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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010369
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】導光ユニットおよび光学測定器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20240117BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/01 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111672
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌平
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059DD13
2G059EE01
2G059FF11
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ17
2G059KK01
2G059KK04
2G059LL02
2G059LL04
2G059NN06
(57)【要約】
【課題】受光部に検査光を収束させて感度を高め、S/N比を向上する。
【解決手段】導光ユニット10は、発光素子4から受光センサ12に到る光路内に配置可能とされ、発光素子4から入射した光を透過して受光センサ12へと導く導光部18と、導光部18を包囲して導光部18から外方へ散乱した光を吸収する遮光部20と、遮光部20の少なくとも一部を介在させた状態で導光部18の少なくとも一部と同軸状に配置されたコイル22とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部から受光部に到る光路内に配置可能とされ、前記発光部から入射した光を透過して前記受光部へと導く導光部と、前記導光部を包囲して前記導光部から外方へ散乱した光を吸収する遮光部と、前記遮光部の少なくとも一部を介在させた状態で前記導光部の少なくとも一部と同軸状に配置されたコイルとを有することを特徴とする導光ユニット。
【請求項2】
前記導光部は光透過性材料で形成され、前記遮光部は光吸収性材料で形成されており、前記光透過性材料および前記光吸収性材料は、いずれも非磁性体であることを特徴とする請求項1記載の導光ユニット。
【請求項3】
前記導光部は、前記発光部側へ向けて径が拡大するテーパ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項4】
前記導光部の前記発光部側の端面には、前記導光部を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項5】
前記コイルは、コイル基板上に設けられたプレーナー型コイルであり、前記コイル基板には貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記遮光部の一部が挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項6】
前記導光部の前記発光部側の端面と前記発光部との間には、遮光層が形成され、前記遮光層には前記導光部の光路軸と同軸にアパーチャが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項7】
光を発する発光部と、前記光を受けて電気信号に変換する受光部と、前記発光部から前記受光部に到る光路内に配置された請求項1または2に記載の導光ユニットと、前記受光部が出力する電気信号を受けてサンプルの成分に対応した情報を出力する制御ユニットと、前記導光ユニットの前記コイルに通電する電源を具備する光学測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光度測定装置などに利用可能な導光ユニット、およびそれを用いた光学測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、測定試料を入れたPCRチューブ等を測定部の上面から挿入することにより、光源からの検査光を測定試料に照射し、測定試料を通過した検査光を導光ユニットを通して受光部で受光することにより、測定試料の吸光度を測定する光学測定器が開示されている。
【0003】
この光学測定器では、前記導光ユニットとして、弾性を有する透明なシリコーン樹脂で形成された導光路と、この導光路を取り囲んで形成された黒色の光吸収部とを有するものが使用され、前記光吸収部は黒色顔料を分散した弾性を有するシリコーン樹脂で形成されている。この導光ユニットによれば、光入口から入射した光が導光路を通過する際に、光軸からの逸脱が大きい散乱光が前記光吸収部との境界面で吸収され、導光路の光出口からは吸光度測定に必要な検査光のみが導出されることにより、散乱光によるノイズを低減することができる。このため、導光ユニットは空間フィルタとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-62184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光学測定器では、前記導光ユニットによって散乱光によるノイズをより一層減らすためには、前記導光ユニットの前記導光路の光路長を伸ばすか、前記導光路の内径を小さくして、より多くの散乱光を前記光吸収部により吸収させることが必要である。しかし、前記導光路の光路長を伸ばすと導光ユニットが大型になり、装置の小型化が困難になるうえ、前記導光路の光路長を伸ばしたり前記導光路の内径を小さくすると、吸光度測定に必要な検査光も減衰し、高価なセンサを使用して受光素子の感度を高める必要が生じたり、発光素子の光を強めたりする必要が生じ、コスト上の制約が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記問題を解決することを課題としており、本発明の態様1の導光ユニットは、発光部から受光部に到る光路内に配置可能とされ、前記発光部から入射した光を透過して前記受光部へと導く導光部と、前記導光部を包囲して前記導光部から外方へ散乱した光を吸収する遮光部と、前記遮光部の少なくとも一部を介在させた状態で前記導光部の少なくとも一部と同軸状に配置されたコイルとを有する。
【0007】
この導光ユニットによれば、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記導光路を取り囲む磁界を生じ、前記導光路を光軸に沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光路軸に沿って収束する。これにより、前記受光部の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、光学測定器の小型化にも貢献する。
【0008】
態様2の導光ユニットは、前記態様1において、前記導光部は光透過性材料で形成され、前記遮光部は光吸収性材料で形成されており、前記光透過性材料および前記光吸収性材料は、いずれも非磁性体であることを特徴とする。
この場合、前記光透過性材料および前記光吸収性材料は、いずれも非磁性体であることにより、コイルの磁界に影響を与えることがなく、検査光を収束させる効果を高めることが可能である。
【0009】
態様3の導光ユニットは、前記態様1または2において、前記導光部は、前記発光部側へ向けて径が拡大するテーパ部を有することを特徴とする。
この場合、前記発光部側から前記導光部へ入った散乱光が前記導光部と前記遮光部との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって前記発光部側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に前記遮光部での吸収により減衰する。このため、導光部が単純な円柱形状である場合に比して、前記導光部の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。また、散乱光の量を減らすことができるから、十分な散乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、光学測定器の小型化にも貢献する。
【0010】
態様4の導光ユニットは、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記導光部の前記発光部側の端面には、前記導光部を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層が形成されていることを特徴とする。
この場合、前記低屈折率層から入射した散乱光が屈折率の高い前記導光部との境界面で光軸よりもより外側へ向けて屈折するため、前記導光部へ入光した後に前記遮光部で吸収される割合が高まり、前記導光部を通過する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0011】
態様5の導光ユニットは、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記コイルは、コイル基板上に設けられたプレーナー型コイルであり、前記コイル基板には貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記遮光部の一部が挿入されていることを特徴とする。
この場合、前記プレーナー型コイルは通常のコイルに比べて薄型化できるうえ、コイル基板に高精度に配列することが容易であり、さらに前記コイル基板の貫通孔に前記遮光部の一部を挿入することにより、導光ユニットにおけるコイルの取り付けが容易になる。また、導光ユニットを薄型にすることが容易になる。多数の導光ユニットを共通のコイル基板上に配列することも可能である。
【0012】
態様6の導光ユニットは、前記態様1~5のいずれかにおいて、前記導光部の前記発光部側の端面と前記発光部との間に遮光層が形成され、前記遮光層には前記導光部の光路軸と同軸にアパーチャ(光透過部)が形成されていることを特徴とする。
この場合、前記発光部から光軸に沿って進む検査光を前記遮光層のアパーチャを通じて前記導光部へ導く一方、光軸を外れた散乱光は前記遮光層で遮断されるから、前記導光部へ入射する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0013】
態様7の光学測定器は、光を発する発光部と、前記光を受けて電気信号に変換する受光部と、前記発光部から前記受光部に到る光路内に配置された前記態様1~6のいずれかの導光ユニットと、前記受光部が出力する電気信号を受けて前記サンプルの成分に対応した情報を出力する制御ユニットと、前記導光ユニットの前記コイルに通電する電源を具備する。
この光学測定器によれば、前記電源から前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記導光路を取り囲む磁界を生じ、前記導光路を光軸に沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光路軸に沿って収束する。これにより、受光部の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、光学測定器の小型化を図ることができる。
【0014】
前記態様7の光学測定器は、前記発光部から前記受光部に到る光路内に、サンプルを収容する透明筒状容器を支持するサンプルホルダを具備し、前記サンプルホルダは、前記透明筒状容器を保持するホルダ本体と、前記ホルダ本体の内部に設けられ、前記光路を挟んで互いに間隔を開けて配置された少なくとも一対の遮光壁とを有していてもよい。
この場合、前記一対の遮光壁により、前記光路の光軸から所定の程度以上に偏向した散乱光を遮り、前記光軸に沿う検査光のみを通過させるため、サンプルホルダの構造を単純化でき、製造コストが安くできる。また、透明筒状容器を保持するための構造に自由度が高いため、一般的な分析に使用されるバイアル瓶やサンプルチューブなど、任意の容量の透明筒状容器を使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導光ユニットによれば、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記導光路を取り囲む磁界を生じ、前記導光路を光軸に沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光路軸に沿って収束する。これにより、受光部の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、光学測定器の小型化を図ることができる。
また、本発明の光学測定器によれば、前記導光ユニットの前記効果を得ることができ、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る光学測定器の縦断面図である。
図2】同実施形態のマイクロプレートの平面図である。
図3】同実施形態の発光基板、マイクロプレート、および導光ユニットの構造を示す縦断面図である。
図4】同実施形態のコイルの配置を示す図3中IV-IV線視図である。
図5】同実施形態の発光基板、マイクロプレート、および導光ユニットを示す断面拡大図である。
図6】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図7】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図8】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図9図8中のIX-IX線視図である。
図10】他の実施形態の光学測定器の一部破断した平面図である。
図11】同実施形態の縦断面図である。
図12】同実施形態に用いるサンプルホルダの平面図である。
図13】同実施形態に用いるサンプルホルダの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態の光学測定器1を示す縦断面図、図2はその光学測定器に使用されるマイクロプレート6の平面図である。
【0018】
光学測定器1は、箱状のケース2を有し、このケース2はケース本体2Bとその上端を開閉可能に塞ぐ上蓋2Aとからなる。ケース2の内部には、上蓋2Aに固定された発光基板3と、発光基板3の下方にケース本体2Bに対して着脱可能に配置されたマイクロプレート6と、その下に配置されケース本体2Bに対して固定された導光ユニット10と、さらにその下に配置された受光基板16とを有する。
【0019】
発光基板3には、縦横に等間隔に並んで発光素子4が取り付けられ、下方へ光を照射する。マイクロプレート6には多数のウェル8が形成され、これらウェル8の中に吸光度などを検査すべき液体のサンプルが入れられる。導光ユニット10の内部には、ウェル8内を通過した発光素子4からの光が入射され、光学測定に必要な検査光は通過し、光学測定に不要な散乱光はできるだけ遮断する空間フィルタ14がウェル8と対向する位置にそれぞれ設けられている。空間フィルタ14を通過した検査光は、受光基板16上に各ウェル8と対応して受光センサ12が配列されており、これら受光センサ12がウェル8内のサンプルを通過した検査光を受けて電気信号へ変換する。互いに対応する発光素子4、ウェル8、空間フィルタ14、および受光センサ12は光軸Lに沿って同軸に配列され、光軸Lに沿ってそれぞれ光路が形成される。
【0020】
ケース2内にはさらに、図示していないが受光センサ12からの電気信号を受けて光学情報へ変換し、ケース2の表面に露出した表示装置で表示させたり、外部のコンピューター等へ伝達する制御ユニットと、制御ユニットを操作するための操作盤と、制御ユニットや空間フィルタ14へ電力を供給する電源が収容されている。制御ユニット24にBluetooth(ブルートゥース:登録商標)またはWIFI(ワイファイ)等の規格に基づく無線通信回路を組み込み、外部のコンピューターや記録装置へ無線信号で測定結果を送る構成としてもよい。以下、各部を詳しく説明する。
【0021】
発光素子4としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、白熱電球等が一般的であるが、その他の発光素子を用いてもよい。発光素子が発光する波長も、受光センサ12に対応して、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。発光素子は、受光センサ12の受光波長に対応して、複数の波長域の検査光を同時に、もしくは測定対象に応じて切り替えていずれかの波長の検査光を出力するものであってもよい。連続波長の光源であってもよい。
【0022】
マイクロプレート6は、受光センサ12が反応する光を透過する材質からなり、一般には透明な各種樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレンなどで形成されるが、他の樹脂やガラスや透明なセラミックスで形成することも可能である。マイクロプレート6の上面に開口するウェル8の個数は限定されず、例えば6、24、96、384などいかなる数であってもよい。ウェル8の底部は一般に水平面もしくは窪んだ曲面とされていることが好ましいが限定はされない。ウェル8の平面視した形状は通常は円形、四角形、または六角形などであるが限定はされない。
【0023】
導光ユニット10は本発明の主特徴となるものであり、図3図5に示すように、発光素子4から入射した光を透過して受光センサ12へと導く導光部18と、導光部18を包囲して導光部18から外方へ散乱した散乱光を吸収する遮光部20と、遮光部20の少なくとも一部を介在させた状態で導光部18の少なくとも一部と同軸状に配置されたコイル22とを有する。導光部18は光透過性材料で形成され、遮光部20は光吸収性材料で形成されており、前記光透過性材料および前記光吸収性材料は、いずれも非磁性体であることが好ましい。
【0024】
導光ユニット10はさらに、導光部18および遮光部20を覆ってマイクロプレート6の全域に広がる低屈折率層24と、低屈折率層24の上に形成された遮光層26とを有する。遮光層26には、光軸Lと同軸にアパーチャ26Aがそれぞれ形成されている。
【0025】
導光部18を形成する光透過性材料は、発光素子4が発する光に対して透明な材質であり、好ましい材質として例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。導光部18は、発光素子4側すなわち上方へ向けて径が指数的に拡大するラッパ状のテーパ部18Aと、テーパ部18Aの下端に連なって円柱状に形成された同径部18Bとが一体形成されたものである。導光部18は光軸Lに対して回転対称に形成されているが、水平断面を矩形状等に変形することも可能である。
【0026】
遮光部20は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。黒い材質としては各種樹脂に黒い顔料を加えた樹脂で形成してもよい。吸収率が高く反射率が低い黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、複合酸化物ブラックなどを例示できるが、これらに限定されることはない。必要な吸収率を満たすことができれば、黒色でなくても使用可能である。顔料は単一種に限らず、複数種を混合して使用することも可能である。顔料の粒径は限定されないが、検査光の波長に対し吸収率が高く反射率は低くなるような粒径を選択することが好ましい。遮光部20を構成する材質としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。導光部18と遮光部20を同種もしくは屈折率が近似した樹脂やガラスで形成することにより、導光部18と遮光部20との境界面での光反射を低減してノイズを低下することが可能である。
【0027】
遮光部20は、主にテーパ部18Aを包囲する大径部20Aと、主に同径部18Bを包囲する小径部20Bとを一体的に有している。同径部18Bの外周面の上端に円環状のコイル22が嵌めあわされ、コイル22と光軸Lが同軸に配置されている。小径部20Bが形成されて、そこにコイル22が配置されていることにより、コイル22と導光部18の距離を近づけて光軸Lの近傍での磁界を強めるようにしている。
【0028】
コイル22は、絶縁体で被覆した導線を円環状に巻回したものであり、コイル22の内径は小径部20Bに略等しくされている。コイル22に直流電流を供給することにより、導光部18の内部には光軸Lに沿う磁力線を有する磁界が光軸Lを中心として回転対称に形成される。このため、導光部18内、特にこの例では同径部18Bを通過する検査光の進路を光軸Lに沿ってわずかながら収束させることができ、受光センサ12の受光面に検査光を集めて感度を高めることが可能である。
【0029】
低屈折率層24は、導光部18を形成する光透過性材料と同様に、発光素子4が発する光に対して透明な材質であり、好ましい材質として例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。これらの中から、導光部18の光透過性材料よりも屈折率が低い材質を選択して形成されている。これにより、低屈折率層24から入射した散乱光は、屈折率の高い導光部18との境界面で光軸よりもより外側へ向けて屈折する。これにより、導光部18へ入光した後に遮光部20で吸収される割合が高まり、導光部18を通過する散乱光の量を減らすことができる。
【0030】
遮光層26は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。黒い材質としては遮光部20と同様の材質を選択することができる。アパーチャ26Aの内径は限定されないが、導光部18への散乱光の入射をできるだけ減らすことができ、しかも受光センサ12の受光面に達する検査光の減衰をできるだけ生じない値に設定される。
【0031】
受光センサ12は、従来用いられているいかなる種類であってもよく、赤色、青色、緑色のそれぞれの受光量を検知することができるRGBカラーセンサ、イメージセンサ、CMOSセンサ、光電効果型センサ、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCD、フォトレジスタ、CdSセル、中赤外領域用のHgCdTeセルなどいかなる光電センサであってもよく、反応する波長も、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。受光センサ12は、カラーセンサのように複数の波長に反応して複数の信号を同時に出力するものであってもよいし、画像信号出力が可能なものでもよい。
【0032】
以上の構成からなる導光ユニット10および光学測定器1によれば、コイル22に図示しない電源から光学測定時に通電することにより、コイル22が導光部18を取り囲む磁界を生じ、導光部18を光軸Lに沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光軸Lに沿って僅かながら収束する。これにより、受光センサ12の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、光学測定器1の小型化にも貢献することができる。
【0033】
また、導光部18が発光素子4側へ向けて径が拡大するテーパ部18Aを有することにより、上面からテーパ部18Aへ入った散乱光が導光部18と遮光部20との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって発光素子4側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に遮光部20での吸収により減衰する。このため、導光部18が単純な円柱形状である場合に比して、導光部18の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。また、散乱光の量を減らすことができるから、十分な散乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、光学測定器1の小型化にも貢献する。
【0034】
また、導光部18の発光素子4側の端面に、導光部18を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層24が形成されているから、低屈折率層24から入射した散乱光が屈折率の高い導光部18との境界面で光軸Lよりもより外側へ向けて屈折するため、導光部18へ入光した後に遮光部20で吸収される割合が高まり、導光部18を通過する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0035】
また、低屈折率層24の上に検査光を吸収する遮光層26が形成され、遮光層26には光軸Lと同軸にアパーチャ26Aが形成されているから、光軸Lに沿って進む検査光をアパーチャ26Aを通じて導光部18へ導く一方、光軸Lを外れた散乱光は遮光層26で遮断される。よって、導光部18へ入射する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の説明において第1実施形態と略同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第2実施形態の特徴は、導光部18の形状を上方へ向けて径が拡大する截頭円錐形にしたことである。このように導光部18の全長に亘って円錐部18Cとした場合にも、上面から円錐部18Cへ入った散乱光が導光部18と遮光部20との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって発光素子4側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に遮光部20での吸収により減衰する。このため、導光部18が単純な円柱形状である場合に比して、導光部18の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。
【0038】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第3実施形態の特徴は、導光部18の外形を単純な円柱状の円柱部18Dにしたことである。導光部18と遮光部20との境界面での反射率が小さい場合には、このような構成を採ることも可能である。
【0039】
[第4実施形態]
図8および図9は、第4実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第4実施形態の特徴は、コイルとして、コイル基板28上に設けられたプレーナー型コイル(この例ではプリントコイル)30を用いた点にある。コイル基板28には遮光部20の小径部20Bに対応して小径部20Bと同径の貫通孔が形成され、これら貫通孔に小径部20Bがそれぞれ挿入されている。プリントコイル30は、プリント基板を利用して一層の螺旋状に配線を形成したものであり、通常のコイルに比べて厚さを極めて小さくすることが可能である。プリントコイルを複数層重ねたプレーナー型コイルを使用してもよい。
【0040】
第4実施形態によれば、プリントコイル30またはプレーナー型コイルは、通常の巻線コイルに比べて薄型化できるうえ、コイル基板28に高精度に配列形成することが容易であり、さらにコイル基板28の貫通孔に遮光部20の一部を挿入することにより、導光ユニット10におけるコイル取り付けが容易になる。また、導光ユニット10を薄型にすることが容易になるうえ、多数の空間フィルタ14を共通のコイル基板28上に高密度に配列することも可能である。
【0041】
[第5実施形態]
図10図13は、第5実施形態の導光ユニット10および光学測定器1を示している。この光学測定器1は、単一のサンプルについて測定を行うポータブル型の吸光度測定器であり、小型のケース32を有し、ケース32はケース本体32Bと上蓋32Aとから構成されている。ケース32の内部には、直方体状をなすサンプルホルダ36が収容され、四隅の位置決め台38によって定位置に着脱可能に保持されている。サンプルホルダ36は一方の側壁部の略中央から他方の側壁部の略中央へ貫通する光軸Lを有し、光軸Lの一端には発光素子4が配置され、光軸Lの他端には導光ユニット10を介して受光センサ12が配置されている。
【0042】
ケース本体32Bの内部には制御ユニット45が設けられ、発光素子4およびコイル22への電源供給と、受光センサ12からの電気信号の処理を行う。制御ユニット45には図示しない操作ユニットおよび表示装置が接続され、上蓋32Aの外周面に露出したスイッチ等から使用者が操作できる。
【0043】
サンプルホルダ36の上面の中央部には、筒状容器44を垂直に挿入するための空間である容器収容部が形成され、上蓋32Aには対応する位置に円形の開口部32Cが形成されている。容器収容部に筒状容器44を底から差し込むことにより、サンプルホルダ36が筒状容器44を定位置に保持する。本発明の筒状容器44は限定されないが、この実施形態では筒状容器44として、一般に流通しているバイアル瓶、サンプルチューブ、PCRチューブなどが使用できる。筒状容器44は、透明なガラスまたは透明な樹脂で形成された有底円筒形の容器本体44Aと、この容器本体44Aの上端に着脱可能に取り付けられて気密的に塞ぐキャップ44Bとを有している。
【0044】
図12および図13は、この実施形態のサンプルホルダ36の平面図および正面図である。この実施形態のサンプルホルダ36は、箱型のホルダ本体36Aと、ホルダ本体36Aの上端を塞ぐ矩形状のホルダ上蓋36Bを有し、ホルダ上蓋36Bは四隅のねじ穴50を通じてネジによりホルダ本体36Aに固定される。ホルダ上蓋36Bおよびホルダ本体36Aは例えば硬質樹脂または金属などで形成されている。ホルダ本体36Aには、一方の側壁部の下寄りの中央部に円形または矩形状の光入口46が形成され、光入口46と対向する他方の側板部には円形または矩形状の光出口48が形成されている。光軸Lは光入口46から光出口48を貫通して形成されている。
【0045】
ホルダ本体36Aの光入口46および光出口48が形成されている内壁面には、光軸Lの両側に沿って光軸Lを挟むように、互いに平行な各一対の遮光壁40が形成されている。遮光壁40は矩形状をなし、ホルダ本体36Aの底面および側壁部に垂直に固定されている。遮光壁40の先端は、光軸Lとは反対側が片刃状に切りかかれて尖端部40Aが形成されている。尖端部40Aは、容器収容部へ挿入された筒状容器44の外周面に上下方向に沿って線接触する。互いに平行に位置する遮光壁40同士の間隙幅は、光学測定器としての吸光度等の測定に必要な検査光の直径に応じて決定される。
【0046】
この実施形態のホルダ本体36Aの内壁面には、遮光壁40が形成されていない一対の側板部の内壁面の中央に沿ってそれぞれ支持壁42が形成されている。支持壁42は、光軸Lから見て遮光壁40よりも外側に位置する。支持壁42は矩形状をなし、ホルダ本体36Aの底面および側壁部に垂直に固定されている。これにより、この実施形態では、4枚の遮光壁40の尖端部40Aと、2枚の支持壁42の先端面により、容器本体44Aがサンプルホルダ36内の正確な位置に保持される。
【0047】
遮光壁40および支持壁42を含めてホルダ本体36Aの内面、およびホルダ上蓋36Bの下面は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。ホルダ本体36Aおよびホルダ上蓋36Bの全体が黒い材質で形成されていてもよいし、サンプルホルダ36の内面に黒い吸光層を形成してもよい。
【0048】
遮光壁40と支持壁42により、ホルダ本体36Aの内部には4つの直方体状の空間43が形成される。これらの空間43は、光軸Lからの偏位が大きい光、および容器本体44Aから反射した散乱光を空間43内に閉じ込めて、受光センサ12へ到達してノイズを発生することを防ぐ。また、これらの空間43があることにより、遮光壁40の水平方向への長さを確保でき、光軸Lからの偏向角が所定値よりも大きい光を遮光壁40が吸収する効果を高めることができる。
【0049】
発光素子4からの検査光は、光入口46から入射し、一対の遮光壁40の間を通り、容器本体44Aおよびサンプルを通過し、さらに一対の遮光壁40の間を通り、光出口48から導出される。光出口48に隣接して配置された導光ユニット10は、検査光を受光センサ12へ導く。その過程で光軸Lから偏位した検査光を吸収して、ノイズを除去する作用を有する。導光ユニット10の構造は第1実施形態と同様である。
【0050】
上記構成からなる第5実施形態によれば、発光素子4が発した検査光が、サンプルホルダ36の光入口46から入射し、一対の遮光壁40の間を通り、容器本体44Aおよびサンプルを通過し、さらに一対の遮光壁40の間を通り、光出口48から導出され、導光ユニット10を通って受光センサ12の受光面18Aへ入射する。
【0051】
発光素子4が発した検査光のうち、光軸Lに対して一定角度以下の検査光は二対の遮光壁40の間を通過し、導光ユニット10に入射する。検査光が容器本体44Aで反射しても、反射光は何れかの空間43に入って吸収される。一方、発光素子4が発した検査光のうち、光軸Lに対して一定角度以上偏向した散乱光は、光入口46側の遮光壁40を通り抜けて、容器本体44Aおよびサンプルを通過したとしても、光出口48側の遮光壁40で遮られて殆どが吸収され、一部は反射しても反射光はいずれかの空間43に閉じ込められて減衰する。
【0052】
さらに、コイル22に通電することにより、コイル22が導光部18を取り囲む磁界を生じ、導光部18を光軸Lに沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光軸Lに沿って僅かながら収束する。これにより、受光センサ12の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、この種のポータブル型光学測定器の小型化にも貢献することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を挙げて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、上記各実施形態を選択して組み合わせることも可能であるし、光学測定器について周知の構成を加えたり、各実施形態の非特徴部分と交換することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記導光路を取り囲む磁界を生じ、前記導光路を光軸に沿って進む検査光がローレンツ力を受けて光路軸に沿って収束する。これにより、前記受光部の受光面に検査光を集めて感度を高め、ノイズレベルを低下してS/N比を向上することができる。また、同一ノイズレベルを達成するための光路長を短くすることができ、光学測定器の小型化にも貢献するから、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 光学測定器 2 ケース
3 発光基板 4 発光素子
6 マイクロプレート 8 ウェル
10 導光ユニット 12 受光センサ
14 空間フィルタ 16 受光基板
18 導光部 18B 同径部
18C 円錐部 18D 円柱部
18A テーパ部 20 遮光部
20B 小径部 20A 大径部
22 コイル 24 低屈折率層
26 遮光層 26A アパーチャ
28 コイル基板 2B ケース本体
2A 上蓋 30 プリントコイル
32 ケース 32B ケース本体
32A 上蓋 34 発光基板
36 サンプルホルダ 38 位置決め台
40 遮光壁 42 支持壁
43 空間 44 筒状容器
44B キャップ 44A 容器本体
45 制御ユニット 46 光入口
48 光出口 50 ねじ穴
L 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部から受光部に到る光路内に配置可能とされ、前記発光部から入射した光を透過して前記受光部へと導く導光部と、前記導光部を包囲して前記導光部から外方へ散乱した光を吸収する遮光部と、前記遮光部の少なくとも一部を介在させた状態で前記導光部の少なくとも一部と同軸状に配置された円環状のコイルとを有し、
前記遮光部は、前記導光部の前記光路に沿う一端部側に大径部を有し、前記導光部の前記光路に沿う他端部側に前記光路と同軸の小径部を有し、
前記コイルは前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接しており、
前記導光部は光透過性材料で形成され、前記遮光部は光吸収性材料で形成され、前記光透過性材料および前記光吸収性材料はいずれも非磁性体であることを特徴とする導光ユニット。
【請求項2】
前記導光部は、前記発光部側へ向けて径が拡大するテーパ部を有することを特徴とする請求項1に記載の導光ユニット。
【請求項3】
前記大径部は、前記テーパ部を包囲していることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項4】
前記導光部の前記発光部側の端面には、前記導光部を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項5】
前記コイルは、コイル基板上に設けられたプレーナー型コイルであり、前記コイル基板には貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記遮光部の前記小径部が挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項6】
前記導光部の前記発光部側の端面と前記発光部との間には、遮光層が形成され、前記遮光層には前記導光部の光路軸と同軸にアパーチャが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項7】
光を発する発光部と、前記光を受けて電気信号に変換する受光部と、前記発光部から前記受光部に到る光路内に配置された請求項1または2に記載の導光ユニットと、前記受光部が出力する電気信号を受けてサンプルの成分に対応した情報を出力する制御ユニットと、前記導光ユニットの前記コイルに通電する電源を具備する光学測定器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光度測定装置などに利用可能な導光ユニット、およびそれを用いた光学測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、測定試料を入れたPCRチューブ等を測定部の上面から挿入することにより、光源からの検査光を測定試料に照射し、測定試料を通過した検査光を導光ユニットを通して受光部で受光することにより、測定試料の吸光度を測定する光学測定器が開示されている。
【0003】
この光学測定器では、前記導光ユニットとして、弾性を有する透明なシリコーン樹脂で形成された導光路と、この導光路を取り囲んで形成された黒色の光吸収部とを有するものが使用され、前記光吸収部は黒色顔料を分散した弾性を有するシリコーン樹脂で形成されている。この導光ユニットによれば、光入口から入射した光が導光路を通過する際に、光軸からの逸脱が大きい散乱光が前記光吸収部との境界面で吸収され、導光路の光出口からは吸光度測定に必要な検査光のみが導出されることにより、散乱光によるノイズを低減することができる。このため、導光ユニットは空間フィルタとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-62184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光学測定器では、前記導光ユニットによって散乱光によるノイズをより一層減らすためには、前記導光ユニットの前記導光路の光路長を伸ばすか、前記導光路の内径を小さくして、より多くの散乱光を前記光吸収部により吸収させることが必要である。しかし、前記導光路の光路長を伸ばすと導光ユニットが大型になり、装置の小型化が困難になるうえ、前記導光路の光路長を伸ばしたり前記導光路の内径を小さくすると、吸光度測定に必要な検査光も減衰し、高価なセンサを使用して受光素子の感度を高める必要が生じたり、発光素子の光を強めたりする必要が生じ、コスト上の制約が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記問題を解決することを課題としており、本発明の態様1の導光ユニットは、発光部から受光部に到る光路内に配置可能とされ、前記発光部から入射した光を透過して前記受光部へと導く導光部と、前記導光部を包囲して前記導光部から外方へ散乱した光を吸収する遮光部と、前記遮光部の少なくとも一部を介在させた状態で前記導光部の少なくとも一部と同軸状に配置された円環状のコイルとを有し、
前記遮光部は、前記導光部の前記光路に沿う一端部側に大径部を有し、前記導光部の前記光路に沿う他端部側に前記光路と同軸の小径部を有し、
前記コイルは前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接しており、
前記導光部は光透過性材料で形成され、前記遮光部は光吸収性材料で形成され、前記光透過性材料および前記光吸収性材料はいずれも非磁性体であることを特徴とする。
【0007】
この導光ユニットによれば、円環状のコイルが前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接していることにより、前記光路軸に対して同軸にコイルを位置決めすることができ、コイルを備えた導光ユニットの組み立てが容易になり、光学測定器の小型化に貢献する。また、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記小径部を取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された前記遮光部および前記導光部を通して、前記導光路を光軸に沿って進む検査光に磁界をかけることができる。
【0008】
【0009】
態様の導光ユニットは、前記態様1において、前記導光部は、前記発光部側へ向けて径が拡大するテーパ部を有することを特徴とする。
この場合、前記発光部側から前記導光部へ入った散乱光が前記導光部と前記遮光部との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって前記発光部側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に前記遮光部での吸収により減衰する。このため、導光部が単純な円柱形状である場合に比して、前記導光部の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。また、散乱光の量を減らすことができるから、十分な散乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、光学測定器の小型化にも貢献する。
態様3の導光ユニットは、態様1または2において、前記大径部が前記テーパ部を包囲していることを特徴とする。
【0010】
態様4の導光ユニットは、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記導光部の前記発光部側の端面には、前記導光部を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層が形成されていることを特徴とする。
この場合、前記低屈折率層から入射した散乱光が屈折率の高い前記導光部との境界面で光軸よりもより外側へ向けて屈折するため、前記導光部へ入光した後に前記遮光部で吸収される割合が高まり、前記導光部を通過する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0011】
態様5の導光ユニットは、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記コイルは、コイル基板上に設けられたプレーナー型コイルであり、前記コイル基板には貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記小径部が挿入されていることを特徴とする。
この場合、前記プレーナー型コイルは通常のコイルに比べて薄型化できるうえ、コイル基板に高精度に配列することが容易であり、さらに前記コイル基板の貫通孔に前記遮光部の一部を挿入することにより、導光ユニットにおけるコイルの取り付けが容易になる。また、導光ユニットを薄型にすることが容易になる。多数の導光ユニットを共通のコイル基板上に配列することも可能である。
【0012】
態様6の導光ユニットは、前記態様1~5のいずれかにおいて、前記導光部の前記発光部側の端面と前記発光部との間に遮光層が形成され、前記遮光層には前記導光部の光路軸と同軸にアパーチャ(光透過部)が形成されていることを特徴とする。
この場合、前記発光部から光軸に沿って進む検査光を前記遮光層のアパーチャを通じて前記導光部へ導く一方、光軸を外れた散乱光は前記遮光層で遮断されるから、前記導光部へ入射する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0013】
態様7の光学測定器は、光を発する発光部と、前記光を受けて電気信号に変換する受光部と、前記発光部から前記受光部に到る光路内に配置された前記態様1~6のいずれかの導光ユニットと、前記受光部が出力する電気信号を受けて前記サンプルの成分に対応した情報を出力する制御ユニットと、前記導光ユニットの前記コイルに通電する電源を具備する。
この光学測定器によれば、円環状のコイルが前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接していることにより、光路軸に対して同軸に前記コイルを位置決めすることができ、コイルを備えた導光ユニットの組み立てが容易になり、光学測定器の小型化に貢献する。また、前記電源から前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記小径部を取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された前記遮光部および前記導光部を通して、前記導光路を光軸に沿って進む検査光に磁界をかけることができる。
【0014】
前記態様7の光学測定器は、前記発光部から前記受光部に到る光路内に、サンプルを収容する透明筒状容器を支持するサンプルホルダを具備し、前記サンプルホルダは、前記透明筒状容器を保持するホルダ本体と、前記ホルダ本体の内部に設けられ、前記光路を挟んで互いに間隔を開けて配置された少なくとも一対の遮光壁とを有していてもよい。
この場合、前記一対の遮光壁により、前記光路の光軸から所定の程度以上に偏向した散乱光を遮り、前記光軸に沿う検査光のみを通過させるため、サンプルホルダの構造を単純化でき、製造コストが安くできる。また、透明筒状容器を保持するための構造に自由度が高いため、一般的な分析に使用されるバイアル瓶やサンプルチューブなど、任意の容量の透明筒状容器を使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導光ユニットによれば、円環状のコイルが前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接していることにより、光路軸に対して同軸に前記コイルを位置決めすることができ、コイルを備えた導光ユニットの組み立てが容易になり、光学測定器の小型化に貢献する。また、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記小径部を取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された前記遮光部および前記導光部を通して、前記導光路を光軸に沿って進む検査光に磁界をかけることができる。
また、本発明の光学測定器によれば、前記導光ユニットの前記効果を得ることができ、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る光学測定器の縦断面図である。
図2】同実施形態のマイクロプレートの平面図である。
図3】同実施形態の発光基板、マイクロプレート、および導光ユニットの構造を示す縦断面図である。
図4】同実施形態のコイルの配置を示す図3中IV-IV線視図である。
図5】同実施形態の発光基板、マイクロプレート、および導光ユニットを示す断面拡大図である。
図6】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図7】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図8】他の実施形態の導光ユニットの断面拡大図である。
図9図8中のIX-IX線視図である。
図10】他の実施形態の光学測定器の一部破断した平面図である。
図11】同実施形態の縦断面図である。
図12】同実施形態に用いるサンプルホルダの平面図である。
図13】同実施形態に用いるサンプルホルダの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態の光学測定器1を示す縦断面図、図2はその光学測定器に使用されるマイクロプレート6の平面図である。
【0018】
光学測定器1は、箱状のケース2を有し、このケース2はケース本体2Bとその上端を開閉可能に塞ぐ上蓋2Aとからなる。ケース2の内部には、上蓋2Aに固定された発光基板3と、発光基板3の下方にケース本体2Bに対して着脱可能に配置されたマイクロプレート6と、その下に配置されケース本体2Bに対して固定された導光ユニット10と、さらにその下に配置された受光基板16とを有する。
【0019】
発光基板3には、縦横に等間隔に並んで発光素子4が取り付けられ、下方へ光を照射する。マイクロプレート6には多数のウェル8が形成され、これらウェル8の中に吸光度などを検査すべき液体のサンプルが入れられる。導光ユニット10の内部には、ウェル8内を通過した発光素子4からの光が入射され、光学測定に必要な検査光は通過し、光学測定に不要な散乱光はできるだけ遮断する空間フィルタ14がウェル8と対向する位置にそれぞれ設けられている。空間フィルタ14を通過した検査光は、受光基板16上に各ウェル8と対応して受光センサ12が配列されており、これら受光センサ12がウェル8内のサンプルを通過した検査光を受けて電気信号へ変換する。互いに対応する発光素子4、ウェル8、空間フィルタ14、および受光センサ12は光軸Lに沿って同軸に配列され、光軸Lに沿ってそれぞれ光路が形成される。
【0020】
ケース2内にはさらに、図示していないが受光センサ12からの電気信号を受けて光学情報へ変換し、ケース2の表面に露出した表示装置で表示させたり、外部のコンピューター等へ伝達する制御ユニットと、制御ユニットを操作するための操作盤と、制御ユニットや空間フィルタ14へ電力を供給する電源が収容されている。制御ユニット24にBluetooth(ブルートゥース:登録商標)またはWIFI(ワイファイ)等の規格に基づく無線通信回路を組み込み、外部のコンピューターや記録装置へ無線信号で測定結果を送る構成としてもよい。以下、各部を詳しく説明する。
【0021】
発光素子4としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、白熱電球等が一般的であるが、その他の発光素子を用いてもよい。発光素子が発光する波長も、受光センサ12に対応して、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。発光素子は、受光センサ12の受光波長に対応して、複数の波長域の検査光を同時に、もしくは測定対象に応じて切り替えていずれかの波長の検査光を出力するものであってもよい。連続波長の光源であってもよい。
【0022】
マイクロプレート6は、受光センサ12が反応する光を透過する材質からなり、一般には透明な各種樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレンなどで形成されるが、他の樹脂やガラスや透明なセラミックスで形成することも可能である。マイクロプレート6の上面に開口するウェル8の個数は限定されず、例えば6、24、96、384などいかなる数であってもよい。ウェル8の底部は一般に水平面もしくは窪んだ曲面とされていることが好ましいが限定はされない。ウェル8の平面視した形状は通常は円形、四角形、または六角形などであるが限定はされない。
【0023】
導光ユニット10は本発明の主特徴となるものであり、図3図5に示すように、発光素子4から入射した光を透過して受光センサ12へと導く導光部18と、導光部18を包囲して導光部18から外方へ散乱した散乱光を吸収する遮光部20と、遮光部20の少なくとも一部を介在させた状態で導光部18の少なくとも一部と同軸状に配置されたコイル22とを有する。導光部18は光透過性材料で形成され、遮光部20は光吸収性材料で形成されており、前記光透過性材料および前記光吸収性材料は、いずれも非磁性体であることが好ましい。
【0024】
導光ユニット10はさらに、導光部18および遮光部20を覆ってマイクロプレート6の全域に広がる低屈折率層24と、低屈折率層24の上に形成された遮光層26とを有する。遮光層26には、光軸Lと同軸にアパーチャ26Aがそれぞれ形成されている。
【0025】
導光部18を形成する光透過性材料は、発光素子4が発する光に対して透明な材質であり、好ましい材質として例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。導光部18は、発光素子4側すなわち上方へ向けて径が指数的に拡大するラッパ状のテーパ部18Aと、テーパ部18Aの下端に連なって円柱状に形成された同径部18Bとが一体形成されたものである。導光部18は光軸Lに対して回転対称に形成されているが、水平断面を矩形状等に変形することも可能である。
【0026】
遮光部20は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。黒い材質としては各種樹脂に黒い顔料を加えた樹脂で形成してもよい。吸収率が高く反射率が低い黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、複合酸化物ブラックなどを例示できるが、これらに限定されることはない。必要な吸収率を満たすことができれば、黒色でなくても使用可能である。顔料は単一種に限らず、複数種を混合して使用することも可能である。顔料の粒径は限定されないが、検査光の波長に対し吸収率が高く反射率は低くなるような粒径を選択することが好ましい。遮光部20を構成する材質としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。導光部18と遮光部20を同種もしくは屈折率が近似した樹脂やガラスで形成することにより、導光部18と遮光部20との境界面での光反射を低減してノイズを低下することが可能である。
【0027】
遮光部20は、主にテーパ部18Aを包囲する大径部20Aと、主に同径部18Bを包囲する小径部20Bとを一体的に有している。同径部18Bの外周面の上端に円環状のコイル22が嵌めあわされ、コイル22と光軸Lが同軸に配置されている。小径部20Bが形成されて、そこにコイル22が配置されていることにより、コイル22と導光部18の距離を近づけて光軸Lの近傍での磁界を強めるようにしている。
【0028】
コイル22は、絶縁体で被覆した導線を円環状に巻回したものであり、コイル22の内径は小径部20Bに略等しくされている。コイル22に直流電流を供給することにより、導光部18の内部には光軸Lに沿う磁力線を有する磁界が光軸Lを中心として回転対称に形成される。このため、導光部18内、特にこの例では同径部18Bを通過する検査光に磁界をかけることができる。
【0029】
低屈折率層24は、導光部18を形成する光透過性材料と同様に、発光素子4が発する光に対して透明な材質であり、好ましい材質として例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラスなどが挙げられる。これらの中から、導光部18の光透過性材料よりも屈折率が低い材質を選択して形成されている。これにより、低屈折率層24から入射した散乱光は、屈折率の高い導光部18との境界面で光軸よりもより外側へ向けて屈折する。これにより、導光部18へ入光した後に遮光部20で吸収される割合が高まり、導光部18を通過する散乱光の量を減らすことができる。
【0030】
遮光層26は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。黒い材質としては遮光部20と同様の材質を選択することができる。アパーチャ26Aの内径は限定されないが、導光部18への散乱光の入射をできるだけ減らすことができ、しかも受光センサ12の受光面に達する検査光の減衰をできるだけ生じない値に設定される。
【0031】
受光センサ12は、従来用いられているいかなる種類であってもよく、赤色、青色、緑色のそれぞれの受光量を検知することができるRGBカラーセンサ、イメージセンサ、CMOSセンサ、光電効果型センサ、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCD、フォトレジスタ、CdSセル、中赤外領域用のHgCdTeセルなどいかなる光電センサであってもよく、反応する波長も、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。受光センサ12は、カラーセンサのように複数の波長に反応して複数の信号を同時に出力するものであってもよいし、画像信号出力が可能なものでもよい。
【0032】
以上の構成からなる導光ユニット10および光学測定器1によれば、円環状のコイル22が小径部20Bの外周に嵌め合わされ、大径部20Aの端面に接していることにより、光軸Lに対して同軸にコイル22を正確に位置決めすることができ、コイル22を備えた導光ユニット10の組み立てが容易になり、光学測定器の小型化に貢献する。また、コイル22に図示しない電源から光学測定時に通電することにより、コイル22が小径部20Bを取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された遮光部20および導光部18を通して、導光部18を光軸Lに沿って進む検査光に磁界をかけることができる。
【0033】
また、導光部18が発光素子4側へ向けて径が拡大するテーパ部18Aを有することにより、上面からテーパ部18Aへ入った散乱光が導光部18と遮光部20との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって発光素子4側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に遮光部20での吸収により減衰する。このため、導光部18が単純な円柱形状である場合に比して、導光部18の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。また、散乱光の量を減らすことができるから、十分な散乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、光学測定器1の小型化にも貢献する。
【0034】
また、導光部18の発光素子4側の端面に、導光部18を構成する光透過性材料よりも屈折率が小さく透明な低屈折率層24が形成されているから、低屈折率層24から入射した散乱光が屈折率の高い導光部18との境界面で光軸Lよりもより外側へ向けて屈折するため、導光部18へ入光した後に遮光部20で吸収される割合が高まり、導光部18を通過する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0035】
また、低屈折率層24の上に検査光を吸収する遮光層26が形成され、遮光層26には光軸Lと同軸にアパーチャ26Aが形成されているから、光軸Lに沿って進む検査光をアパーチャ26Aを通じて導光部18へ導く一方、光軸Lを外れた散乱光は遮光層26で遮断される。よって、導光部18へ入射する散乱光の量を減らすことができ、S/N比を向上することが可能である。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の説明において第1実施形態と略同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第2実施形態の特徴は、導光部18の形状を上方へ向けて径が拡大する截頭円錐形にしたことである。このように導光部18の全長に亘って円錐部18Cとした場合にも、上面から円錐部18Cへ入った散乱光が導光部18と遮光部20との境界面で一部反射したとしても、反射面の傾斜によって発光素子4側へ散乱光の進行方向が屈折し、反射を繰り返す度に遮光部20での吸収により減衰する。このため、導光部18が単純な円柱形状である場合に比して、導光部18の光出口から導出される散乱光の量を減らし、ノイズレベルを低下することができる。
【0038】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第3実施形態の特徴は、導光部18の外形を単純な円柱状の円柱部18Dにしたことである。導光部18と遮光部20との境界面での反射率が小さい場合には、このような構成を採ることも可能である。
【0039】
[第4実施形態]
図8および図9は、第4実施形態を示す光軸Lに沿った断面拡大図であり、第4実施形態の特徴は、コイルとして、コイル基板28上に設けられたプレーナー型コイル(この例ではプリントコイル)30を用いた点にある。コイル基板28には遮光部20の小径部20Bに対応して小径部20Bと同径の貫通孔が形成され、これら貫通孔に小径部20Bがそれぞれ挿入されている。プリントコイル30は、プリント基板を利用して一層の螺旋状に配線を形成したものであり、通常のコイルに比べて厚さを極めて小さくすることが可能である。プリントコイルを複数層重ねたプレーナー型コイルを使用してもよい。
【0040】
第4実施形態によれば、プリントコイル30またはプレーナー型コイルは、通常の巻線コイルに比べて薄型化できるうえ、コイル基板28に高精度に配列形成することが容易であり、さらにコイル基板28の貫通孔に遮光部20の一部を挿入することにより、導光ユニット10におけるコイル取り付けが容易になる。また、導光ユニット10を薄型にすることが容易になるうえ、多数の空間フィルタ14を共通のコイル基板28上に高密度に配列することも可能である。
【0041】
[第5実施形態]
図10図13は、第5実施形態の導光ユニット10および光学測定器1を示している。この光学測定器1は、単一のサンプルについて測定を行うポータブル型の吸光度測定器であり、小型のケース32を有し、ケース32はケース本体32Bと上蓋32Aとから構成されている。ケース32の内部には、直方体状をなすサンプルホルダ36が収容され、四隅の位置決め台38によって定位置に着脱可能に保持されている。サンプルホルダ36は一方の側壁部の略中央から他方の側壁部の略中央へ貫通する光軸Lを有し、光軸Lの一端には発光素子4が配置され、光軸Lの他端には導光ユニット10を介して受光センサ12が配置されている。
【0042】
ケース本体32Bの内部には制御ユニット45が設けられ、発光素子4およびコイル22への電源供給と、受光センサ12からの電気信号の処理を行う。制御ユニット45には図示しない操作ユニットおよび表示装置が接続され、上蓋32Aの外周面に露出したスイッチ等から使用者が操作できる。
【0043】
サンプルホルダ36の上面の中央部には、筒状容器44を垂直に挿入するための空間である容器収容部が形成され、上蓋32Aには対応する位置に円形の開口部32Cが形成されている。容器収容部に筒状容器44を底から差し込むことにより、サンプルホルダ36が筒状容器44を定位置に保持する。本発明の筒状容器44は限定されないが、この実施形態では筒状容器44として、一般に流通しているバイアル瓶、サンプルチューブ、PCRチューブなどが使用できる。筒状容器44は、透明なガラスまたは透明な樹脂で形成された有底円筒形の容器本体44Aと、この容器本体44Aの上端に着脱可能に取り付けられて気密的に塞ぐキャップ44Bとを有している。
【0044】
図12および図13は、この実施形態のサンプルホルダ36の平面図および正面図である。この実施形態のサンプルホルダ36は、箱型のホルダ本体36Aと、ホルダ本体36Aの上端を塞ぐ矩形状のホルダ上蓋36Bを有し、ホルダ上蓋36Bは四隅のねじ穴50を通じてネジによりホルダ本体36Aに固定される。ホルダ上蓋36Bおよびホルダ本体36Aは例えば硬質樹脂または金属などで形成されている。ホルダ本体36Aには、一方の側壁部の下寄りの中央部に円形または矩形状の光入口46が形成され、光入口46と対向する他方の側板部には円形または矩形状の光出口48が形成されている。光軸Lは光入口46から光出口48を貫通して形成されている。
【0045】
ホルダ本体36Aの光入口46および光出口48が形成されている内壁面には、光軸Lの両側に沿って光軸Lを挟むように、互いに平行な各一対の遮光壁40が形成されている。遮光壁40は矩形状をなし、ホルダ本体36Aの底面および側壁部に垂直に固定されている。遮光壁40の先端は、光軸Lとは反対側が片刃状に切りかかれて尖端部40Aが形成されている。尖端部40Aは、容器収容部へ挿入された筒状容器44の外周面に上下方向に沿って線接触する。互いに平行に位置する遮光壁40同士の間隙幅は、光学測定器としての吸光度等の測定に必要な検査光の直径に応じて決定される。
【0046】
この実施形態のホルダ本体36Aの内壁面には、遮光壁40が形成されていない一対の側板部の内壁面の中央に沿ってそれぞれ支持壁42が形成されている。支持壁42は、光軸Lから見て遮光壁40よりも外側に位置する。支持壁42は矩形状をなし、ホルダ本体36Aの底面および側壁部に垂直に固定されている。これにより、この実施形態では、4枚の遮光壁40の尖端部40Aと、2枚の支持壁42の先端面により、容器本体44Aがサンプルホルダ36内の正確な位置に保持される。
【0047】
遮光壁40および支持壁42を含めてホルダ本体36Aの内面、およびホルダ上蓋36Bの下面は、検査光に対して光吸収度の高い黒い材質で形成されている。ホルダ本体36Aおよびホルダ上蓋36Bの全体が黒い材質で形成されていてもよいし、サンプルホルダ36の内面に黒い吸光層を形成してもよい。
【0048】
遮光壁40と支持壁42により、ホルダ本体36Aの内部には4つの直方体状の空間43が形成される。これらの空間43は、光軸Lからの偏位が大きい光、および容器本体44Aから反射した散乱光を空間43内に閉じ込めて、受光センサ12へ到達してノイズを発生することを防ぐ。また、これらの空間43があることにより、遮光壁40の水平方向への長さを確保でき、光軸Lからの偏向角が所定値よりも大きい光を遮光壁40が吸収する効果を高めることができる。
【0049】
発光素子4からの検査光は、光入口46から入射し、一対の遮光壁40の間を通り、容器本体44Aおよびサンプルを通過し、さらに一対の遮光壁40の間を通り、光出口48から導出される。光出口48に隣接して配置された導光ユニット10は、検査光を受光センサ12へ導く。その過程で光軸Lから偏位した検査光を吸収して、ノイズを除去する作用を有する。導光ユニット10の構造は第1実施形態と同様である。
【0050】
上記構成からなる第5実施形態によれば、発光素子4が発した検査光が、サンプルホルダ36の光入口46から入射し、一対の遮光壁40の間を通り、容器本体44Aおよびサンプルを通過し、さらに一対の遮光壁40の間を通り、光出口48から導出され、導光ユニット10を通って受光センサ12の受光面18Aへ入射する。
【0051】
発光素子4が発した検査光のうち、光軸Lに対して一定角度以下の検査光は二対の遮光壁40の間を通過し、導光ユニット10に入射する。検査光が容器本体44Aで反射しても、反射光は何れかの空間43に入って吸収される。一方、発光素子4が発した検査光のうち、光軸Lに対して一定角度以上偏向した散乱光は、光入口46側の遮光壁40を通り抜けて、容器本体44Aおよびサンプルを通過したとしても、光出口48側の遮光壁40で遮られて殆どが吸収され、一部は反射しても反射光はいずれかの空間43に閉じ込められて減衰する。
【0052】
さらに、コイル22に通電することにより、コイル22が小径部20Bを取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された遮光部20および導光部18を通して、導光部18を光軸Lに沿って進む検査光に磁界をかけることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を挙げて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、上記各実施形態を選択して組み合わせることも可能であるし、光学測定器について周知の構成を加えたり、各実施形態の非特徴部分と交換することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、円環状のコイルが前記小径部の外周に嵌め合わされ、前記大径部の端面に接していることにより、光路軸に対して同軸に前記コイルを位置決めすることができ、コイルを備えた導光ユニットの組み立てが容易になり、光学測定器の小型化に貢献する。また、前記コイルに通電することにより、前記コイルが前記小径部を取り囲む磁界を生じ、非磁性体で形成された前記遮光部および前記導光部を通して、前記導光路を光軸に沿って進む検査光に磁界をかけることができるから、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 光学測定器 2 ケース
3 発光基板 4 発光素子
6 マイクロプレート 8 ウェル
10 導光ユニット 12 受光センサ
14 空間フィルタ 16 受光基板
18 導光部 18B 同径部
18C 円錐部 18D 円柱部
18A テーパ部 20 遮光部
20B 小径部 20A 大径部
22 コイル 24 低屈折率層
26 遮光層 26A アパーチャ
28 コイル基板 2B ケース本体
2A 上蓋 30 プリントコイル
32 ケース 32B ケース本体
32A 上蓋 34 発光基板
36 サンプルホルダ 38 位置決め台
40 遮光壁 42 支持壁
43 空間 44 筒状容器
44B キャップ 44A 容器本体
45 制御ユニット 46 光入口
48 光出口 50 ねじ穴
L 光軸