(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103697
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240725BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089982
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2020144602の分割
【原出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】国分 弘一
(72)【発明者】
【氏名】千石 光洋
(57)【要約】
【課題】より安定して動作可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、素子部と、絶縁部と、クエンチ部と、を備える。前記素子部は、第1導電形の第1半導体領域と、第1導電形の第2半導体領域と、第2導電形の第3半導体領域と、第2導電形の第4半導体領域と、を含む。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の上に設けられている。前記第4半導体領域は、前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向と交差する第1面に沿って前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の周りに設けられている。前記第4半導体領域は、前記第3半導体領域よりも低い第2導電形の不純物濃度を有する。前記絶縁部は、前記第1面に沿って前記素子部の周りに設けられている。前記クエンチ部は、前記第3半導体領域と電気的に接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域から前記第2半導体領域へ向かう上方向に平行な第1方向と交差する第1面に沿って、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の周りに設けられ、前記第3半導体領域よりも低い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の下に設けられ、第1導電形の不純物濃度が、前記第1半導体領域における第1導電形の不純物濃度よりも高く、前記第2半導体領域における第1導電形の不純物濃度よりも低い第1導電形の第5半導体領域と、
を含む素子部と、
前記第1面に沿って前記素子部の周りに設けられ、前記上方向と反対の下方向における端部が、前記第5半導体領域の前記下方向における端部よりも下方に位置する絶縁部と、
前記第3半導体領域と電気的に接続されたクエンチ部と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第5半導体領域は、前記第1方向において、前記第1半導体領域の一部と、前記第1半導体領域の別の一部と、の間に位置し、
前記第5半導体領域における第1導電形の不純物濃度は、前記第1半導体領域の前記一部における第1導電形の不純物濃度よりも高く、前記第1半導体領域の前記別の一部における第1導電形の不純物濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第5半導体領域の前記第1方向における長さは、前記第4半導体領域の前記第1方向における長さよりも短い請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域から前記第2半導体領域へ向かう上方向に平行な第1方向と交差する第1面に沿って、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の周りに設けられ、前記第3半導体領域よりも低い第2導電形の不純物濃度を有する第2導電形の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の下に設けられ、第1導電形の不純物濃度が、前記第1半導体領域における第1導電形の不純物濃度よりも高く、前記第2半導体領域における第1導電形の不純物濃度よりも低く、前記第1方向における長さが前記第4半導体領域の前記第1方向における長さよりも短い第1導電形の第5半導体領域と、
を含む素子部と、
前記第1面に沿って前記素子部の周りに設けられた絶縁部と、
前記第3半導体領域と電気的に接続されたクエンチ部と、
を備えた半導体装置。
【請求項5】
前記下方向における前記第4半導体領域の端部は、前記下方向における前記第2半導体領域の端部よりも上方に位置する請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第5半導体領域は、前記第1方向において前記第4半導体領域から離れ、
前記素子部の上面と前記第5半導体領域の下端との間の前記第1方向における距離は、2.5μmよりも長く、4μmよりも短い請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記素子部から前記絶縁部に向かう方向における前記第5半導体領域の長さは、前記方向における前記第4半導体領域の長さの0.8倍より大きく1.2倍未満である請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記素子部は、前記第1方向に交差する第2方向と、前記第1方向及び前記第2方向に沿う面と交差する第3方向と、において複数設けられた請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記素子部は、ガイガーモードで動作される請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記素子部と電気的に接続されたトランジスタをさらに備えた請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を検出する半導体装置がある。半導体装置の動作は、より安定であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より安定して動作可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、素子部と、絶縁部と、クエンチ部と、を備える。前記素子部は、第1導電形の第1半導体領域と、第1導電形の第2半導体領域と、第2導電形の第3半導体領域と、第2導電形の第4半導体領域と、を含む。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の上に設けられている。前記第4半導体領域は、前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向と交差する第1面に沿って前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の周りに設けられている。前記第4半導体領域は、前記第3半導体領域よりも低い第2導電形の不純物濃度を有する。前記絶縁部は、前記第1面に沿って前記素子部の周りに設けられている。前記クエンチ部は、前記第3半導体領域と電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を表す模式的平面図である。
【
図3】参考例に係る半導体装置を表す断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る半導体装置に電圧を印加したときの電気力線を表す模式図である。
【
図6】
図5のA1-A2断面図及びB1-B2断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る半導体装置を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n+、n及びp+、p、p-の表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を表す模式的平面図である。
図2は、
図1のA1-A2断面図である。
図1及び
図2に表したように、第1実施形態に係る半導体装置100は、導電層1、素子部10、絶縁部20、クエンチ部30、絶縁層40、及び配線41を含む。
図1では、絶縁層40が省略されている。また、コンタクトプラグが破線で表されている。
【0009】
図2に表したように、素子部10は、p
-形(第1導電形)半導体領域11(第1半導体領域)、p
+形半導体領域12(第2半導体領域)、n
+形(第2導電形)半導体領域13(第3半導体領域)、及びn形半導体領域14(第4半導体領域)を含む。
【0010】
ここでは、p-形半導体領域11からp+形半導体領域12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に垂直であり、相互に直交する2方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、p-形半導体領域11からp+形半導体領域12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、p-形半導体領域11とp+形半導体領域12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
p+形半導体領域12は、p-形半導体領域11の上に設けられている。p+形半導体領域12におけるp形不純物濃度は、p-形半導体領域11におけるp形不純物濃度よりも高い。n+形半導体領域13は、p+形半導体領域12の上に設けられ、p+形半導体領域12に接する。p+形半導体領域12とn+形半導体領域13との間で、pn接合が形成されている。例えば、pn接合面は、Z方向に垂直なX-Y面(第1面)に沿って広がっている。n形半導体領域14は、X-Y面に沿ってp+形半導体領域12及びn+形半導体領域13の周りに設けられている。
【0012】
絶縁部20は、X-Y面に沿って素子部10の周りに設けられている。絶縁部20は、第1絶縁領域21を含む。第1絶縁領域21の下端は、p+形半導体領域12の下端よりも下方に位置する。例えば、第1絶縁領域21は、p-形半導体領域11に広がる空乏層よりも下方まで延びている。
【0013】
絶縁部20は、第2絶縁領域22をさらに含んでも良い。第2絶縁領域22は、第1絶縁領域21の上に設けられ、X-Y面に沿って広がっている。例えば、第2絶縁領域22は、X方向及びY方向において、n+形半導体領域13と並んでいる。
【0014】
素子部10は、X方向及びY方向において複数設けられている。複数の第1絶縁領域21が、それぞれ、X-Y面に沿って複数の素子部10の周りに設けられている。1つの第2絶縁領域22が、複数の第1絶縁領域21の上に設けられている。つまり、全ての第1絶縁領域21が、共通の1つの第2絶縁領域22に接している。
【0015】
複数の第1絶縁領域21は、互いに離れている。X方向又はY方向において隣り合う第1絶縁領域21同士の間には、半導体領域25が設けられている。半導体領域25におけるp形不純物濃度は、p-形半導体領域11におけるp形不純物濃度と同じでも良いし、異なっていても良い。
【0016】
複数の素子部10及び絶縁部20は、導電層1の上に設けられている。それぞれのp-形半導体領域11は、導電層1と電気的に接続されている。例えば、第1絶縁領域21の下端は、Z方向において導電層1から離れている。
【0017】
クエンチ部30は、素子部10よりも上方に設けられ、n
+形半導体領域13と電気的に接続されている。例えば
図1に表したように、n
+形半導体領域13は、コンタクトプラグ30a、配線30b、コンタクトプラグ30c、クエンチ部30、及びコンタクトプラグ30dを介して、配線41と電気的に接続される。クエンチ部30は、絶縁部20の上に設けられることが好ましい。これにより、素子部10に向けて進む光が、クエンチ部30によって遮られることを抑制できる。
【0018】
絶縁層40は、素子部10及び絶縁部20の上に設けられている。上述した各コンタクトプラグや、各配線、クエンチ部30は、絶縁層40中に設けられている。絶縁層40は、Z方向に積層された複数の絶縁膜を含んでも良い。
【0019】
半導体装置100の動作を説明する。
素子部10に光が入射すると、素子部10で電荷が生成される。例えば、p+形半導体領域12とn+形半導体領域13との間には降伏電圧を超える逆電圧が印加され、素子部10はガイガーモードで動作する。素子部10で発生した電荷により降伏が生じ、多量の電荷が生成される。電荷は、n+形半導体領域13及びクエンチ部30を通って配線41へ流れ、半導体装置100の外部に取り出される。
【0020】
クエンチ部30の電気抵抗は、コンタクトプラグ30a、30c、30d、及び配線30bのそれぞれの電気抵抗よりも大きい。クエンチ部30の電気抵抗は、好ましくは10kΩより大きく10MΩより小さい。クエンチ部30は、素子部10に光が入射し、アバランシェ降伏が発生した際に、アバランシェ降伏の継続を抑制するために設けられる。アバランシェ降伏が発生し、クエンチ部30に電流が流れると、クエンチ部30の電気抵抗に応じて電圧降下が生じる。電圧降下により、p+形半導体領域12とn+形半導体領域13との間の電位差が小さくなり、アバランシェ降伏が停止する。これにより、次に素子部10へ入射した光を検出できるようになる。
【0021】
上述したように、大きな電圧降下を生じさせる抵抗体が、クエンチ部30として設けられても良い。抵抗体に代えて、アクティブクエンチ方式を適用した、トランジスタを含むクエンチ部30が設けられても良い。
【0022】
各要素の材料の一例を説明する。
p-形半導体領域11、p+形半導体領域12、n+形半導体領域13、及びn形半導体領域14、シリコン、炭化シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの半導体材料を含む。半導体材料としてシリコンが用いられるとき、リン、ヒ素、又はアンチモンがn形不純物として用いられる。ボロンがp形不純物として用いられる。
【0023】
導電層1は、p+形の半導体層である。導電層1は、上述した半導体材料を含む。導電層1におけるp形不純物濃度は、p-形半導体領域11におけるp形不純物濃度よりも高い。導電層1は、金属を含んでも良い。例えば、導電層1は、アルミニウム、銅、チタン、金、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0024】
絶縁部20及び絶縁層40は、絶縁材料を含む。素子部10同士の間のクロストークを低減するために、絶縁部20に含まれる絶縁材料の屈折率は、素子部10に含まれる半導体材料の屈折率よりも低いことが好ましい。例えば、絶縁部20及び絶縁層40は、酸化シリコンを含む。
【0025】
抵抗体としてのクエンチ部30は、ポリシリコンを含む。クエンチ部30には、n形不純物又はp形不純物が添加されていても良い。各コンタクトプラグ及び各配線は、金属材料を含む。金属材料は、チタン、タングステン、銅、及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つである。
【0026】
第1実施形態の効果を説明する。
図3は、参考例に係る半導体装置を表す断面図である。
参考例に係る半導体装置100rでは、素子部10において、n形半導体領域14が設けられていない。p
+形半導体領域12及びn
+形半導体領域13は、絶縁部20と接している。
【0027】
半導体装置100rでは、n+形半導体領域13の外周下部に位置する部分Pにおいて、電界強度が大きくなる。これにより、部分P近傍では、他の部分に比べて、アバランシェ降伏が生じ易くなる。例えば、部分P近傍において、他の部分よりも先に降伏が生じるエッジブレークダウンが発生し易くなる。また、部分P近傍において、意図しない降伏が生じることで、ノイズが増大する可能性がある。
【0028】
第1実施形態に係る半導体装置100では、素子部10が、n形半導体領域14を含む。n形半導体領域14は、X-Y面に沿ってp+形半導体領域12及びn+形半導体領域13の周りに設けられている。n形半導体領域14が設けられる場合、n+形半導体領域13の外周下部における電界強度を低減できる。また、n形半導体領域14における電界強度は、半導体装置100rの部分Pにおける電界強度よりも低下する。このため、素子部10における局所的な電界強度の上昇を抑制できる。これにより、例えば、エッジブレークダウンの発生を抑制し、半導体装置100の動作をより安定化できる。また、半導体装置100のノイズを低減できる。
【0029】
n形半導体領域14の下端は、p+形半導体領域12の下端よりも上方に位置することが好ましい。n形半導体領域14の下端がp+形半導体領域12の下端よりも下方に位置すると、降伏時に発生したキャリアがn形半導体領域14へ流れ易くなる。キャリアがn形半導体領域14へ流れた場合、キャリアがn+形半導体領域13へ流れた場合に比べて、配線41を流れる信号が小さくなる。n形半導体領域14は、実質的に不感領域である。n形半導体領域14の下端がp+形半導体領域12の下端よりも上方に位置することで、n形半導体領域14へ流れるキャリアの量を減少させ、半導体装置100の光に対する感度を向上できる。
【0030】
例えば、p+形半導体領域12の下端の位置は、以下の方法により特定される。p+形半導体領域12のpn接合面近傍のp形不純物濃度(第1濃度)を測定する。p+形半導体領域12からZ方向に離れた位置におけるp-形半導体領域11のp形不純物濃度(第2濃度)を測定する。p-形半導体領域11とp+形半導体領域12との間において、第1濃度と第2濃度の中間のp形不純物濃度を有する位置を特定する。その位置が、p+形半導体領域12の下端の位置に対応する。
【0031】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置200では、半導体装置100と比べて、素子部10がp形半導体領域15(第5半導体領域)をさらに含む。
【0032】
p形半導体領域15は、n形半導体領域14の下に設けられている。例えば、p形半導体領域15は、絶縁部20(第1絶縁領域21)に接している。p形半導体領域15におけるp形不純物濃度は、p-形半導体領域11におけるp形不純物濃度よりも高く、p+形半導体領域12におけるp形不純物濃度よりも低い。
【0033】
図5は、第2実施形態に係る半導体装置に電圧を印加したときの電気力線を表す模式図である。
上述した通り、n形半導体領域14へ流れるキャリアの量を低減すると、光に対する感度が向上する。半導体装置200では、
図5に表したように、p形半導体領域15において、電気力線ELを素子部10の内側に向けることができる。これにより、n形半導体領域14へのキャリアの流れを抑制でき、キャリアがp
+形半導体領域12に向けて流れ易くなる。第2実施形態によれば、第1実施形態に比べて、半導体装置200の受光感度を向上できる。
【0034】
p形半導体領域15は、Z方向においてn形半導体領域14から離れていることが好ましい。p形半導体領域15がより下方に位置するほど、n形半導体領域14からより離れた位置で、電気力線ELを内側に向けることができる。これにより、n形半導体領域14へのキャリアの流れをさらに抑制できる。
【0035】
p形半導体領域15におけるp形不純物濃度は、p
-形半導体領域11におけるp形不純物濃度よりも高い。p形半導体領域15におけるキャリアライフタイムは、p
-形半導体領域11におけるキャリアライフタイムよりも短い。
図4に表したp形半導体領域15のZ方向における長さL1が過度に長いと、素子部10で発生したキャリアが、消失し易くなる。すなわち、実効的な受光面積が、減少する。このため、長さL1は、例えば、n形半導体領域14のZ方向における長さL2よりも短いことが好ましい。これにより、実効的な受光面積の減少を抑制しつつ、受光感度を向上できる。
【0036】
例えば、p-形半導体領域11とp形半導体領域15との境界は、以下の方法により特定される。p形半導体領域15における最大のp形不純物濃度(第1濃度)を測定する。p形半導体領域15から離れた位置におけるp-形半導体領域11のp形不純物濃度(第2濃度)を測定する。p-形半導体領域11とp形半導体領域15との間において、第1濃度と第2濃度の中間のp形不純物濃度を有する位置を特定する。その位置が、p-形半導体領域11とp形半導体領域15との間の境界に対応する。
【0037】
図6(a)は、
図5のA1-A2断面図である。
図6(b)は、
図5のB1-B2断面図である。
図6(a)に表したp形半導体領域15の長さL3は、
図6(b)に表したn形半導体領域14の長さL4の、0.8倍より長く1.2倍未満であることが好ましい。長さL3及びL4は、それぞれ、素子部10から絶縁部20に向かう方向におけるp形半導体領域15の長さ及びn形半導体領域14の長さである。長さL3が長さL4の0.8倍未満であると、n形半導体領域14へのキャリアの流れを抑制する効果が弱まる。長さL3が長さL4の1.2倍を超えると、n形半導体領域14へのキャリアの流れを抑制する効果が実質的に変化せずに、p形半導体領域15の容量が増加する。長さL3が長さL4の0.8倍より長く1.2倍未満であることで、p形半導体領域15の容量の増大を抑制しつつ、n形半導体領域14へのキャリアの流れを効果的に抑制できる。
【0038】
例えば、n+形半導体領域13とn形半導体領域14との境界は、以下の方法により特定される。n+形半導体領域13における最大のn形不純物濃度(第1濃度)を測定する。n形半導体領域14の絶縁部20近傍において、最小のn形不純物濃度(第2濃度)を測定する。n+形半導体領域13とn形半導体領域14との間において、第1濃度と第2濃度の中間のn形不純物濃度を有する位置を特定する。その位置が、n+形半導体領域13とn形半導体領域14との境界に対応する。
【0039】
一例として、p+形半導体領域12とn+形半導体領域13との間のpn接合面の深さは、0.5μmよりも深く、1μmよりも浅い。p+形半導体領域12の下端の深さは、0.8μmよりも深く、1.6μmよりも浅い。n形半導体領域14の下端の深さは、0.8μmよりも深く、1.2μmよりも浅い。p形半導体領域15の下端の深さは、2.5μmよりも深く、4μmよりも浅い。深さは、素子部10の上面からのZ方向における距離に対応する。
【0040】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る半導体装置を表す回路図である。
第3実施形態に係る半導体装置300は、複数の素子アレイAr1~Arn及び複数のトランジスタTr1~Trnを含む。
【0041】
複数の素子アレイAr1~Arnのそれぞれは、複数の素子部10及び複数のクエンチ部30を含む。1つの素子部10は、1つのクエンチ部30と直接接続されている。直列接続された1つの素子部10と1つのクエンチ部30の組が、複数並列に接続され、1つの素子アレイを構成している。半導体装置300における素子部10の構成は、例えば半導体装置100又は200における素子部10の構成と同じである。
【0042】
複数のトランジスタTr1~Trnは、それぞれ複数の素子アレイAr1~Arnと電気的に接続されている。複数のトランジスタTr1~Trnの1つが選択されると、対応する複数の素子アレイAr1~Arnの1つが動作する。複数の素子アレイAr1~Arnの1つで発生した信号は、選択された複数のトランジスタTr1~Trnの1つを通して端子Tから取り出される。
【0043】
素子部10において降伏が繰り返し生じることで、素子部10では温度変化が繰り返し生じる。半導体装置300の使用期間の経過に伴い、素子部10の感度が低下することがある。例えば、半導体装置300では、1つのトランジスタが選択され、1つの素子アレイが使用される。半導体装置300の使用に伴い、その素子アレイの感度が低下したときには、別のトランジスタが選択される。これにより、感度の低下していない別の素子アレイを光の検出に使用できる。第3実施形態によれば、使用に伴う半導体装置300の感度の低下を抑制できる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:導電層、 10:素子部、 11:p-形半導体領域、 12:p+形半導体領域、 13:n+形半導体領域、 14:n形半導体領域、 15:p形半導体領域、 20:絶縁部、 21:第1絶縁領域、 22:第2絶縁領域、 25:半導体領域、 30:クエンチ部、 30a,30c,30d:コンタクトプラグ、 30b:配線、 40:絶縁層、 41:配線、 100,100r,200,300:半導体装置、 Ar1~Arn:素子アレイ、 EL:電気力線、 P:部分、 T:端子、 Tr1~Trn:トランジスタ