(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103699
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】作業車両の自律走行システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089994
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2020133181の分割
【原出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】水倉 泰治
(72)【発明者】
【氏名】藥師川 楓
(72)【発明者】
【氏名】岡本 貴典
(72)【発明者】
【氏名】米山 龍太
(72)【発明者】
【氏名】新井 弘之
(57)【要約】
【課題】農作業車両の自律走行システムにおいて、畝の形状変化に左右されることなく、農作業車両を畝に沿って高い精度で自律走行させる技術を提供する。
【解決手段】圃場内で畝5を跨ぎながら農作業を行う農作業車両10を、畝5に沿って自律走行させる農作業車両の自律走行システムである。1条の畝5の両隣の走行面7I,7IIを走行するように離間して設けられた一対の走行部20を有する農作業車両10と、農作業車両10によって跨がれている畝5の両隣の走行面7I,7IIを検出領域に含むように農作業車両10に設置された畝倣い用LiDAR50と、2条の走行面7I,7IIに関する情報に基づいて、農作業車両10によって跨がれている畝5の中心線RCLを推定するとともに、推定された畝5の中心線RCLと農作業車両10の中心線との誤差に基づいて、農作業車両10を畝5に沿うように走行させる制御装置と、を備えている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条の畝からなる畝群と、隣り合う畝の間に形成された走行面と、を有する圃場において前記畝群を跨ぎながら作業を行う作業車両を前記畝に沿って自律走行させる作業車両の自律走行システムであって、
前記作業車両に設置された距離センサと、
前記距離センサによって検出された情報に基づいて前記作業車両によって跨がれている前記畝群の中心線を推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された前記畝群の中心線と前記作業車両の中心線との誤差に基づいて、前記作業車両を前記畝群に沿うように走行させる制御手段と、を備え、
前記畝の両隣に位置する前記走行面上の複数の点からなる点群、前記畝の傾斜部分における各法面上の複数の点からなる点群、および、前記畝の頂面上における複数の点から成る点群の内、水平方向に延在するフラットな面上の点群だけを取り出すことにより前記畝群の中心線上の点を推定するように構成されていることを特徴とする作業車両の自律走行システム。
【請求項2】
前記推定手段は、前記畝群上および当該畝群の両隣の2条の前記各走行面上の点群のうち、前記畝群の両側の傾斜した各法面上の点群を排除し、前記畝群の下端近辺の高さである所定の高さ範囲に含まれる点群を取り出すことにより前記畝群の頂面上の点群を排除し、この取り出された点群である前記各走行面上の点群のうち、一方の前記走行面上の点群の中で最も前記畝群に近い点と、他方の走行面上の点群の中で最も前記畝群に近い点との中点を当該畝群の中心線上の点と推定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両の自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自律走行システムに関し、特に、作業車両を畝に沿って自律走行させる作業車両の自律走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作業の省力化や効率化を図るべく、圃場内で畝を跨ぎながら農作業を行う農作業車両を、畝に自動追従させる自律走行システムが種々提案されている。このような自律走行システムには、例えば、畝と接触する感圧式畝検出板の位置変化に基づいて、畝と植付ユニットの位置関係を制御するものもあるが、かかる自律走行システムでは、畝検出板によって畝を崩したり、削ったりするおそれや、畝検出板と畝との接触による振動を受けるため、検出精度が低いという問題がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、走行車に植付ユニットを左右移動調節自在に装備し、苗を移植する移植畝までの距離を検出する超音波式畝センサを植付ユニットに設け、畝センサの出力信号に基づいて植付ユニットを左右移動制御して、移植畝に沿った植付ユニットの自動追従を行わせるようにした移植機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のものでは、畝と非接触の超音波式畝センサを用いることから、畝を崩したり、削ったりするのを抑えることは可能となる。
【0006】
もっとも、特許文献1のものでは、畝の法面との間の距離を畝センサで検出するところ、畝の形状が崩れているような場合には、畝との距離を検出することが困難となるため、畝の形状変化に対するロバスト性(外乱の影響を受け難い性質)が低いという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業車両の自律走行システムにおいて、畝の形状変化に左右されることなく、作業車両を畝に沿って高い精度で自律走行させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る作業車両の自律走行システムでは、畝上および走行面上の複数の点からなる点群のうち、水平方向に延在するフラットな面上の点群だけを取り出すことにより畝群の中心線上の点を推定するようにしている。
【0009】
具体的には、本発明は、複数条の畝からなる畝群と、隣り合う畝の間に形成された走行面と、を有する圃場において前記畝群を跨ぎながら作業を行う作業車両を前記畝に沿って自律走行させる作業車両の自律走行システムを対象としている。
【0010】
そして、この自律走行システムは、前記作業車両に設置された距離センサと、前記距離センサによって検出された情報に基づいて前記作業車両によって跨がれている前記畝群の中心線を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された前記畝群の中心線と前記作業車両の中心線との誤差に基づいて、前記作業車両を前記畝群に沿うように走行させる制御手段とを備え、記畝の両隣に位置する前記走行面上の複数の点からなる点群、前記畝の傾斜部分における各法面上の複数の点からなる点群、および、前記畝の頂面上における複数の点から成る点群の内、水平方向に延在するフラットな面上の点群だけを取り出すことにより前記畝群の中心線上の点を推定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、植えられた作物の育成等によって環境や形状等が大きく変化し易い畝それ自体ではなく、環境や形状等の変化が畝よりも小さい水平方向に延在するフラットな面に関する情報に基づいて、推定手段が畝群の中心線を推定することから、仮に畝の裾等が局所的に崩れていても、畝群の中心線を精度良く推定することができる。
【0012】
しかも、水平方向に延在するフラットな面に関する情報に基づいて、畝群の中心線を推定することから、どちらか一方の走行面に関する情報に基づいて畝群の中心線を推定する場合に比して、誤差が半減されるので、畝群の中心線の推定精度をより一層高めることができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、環境や形状等の変化が相対的に小さい水平方向に延在するフラットな面に関する情報に基づいて畝群の中心線を推定することから、畝の形状変化に左右されることなく、農作業車両を畝に沿って高い精度で自律走行させることができる。
【0014】
また、前記推定手段は、前記畝群上および当該畝群の両隣の2条の前記各走行面上の点群のうち、前記畝群の両側の傾斜した各法面上の点群を排除し、前記畝群の下端近辺の高さである所定の高さ範囲に含まれる点群を取り出すことにより前記畝群の頂面上の点群を排除し、この取り出された点群である前記各走行面上の点群のうち、一方の前記走行面上の点群の中で最も前記畝群に近い点と、他方の走行面上の点群の中で最も前記畝群に近い点との中点を当該畝群の中心線上の点と推定するように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る農作業車両の自律走行システムによれば、畝群の形状変化に左右されることなく、作業車両を畝群に沿って高い精度で自律走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る農作業車両の自律走行システムを模式的に示す図である。
【
図3】クローラピッチを広げた状態の農作業車両を模式的に示す平面図である。
【
図4】クローラピッチを狭めた状態の農作業車両を模式的に示す平面図である。
【
図5】クローラピッチ可変構造を模式的に説明する図である。
【
図6】農作業車両におけるLiDARの設置位置を模式的に示す斜視図である。
【
図7】畝倣い用LiDARの検出方向を模式的に説明する図である。
【
図8】マーカー検出用LiDARの検出領域を模式的に説明する図である。
【
図9】畝倣い用LiDARの検出領域を模式的に説明する図であり、同図(a)は側面図であり、同図(b)は平面図である。
【
図10】自律走行システムにおける、畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【
図11】自律走行システムにおける、畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【
図12】自律走行システムにおける、畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【
図13】自律走行システムにおける、畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【
図14】自律走行システムにおける、畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【
図15】畝倣い用LiDARの配置位置と、検出可能な点群との関係を模式的に説明する図である。
【
図16】畝倣い用LiDARの検出方向を、真下に向けた場合と、前方斜め下方に向けた場合との関係を模式的に説明する図である。
【
図17】その他の実施形態に係る、フラットな点群の取り出し手法を模式的に説明する図である。
【
図18】従来の畝の中心線の推定手法を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
-自律走行システム-
図1は、本実施形態に係る農作業車両(作業車両)10の自律走行システム1を模式的に示す図である。この自律走行システム1は、複数条の畝5と、相隣り合う畝5,5の間に形成された走行面7と、を有する圃場3内、および、畝5の長手方向の両外側にて畝5の配列方向に延びる枕地9において、農作業車両10を、オペレータ等の操作を要することなく、自律的に走行させるものである。
【0019】
より詳しくは、この自律走行システム1は、圃場3内で畝5を跨ぎながら農作業を行う農作業車両10を、畝5の長手方向に沿って自律的に走行させるとともに、当該農作業車両10に、畝5から枕地9への退出、枕地9での走行および枕地9から畝5への進入を自律的に行わせるものである。このような自律走行を可能とするために、本実施形態の自律走行システム1は、
図1に示すように、畝5の長手方向の両端部5fに立てられたマーカー80と、農作業車両10と、畝倣い用LiDAR50と、マーカー検出用LiDAR60(
図3等参照)と、制御装置70(
図2参照)と、を備えている。
【0020】
<マーカー>
マーカー80は、例えば白木杭であり、
図1に示すように、1条置きの畝5の長手方向の両端部5fに打ち込まれている。なお、マーカー80の材質や形状には特に限定はない。また、本実施形態では、1条置きの畝5にマーカー80を立てているが、後述するように、農作業車両10がマーカー80を跨ぐ場合には、すべての畝5の長手方向の両端部5fにマーカー80を立ててもよい。
【0021】
<農作業車両>
図2は、農作業車両10を模式的に示す側面図であり、
図3は、クローラピッチを広げた状態の農作業車両10を模式的に示す平面図であり、
図4は、クローラピッチを狭めた状態の農作業車両10を模式的に示す平面図である。農作業車両10は、圃場3内で畝5を跨ぎながら除草作業を行うものであり、
図2~
図4に示すように、左右一対の走行部20と、架台部30と、架台昇降機構36と、除草用アタッチメント40と、アタッチメント昇降機構45と、畝倣い用LiDAR50と、マーカー検出用LiDAR60と、制御装置70と、を備えている。
【0022】
左右一対の走行部20は、1条の畝5の両隣の走行面7,7をそれぞれ走行するように機体幅方向に互いに離間して設けられている。各走行部20は、
図2に示すように、駆動輪21と、従動輪22と、2つの転輪23,24と、フレーム25と、クローラベルト26と、走行モータユニット27と、走行用バッテリ29と、を有している。駆動輪21、従動輪22および2つの転輪23,24は、フレーム25に回転自在に支持されている。クローラベルト26は、駆動輪21、従動輪22および2つの転輪23,24に外接するように掛け回されている。走行モータユニット27は、モータと減速機とが一体ユニット化されたものであり、駆動輪21にインホイール状に配設されている。走行用バッテリ29は、走行モータユニット27の上方でフレーム25上に配置されている。
【0023】
各走行部20は、走行用バッテリ29から供給される電力によって駆動する駆動輪21(走行モータユニット27)の駆動力により、従動輪22および2つの転輪23,24で案内されながらクローラベルト26が回ることで、走行面7を走行するように構成されている。なお、各走行部20の前進(正転)、後進(逆転)および停止は、制御装置70によって制御されるようになっている。
【0024】
架台部30は、
図3および
図4に示すように、平面視で略矩形状に形成されていて、一対の走行部20に架け渡されるように、走行部20の上側に設けられている。架台部30は、機体前後方向に延びる左右一対の縦フレーム部材31と、左右一対の縦フレーム部材31を機体幅方向に繋ぐ第1~第4横フレーム部材32,33,34,35と、を有している。左右一対の縦フレーム部材31は、
図2に示すように、架台昇降機構36を介して、左右一対の走行部20のフレーム25とそれぞれ接続されている。これにより、架台部30の幅を変えることで、クローラピッチが変化するようになっている。
【0025】
図5は、クローラピッチ可変構造を模式的に説明する図である。第1~第4横フレーム部材32,33,34,35は、
図5に示すように、左右一対の外側パイプ部32a,33a,34a,35aと、左右一対の外側パイプ部32a,33a,34a,35aの内側に嵌っている内側パイプ部32b,33b,34b,35bと、を有している。第1~第4横フレーム部材32,33,34,35のうち、第2横フレーム部材33には、幅可変用ネジ部33cが設けられている。
【0026】
この架台部30では、幅可変用ネジ部33cを手動で一方向に回転させると、
図5の黒塗り矢印で示すように、第2横フレーム部材33において、左右の外側パイプ部33aが接近し、内側パイプ部33bが左右の外側パイプ部33a内に収まるようになっている。これに伴って、第1、第3および第4横フレーム部材32,34,35においても、内側パイプ部32b,34b,35bが左右の外側パイプ部32a,34a,35a内に収まり、
図4に示すように、左右一対の縦フレーム部材31の機体幅方向の間隔が相対的に狭まるようになっている。そうして、左右一対の縦フレーム部材31は、左右一対の走行部20のフレーム25とそれぞれ接続されていることから、幅可変用ネジ部33cを一方向に回転させると、クローラピッチが相対的に狭まるようになっている。
【0027】
一方、幅可変用ネジ部33cを手動で他方向に回転させると、
図5の白抜き矢印で示すように、第2横フレーム部材33において、左右の外側パイプ部33aが離間し、内側パイプ部33bが左右の外側パイプ部33aから露出するようになっている。これに伴って、第1、第3および第4横フレーム部材32,34,35においても、内側パイプ部32b,34b,35bが左右の外側パイプ部32a,34a,35aから露出し、
図3に示すように、左右一対の縦フレーム部材31の機体幅方向の間隔が相対的に広がり、これにより、クローラピッチが相対的に広がるようになっている。
【0028】
架台昇降機構36は、
図2に示すように、第1リンクアーム37と、第2リンクアーム38と、電動油圧シリンダ39と、を有している。第1および第2リンクアーム37,38は、第1リンクアーム37の中間部と、第2リンクアーム38の中間部と、が互いに揺動自在に接続されることで、
図2に示すように、略X字状をなしている。第1リンクアーム37は、その上端部が縦フレーム部材31に対して、回動可能かつ摺動可能に接続されているとともに、その下端部が走行部20のフレーム25に対して、回動可能かつ摺動不能に接続されている。一方、第2リンクアーム38は、その上端部が縦フレーム部材31に対して、回動可能かつ摺動不能に接続されているとともに、その下端部が走行部20のフレーム25に対して、回動可能かつ摺動可能に接続されている。電動油圧シリンダ39は、縦フレーム部材31に固定されていて、ロッド39aの先端が、第1リンクアーム37の上端部と接続されている。
【0029】
このように構成された架台昇降機構36では、電動油圧シリンダ39のロッド39aが進出すると、第1リンクアーム37の上端部と第2リンクアーム38の上端部とが前後方向に離れて、第1リンクアーム37の上端部と第2リンクアーム38の下端部と、および、第1リンクアーム37の下端部と第2リンクアーム38の上端部と、がそれぞれ上下方向に近付くことで、架台部30が下降するようになっている。一方、電動油圧シリンダ39のロッド39aが退行すると、第1リンクアーム37の上端部と第2リンクアーム38の上端部とが前後方向に近付いて、第1リンクアーム37の上端部と第2リンクアーム38の下端部と、および、第1リンクアーム37の下端部と第2リンクアーム38の上端部と、がそれぞれ上下方向に離れることで、架台部30が上昇するようになっている。
【0030】
除草用アタッチメント40は、アタッチメント昇降機構45を介して、農作業車両10に対し昇降可能に取り付けられていて、農作業車両10によって牽引されることで、畝5と畝5との間に生えた雑草等を除草するように構成されている。具体的には、除草用アタッチメント40は、除草を行うカルチ41や、カルチ41から出た土塊を均すレーキ43(熊手)等を有している。
【0031】
<畝倣い用LiDAR>
図6は、農作業車両10におけるLiDAR50,60の設置位置を模式的に示す斜視図である。畝倣い用LiDAR(距離センサ)50は、平面での測定・検出に適した、開口角が270°の2D-LiDARであり、レーザ光が対象物に当たって跳ね返る時間を測定することで対象物までの距離を測定するものである。この畝倣い用LiDAR50は、
図6に示すように、第1~第3ブラケット51,55,65を介して、架台部30(第1横フレーム部材32)の前端部における機体幅方向中央部に取り付けられている。
【0032】
より詳しくは、第1ブラケット51は、架台部30の第1横フレーム部材32にボルト締結されて下方に延びる矩形状の後側壁部52と、後側壁部52の下端部から前方に延びる矩形状の水平壁部53と、水平壁部53の前端部から下方に延びる矩形状の前側壁部54と、を有している。また、第2ブラケット55は、前側壁部54と平行な矩形状の支持壁部56と、支持壁部56の左端部から前方に延びる取付け壁部57と、を有している。さらに、第3ブラケット65は、取付け壁部57と平行な矩形状の支持壁部66と、支持壁部66の上端部から機体幅方向右側に延びる矩形状の取付け壁部67と、を有している。支持壁部56には、機体幅方向に延びて下方に湾曲する円弧状の長穴56aが貫通形成されている一方、取付け壁部57には、前後に延びて斜め下方に湾曲する円弧状の長穴57aが貫通形成されている。
【0033】
第2ブラケット55は、長穴56aに摺動可能に挿入されたボルト58によって、支持壁部56が前側壁部54に締結されることで、第1ブラケット51に対して左右角度可変に取り付けられている。また、第3ブラケット65は、長穴57aに摺動可能に挿入されたボルト59によって、支持壁部66が取付け壁部57に締結されることで、第2ブラケット55に対して前後角度可変に取り付けられている。そうして、畝倣い用LiDAR50は、第3ブラケット65の取付け壁部67の上面に取り付けられている。それ故、畝倣い用LiDAR50は、第1~第3ブラケット51,55,65を介して、架台部30に対し、左右角度可変かつ前後角度可変に取り付けられている。
【0034】
図7は、畝倣い用LiDAR50の検出方向を模式的に説明する図である。畝倣い用LiDAR50は、
図7に示すように、検出平面DPと地面Gとが30°をなすように、前後角度が設定された状態で、架台部30の前端部における機体幅方向中央部に取り付けられている。それ故、畝倣い用LiDAR50は、農作業車両10の前方の畝5や走行面7までの距離を検出可能になっている。畝倣い用LiDAR50によって検出された、畝5や走行面7に関する情報は、制御装置70に入力されるようになっている。
【0035】
<マーカー検出用LiDAR>
マーカー検出用LiDAR60も、畝倣い用LiDAR50と同様に、開口角が270°の2D-LiDARである。このマーカー検出用LiDAR60は、
図6に示すように、昇降ブラケット61を介して、架台部30の機体幅方向右側の端部における前端部に取り付けられている。
【0036】
より詳しくは、昇降ブラケット61は、架台部30における右側の縦フレーム部材31の前端に溶接等で取り付けられた矩形筒状の支持部62と、支持部62の内方に嵌合挿入される、上下に延びる矩形筒状の支持パイプ63と、支持パイプ63の下端部に設けられた取付け板64と、を有している。マーカー検出用LiDAR60は、取付け板64の上面に取り付けられている。
【0037】
支持パイプ63の機体幅方向左側の側面には、上下方向に等間隔で並ぶ凹部63aが複数形成されている。また、支持部62の機体幅方向左側の側面にも、凹部63aと同じ間隔で上下方向に並ぶ凹部62aが2つ形成されている。それ故、支持部62の内方に支持パイプ63を嵌合挿入すると、支持パイプ63の上下方向に並ぶ凹部63aに対して、支持部62の2つの凹部62aが嵌るようになっている。
【0038】
支持部62の凹部62aは、支持パイプ63の凹部63aに嵌れば、支持パイプ63、取付け板64およびマーカー検出用LiDAR60の重量を支持することが可能である一方、作業者が支持パイプ63を上下に動かせば、支持パイプ63の凹部63aから抜けるような深さに形成されている。つまり、マーカー検出用LiDAR60は、支持パイプ63を支持部62に対して上下に動かすことで、架台部30に対して高さ可変になっている。これにより、例えば、架台昇降機構36によって架台部30を上昇させた場合でも、支持パイプ63を引き下げることで、マーカー検出用LiDAR60の高さを一定に維持することが可能となっている。
【0039】
図8は、マーカー検出用LiDAR60の検出領域DAを模式的に説明する図である。本実施形態では、マーカー検出用LiDAR60が、農作業車両10の前端部における機体幅方向の右側の端部に配置されているとともに、開口角が270°であることから、
図8で示すように、マーカー検出用LiDAR60よりも後方且つ機体幅方向左側の範囲が死角となる一方、それ以外の範囲が検出領域DAとなっている。なお、
図8の検出領域DAは、飽くまで模式的に説明したものであり、実際には、マーカー検出用LiDAR60はより遠い範囲の対象物を検出可能に構成されている。マーカー検出用LiDAR60によって検出された、対象物に関する情報は、制御装置70に入力されるようになっている。
【0040】
<制御装置>
制御装置70は、
図2に示すように、例えば架台部30上に設置されている。制御装置70は、架台昇降機構36の電動油圧シリンダ39や、アタッチメント昇降機構45等を制御する他、畝倣い用LiDAR50やマーカー検出用LiDAR60の検出結果に基づき、走行部20の走行モータユニット27を制御して、農作業車両10を、圃場3内で走行させたり、枕地9で走行・旋回させたりするように構成されている。
【0041】
例えば、制御装置70が、左右の走行部20の走行モータユニット27を共に正転させれば、農作業車両10が前進する一方、左右の走行部20の走行モータユニット27を共に逆転させれば、農作業車両10が後退する。また、制御装置70が、左右の走行部20の走行モータユニット27に回転速度差をつければ、回転が遅い走行モータユニット27が設けられた方向に農作業車両10が旋回する。さらに、制御装置70が、一方の走行部20の走行モータユニット27を正転させるとともに、他方の走行部20の走行モータユニット27を逆転させれば、農作業車両10が超信地旋回するようになっている。
【0042】
-自律走行-
次に、本実施形態における農作業車両10の自律走行について説明する。
【0043】
上述の如く、本実施形態の自律走行システム1は、(1)農作業車両10に、畝5から枕地9への退出、枕地9での走行および枕地9から畝5への進入を自律的に行わせるとともに、(2)農作業車両10を畝5の長手方向に沿って自律走行させるものである。
【0044】
<(1)枕地での自律走行・自律旋回について>
本実施形態では、農作業車両10が、畝5から枕地9へ退出し、枕地9で走行し、枕地9から畝5へ進入する場合には、マーカー検出用LiDAR60によって同時に複数のマーカー80を検出しながら、農作業車両10を走行・旋回させるようにしている。
【0045】
具体的には、畝5を跨ぎながら走行している農作業車両10が、枕地9に近付くと、マーカー検出用LiDAR60が、1条置きの畝5の長手方向の端部5fに立てられた複数のマーカー80を検出し、この検出結果に基づき、制御装置70が作業中の畝5の端(終点位置)を取得して、農作業車両10を畝5から枕地9へ退出させる。
【0046】
ここで、農作業車両10の旋回中心が左右にずれていると、右旋回をした場合と左旋回をした場合とで、枕地9に対する、旋回後の農作業車両10の中心線VCLの位置が異なることになる。このため、本実施形態では、農作業車両10を枕地9で旋回させる場合には、農作業車両10をマーカー検出用LiDAR60が配置された方向、すなわち、右側にのみ旋回させるように、制御装置70を構成している。
【0047】
それ故、枕地9への退出が完了すると、マーカー検出用LiDAR60が複数のマーカー80を検出しながら、制御装置70が農作業車両10を右側に(時計回りに)旋回させるが、旋回方向をマーカー検出用LiDAR60が配置された方向に限定することから、複数のマーカー80がマーカー検出用LiDAR60の死角に入らないので、旋回中も複数のマーカー80を検出し続けることができる。このように、枕地9への退出から旋回完了まで、マーカー検出用LiDAR60が複数のマーカー80を検出し続けることから、畝5に対する農作業車両10の姿勢を算出し続けることができ、これにより、旋回角度精度を高めることが可能となる。
【0048】
そうして、旋回完了後に枕地9を前進走行または後進走行している農作業車両10が、次の畝5に近付くと、マーカー検出用LiDAR60が、次の畝5の近傍に立てられた複数のマーカー80を検出し、制御装置70が農作業車両10を再び右旋回させる。この場合にも、マーカー検出用LiDAR60が複数のマーカー80を検出し続けており、旋回完了後、この検出結果に基づき、制御装置70が次の畝5の端(始点位置)を取得して、農作業車両10を枕地9から畝5へ進入させる。
【0049】
以上のように、本実施形態の自律走行システム1では、方向センサ等を用いることなく、単一のマーカー検出用LiDAR60にて旋回角度精度を高めることが可能となるので、コストの上昇を抑えつつ、畝5からの退出や畝5への進入を農作業車両10に高い精度で自律的に行わせることができる。
【0050】
<(2)畝に沿った自律走行について>
農作業車両10を畝5に沿って自律走行させるためには、基準となる畝5の中心線RCLを取得する必要がある。以下では、本実施形態の自律走行システム1における畝5の中心線RCLの推定手法について説明するが、本発明を理解し易くするために、これに先立ち、従来の畝5の中心線RCLの推定手法について説明する。
【0051】
図18は、従来の畝5の中心線RCLの推定手法を模式的に説明する図である。従来の推定手法では、
図18に示すように、左右一対の走行部120が走行している走行面7の間の畝5、すなわち、農作業車両によって跨がれている畝5における、左右の法面5b,5cのうち一方の法面5bを、農作業車両に設けられた距離センサ150で検出し、その検出結果に基づいて、畝5の中心線RCLを推定するのが一般的である。
【0052】
しかしながら、かかる従来の推定手法では、畝5の形状が崩れているような場合(例えば
図18で示すように、畝5の法面5bの裾5dが崩れている場合)には、法面5bとの距離を検出することが困難となるため、畝5の形状変化に対するロバスト性が低いという問題がある。
【0053】
しかも、従来の推定手法では、片側の法面5bの情報に基づいて、畝5の中心線RCLを推定することから、検出誤差の影響を諸に受けてしまうおそれがある。そこで、畝5の両側の法面5b,5cの情報を取得するべく、距離センサ150を増やすことも考えられるが、これでは、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0054】
そこで、本実施形態に係る自律走行システム1では、農作業車両10によって跨がれている畝5の両隣の走行面7に関する情報に基づいて、農作業車両10を制御するようにしている。具体的には、畝倣い用LiDAR50によって検出された、2条の走行面7に関する情報に基づいて、農作業車両10によって跨がれている畝5の中心線RCLを推定するとともに、推定された畝5の中心線RCLと農作業車両10の中心線VCLとの誤差に基づいて、農作業車両10を畝5に沿って走行させるように、制御装置70を構成している。
【0055】
図9は、畝倣い用LiDAR50の検出領域DAを模式的に説明する図であり、同図(a)は側面図であり、同図(b)は平面図である。なお、
図9において、矢印Xは機体前後方向前側を、矢印Yは機体幅方向左側を、矢印Zは上下方向上側をそれぞれ示している。上述の如く、畝倣い用LiDAR50は、検出平面DPと地面Gとが30°をなすように、架台部30の前端部における機体幅方向中央部に取り付けられているので、
図9(a)に示すように、農作業車両10の前方の畝5や走行面7までの距離を検出するようになっている。それ故、畝倣い用LiDAR50は、
図9(b)に示すように、農作業車両10の前方の畝5I,5II,5III、および、畝5I,5II,5IIIよりも更に前方の走行面7I,7IIを、検出領域DAに含んでいる。
【0056】
図10~
図14は、自律走行システム1における、畝5の中心線RCLの推定手法を模式的に説明する図である。畝5の中心線RCLを推定する際には、畝倣い用LiDAR50が、
図10に示すように、農作業車両10によって跨がれている畝5と、畝5の両隣の走行面7I,7IIと、を検出する。より詳しくは、畝倣い用LiDAR50によって検出された複数の点Pのうち、
図10の破線枠で示すように、左側の走行面7I上の複数の点から成る点群と、畝5の左側の法面5b上の複数の点から成る点群と、畝5の頂面5a上の複数の点から成る点群と、畝5の右側の法面5c上の複数の点から成る点群と、右側の走行面7II上の複数の点から成る点群と、を制御装置70が取り出す。
【0057】
次いで、制御装置70は、これらの点群から、フラットな点群を取出す。より詳しくは、制御装置70は、各点Pの周りの情報から当該各点Pが存在する面の法線を求め、法線が略垂直なフラットな面上の点群だけを取り出す。このような処理により、
図11に示すように、法線が傾いている、畝5の左側の法面5b上の点群や、畝5の右側の法面5c上の点群が排除されることになる。これにより、
図11の破線枠で示すように、左側の走行面7I上の点群と、畝5の頂面5a上の点群と、右側の走行面7II上の点群と、が制御装置70によって取り出される。
【0058】
次いで、制御装置70は、左側の走行面7I上の点群、畝5の頂面5a上の点群、および、右側の走行面7II上の点群から、所定の高さ範囲に含まれている点群を取出す。ここで、「所定の高さ範囲」とは、例えば、畝5の下端近辺の高さを挙げることができる。このような処理により、畝5の頂面5a上の点群が排除され、
図12の破線枠で示すように、左側の走行面7I上の点群、および、右側の走行面7II上の点群のみが制御装置70によってクラスタリングされる。
【0059】
次いで、制御装置70は、
図13の破線枠で示すように、左側の走行面7I上の点群の中で最も畝5に近い点PIと、右側の走行面7II上の点群の中で最も畝5に近い点PIIと、の中点を畝5の中心線RCL(より正確には、中心線RCL上の点)と推定する。そうして、制御装置70は、推定された畝5の中心線RCLと農作業車両10の中心線VCLとの誤差に基づいて、農作業車両10を畝5に沿って走行させる。
【0060】
例えば、農作業車両10の中心線VCLが、推定された畝5の中心線RCLよりも左側にあれば、制御装置70は、農作業車両10を右側に操舵すべく、左側の走行部20の走行モータユニット27を、右側の走行部20の走行モータユニット27よりも速い回転速度で駆動させる。また、制御装置70は、農作業車両10の中心線VCLと推定された畝5の中心線RCLとのずれが、第1所定量よりも大きい場合には、農作業車両10の速度を落としながら、農作業車両10の進行方向の修正を行う。さらに、制御装置70は、農作業車両10の中心線VCLと推定された畝5の中心線RCLとのずれが、第2所定量(>第1所定量)よりも大きい場合には、超信地旋回によって農作業車両10の進行方向を修正する。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、植えられた作物の育成等によって環境や形状等が大きく変化し易い畝5それ自体ではなく、環境や形状等の変化が畝5よりも小さい、畝5の両隣の走行面7I,7IIに関する情報に基づいて、制御装置70が畝5の中心線RCLを推定することから、上記
図18に示したように、仮に畝5の裾5d等が局所的に崩れていても、畝5の中心線RCLを精度良く推定することができる。
【0062】
しかも、畝5の両隣の走行面7I,7IIにおいて、フラットな所定の高さ範囲に含まれているという条件を満たした点群から、畝5の中心線RCLを推定することから、走行面7I,7IIに多少の凹凸があっても、畝5の左右において同じ条件で走行面7I,7IIを確定することができるので、畝5の形状を反映しつつ、畝5の中心線RCLをより一層精度良く推定することができる。
【0063】
ここで、畝5の裾が局所的に崩れている場合について説明する。
図14に示す例では、本来の畝5における左側の裾は点5d1であるから、この点5d1と、畝5における右側の裾(点5d2)と、の中点が畝5の中心線RCLとなる。仮に、左側の走行面7I上の点群の中で最も畝5に近い点5d1’に基づいて、畝5の中心線RCLを推定すると、点5d1と点5d1’との距離ΔEがそのまま誤差となり、相対的に大きな誤差ΔEを生じてしまうことになる。
【0064】
この点、本実施形態では、制御装置70が、左側の走行面7I上の点群の中で最も畝5に近い点5d1’と、右側の走行面7II上の点群の中で最も畝5に近い点5d2と、の中点を畝5の中心線RCL’上の点と推定することから、畝5の裾が局所的に崩れている場合でも、誤差(ΔE/2)が半減されるので、畝5の中心線RCL’の推定精度をより一層高めることができる。
【0065】
図15は、畝倣い用LiDAR50の配置位置と、検出可能な点群との関係を模式的に説明する図である。なお、
図15では、畝5の両側の法面5b,5cを上方に延長した2つの仮想延長面VP1,VP2が交差する高さVH以上で、且つ、2つの仮想延長面VP1,VP2で挟まれる領域を領域RIとし、仮想延長面VP1,VP2が交差する高さVH未満で、且つ、仮想延長面VP1,VP2で挟まれる領域を領域RIIIとし、領域RIおよび領域RIIIよりも左側の領域を領域RIIとし、領域RIおよび領域RIIIよりも右側の領域を領域RIVとしている。
【0066】
図15の領域RIIIに示すように、農作業車両10における畝倣い用LiDAR50Cの設置高さが低く過ぎると、畝倣い用LiDAR50Cによって、畝5の頂面5aしか検出することができず、畝5の両隣の走行面7I,7IIを検出することが困難となる。また、
図15の領域RIIに示すように、農作業車両10の機体幅方向における畝倣い用LiDAR50Bの設置位置が左側に偏り過ぎていると、畝5の法肩5eが畝倣い用LiDAR50Bの視界を遮ることになり、右側の走行面7IIにおける点5d2’を内側の端点5d2として検出してしまい、本来の畝5の中心線RCLとの間に、
図15に示すような誤差ΔEが生じることになる。
図15の領域RIVについても同様である。これらの場合には、畝5の中心線RCLを精度良く推定することが困難となるため、農作業車両10を畝5に沿って高精度で自律走行させることが困難となり、最悪の場合には、農作業車両10が畝5と接触してしまうことも想定される。
【0067】
それ故、畝倣い用LiDAR50は、
図12に示すように、農作業車両10によって跨がれている畝5の両側の法面5b,5cを上方に延長した2つの仮想延長面VP1,VP2が交差する高さVH以上の高さで、且つ、2つの仮想延長面VP1,VP2で挟まれる領域内に収まるような機体幅方向位置で、すなわち、領域RI内に収まるように農作業車両10に設置するのが好ましい。このように、領域RI内に収まるように畝倣い用LiDAR50を配置すれば、畝5の両隣の走行面7I,7IIを畝倣い用LiDAR50によって常に検出することが可能となる。つまり、領域RIに収まっているのであれば、農作業車両10の傾き等により、畝倣い用LiDAR50の位置が畝倣い用LiDAR50Aのように多少左右にずれても、畝5の両隣の走行面7I,7IIを常に検出することが可能となる。
【0068】
この点、本実施形態では、上述の如く、畝倣い用LiDAR50は、架台部30の前端部における機体幅方向中央部に取り付けられていて、架台昇降機構36によって架台部30の高さを変化させることで、設置高さが可変であることから、畝倣い用LiDAR50を常に領域RIに収めることができ、これにより、畝5の両隣の走行面7I,7IIを常に検出することが可能となっている。
【0069】
図16は、畝倣い用LiDAR50の検出方向を、真下に向けた場合と、前方斜め下方に向けた場合との関係を模式的に説明する図である。なお、
図16中の誤差ΔE0は、畝倣い用LiDAR50の検出方向を真下に向けた場合における、畝5の中心線RCLに対する農作業車両10の中心線VCLのずれであり、
図16中の誤差ΔE1は、畝倣い用LiDAR50の検出方向を前方斜め下方に向けた場合における、畝5の中心線RCLに対する農作業車両10の中心線VCLのずれである。
【0070】
一般的に、畝5IIを跨いでいる農作業車両10の中心線VCLが、畝5IIの中心線RCLに対して傾いている場合には、両中心線の離れは、農作業車両10の真下では小さく、農作業車両10から離れる程大きくなる。それ故、農作業車両10の真下の走行面7I,7IIが検出領域に含まれるように畝倣い用LiDAR50を設置した場合には、畝5の中心線RCLと農作業車両10の中心との誤差ΔE0に、農作業車両10の姿勢(方向)が反映され難い。
【0071】
しかも、
図16に示すように、農作業車両10の姿勢を加味すれば、畝5の中心線RCLに対して農作業車両10の中心線VCLが左側に誤差ΔE1だけずれているにも拘わらず、農作業車両10の真下では、畝5の中心線RCLに対して農作業車両10の中心線VCLが右側に誤差ΔE0だけずれていると検出される場合も生じ得る。このような場合に、誤差ΔE0を0とするように農作業車両を左側に操舵させると、農作業車両10の右側の後端が右側の畝IIIの法面と接触してしまうケースも想定される。
【0072】
この点、本実施形態では、上述の如く、畝倣い用LiDAR50は、農作業車両10の前方の走行面7が検出領域となるように、前方斜め下向きに農作業車両10に設置されているので、推定される畝5の中心線RCLと農作業車両10の中心線VCLとの誤差ΔE1に、農作業車両10の姿勢をも反映することが可能となることから、農作業車両10を畝5に沿って確実に自律走行させることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0074】
上記実施形態では、1条の畝5を跨ぎながら除草作業を行うように農作業車両10のクローラピッチを設定したが、これに限らず、2条以上の畝5(畝群)を跨ぎながら除草作業を行うように農作業車両10のクローラピッチを設定してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、各点の周りの情報から法線を求めてフラットな面上の点群を取り出したが、これに限らず、例えば
図17に示すように、所定の高さ範囲(
図17の例では、H1,H2)を設定し、この所定の高さ範囲に含まれる点群を、フラットな面上の点群と推定してもよい。なお、
図17において、PIは、高さH1の範囲に含まれる左側の走行面7I上で最も畝5に近い点であり、PIIは、高さH1の範囲に含まれる右側の走行面7II上で最も畝5に近い点PIIであり、PI’は、高さH2(<H1)の範囲に含まれる左側の走行面7I上で最も畝5に近い点であり、PII’は、高さH2の範囲に含まれる右側の走行面7II上で最も畝5に近い点PIIであり、B1は、PIとPIIとの距離であり、B2は、PI’とPII’との距離であり、A1は、畝5の中心線RCLとPIとの距離であり、A2は、畝5の中心線RCLとPI’との距離である。
【0076】
この場合も、高さ範囲の設定の仕方により、A1とA2との間に誤差ΔEは生じ得るが、2条の走行面7I,7IIに関する情報に基づいて畝5の中心線RCLを推定することで誤差が半減されるので、畝5の中心線RCLの推定精度を高めることができる。
【0077】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によると、畝の形状変化に左右されることなく、農作業車両を畝に沿って高い精度で自律走行させることができるので、農作業車両の自律走行システムに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0079】
1 自律走行システム
3 圃場
5 畝
5b 法面
5c 法面
7 走行面
10 農作業車両
20 走行部
50 畝倣い用LiDAR(距離センサ)
70 制御装置(推定手段)(制御手段)
E 誤差
RCL 中心線
RI 領域
VCL 中心
VP1 仮想延長面
VP2 仮想延長面
P 点