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特開2024-10370自動ドア装置、自動ドア用センサ、動線識別装置、動線識別方法、動線識別プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010370
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】自動ドア装置、自動ドア用センサ、動線識別装置、動線識別方法、動線識別プログラム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/74 20150101AFI20240117BHJP
   E05F 15/632 20150101ALN20240117BHJP
【FI】
E05F15/74
E05F15/632
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111673
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 翼
(72)【発明者】
【氏名】清政 良有
(72)【発明者】
【氏名】堀本 真生
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052AA02
2E052BA06
2E052CA05
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC03
2E052GB01
(57)【要約】
【課題】検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を把握可能な自動ドア装置の技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ある態様の自動ドア装置100は、複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する起動センサ4と、前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部5と、軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部28と、特定部5で特定された始点と終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部6と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する起動センサと、
前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の前記検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、
前記軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、
前記特定部で特定された前記始点と前記終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、
を備える、自動ドア装置。
【請求項2】
前記分岐判定部は、前記軌跡に対して互いに離れた複数の始点と、単一の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定し、
前記動線識別部は、前記複数の始点それぞれと前記単一の終点の組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する、請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項3】
前記分岐判定部は、前記軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定し、
前記動線識別部は、前記単一の始点と前記複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する、請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
前記分岐判定部は、前記軌跡から所定の距離以上に離れた軌跡が特定された場合、前記軌跡が複数に分岐したと判定し、
前記特定部は、当該軌跡は複数の異なる軌跡とみなして、それぞれの軌跡の始点と終点とを特定する、請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項5】
前記軌跡の推移に関する推移情報を記憶する記憶部を備え、
前記特定部は、前記記憶部に記憶された前記推移情報に基づいて前記軌跡の前記始点と前記終点とを特定する、請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項6】
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、前記開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する検知部と、
前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の前記検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、
前記軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、
前記特定部で特定された前記始点と前記終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、
を備え、
前記分岐判定部は、前記軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定し、
前記動線識別部は、前記単一の始点と前記複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する、自動ドア用センサ。
【請求項7】
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、前記開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する検知部と、
前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の前記検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、
前記軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、
前記特定部で特定された前記始点と前記終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、
を備え、
前記分岐判定部は、前記軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定し、
前記動線識別部は、前記単一の始点と前記複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する、動線識別装置。
【請求項8】
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて前記開口部周辺の人又は物である検知対象を検知するステップと、
前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の前記検知エリアにおける始点と終点とを特定するステップと、
前記軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定するステップと、
前記単一の始点と前記複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別するステップと、
を含む、動線識別方法。
【請求項9】
開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアにおいて前記開口部周辺の人又は物である検知対象を検知するステップと、
前記複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の前記検知エリアにおける始点と終点とを特定するステップと、
前記軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、前記軌跡は複数に分岐したと判定するステップと、
前記単一の始点それぞれと前記複数の終点の組合せに基づいて、それぞれの動線を識別するステップと、
をコンピュータに実行させる、動線識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア装置、自動ドア用センサ、動線識別装置、動線識別方法および動線識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを用いて自動ドアの入退場者を計数する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ドアを開閉作動させるためのモータを有する自動ドアの入退場者計数装置が記載されている。この装置は、通行体を検出する建物の内外に設置されるセンサと、通行体がドアに挟まれることを防止するための補助センサを備え、センサの信号により駆動装置を制御する。この装置は、これらのセンサにより通行体の移動方向と通行体がドアを通過したこととを検知して、その検知結果から通行体を計数する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-216100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、内外センサ、補助センサが時系列的に通行者を検知することによって入退場者を計数可能であるが、検知対象が複数重なっている場合に各検知対象の動線を把握することが難しい。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を把握可能な自動ドア装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドア装置は、複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する起動センサと、複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、特定部で特定された始点と終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、を備える。
【0007】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を把握可能な自動ドア装置の技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の自動ドア装置を概略的に示す正面図である。
図2図1の自動ドア装置を概略的に示すブロック図である。
図3図1の自動ドア装置の検知エリアの一例を示す模式図である。
図4図1の自動ドア装置の検知エリアの一例を示す別の模式図である。
図5図1の自動ドア装置の検知エリアの一例を示す別の模式図である。
図6】複数の区分エリアに区分された検知エリアの一例を示す模式図である。
図7】動線パターンの第1の例を示す模式図である。
図8】動線パターンの第2の例を示す模式図である。
図9】動線パターンの第3の例を示す模式図である。
図10】動線パターンの第4の例を示す模式図である。
図11図1の自動ドア装置のプロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0011】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けてもよく、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0012】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
本開示のある態様の自動ドア装置は、複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する起動センサと、複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、特定部で特定された始点と終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、を備える。
【0014】
この構成によれば、検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を認識することが可能になる。認識された各検知対象の動線に基づいて各動線を把握可能な自動ドア装置を提供できる。
【0015】
一例として、分岐判定部は、軌跡に対して互いに離れた複数の始点と、単一の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定し、動線識別部は、複数の始点それぞれと単一の終点の組合せに基づいて、ぞれぞれの動線を識別してもよい。この場合、検知エリア内で複数の検知対象が重なることによって複数の始点から延びる軌跡が合流し、単一の終点を形成した場合でも、各検知対象の動線を認識することが可能になる。なお、本明細書では、軌跡の分岐に複数の軌跡の合流を含む。
【0016】
一例として、分岐判定部は、軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定し、動線識別部は、単一の始点と複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別してもよい。この場合、特定部および動線識別部における検知ブロックの軌跡を監視するための処理を軽くできる。
【0017】
一例として、分岐判定部は、軌跡から所定の距離以上に離れた軌跡が特定された場合、軌跡が複数に分岐したと判定し、特定部は、当該軌跡は複数の異なる軌跡とみなして、それぞれの軌跡の始点と終点とを特定してもよい。この場合、軌跡が分岐したときに動線が特定されるため、軌跡が複雑に変化しても始点と終点との対応関係を容易に把握できる。
【0018】
一例として、本自動ドア装置は、軌跡の推移に関する推移情報を記憶する記憶部を備え、特定部は、記憶部に記憶された推移情報に基づいて軌跡の始点と終点とを特定してもよい。この場合、記憶された推移情報から動線を特定できるため、軌跡が複雑に変化しても始点と終点との対応関係を容易に把握できる。
【0019】
本開示のある態様の自動ドア用センサは、開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する検知部と、複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、特定部で特定された始点と終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、を備える。分岐判定部は、軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定し、動線識別部は、単一の始点と複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する。
【0020】
この構成によれば、検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を認識することが可能な自動ドア用センサを提供できる。
【0021】
本開示のある態様の動線識別装置は、開口部周辺に設けられた複数の検知スポットからなる検知エリアを有し、開口部周辺の人又は物である検知対象を検知する検知部と、複数の検知スポットのうち検知状態の1以上の検知スポットからなる検知ブロックの軌跡の検知エリアにおける始点と終点とを特定する特定部と、軌跡が複数に分岐したかを判定する分岐判定部と、特定部で特定された始点と終点とに基づいて検知対象の動線を識別する動線識別部と、を備える。分岐判定部は、軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定し、動線識別部は、単一の始点と複数の終点それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線を識別する。
【0022】
この構成によれば、検知対象が複数重なっている場合にも各検知対象の動線を認識することが可能な動線識別装置を提供できる。
【0023】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。同一または同等の要素であって、アルファベット符号が付された要素が複数ある場合に、これらを区別する場合は符号の末尾に数字1、2、3・・付し、総称するときは数字を省く。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0024】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る自動ドア装置100を説明する。図1は、実施形態の自動ドア装置100を概略的に示す正面図である。図1に示す自動ドア装置100は、両引分け戸タイプであり、2枚の扉9が左右に自動的に開閉する。扉9は、左右一対であり、開口部23を挟んで左右に間隔を開けて固定配置されたフィックス22に沿って往復移動可能に構成され、開口部23を開閉する。一例として、自動ドア装置100は、駅、ホテル、デパート、病院、老人保健施設等の各種施設において、空間を仕切る壁等の開口を開閉するための扉を開閉動作させる装置である。
【0025】
以下、自動ドア装置100の開閉方向に沿った方向を左右方向という。図1のように自動ドア装置100を正面視で、向かって左側を「左」、「左方」といい、向かって右側を「右」、「右方」という。また、自動ドア装置100の見込み方向に沿った方向を前後方向という。自動ドア装置100から手前側を「前」、「前方」といい、前後方向に自動ドア装置100の向こう側を「後」、「後方」という。図1では、開口部23およびフィックス22の前側から後側にわたって検知エリア70が配置されている。また、左右方向の寸法を「左右幅」と、前後方向の寸法を「前後幅」ということがある。このような方向の表記は自動ドア装置100の姿勢を制限するものではなく、自動ドア装置100は、任意の姿勢で使用され得る。
【0026】
扉9は、左右それぞれの戸先が突き合わされるように接触して開口部23が閉ざされた全閉状態となる。扉9は、戸先が離間するように移動し、戸先がフィックス22の開口部23側の端部付近まで移動して停止し、開口部23が開いた全開状態となる。尚、自動ドア装置100は、両引分け戸タイプのほか、片引き戸タイプ等のものであってもよい。
【0027】
自動ドア装置100は、自動ドア用センサ10と、扉9を開閉駆動する自動ドア駆動装置90とを備える。自動ドア用センサ10は、主に起動センサ4と、後述する情報処理部20を含む。起動センサ4は、開口部23周辺の人又は物(以下、「検知対象」という)を検知する。
【0028】
起動センサ4は、例えば開口部23の上方の無目16に配置されており、無目16における配置位置から斜め下方に向けて赤外光を投受光し、例えば、扉9へ進入してくる検知対象を検知し、起動信号を出力する。起動センサ4の詳細については後述する。
【0029】
補助光電センサ30は、開口部23において検知対象を検知する開口検知部として機能する。補助光電センサ30は、開口部23の前後にわたる検知対象の移動を検知することにより、後述する動線識別部6の動線識別機能と、動線判断部7の動線判断機能とを補完できる。例えば、補助光電センサ30は、検知対象が開口部23を通過したかどうかを検知できる。例えば、補助光電センサ30の検知結果に応じて、動線識別部6の識別結果の適否を判定できる。また例えば、補助光電センサ30の検知結果に応じて、動線判断部7の判断結果の適否を判定できる。この結果、動線識別部6の誤認識または動線判断部7の誤判断を減らすことができる。
【0030】
一例として、補助光電センサ30は、光電方式による検知装置であり、フィックス22の開口部23の近傍に配置された投光器301および受光器302を有している。補助光電センサ30は、投光器301と受光器302の間に通った光線が遮られることを検知しており、扉9の軌道上に人または物体が存在していることを示す検知情報を、通信部8を介して制御部91へ送信する。尚、補助光電センサ30は、光電方式の他、無目16に取り付けられる光線反射方式または超音波方式による検知装置等であってもよい。
【0031】
図1に示すように、自動ドア駆動装置90は、制御部91とドアエンジン92を含む。制御部91は、自動ドア用センサ10からの制御情報に基づいて扉9を開閉するようにドアエンジン92を制御する。自動ドア用センサ10からの制御情報を伝送する伝送路96に限定はないが、この例の伝送路96は、装置内バス(例えば、CAN:Controller Area Network)を含む。ドアエンジン92は、制御部91の制御に基づいて、駆動モータ(不図示)を回転させて扉9を開閉駆動する。
【0032】
制御部91は、自動ドア用センサ10から起動センサ4の起動信号を受信するとドアエンジン92のモータ(不図示)を作動させて扉9が全開状態となるまで駆動する。制御部91は、扉9が全開状態に変化した後、一定時間、全開状態を保持し、ドアエンジン92を反転方向へ作動させて扉9が全閉状態となるまで駆動する。制御部91は、補助光電センサ30からの検知情報を扉9の閉駆動中に受信すると、ドアエンジン92による扉9の駆動方向を反転し、扉9を全開状態とする。
【0033】
図2は、本発明に係る自動ドア装置100を概略的に示すブロック図である。図2に示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
上述の自動ドア用センサ10は、起動センサ4および補助光電センサ30の検知結果を処理する情報処理部20を含んで構成できる。
【0035】
図3図4も参照して起動センサ4を説明する。図3図4は、複数の検知スポット71からなる検知エリア70の一例を示す模式図である。この図は、床面における検知エリア70を示す。起動センサ4は、複数の検知スポット71を有する検知エリア70において検知対象を検知する。この例の起動センサ4は、赤外線を検知エリア70に投光し、検知対象からの反射光を受光する赤外線反射式センサである。
【0036】
検知エリア70は、床面から起動センサ4が配置される無目16や天井に至る立体的な範囲を有する。検知エリア70は、扉9の移動方向に平行な左右方向に12列並び、扉9の移動方向に直交する前後方向に12行並ぶようにマトリックス状に配列された複数の検知スポット71で構成される。各行は、前側から後側に向かって第1行、第2行、・・・第11行、第12行が割り当てられている。各列は、左側から右側に向かってA列、B列、・・・K列、L列が割り当てられている。実施形態では、第6行と第7行の間に開口部23が設けられており、第6行と第7行の間を扉9が移動する。
【0037】
各検知スポット71には、行列の位置に対応してアドレス1A、1B、・・・、12K、12Lが割り当てられている。割り当てられた各アドレスは、各検知スポット71の位置情報に相当している。尚、各検知スポット71の形状および検知エリア70全体の形状は、円形、楕円、長方形、矩形以外の多角形であってもよい。検知スポット71は、上述のように様々な形状であってもよく、センサ方式等によっても形状が変わり、検知エリア70を複数の部分に分割した個々の領域を意味する。逆に、複数の検知スポットによって全体として検知エリア70が形成されると考えてもよい。
【0038】
自動ドア用センサ10は、検知エリア70の各検知スポット71が検知対象を検知したときに扉9を開閉するための起動信号を生成する。
【0039】
起動センサ4は、単一の検知部(例えば、赤外線反射式センサ)によって検知エリア70全体を検知するようにしてもよいが、実施形態の起動センサ4は、2つの検知部41、42と、統合部43を有している。第1検知部41は、第1行~第6行に属する検知スポット71において検知対象を検知するように、無目16の前側に配置される。第2検知部42は、第7行~第12行に属する検知スポット71において検知対象を検知するように、無目16の後側に配置される。統合部43は、第1検知部41および第2検知部42の検知信号を統合し、検知エリア70全体の検知信号として情報処理部20に出力する。
【0040】
図2に示すように、情報処理部20は、入力部25と、開閉処理部26と、特定部5と、分岐判定部28と、動線識別部6と、動線判断部7と、記憶部3と、通信部8とを備える。
【0041】
入力部25は、起動センサ4から、後述する複数の検知スポット71の各検知スポット71における検知レベルを順次取得する。この例では、入力部25は、統合部43で統合された検知エリア70全体の検知信号を順次取得する。また、入力部25は、補助光電センサ30の検知結果を取得する。開閉処理部26は、入力部25の取得結果に基づいて、検知スポット71における検知レベルが所定の範囲以内にある場合に、検知対象が存在していると判定し、起動信号を生成する。各検知スポット71で検知対象が存在すると判定された状態を検知状態といい、検知状態でない状態を非検知状態という。
【0042】
記憶部3は、入力情報や中間処理情報を時系列的に記憶する。特に、記憶部3は、後述する検知ブロック72の軌跡73の推移に関する推移情報を記憶する。検知ブロック72の軌跡73は検知対象の移動軌跡に対応する。軌跡73の推移情報は、時間の経過につれて変化する軌跡73に関する情報であり、時系列的な検知ブロック72の位置情報等を含む。したがって、特定部5は、推移情報に基づいて検知ブロック72の軌跡73を特定できる。また、記憶部3は、後述するプログラムP100を記憶する。通信部8は、開閉処理部26の起動信号を自動ドア駆動装置90の制御部91に送信する。
【0043】
(検知ブロックの軌跡)
図3は、単一の検知対象Xによって単一検知スポット71が検知状態になる場合を示している。検知エリア70の複数の検知スポット71のうち検知状態の1以上の検知スポットからなるブロックを検知ブロック72という。検知対象Xが移動すると、検知対象Xの移動に連れて検知ブロック72の位置が変化する。このことにより、検知ブロック72は、仮想的に、検知エリア70に移動の軌跡73(破線で示す)を形成する。軌跡73は、始点Sと終点Qを有する。軌跡73の始点Sは、複数の検知スポット71のうち検知対象Xが検知エリア70に進入した直後に検知状態に変化した検知スポット71からなる検知ブロック72である。軌跡73の終点Qは、複数の検知スポット71のうち検知対象Xが検知エリア70から退出する直前に検知状態であった検知スポット71からなる検知ブロック72である。
【0044】
なお、検知対象によっては、単一の検知対象Xであっても複数の検知スポット71が検知状態になることがあり、この場合、検知状態の複数の検知スポット71からなるブロックを検知ブロック72という。2以上の検知スポット71からなる検知ブロック72は、互いに所定の距離よりも接近して位置する検知スポット71の集合である。この例の検知ブロック72は、互いに隣接している2以上の検知スポット71で構成される。つまり、所定の距離は単一の検知スポット71の幅である。
【0045】
図4は、複数の検知対象X1、X2によって複数の検知スポット71(アドレス1Fと1G)が検知状態になる場合を示している。これらの検知スポット71は互いに隣接しているため1つの検知ブロック72として検知される。複数の検知対象X1、X2の移動に連れて検知ブロック72の位置が変化し、軌跡73が形成される。図4の例では、複数の検知対象X1、X2は途中で左方と右方とに分かれて移動しているため、軌跡73が途中で分岐し、軌跡73は2つの終点Q1、Q2を有する。
【0046】
図2図3図4を参照して特定部5を説明する。特定部5は、検知状態の1以上の検知スポット71からなる検知ブロック72の軌跡73の検知エリア70における始点と終点とを特定する。図3の例では、特定部5は、単一の始点Sと、単一の終点Qとを特定する。図4の例では、特定部5は、単一の始点Sと、複数(この例では2つ)の終点Q1、Q2とを特定する。
【0047】
図2図4を参照して分岐判定部28を説明する。分岐判定部28は、軌跡73が複数に分岐したかを判定する。具体的には、分岐判定部28は、軌跡73に対して互いに離れた複数の始点S1、S2と、単一の終点Qと、が特定された場合、軌跡73は複数に分岐したと判定する。また、分岐判定部28は、軌跡73に対して単一の始点Sと、互いに離れた複数の終点Q1、Q2と、が特定された場合、軌跡73は複数に分岐したと判定する。分岐判定は、複数の終点Q1、Q2が特定されたときに実行されてもよいし、終点Q1、Q2が特定される前に実行されてもよい。実施形態では、分岐判定部28は、検知ブロック72が所定の距離以上に離れた複数の検知ブロック72に分裂したときに、軌跡73が複数に分岐したと判定し、特定部5は、それぞれの軌跡73の終点Qを特定する。この場合、分岐後の複数の軌跡73を早いタイミングで監視できる。また、分岐判定部28が、軌跡73が複数に分岐したと判定したときに、特定部は、当該軌跡73を複数の検知ブロック72からなる異なる軌跡とみなして、それぞれの軌跡に対して始点Sと終点Qとを特定してもよい。この場合、軌跡に対して単一の始点Sと終点Qが特定されるので、図3の例と同様の処理となる。
【0048】
図2図3図4を参照して動線識別部6を説明する。動線識別部6は、特定部5で特定された始点と終点とに基づいて検知対象Xの動線Mを識別する。図3に示すように、軌跡73が、単一の始点Sと単一の終点Qとを有する場合、動線識別部6は、始点S(アドレス1F)と、終点Q(アドレス12F)との間を結ぶ動線Mを識別する。
【0049】
しかし、図4に示すように、複数の検知対象X1、X2が重なって一体的に検知されたことにより、単一の始点Sが形成される場合がある。複数の検知対象が重なることは、複数の検知対象により検知状態になった複数の検知スポット71が互いに隣接することを意味する。この場合、軌跡73は複数の終点Q1、Q2を有する。
【0050】
このように、軌跡73が複数の終点Q1、Q2を有する場合、複数の終点Q1、Q2それぞれに対応して動線を把握できることが望ましい。そこで、実施形態では、分岐判定部28は、軌跡73に対して単一の始点Sと、互いに離れた複数の終点Q1、Q2と、が特定された場合、軌跡73は複数に分岐したと判定し、動線識別部6は、単一の始点Sそれぞれと複数の終点Q1、Q2の組合せに基づいて、それぞれの動線M1、M2を識別する。
【0051】
特に、動線識別部6は、複数の終点Q1、Q2それぞれと単一の始点Sとを結ぶ複数の動線M1、M2を識別する。特に、動線識別部6は、終点Q1(アドレス10A)と、始点S(アドレス1F、1G)との間を結ぶ動線M1と、終点Q2(アドレス10L)と、始点S(アドレス1F、1G)との間を結ぶ動線M2とを識別する。つまり、動線識別部6は、各終点Q1、Q2に対応し、複数の終点Q1、Q2の数と同じ数の動線M1、M2を識別できる。互いに離れた複数の終点Qとは、複数の終点Q間に非検知状態の検知スポット71が介在することにより複数の終点Qが非隣接である状態をいう。識別する動線の数は、複数の終点Q1、Q2の数と異なっていてもよい。
【0052】
分岐判定部28の分岐判定動作の動作例を説明する。実施形態では、分岐判定部28は、軌跡73を監視して、軌跡73が複数に分岐したと判定したときに、当該複数の軌跡73それぞれに基づいて複数の動線を識別している。特定部5は、軌跡73が複数に分岐したと判定したときに、当該軌跡は複数の検知ブロック72からなるとみなして、それぞれの軌跡の始点Sと終点Qとを特定する。別の一例として、分岐判定部28は、複数の終点が特定される前は、動線を識別せずに複数の終点が特定されたときに複数の動線それぞれを識別してもよい。
【0053】
図2図5を参照して、軌跡73が、複数の始点S1、S2と単一の終点Q1を有する場合を説明する。図5は、複数の検知スポット71からなる検知エリア70の一例を示す模式図である。図5は、複数の検知対象X1、X2の移動により形成される検知ブロック72の軌跡73を示す。この例では、複数の始点S1(アドレス3A)、S2(アドレス3L)から延びる別々の軌跡73が途中で合流し単一の終点Qを形成する(アドレス12F、12G)。
【0054】
実施形態の特定部5は、互いに離れた複数の始点S1、S2と、単一の終点Qと、を特定できる。分岐判定部28は、軌跡73に対して互いに離れた複数の始点S1、S2と、単一の終点Qと、が特定された場合、軌跡73は複数に分岐したと判定し、動線識別部6は、複数の始点S1、S2それぞれと単一の終点Qの組合せに基づいて、ぞれぞれの動線M1、M2を識別する。
【0055】
特に、動線識別部6は、始点S1、S2それぞれと単一の終点Qとを結ぶ複数の動線M1、M2を識別する。特に、動線識別部6は、始点S1(アドレス3A)と、終点Q(アドレス12F、12G)との間を結ぶ動線M1と、始点S2(アドレス3L)と、終点Q(アドレス12F、12G)との間を結ぶ動線M2とを識別する。つまり、動線識別部6は、各始点S1、S2に対応した、複数の始点S1、S2の数と同じ数の動線M1、M2を識別できる。識別する動線の数は、複数の始点の数と異なっていてもよい。
【0056】
図6図7を参照して、動線判断部7を説明する。動線判断部7は、動線識別部6で認識された動線Mの始点Sと終点Qに基づいて検知対象Xの動線を判断する。一例として、検知エリア70を、複数の区分エリアに区分し、動線判断部7は、動線Mの始点Sが属する始点区分エリアと、終点Qが属する終点区分エリアとから、動線Mの動線パターンを決定する。各動線パターンは、個別に累積的にカウントされ、そのカウント数(以下、「判断回数」という)は、記憶部3に記憶される。
【0057】
図6は、複数の区分エリアに区分された検知エリア70の一例を示す。以下の説明では、自動ドア装置100の前側を室内側とし、自動ドア装置100の後側を室外側とする。図6の例では、検知エリア70は、前側(室内側)の第1行から第6行までが、区分エリアD1、区分エリアP1、区分エリアA1、区分エリアL1および区分エリアR1に区分され、後側(室外側)の第7行から第12行までが、区分エリアD2、区分エリアP2、区分エリアA2、区分エリアL2および区分エリアR2に区分されている。区分エリアの数は、2以上であればよい。
【0058】
区分エリアD1は、アドレス6A~6Lの検知スポット71およびアドレス5D~5Iの検知スポット71からなる。区分エリアP1は、アドレス3D~4Iの検知スポット71からなる。区分エリアA1は、アドレス1D~2Iの検知スポット71からなる。区分エリアL1は、アドレス1C~5Aの検知スポット71からなる。区分エリアR1は、アドレス1L~5Jの検知スポット71からなる。
【0059】
区分エリアD2は、アドレス7A~7Lの検知スポット71およびアドレス8D~8Iの検知スポット71からなる。区分エリアP2は、アドレス9D~10Iの検知スポット71からなる。区分エリアA2は、アドレス11D~12Iの検知スポット71からなる。区分エリアL2は、アドレス8A~12Cの検知スポット71からなる。区分エリアR2は、アドレス8J~12Lの検知スポット71からなる。
【0060】
図7は、動線パターンの第1の例を示す模式図である。動線Mの始点Sが、区分エリアL1、L2、A1、A2、R1、R2のいずれかに属し、終点Qが、始点Sと同じ区分エリアに属する場合、動線判断部7は、動線パターンをUターンと判断する。図7は、Uターンと判断される動線パターンの一例を示す。
【0061】
図8は、動線パターンの第2の例を示す模式図である。始点Sが区分エリアL1で終点Qが区分エリアR1の場合、始点Sが区分エリアR1で終点Qが区分エリアL1の場合、始点Sが区分エリアL2で終点Qが区分エリアR2の場合および始点Sが区分エリアR2で終点Qが区分エリアL2の場合、動線判断部7は、動線パターンを横切りと判断する。図8は、横切りと判断される動線パターンの一例を示す。
【0062】
図9は、動線パターンの第3の例を示す模式図である。動線Mの始点Sが、区分エリアL1、L2、R1、R2のいずれかに属し、終点Qが、区分エリアA1、A2のいずれかに属する場合、動線判断部7は、動線パターンを90°ターンと判断する。動線Mの始点Sが、区分エリアA1、A2のいずれかに属し、終点Qが、区分エリアL1、L2、R1、R2のいずれかに属する場合も、動線判断部7は、動線パターンを90°ターンと判断する。図9は、90°ターンと判断される動線パターンの一例を示す。
【0063】
図10は、動線パターンの第4の例を示す模式図である。動線Mの始点Sが、室内側の区分エリアL1、A1、R1のいずれかに属し、終点Qが、室外側の区分エリアL2、A2、R2のいずれかに属する場合、動線判断部7は、動線パターンを退室と判断する。動線Mの始点Sが、室外側の区分エリアL2、A2、R2のいずれかに属し、終点Qが、室内側の区分エリアL1、A1、R1のいずれかに属する場合、動線判断部7は、動線パターンを入室と判断する。図10は、退室または入室と判断される動線パターンの一例を示す。
【0064】
記憶部3は、各動線パターンを累積的にカウントした判断回数を記憶する。自動ドア装置100の管理者は、記憶部3から各動線パターンに関する累積判断回数を任意に取得できる。記憶部3は、所定のタイミングに達したとき、または自動ドア装置100の管理者が所定の操作を行ったとき、各累積判断回数をリセットする。
【0065】
次に、入室および退室の動線形態を説明する。退室の場合であって、始点Sが区分エリアL1に属する場合は左方から退室、始点Sが区分エリアR1に属する場合は右方から退室、始点Sが区分エリアA1に属する場合は正面から退室と、退室の動線形態を区分けできる。また、入室の場合であって、終点Qが区分エリアL1に属する場合は入室後左方へ進む、終点Qが区分エリアR1に属する場合は入室後右方へ進む、終点Qが区分エリアA1に属する場合は入室後正面へ進むなど、入室の動線形態を区分けできる。
【0066】
また、入室の場合であって、始点Sが区分エリアL2に属する場合は左方から入室、始点Sが区分エリアR2に属する場合は右方から入室、始点Sが区分エリアA2に属する場合は正面から入室と、入室の動線形態を区分けできる。また、退室の場合であって、終点Qが区分エリアL2に属する場合は、退室後左方へ進む、終点Qが区分エリアR2に属する場合は退室後右方へ進む、終点Qが区分エリアA2に属する場合は退室後正面へ進むなど、退室の動線形態を区分けできる。
【0067】
このように、実施形態によれば、動線Mの始点Sと終点Qとの組合せにより、入室および退室の詳細な動線形態を把握することが可能になる。記憶部3は、把握された動線形態を累積的にカウントした判断回数を記憶する。自動ドア装置100の管理者は、記憶部3から入室および退室の詳細な動線形態に関する累積判断回数を任意に取得できる。記憶部3は、所定のタイミングに達したとき、または自動ドア装置100の管理者が所定の操作を行ったとき、入室および退室の各累積判断回数をリセットする。
【0068】
上述の動線識別装置50は、起動センサ4および情報処理部20を含んで構成できる。動線識別装置50において、起動センサ4は、開口部周辺に設けられた複数の検知スポットを有する検知エリアにおいて検知対象を検知する検知部として機能する。
【0069】
図4図11を参照して、本実施形態の自動ドア装置100の動作プロセスの一例を説明する。この説明では、図4の軌跡73に沿った動作を示す。図11は、自動ドア装置100のプロセスS110を示すフローチャートである。
【0070】
プロセスS110が開始されると、特定部5は、起動センサ4が非検知状態から検知状態に変化したかどうかを判定する(ステップS111)。起動センサ4が非検知状態のまま変化しない場合(ステップS111のN)、プロセスはステップS111の先頭に戻り、ステップS111を繰り返す。
【0071】
起動センサ4が検知状態に変化した場合(ステップS111のY)、特定部5は、検知ブロック72の軌跡73の始点Sを特定する(ステップS112)。このステップで、特定部5は、最初に検知対象を検知していた検知ブロック(以下、「最先検知領域」という)を軌跡73の始点Sとして特定することができる。
【0072】
ステップS112を実行したら、特定部5は、起動センサ4が検知状態から非検知状態に変化したかどうかを判定する(ステップS113)。
【0073】
起動センサ4が検知状態のまま変化しない場合(ステップS113のN)、分岐判定部28は、検知ブロック72の軌跡73をモニタして、軌跡73が分岐したかどうかを判定する(ステップS114)。このステップで、分岐判定部28は、検知ブロック72が所定の距離以上に離れた複数の検知ブロック72に分裂した場合に検知ブロック72の軌跡73が分岐したと判定できる。この場合の所定の距離は単一の検知スポット71の幅である。つまり、複数の検知ブロック72の間に被検知状態の検知スポット71が介在する場合に、分岐判定部28は、軌跡73が分岐したと判定できる。
【0074】
軌跡73が分岐した場合(ステップS114のY)、特定部5は、分岐後の複数の軌跡それぞれを軌跡731、732としてモニタを開始する(ステップS115)。複数の軌跡73のモニタを開始したら、特定部5は、所定のフラグを立てて、同一の分岐に対して重複する分岐判定を回避するようにしてもよい。また、分岐後に別の新たな分岐(以下「二次分岐」という)があった場合、特定部5は、二次分岐後のそれぞれの軌跡についてもモニタする。ステップS115が実行されたら、プロセスはステップS113の先頭に戻る。
【0075】
軌跡73が分岐していない場合および二次分岐がない場合(ステップS114のN)、プロセスはステップS113の先頭に戻る。
【0076】
起動センサ4が非検知状態に変化した場合(ステップS113のY)、特定部5は、検知ブロック72の軌跡73の終点Qを特定する(ステップS116)。このステップで、特定部5は、最後に検知対象を検知していた検知ブロック(以下、「最後検知領域」という)を軌跡73の終点Qとして特定することができる。また、ステップS113で、軌跡73が複数の軌跡731、732に分岐していた場合、特定部5は、それぞれの軌跡の最後検知領域を複数の終点Q1、Q2として特定することができる。なお、軌跡731、732の最後検知領域が検知されるタイミングは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
ステップS116が実行されたら、動線識別部6は、特定部5で特定された軌跡73の始点Sと終点Qとに基づいて検知対象の動線を識別する(ステップS117)。このステップで、動線識別部6は、単一の始点Sと単一の終点Qとが特定された場合、始点Sと終点Qとを結ぶ動線を識別する。
【0078】
また、動線識別部6は、単一の始点Sと、互いに離れた複数の終点Q1、Q2とが特定された場合、複数の終点Q1、Q2それぞれと単一の始点Sの組合せに基づいて、複数の動線M1、M2を識別する。つまり、終点Q1と始点Sとを結ぶ動線M1を検知対象X1の動線として識別し、終点Q2と始点Sとを結ぶ動線M2を検知対象X2の動線として識別する。
【0079】
ステップS117を実行したら、動線判断部7は、動線識別部6で識別された動線M1、M2に基づいて検知対象X1、X2の動線を判断する(ステップS118)。
【0080】
ステップS118を実行したら、記憶部3は、各動線パターンについて、動線判断部7で判断された判断回数を累積的に記憶する(ステップS119)。ステップS119を実行したら、プロセスはステップS111の先頭に戻り、ステップS111~S119のループを繰り返す。上述の各ステップはあくまでも一例であって、各種の変形が可能である。
【0081】
以上が第1実施形態の説明である。
【0082】
以下、本発明の第2、第3実施形態を説明する。第2、第3実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0083】
[第2実施形態]
開口部23周辺に設けられた複数の検知スポット71からなる検知エリア70において開口部周辺の人又は物である検知対象を検知するステップ(S111、S113)と、複数の検知スポット71のうち検知状態の1以上の検知スポット71からなる検知ブロック72の軌跡の検知エリア70における始点Sと終点Qとを特定するステップ(S112、S116)と、軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定するステップ(S114)と、単一の始点Sと複数の終点Q1、Q2それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線M1、M2を識別するステップ(S117)と、を含む。
【0084】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、自動ドアを用いた動線識別プログラムP100(コンピュータプログラム)である。このプログラムP100は、開口部23周辺に設けられた複数の検知スポット71からなる検知エリア70において開口部周辺の人又は物である検知対象を検知するステップ(S111、S113)と、複数の検知スポット71のうち検知状態の1以上の検知スポット71からなる検知ブロック72の軌跡の検知エリア70における始点Sと終点Qとを特定するステップ(S112、S116)と、軌跡に対して単一の始点と、互いに離れた複数の終点と、が特定された場合、軌跡は複数に分岐したと判定するステップ(S114)と、単一の始点Sと複数の終点Q1、Q2それぞれの組合せに基づいて、それぞれの動線M1、M2を識別するステップ(S117)と、をコンピュータに実行させる。
【0086】
プログラムP100のこれらの機能は、自動ドア用センサ10の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとして自動ドア用センサ10のストレージ(例えば記憶部3)にインストールされてもよい。プログラムP100は自動ドア用センサ10に組み込まれたコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0087】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0088】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0089】
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0090】
実施形態の説明では、検知エリア70が、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を有する例を示したが、検知エリア70は、開口部23の一方側に設定された検知スポット71のみを有してもよい。
【0091】
実施形態の説明では、複数の検知部41、42が両方とも無目16に設けられる例を示したが、複数の検知部の41、42の一部または全部は、壁や天井など無目16以外に設けられてもよい。
【0092】
実施形態の説明では、起動センサ4が、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を複数の検知部41、42で検知する例を示したが、起動センサ4は、開口部23の前側と後側とに設定された検知スポット71を単一の検知部によって検知する構成であってもよい。
【0093】
実施形態の説明では、検知エリア70が単一の開口部23に対して設けられる例を示したが、検知エリア70は、複数の開口部23に対して設けられてもよい。例えば、検知エリア70の一部または全部は、それぞれ自動ドアが設置された複数の開口部23の間に設けられてもよい。
【0094】
実施形態の説明では、統合部43が起動センサ4に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、統合部43は、情報処理部20に設けられてもよい。
【0095】
実施形態の説明では、検知エリア70の区分エリアの一例を図6に示したが、検知エリアの区分エリアは、これに限定されず、種々の変形が可能である。
【0096】
実施形態の説明では、動線識別部6が、終点Qまたは始点Sの数が2である軌跡から動線を認識する例を示したが、これに限定されない。動線識別部6は、終点Qの数が3以上の軌跡や始点Sの数が3以上の軌跡から動線を認識可能に構成されてもよい。
【0097】
実施形態の説明では、記憶部3が自動ドア用センサ10に設けられる例を示したが、これに限定されない。記憶部は、自動ドア駆動装置に設けられてもよいし、自動ドア装置の外部に設けられてもよい。
【0098】
実施形態の説明では、起動センサ4が赤外線反射式センサである例を示したが、これに限定されない。例えば、起動センサは、電波式センサや、超音波式センサ、レーザスキャン式センサ、画像式センサであってもよい。
【0099】
実施形態の説明では、検知エリア70の全ての検知スポット71が検知対象を検知したときに扉9を開閉するための起動信号を生成する起動スポットである例を示したが、これに限定されない。検知エリア70の検知スポット71の一部は、起動信号を生成しない無効スポットに設定されてもよい。
【0100】
実施形態の説明では、特定部5が自動ドア用センサ10に搭載される例を示したが、これに限定されない。特定部は自動ドア駆動装置に搭載されてもよいし、自動ドア装置の外部に設けられてもよい。
【0101】
実施形態の説明では、動線判断部7が判断する動線パターンの一例を図7図10に示したが、動線判断部7は、図7図10の動線パターンとは異なる動線パターンを判断可能に構成されてもよい。
【0102】
実施形態の説明では、伝送路96が装置内バスを含む例を示したが、これに限定されない。伝送路として、有線または無線による公知の情報伝達手段を採用できる。
【0103】
実施形態の説明では、補助光電センサ30の検知情報が情報処理部20を介して制御部91へ送信される例を示したが、これに限定されない。補助光電センサの検知情報は直接制御部91へ送信されてもよいし、他の経路によって制御部91へ送信されてもよい。
【0104】
上述の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0105】
上述した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0106】
3 記憶部、 4 起動センサ、 5 特定部、 6 動線識別部、 7 動線判断部、 10 自動ドア用センサ、 23 開口部、 28 分岐判定部、 41 第1検知部、 42 第2検知部、 50 動線識別装置、 71 検知スポット、 72 検知ブロック、 73 軌跡、 100 自動ドア装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11