされる。C/EBPαの機能的役割には、限定されるものではないが、α-1-アンチトリプシン、トランスサイレチンおよびアルブミンのレギュレーションが挙げられる。さらに、肝細胞系(HepG2)におけるC/EBPα遺伝子の発現は、内因性基質の代謝に関与すると共に主要な生体異物の解毒および代謝活性化に重要な役割を果たすモノオキシゲナーゼのスーパーファミリーであるシトクロムP450(CYP)のレベルの増加をもたらす[ジョウバー(Jover)ら、FEBS Letters、1998年、第431巻、第2号、p.227~230(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。
【0053】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、世界的に主要な健康問題であり、米国では3人に1人が罹患している。NAFLDは、過度のアルコール摂取によって引き起こされるものではない、肝細胞内の余分な脂肪(脂質)の蓄積である。肝臓の重量の5%~10%超が脂肪である場合、脂肪肝(脂肪症)と呼ばれる。NAFLDは、脂肪性肝炎、肝硬変、および肝臓癌に進行する可能性がある。メタボリック症候群、インスリン抵抗性、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの代謝障害に関連している。治療方法としては、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルの低下、インスリン感受性の向上、代謝リスク因子の治療、体重減少などが挙げられる[アダムス(Adams)ら、Postgraduate Medical Journal、2006年、第82巻、p.315~322、ムッソ(Musso)ら、Curr.Opin.Lipidol.、2011年、第22巻、第6号、p.489~496(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。
【0054】
C/EBPαタンパク質は、肝機能および代謝の調節に重要な役割を果たす。肝臓へのC/EBPαの一次作用は図1に示され、CD36タンパク質レベルの低下による脂肪酸取込みの減少、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)、および脂肪酸シンターゼ(FAS)タンパク質のレベルの低下によるde novo脂質生成の減少、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターアルファ(PPARα)ならびにペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマコアクチベータ1-アルファおよび-ベータ(PGC-1αおよびβ)のタンパク質レベルの増加によるβ酸化の増加、アポリポタンパク質C-III(APOC3)および低密度リポタンパク質レセプター(LDLR:low density lipoprotein receptor)タンパク質のレベルの低下による肝脂質過負荷の減少、PGC-1βタンパク質レベルの増加による線維症への進行の減少、ならびにペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマ(PPARγ)タンパク質レベルの増加によるインスリン抵抗性の減少が含まれる。さらに、C/EBPαは、脂肪組織への二次作用を有する。白色脂肪組織(WAT)は、脂質生成組織および脂肪貯蔵組織であるだけでなく、エネルギーホメオスタシス、脂質代謝、食欲、妊性、ならびに免疫反応およびストレス反応を調節する重要な内分泌器官でもある。褐色脂肪組織(BAT)は、WATと比較して多数のより小さい脂質小滴およびかなりより多くの鉄含有ミトコンドリアを含有する。それは栄養エネルギー、エネルギーバランスおよび体重において重要な役割を果たす。BATの萎縮が肥満に関連しているというエビデンスが存在する。特に、BATにおける熱発生の障害は齧歯動物の肥満の病因に重要なことが研究から示唆された[トレイハーン P.(Trayhurn P.)、J.Biosci.、1993年、第18巻、第2号、p.161~173]。C/EBPαは、肝脂肪症およびインスリン抵抗性を減少させると共にPGC-1αタンパク質レベルを増加させ、続いてWATの褐変、WATからBATへの変換、次いでBATの活性化を引き起こし、それにより体脂肪および体重を低減する。したがって、本発明のC/EBPα-saRNAは、肝機能の調節、脂肪症の低減、血清脂質の低減、NAFLDの治療、インスリン抵抗性の治療、エネルギー消費の増加、および肥満の治療に使用することができる。
【0055】
一実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することによりインビトロおよびインビボで肝代謝遺伝子をレギュレートする方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAでの治療によりインビトロおよびインビボでNAFLDに関与する肝遺伝子をレギュレートする方法も提供される。遺伝子には、限定されるものではないが、ステロール調節エレメント結合因子1(SREBF-1またはSREBF)、分化クラスター36(CD36)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ2(ACACB)、アポリポタンパク質C-III(APOC3)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)、ペルオキシソームプロリフェレータ-活性化レセプターガンマコアクチベータ1アルファ(PPARγ-CoA1αまたはPPARGC1A)、低密度リポタンパク質レセプター(LDLR)、ペルオキシソームプロリフェレータ-活性化レセプターガンマコアクチベータ1ベータ(PPARγ-CoA1βまたはPERC)、ペルオキシソームプロリフェレータ-活性化レセプターガンマ(PPARγ)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ1(ACACA)、炭水化物-応答エレメント-結合タンパク質(ChREBPまたはMLX1PL)、ペルオキシソームプロリフェレータ-活性化レセプターアルファ(PPARαまたはPPARA)、FASN(脂肪酸シンターゼ)、ジグリセリドアシルトランスフェラーゼ-2(DGAT2)および哺乳動物ラパマイシン標的(mTOR)が含まれる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるSREBF-1遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるAPOC3遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるMTP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるPPARγ-CoA1α遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるPPARγ遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるPPARα遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるMLXIPL遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるFASN遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞におけるDGAT2遺伝子の発現を少なくとも10%、20%、好ましくは少なくとも30%、40%、50%だけ減少させる。
【0056】
C/EBPα-saRNAはまた、BAT細胞において上記に開示される肝代謝遺伝子の発現をモジュレートする。別の実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるSREBP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるLDLR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるPPARGC1A遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるAPOC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるPERC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるACACA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるMLXP1遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるMTOR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるPPARA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%、350%、400%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるFASN遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、BAT細胞におけるDGAT遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%だけ増加させる。
【0057】
C/EBPα-saRNAはまた、WAT細胞において上記に開示される肝代謝遺伝子の発現をモジュレートする。別の実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるSREBP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるLDLR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるPPARGC1A遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるMTP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0倍、より好ましくは少なくとも5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0倍だけ増加させる。一実施形態において、一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるAPOC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるPERC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるACACA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、95%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるMLX1PL遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるMTOR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるFASN遺伝子の発現を少なくとも5%、10%、好ましくは少なくとも15%、20%だけ減少させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、WAT細胞におけるDGAT遺伝子の発現を少なくとも10%、20%、30%、より好ましくは40%、50%だけ減少させる。
【0058】
別の実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAを、それを必要とする患者に投与することにより、インスリン抵抗性(IR)を低下させるか、またはインスリン感受性を高める方法が提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することによりII型糖尿病、高インスリン血症、および脂肪症を治療する方法が提供される。肝細胞がインスリン抵抗性であり、インスリンを効果的に使用できない場合、高血糖症が発症する。その後、膵臓のベータ細胞はインスリンの産生を増加させ、高インスリン血症およびII型糖尿病を引き起こす。多くのレギュレータは、肝細胞のインスリン抵抗性に影響を及ぼす。たとえば、ステロール調節エレメント-結合タンパク質1(SREBP1またはSREBP)は、コレステロールのマスターレギュレータであり、かつインスリン抵抗性の増加に関連している。コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)のアップレギュレーションは、インスリン抵抗性の増加に関連している。肝脂肪酸トランスロカーゼ/分化クラスター36(FAT/CD36)のアップレギュレーションは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)の患者においてインスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪症の増加に関連している。リポタンパク質リパーゼ遺伝子(LPL)の肝特異的過剰発現は、肝特異的インスリン抵抗性を引き起こす。肝Xレセプター遺伝子(LXR)は、肝臓においてステロール調節エレメント-結合タンパク質(SREBP)-1c-誘導脂肪酸合成のインスリン媒介活性化に中心的役割を果たしている。他の因子には、トリグリセリド合成をレギュレートするジグリセリドアシルトランスフェラーゼ-2(DGAT2)および脂肪酸生合成をレギュレートする脂肪酸シンターゼ(FASN)が含まれる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞におけるFAT/CD36遺伝子の発現を少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは90%だけ低減する。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞におけるLPL遺伝子の発現を少なくとも20、30、40%、好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、より好ましくは少なくとも100、150、200、250、300、350、および400%だけ増加させる。一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞におけるLXR遺伝子の発現を少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、より好ましくは少なくとも100、150、200、250、300、350および400%、さらにより好ましくは少なくとも450、500、550、600%だけ増加させる。別の実施形態において、C/EBPα-saRNAはSREBP1遺伝子の発現を減少させる。別の実施形態において、C/EBPα-saRNAはDGAT2遺伝子の発現を減少させる。別の実施形態において、C/EBPα-saRNAはCETP遺伝子の発現を減少させる。さらに別の実施形態において、C/EBPα-saRNAはFASN遺伝子の発現を減少させる。
【0059】
C/EBPα-saRNAでモジュレートされ得るNAFLDおよびIR遺伝子の要約を表4に示す。表4における略語:NAFLD:非アルコール性脂肪肝疾患、IR:インスリン抵抗性、DNL:de novo脂質生成、FA:脂肪酸、TG:トリグリセリド、LPL:リポタンパク質リパーゼ、HP:肝リパーゼ、CHOL:コレステロール。
【0060】
【表5-1】
【0061】
【表5-2】
【0062】
【表6】
【0063】
本発明の一実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAでの治療によりインビトロで血清コレステロールレベルを低減する方法が提供される。C/EBPα-saRNAを用いると血清コレステロールレベルは、無治療の血清コレステロールレベルと比較して少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは75%だけ低減する。また、本発明のC/EBPα-saRNAを投与することによりインビボで肝細胞におけるLDLレベルおよびトリグリセリドレベルを低減する、およびLDLの循環レベルを増加させる方法も提供される。循環LDLレベルは、C/EBPα-saRNAの不在下での循環LDLレベルと比較して、少なくとも2倍、好ましくは3倍、好ましくは4倍、好ましくは5倍、好ましくは10倍、好ましくは15倍だけ増加しうる。肝トリグリセリドレベルは、C/EBPα-saRNAの不在下での肝トリグリセリドレベルと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ低減しうる。肝LDLレベルは、C/EBPα-saRNAの不在下での肝LDLレベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ低減しうる。
【0064】
本発明の一実施形態において、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することによりNAFLDを治療する、および脂肪肝サイズを低減する方法が提供される。C/EBPα-saRNAで治療された患者の脂肪肝のサイズは、無治療の患者と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%だけ低減される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより体重を低減する、および肥満を治療する方法が提供される。C/EBPα-saRNAで治療された患者の体重は、C/EBPα-saRNA治療を受けない患者の体重よりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ減少する。本発明のC/EBPα-saRNAは、1回、2回、3回、またはそれを超えて投与することができる。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより遊離脂肪酸の肝取り込みを減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより白色脂肪組織(WAT)の炎症を低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することによりde novo脂質生成を低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより肝臓におけるベータ酸化を増加させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより肝臓における褐色脂肪組織(BAT)を増加させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより肝脂質取込みを低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することによりWATにおける脂質生成を減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより肝臓における脂質貯蔵を減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAで治療することにより肝臓における脂質過負荷を低減する方法も提供される。
【0065】
別の実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは肝機能を向上させるために使用される。1つの非限定的な例において、C/EBPα-saRNAは、アルブミン遺伝子発現を増加させることにより血清アルブミンレベルおよび非コンジュゲートビリルビンレベルを増加させる。アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ増加しうる。さらに好ましい実施形態において、アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する。別の非限定的な例において、C/EBPα-saRNAは、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルファフェクトプロテイン(AFP)、および肝細胞成長因子(HGF)の量を減少させる。ALT、AST、GGT、AFP、またはHGFの量は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのALT、AST、GGT、AFP、またはHGFのいずれかの量と比較して、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ減少しうる。
【0066】
別の実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、C/EBPファミリーの他のメンバーのレベルを調節するために投与される。C/EBPα-saRNAは、C/EBPα-saRNAの用量に依存して、C/EBPβ、C/EBPγ、C/EBPδ、およびC/EBPζの発現を増加させる。さらに別の実施形態において、細胞内のC/EBPαまたはC/EBPβタンパク質アイソフォームの比率は、前記細胞と本発明のC/EBPα-saRNAとを接触させることにより調節される。一実施形態において、C/EBPαの42KDaアイソフォームが増加する。一実施形態において、C/EBPβの30kDaアイソフォームが増加する。
【0067】
外科ケア
肝切除、肝臓または肝組織の外科的切除は、肝不全、アルブミンおよび凝固因子の産生の低減を引き起こす可能性がある。肝切除後の適切な外科ケア(surgical care)が必要とされる。いくつかの実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、肝再生の促進および生存率の増加のために肝切除後の外科ケアに使用される。
【0068】
過増殖障害
本発明の一実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、過増殖細胞の細胞増殖を低減するために使用される。過剰増殖性細胞の例には、癌性細胞、例えば、癌腫、肉腫、リンパ腫、および芽細胞腫が含まれる。そのような癌性細胞は良性または悪性であり得る。過増殖細胞は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または乾癬などの自己免疫状態に起因する可能性がある。過増殖細胞はまた、過敏免疫系を有する患者がアレルゲンに接触することにより生じる可能性がある。過敏免疫系が関与するそのような状態には、限定されるものではないが、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、およびアレルギー性アナフィラキシーなどのアレルギー反応が含まれる。一実施形態において、腫瘍細胞の発達および/または成長が阻害される。好ましい実施形態において、固形腫瘍細胞の増殖が阻害される。別の好ましい実施形態において、腫瘍細胞の転移が防止される。別の好ましい例において、未分化腫瘍細胞の増殖が阻害される。
【0069】
細胞増殖の阻害または増殖の減少は、増殖が減少するか、または完全に停止することを意味する。したがって、「増殖の低減」は、「増殖の阻害」の実施形態である。細胞の増殖は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAで治療する前の前記細胞の増殖と比較して、または均等な未治療細胞の増殖と比較して、少なくとも20%、30%、もしくは40%、または好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、もしくは75%、さらにより好ましくは少なくとも80、90、もしくは95%だけ低減される。細胞増殖が過増殖細胞において阻害される実施形態において、「均等(equivalent)」な細胞は過増殖細胞でもある。好ましい実施形態において、増殖は、均等の健常な(非過増殖)細胞の増殖速度に匹敵する速度に低減される。別の見方をすると、「細胞増殖の阻害」の好ましい実施形態は、増殖の正常な健常レベルを達成するべく、過増殖を阻害することまたは細胞増殖をモジュレートすることである。
【0070】
非限定的な一例ではあるが、C/EBPα-saRNAは、白血病細胞およびリンパ腫細胞の増殖を低減するために使用される。好ましくは、細胞は、ジャーカット細胞(急性T細胞リンパ腫細胞系)、K562細胞(赤白血病細胞系)、U373細胞(神経膠芽細胞腫細胞系)および32Dp210細胞(骨髄性白血病細胞系株)を含む。
【0071】
別の非限定的な例において、C/EBPα-saRNAは、卵巣癌細胞、肝癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、ラット肝癌細胞、およびインスリノーマ細胞の増殖を低減するために使用される。好ましくは、細胞は、PEO1およびPEO4(卵巣癌細胞系)、HepG2(肝細胞癌細胞系)、Panc1(ヒト膵癌細胞系)、MCF7(ヒト乳腺癌細胞系)、DU145(ヒト転移前立腺癌細胞系)、ラット肝癌細胞、ならびにMIN6(ラットインスリノーマ細胞系)を含む。
【0072】
別の非限定的な例において、C/EBPα-saRNAは、腫瘍細胞増殖を低減するためにC/EBPβ遺伝子を標的とするsiRNAと組み合わせて使用される。腫瘍細胞は、HepG2細胞などの肝細胞癌細胞およびMCF7細胞などの乳癌細胞を含み得る。
【0073】
一実施形態において、本発明のsaRNAは、過増殖障害を治療するために使用される。腫瘍および癌は、特に興味深い過増殖障害であり、すべてのタイプの腫瘍および癌、たとえば、固形腫瘍および血液癌が含まれる。癌の例には、限定されるものではないが、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、胆嚢癌、肝癌、頭頸部癌、扁平上皮細胞癌、胃腸癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(たとえば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病)、脳腫瘍(たとえば、星状細胞腫、膠芽腫、髄芽腫)、神経芽腫、肉腫、結腸癌、直腸癌、胃癌、肛門癌、膀胱癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、黒色腫、および他の皮膚癌が含まれる。肝癌には、限定されるものではないが、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、または肝細胞癌(HCC)が含まれる。HCCは特に興味深い。
【0074】
原発性肝癌は、全世界で5番目に多い癌であり、癌関連死亡の3番目に多い原因である。HCCは原発性肝癌の大多数を占める[エル-セラグ(El-Serag)ら、Gastroenterology、2007年、第132巻、第7号、p.2557~2576(その内容はその全体が本明細書に開示される)]。HCCは、癌細胞生物学、免疫系、およびさまざまな病因(ウイルス、毒物、および一般物)を含むいくつかの因子の相互作用による影響を受ける。HCC患者の大多数は、肝硬変を経て悪性腫瘍を発症する。現在、ほとんどの患者は進行した段階で診断されるので、HCC患者の大多数の5年生存率は依然として悲惨である。外科的切除、局所切除、および肝移植は、現在、HCCが治癒する可能性を有する唯一の治療選択肢である。しかしながら、個別の肝機能および腫瘍負荷の評価に基づいて、患者の約5~15%のみが外科的介入の対象となる。C/EBP転写因子ファミリーの結合部位は、正常な肝細胞機能の維持および傷害への反応に関与する多くの遺伝子のプロモータ領域に存在する(アルブミン、インターロイキン6反応、エネルギー恒常性、オルニチン回路調節、および血清アミロイドA発現を含む)。本発明は、C/EBPα遺伝子の発現をモジュレートするためにならびに肝硬変およびHCCを治療するためにC/EBPα-saRNAを利用する。
【0075】
本発明の方法は、腫瘍体積を少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90%だけ低減しうる。好ましくは、1つ以上の新しい腫瘍の発生が阻害され、例えば、本発明に従って治療された対象は、より少ないおよび/またはより小さい腫瘍を発生する。より少ない腫瘍とは、設定期間にわたり均等な対象よりも少ない数の腫瘍を発生することを意味する。たとえば、均等な対照(未治療)対象よりも少なくとも1、2、3、4、または5少ない腫瘍を発生する。より小さい腫瘍とは、腫瘍が均等な対象の腫瘍よりも重量および/または体積で少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、また90%小さいことを意味する。本発明の方法は、腫瘍負荷を少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または90%だけ低減する。
【0076】
設定された期間は、任意の適切な期間であり得る。たとえば、月数または年数で1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり得る。
1つの非限定的な例において、細胞、組織、器官、または対象と、本発明のC/EBPα-saRNAと、を接触させる工程を含む、未分化腫瘍の治療方法が提供される。未分化腫瘍は一般に、分化腫瘍と比較して予後が不良である。腫瘍の分化の程度は予後に関係しているので、分化生物学的因子の使用は有益な抗増殖薬剤でありうるという仮説が立てられる。C/EBPαは、骨髄分化を回復して急性骨髄性白血病の造血細胞の過増殖を予防することが知られている。好ましくは、C/EBPα-saRNAで治療しうる未分化腫瘍としては、未分化小細胞肺癌腫、未分化膵腺癌、未分化ヒト膵癌、未分化ヒト転移前立腺癌、および未分化ヒト乳癌が含まれる。
【0077】
1つの非限定的な例において、C/EBPα-saRNAは、標的化インビボ送達のためのC/EBPα-saRNAデンドリマーと称されるPAMAMデンドリマー中に複合体化される。静脈内注射されるC/EBPα-saRNAデンドリマーの治療効果は、実施例1に示されるように臨床的に妥当なラット肝腫瘍モデルにて実証される。48時間間隔で尾静脈注射により3回投与後、治療された肝硬変ラットは、1週間以内に血清アルブミンレベルの有意な増加を示した。肝腫瘍負荷は、C/EBPα-saRNAデンドリマー治療群で有意に減少した。活性化RNA低分子による遺伝子標的化を全身静脈内投与で用いてHCC肝硬変ラットの肝機能の改善および腫瘍負荷の低減を同時に行えることが、この研究から初めて実証される。
【0078】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、癌遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子をレギュレートするために使用される。好ましくは、癌遺伝子の発現はダウンレギュレートされ得る。癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα-saRNAの不在下での発現と比較して、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%だけ低減する。さらなる好ましい実施形態において、癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα-saRNAの不在下での発現と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ、低減される。好ましくは、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は阻害され得る。腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα-saRNAの不在下での発現と比較して、少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、さらにより好ましくは少なくとも100%だけ増加する。さらなる好ましい実施形態において、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα-saRNAの不在下での発現と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加される。癌遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子の例としては、限定されるものではないが、Bcl-2-関連Xタンパク質(BAX)、BH3相互作用ドメインデスアゴニスト(BID)、カスパーゼ8(CASP8)、ディセーブルホモログ2-相互作用タンパク質(DAB21P)、肝癌欠失1(DLC1)、Fas表面デスレセプター(FAS)、脆弱ヒスチジントライアド(FHIT)、成長停止・DNA損傷-誘導ベータ(GADD45B)、ヘッジホッグ相互作用タンパク質(HHIP)、インスリン様成長因子2(IGF2)、リンパエンハンサー-結合因子1(LEF1)、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)、タンパク質チロシンキナーゼ2(PTK2)、レチノブラストーマ1(RB1)、runt関連転写因子3(RUNX3)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)、サイトカインシグナリングサプレッサー(3SOCS3)、トランスフォーミング成長因子ベータレセプターII(TGFBR2)、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、p53、ディスインテグリン・メタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質17(ADAM17)、v-aktネズミ胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ1(AKT1)、アンギオポイエチン2(ANGPT2)、B細胞CLL/リンパ腫2(BCL2)、BCL2様1(BCL2L1)、バキュロウイルスIAPリピート含有2(BIRC2)、バキュロウイルスIAPリピート含有5(BIRC5)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、サイクリンD1(CCND1)、サイクリンD2(CCND2)、カドヘリン(CDH1)、カドヘリン13(CDH13)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1A(CDKN1A)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1B(CDKN1B)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(CDKN2A)、CASP8・FADD様アポトーシスレギュレータ(CFLAR)、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)ベータ1(CTNNB1)、ケモカインレセプター4(CXCR4)、E2F転写因子1(E2F1)、表皮成長因子(EGF)、表皮成長因子レセプター(EGFR)、E1A結合タンパク質p300(EP300)、Fas(TNFRSF6)関連ビアデスドメイン(FADD)、fm関連チロシンキナーゼ1(FLT1)、フリズルドファミリーレセプター7(FZD7)、グルタチオンS-トランスフェラーゼパイ1(GSTP1)、肝細胞成長因子(HGF)、ハーベイラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(HRAS)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)、インスリンレセプター基質1(IRS1)、インテグリンベータ1(ITGB1)、キナーゼインサートドメインレセプター(KDR)、骨髄細胞白血病配列1(MCL1)、met癌原遺伝子(MET)、mutSホモログ2(MSH2)、mutSホモログ3(MSH3)、メタドヘリン(MTDH)、v-mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(MYC)、B細胞カッパ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子1(NFKB1)、神経芽腫RASウイルス(v-ras)癌遺伝子ホモログ(NRAS)、オピオイド結合タンパク質/細胞接着分子様(OPCML)、血小板由来成長因子レセプター、アルファポリペプチド(PDGFRA)、ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ、NIMA相互作用1(PIN1)、プロスタグランジンエンドペルオキサイドシンターゼ2(PTGS2)、PYD・CARDドメイン含有(PYCARD)、ras関連C3ボツリヌス毒素基質1(RAC1)、Ras関連(RalGDS/AF-6)ドメインファミリーメンバー1(RASSF1)、リーリン(RELN)、rasホモログファミリーメンバーA(RHOA)、分泌フリズルド関連タンパク質2(SFRP2)、SMADファミリーメンバー7(SMAD7)、サイトカインシグナリングサプレッサー1(SOCS1)、シグナルトランスデューサ・転写アクチベータ3(STAT3)、転写因子4(TCF4)、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGFA)、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGFB1)、toll様レセプター4(TLR4)、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)、血管内皮増殖因子A(VEGFA)、ウィルムス腫瘍1(WT1)、アポトーシスX連鎖阻害剤(XIAP)、およびYes関連タンパク質1(YAP1)が含まれる。
【0079】
一実施形態において、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより白血球数を増加させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα-saRNAを患者に投与することにより、敗血症または慢性炎症疾患(たとえば、肝炎および肝硬変)を有する患者および免疫無防備患者(たとえば、化学療法を受けている患者)の白血球減少を治療する方法も提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、白血病およびリンパ腫を含むプレB細胞およびB細胞悪性腫瘍を治療する方法も提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα-saRNAを投与することにより、白血球、造血幹細胞、または間葉幹細胞を動員する方法も提供される。一実施形態において、C/EBPα-saRNAで治療された患者の白血球数は、C/EBPα-saRNA治療なしと比較して、少なくとも50%、75%、100%、より好ましくは少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5倍、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10倍だけ増加する。
【0080】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、肝細胞癌の治療においてマイクロRNA(miRNAまたはmiR)をレギュレートするために使用される。マイクロRNAは、遺伝子発現をレギュレートする低分子非コードRNAである。それらは重要な生理学的機能に関与しており、発癌のそれぞれの工程に関与し得る。それらは典型的には21ヌクレオチドを有し、前記mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)に結合することによりmRNA翻訳の遮断またはmRNA分解の誘導を介して転写後レベルで遺伝子発現をレギュレートする。
【0081】
腫瘍において、miRNA発現のレギュレーションは腫瘍発生に影響を及ぼす。HCCでは、他の癌の場合と同様に、miRNAは、細胞の成長および増殖、細胞の代謝および分化、アポトーシス、血管新生、転移、および最終的には予後に影響を及ぼす癌遺伝子または腫瘍サプレッサー遺伝子のいずれかとして機能する。[リン(Lin)ら、Biochemical and Biophysical Research Communications、2008年、第375巻、p.315~320、クタイ(Kutay)ら、J.Cell.Biochem.、2006年、第99巻、p.671~678、メング(Meng)ら、Gastroenterology、2007年、第133巻、第2号、p.647~658(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。本発明のC/EBPα-saRNAは、C/EBPα遺伝子の発現および/または機能をモジュレートするとともにHCC細胞でmiRNAレベルをレギュレートする。本発明のC/EBPα-saRNAによりレギュレートしうるmiRNAの非限定的な例としては、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-133b、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-335-5p、hsa-miR-196a-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-96-5p、hsa-miR-184、hsa-miR-214-3p、hsa-miR-15a-5p、hsa-let-7b-5p、hsa-miR-205-5p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-134、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7c、hsa-miR-218-5p、hsa-miR-206、hsa-miR-124-3p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-155-5p、hsa-miR-1、hsa-miR-150-5p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-127-5p、hsa-miR-191-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-15b-5p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-34a-5p、hsa-miR-144-3p、hsa-miR-128、hsa-miR-215、hsa-miR-193a-5p、hsa-miR-23b-3p、hsa-miR-203a、hsa-miR-30c-5p、hsa-let-7e-5p、hsa-miR-146a-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-9-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-181c-5p、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-148b-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-132-3p、hsa-miR-193b-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-138-5p、hsa-miR-373-3p、hsa-miR-29b-3p、hsa-miR-135b-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-181d、hsa-miR-301a-3p、hsa-miR-200c-3p、hsa-miR-7-5p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-210、hsa-miR-17-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-18a-5p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-27a-3p、hsa-miR-372、hsa-miR-149-5p、およびhsa-miR-32-5pが含まれる。
【0082】
1つの非限定的な例において、miRNAは発癌性miRNAであり、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下ではC/EBPα-saRNAの不在下と比較して、少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1、1.5、2、2.5、および3だけダウンレギュレートされる。別の非限定的な例において、miRNAは腫瘍抑制miRNAであり、本発明のC/EBPα-saRNAの存在下ではC/EBPα-saRNAの不在下と比較して、少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1倍、より好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけアップレギュレートされる。
【0083】
他の治療法との組み合わせ
本発明のsaRNAは、考慮されている特定の方法に有効であることが知られている追加の活性剤または治療法との組み合わせで提供することもできる。例えば、saRNAと、追加の活性剤または治療法と、を含む併用療法は、代謝調節、外科ケア、過増殖性障害、および/または幹細胞調節を含む、本明細書に記載される任意の障害を治療するために、それを必要とする任意の患者に与えられ得る。
【0084】
追加の活性剤は、saRNAと同時にまたは順次に投与されてもよい。追加の活性剤は、saRNAとの混合物で投与されてもよいし、またはsaRNAとは別に投与されてもよい。
【0085】
本明細書で使用される「同時に投与される」という用語は、特に限定されず、併用療法の成分、すなわち、本発明のsaRNAおよび追加の活性剤が、実質的に同時に、例えば混合物として、あるいは直後の続く順序で、投与されることを意味する。
【0086】
本明細書で使用される「順次に投与される(administered sequentially)」という用語は、特に限定されず、併用療法の成分、すなわち、本発明のsaRNAおよび追加の活性剤が、同時に投与されるのではなく、次々と、または群において、投与と投与との間の特定の時間間隔で投与されることを意味する。時間間隔は、併用療法の成分のそれぞれの投与間で同じであってもまたは異なっていてもよく、例えば、2分~96時間、1~7日または1、2または3週間の範囲から選択することができる。一般に、投与と投与との間の時間間隔は、数分から数時間の範囲、例えば、2分~72時間、30分~24時間、または1~12時間の範囲であり得る。さらなる例には、24~96時間、12~36時間、8~24時間、および6~12時間の範囲の時間間隔が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明のsaRNAは、追加の活性剤の前に投与される。いくつかの実施形態において、追加の活性剤は、本発明のsaRNAの前に投与される。
【0087】
本発明のsaRNAおよび追加の活性剤のモル比は、特に制限されない。例えば、2つの成分が組成物中に組み合わされる場合、2つの成分間のモル比は、1:500~500:1、または1:100~100:1、または1:50~50:1、または1:20~20:1、または1:5~5:1、または1:1、の範囲であり得る。組成物に3つ以上の成分を組み合わせる場合も同様のモル比が適用される。各成分は、それぞれ、組成物の約1%~10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~40%、又は約40%~50%、又は約50%~60%、又は約60%~70%、又は約70%~80%、又は約80%~90%、又は約90%~99%の所定のモル重量パーセントを含み得る。
【0088】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、異なる標的遺伝子をモジュレートするsaRNAとともに投与される。非限定的な例には、アルブミン、インスリン、またはHNF4A遺伝子をモジュレートするsaRNAが含まれる。任意の遺伝子をモジュレートすることは、単一のsaRNAまたは2つ以上の異なるsaRNAの組み合わせを使用して達成することができる。本発明のC/EBPα-saRNAと共に投与することができるsaRNAの非限定的な例としては、以下のものが含まれる:2012年6月20日に出願された国際公開第WO2012/175958号に開示されている、アルブミン又はHNF4AをモジュレートするsaRNA、両方とも2011年10月10日に出願された国際公開第WO2012/046084号及び第WO2012/046085号に開示されている、インスリンをモジュレートするsaRNA、2006年11月13日に出願された米国特許第7,709,456号明細書、及び2010年4月23日に出願された米国特許出願公開第2010/0273863号明細書に開示されている、ヒトプロゲステロンレセプター、ヒト主要ヴォールトタンパク質(hMVP)、E-カドヘリン遺伝子、p53遺伝子、またはPTEN遺伝子をモジュレートするsaRNA、および2006年4月11日に出願された国際公開第WO2006/113246号に開示されている、p21遺伝子を標的とするsaRNA(これらに文献の各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0089】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、C/EBPβ遺伝子、すなわちC/EBPβ-siRNAの発現を阻害する低分子干渉RNA又はsiRNAとともに投与される。
【0090】
一実施形態において、C/EBPα-saRNAは、代謝、特に肝機能をレギュレートする1つまたは複数の薬物とともに投与される。非限定的な例において、本発明のC/EBPα-saRNAは、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、エゼチミブ、ナイアシン、PCSK9阻害剤、CETP阻害剤、クロフィブレート、フェノフィブリン、トコトリエノール、植物ステロール、胆汁酸捕捉剤、プロブコール、またはそれらの組み合わせのような、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール値を減少させる薬物とともに投与される。また、C/EBPα-saRNAは、オリビグ(Orvig)らの米国特許第6287586号明細書に開示されているバナジウムビグアニド複合体とともに投与されてもよい。別の例において、C/EBPα-saRNAは、ローデス(Rhodes)らの国際公開第WO201102838号(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に開示されている組成物とともに投与して、血清コレステロールを低下させることができる。この組成物は、PCSK9タンパク質に選択的に結合および阻害する抗原結合タンパク質;および細胞でのPCSK9遺伝子の発現を阻害するRNAエフェクター剤を含む。さらに別の例において、C/EBPα-saRNAは、ブルックス-ウィルソン(Brooks-Wilson)らの欧州特許第1854880号明細書(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に記載の、コレステロールレベルをモジュレートする、ABC1生物活性を有するABC1ポリペプチド、またはABC1活性を有するABC1ポリペプチドをコードする核酸とともに投与されてもよい。
【0091】
別の実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、メトホルミン、スルホニル尿素、非スルホニル尿素分泌促進剤、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グルカゴン様ペプチド-1類似体およびジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、またはそれらの組み合わせ等の、インスリン感受性を増加させるか又はII型糖尿病を治療する薬物と共に投与される。本発明のsaRNAと組み合わせて投与することができる他の肝保護剤は、アダムス(Adams)ら、Postgraduate Medical Journal、82巻、315~322頁(2006年)(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に開示されている。
【0092】
FGFR4阻害剤
線維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)遺伝子は、線維芽細胞成長因子に対するチロシンキナーゼおよび細胞表面レセプターであるFGFR4タンパク質をコードする。FGFR4タンパク質は、細胞増殖、分化、および遊走;脂質代謝;胆汁酸生合成;グルコース取り込み;およびリン酸のホメオスタシス、に関与する経路をレギュレートする。線維芽細胞成長因子19(FGF19)/FGFR4シグナル伝達複合体を介した異常なシグナル伝達は、マウスにおいて肝細胞癌(HCC)に関わることが示されており、ヒトで同様の役割をする可能性がある。
【0093】
本発明のC/EBPα-saRNAは、FGFR4レベルをダウンレギュレートするか、またはFGFR4レセプターシグナル伝達を阻害する1つまたは複数の治療薬と組み合わせて使用することができる。これらの併用は、限定されるものではないが、HCCなどの任意の癌の予防および/または治療に相乗効果を有する可能性がある。FGFR4レベルをダウンレギュレートするか、またはFGFR4シグナル伝達を阻害する治療剤は、FGFR4阻害剤であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、FGFR4阻害剤は、FGFR4遺伝子の発現を低減させる低分子阻害RNA(FGFR4-siRNA)である。siRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。FGFR4-siRNAの非限定的な例には、siRNA s5176(Thermo Fisher Scientific)が含まれる。
【0095】
いくつかの実施形態において、FGFR4阻害剤は、FGFR4アンタゴニスト抗体である。FGFR4抗体の非限定的な例には、U3-1784が含まれる。
いくつかの実施形態において、FGFR4阻害剤は、低分子阻害剤である。低分子FGFR4阻害剤の非限定的な例には、BGJ398(ノバルティス)、H3B-6527(H3 Biomedicine)、BLU-9931(BluePrint Medicines)、およびBLU-554(BluePrint Medicines)が含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態において、C/EBPα-saRNAと少なくとも1つのFGFR4阻害剤との併用療法を受けている患者は、HCCを有し得る。患者は最初にFGFR4阻害剤で治療され、その後C/EBPα-saRNAで治療されるか;最初にC/EBPα-saRNAで治療され、その後FGFR4阻害剤で治療されるか;またはC/EBPα-saRNAとFGFR4阻害剤の両方を含む組成物で治療され得る。
【0097】
C/EBPβ阻害剤
C/EBPβ(またはCEBPB)は、サイトカインとケモカインをコードする遺伝子の発現をモジュレートし、細胞周期進行とアポトーシスをレギュレートすることにより腫瘍形成を促進する。C/EBPβノックダウンは、転写因子ペルオキシソーム増殖因子-活性化レセプターγ(PPARγ)の発現を刺激し、ヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1)をCEBPAプロモータから除去することにより、CEBPA発現を活性化することが以前に示されている(Zuoら、Journal of Biological Chemistry、vol.281:7960(2006))。肝再生時にはC/EBPαとC/EBPβとの間に動的相互作用がある。C/EBPαのC/EBPβに対する比率が高いと、細胞周期および急性期応答遺伝子を抑制し、代謝遺伝子を活性化することによって細胞増殖が抑制されるが、C/EBPαのC/EBPβに対する比率が低いと逆の効果がある。しかしながら、肝腫瘍発生をレギュレートする潜在的ツールとしてのこれらの転写因子の役割は依然として不明である。
【0098】
本発明のC/EBPα-saRNAは、C/EBPβレベルをダウンレギュレートする1以上の治療剤と組み合わせて使用することができる。これらの併用は、限定されるものではないが、HCCなどの任意の癌の予防および/または治療に相乗効果を有する可能性がある。C/EBPβレベルをダウンレギュレートする治療剤は、C/EBPβ阻害剤であり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、C/EBPβ阻害剤は、C/EBPβ遺伝子の発現を低下させる低分子阻害RNA(C/EBPβ-siRNA)である。siRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、C/EBPβ阻害剤は、C/EBPβアンタゴニスト抗体である。
いくつかの実施形態において、C/EBPβ阻害剤は、低分子阻害剤である。
【0101】
いくつかの実施形態において、C/EBPα-saRNAと少なくとも1つのC/EBPβ阻害剤との併用療法を受けている患者はHCCを有する可能性がある。患者は最初にC/EBPβ阻害剤で治療され、その後C/EBPα-saRNAで治療されるか;最初にC/EBPα-saRNAで治療され、その後C/EBPβ阻害剤で治療されるか;またはC/EBPα-saRNAとC/EBPβ阻害剤の両方を含む組成物で治療され得る。
【0102】
免疫療法
いくつかの実施形態において、本出願のC/EBPα-saRNAおよび/または組成物は、外科的治療、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法などの別の療法、および/または他の任意の抗腫瘍治療法と組み合わせることができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「免疫療法」という用語は、対象の腫瘍細胞を破壊するために免疫応答を誘発および/または増強することができる任意の治療法を指す。
いくつかの実施形態において、本出願のC/EBPα-saRNAおよび/または組成物は、癌ワクチンおよび/または免疫チェックポイント阻害剤などの補完的な(complementary)免疫療法剤と組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、「ワクチン」という用語は、疾患の予防および/または治療のための免疫を生成するための組成物を指す。
【0104】
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4に対するアンタゴニスト剤、例えば抗体、抗体の機能的フラグメント、ポリペプチド、またはポリペプチドの機能的フラグメント、またはCTLA-4に高親和性で結合することができ、かつB7-1/2(CD80/86)とCTLA-4との相互作用を妨げるペプチドであり得る。一例において、CTLA-4アンタゴニストは、アンタゴニスト抗体、またはその機能的フラグメントである。適切な抗CTLA-4アンタゴニスト抗体には、限定されるものではないが、抗CTLA-4抗体、ヒト抗CTLA-4抗体、哺乳動物抗CTLA-4抗体、ヒト化抗CTLA-4抗体、モノクローナル抗CTLA-4抗体、ポリクローナル抗CTLA-4抗体、キメラ抗CTLA-4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ(完全にヒト化)、抗CD28抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA-4抗体フラグメント、重鎖抗CTLA-4フラグメント、軽鎖抗CTLA-4フラグメント、および米国特許第8748815号明細書;米国特許第8529902号明細書;米国特許第8318916号明細書;米国特許第8017114号明細書;米国特許第7744875号明細書;米国特許第7605238号明細書;米国特許第7465446号明細書;米国特許第7109003号明細書;米国特許第7132281号明細書;米国特許第6984720号明細書;米国特許第6682736号明細書;米国特許第6207156号明細書;米国特許第5977318号明細書;欧州特許第EP1212422B1号明細書;および米国特許出願公開第2002/0039581号明細書および米国特許出願公開第2002/086014号明細書;およびハービッツ(Hurwitz)ら、Proc.Natl.Acad.Aci.USA、1998年、第95巻、第17号、10067-10071頁に開示されている抗体が含まれる(これらの刊行物のそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0105】
さらなる抗CTLA-4アンタゴニスト剤には、限定されるものではないが、リガンドCD80/86に結合するCTLA-4の能力を破壊することができる任意の阻害剤が含まれる。
【0106】
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、PD-1経路を遮断するために使用される薬剤であって、拮抗ペプチド/抗体および可溶性PD-L1リガンドを含み得る(表5を参照のこと)。
【0107】
【表7】
【0108】
いくつかの実施形態において、本願のC/EBPα-saRNAおよび/または組成物は、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)療法などの遺伝子療法と組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、CRISPR療法は、遺伝子編集のためのCRISPR-Casシステムを含む任意の治療を指す。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、1つ以上の免疫チェックポイント阻害(ICB)剤と組み合わせて使用され得る。これらの併用は、限定されるものではないが、HCCなどの任意の癌の予防および/または治療に相乗効果を有する可能性がある。
【0110】
いくつかの実施形態において、ICBは低分子阻害RNA(siRNA)である。siRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。
いくつかの実施形態において、ICBは抗体である。
【0111】
いくつかの実施形態において、ICBは低分子である。
いくつかの実施形態において、ICBは表5のチェックポイント阻害剤中の任意の薬剤である。
【0112】
いくつかの実施形態において、ICBはペンブロルジマブ(Pembroluzimab)、トレメリムマブ、デュルバルマブまたはニボルマブである。
いくつかの実施形態において、C/EBPα-saRNAと少なくとも1つのICBの併用療法を受けている患者は、HCCを有し得る。患者は最初にICBで治療され、その後C/EBPα-saRNAで治療されるか;最初にC/EBPα-saRNAで治療され、その後ICBで治療されるか;またはC/EBPα-saRNAとICBの両方を含む組成物で治療され得る。
【0113】
高周波アブレーション(RFA)
高周波アブレーション(RFA)は、高周波交流によって生成され、電極チップを通して適用される熱を用いて腫瘍が破壊されるプロセスである。RFAは臨床診療におけるHCCの標準治療選択肢の1つであり、有意な生存利益と関連する。RFA後、腫瘍の局所凝固壊死は体内に残り、炎症誘発性シグナルを提供して、腫瘍に対する宿主適応免疫応答を誘発する可能性のある腫瘍抗原の供給源となる大量の細胞デブリの放出を誘導する。エビデンスは、腫瘍の熱によるアブレーションが自然免疫系および適応免疫系の両方のモジュレーションを誘導し、樹状細胞の効率的な負荷、増強された抗原提示および増幅された腫瘍特異的T細胞応答を介して抗腫瘍免疫応答を誘導することを示唆している。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、RFAプロセスと組み合わせて使用され得る。患者は、C/EBPα-saRNAでの治療前、治療中、または治療後にRFAを受けることができる。患者はさらに、PD-1阻害剤治療などの免疫療法を受けることができる。
【0115】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、C/EBP-αの機能の喪失は、腫瘍免疫微小環境において骨髄由来抑制細胞(MDSC)の増加をもたらし、その結果、マウスの癌モデルにおいて腫瘍増殖が増大した。MDSCは、MDSCが癌治療に対して腫瘍耐性を提供する可能性がある癌におけるものを含め、様々な疾患の促進において重要な役割を果たすものとして同定されている。本発明のC/EBPα-saRNAは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)などの様々な癌治療の有効性を改善するために使用され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明のC/EBPα-saRNAは、1つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用され得る。TKIは、さまざまな悪性腫瘍の標的治療に効果的である。チロシンキナーゼ阻害剤の非限定的な例には、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ダサチニブ、およびレンバチニブが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのTKIは、本発明のC/EBPα-saRNAでの治療後に投与される。
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのTKIは、本発明のC/EBPα-saRNAと同時に投与される。
【0118】
III.キットおよびデバイス
キット
本発明は、本発明の方法を便利におよび/または効果的に実行するための様々なキットを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数の治療を実行すること、および/または複数の実験を実行することを可能にするのに十分な量および/または数の成分を含むであろう。
【0119】
一実施形態において、本明細書に記載のsaRNAを含むキットは、増殖細胞と共に使用して効力を示しうる。
一実施形態において、本発明は、本発明のC/EBPα-saRNA、またはC/EBPα-saRNA、他の遺伝子をモジュレートするsaRNA、siRNA、もしくはmiRNAの組合せを含む、インビトロまたはインビボで遺伝子の発現をレギュレートするためのキットを提供する。キットは、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤をさらに含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝液、リピドイド、デンドリマー、または本明細書に開示される任意の送達剤を含み得る。遺伝子の非限定的な例としては、C/EBPα、C/EBPファミリーの他のメンバー、アルブミン遺伝子、アルファフェクトプロテイン遺伝子、肝特異的因子遺伝子、成長因子、核因子遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、多能性因子遺伝子が含まれる。
【0120】
1つの非限定的な例において、緩衝液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩および/またはEDTAを含み得る。別の非限定的な例において、緩衝液は、生理食塩水、2mMカルシウムを含む生理食塩水、5%スクロース、2mMカルシウムを含む5%スクロース、5%マンニトール、2mMカルシウムを含む5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2mMカルシウムとマンノースとを含む塩化ナトリウム(米国特許出願公開第2012/0258046号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)を含み得る。さらに別の非限定的な例において、緩衝液を沈殿させるか、または凍結乾燥することができる。各成分の量は、一貫性して再現性のある高濃度の生理食塩水または単純な緩衝液処方物が得られるように変更することができる。成分はまた、ある期間にわたりおよび/またはさまざまな条件下で緩衝溶液中のsaRNAの安定性を増加させるために変更することができる。
【0121】
別の実施形態において、本発明は、細胞に導入したときに細胞増殖を阻害するのに有効な量で提供される本発明のC/EBPα-saRNAと、任意選択的に標的細胞の増殖をさらにレギュレートするためのsiRNAおよびmiRNAと、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞増殖をレギュレートするためのキットを提供する。
【0122】
別の実施形態において、本発明は、本発明のsaRNA分子と、任意選択的にLDL低減薬剤と、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞のLDLレベルを低減するためのキットを提供する。
【0123】
別の実施形態において、本発明は、本発明のC/EBPα-saRNAと、任意選択的にsiRNA、eRNA、およびlncRNAと、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞のmiRNA発現レベルをレギュレートするためのキットを提供する。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、本発明のC/EBPα-saRNAおよび少なくとも1つの他の活性成分または治療法を含む併用療法のためのキットを提供する。
デバイス
本発明は、本発明のC/EBPα-saRNAを組み込むことができるデバイスを提供する。これらのデバイスは、必要とする対象、たとえばヒト患者に即時に送達するために利用可能な安定な製剤を含有する。そのような対象の非限定的な例としては、過増殖障害、たとえば、癌、腫瘍、または肝硬変、および代謝障害(たとえば、NAFLD、肥満、高LDLコレステロール、またはII型糖尿病)を有する対象が含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態において、デバイスは、本発明のC/EBPα-saRNAおよび少なくとも1つの他の活性成分または治療法を含む併用療法の成分を含む。
デバイスの非限定的な例には、ポンプ、カテーテル、針、経真皮パッチ、加圧経鼻送達デバイス、イオントフォレーシスデバイス、多層マイクロ流体デバイスが含まれる。デバイスは、単回投与、複数回投与、または分割投与レジメンに従って、本発明のC/EBPα-saRNAを送達するために使用することができる。デバイスは、生体組織を横切って、真皮内に、皮下に、または筋肉内に本発明のC/EBPα-saRNAを送達するために使用することができる。オリゴヌクレオチドの送達に好適なデバイスのより多くの例は、2012年12月14日出願の国際公開第WO2013/090648号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0126】
定義
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語および句の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分の用語の使用と本節に提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、この節の定義を優先するものとする。
【0127】
約:本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された値の+/-10%を意味する。
組み合わせて投与される:本明細書で使用される場合、「組み合わせて投与される」または「組み合わせ投与」という用語は、2つ以上の薬剤、例えばsaRNAを対象に同時にまたは患者に対する各薬剤の作用がオーバーラップしうるインターバル内で投与することを意味する。いくつかの実施形態において、それらは、互いに約60、30、15、10、5、または1分以内に投与される。いくつかの実施形態において、薬剤の投与は、組み合わせ(例えば、相乗的)効果が達成されるように、互いに十分に接近した時間で行われる。
【0128】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、1つまたは複数の「アミノ酸」という用語は、すべての天然に存在するL-アルファ-アミノ酸を指す。アミノ酸は、次のように一文字または三文字の表記により同定される:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リシン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)、メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)、ここでは最初にアミノ酸、続いてカッコ内にそれぞれ三文字コードおよび一文字コードが列記される。
【0129】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態において、「動物」は、任意の発生段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態において、「動物」は、任意の発生段階にある非ヒト動物を指す。特定の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物は、限定されるものではないが、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、および虫を含む。いくつかの実施形態において、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子工学操作動物、またはクローンである。
【0130】
およそ:本明細書で使用される場合、「おおよそ」または「約」という用語は、関心のある1つまたは複数の値に適用される場合、記載された参照値と同様の値を指す。特定の実施形態において、「おおよそ」または「約」という用語は、特に明記されていない限りまたは特に文脈から自明でない限り、明記された参照値のいずれの方向にも(それよりも大きい方向にも小さい方向にも)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれよりも少ない範囲内に入る値の範囲を指す(かかる数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0131】
会合:本明細書で用いられる場合、「会合(associated with)」、「コンジュゲート(conjugated)」、「結合(linked)」、「装着(attached)」、および「テザー連結(tethered)」という用語は、2つ以上の部分に対して用いられる場合、直接にまたはリンク剤として機能する1つ以上の追加の部分を介して、互いに物理的に会合または接続されて、構造が用いられる条件下で、たとえば、生理学的条件下で、これらの部分が、物理的に会合された状態を維持するように、十分に安定な構造を形成することを意味する。「会合(association)」は、厳密に直接の共有化学結合を介する必要はない。それは、イオン結合、水素結合、または「会合」要素が物理的会合を維持するように十分に安定なハイブリダイゼーションに基づく結合をも示唆しうる。
【0132】
二機能性:本明細書で使用される場合、「二機能性」という用語は、少なくとも2つの機能が可能であるか、またはそれを維持する任意の物質、分子または部分を指す。機能は、同じ結果または異なる結果に影響を与える可能性がある。機能を生成する構造は同じでも異なっていてもよい。
【0133】
生体適合性:本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、生細胞、組織、傷害のリスクをほとんどまたはまったく示さない器官もしくは系、毒性、または免疫系による拒絶に適合しうることを意味する。
【0134】
生分解性:本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、生物の作用によって無害な産物に分解することができることを意味する。
生物学的活性:本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な」という句は、生体系および/または生物において活性を有する任意の物質の特徴を指す。例えば、生物に投与されたときにその生物に生物学的影響を与える物質は、生物学的に活性であると見なされる。特定の実施形態において、本発明のsaRNAは、saRNAの一部であっても生物学的に活性であるか、または生物学的に関連すると考えられる活性を模倣する場合、生物学的に活性であると見なされ得る。
【0135】
癌:本明細書で使用される場合、個体における「癌」という用語は、癌を引き起こす細胞に典型的な特性、たとえば、無制御な増殖、不死、転移能、速い成長および増殖の速度、ならびに特徴的なモルフォロジー特性を有する細胞の存在を指す。多くの場合、癌細胞は腫瘍の形態であるが、そのような細胞は個体内に単独で存在する場合もあれば、白血病細胞などの独立した細胞として血流を循環する場合もある。
【0136】
細胞成長:本明細書で使用される場合、「細胞成長」という用語は、細胞複製(すなわち増殖)により生じる細胞数の増大に主に関連付けられ、その速度は細胞死(たとえば、アポトーシスまたは壊死による)の速度よりも大きく、細胞集団のサイズの増加をもたらすが、特定の状況下では、その成長のごく一部は、個別細胞の細胞サイズまたは細胞質体積の増加にも起因する。したがって、細胞増殖を阻害する薬剤は、増殖を阻害するか、細胞死を刺激するか、またはその両方によってそのようにすることができ、その結果、これらの2つの対立するプロセス間の平衡が変化する。
【0137】
細胞型:本明細書で使用される場合、「細胞型」という用語は、所与の起源(たとえば、組織、器官)の細胞、または所与の分化状態の細胞、または所与の病理もしくは遺伝子構成に関連付けられる細胞を意味する。
【0138】
染色体:本明細書で使用される場合、「染色体」という用語は、細胞に見られるDNAおよびタンパク質の組織化された構造を指す。
相補的:本明細書で使用される場合、核酸に関する「相補的」という用語は、ヌクレオチド間または核酸間のハイブリダイゼーションまたは塩基対合を意味し、たとえば、二本鎖DNA分子の2つの鎖間またはオリゴヌクレオチドプローブと標的との間などは相補的である。
【0139】
状態:本明細書で使用される場合、「状態(condition)」という用語は、任意の細胞、器官、器官系または生物の状態を指す。状態は、疾患の状態、または単にエンティティの生理学的症状または状況を反映している場合がある。状態は、疾患の肉眼的提示などの表現型状態、または状態に関連する基礎となる遺伝子またはタンパク質発現プロファイルなどの遺伝子型状態として特徴付けられ得る。状態は良性または悪性であり得る。
【0140】
制御放出:本明細書で使用される場合、「制御放出」という用語は、治療結果をもたらすために特定の放出パターンに一致する医薬組成物または化合物の放出プロファイルを指す。
【0141】
細胞静止:本明細書で使用される場合、「細胞静止」は、細胞(たとえば、哺乳動物細胞(たとえば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、菌類、原生動物、寄生生物、プリオン、またはそれらの組合せの成長、分裂、または増殖の阻害、低減、抑制を指す。
【0142】
細胞傷害性:本明細書で使用される場合、「細胞傷害性」は、細胞(たとえば、哺乳動物細胞(たとえば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、菌類、原生動物、寄生生物、プリオン、またはそれらの組合せを死滅させることまたはそれらに有害作用、毒性作用、もしくは致命的作用を引き起こすことを指す。
【0143】
送達:本明細書で使用される場合、「送達」は、化合物、物質、エンティティ、部分、カーゴ(cargo)またはペイロード(payload)を送達する行為または方法を指す。
【0144】
送達剤:本明細書で使用される場合、「送達剤」は、標的細胞への本発明のsaRNAのインビボ送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を指す。
不安定化:本明細書で使用される場合、「不安定」、「不安定化する」、または「不安定化領域」という用語は、同じ領域または分子の出発点、野生型または天然型よりも安定性が低い領域または分子を意味する。
【0145】
検出可能な標識:本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」は、X線撮影、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などを含む当技術分野で知られている方法によって容易に検出される別のエンティティへの付着、組み込み、または会合が行われる1つまたは複数のマーカー、シグナル、または部分を指す。検出可能な標識としては、放射性同位体、発蛍光団、発色団、酵素、染料、金属イオン、リガンド(たとえば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびハプテン)、量子ドットなどが含まれる。検出可能な標識は、ペプチド、タンパク質、またはポリヌクレオチド、たとえば、本明細書に開示されるsaRNAの任意の位置に配置できる。それらは、場合によっては、N末端もしくはC末端または5’末端もしくは3’末端に位置するアミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはポリヌクレオチド中に存在し得る。
【0146】
カプセル化:本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、密封、包囲、または収容を意味する。
工学操作:本明細書で使用される場合、本発明の実施形態は、構造的か化学的かにかかわらず、出発点、野生型、または天然型の分子と異なる特徴または性質を有するように設計される場合、「工学操作(engineered)」される。
【0147】
均等な対象:本明細書で使用される場合、「均等な対象(equivalent subject)」は、たとえば、類似の年齢、性別、および健康の対象、たとえば、肝臓の健康もしくは癌の病期の対象、または本発明に係る治療を行う前の同一の対象であり得る。均等な対象は、本発明によるsaRNAによる治療を受けないという点で「未治療」である。しかしながら、本発明のsaRNAで治療される対象が同一のまたは均等な従来の抗癌治療を受けるのであれば、従来の抗癌治療を受けてもよい。
【0148】
エキソソーム:本明細書で使用される場合、「エキソソーム」は、哺乳動物細胞によって分泌されるベシクルである。
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下のイベントのうちの1つまたは複数を指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(たとえば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(たとえば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる)、(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳、ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0149】
特徴:本明細書で使用される場合、「特徴(feature)」は、特性、性質、または特有の要素を指す。
製剤:本明細書で使用される場合、「製剤」は、少なくとも本発明のsaRNAおよび送達剤を含む。
【0150】
フラグメント:本明細書で使用される「フラグメント」は、一部を指す。例えば、タンパク質のフラグメントは、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化することによって得られるポリペプチドを含み得る。
【0151】
機能性:本明細書で使用される場合、「機能性」生体分子は、それが特徴づけられる性質および/または活性を示す形態の生体分子である。
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体を産生するために必要な制御配列と、ほとんどの場合コード配列と、を含む核酸配列を指す。しかしながら、遺伝子は翻訳されなくてもよく、代わりに調節または構造RNA分子をコードする場合がある。
【0152】
遺伝子は、植物、菌類、動物、細菌ゲノムもしくはエピソーム、真核、核、もしくはプラスミドのDNA、cDNA、ウイルスDNA、または化学合成DNAを含めて、全体または一部が当技術分野で公知の任意の起源に由来し得る。遺伝子は、発現産物の生物学的活性もしくは化学構造、発現速度、または発現制御の方法に影響を及ぼし得る1つ以上の修飾をコード領域または非翻訳領域のいずれかに含有しうる。このような修飾には、限定されるものではないが、1つまたは複数のヌクレオチドの突然変異、挿入、欠失、および置換が含まれる。遺伝子は非中断コード配列を構成しうるか、または適切なスプライス部位により結合された1つ以上のイントロンを含み得る。
【0153】
遺伝子発現:本明細書で使用される場合、「遺伝子発現」という用語は、核酸配列が転写に成功し、ほとんどの場合、翻訳されてタンパク質またはペプチドを生成するプロセスを指す。明確にするために、「遺伝子発現」の測定に言及する場合、測定は転写の核酸産物、たとえばRNAもしくはmRNAまたは翻訳のアミノ酸産物、たとえばポリペプチドもしくはペプチドの測定であり得ることを意味すると理解すべきである。RNA、mRNA、ポリペプチド、およびペプチドの量またはレベルを測定する方法は、当技術分野において周知である。
【0154】
ゲノム:「ゲノム」という用語は、核DNA成分、染色体または染色体外のDNA、ならびに細胞質ドメイン(例えば、ミトコンドリアDNA)を含む、生物の全DNA補体を含むことを意図している。
【0155】
相同性:本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、たとえば、核酸分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一または類似である場合、互いに「相同」であると見なされる。「相同」という用語は、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列)間の比較を指す。本発明によれば、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに関して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、さらには99%であれば、相同であると見なされる。いくつかの実施形態において、相同ポリヌクレオチド配列は、ユニークに特定された少なくとも4~5アミノ酸のストレッチをコードする能力により特徴付けられる。60ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチド配列では、相同性は、ユニークに特定された少なくとも4~5アミノ酸のストレッチをコードする能力により決定される。本発明によれば、2つのタンパク質配列は、タンパク質が少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに関して少なくとも約50%、60%、70%、80%、または90%同一であれば、相同であると見なされる。
【0156】
「過増殖細胞」という用語は、均等な健常細胞(「対照」と称されることがある)の増殖速度と比較して異常に高い速度で増殖している任意の細胞を指し得る。「均等な健常」細胞とは、細胞の正常な健常カウンターパートである。したがって、それは、同一のタイプの細胞、たとえば、コンパレータ細胞と同一の機能を行う、同一の器官由来の細胞である。たとえば、過増殖肝細胞の増殖は健常肝細胞を基準にして評価されるべきであり、一方、過増殖前立腺細胞の増殖は健常前立腺細胞を基準にして評価されるべきである。
【0157】
増殖の「異常に高い」速度とは、過増殖細胞の増殖速度が均等な健常(非過増殖)細胞の増殖速度と比較して、少なくとも20、30、40%、または少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、または少なくとも80%だけ増加することを意味する。増殖の「異常に高い」速度とはまた、均等な健常細胞の増殖速度と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、または少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、または少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する速度を意味する。
【0158】
本明細書で使用される「過増殖細胞」という用語は、ほとんどの細胞と比較してより高速で自然に増殖するが、健康な細胞である細胞を指すものではない。生涯を通じて絶えず分裂することが知られている細胞の例は、皮膚細胞、胃腸管の細胞、血液細胞、骨髄細胞である。しかしながら、そのような細胞がそれらのカウンターパートよりも速い速度で増殖する場合、それらは過増殖である。
【0159】
過増殖障害:本明細書で使用される場合、「過増殖障害(hyperproliferative disorder)」は、上記で定義された過増殖細胞が関与する任意の障害であり得る。過増殖障害の例としては、新生物障害(たとえば癌)、乾癬性関節炎、関節リウマチ、胃過増殖障害(たとえば炎症性腸疾患)、皮膚障害(たとえば乾癬、ライター症候群、毛孔性紅色粃糠疹、および角化障害の過増殖異型障害)が含まれる。
【0160】
当業者は、過増殖細胞を同定する方法を完全に熟知している。動物内の過増殖細胞の存在は、X線、MRI、CTスキャンなどのスキャンを用いて同定することができる。MTT、XTT、MTSまたはWST-1アッセイなどの細胞増殖アッセイを使用してインビトロでサンプルを培養することにより、過増殖細胞を同定することもでき、または細胞の増殖をアッセイすることもできる。インビトロでの細胞増殖は、フローサイトメトリーを使用して決定することもできる。
【0161】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、たとえば、オリゴヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。たとえば、2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、最適比較目的で2つの配列をアライメントすることにより、行うことが可能である(たとえば、最適アライメントになるように第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することが可能であり、比較目的では異なる配列を無視することが可能である)。特定の実施形態において、比較目的でアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次に、対応するヌクレオチド位置でヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同一のヌクレオチドにより占有される場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列が最適アライメントになるように導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、レスク,A.M.(Lesk,A.M.)編、計算分子生物学(Computational Molecular Biology)、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年、スミス,D.W.(Smith,D.W.)編、バイオコンピューティング:インフォマティクスとゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク、1993年、フォン・ヘインジ,G(von Heinje,G)著、分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1987年、グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編、配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data)、第I部、フマナ・プレス(Humana Press)、ニュージャージ、1994年、ならびにグリプスコウ,M.(Gribskov,M.)およびデベロー,J.(Devereux,J.)編、配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Mストックトン・プレス(M Stockton Press)、ニューヨーク、1991年(それらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような方法を用いて決定可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているマイヤー(Meyers)およびミラー(Miller)のアルゴリズム(CABIOS、1989年、第4巻、p.11~17)により、決定可能である。代替的に、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムにより、決定可能である。配列間の同一性パーセントを決定するのに一般に利用される方法は、限定されるものではないが、カリロ,H.(Carillo,H.)およびリップマン,D.(Lipman,D.)著、SIAM J.Applied Math.、1988年、第48巻、p.1073(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものを含む。同一性を決定するための技術は、公的に入手可能なコンピュータプログラムの形態で体系化されている。2つの配列間の相同性を決定する例示的コンピュータソフトウェアは、限定されるものではないが、デベロー,J.(Devereux,J.)ら著、「GCGプログラムパッケージ(GCG program package)」、Nucleic Acids Research、1984年、第12巻、第1号、p.387、アルツシュール,S.F.(Altschul,S.F.)ら著、「BLASTP、BLASTN、およびFASTA」、J.Molec.Biol.、1990年、第215巻、p.403を含む。
【0162】
遺伝子の発現を阻害する:本明細書で使用される場合、「遺伝子の発現を阻害する」という表現は、遺伝子の発現産物の量の減少を引き起こすことを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されるRNA(たとえば、mRNA)または遺伝子から転写されるmRNAから翻訳されるポリペプチドであり得る。典型的には、mRNAのレベルの低減は、そこから翻訳されるポリペプチドのレベルの低減をもたらす。発現のレベルは、mRNAまたはタンパク質を測定するための標準的な技術を使用して決定することができる。
【0163】
インビトロ:本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、生物(たとえば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工環境下、たとえば、試験管または反応容器、細胞培養物、ペトリ皿などで起こるイベントを意味する。
【0164】
インビボ:本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、または微生物、あるいはそれらの細胞またはそれらの組織)内で発生するイベントを指す。
【0165】
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された(isolated)」という用語は、一体化された成分(自然環境または実験現場のいずれであるかにかかわらず)の少なくとも一部から分離された物質または要素を指す。単離された物質は、一体化されていた物質に対してさまざまなレベルの純度を有し得る。単離された物質および/または実体は、それが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはより多くから分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の純度である。本明細書で使用される場合、物質は、それが他の成分を実質的に含まないのであれば、「純粋」である。実質的に単離された:「実質的に単離された」とは、化合物が、それが形成または検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、たとえば、本開示の化合物が富化された組成物を含み得る。実質的な分離は、本開示に係る化合物またはその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%を含有する組成物を含み得る。化合物およびそれらの塩を単離するための方法は、当技術分野では慣用されているものである。
【0166】
標識:「標識」という用語は、物質、化合物、または対象物が検出可能であるように、対象物に組み込まれる物質または化合物を指す。
リンカー:本明細書で使用される場合、リンカーとは原子団(たとえば、10~1,000原子)を指し、限定されるものではないが、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、イミンなどの原子または基で構成可能である。リンカーは、第1の末端を修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドの核酸塩基または糖部分に、かつ第2の末端を検出可能剤または治療剤などのペイロードに装着可能である。リンカーは、核酸配列への組み込みを妨害しない十分な長さであり得る。リンカーは、本明細書に記載されるように、saRHAコンジュゲートを形成するため、ならびにペイロードを投与するためなど、任意の有用な目的のために使用することができる。リンカーに組込み可能な化学基の例としては、限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルが含まれ、それらは、それぞれ本明細書に記載されるように任意選択的に置換可能である。リンカーの例には、限定されるものではないが、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(たとえば、エチレンまたはプロピレングリコールモノマー単位、たとえば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、またはテトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマー、ならびにそれらの誘導体が含まれる。他の例は、限定されるものではないが、たとえばジスルフィド結合(-S-S-)またはアゾ結合(-N=N-)などの切断可能な部分をリンカー中に含んで還元剤または光分解を用いて切断可能である。選択的に切断可能な結合の非限定的な例には、たとえばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、もしくは他の還元剤および/または光分解を用いて切断可能なアミド結合、さらにはたとえば酸加水分解もしくは塩基加水分解により切断可能なエステル結合が含まれる。
【0167】
転移:本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、癌が原発腫瘍として最初に発生した場所から体内の離れた位置に広がるプロセスを意味する。転移はまた、原発腫瘍の拡大に起因する癌も指す。たとえば、乳癌に罹患した人は、自身のリンパ系、肝臓、骨、または肺に転移を示すことがある。
【0168】
修飾:本明細書で使用される場合、「修飾された」とは、本発明の分子の変化した状態または構造を指す。分子は、化学的、構造的、および機能的なものを含む多くの方法で修飾することができる。一実施形態において、本発明のsaRNA分子は、非天然ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの導入によって修飾される。
【0169】
天然に存在する:本明細書で使用される場合、「天然に存在する」とは、人為的な支援を受けることなく天然に存在することを意味する。
核酸:本明細書で使用される「核酸」という用語は、1つまたは複数のヌクレオチド、すなわち、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはその両方から構成される分子を指す。この用語は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドのモノマーおよびポリマーを含み、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドは、ポリマーの場合、5’→3’結合を介して結合一体化される。リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドポリマーは、一本鎖または二本鎖であり得る。しかしながら、結合は当技術分野で公知の結合のいずれかを含むことができ、たとえば、核酸は5’→3’結合を含む。ヌクレオチドは、天然に存在する場合もあれば、天然に存在する塩基対と塩基対関係を形成することができる合成的に生成された類似体であり得る。塩基対合関係を形成可能な天然に存在しない塩基の例は、限定されるものではないが、アザおよびデアザピリミジンアナログ、アザおよびデアザプリンアナログ、ならびにピリミジン環の炭素原子および窒素原子の1つ以上がヘテロ原子、たとえば、酸素、硫黄、セレン、リンなどにより置換された他のヘテロ環塩基アナログを含み得る。
【0170】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」は、治療を求めているかまたは必要とする可能性がある、治療を必要とする、治療を受けている、治療を受ける予定である対象、または特定の疾患または状態について訓練を受けた専門家の管理下にある対象を指す。
【0171】
ペプチド:本明細書で使用される場合、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長である。
【0172】
薬学的に許容可能:「薬学的に許容可能」という語句は、本明細書においては、妥当な便益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
【0173】
薬学的に許容可能な賦形剤:本明細書で使用される「薬学的に許容可能な賦形剤」という語句は、本明細書に記載の化合物以外で患者において実質的に非毒性かつ非炎症性の性質を有する任意の成分を意味する(たとえば、活性化合物の懸濁または溶解が可能なビヒクル)。賦形剤としては、たとえば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、フレーバー、香料、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷用インク、収着剤、懸濁化剤または分散剤、甘味剤、および水和水が含まれる。例示的な賦形剤には、限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(2塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリコール酸デンプン、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトール、が含まれる。
【0174】
薬学的に許容可能な塩:本開示はまた、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」は、既存の酸部分または塩基部分をその塩形に変換することにより(たとえば、遊離塩基基と好適な有機酸とを反応させることにより)親化合物が修飾された開示化合物の誘導体を指す。薬学的に許容可能な塩の例には、限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸性塩、カルボン酸などの酸残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、さらには非毒性のアンモニウム、第4級アンモニウム、およびアミンカチオン、たとえば、限定されるものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが含まれる。本開示の薬学的に許容可能な塩は、親化合物の従来型の非毒性塩、たとえば、非毒性の無機酸または有機酸から生成されたものを含む。本開示の薬学的に許容可能な塩は、塩基部分または酸部分を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成可能である。一般に、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中または両者の混合物中で、これらの化合物の遊離の酸形または塩基形と化学量論量の適切な塩基または酸とを反応させることにより、調製可能であり、一般的には、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company)、ペンシルバニア州イーストン、1985年、p.1418、P.H.スタール(P.H.Stahl)およびC.G.ワーマス(C.G.Wermuth)編、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、ワイリー-VCH(Wiley-VCH)、2008年、ならびにベルジェ(Berge)ら著、Journal of Pharmaceutical Science、1977年、第66巻、p.1~19(それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされる。
【0175】
薬学的に許容可能な溶媒和物:本明細書で使用される「薬学的に許容可能な溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている本発明の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される投与量で生理学的に許容できる。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液から結晶化、再結晶化、または沈殿により調製することができる。適切な溶媒の例は、エタノール、水(たとえば、一、二、および三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、エチルアセテート、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、ベンジルベンゾエートなどである。水が溶媒である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
【0176】
薬理学的効果:本明細書で使用される場合、「薬理学的効果」は、生物または系が外因性薬剤と接触または曝露された後に発生する、生物または系における測定可能な生物学的現象である。薬理学的効果は、治療上有効なアウトカム、たとえば、1つ以上の症状の治療や改善、疾患、障害、病態、または感染の診断、予防、およびそれらの発症の遅延をもたらしうる。このような生物学的現象の測定は、定量的、定性的、または他の生物学的現象に対して相対的であり得る。定量的測定は統計的に有意であり得る。定性的測定は、程度または種類であり得るとともに、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを超えて異なり得る。それらは、存在するまたは不在である、より良好であるかまたはより悪い、より多いかまたはより少ない、として観測可能である。外因性薬剤は、薬理学的効果に言及する場合、全体的または部分的に、生物または系に対して外来性である薬剤である。たとえば、野生型のバイオ分子への修飾は、構造的であろうと化学的であろうと、外因性の薬剤を生成するであろう。同様に、生物または系では天然に見いだされない化合物、分子、または物質への野生型分子の組込みまたはそれらと野生型分子との組合せも外因性薬剤を生じるであろう。本発明のsaRNAは外因性薬剤を含む。薬理学的効果の例としては、限定されるものではないが、細胞数の変化、たとえば、好中球、網状赤血球、顆粒球、赤血球(赤血球)、巨核球、血小板、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、または網状赤血球の増加または減少が含まれる。薬理学的効果にはまた、血液化学、pH、ヘモグロビン、ヘマトクリットの変化、酵素、たとえば限定されるものではないが肝酵素ASTおよびALTのレベルの変化、脂質プロファイル、電解質、代謝マーカー、ホルモン、または当業者に公知の他のマーカーもしくはプロファイルの変化が含まれる。
【0177】
物理化学的:本明細書で使用される場合、「物理化学的」とは、物理的および/または化学的な性質の、またはそれに関連することを意味する。
予防:本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、感染、疾患、障害、および/もしくは病態の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、特定の感染、疾患、障害、および/もしくは病態の1つ以上の症状、特徴、もしくは臨床病変の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、特定の感染、疾患、障害、および/もしくは病態の1つ以上の症状、特徴、もしくは病変の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、感染、特定の疾患、障害、および/もしくは病態からの進行を部分的にもしくは完全に遅延すること、ならびに/または感染、疾患、障害、および/もしくは病態に関連付けられる病理発生のリスクを減少させることを意味する。
【0178】
プロドラッグ:本開示はまた、本明細書に記載の化合物のプロドラッグを含む。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、物質、分子、または要素が化学的または物理的な変化を受けたときに治療剤として作用すると見なされる形態をとる任意の物質、分子、または要素を指す。プロドラッグは、共有結合されていても、何らかの方法で捕獲されていてもよく、哺乳動物対象への投与前、投与時、または投与後、活性薬剤部分を放出するかまたはそれに変換される。プロドラッグは、慣例的な操作によりまたはインビボで修飾が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することにより、調製することができる。プロドラッグには、ヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基が、哺乳動物対象に投与されたときにそれぞれ遊離のヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基を生成するように切断される任意の基に結合されている化合物が含まれる。プロドラッグの調製および使用は、T.ヒグチ(T.Higuchi)およびV.ステラ(V.Stella)著、Pro-drugs as Novel Delivery Systems、A.C.S.Symposium Series、第14巻、ならびにエドワードB.ロッシュ(Edward B.Roche)編、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Associationおよびパーガモンプレス(Pergamon Press)、1987年(両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる)で考察されている。
【0179】
予後予測:本明細書で使用される場合、「予後予測(prognosing)」という用語は、特定の生物学的イベントが将来起こるであろうことまたは起こる可能性が非常に高いことの陳述または主張を意味する。
【0180】
進行:本明細書で使用される場合、「進行(progression)」または「癌の進行」という用語は、疾患もしくは病態のまたはそれらに向かう促進もしくは悪化を意味する。
【0181】
増殖:本明細書で使用される場合、「増殖する」という用語は、成長、拡大または増加すること、または急速に成長、拡大または増加させることを意味する。「増殖性」とは、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖」とは、増殖性に対向する、または不敵である性質を有することを意味する。
【0182】
タンパク質:「タンパク質」は、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基のポリマーを意味する。本明細書で使用されるこの用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。しかしながら、通常、タンパク質は少なくとも50アミノ酸長であろう。場合によっては、コードされたタンパク質は約50アミノ酸よりも小さい。この場合、ポリペプチドはペプチドと称される。タンパク質が短いペプチドの場合、少なくとも約10アミノ酸残基長であろう。タンパク質は、天然に存在するもの、組換えられたもの、合成されたもの、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。タンパク質は、天然に存在するタンパク質またはペプチドのフラグメントを含む場合もある。タンパク質は、単一分子であっても、多分子複合体であってもよい。タンパク質という用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用され得る。
【0183】
タンパク質発現:「タンパク質発現」という用語は、検出可能なレベルのアミノ酸配列またはタンパク質が発現されるように、核酸配列が翻訳を受けるプロセスを指す。
精製された:本明細書で使用される場合、「精製する」、「精製された」、「精製」は、望ましくない成分、材料汚染、混合または不完全性から実質的に純粋または清澄にすることを意味する。
【0184】
退縮:本明細書で使用される場合、「退縮(regression)」または「退縮の程度」という用語は、表現型または遺伝子型のいずれかでの、癌の進行の逆転を指す。癌の進行の遅延または停止は、退縮と見なされ得る。
【0185】
サンプル:本明細書で使用される場合、「サンプル」または「生物学的サンプル」という用語は、その組織、細胞、または構成部分(たとえば、限定されるものではないが、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血、尿、膣液、および精液を含む体液)の一部を意味する。サンプルは、たとえば、限定されるものではないが、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、外側皮膚切片、呼吸管、腸管、および泌尿生殖管、涙液、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官を含む、全生物体、またはその組織、細胞、もしくは構成部分のサブセット、またはそれらの画分もしくは一部分から調製されるホモジネート、ライセート、または抽出物をさらに含みうる。サンプルはさらに、タンパク質分子または核酸分子のような細胞成分を含有している可能性がある媒体、たとえば、栄養ブロスまたはゲルを指す。
【0186】
シグナル配列:本明細書で使用される場合、「シグナル配列」という句は、タンパク質の輸送または局在化を指示することができる配列を指す。
単回ユニット用量:本明細書で使用される場合、「単回ユニット用量(single unit dose)」は、1回の用量/一度に/単一の経路/単一の接触点、すなわち単回の投与イベントで投与される任意の治療薬の用量である。
【0187】
類似性:本明細書で使用される場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、たとえば、オリゴヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。ポリマー分子の相互のパーセント類似性の計算は、パーセント同一性の計算と同じ方法で実行することができるが、例外としてパーセント類似性の計算は、当技術分野で理解されているように保存的置換を考慮に入れる。
【0188】
分割用量:本明細書で使用される場合、「分割用量」は、単回ユニット用量または全一日用量を2つ以上に分割した用量のことである。
安定:本明細書で使用される場合、「安定」は、反応混合物から有用な純度への単離に耐えるのに十分なロバスト性のある、好ましくは、有効な治療剤への製剤化が可能である化合物を指す。
【0189】
安定化された:本明細書で使用される場合、「安定化する」「安定化された」、「安定化領域」という用語は、安定にすることまたは安定になることを意味する。
対象:本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、たとえば、実験、診断、予防、および/または治療の目的で、本発明に係る組成物が投与されうる任意の生物を指す。典型的な対象には、動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物、ヒトなど哺乳動物)および/または植物が含まれる。
【0190】
実質的に:本明細書で使用する場合、「実質的に(substantially)」という用語は、対象の特徴または性質の全体またはほぼ全体の範囲または程度を示す定性的状態を指す。生物学の分野の当業者は、生物学的および化学的な現象が、最終状態に達することおよび/または完全に進行することまたは絶対的結果を達成もしくは回避することは、あっても稀であるものと理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性の欠如の可能性を取り込むように本明細書において用いられる。
【0191】
実質的に等しい:用量間の時間差に関連して本明細書で使用される場合、この用語は、プラス/マイナス2%を意味する。
実質的に同時に:複数の用量に関連して本明細書で使用される場合、この用語は、2秒以内を意味する。
【0192】
に罹患している:疾患、障害、および/または病態に「罹患している」個体は、疾患、障害、および/または病態と診断されているまたはそれらの1つ以上の症状を呈する。
に罹患しやすい:疾患、障害、および/または病態「に罹患しやすい(susceptible to)」個体は、疾患、障害、および/または病態の症状で診断されていないか、かつ/またはその症状を呈していなくてもよいが、疾患またはその症状を発症する傾向を有する。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または病態(例えば、癌)に罹患しやすい個体は、以下のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る:(1)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子突然変異、(2)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子多型、(3)疾患、障害、および/または病態に関連付けられるタンパク質および/または核酸の発現および/または活性の増大および/または低減、(4)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる習性および/または生活習慣、(5)疾患、障害、および/または病態の家族歴、ならびに(6)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる微生物への暴露および/またはその感染。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または病態(例えば、癌)に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生するであろう。いくつかの実施形態において、疾患、障害、および/または病態(例えば、癌)に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生しないであろう。
【0193】
持続放出:本明細書で使用される場合、「持続放出」という用語は、特定の期間にわたり放出速度に適合する医薬組成物または化合物の放出プロファイルを指す。
合成:「合成」という用語は、人間の手によって製造、準備、および/または製造されることを意味する。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたは他の分子の合成は、化学的または酵素的であり得る。
【0194】
標的細胞:本明細書で使用される場合、「標的細胞」は、目的の任意の1つまたは複数の細胞を指す。細胞は、インビトロ、インビボ、インサイチュ、または生物の組織もしくは器官に見出され得る。生物は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、そして最も好ましくは患者であり得る。
【0195】
治療剤:「治療剤」という用語は、対象に投与されたときに、治療効果、診断効果、および/または予防効果を有し、および/または所望の生物学的および/または薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。
【0196】
治療上有効量:本明細書で使用される場合、「治療上有効量」という用語は、感染、疾患、障害、および/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与したとき、感染、疾患、障害、および/または病態を治療、その症状を改善、その発生を診断、予防、および/または遅延するのに十分である送達されるべき薬剤(たとえば、核酸、薬物、治療剤、診断剤、予防剤など)の量を意味する。
【0197】
治療上有効な結果:本明細書で使用される場合、「治療上有効な結果(therapeutically effective outcome)」という用語は、感染、疾患、障害、および/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象において、感染、疾患、障害、および/または病態を治療、その症状を改善、その発症を診断、予防、および/または遅延するのに十分な結果を意味する。
【0198】
全一日用量:本明細書で使用される場合、「全一日用量」は、24時間の期間に与えられるかまたは処方される量である。それは、単回ユニット用量として投与され得る。
転写因子:本明細書で使用される場合、「転写因子」という用語は、例えば、転写の活性化または抑制によって、DNAのRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を指す。いくつかの転写因子は、転写のみの調節を行うが、他のものは、他のタンパク質と協奏的に作用する。いくつかの転写因子は、特定の条件下で転写の活性化および抑制の両方を行うことが可能である。一般に、転写因子は、標的遺伝子の調節領域の特定のコンセンサス配列に高度に類似した1つもしくは複数の特異的標的配列に結合する。転写因子は、標的遺伝子の転写を単独で、または他の分子との複合体で調節し得る。
【0199】
治療:本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、特定の感染、疾患、障害、および/または病態を部分的にまたは完全に緩和、寛解、改善、軽減したり、その発症を遅延したり、その進行を阻害したり、その重症度を低減したり、かつ/またはその1つ以上の症状もしくは特徴の出現を低減したりすることを指す。例えば、癌の「治療」は、腫瘍の生存、成長、および/または拡大を阻害することを指す場合がある。治療は、疾患、障害、および/もしくは病態の徴候を呈しない対象に、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは病態に関連付けられる病変を発生するリスクを低減する目的で、疾患、障害、および/もしくは病態の早期徴候を呈する対象に施すことが可能である。
【0200】
「治療方法」なる語句またはその均等語は、例えば、癌に適用される場合、個体において癌細胞の数を低減、排除、もしくは予防するようにまたは癌の症状を軽減するように設計された手順または行動方針を意味する。癌または他の増殖性障害を「治療する方法」は、癌細胞もしくは他の障害が実際上完全に排除されること、細胞数もしくは障害が実際上低減されること、または癌もしくは他の障害の症状が実際上軽減されることを必ずしも意味するとは限らない。多くの場合、癌を治療する方法は、成功の可能性が低い場合でも実施されるが、個体の病歴と推定平均余命を考慮して、それでも全体的に有益な行動方針と見なされる。
【0201】
腫瘍成長:本明細書で使用される場合、「腫瘍成長」または「腫瘍転移成長」という用語は、特に明記しない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、この用語は、主に腫瘍細胞成長の結果としての腫瘍または腫瘍転移の増加量または増加体積に主に関連付けられる。
【0202】
腫瘍負荷:本明細書で使用される場合、「腫瘍負荷(tumor burden)」という用語は、対象が有する直径が3mmを超えるすべての腫瘍結節の総腫瘍体積を指す。
腫瘍体積:本明細書で使用される場合、「腫瘍体積(tumor volume)」という用語は、腫瘍のサイズを指す。mm単位の腫瘍体積は、式:体積=(幅)×長さ/2により計算される。
【0203】
非修飾:本明細書で使用される場合、「非修飾」とは、何らかの方法で変更される前の任意の物質、化合物、または分子を指す。非修飾は、常にというわけではないが、野生型または天然型の生体分子を指す場合がある。分子は一連の修飾を受ける可能性があり、それにより、修飾された各分子は、それに続く修飾のための「非修飾」出発分子として役立ち得る。
【0204】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される本発明による特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の詳細な説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0205】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」のような冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味し得る。グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、そうでなければ関連する場合、満たされると考えられる。本発明は、グループのちょうど1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、そうでなければ関連する、実施形態を含む。本発明は、グループのメンバーの2つ以上、またはすべてが、所与の製品またはプロセスに存在するか、利用されるか、そうでなければ関連する、実施形態を含む。
【0206】
また、「含む(comprising)」という用語は、オープンであることが意図され、追加の要素またはステップの組込みを許容することにも留意されたい。
範囲が指定されている場合、端点(endpoints)が含まれる。さらに、特に指定がない限り、または文脈および当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、本発明の異なる実施形態における記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、その範囲の下限の単位の10分の1単位まで想定できることを理解されたい。
【0207】
さらに、先行技術に包含される本発明の特定の実施形態はいずれも請求項の任意の1項以上から明示的に除外されうると理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に公知であると見なされるので、除外が本明細書で明示的に示されていない場合でも、それらは除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(たとえば、任意の核酸、それによりコードされたタンパク質、任意の製造方法、任意の使用方法など)はいずれも、先行技術の存在の有無にかかわらず、任意の理由で任意の1つまたは複数の請求項から除外され得る。
【0208】
引用された全ての出典、たとえば、本明細書に引用された参考文献、刊行物、データベース、データベース項目、および技術はすべて、たとえ引用に明確に記載されていないとしても、参照により本出願に組み込まれる。引用された出典と本出願の記述が矛盾する場合は、本出願の記述を優先するものとする。
【0209】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【実施例0210】
実施例1.CEBPA-51およびMTL-CEBPAの調製
CEBPA-saRNAを調製するための材料と手順は、国際公開第WO2015/075557号および国際公開第WO2016/170349号(ミナ セラピューティクス リミテッド(MiNA Therapeutics Limited))に開示されている。CEBPA-51およびMTL-CEBPAの調製は、国際公開第WO2016/170349号の実施例に開示されている。
【0211】
簡単に言えば、ホスホロアミダイトモノマーを逐次的にカップリングさせることによりCEBPA-51の各鎖を固体担体上に合成した。合成は、自動シンセサイザー、たとえば、アクタ・オリゴパイロット100(Akta Oligopilot 100)(GEヘルスケア(GE Healthcare))および固体担体が充填された合成反応器(カラムタイプ)に対して特定の体積の試薬および溶媒の送入/送出を行うテクニクロム(Technikrom)シンセサイザー(アサヒ・カセイ・バイオ(Asahi Kasei Bio))を用いて実施した。このプロセスは、反応器に接続された指定のリザーバに試薬を充填し、適切な固体支持体で反応槽に充填することから始めた。試薬と溶媒の流れは、流量および圧力を自動的に記録する一連のコンピュータ制御のバルブとポンプによって調整した。固相法は、合成の各ステップで溶液相中の試薬から反応生成物が固相に結合されるので、固体担体を溶媒で洗浄することにより反応生成物を効率的に分離することが可能であった。
【0212】
CEBPA-51を周囲温度で酢酸ナトリウム/スクロース緩衝液pH4.0に溶解し、脂質を55℃の無水エタノールに溶解した。リポソームは、クロスフローエタノール注入技術によって調製した。リポソーム形成直後に、懸濁液をpH9.0の塩化ナトリウム/リン酸緩衝液で希釈した。捕集した中間生成物を0.2μmの細孔サイズのポリカーボネート膜に通して押し出した。限外濾過により目標saRNA濃度を達成した。pH7.5のスクロース/リン酸緩衝液を用いて後続の透析濾過により非カプセル化薬剤物質および残留エタノールを除去した。その後、濃縮リポソーム懸濁液を0.2μm濾過し、5±3℃で貯蔵した。最後に、バルク生成物を製剤化し、0.2μmで濾過し、20mlバイアル中に充填した。
【0213】
MTL-CEBPAは、注入用の濃縮液として提示した。各バイアルは、約7.5のpHの20mlのスクロース/リン酸緩衝液中に50mgのCEBPA-51(saRNA)を含有する。
【0214】
実施例2.FGFR4阻害剤と組み合わせたCEBPA-51
FGFR4-siRNA
方法
細胞培養
一般
HepB3細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)、2mML-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM中5%CO2インキュベータで増殖させた。トランスフェクションは、2μLのリポフェクタミン2000(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))/ウェルを24ウェルプレート中で使用して実施した。
【0215】
SiFGFR4
使用したオリゴは以下のとおりであった:siFGFR4(s5176、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific))、陰性対照オリゴヌクレオチドおよびCEPBA-51。HepB3細胞を1×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。播種時に細胞をオリゴ(oligo)で逆トランスフェクトし、24時間後に順方向トランスフェクトし、播種後72時間にRNAを収集した。
【0216】
【表8】
【0217】
HepB3細胞を1×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、播種時にオリゴで逆トランスフェクトし、24時間後に順方向トランスフェクトした。WST細胞生存率アッセイは、製造業者の指示書に従って実施した(24時間のWSTインキュベーションを使用)。WST単独シグナルは、セル-WSTシグナルから差し引かれている。
【0218】
RNA抽出およびqRT-PCT
RNeasy(登録商標)Mini Kit(キアーゲン(QIAGEN))を用いて培養細胞からRNAを単離した。RNAはQiaxpert(登録商標)(キアーゲン)を使用して定量し、Quantitect(登録商標)逆転写キット(キアーゲン)を使用して逆転写した。Quantstudio5(キアーゲン)でQuantifast SYBR Green Master Mix(キアーゲン)を用いたqPCRにより相対発現レベルを測定した。以下のQuantitectプライマーアッセイ(キアーゲン)を使用した:CEBPA_1_SG、FGFR4_1_SGおよびGAPDH_1_SG。相対発現は、GAPDH発現に対して正規化されたDDCt法によって決定した。
【0219】
結果
mRNAレベルに対する単一または併用治療(siFGFR4およびCEBPA-51)の効果をqRT-PCRによってモニターした。FGFR4 mRNAを標的とするsiRNAでHep3B細胞を処理すると、FGFR4 mRNAレベルが有意に低下した。しかしながら、CEBPA-51による処理は、FGFR4 mRNAレベルに有意な影響を及ぼさなかった(表6Aを参照)。Hep3B細胞をCEPBA-51またはsiFGFR4で処理すると、CEPBA mRNAレベルが増加した。併用治療(混合物中のsiFGFR4およびCEPBA-51)は、CEPBAレベルを、siFGFR4またはCEPBA-51単独で観察されたレベルを超えてさらに増加させた(表6Bを参照)。NC:負の対照オリゴヌクレオチド。
【0220】
【表9】
【0221】
【表10】
【0222】
FGFR4 mRNAまたはCEPBA-51を標的とするsiRNAでHep3B細胞を処理すると、細胞生存率が低下した。siFGFR4およびCEPBA-51の両方の併用による処理は、WST1増殖アッセイでモニターした場合、細胞生存率がさらに低下した(表7A、96時間、表7B、120時間)。
【0223】
【表11】
【0224】
【表12】
【0225】
結論
siFGFR4とCEPBA-51との併用による処理は、Hep3B細胞におけるCEPBA-mRNAレベルを増加させ、結果として細胞生存性を低下させることにおいてより効果的である。全体として、これらのデータは、FGFR4阻害剤とCEPBA-51との併用治療が肝臓癌の実行可能な治療戦略である可能性があることを示唆するものである。
【0226】
2.FGFR4阻害抗体
別の研究では、Hep3B細胞を、1.0×10細胞/ウェルで、24ウェルプレート中で、30ug/mlの抗ヒトFGFR4治療用抗体(XPA.48.056;クリエイティブ・バイオラブス(Creative Biolabs))の存在下で、適宜播種した。細胞を、播種時に10nM CEBPA-51 saRNA、10nM Control oligo(NC)またはトランスフェクション剤単独(モック)のいずれかでトランスフェクトし、これを播種後24時間で繰り返し、培地を48時間で交換した。FGFR抗体処理は実験を通して維持された。細胞を、播種後72時間でRNA収集のために回収し、qRT-PCR分析を行った。
【0227】
表6に示すように、CEBPA-51とFGFR抗体との組み合わせは、CEBPA mRNA発現の最大の増加をもたらした。
【0228】
【表13】
【0229】
Hep3B細胞をFGFR4抗体で処理すると、細胞生存率が低下した。FGFR4抗体およびCEPBA-51の両方の併用による処理は、WST1増殖アッセイでモニターした場合、細胞生存率がさらに低下した(表9A、96時間、表9B、120時間)。
【0230】
【表14】
【0231】
【表15】
【0232】
実施例3.CEBPB阻害剤と組み合わせたCEBPA-51
CEBPA活性化またはCEBPB抑制はHCC細胞遊走を阻害する。
細胞遊走(cell migration)は、腫瘍細胞の浸潤および転移を含む、細胞過程において重要な役割を果たす。Hep3B細胞の移動(migratory)能力はHepG2細胞のそれよりはるかに高いので、細胞遊走に対するCEBPA-saRNAおよびCEBPB-siRNAの効果を調べ、これら2つの処理のいずれかがHep3B細胞の遊走を減少させるかどうかを決定した。処理された細胞の移動を測定するために、トランスウェル移動アッセイを実施した。10倍顕微鏡下でランダムに選択した9視野から計数した相対的細胞移動を記録した。トランスフェクトされていないHep3B細胞と比較して、CEBPA活性化またはCEBPB抑制は細胞遊走の有意な減少をもたらした(それぞれ0.8倍、または0.6倍)。
【0233】
【表16】
【0234】
CEBPA-saRNAおよびCEBPB-siRNAの相乗作用。
HCCにおけるCEBPAとその下流標的CEBPBおよびp21との相乗活性を調べるために、その下流標的に対するsiRNAまたはsaRNAによるCEBPA-saRNAのコトランスフェクションをHepG2細胞で行った。CDKN1A-saRNAがコトランスフェクションにより誘導されるp21活性化に影響するかどうかを同定するために、CDKN1A-saRNAのトランスフェクションも含めた。
【0235】
対照群の細胞は、トランスフェクトされていないか、20nMまたは50nMのスクランブルされた(scrambled)saRNA、10nMのスクランブルされたsiRNA+20nMのスクランブルされたsaRNA、10nMのスクランブルされたsiRNA+50nMのスクランブルされたsaRNA、または10nMのスクランブルされたsiRNA+70nMのスクランブルされたsaRNAでトランスフェクトした。単回処理した細胞を、20nM CEBPA-saRNAまたは50nM CEKN1A-saRNAでトランスフェクトした。2つの組み合わせ(double combo)で処理する細胞をCEBPA-saRNA(20nM)+CDKN1A-saRNA(50nM)またはCEBPA-saRNA(20nM)+CEBPB-siRNA(10nM)でトランスフェクトした。3つの組み合わせ(triple combo)で処理する細胞をCEBPA-saRNA(20nM)+CDKN1A-saRNA(50nM)またはCEBPB-siRNA(10nM)でトランスフェクトした。
【0236】
トランスフェクションされていない細胞と比較して、CEBPA発現の増加(2倍以上)とCEBPB発現の減少(0.4倍以上)が、CEBPA-saRNAとCEBPB-siRNAとをコトランスフェクトしたHepG2細胞で観察された。驚くべきことに、他の処理(単回、ダブルまたはトリプルトランスフェクション)と比較して、CEBPA-saRNAとCEBPB-siRNAとのコトランスフェクションは、CEBPA、p21(5.5倍)およびアルブミン(2.5倍)の発現を増加させ、トランスフェクションされていない対照に対して最も大きかった(the most)。CEBPA-saRNAの存在下でのCEBPB阻害は、HCC細胞において他の処理(単回、ダブルまたはトリプルトランスフェクション)よりもCEBPAとp21の両方のより大きな活性化を有するため、より良好な抗増殖反応を有すると推定された。
【0237】
HCC細胞数および増殖に対するCEBPB-siRNAと組み合わせたCEBPA-saRNAの効果を、HCC細胞におけるSRBおよびWST-1アッセイを用いて検討した。HepG2、Hep3BおよびPLC/PRF5細胞を、標準96ウェルプレート中で増殖させ、20nM CEBPA-saRNA、10nM CEBPB-siRNA、20nMスクランブルsiRNA、20nMスクランブルsaRNA、スクランブルsaRNA(10nM)+スクランブルsiRNA(10nM)、またはスクランブルsaRNA(20nM)+スクランブルsiRNA(10nM)でトランスフェクトした。細胞はまた、潜在的な相乗効果を調べるために、saRNAおよびsiRNAのさまざまな組み合わせでトランスフェクトした:CEBPA-saRNA(10nM)+CEBPB-siRNA(10nM);またはCEBPA-saRNA(20nM)+CEBPB-siRNA(10nM)。細胞傷害性は、スルホローダミンB(SRB)アッセイを使用して測定した。各処理後のHepG2細胞、Hep3BおよびPLF/PRC/5細胞の絶対細胞数を、吸光分光分析プレートリーダーで測定したOD値に基づいて確立した滴定曲線を用いて計算した。WST-1アッセイを使用して細胞増殖を評価し、OD値を10分間隔で測定した。
【0238】
20nM CEBPA-saRNAおよび10nM CEBPB-siRNAはいずれも、細胞数および細胞増殖を減少させた。20nM CEBPA-saRNAはHepG2およびHep3B細胞において10nM CEBPB-siRNAよりもはるかに良好に作用したが、PLC/PRF/5細胞においてはわずかに良好であった。すべての細胞において、CEBPA-saRNA(20nM)およびCEBPB-siRNA(10nM)とのコトランスフェクション後に、細胞数および細胞増殖の最大の減少が観察された。CEBPA-saRNA(20nM)+CEBPB-siRNA(siRNA)の組み合わせによるトランスフェクション後の細胞数の減少は、分化したHepG2(0.7倍)およびHep3B(0.8倍)細胞のみならず、驚くべきことに、未分化のPLC/PRF/5(0.65倍)細胞においても観察された。さらに、トランスフェクションされていない細胞と比較して、CEBPA-saRNA(20nM)およびCEBPB-siRNA(10nM)の組み合わせは、すべての細胞型で相対的な細胞増殖を最も減少させた。未分化のPLC/PRF/5細胞の細胞増殖は、分化したHepG2細胞(0.8倍/80%減少)およびHep3B細胞(0.75倍/75%減少)と同様に0.7倍(70%減少)に減少した。これらの結果から、CEBPA-saRNAにあまり応答しない未分化のHCCは、CEBPA-saRNAおよびCEBPB-siRNAの機能的な共処理によってCEBPAのCEBPBに対する比を高めることで反応性を逆転させることが可能であることが示唆された。CEBPBノックダウンは、分化したHCCのバランスを高度に増殖する表現型にシフトさせた可能性がある。
【0239】
実施例4.MTL-CEBPA併用療法は、前臨床HCCモデルにおける高周波アブレーションおよびPD-1阻害の免疫学的抗腫瘍応答を向上させる
腫瘍細胞に対するT細胞の活性化および細胞性免疫応答を引き起こすPD-1阻害剤であるニボルマブは、CHECKMATE-040試験のサブグループに基づき、HCCの二次治療に対するFDAの迅速承認を得た。ニボルマブで治療した患者の全奏効率は14.3%(95%信頼区間:9.2、20.8)で、完全奏効3例、部分奏効19例であった。奏効期間は3.2か月~38.2+か月であった;奏効例の91%は6か月以上持続する奏効を示し、55%は12か月以上持続する奏効を示した。
【0240】
高周波アブレーション(RFA)は、高周波交流によって生成され、電極チップを通して適用される熱を用いて腫瘍が破壊されるプロセスである。RFAは臨床診療におけるHCCの標準治療選択肢の1つであり、有意な生存利益と関連する。RFA後、腫瘍の局所凝固壊死は体内に残り、炎症誘発性シグナルを提供して、腫瘍に対する宿主適応免疫応答を誘発する可能性のある腫瘍抗原の供給源となる大量の細胞デブリの放出を誘導する。エビデンスは、腫瘍の熱によるアブレーションが自然免疫系および適応免疫系の両方のモジュレーションを誘導し、樹状細胞の効率的な負荷、増強された抗原提示および増幅された腫瘍特異的T細胞応答を介して抗腫瘍免疫応答を誘導することを示唆している。
【0241】
この研究では、HCCに対するMTL-CEBPaの腫瘍学的有効性が、前臨床モデルにおける免疫調節応答における相乗作用を介してPD-1阻害とRFAとの併用治療によって増強されるかどうかを評価した。この研究の目的は、MTL-CEBPA、抗PD-1およびRFAの併用療法の臨床応答を評価し、治療後の脾臓細胞と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の変化を特徴づけることであった。
【0242】
方法
MTL-CEBPAのRFAおよび免疫チェックポイント阻害との相乗効果を調べるために、同系BNL肝細胞癌腫瘍細胞を免疫応答性BALB/cマウス(各群n=8)の2つの反対側腹に注射した逆翻訳実験を行った。肝細胞癌を担持するマウスの処置には以下が含まれる:1)一方の側腹(one flank)にRFA(0日目);2)免疫療法(PD-1阻害、RMP1-14、BioXCell(米国ニューハンプシャー州ウエストレバノン(WestLebanon)、200μgIV/マウス/用量、0、2および5日目);および3)MTL-CEBPA(3mg/kgIV/マウス/用量、0、2および5日目)、ならびに、3つの全ての介入の組み合わせ。
【0243】
材料および方法
マウスBALB/cマウスは、バイオラスコ コーポレーション(BioLasco Co.)(台湾、台北)から購入した。動物実験は、国立台湾大学医学部の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認に従って実施した。マウスは、従来の特定病原体を含まない施設で飼育した。
【0244】
腫瘍細胞系
BALB/c由来マウス肝細胞癌細胞系BNL 1ME A.7R.1(ビーエヌエル(BNL);米国バージニア州マナサスのATCC)を10%ウシ胎児血清(FBS)と抗生物質(ペニシリン100単位/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、およびアムホテリシン25μg/mL)(米国、ギブコ(Gibco)BRL)を添加したDMEM中で培養した。細胞は5%CO加湿インキュベータ内にて37℃で増殖させた。
【0245】
動物モデル
64匹の雄のBABL/cマウス(6週齢;バイオラスコ コーポレーション、台湾)を、5×10個の細胞を含む50μLのBNL細胞懸濁液の皮下(s.c.)注射によって、両側腹部に異種移植した。
【0246】
実験群
マウスは、以下の8つの実験群(8匹の動物/群)の1つにランダムに割り当てた。
1.対照群
2.RFA群(R):RFAのみで処置
3.抗-PD1群(P):抗PD1のみで処置
4.CEBPa群(C):CEBPaのみで処置
5.抗PD1+CEBPa群(P+C):CEBPaおよび抗PD1で処置
6.RFA+抗PD1群(R+P):RFAおよび抗PD1で処置
7.RFA+CEBPa群(R+C):RFAおよびCEBPaで処置
8.RFA+抗PD1+CEBPa群(R+P+C):RFA、CEBPaおよび抗PD1で処置
処置スケジュール
癌細胞注入から4週間後、腫瘍が約1.5×1.5cmの直径に達したとき、両側の腫瘍のうちの1つを0日目としてRFAで処置した。MTL-CEBPA(3mg/kg)は、RFA処置後0、2および5日目に静脈内(i.v.)注射によって投与された。抗PD-1(RMP1-14、BioXCell(米国ニューハンプシャー州ウエストレバノン(WestLebanon))を、200μg/マウス/用量で、RFA処置後0、2および5日目に腹腔内(i.p.)に投与した。腫瘍の大きさはマイクロキャリパーを用いて評価し、腫瘍体積を次の式を用いて計算した:体積=長さ×(幅)×0.5。7日目にマウスをと殺した。研究デザインのタイムラインを図2に示す(7日目に動物をと殺した場合)。
【0247】
高周波アブレーション(RFA)処置
動物をケタミン/キシラジン溶液の腹腔内注射で麻酔し、腹臥位にした。患部を剃毛後、4mmの活性先端電極を有する22ゲージ針とEUS-ラジオ波(RF)アブレーションシステム(Rita)を使用して、右側腹部腫瘍に挿入してエネルギー送達した。10Wの出力を維持するために500-KHzのRF発生器を使用した。処置は腫瘍の体積に応じて1分~3分、変更した。RFAの7日後、マウスをと殺し(scarified with)、さらなる分析のために、腫瘍浸潤リンパ球と脾臓細胞を調製するために、左側腹部(frank)腫瘍および脾臓を収集した。末梢血サンプルは、処置前と処置後にヘパリン含有チューブで採取した。
【0248】
脾臓細胞および腫瘍浸潤リンパ球の単離
マウス脾臓細胞を単離するために、脾臓を取り出し、40μmメッシュのナイロンセルストレーナーを通して圧搾し、赤血球をRBC溶解緩衝液(イーバイオサイエンス(eBioscience)、カリフォルニア州サンディエゴ)で溶解した。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調製するために、腫瘍を採取して約5mmの断片に切り分けた後、RPMI培地中の0.05mg/mlコラゲナーゼIVおよび0.01mg/ml DNase Iで37℃にて40分間撹拌した。腫瘍を細かく切り刻み、70μmおよび40μmのナイロンメッシュでろ過してデブリを除去した。次に、細胞をフィコール-ハイパック(Ficoll-Hypaque)勾配で分離し、さらなる分析に使用した。
【0249】
フローサイトメトリー
脾臓および腫瘍組織を処理し、0.5%BSAを含むPBS中の単細胞懸濁液とし、4℃で30分間染色した。細胞表面マーカーは、蛍光標識抗体:ビーディ・バイオサイエンシーズ(BD Biosciences(カリフォルニア州、サンノゼ))のFITC-CD45、PE-CD8、PerCP-CD3、CD49b、およびAPC.Cy7-CD4、で染色した。次に、細胞を2回洗浄し、緩衝液(ビーディ・バイオサイエンシーズ、カリフォルニア州サンノゼ)で固定した。個々の白血球サブセットの総数は、123カウントのeBeadsカウントビーズ(イーバイオサイエンス、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して決定した。フローサイトメトリーをFACSVerse(商標)(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、カリフォルニア州マウンテンビュー)によって行い、データをFlowJo(商標)ソフトウェア(オレゴン州アシュランド)を用いて処理した。
【0250】
統計的分析
データは平均±SDとして表した。統計的有意性は、両側スチューデントのt検定によって評価した。p値が0.05未満の場合、差は有意であるとみなした。分析には、GraphPad Prism(グラフパッド・ソフトウェア社(GraphPad Software Inc.)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した。
【0251】
結果
表11に見られるように、RFAとの併用処置は、すべての処置とそれらの組み合わせに対する治療応答を改善するようであり、最良の応答は、群8において見られ、2/8の動物が完全な応答を示し、5/8の動物が部分的な応答を示した。
【0252】
【表17】
【0253】
すべての動物は、指定された処置配分を完了した。MTL-CEBPAで処置したマウスは、未処置の対照と比較して腫瘍の増殖を遅延させた(p<0.01)が、抗PD-1単独では、腫瘍増殖に対する有意ではないわずかな影響が認められた。対照的に、CEBPaと抗PD-1との併用は、対照群と比較して有意な抗腫瘍効果をもたらし、RFA(表12)を加えることでさらに増強された。
【0254】
【表18】
【0255】
RFA処置は、割り当てられた全ての側腹部腫瘍のアブレーションに成功したが、RFA単独処置群では、対側の非RFA処置腫瘍の増殖には有意な影響がみられなかった。RFA処置群では、CEBPAの腫瘍応答は抗PD-1よりも有意に良好であった。MTL-CEBPAと抗PD-1処置群との併用は、7/8のツアー(tour)応答(CRおよびPR)を生じ、2つのCRを含み、腫瘍体積と関係した処置応答は群を抜いて最良であった。この3つの組み合わせは、MTL-CEBPA単独と比較して腫瘍増殖の適度な減少率も示した。
【0256】
MTL-CEBPAは、腫瘍に浸潤するCD8+およびNKT細胞を増強する
免疫応答が潜在的な抗腫瘍効果に寄与するかどうかをさらに調査するために、RFAおよび/または薬物処置群後のマウスからの脾臓細胞および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をフローサイトメトリーで測定した。表3から分かるように、抗PD-1処置と組み合わせたMTL-CEBPAは、脾臓細胞においてCD4+およびCD8+リンパ球の有意な増加を誘導したが、TILにおいては誘導しなかった。RFAの誘導後、CD8+腫瘍浸潤は、3つの組み合わせで処置した動物(群8)で有意に増加した。
【0257】
【表19】
【0258】
【表20】
【0259】
腫瘍浸潤ヘルパーTリンパ球の変化を図3に示す。腫瘍浸潤細胞傷害性Tリンパ球の変化を図4に示す。RFA処置を伴わない腫瘍浸潤ナチュラルキラーT細胞の変化を図5に示す。RFA処置による腫瘍浸潤ナチュラルキラーT細胞の変化を図6に示す。
【0260】
脾臓および腫瘍におけるNKおよびNKTリンパ球数は、RFA処置なしの処置群間で有意差はなかったが、RFAを伴うMTL-CEBPA、抗PD-1併用処置群において、TILおよび脾臓細胞におけるNKTリンパ球の増加が観察された。
【0261】
考察
MTL-CEBPAで治療したHCC患者の機構的評価から、それは末梢顆粒球の顕著な可逆的で反復可能な増加を誘導することが観察された。これらの細胞のqPCR分析は、CEBPAのmRNAレベルの増加とPD-L1、アデノシンデアミナーゼとCXCR4のダウンレギュレーションを示し、腫瘍免疫微小環境(TIME)における免疫調節効果の可能性を示唆した。この観察結果は、腫瘍に対する免疫応答を増強するためにTIMEに相乗的に影響を与える治療法によって臨床効果がさらに増強される可能性があるという仮説を導いた。
【0262】
MTL-CEBPA処置は、RFAとの併用処置の有無にかかわらず、対照と比較してマウスHCC側腹部腫瘍の増殖を減少させた。しかしながら、最大の治療応答はMTL-CEBPA、PD-1阻害剤およびRFAの併用で処置した群で見られた。これはまた、動物の一部が処置に対して完全な応答を示した唯一の群であった。RFAで処置した動物の腫瘍評価はすべて対側であったことから、これはRFA処置がアブソパル効果、すなわちT細胞応答の誘導による遠隔腫瘍部位の退縮をもたらしたことを示唆している。PD-1阻害は、それ自体で、またはRFAと組み合わせて、この研究における対照と比較して腫瘍増殖を有意に減少させなかった。
【0263】
この研究では、CEBPAおよびPD-1阻害と組み合わせたRFA処置後の対側腫瘍における腫瘍関連細胞傷害性およびナチュラルキラーTリンパ球の有意な増加が観察された。この研究では、PD-1阻害に対する有意な治療応答(therapeutic response)は検出されなかった。しかしながら、これをCEBPaおよびRFAと併用した場合には明らかな増加効果(incremental benefit)が認められた。
【0264】
要約すると、MTL-CEBPAの併用処置は、前臨床HCCモデルにおいて高周波アブレーションおよびPD-1阻害の免疫学的抗腫瘍応答を増強することが観察された。これらのデータは、免疫腫瘍応答の相乗的プライミングを介したチェックポイント遮断、RFAおよびMTL-CEBPAによる併用治療についての臨床的役割を示唆し、RFAがアブソパル効果を有することを可能にする。
【0265】
実施例5.進行肝癌の治療におけるソラフェニブと組み合わせたMTL-CEBPA
ソラフェニブ(ネクサバール(Nexavar)(登録商標))は、RafキナーゼならびにVEGFR-2/-3、PDGFR-ベータ、Flt-3(FMS様チロシンキナーゼ3)およびc-Kitを標的とするマルチキナーゼ阻害剤であり、進行肝細胞癌(HCC)患者の治療に対してFDAおよびEMEAの承認を受けている。しかしながら、この単剤療法に関連する低い腫瘍応答率と副作用は、他の新しい治療オプションを調査する必要があることを示すものである。
【0266】
材料および方法
動物モデルおよび処置
7週齢雄のウィスターラット(150~180g)は、国立台湾大学の動物センターから入手した。ラットは標準状態で飼育し、すべての実験は国立台湾大学の施設内動物管理使用委員会が作成した「実験動物の管理と使用に関するガイド」に従って実施した。ラットに毎日DEN溶液(ミズーリ州セントルイス、シグマ(Sigma)社)を唯一の飲料水供給源として6週間与え、続いて通常の水を3週間与えた。DEN溶液の供給は、最初の週に100ppmで開始した。動物の平均体重(BW)を5匹のラットの群につき週1回測定し、飲料水中のDEN濃度を最初の週のそれと比較して毎週BWに比例して調整した。例えば、DEN投与の1、2および3週目の平均BW値がそれぞれ150、200(1.3倍)および250g(1.66倍)である場合、飲料水中のDEN濃度はそれぞれ100、133および166ppmに設定した。DEN投与の6週間後、腫瘍の進行に十分な時間を与えるために、動物にさらに3週間通常の水を与え、観察した。ラットを10匹/群の5群にランダムに分けた:
1.対照群:PBSのみで処置、2週間の間、3回/週の静注(1、3、5および8、10、12日目)
2.MTL-CEBPA群:MTL-CEBPAにて処置、1週間の間、3回/週の静注(1、3、5日目)
3.MTL-CEBPA×2群:MTL-CEBPAにて処置、2週間の間、3回/週の静注(1、3、5および8、10、12日目)
4.ソラフェニブ群:ソラフェニブ(Nexavar(登録商標)、バイエル(Bayer)、10mg/kgを経口投与、2週間の間、3回/週(1、3、5および8、10、12日目)
5.MTL-CEBPA+ソラフェニブ群:MTL-CEBPAにて処置、1週間の間、3回/週の静注(1、3、5日目)そしてソラフェニブ、経口投与、10mg/kg、1週間の間、3回/週(8、10、12日目)
処置後15日目に動物をと殺し、腫瘍サイズと腫瘍/肝臓重量を測定した。体重、肝臓、肺、脾臓の重量を量り、すべての臓器の様相(aspects)を記録した。動物をと殺後、すべての肝葉を迅速に取り出して秤量し、肝臓表面および5mmのスライス切片で肉眼で見えるすべての結節の直径を測定した。腫瘍負荷は、肝臓重量/BW比および直径>3mmの全ての腫瘍結節の総体積の2つの基準で決定した。
【0267】
血清プロファイル
ALT、AST及び総ビリルビンの血清レベルは、VITROS(登録商標)5.1 FS Chemistry Systems(オーソクリニカル・ダイアグノスティックス社(Ortho-Clinical Diagnostics,Inc.))を用いて測定した。ラットα-フェトプロテインの血清中濃度は、抗ラットAFP ELISAキット(USCNライフカンパニー(USCN life company)/中国)を用いて、製造業者の指示に従って評価した。
【0268】
統計的分析
データは平均±SDとして表した。統計的有意性は、両側スチューデントのt検定によって評価した。p値が0.05未満の場合、差は有意であるとみなした。これらの分析には、GraphPad Prism(グラフパッド・ソフトウェア社(GraphPad Software Inc.)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した。
【0269】
結果
肝臓および血清分析のための研究の終わりに、すべての動物を終了させた。肝葉を切除して重量を測定し、肝臓表面および5mmのスライス切片の肉眼的に見える全ての結節の直径を測定した。腫瘍体積は、以下の2つの基準で決定した:即ち、肝臓重量/BW比、および直径>3mmの全ての腫瘍結節の総体積。
【0270】
PBS対照群の腫瘍サイズは平均644.7mmであったが、MTL-CEBPAで1週間処置した動物の腫瘍サイズは平均326mmであった。MTLCEBPAで2週間処置した動物の腫瘍サイズは、平均199.7mmであった。ソラフェニブで2週間処置した動物の腫瘍サイズは平均299.5mmであったが、一方、MTL-CEBPAおよびソラフェニブで処置した動物の腫瘍サイズは平均101.3mmであった(図7A)および表15。
【0271】
【表21】
【0272】
アルファ-フェトプロテイン(AFP)の血清レベルを処置前に測定し、処置後の測定値と比較して、「AFP変化」(mg/dl)として表した。血清のAFP変化は各群で測定した。値は、処置前の測定値から処置後の測定値を差し引いたものを表している。MTL-CEBPA処置、ソラフェニブ処置、または両方の組み合わせでの処置後に値が有意に減少し、すべての処置動物にわたって有意なAFP変化が観察された(図7B)。観察された最も劇的な減少は、MTL-CEBPAで2週間、またはMTL-CEBPAとソラフェニブの併用で処置された動物で認められた(図7B)および表16。
【0273】
【表22】
【0274】
血清のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)と総ビリルビンは、2週間の処置の過程で悪化しなかったことから、併用処置は動物で肝毒性作用を仲介することなく、インビボで腫瘍負荷を低下させる利点を増強することさえも示唆される。
【0275】
考察
HCCは、世界で2番目に多い癌による死亡であり、疾患のすべてのステージで5年生存率は12%と推定されている。限定された疾患と肝硬変の背景を有する少数の患者が肝移植に適している。治癒的肝切除が可能なのは20%未満の患者のみであり、全身療法は通常、高周波アブレーションや経動脈的化学塞栓療法などの局所療法が適さない患者、または同局所療法で進行した患者にのみ用いる。
【0276】
ソラフェニブは進行HCC患者の死亡リスクを31%低下させ、生存期間中央値は10.7ヵ月であったのに対し、プラセボは7.9ヵ月であったことから、この十年間はソラフェニブが進行HCCに対する唯一の全身療法であった。この10年間に他の全身薬は承認されなかったが、約2年前にFDAがHCCに対する複数の薬物としてレバンチニブ、レゴラフェニブなどを承認した。2017年9月、ブリストルマイヤーズスクイブ社(Bristol-Meyers-Squibb)のニボルマブは、以前にソラフェニブで治療された患者に対してFDAから迅速承認を受けた。これはCHECKMATE-040試験の154名の患者サブグループに基づくもので、全奏効率は14.3%(95%信頼区間:9.2、20.8)、完全奏効3例、部分奏効19例であった。奏効期間は3.2か月~38.2か月+であった;奏効例の91%は6か月以上持続する奏効を示し、55%は12か月以上持続する奏効を示した。
【0277】
何年にもわたって、複数の研究者がソラフェニブを他の薬剤と組み合わせることによってソラフェニブの有効性を改善しようとした。この研究では、MTL-CEBPAがHCCラットDENモデルにおいてソラフェニブの有効性を改善できることが示された。
【0278】
実施例6.進行したHCC患者の治療におけるCEBPA-51併用療法
MTL-CEBPAの最初の臨床試験では、合計20名の進行したHCC患者を3つの群に階層化した。最初の群(I群)は3名の患者で、MTL-CEBPA投与前にFGFR4阻害剤(U3-1784、BLU-554)を投与されていた。2番目の群(II群)は9名の患者で、MTL-CEBPA投与前にICB(ペンブロルジマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、またはニボルマブ)を投与されていた。3番目の群(III群)は8名の患者で、MTL-CEBPA投与前にTKI療法(7/8がソラフェニブ、そして1/8がソラフェニブ+レンバチニブ)を受けていた。
【0279】
I群の1名の患者は部分奏効(PR)を示した。I群の他の2名の患者は、6か月以上、長期の安定した疾患(stable disease:SD)を示した。II群では、7名の患者がSDを示し、これらの患者のうち5名が4か月以上SDを示したのに対し、2か月目のMRIスキャンで進行性疾患(progressive disease:PD)を示したのは2名のみであった。III群では、2か月を超えてSDである患者はおらず、4名の患者が2か月の間SDを示し、4名の患者が2か月目のMRIスキャンでPDを示した。すべての応答は、固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)に従って分類されている。PR=腫瘍病変の少なくとも30%の減少;;SD=PRの判定を得るのに十分な収縮もなく、PDの判定を得るのに十分な増加もない;PD=腫瘍病変の少なくとも20%の増加。
【0280】
したがって、FGFR4阻害剤またはICB剤による事前の治療は、標準治療であるTKI治療のみと比較して有益性を示した。
別の臨床研究では、MTL-CEBPAによる治療後、3名の患者にチロシンキナーゼ阻害剤を投与した。ソラフェニブを投与された2名の患者は、アルファ-フェトプロテイン腫瘍マーカーの著しい減少とともに、確認された完全な腫瘍応答を経験した。最初の患者は肝硬変を伴うHCCおよびHepCである。研究の前に、同患者は2014~2017年に複数の経動脈化学塞栓療法(TACE)治療を受け、2017年6月~2017年8月にデュルバルマブを受け、疾患が進行した。同患者は98mg/m QW×6のMTL-CEBPA治療を2017年9月~2017年11月まで受け;また、肝動脈塞栓療法(以下、「TAE」)を2017年11に、ソラフェニブを2018年1月~2018年5月まで受けた。2018年3月に部分奏効、2018年5月に完全奏効、2018年7月に完全奏効を得た。同患者はHCCと肺および腹膜転移の解消を経験した。2番目の患者は肝硬変を伴うHCCおよびHepBである。本試験に先立ち、2014~2017年にアブレーション、2016~2017年にTACE/ドキソルビシン(難治性)を受けた。同患者は130mg/m QW×6のMTL-CEBPAを2017年11月~2018年1月まで、TACEを2018年4月に、ソラフェニブを2018年4月から(継続中)投与された。同患者は2018年5月および2018年8月の時点で完全奏効であった。さらに3名の患者がMTL-CEBPAの後にソラフェニブも投与された。1名は完全奏効(肝臓と肺の転移)、1名は部分奏効、もう1名は進行性疾患であった。完全奏効または部分奏効が見られたMTL-CEBPA治療とソラファニブ治療との間隔は0~3か月の範囲であった。
【0281】
MTL-CEBPAによる治療後にレンバチニブを投与された1名の患者は、部分的な腫瘍応答を経験した。
以前に発表された単剤の第III相試験では、ソラフェニブで治療された患者の0%に完全奏効が認められ、ソラフェニブで治療された患者の2%およびレンバチニブで治療された患者の24%に部分奏効が認められた。治療後のソラフェニブによる5名中3名の完全奏効(60%)および5名中4名の完全奏効および部分奏効(80%)は、ソラフェニブ単独によるそれぞれ0%および2%という過去のデータと比較して、MTL-CEBPAがTKIを含む他の癌治療の利益を高める大きな可能性を有することを示している。
【0282】
実施例7.同系CT26大腸癌モデルにおけるPD-1抗体と組み合わせたMTL-CEBPAの活性を評価する研究
本研究では、MTL-CEBPAが一般的に使用されるマウス同系モデルCT26においてPD-1チェックポイント抗体の活性を増強できるかどうかを検討した。
【0283】
簡単な方法
雌BALB/c(6週齢)を、マウス1匹あたり5×10細胞で0.1mlのマウス大腸癌細胞系CT26.WT(CRL-2638)を皮下(s.c.)に移植した。CT26.WT細胞をRPMI-1640培地で10%FCSおよび2mMグルタミンを添加し、37℃および5%COで増殖させた。細胞移植の順序はボックスごとにランダム化した。投与は細胞移植後1日目に開始し、動物は合計7回の投与を受けた:
1)MTL-CEBPA単独(5mg/kg i.v.)をd1およびd3のスケジュールで投与した;
2).PD-1 RMP1-14抗体単独(10mg/kg i.p.)をd1およびd4のスケジュールで投与;
3)上記と同じ用量およびスケジュールでPD-1抗体と組み合わせたMTL-CEBPA;または
4)併用療法群と同じ用量およびスケジュールでのPBS単独。
【0284】
腫瘍はキャリパーで週3回測定し、腫瘍の体積は、楕円式(π/6×幅×幅×長さ)を用いて算出した。試験終了時に、瞬間冷凍(flash frozen)腫瘍サンプル(十分な腫瘍がある場合はFFPE固定サンプル)を最終投与の24時間後に採取した。血清サンプルも採取し、瞬間冷凍した。動物を早期に終了させた場合には、可能な場合には、分析のために腫瘍サンプルおよび血清も得た。
【0285】
ナノストリング(Nanostring)解析のために、瞬間冷凍したサンプルからRNAを単離した。組織サンプルをQIAzol(登録商標)溶解試薬(Qiagen)でホモジナイズし、1-ブロモ-3-クロロプロパン(Sigma)を各サンプルに添加し、ボルテックスした後、+4℃で予冷した遠心機で遠心分離した。次いで、水性の上相を、エタノールを含むウルトラ回収管(Starlab I1420-2600)に移し、サンプルを穏やかなピペッティングで混合した。次いで、サンプルをRNeasy(登録商標)カラム(Qiagen 74106)に移し、キットの指示に従ってRNA抽出を行い、QIAxpertシステムを用いてRNAを定量した。
【0286】
ナノストリング解析は、ナノストリングマシンを用いて、ナノストリングマウス(Nanostring Mouse)360IOコードセット-LBL-10545-01とマウスミエロイドイネイトイミュニティコードセット-LBL-10398-02のチップを用いて実施した。
【0287】
研究の主な結果:
PBS、PD-1単独、MTL-CEBPA単独、およびPD-1+MTL-CEBPAについての18日目、21日目および23日目における個々の腫瘍プロットおよび散布図を、図8A、8B、8Cおよび8Dに示す。MTL-CEBPA単独群の腫瘍の大きさは、18日目、21日目、23日目のいずれにおいてもPBS群と有意差はなかった。PD1抗体単独群では、18日目のみで平均腫瘍サイズはPBS群よりも有意に小さかった。対照的に、18日目、21日目および23日目において、MTL-CEBPAおよびPD-1抗体の組み合わせ群は、PBSよりも有意に小さかった(P<0.05-Welchの補正を伴う不対のt検定)。21日目と23日目には、MTL-CEBPAとPD-1抗体の組み合わせ群の腫瘍は、PD1抗体またはMTL-CEBPA単独群のいずれかよりも有意に(P<0.05)小さくなっており、組み合わせの抗腫瘍増強を示す。MTL-CEBPAおよびPD-1抗体の組み合わせ群では23日目の時点で、残りの腫瘍のうち3/6のみが21日目の測定から大きさが増加し始めていたのに対し、MTL-CEBPAとPD-1抗体の単独群ではいずれも21日目から23日目までの間にすべての腫瘍の大きさが増大していた。
【0288】
骨髄チップ(Myeloid chip)上のCEBPAプローブを用いた23日目の腫瘍のナノストリング解析では、MTL-CEBPA単独群ではCEBPAmRNAが約1.7倍(P<0.001、対PBS群)増加していることが明らかになった。対照的に、PD-1抗体で処理された腫瘍のCEBPA mRNAのレベルは変化しなかった(1.09;P=0.705、対PBS群)。MTL-CEBPAとPD-1抗体との組み合わせ群では、全体的にCEBPAmRNAの平均増加は5.12倍であった;成長し始めた3つの腫瘍では、CEBPA mRNAの平均増加は1.56(P=0.283、対PBS群)であり、サイズがまだ減少している3つの腫瘍では、CEBPA mRNAのレベルは8.69(P<0.001、対PBS群)であった(表17)。CD8T細胞マーカーCD8a(IOチップ)に関しては、組み合わせ群のみが全体的に有意な増加を示し(3.7倍、P<0.02)、その増加は3つの退行性腫瘍で最も顕著であった(5.05倍、P<0.02、対PBS)。PD1抗体単独群(1.29倍)およびMTL-CEBPA群(1.22倍)ではCD8a mRNAがわずかに増加したが、それらはPBS対照群と比較して統計的に有意ではなかった(表17)。活性化CD8+veを示すグランザイムA(Granzyme A)mRNA(骨髄チップ)レベルを見ると、PD-1抗体単独群(1.38倍)およびMTL-CEBPA単独群(1.14倍)でわずかに増加したが、どちらも有意ではなかったが、組み合わせ群では全体で2.39倍の増加(P=0.05、対PBS)が見られ、これは3つの退行性腫瘍で最も顕著であった(3.22倍-p<0.05)。
【0289】
【表23】
【0290】
結論
全体として、データは、この免疫応答性マウスCT26大腸癌モデルにおけるPD-1抗体とMTL-CEBPAを組み合わせることの抗腫瘍活性の面での利点を示している。活性は、CEBPA mRNA(CT26腫瘍細胞は内因性CEBPA mRNAの非常に低いレベルを持っているので、おそらく間質細胞で)の発現の増加を伴っており、CD8aとグランザイムA mRNAの発現の増加は、PD-1抗体またはMTL-CEBPA治療単独のいずれかと比較して、組み合わせ群の活性化CD8T細胞のレベルの増加と一致していた。
【0291】
実施例8.ソラフェニブ耐性腫瘍マウスにおけるMLT-CEBPAおよび併用療法
本試験は、BALB/cヌードマウスの肝細胞癌腺癌(BNL)皮下異種移植モデルにおいて、MTL-CEBPAの抗PD1またはNexavar(登録商標)(ソラフェニブ)との併用療法におけるin vivoでの有効性を評価することを目的としたものである。
【0292】
材料および方法
細胞培養:マウス肝細胞癌細胞系BNLを、Dulbeccoの改良Eagle培地(DMEM、Gibco(登録商標)(Invitrogen社))中に250ng/mLのG418(メルク社、ドイツ国)、1%抗生物質抗真菌薬(antibiotic antimycotic)(InvitrogenのGibco)および10%ウシ胎児血清(Gibco(登録商標)(Invitrogen社))と共に維持し、加湿雰囲気中、37℃で培養した。
【0293】
腫瘍接種と実験計画:各BALB/cマウスの側腹に、0.05mlのPBS中の3×10個のBNL-Luc細胞を皮下注射(s.c.)した。接種の3週間後、Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ)を2週間毎日経口投与した(30mg/kg/日)。
【0294】
目に見える腫瘍結節が対照と比較して測定可能な寸法の20%の増加を示した「難治性動物(refractory animals)」を選択した。選択された動物は、7つの処置群に無作為に割り付けられた(表18)。
【0295】
化合物:
PBS:UniRegion Bio-Tech.Cat:UR-PBS001-5L
MTLCEBPA:MINA tx:MIT0615A
Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ):Bayer HealthCare Pharmaceuticals
抗PD-1:InVivo MAb抗マウスPD-1:BioXCell.、カタログ番号:BioXCell BE0146/717918O1
併用試験の群と処置
60匹のマウスを、0.5mLのPBS混合液中の3×10個のBNL-Luc細胞を注入した。3週間後、マウスにソラフェニブ30mg/kg(p.o.)を2週間毎日投与した。腫瘍体積の20%の増加を示した42匹のマウスを選択し、各群に6匹のマウスを配置したランダム化ブロックデザインを用いて7つの群に割り付けた。7群は、対照群としてのPBS[PBS];MTL-CEBPA[C](4.2mg/ml、静注、d1、d3、d5);抗-PD1抗体[P](250ug、I.P.、d1、d3、d5);Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ)[N](30mg/kg、経口、毎日);MTL-CEBPA+抗PD1[C+P];MTL-CEBPA+Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ)[C+N];およびMTL-CEBPA+抗-PD1+Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ)[C+P+N]、であった。
【0296】
【表24】
【0297】
結果および考察
まず、チロシンキナーゼ阻害剤Nexavar(登録商標)(ソラフェニブ)、免疫チェックポイント遮断剤(blockade)(抗PD-1抗体)、またはMTL-CEBPA単独での単剤処置が、Nexavar(登録商標)耐性BNL異種移植マウスの腫瘍縮小をもたらすかどうかを検討した。
【0298】
MTL-CEBPAのみで処置されたマウスは、3週間の処置後に腫瘍重量の有意な49%の減少(p=0.01)(図9A)および腫瘍体積の37%の減少(図9B)を示した。抗PD1処置単独またはNexavar(登録商標)処置単独では、腫瘍の体積または重量に影響は見られなかった(図9Aおよび図9B)。
【0299】
Nexavar(登録商標)または抗PD1のいずれかとMTL-CEBPAとの併用処置を受けた動物群では、腫瘍の体積と重量の劇的かつ有意な減少が観察された。抗PD1と組み合わせたMTL-CEBPAは、腫瘍体積の74%の減少(p<0.004)(図9B)および腫瘍重量の83%の減少(p<0.002)(図9A)を示した。Nexavar(登録商標)と組み合わせたMTL-CEBPAは、腫瘍体積の66%の減少(p<0.006)(図9B)および腫瘍重量の80%の減少(p=0.001)(図9A)を示した。MTL-CEBPA+Nexavar(登録商標)+抗PD1で処置された動物は、腫瘍体積の77%の減少と腫瘍重量の87%の減少を示し、この活性は二種類の組み合わせのいずれかよりも大きかった。
【0300】
試験化合物の相乗効果があったかどうかを評価するために、MTL-CEBPAを抗PD1およびNexavar(登録商標)と並行して組み合わせた。3週間の処置後、MTL-CEBPAと抗PD1とを組み合わせた場合の抗腫瘍応答は、腫瘍増殖率の65%の減少を示した。Nexavar(登録商標)と組み合わせたMLT-CEBPAは、腫瘍増殖率の62%の減少を示した。3つの化合物すべてを同時に投与した場合、未処置の動物と比較して、腫瘍増殖率が76%減少した(p=0.003)。
【0301】
結論
標準的な治療の抗腫瘍化合物であるNexavar(登録商標)および/または抗PD1と組み合わせた場合、MTL-CEBPAによるCEBPAのアップレギュレーションが、強力かつ一貫した抗腫瘍応答を促進することが、強力な証拠として実証されている。saRNAが誘導する腫瘍抑制因子CEBPA遺伝子のアップレギュレーションは、標準的な化学療法剤の抗腫瘍能力を有意に改善する。
【0302】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される本発明による特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の詳細な説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0303】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」のような冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味し得る。グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、そうでなければ関連する場合、満たされると考えられる。本発明は、グループのちょうど1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、そうでなければ関連する、実施形態を含む。本発明は、グループのメンバーの2つ以上、またはすべてが、所与の製品またはプロセスに存在するか、利用されるか、そうでなければ関連する、実施形態を含む。
【0304】
また、「含む(comprising)」という用語は、制約がなく(open)許容することを意図しているが、追加の要素またはステップを含める必要はないことにも留意されたい。したがって、本明細書で「含む(comprising)」という用語が使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語も包含され、開示される。
【0305】
範囲が指定されている場合、端点(endpoints)が含まれる。さらに、特に指定がない限り、または文脈および当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、本発明の異なる実施形態における記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、その範囲の下限の単位の10分の1単位まで想定できることを理解されたい。
【0306】
さらに、先行技術に包含される本発明の特定の実施形態はいずれも請求項の任意の1項以上から明示的に除外されうると理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に公知であると見なされるので、除外が本明細書で明示的に示されていない場合でも、それらは除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(たとえば、任意の抗生物質、治療成分または活性成分;任意の製造方法;任意の使用方法など)はいずれも、先行技術の存在の有無にかかわらず、任意の理由で任意の1つまたは複数の請求項から除外され得る。
【0307】
使用されている単語は限定ではなく説明の単語であり、本発明のより広い態様における真の範囲および精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更を加えることができることを理解されたい。
【0308】
本発明は、記載されたいくつかの実施形態に関して、ある程度の長さとある程度の特殊性をもって説明されてきたが、そのような特殊性または実施形態、または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることは意図されていないが、先行技術の観点から見て、そのような請求項の最も広い可能な解釈を提供するように、そしてそれゆえに、本発明の意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきものである。
【0309】
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、単離された合成saRNAと少なくとも1つの追加の活性剤とを含み、前記医薬組成物は前記対象に投与されるものであり、前記saRNAがC/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートし、前記saRNAが配列番号3の領域に対して少なくとも90%相補的である鎖を含み、前記鎖が14~30ヌクレオチドを有し、かつ前記追加の活性剤がチェックポイント阻害剤または免疫チェックポイント遮断剤である医薬組成物。
【0310】
[付記2]
前記C/EBPα遺伝子の発現が、少なくとも20%、50%、100%、2倍、3倍、4倍または5倍アップレギュレートされる、付記1に記載の医薬組成物。
【0311】
[付記3]
前記saRNAが二本鎖であり、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含む、付記1または付記2に記載の医薬組成物。
【0312】
[付記4]
前記saRNAのアンチセンス鎖が配列番号1(CEBPA-51)の配列を含む、付記3に記載の医薬組成物。
【0313】
[付記5]
前記saRNAのセンス鎖が、配列番号2(CEBPA-51)の配列を含む、付記3または付記4に記載の医薬組成物。
【0314】
[付記6]
前記saRNAがMTL-CEBPAとして投与される、付記1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0315】
[付記7]
前記saRNAは、前記追加の活性剤と同時にまたは順次に投与されるものである、付記1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0316】
[付記8]
前記追加の活性剤がCTLA4、PD-1またはPD-L1の阻害剤である、付記1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0317】
[付記9]
前記追加の活性剤がPD-1抗体である、付記1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0318】
[付記10]
前記追加の活性剤が、ペンブロリズマブである、付記1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0319】
[付記11]
前記対象がさらに高周波アブレーション(RFA)治療を受ける、付記1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0320】
[付記12]
前記対象がsaRNA治療の前にRFA治療を受ける、付記11に記載の医薬組成物。
[付記13]
前記癌が、肝細胞癌(HCC)、大腸癌、胃癌、皮膚癌、膵臓癌、頭頸部癌、子宮頸癌、および前立腺癌から選択される、付記1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0321】
[付記14]
前記癌が、肝細胞癌(HCC)または大腸癌である、付記1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0322】
[付記15]
前記癌が、肝細胞癌(HCC)である、付記1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B-1】
図9B-2】
【配列表】
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