(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103705
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】偏心量算出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G01B15/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090102
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2022162177の分割
【原出願日】2014-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 一雄
(57)【要約】
【課題】偏心量を算出するために相対的に手間をかけることなく使用することが可能な偏心量算出装置及び方法を提供する。
【解決手段】偏心量算出装置(100)は、外側球面(501s)を有する外側層(501)及び外側球面の内側に位置する内側球面(502s)を有し且つ外側層の内側に位置する内側層(502)を含む球体(500)に対して、テラヘルツ波(THz)を照射する照射手段(110)と、球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出手段(130)と、検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、外側球面の中心(c
1)と内側球面の中心(c
3)とのずれ量である偏心量(p)を算出する算出手段(401)とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側球面を有する外側層及び前記外側球面の内側に位置する内側球面を有し且つ前記外側層の内側に位置する内側層を含む球体に対して、テラヘルツ波を照射する照射手段と、
前記球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記外側球面の中心と前記内側球面の中心とのずれ量である偏心量を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする偏心量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばツーピースゴルフボール等のように一方が他方の内側に位置する少なくとも2つの球面(球体)を含む球体の偏心量を算出する偏心量算出の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ツーピースゴルフボールの偏心量(つまり、内核と外被との間のずれである偏心量)を算出する装置が知られている。その他、特許文献2に記載されているように、ゴルフボールのカバー厚を算出する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-364402号公報
【特許文献2】特開昭和58-150810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、X線を用いてゴルフボールの内部構造を透視することで、ゴルフボールの偏心量を算出している。しかしながら、X線の取り扱いに注意が必要であるがゆえに、特許文献1に記載された装置は、手間をかけることなく使用することができる装置であるとは言いがたいという技術的問題点が生ずる。
【0005】
一方で、特許文献2に記載された装置は、超音波を用いてゴルフボールのカバー厚さを算出している。このため、特許文献1に記載されたX線に代えて、特許文献2に記載された超音波を用いて、ゴルフボールの偏心量を算出することができる可能性がある。しかしながら、超音波を用いる場合には、超音波を伝搬させるための媒介(例えば、水等)必要になってくる。従って、超音波を用いてゴルフボールの偏心量を算出する装置も、手間をかけることなく使用することができる装置であるとは言いがたいという技術的問題点が生ずる。
【0006】
尚、上述した技術的問題点は、ゴルフボールの偏心量を算出する装置に限らず、一方が他方の内側に位置する少なくとも2つの球面(球体)を含む球体の偏心量を算出する装置においても同様に生じる可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、偏心量を算出するために相対的に手間をかけることなく使用することが可能な偏心量算出装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する偏心量算出装置は、外側球面を有する外側層及び前記外側球面の内側に位置する内側球面を有し且つ前記外側層の内側に位置する内側層を含む球体に対して、テラヘルツ波を照射する照射手段と、前記球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出手段と、前記検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記外側球面の中心と前記内側球面の中心とのずれ量である偏心量を算出する算出手段とを備える。
【0009】
上記課題を解決する偏心量算出方法は、外側球面を有する外側層及び前記外側球面の内側に位置する内側球面を有し且つ前記外側層の内側に位置する内側層を含む球体に対して、テラヘルツ波を照射する照射工程と、前記球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出工程と、前記検出工程における前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記外側球面の中心と前記内側球面の中心とのずれ量である偏心量を算出する算出工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】偏心量算出装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】ゴルフボールの構成の一の例及び他の例を示す断面図である。
【
図3】本実施例のテラヘルツ波計測ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】偏心量算出装置が行う「偏心量の第1算出動作」の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図6】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図7】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図8】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図9】テラヘルツ波計測ユニットからCPUに対して出力される波形信号を示すグラフである。
【
図10】波形信号に対して波形診断処理を行うことで得られる、コアの球面とカバー層の球面との間の間隔を示す断面データを示すグラフである。
【
図11】
図10に示す断面データに対して回帰分析処理を行うことで得られる仮想面に沿ったゴルフボールの断面を、XY座標平面上で示すグラフである。
【
図12】断面中に現れるカバー層の球面を示す円の中心、並びに断面中に現れるコアの球面を示す円の中心及び半径を、XY座標平面上で示すグラフである。
【
図13】断面中に現れるコアの球面を示す円の中心とコアの中心との関係をYZ座標平面上で示すグラフである。
【
図14】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図15】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図16】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図17】偏心量算出装置が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図18】偏心量算出装置が行う「偏心量の第2算出動作」の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図19】偏心量算出装置が第2算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置の動作状態を示す側面図である。
【
図20】第1仮想面に沿った第1断面中に現れるカバー層の球面を示す円の中心並びに第1断面中に現れるコアの球面を示す円の中心及び半径をXY座標平面上で示すグラフ、及び、第2仮想面に沿った第2断面中に現れるカバー層の球面を示す円の中心並びに第2断面中に現れるコアの球面を示す円の中心及び半径をXY座標平面上で示すグラフである。
【
図21】第1及び第2断面中に現れるコアの球面を示す円の中心とコア502の中心との関係をYZ座標平面上で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の偏心量算出装置及び方法の実施形態について説明を進める。
【0012】
(偏心量算出装置の実施形態)
<1>
本実施形態の偏心量算出装置は、外側球面を有する外側層及び前記外側球面の内側に位置する内側球面を有し且つ前記外側層の内側に位置する内側層を含む球体に対して、テラヘルツ波を照射する照射手段と、前記球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出手段と、前記検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記外側球面の中心と前記内側球面の中心とのずれ量である偏心量を算出する算出手段とを備える。
【0013】
本実施形態の偏心量算出装置は、球体の偏心量を算出することができる。ここで、球体は、外側層及び外側層よりも内側に位置する内側層を含んでいる。外側層は、外側球面(例えば、外側層の外側の表面)を有する。言い換えれば、外側層は、当該外側層の表面によって外側球面を規定する。内側層は、外側球面よりの内側に位置する内側球面(例えば、内側層の外側の表面)を有する。言い換えれば、内側層は、当該内側層の表面によって内側球面を規定する。このような球体を対象として偏心量算出装置が算出する偏心量は、外側球面の中心(つまり、外側球面が表面となる又は外側球面が規定する仮想的な外側球体の中心)と、内側球面の中心(つまり、内側球面が表面となる又は内側球面が規定し且つ外側球体の内側に位置する仮想的な内側球体の中心)との間のずれ量を意味する。
【0014】
一例として、球体は、球状の内側層と、内側層を取り囲む外側層(つまり、内部に内側層を包含し得る空隙を有する球状の外側層)とを含む球体であってもよい。球体は、球状の物体と、当該球状の物体を取り囲む内側層(つまり、内部に球状の物体を包含し得る空隙を有する球状の内側層)と、内側層を更に取り囲む外側層(つまり、内部に内側層を包含し得る空隙を有する球状の外側層)とを含む球体であってもよい。
【0015】
偏心量を算出するために、本実施形態の偏心量算出装置は、照射手段と、検出手段と、算出手段とを備える。
【0016】
照射手段は、球体に対してテラヘルツ波を照射する。検出手段は、球体に照射されたテラヘルツ波を検出する。例えば、検出手段は、球体によって反射されたテラヘルツ波を検出してもよい。例えば、検出手段は、球体を透過してきたテラヘルツ波を検出してもよい。このとき、検出手段は、ポンプ・プローブ法を用いてテラヘルツ波を検出してもよい。
【0017】
算出手段は、検出手段によるテラヘルツ波の検出結果に基づいて、偏心量を算出する。ここで、テラヘルツ波が球体の内部に伝搬していくがゆえに、テラヘルツ波の検出結果は、球体の内部の構造を直接的に又は間接的に示している。その結果、テラヘルツ波の検出結果は、外側層と内側層との間の位置関係(つまり、外側球面と内側球面との間の位置関係)を直接的に又は間接的に示しているともいえる。このため、算出手段は、このような球体の内部の構造を示すテラヘルツ波の検出結果に基づいて、偏心量を好適に算出することができる。
【0018】
加えて、本実施形態の偏心量算出装置は、取り扱いに注意が必要なX線及び伝搬させるための媒介が必要な超音波に代えて、X線と比較すれば取り扱いに注意が必要とならず且つ伝搬させるための媒介が必要でないテラヘルツ波を用いて偏心量を算出することができる。このため、本実施形態の偏心量算出装置は、手間をかけることなく使用することができる装置であるといえる。つまり、ユーザは、偏心量を算出するために相対的に手間をかけることなく、本実施形態の偏心量算出装置を使用することができる。
【0019】
<2>
本実施形態の偏心量算出装置は、前記照射手段は、前記球体の表面と所定の仮想面との交線に沿って連続的に又は断続的に前記テラヘルツ波を照射し、前記算出手段は、(i)前記検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記仮想面に沿った前記球体の断面を示す断面データを取得すると共に、(ii)前記断面データを解析することで、前記偏心量を算出する。
【0020】
この態様によれば、照射手段は、球体の表面と仮想面との交線に相当する球体の円周に沿ってテラヘルツ波を照射することができる。更に、算出手段は、所定の仮想面に沿った球体の断面を示す断面データを取得することができる。この場合、断面データは、典型的には、断面中の外側球面を示す外側円(つまり、断面を規定する仮想面と外側球面との交線に相当する外側円)や、断面中の内側球面を示す内側円(つまり、断面を規定する仮想面と内側球面との交線に相当する内側円)を示している。その結果、算出手段は、当該断面データを解析する(例えば、外側円と内側円との間の位置関係等を解析する)ことで、偏心量を好適に算出することができる。
【0021】
<3>
上述の如く断面データを取得する偏心量算出装置の他の態様では、前記算出手段は、前記断面データを解析することで、(i)前記断面中の前記外側球面を示す外側円の中心を原点とする座標系における、前記断面中の前記内側球面を示す内側円の中心の座標、及び、(ii)前記内側円の半径を算出し、前記算出手段は、前記内側円の中心の座標及び前記内側円の半径に基づいて、前記偏心量を算出する。
【0022】
この態様によれば、算出手段は、内側円の中心の座標及び内側円の半径に基づいて、偏心量を好適に算出することができる。
【0023】
<4>
上述の如く内側円の中心の座標及び内側円の半径に基づいて偏心量を算出する偏心量算出装置の他の態様では、前記算出手段は、前記内側円の中心の座標を(a20、b20)とし、前記内側円の半径をr20とし、前記内側球面の半径をr2とし、前記偏心量をpとすると、数式1を用いて前記偏心量を算出する。
【0024】
【0025】
この態様によれば、算出手段は、数式1を用いることで、内側円の中心の座標及び内側円の半径に基づいて、偏心量を好適に算出することができる。
【0026】
<5>
本実施形態の偏心量算出装置の他の態様では、前記照射手段は、前記球体の表面と所定の第1仮想面との交線に沿って連続的に又は断続的に前記テラヘルツ波を照射した後に、前記球体の表面と前記第1仮想面とは異なり且つ前記第1仮想面と平行な所定の第2仮想面との交線に沿って連続的に又は断続的に前記テラヘルツ波を照射し、前記算出手段は、(i)前記検出手段による前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記第1仮想面に沿った前記球体の第1断面を示す第1断面データ及び前記第2仮想面に沿った前記球体の第2断面を示す第2断面データを取得すると共に、(ii)前記第1及び第2断面データを解析することで、前記偏心量を算出する。
【0027】
この態様によれば、照射手段は、球体の表面と第1仮想面との交線に相当する球体の第1円周及び球体の表面と第2仮想面との交線に相当する球体の第2円周の夫々に沿ってテラヘルツ波を照射することができる。算出手段は、所定の第1仮想面に沿った球体の第1断面を示す第1断面データ及び所定の第2仮想面に沿った球体の第2断面を示す第2断面データを取得することができる。この場合、第1断面データは、典型的には、第1断面中の外側球面を示す第1外側円(つまり、第1断面を規定する第1仮想面と外側球面との交線に相当する第1外側円)や、第1断面中の内側球面を示す第1内側円(つまり、断面を規定する第1仮想面と内側球面との交線に相当する第1内側円)を示している。同様に、第2断面データは、典型的には、第2断面中の外側球面を示す第2外側円(つまり、第2断面を規定する第2仮想面と外側球面との交線に相当する第2外側円)や、第2断面中の内側球面を示す第2内側円(つまり、断面を規定する第2仮想面と内側球面との交線に相当する第2内側円)を示している。その結果、算出手段は、当該第1及び第2断面データを解析する(例えば、第1外側円と第1内側円との間の位置関係や第2外側円と第2内側円との間の位置関係等を解析する)ことで、偏心量を好適に算出することができる。
【0028】
<6>
上述の如く第1及び第2断面データを取得する偏心量算出装置の他の態様では、前記算出手段は、前記第1断面データを解析することで、(i)前記第1断面中の前記外側球面を示す第1外側円の中心を原点とする座標系における、前記第1断面中の前記内側球面を示す第1内側円の中心の座標、及び、(ii)前記第1内側円の半径を取得し、前記第2断面データを解析することで、(i)前記第2断面中の前記外側球面である第2外側円の中心を原点とする座標系における、前記第2断面中の前記内側球面である第2内側円の中心の座標、及び、(ii)前記第2内側円の半径を取得し、前記算出手段は、前記第1内側円の中心の座標及び前記第1内側円の半径並びに前記第2内側円の中心の座標及び前記第2内側円の半径に基づいて、前記偏心量を算出する。
【0029】
この態様によれば、算出手段は、第1及び第2内側円の夫々の中心の座標並びに第1及び第2内側円の夫々の半径に基づいて、偏心量を好適に算出することができる。
【0030】
<7>
上述の如く第1及び第2内側円の夫々の中心の座標並びに第1及び第2内側円の半径に基づいて偏心量を算出する偏心量算出装置の他の態様では、前記算出手段は、前記第1内側円の中心の座標を(a21、b21)とし、前記第1内側円の半径をr21とし、前記第2内側円の中心の座標を(a22、b22)とし、前記第2内側円の半径をr22とし、前記第1仮想面と前記第2仮想面との間の間隔をdとし、前記偏心量をpとすると、数式2を用いて前記偏心量を算出する。
【0031】
【0032】
この態様によれば、算出手段は、数式2を用いることで、第1及び第2内側円の夫々の中心の座標並びに第1及び第2内側円の夫々の半径に基づいて、偏心量を好適に算出することができる。
【0033】
尚、上述した数式1を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、内側球面の半径を予め規定する必要がある。なぜならば、断面データが互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から規定される3次元座標空間内におけるXY平面に沿った断面を示す断面データである場合には、当該断面データのみに基づいてZ軸方向の偏心量が算出できないからである。しかしながら、数式2を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、内側球面の半径を予め規定していなくてもよいという利益を享受することができる。つまり、数式1を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、予め規定した内側球面の半径と実際の内側球面の半径との間に誤差があると偏芯量の算出にも誤差を生じてしまう可能性があるが、数式2を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、実際に計測した断面データのみに基づいて偏心量を算出するために、誤差を生じにくいという利益を享受することができる。
【0034】
一方で、数式2を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、球体の表面と第1仮想面との交線に沿ってテラヘルツ波を照射し且つ球体の表面と第2仮想面との交線に沿ってテラヘルツ波を照射するがゆえに、テラヘルツ波の照射に要する時間が相対的に長くなる。しかしながら、数式1を用いて偏心量を算出する偏心量算出装置は、テラヘルツ波の照射に要する時間が相対的に短くなるという利益を享受することができる。
【0035】
(偏心量算出方法の実施形態)
<8>
本実施形態の偏心量算出方法は、外側球面を有する外側層及び前記外側球面の内側に位置する内側球面を有する内側層を含む球体に対して、テラヘルツ波を照射する照射工程と、前記球体に照射されたテラヘルツ波を検出する検出工程と、前記検出工程における前記テラヘルツ波の検出結果に基づいて、前記外側球面の中心と前記内側球面の中心とのずれ量である偏心量を算出する算出工程とを備える。
【0036】
本実施形態の偏心量算出方法は、上述した本実施形態の偏心量算出装置が享受する効果と同様の効果を好適に享受することができる。尚、上述した本実施形態の偏心量算出装置が採用し得る各種態様に対応して、本実施形態の偏心量算出方法もまた、各種態様を採用することができる。
【0037】
本実施形態の偏心量算出装置及び方法の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の偏心量算出装置は、照射手段と、検出手段と、算出手段とを備える。本実施形態の偏心量算出方法は、照射工程と、検出工程と、算出工程とを備える。従って、偏心量を算出するために相対的に手間をかけることなく使用することが可能な偏心量算出装置及び方法が提供される。
【実施例0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の偏心量算出装置及び方法の実施例についての説明を進める。尚、以下では、「球体」の一例であるゴルフボール500の偏心量pを算出する偏心量算出装置1を例示しながら説明を進める。しかしながら、本実施例の偏心量算出装置1は、ゴルフボール500とは異なる任意の球体(特に、一方が他方の内側に位置する少なくとも2つの球面を含む球体)の偏心量pを算出してもよいことは言うまでもない。
【0040】
(1)偏心量算出装置1の構成
初めに、
図1から
図3を参照しながら、本実施例の偏心量算出装置1の構成について説明する。以下では、偏心量算出装置1の全体構成を説明した後、補足説明として、偏心量算出装置1による偏心量pの算出対象となるゴルフボール500の構成及び偏心量算出装置1が備えるテラヘルツ波計測ユニット100の構成を説明する。
【0041】
(1-1)偏心量算出装置1の全体構成
まず、
図1を参照しながら、偏心量算出装置1の全体構成について説明する。
図1は、偏心量算出装置1の全体構成を示す模式図である。尚、
図1では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸及びZ軸)から定義される3次元座標空間を用いて、偏心量算出装置1の説明を進める。この3次元座標空間は、
図2以降においても共通して用いられる。
【0042】
図1に示すように、偏心量算出装置1は、テラヘルツ波計測ユニット100と、チャッキングユニット200と、搬送ユニット300と、CPU(Central Processing Unit)400とを備える。
【0043】
テラヘルツ波計測ユニット100は、Y軸に沿ってテラヘルツ波計測ユニット100と隣接する位置に配置されるゴルフボール500に対して、テラヘルツ波THzを照射する。尚、テラヘルツ波THzを照射している時点でのテラヘルツ波計測ユニット100(特に、後述するテラヘルツ発生素子110の出射面)とゴルフボール500の表面(特に、テラヘルツ波THzの照射位置)との間の距離は、例えば、概ね24mmであってもよい。
【0044】
テラヘルツ波計測ユニット100は、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THz(より具体的には、ゴルフボール500によって反射されたテラヘルツ波THz)を検出する。その結果、テラヘルツ波計測ユニット100は、テラヘルツ波THzの時間波形を示す波形信号を検出することができる。この波形信号は、実質的には、ゴルフボール500の内部構造を特定可能な信号である。
【0045】
チャッキングユニット200は、チャッキングパッド201と、チャッキングパッド202と、エアシリンダ203と、ステッピングモータ204とを備える。チャッキングパッド201及び202は、その間にゴルフボール500が配置可能となるようにZ軸に沿って並んでいる。エアシリンダ203は、Z軸に沿ってチャッキングパッド201を移動させる。その結果、チャッキングパッド201及び202は、搬送ユニット300が搬送してくるゴルフボール500を保持することできる。ステッピングモータ204は、チャッキングパッド202をZ軸周りに回転させる。その結果、テラヘルツ波計測ユニット100は、XY平面に平行な仮想面とゴルフボール500の表面との交線に沿って(つまり、当該交線に相当する、ゴルフボール500の所望の円周に沿って)断続的に又は連続的にテラヘルツ波THzを照射することができる。
【0046】
チャッキングユニット200は、Z軸に沿って延びる不図示のスライダ上に固定されている。このため、チャッキングユニット200は、スライダ上を移動することで、Z軸に沿って移動することができる。
【0047】
搬送ユニット300は、保持穴301と、押し出しピン302と、エアシリンダ303と、押し出しピン304と、エアシリンダ305とを備える。保持穴301は、不図示の投入シュータから投入されるゴルフボール500を保持する穴(言い換えれば、くぼみ)である。エアシリンダ303は、ゴルフボール500の偏心量pが許容値(例えば、100ミクロン)未満である場合に、押し出しピン302が保持穴301から突き出るようにY軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)押し出しピン302を押し出す。その結果、保持穴301に保持されているゴルフボール500は、押し出しピン302によって押し出されることで不図示の良品用排出シュータに送り込まれる。一方で、エアシリンダ305は、ゴルフボール500の偏心量pが許容値未満でない場合に、押し出しピン304が保持穴301から突き出るようにY軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)押し出しピン304を押し出す。その結果、保持穴301に保持されているゴルフボール500は、押し出しピン304によって押し出されることで不図示の不良品用排出シュータに送り込まれる。
【0048】
尚、搬送ユニット300は、ゴルフボール500を良品用排出シュータに向かって好適に押し出すことができるように、複数本(例えば、2本)の押し出しピン302を備えていてもよい。この場合、複数本の押し出しピン302は、ゴルフボール500が押し出される方向に交わる(好ましくは、直交する)方向に沿って並んでいてもよい。同様に、搬送ユニット300は、ゴルフボール500を不良品用排出シュータに向かって好適に押し出すことができるように、複数本(例えば、2本)の押し出しピン304を備えていてもよいこの場合、複数本の押し出しピン304は、ゴルフボール500が押し出される方向に交わる(好ましくは、直交する)方向に沿って並んでいてもよい。
【0049】
搬送ユニット300は、Y軸に沿って延びる不図示のスライダ上に固定されている。このため、搬送ユニット300は、スライダ上を移動することで、Y軸に沿って移動することができる。例えば、投入シュータから投入されるゴルフボール500が保持穴301に保持されると、搬送ユニット300は、ゴルフボール500がチャッキングパッド201とチャッキングパッド202との間に位置することになるように、Y軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)移動する。搬送ユニット300は、ゴルフボール500がチャッキングパッド201及び202によって保持されると、保持穴301がゴルフボール500をリリースするように、Y軸に沿って(より具体的には、Y軸の負方向に向かって)移動する。搬送ユニット300は、ゴルフボール500に対するテラヘルツ波THzの照射が終了すると、保持穴301がゴルフボール500を再び保持するように、Y軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)移動する。
【0050】
CPU400は、偏心量算出装置1全体の動作を制御するシステムコントローラである。CPU400は、その内部に物理的に実現される処理回路として又は論理的に実現される処理ブロックとして、偏心量算出部401と、チャッキング制御部402と、搬送制御部403とを備えている。偏心量算出部401は、テラヘルツ波計測ユニット1が検出した波形信号(つまり、ゴルフボール500によって反射されたテラヘルツ波THzの時間波形を示す半径信号)に基づいて、ゴルフボール500の偏心量pを算出する。チャッキング制御部402は、チャッキングユニット200の動作を制御する。搬送制御部403は、搬送ユニット300の動作を制御する。尚、偏心量算出部401、チャッキング制御部402及び搬送制御部403の動作の詳細については、後に詳述する(
図4等参照)。
【0051】
(1-2)ゴルフボール500の構成
続いて、
図2(a)から
図2(c)を参照しながら、ゴルフボール500の構成について説明する。
図2(a)及び
図2(b)は、ゴルフボール500の構成の一の例を示す断面図である。
図2(c)は、ゴルフボール500の構成の他の例を示す断面図である。
【0052】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、ゴルフボール500は、「外側層」の一具体例であるカバー層501と、「内側層」の一具体例であるコア502とを備えている。コア502は、球状の物体(つまり、球体)である。カバー層501は、コア502を取り囲む。つまり、カバー層501は、その内部にコア502が位置することが可能な空隙(空洞)を有する球状の物体(つまり、球体)である。つまり、ゴルフボール500は、いわゆるツーピースボールである。
【0053】
本実施例における偏心量pとは、コア502の外側の球面(つまり、表面)502sの中心(つまり、当該球面502sが表面となる仮想的な球体の中心)c2と、カバー層501の外側の球面(つまり、表面)501sの中心(つまり、当該球面501sが表面となる仮想的な球体の中心)c1との間の3次元的なずれ量である。一方、偏心量pyおよび偏心量pzとは、YZ平面上の断面における、コア502の中心c2とカバー層501の中心c1との間のずれ量である。また、偏心量pxとは、XY平面上の断面における、コア502の中心c2とカバー層501の中心c1との間のずれ量である。一般的には、ゴルフボール500の互いに直交する2つの断面を計測した上で、当該計測結果に基づいて、p=(px2+py2+pz2)1/2という数式を用いて偏心量pを算出する。。
【0054】
理想的には、コア502の中心c2とカバー層501の中心c1とは一致するべき(つまり、偏心量pがゼロになるべき)である。つまり、理想的には、コア502及びカバー層501は同心円状に配置されるべきである。しかしながら、実際には、ゴルフボール500の製造誤差等に起因して、コア502の中心c2とカバー層501の中心c1とが一致しない(つまり、偏心量pがゼロにならない)ことがある。本実施例の偏心量算出装置1は、このような偏心量pを算出する。
【0055】
尚、ゴルフボール500は、2つの層(つまり、コア502及びカバー層501)を備えることに代えて、3つ以上の層を備えていてもよい。例えば、
図2(c)に示すように、ゴルフボール500は、上述したコア502及びカバー層501に加えて、コア502を取り囲むと共にカバー層501によって取り囲まれる中間層503を備えていてもよい。この場合、偏心量pは、コア502の中心とカバー層501の中心との間の3次元的なずれ量(つまり、コア502の外側の球面502sの中心とカバー層501の外側の球面501sの中心との間の3次元的なずれ量)を意味していてもよい。偏心量pは、コア502の中心と中間層503の中心との間の3次元的なずれ量(つまり、コア502の外側の球面502sの中心と中間層503の外側の球面503sの中心との間の3次元的なずれ量)を意味していてもよい。偏心量pは、カバー層501の中心と中間層503の中心との間の3次元的なずれ量(つまり、カバー層501の外側の球面501sの中心と中間層503の外側の球面503sの中心との間の3次元的なずれ量)を意味していてもよい。ゴルフボール500が4つ以上の層を備えている場合についても同様である。
【0056】
(1-3)テラヘルツ波計測ユニット100の構成
続いて、
図3を参照しながら、テラヘルツ波計測ユニット100の構成について説明する。
図3は、テラヘルツ波計測ユニット100の構成を示すブロック図である。
【0057】
図3に示すように、テラヘルツ波計測ユニット100は、テラヘルツ波THzをゴルフボール500に照射すると共に、ゴルフボール500を透過した又はゴルフボール500によって反射されたテラヘルツ波THz(つまり、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THz)を検出する。尚、
図1及び
図3に示すように、本実施例では、テラヘルツ波計測ユニット100は、ゴルフボール500によって反射されたテラヘルツ波THzを検出するものとする。
【0058】
テラヘルツ波THzは、1テラヘルツ(1THz=1012Hz)前後の周波数領域(つまり、テラヘルツ領域)に属する電磁波である。テラヘルツ領域は、光の直進性と電磁波の透過性を兼ね備えた周波数領域である。テラヘルツ領域は、様々な物質が固有の吸収スペクトルを有する周波数領域である。従って、テラヘルツ波計測ユニット100は、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THzの周波数スペクトルを解析することで、ゴルフボール500の特性(本実施例では特に、ゴルフボール500の断面に相当する内部構造)を分析することができる。
【0059】
テラヘルツ波THzの周期は、サブピコ秒のオーダーの周期であるがゆえに、当該テラヘルツ波THzの時間波形を直接的に検出することは技術的に困難である。そこで、テラヘルツ波計測ユニット100は、時間遅延走査に基づくポンプ・プローブ法を採用することでして、テラヘルツ波THzの時間波形を間接的に検出する。
【0060】
図3に示すように、このようなポンプ・プローブ法を採用するテラヘルツ波計測ユニット100は、パルスレーザ装置101と、「照射手段」の一具体例であるテラヘルツ波発生素子110と、ビームスプリッタ161と、反射鏡162と、反射鏡163と、光遅延器120と、「検出手段」の一具体例であるテラヘルツ波検出素子130と、バイアス電圧生成部141と、I-V(電流-電圧)変換部144と、ロックイン検出部145とを備えている。
【0061】
パルスレーザ装置101は、当該パルスレーザ装置101に入力される駆動電流に応じた光強度を有するサブピコ秒オーダー又はフェムト秒オーダーのパルスレーザ光LBを生成する。パルスレーザ光LBの繰り返し周波数は数十MHz程度である。パルスレーザ装置101が生成したパルスレーザ光LBは、不図示の導光路(例えば、光ファイバ等)及び不図示のレンズを介して、ビームスプリッタ161に入射する。
【0062】
ビームスプリッタ161は、パルスレーザ光LBを、ポンプ光LB1とプローブ光LB2とに分岐する。ポンプ光LB1は、不図示のレンズを介して、テラヘルツ波発生素子110に入射する。一方で、プローブ光LB2は、反射鏡162を介して、光遅延器120に入射する。
【0063】
光遅延器120は、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の差分(つまり、光路長差)を調整する。具体的には、光遅延器120は、プローブ光LB2の光路長を調整することで、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の光路長差を調整する。尚、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の光路長差を調整することで、ポンプ光LB1がテラヘルツ波発生素子110に入射するタイミング(或いは、テラヘルツ波発生素子110から出射するテラヘルツ波THzがテラヘルツ波検出素子130に入射するタイミング)と、プローブ光LB2がテラヘルツ波検出素子130に入射するタイミングとの間の相対的なずれ量を調整することができる。例えば、光遅延器120によってプローブ光LB2の光路が0.3ミリメートル(但し、空気中での光路長)だけ長くなると、プローブ光LB2がテラヘルツ波検出素子130に入射するタイミングが1ピコ秒だけ遅くなる。この場合、テラヘルツ波検出素子130がテラヘルツ波THzを検出するタイミングが、1ピコ秒だけ遅くなる。テラヘルツ波検出素子130に対して同一の波形を有するテラヘルツ波THzが数十MHz程度の間隔で繰り返し入射することを考慮すれば、テラヘルツ波検出素子130がテラヘルツ波THzを検出するタイミングを徐々にずらすことで、テラヘルツ波検出素子130は、テラヘルツ波THzの時間波形を間接的に検出することができる。
【0064】
尚、
図1は、光遅延器120がプローブ光LB2の光路に配置されているテラヘルツ波計測ユニット100を示している。しかしながら、光遅延器120は、プローブ光LB2の光路に加えて又は代えて、ポンプ光LB1の光路に配置されてもよい。つまり、光遅延器120は、プローブ光LB2の光路長を調整することに加えて又は代えて、ポンプ光LB1の光路長を調整することで、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の光路長差を調整してもよい。
【0065】
プローブ光LB2の光路長を調整するために、光遅延器120は、再帰反射鏡121と、送りネジ機構122と、モータ123とを備えている。
【0066】
再帰反射鏡121は、当該再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を再帰反射する。つまり、再帰反射鏡121は、当該再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を、当該プローブ光LB2の入射方向と平行な方向に向けて反射する。第1実施例では、再帰反射鏡121は、90度の角度で交わる第1反射面121aと第2反射面121bとを備えている。第1反射面121aは、再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を、第2反射面121bに向けて反射する。第2反射面121bは、第1反射面121aから第2反射面121bに入射してくるプローブ光LB2を、再帰反射鏡120の外部(例えば、反射鏡163)に向けて反射する。
【0067】
再帰反射鏡121は、送りネジ機構122に嵌合する送り溝を備えている。その結果、再帰反射鏡121は、モータ123の駆動による送りネジ機構122の回転に合わせて、プローブ光LB2の光路(具体的には、再帰反射光121に入射する時点でのプローブ光LB2の光路であって、
図3中の上下方向)に沿って移動する。再帰反射鏡121の移動により、プローブ光LB2の光路長が調整される。
【0068】
光遅延器120から出射したプローブ光LB2は、反射鏡163及び不図示のレンズを介して、テラヘルツ波検出素子130に入射する。
【0069】
光遅延器120から出射したポンプ光LB1は、テラヘルツ波発生素子110に入射する。テラヘルツ波発生素子110は、バイアス電圧生成部141が生成するバイアス電圧によって変調されたテラヘルツ波THzを出射する。尚、バイアス電圧生成部141は、テラヘルツ波THzの変調に同期した参照信号をロックイン検出部に出力する。出射したテラヘルツ波THzは、不図示の光学系(例えば、レンズ等)を介して、ゴルフボール500に照射される。ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THzは、ゴルフボール500からの反射光として、不図示の光学系(例えば、レンズ等)を介して、テラヘルツ波検出素子130に入射する。このときパルス状のプローブ光LB2がテラヘルツ波検出素子130に入射した瞬間に、テラヘルツ波検出素子130からは、テラヘルツ波THzの光強度に応じた信号強度を有する電流信号が出力される。テラヘルツ波検出素子130から出力された電流信号は、I―V変換部144によって、電圧信号に変換される。このとき、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の光路長差を適宜調整しながら同様の動作が繰り返されることで、テラヘルツ波THzの時間波形を検出することができる。ロックイン検出部145は、テラヘルツ波の検出信号の参照信号とは異なる周波数のノイズ成分を除去する(即ち、変調された検出信号と参照信号とを用いて同期検波をする)ことによって、時間波形信号を高感度・高精度に検波する。ロックイン検出部145が検波したテラヘルツ波THzの時間波形は、当該時間波形を示す波形信号としてCPU400に出力される。
【0070】
(2)偏心量pの算出動作
続いて、
図4から
図21を参照しながら、偏心量算出装置1が行う「偏心量pの算出動作」について説明する。尚、以下では、2種類の算出動作(第1算出動作及び第2算出動作動作)について順に説明する。
【0071】
(2-1)偏心量pの第1算出動作
まず、
図4から
図17を参照しながら、偏心量算出装置1が行う「偏心量pの第1算出動作」について説明する。
図4は、偏心量算出装置1が行う「偏心量pの第1算出動作」の流れの一例を示すフローチャートである。
図5から
図8は、夫々、偏心量算出装置1が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置1の動作状態を示す側面図である。
図9は、テラヘルツ波計測ユニット100からCPU400に対して出力される波形信号を示すグラフである。
図10は、波形信号に対して波形診断処理を行うことで得られる、コア502の球面502sとカバー層501の球面501sとの間の間隔を示す断面データを示すグラフである。
図11は、
図10に示す断面データに対して回帰分析処理を行うことで得られる、仮想面XY1に沿ったゴルフボール500の断面(特に、その断面中に現れるカバー層501の球面501s及びコア502の球面502s)をXY座標平面上で示すグラフである。
図12は、断面中に現れるカバー層501の球面501sを示す円11の中心c
10、並びに断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12の中心c
20及び半径r
20を、XY座標平面上で示すグラフである。
図13は、断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12の中心c
20とコア502の中心c
2との関係をYZ座標平面上で示すグラフである。
図14から
図17は、夫々、偏心量算出装置1が第1算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置1の動作状態を示す側面図である。
【0072】
図4に示すように、まず、投入シュータを介して、搬送ユニット300にゴルフボール500が投入される(
図4のステップS101)。その結果、
図5に示すように、搬送ユニット300の保持穴301は、ゴルフボール500を保持する。
【0073】
続いて、搬送ユニット300は、搬送制御部403の制御下で、ゴルフボール500がチャッキングパッド201とチャッキングパッド202との間に位置することになるように、Y軸に沿った
図6中の矢印A6の方向に向かって移動する。
【0074】
ゴルフボール500がチャッキングパッド201とチャッキングパッド202との間に位置することになるまで搬送ユニット300が移動した後には、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、ゴルフボール500をチャッキングする(
図4のステップS102)。具体的には、エアシリンダ203は、Z軸に沿った
図6中の矢印B6の方向に向かってチャッキングパッド201を移動させると共にチャッキングユニット200全体がZ軸に沿った
図6中の矢印C6の方向に向かってチャッキングパッド202を移動させる。その結果、
図6に示すように、チャッキングパッド201及び202は、搬送ユニット300が搬送してきたゴルフボール500を保持する。
【0075】
続いて、搬送ユニット300は、搬送制御部403の制御下で、ゴルフボール500が保持穴301からリリースされるように、Y軸に沿った
図7の矢印A7の方向に向かって移動する。
【0076】
その後、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面上の所望位置にテラヘルツ波THzを照射することができるように、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、Z軸に沿った
図7中の矢印B7の方向に向かって移動する(
図4のステップS103)。チャッキング(
図4のステップS102)の際、所望位置へ位置決めされている場合は、所望位置への移動(
図4のステップS103)は省略される。本実施例では、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500の表面(つまり、カバー層501の球面501s)とXY平面に平行な仮想面XY1との交線に相当する円周に対して、テラヘルツ波THzを連続的に又は断続的に照射する。このとき、仮想面XY1は、ゴルフボール500の中心(つまり、カバー層501の中心c
1)を含む面であることが好ましい。従って、チャッキングユニット200は、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線に相当する円周に対してテラヘルツ波THzを照射することができるように移動する。
【0077】
その後、ステッピングモータ204は、チャッキング制御部402の制御下で、チャッキングパッド202を回転させる。その結果、
図8に示すように、ゴルフボール500は、
図8中のZ軸周りに回転する(
図4のステップS104)。この場合、例えば、ステッピングモータ204は、ゴルフボール500が1回転するために要する時間が所定時間(例えば、1秒)となるように、チャッキングパッド202を回転させることが好ましい。
【0078】
ゴルフボール500の回転と並行して、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500に対してテラヘルツ波THzを照射する(
図4のステップS104)。具体的には、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500が1回転する間、ゴルフボール500に対してテラヘルツ波THzを連続的に又は断続的に照射する。
【0079】
その後、偏心量算出部401は、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THzの検出結果(つまり、時間波形)を示す波形信号を取得する(
図4のステップS105)。本実施例では、偏心量算出部401は、ゴルフボール500が所定角度回転する都度波形信号を取得してもよい。但し、偏心量算出部401は、ゴルフボール500が回転し且つテラヘルツ波THzが照射されている間は継続的に又は連続的に波形信号を取得してもよい。
【0080】
以下では、偏心量算出部401は、ゴルフボール500が18度回転する都度波形信号を取得するものとする。つまり、偏心量算出部401は、ゴルフボール500が1回転する間に20回波形信号を取得するものとする。その結果、偏心量算出部401は、ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線上(つまり、円周上)に位置する20個の照射位置に照射されたテラヘルツ波THzの検出結果を取得する。
【0081】
ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線上の20個の照射位置のうちのある1つの照射位置に照射されたテラヘルツ波THzの検出結果を示す波形信号が、
図9に示されている。
図9に示すように、波形信号は、テラヘルツ波THzが照射された照射位置におけるゴルフボールの断面構造を実質的に示している。
【0082】
その後、偏心量算出部401は、波形信号に対して波形診断処理を行う(
図4のステップS106)。波形診断処理は、例えば、各波形信号を解析することで、各波形信号に対応するカバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔を算出する処理を含んでいてもよい。波形診断処理は、例えば、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔を、ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線上におけるテラヘルツ波THzの照射位置と対応付ける処理を含んでいてもよい。波形診断処理が行われると、
図10に示すように、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔と、ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線上におけるテラヘルツ波THzの照射位置との関係を示す断面データが得られる。尚、
図10中の白い四角印は、波形信号から得られるカバー層501の球面501sの位置の実データを示す。
図10中の白い丸印は、波形信号から得られるコア502の球面502sの位置の実データを示す。
図10中の白い四角印を結ぶ線は、波形信号から得られるカバー層501の球面501sの位置の実データを近似する曲線を示す。
図10中の白い丸印を結ぶ線は、波形信号から得られるコア502の球面502sの位置の実データを近似する曲線を示す。
図10の縦軸は、ゴルフボール500の表面から中心に向かう方向に沿った位置を示す。
図10の横軸は、ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線上におけるテラヘルツ波THzの照射位置を、ゴルフボールの回転角度(位相)を用いて示している。
【0083】
偏心量pがゼロである場合には、
図10に示す断面データは、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔が、テラヘルツ波THzの照射位置によらずに変動しない断面データとなるはずである。一方で、偏心量pがゼロでない場合には、
図10に示す断面データは、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔が、テラヘルツ波THzの照射位置によって変動する断面データとなる。従って、
図10は、偏心量pがゼロでない場合に得られる断面データの一例を示している。
【0084】
その後、偏心量算出部401は、ステップS106の波形診断処理を行うことで取得した断面データに対して回帰分析処理を行う(
図4のステップS107)。
【0085】
回帰分析処理は、
図10に示す断面データを解析することで、波形信号から得られるカバー層501の球面501sの位置を示す円関数F1を特定する処理を含んでいてもよい。回帰分析処理は、
図10に示す断面データを解析することで、波形信号から得られるコア502の球面502sの位置を示す円関数F2を特定する処理を含んでいてもよい。尚、波形信号から得られる球面501s及び502sの夫々の位置は、ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線である円周におけるテラヘルツ波THzの照射位置(つまり、当該円周の位相)に対応している。このため、波形信号から得られる球面501s及び502sの夫々の位置は、円関数で表現可能(言い換えれば、近似可能)である。
【0086】
ゴルフボール500の表面と仮想面XY1との交線である円周に沿ってテラヘルツ波THzが照射されていることを考慮すれば、回帰分析処理により特定される円関数F1(つまり、カバー層501の球面501sの位置を示す円関数F1)は、仮想面XY1と球面501sとの交線となる円11(つまり、
図11に示す、仮想面XY1上における球面501sを示す円11)を示す円関数F1である。同様に、回帰分析処理により特定される円関数F2(つまり、コア502の球面502sの位置を示す円関数F2)は、仮想面XY1と球面502sとの交線となる円12(つまり、
図11に示す、仮想面XY1上における球面502sを示す円12)を示す円関数F2である。
【0087】
円関数F1及びF2は、カバー層501の球面501sに対応する円11の中心c10が原点となる(つまり、中心c10の座標が(0、0)となる)座標平面上の関数として表現されることが好ましい。尚、仮想面XY1がカバー層501の中心c1を含む面であることを考慮すれば、円11の中心c10は、カバー層501の中心c1と一致する。
【0088】
このため、
図12に示すように、円11の半径をr
10とすると、円関数F1は、x
2+y
2=r
10
2という数式にて表現可能である。同様に、
図12に示すように、円12の中心c
20の座標を(a
20、b
20)とし、半径をr
20とすると、円関数F2は、(x-a
20)
2+(y-b
20)
2=r
20
2という数式にて表現可能である。
【0089】
このような円関数F1及びF2を特定する回帰分析処理を行うために、偏心量算出部401は、
図10に示す断面データに対して、断面データの平面座標を極座標に変換する処理を行ってもよい。その後、偏心量算出部401は、最小二乗法等を用いて、極座標に変換された断面データを円に近似するための円関数を特定してもよい。その結果、偏心量算出部401は、円関数F1及びF2を特定することができる。
【0090】
その後、偏心量算出部401は、仮想面XY1上におけるコア502の球面502sを示す円12の中心c
20の座標(a
20、b
20)及び半径r
20を算出する(
図4のステップS108)。尚、上述したように、円関数F2は、実質的に円12の中心c
20の座標(a
20、b
20)及び半径r
20を示している。従って、偏心量算出部401は、ステップS107の回帰分析処理を行うことで、実質的には、円12の中心c
20の座標(a
20、b
20)及び半径r
20を算出していると言える。
【0091】
その後、偏心量算出部401は、ステップS108で算出した円12の中心c
20の座標(a
20、b
20)及び半径r
20に基づいて、偏心量pを算出する(
図4のステップS109)。具体的には、偏心量算出部401は、数式3を用いて偏心量pを算出する。
【0092】
【0093】
ここで、数式3における「r
2」は、コア502の予め規定された半径を示す。尚、コア502の予め規定された半径r
2は、円12の半径r
20と一致するとは限らない。具体的には、偏心量p(より具体的には、偏心量pのうちZ軸に沿った偏心量成分p
z)がゼロである場合には、
図12に示す円12の半径r
20はコア502の予め規定された半径r
2に一致する。一方で、偏心量p(より具体的には、偏心量pのうちZ軸に沿った偏心量成分p
z)がゼロでない場合には、
図12に示す円12の半径r
20はコア502の予め規定された半径r
2に一致しない。
【0094】
ここで、数式3を用いて偏心量pを算出することができる理由について、
図13を用いて説明する。まず、X軸に沿った偏心量成分をp
xとし、Y軸に沿った偏心量成分をp
yとし、Z軸に沿った偏心量成分をp
zとすると、ピタゴラスの定理を利用することで、偏心量pは数式4で表現される。
【0095】
【0096】
ここで、X軸に沿った偏心量成分p
xは、
図13の左側に示すように、円12の中心c
20のX座標a
20に相当する。同様に、Y軸に沿った偏心量成分p
yは、
図13の左側に示すように、円12の中心c
20のY座標b
20に相当する。
【0097】
一方で、Z軸に沿った偏心量成分p
zについて、YZ平面に平行であって且つコア50201の中心c
2を含む仮想面YZ1に沿ったゴルフボール500の断面(
図13の右側参照)を用いて説明する。尚、X軸に沿った偏心量成分p
xがゼロでない場合には、カバー層501の中心c
1は、仮想面YZ1上に位置することはない。つまり、カバー層501の中心c
1は、仮想面YZ1からX軸に沿って偏心量成分p
xだけずれた位置に位置する。しかしながら、
図13では、説明の便宜上、カバー層501の中心c
1のX座標が仮想面YZ1のX座標と同一であるものと仮定して、カバー層501の中心c
1を仮想面YZ1上に描画している。
【0098】
図13の右側に示すように、コア502の中心c
2は、カバー層501の中心c
1から、Z軸に沿って偏心量成分p
zだけずれている。一方で、カバー層501の中心c
1及び円12の中心c
20が同一の仮想面XY1上に位置することを考慮すれば、円12の中心c
20もまた、コア502の中心c
2から、Z軸に沿って偏心量成分p
zだけずれている。このとき、
図13の右側の図面から明らかであるように、円12の中心c
20及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L1と、仮想面XY1と仮想面YZ1とコア502の球面502sとが交わる点t及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L2と、点t及び円12の中心c
20を結ぶ線分L3とは、線分L2が斜辺となる直角三角形を形成する。ここで、線分L1の長さは、Z軸に沿った偏心量成分p
zと同一である。線分L2の長さは、線分L2がコア502の中心c
2とコア502の球面502s上の点tとを結ぶ線分であることを考慮すれば、コア502の半径r
2と同一である。線分L3の長さは、線分L3が円12の中心c
20と円12上の点tとを結ぶ線分であることを考慮すれば、円12の半径r
20と同一である。その結果、ピタゴラスの定理から、偏心量成分p
zは、円12の半径r
20及びコア502の半径r
2に対して数式5に示す関係を有することが分かる。
【0099】
【0100】
以上の理由から、上述した数式3を用いて偏心量pを算出することができることが分かる。
【0101】
一方で、ステップS106からステップS109における動作と並行して、テラヘルツ波THzが照射されているゴルフボール500が1回転した場合には、ステッピングモータ204は、チャッキング制御部402の制御下で、チャッキングパッド201および202の回転を停止する。その後、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、ゴルフボール500が搬送ユニット300の保持穴301によって保持可能となるように、Z軸に沿った
図14中の矢印A14の方向に向かって移動する。また、搬送ユニット300は、搬送制御部403の制御下で、保持穴301がゴルフボール500を保持することができるように、Y軸に沿った
図14の矢印B14の方向に向かって移動する。その後、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、ゴルフボール500をリリースする。具体的には、エアシリンダ203は、Z軸に沿った
図14中の矢印C14の方向に向かってチャッキングパッド201を移動させると同時にチャッキングユニット200が矢印A14の方向に向かって移動することによってチャッキングパッド202がゴルフボール500から離れるよう動作する。その結果、ゴルフボール500は、チャッキングユニット200に代えて保持穴301によって保持されることになる。その後、搬送ユニット300は、搬送制御部403の制御下で、ゴルフボール500がチャッキングユニット200から遠ざかるように、Y軸に沿った
図15中の矢印A15の方向に向かって移動する。
【0102】
その後、偏心量算出部401は、ステップS109で算出した偏心量pが許容値(例えば、100ミクロン)未満であるか否かを判定する(
図4のステップS110)。
【0103】
ステップS110の判定の結果、偏心量pが許容値未満である場合には(ステップS110:Yes)、エアシリンダ303は、搬送制御部403の制御下で、押し出しピン302が保持穴301から突き出るようにY軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)押し出しピン302を押し出す(
図4のステップS111)。その結果、
図16に示すように、保持穴301に保持されているゴルフボール500は、押し出しピン302によって押し出されることで不図示の良品用排出シュータに送り込まれる。
【0104】
一方で、ステップS110の判定の結果、偏心量pが許容値未満でない場合には(ステップS110:No)、エアシリンダ305は、搬送制御部403の制御下で、押し出しピン304が保持穴301から突き出るようにY軸に沿って(より具体的には、Y軸の正方向に向かって)押し出しピン304を押し出す(
図4のステップS112)。その結果、
図17に示すように、保持穴301に保持されているゴルフボール500は、押し出しピン304によって押し出されることで不良品用排出シュータに送り込まれる。
【0105】
(2-2)偏心量pの第2算出動作
続いて、
図18から
図21を参照しながら、偏心量算出装置1が行う「偏心量pの第2算出動作」について説明する。
図18は、偏心量算出装置1が行う「偏心量pの第2算出動作」の流れの一例を示すフローチャートである。
図19は、偏心量算出装置1が第2算出動作のうちの一の動作を行っている時点での偏心量算出装置1の動作状態を示す側面図である。
図20は、第1仮想面XY1に沿った第1断面中に現れるカバー層501の球面501sを示す円11-1の中心c
11並びに第1断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12-1の中心c
21及び半径r
21をXY座標平面上で示すグラフ、及び、第2仮想面XY2に沿った第2断面中に現れるカバー層501の球面501sを示す円11-2の中心c
12並びに第2断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12-2の中心c
22及び半径r
22をXY座標平面上で示すグラフである。
図21は、第1断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12-1の中心c
21及び第2断面中に現れるコア502の球面502sを示す円12-2の中心c
22とコア502の中心c
2との関係をYZ座標平面上で示すグラフである。尚、第1算出動作と同一の動作については、同一のステップ番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0106】
図18に示すように、第2算出動作においても、第1算出動作と同様に、偏心量算出装置1は、ステップS101からステップS102までの動作を行う(
図18のステップS101からステップS102)。つまり、搬送ユニット300に投入されたゴルフボール500がチャッキングユニット200によってチャッキングされる。
【0107】
その後、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面上の第1所望位置にテラヘルツ波THzを照射することができるように、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、Z軸に沿って移動する(
図18のステップS203-1)。具体的には、
図19に示すように、チャッキングユニット200は、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面とXY平面に平行な第1仮想面XY1との交線に相当する円周に対してテラヘルツ波THzを照射することができるように移動する。このとき、
図19に示すように、第1仮想面XY1は、ゴルフボール500の中心(つまり、カバー層501の中心c
1)を含まない面であることが好ましい。
【0108】
その後、ステッピングモータ204によるチャッキングパッド202を回転させる。その結果、ゴルフボール500は、Z軸周りに回転する(
図18のステップS104-1)。ゴルフボール500の回転と並行して、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500に対してテラヘルツ波THzを照射する(
図18のステップS104-1)。具体的には、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500の表面と第1仮想面XY1との交線に相当する円周に対してテラヘルツ波THzを照射する。その後、偏心量算出部401は、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THzの検出結果(つまり、時間波形)を示す波形信号を取得する(
図18のステップS105-1)。以下では、説明の便宜上、ゴルフボール500の表面と第1仮想面XY1との交線に相当する円周に対して照射されたテラヘルツ波THzの検出結果を示す波形信号を、“第1波形信号”と称する。尚、第2算出動作におけるステップS104-1及びステップS105-1の動作は、夫々、テラヘルツ波THzの照射位置が異なることを除いて、第1算出動作におけるステップS104及びステップS105の動作と同一である。
【0109】
その後、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面上の第1所望位置とは異なる第2所望位置にテラヘルツ波THzを照射することができるように、チャッキングユニット200は、チャッキング制御部402の制御下で、Z軸に沿って移動する(
図18のステップS203-2)。具体的には、
図19に示すように、チャッキングユニット200は、テラヘルツ計測ユニット100がゴルフボール500の表面とXY平面に平行であって且つ第1仮想面XY1とは異なる第2仮想面XY2との交線に相当する円周に対してテラヘルツ波THzを照射することができるように移動する。このとき、
図19に示すように、第2仮想面XY2は、ゴルフボール500の中心(つまり、カバー層501の中心c
1)を含まない面であることが好ましい。更に、第2仮想面XY2とカバー層501の中心c
1との間の間隔は、第2仮想面XY2とカバー層501の中心c
1との間の間隔と同一であることが好ましい。例えば、第1仮想面XY1と第2仮想面XY2との間の間隔がdであるとすると、第2仮想面XY2とカバー層501の中心c
1との間の間隔及び第2仮想面XY2とカバー層501の中心c
1との間の間隔は、夫々、d/2であることが好ましい。尚、第1仮想面XY1と第2仮想面XY2との間の間隔がdである場合には、ステップS203-2において、チャッキングユニット200は、Z軸に沿って距離dだけ移動する。
【0110】
その後、ステッピングモータ204によるチャッキングパッド202を回転させる。その結果、ゴルフボール500は、Z軸周りに回転する(
図18のステップS104-2)。ゴルフボール500の回転と並行して、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500に対してテラヘルツ波THzを照射する(
図18のステップS104-2)。具体的には、テラヘルツ計測ユニット100は、ゴルフボール500の表面と第2仮想面XY2との交線に相当する円周に対してテラヘルツ波THzを照射する。その後、偏心量算出部401は、ゴルフボール500に照射されたテラヘルツ波THzの検出結果を示す波形信号を取得する(
図18のステップS105-2)。以下では、説明の便宜上、ゴルフボール500の表面と第2仮想面XY2との交線に相当する円周に対して照射されたテラヘルツ波THzの検出結果を示す波形信号を、“第2波形信号”と称する。尚、第2算出動作におけるステップS104-2及びステップS105-2の動作は、夫々、テラヘルツ波THzの照射位置が異なることを除いて、第1算出動作におけるステップS104及びステップS105の動作と同一である。
【0111】
その後、偏心量算出部401は、第1波形信号に対して波形診断処理を行う(
図18のステップS206)。その結果、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔と、ゴルフボール500の表面と第1仮想面XY1との交線上におけるテラヘルツ波THzの照射位置との関係を示す第1断面データが得られる。更に、偏心量算出部401は、第2波形信号に対しても波形診断処理を行う(
図18のステップS206)。その結果、カバー層501の球面501sとコア502の球面502sとの間の間隔と、ゴルフボール500の表面と第2仮想面XY2との交線上におけるテラヘルツ波THzの照射位置との関係を示す第2断面データが得られる。尚、第2算出動作におけるステップS206の動作は、2つの波形信号(つまり、第1及び第2波形信号)に対して波形診断処理を行うことを除いて、第1算出動作におけるステップS106の動作と同一である。
【0112】
その後、偏心量算出部401は、ステップS206の波形診断処理を行うことで取得した第1断面データに対して回帰分析処理を行う(
図4のステップS207)。その結果、第1波形信号から得られるカバー層501の球面501sの位置を示す円関数F11及び第1波形信号から得られるコア502の球面502sの位置を示す円関数F21が特定される。更に、偏心量算出部401は、ステップS206の波形診断処理を行うことで取得した第2断面データに対しても回帰分析処理を行う(
図4のステップS207)。その結果、第2波形信号から得られるカバー層501の球面501sの位置を示す円関数F12及び第2波形信号から得られるコア502の球面502sの位置を示す円関数F22が特定される。尚、第2算出動作におけるステップS207の動作は、2つの断面データ(つまり、第1及び第2断面データ)に対して回帰分析処理を行うことを除いて、第1算出動作におけるステップS107の動作と同一である。
【0113】
円関数F11は、第1仮想面XY1と球面501sとの交線となる円11-1(つまり、
図20(a)に示す、第1仮想面XY1上における球面501sを示す円11-1)を示す円関数F11である。同様に、円関数F21は、第1仮想面XY1と球面502sとの交線となる円12-1(つまり、
図20(a)に示す、第1仮想面XY1上における球面502sを示す円12-1)を示す円関数F21である。円関数F11及びF21は、第1仮想面XY1上におけるカバー層501の球面501sに対応する円11-1の中心c
11が原点となる(つまり、中心c
11の座標が(0、0)となる)座標平面上の関数として表現されることが好ましい。このため、
図20(a)に示すように、円11-1の半径をr
11とすると、円関数F11は、x
2+y
2=r
11
2という数式にて表現可能である。同様に、
図20(a)に示すように、円12-1の中心c
21の座標を(a
21、b
21)とし、半径をr
21とすると、円関数F21は、(x-a
21)
2+(y-b
21)
2=r
21
2という数式にて表現可能である。
【0114】
同様に、円関数F12は、第2仮想面XY2と球面501sとの交線となる円11-2(つまり、
図20(b)に示す、第2仮想面XY2上における球面501sを示す円11-2)を示す円関数F12である。同様に、円関数F22は、第2仮想面XY2と球面502sとの交線となる円12-2(つまり、
図20(b)に示す、第2仮想面XY2上における球面502sを示す円12-2)を示す円関数F22である。円関数F12及びF22は、第2仮想面XY2上におけるカバー層501の球面501sに対応する円11-2の中心c
12が原点となる(つまり、中心c
12の座標が(0、0)となる)座標平面上の関数として表現されることが好ましい。このため、
図20(b)に示すように、円11-2の半径をr
12とすると、円関数F12は、x
2+y
2=r
12
2という数式にて表現可能である。同様に、
図20(b)に示すように、円12-2の中心c
22の座標を(a
22、b
22)とし、半径をr
22とすると、円関数F22は、(x-a
22)
2+(y-b
22)
2=r
22
2という数式にて表現可能である。
【0115】
尚、カバー層501の中心c1と第1仮想面XY1との間の距離がカバー層501の中心c1と第2仮想面XY2との間の距離と同一であることを考慮すれば、円11-1の半径r11は円11-2の半径r12と同一になるはずである。従って、偏心量算出部401は、円11-1の半径r11が円11-2の半径r12と同一となるように、円関数F11及びF21並びに円関数F12及びF22を特定することが好ましい。つまり、偏心量算出部401は、円11-1のスケールが円11-2のスケールと同一となるように、円関数F11及びF21並びに円関数F12及びF22を特定することが好ましい。
【0116】
その後、偏心量算出部401は、第1仮想面XY1上におけるコア502の球面502sを示す円12-1の中心c
21の座標(a
21、b
21)及び半径r
21を算出する(
図18のステップS208-1)。尚、上述したように、円関数F21は、実質的に円12-1の中心c
21の座標(a
21、b
21)及び半径r
21を示している。従って、偏心量算出部401は、ステップS207の回帰分析処理を行うことで、実質的には、円12-1の中心c
21の座標(a
21、b
21)及び半径r
21を算出していると言える。
【0117】
更に、偏心量算出部401は、第2仮想面XY2上におけるコア502の球面502sを示す円12-2の中心c
22の座標(a
22、b
22)及び半径r
22を算出する(
図18のステップS208-2)。尚、上述したように、円関数F22は、実質的に円12-2の中心c
22の座標(a
22、b
22)及び半径r
22を示している。従って、偏心量算出部401は、ステップS207の回帰分析処理を行うことで、実質的には、円12-2の中心c
22の座標(a
22、b
22)及び半径r
22を算出していると言える。
【0118】
その後、偏心量算出部401は、ステップS208-1で算出した円12-1の中心c
21の座標(a
21、b
21)及び半径r
21並びにステップS208-2で算出した円12-2の中心c
22の座標(a
22、b
22)及び半径r
22に基づいて、偏心量pを算出する(
図18のステップS209)。具体的には、偏心量算出部401は、数式6を用いて偏心量pを算出する。
【0119】
【0120】
ここで、数式6を用いて偏心量pを算出することができる理由について、
図20及び
図21を用いて説明する。まず、第1算出動作の説明の際にも説明したように、X軸に沿った偏心量成分をp
xとし、Y軸に沿った偏心量成分をp
yとし、Z軸に沿った偏心量成分をp
zとすると、偏心量pは数式7で表現される。尚、数式7は、上述した数式4と同一である。
【0121】
【0122】
ここで、X軸に沿った偏心量成分p
xは、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、円12-1の中心c
21のX座標a
21又は円12-2の中心c
22のX座標a
22に相当する。尚、計測誤差及び解析誤差等がなければ、円12-1の中心c
21のX座標a
21と円12-2の中心c
22のX座標a
22とは一致するはずである。一方で、計測誤差又は解析誤差等がある場合には、円12-1の中心c
21のX座標a
21と円12-2の中心c
22のX座標a
22とは一致しない可能性がある。従って、本実施例では、計測誤差及び解析誤差等の影響を軽減するために、数式8に示すように、円12-1の中心c
21のX座標a
21と円12-2の中心c
22のX座標a
22との平均がX軸に沿った偏心量成分p
xであるものとしてみなす。但し、円12-1の中心c
21のX座標a
21及び円12-2の中心c
22のX座標a
22のいずれかがX軸に沿った偏心量成分p
xであるものとしてみなしてもよい。
【0123】
【0124】
同様に、Y軸に沿った偏心量成分p
yは、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、円12-1の中心c
21のY座標b
21又は円12-2の中心c
22のY座標b
22に相当する。尚、計測誤差及び解析誤差等がなければ、円12-1の中心c
21のY座標b
21と円12-2の中心c
22のY座標b
22とは一致するはずである。一方で、計測誤差又は解析誤差等がある場合には、円12-1の中心c
21のY座標b
21と円12-2の中心c
22のY座標b
22とは一致しない可能性がある。従って、本実施例では、計測誤差及び解析誤差等の影響を軽減するために、数式9に示すように、円12-1の中心c
21のY座標b
21と円12-2の中心c
22のY座標b
22との平均がY軸に沿った偏心量成分p
yであるものとしてみなす。但し、円12-1の中心c
21のY座標b
21及び円12-2の中心c
22のY座標b
22のいずれかがY軸に沿った偏心量成分p
yであるものとしてみなしてもよい。
【0125】
【0126】
一方で、Z軸に沿った偏心量成分p
zについて、YZ平面に平行であって且つコア502の中心c
2を含む仮想面YZ1に沿ったゴルフボール500の断面(
図21参照)を用いて説明する。尚、X軸に沿った偏心量成分p
xがゼロでない場合には、カバー層501の中心c
1(更には、円11-1の中心c
11及び円11-2の中心c
12)は、仮想面YZ1上に位置することはない。つまり、カバー層501の中心c
1(更には、円11-1の中心c
11及び円11-2の中心c
12)は、仮想面YZ1からX軸に沿って偏心量成分p
xだけずれた位置に位置する。しかしながら、
図21では、説明の便宜上、カバー層501の中心c
1(更には、円11-1の中心c
11及び円11-2の中心c
12)のX座標が仮想面YZ1のX座標と同一であるものと仮定して、カバー層501の中心c
1(更には、円11-1の中心c
11及び円11-2の中心c
12)を仮想面YZ1上に描画している。
【0127】
図21に示すように、コア502の中心c
2は、カバー層501の中心c
1から、Z軸に沿って偏心量成分p
zだけずれている。更に、第1仮想面XY1(更には、第1仮想面XY1上における円12-1の中心c
21)は、カバー層501の中心c
1からZ軸に沿ってd/2(但し、dは、第1仮想面XY1と第2仮想面XY2との間の間隔)だけずれている。そうすると、円12-1の中心c
21は、コア502の中心c
2から、Z軸に沿ってd/2-p
zだけずれている。このとき、
図21から明らかであるように、円12-1の中心c
21及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L11と、第1仮想面XY1と仮想面YZ1とコア502の球面502sとが交わる点t1及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L21と、点t1及び円12-1の中心c
21を結ぶ線分L31とは、線分L21が斜辺となる直角三角形を形成する。ここで、線分L11の長さは、d/2-p
zとなる。線分L21の長さは、線分L21がコア502の中心c
2とコア502の球面502s上の点t1とを結ぶ線分であることを考慮すれば、コア502の半径r
2と同一である。線分L31の長さは、線分L31が円12-1の中心c
21と円12-1上の点t1とを結ぶ線分であることを考慮すれば、円12-1の半径r
21と同一である。その結果、ピタゴラスの定理から、偏心量成分p
zは、円12-1の半径r
21及びコア502の半径r
2に対して数式10に示す関係を有することが分かる。
【0128】
【0129】
同様に、
図21に示すように、第2仮想面XY2(更には、第2仮想面XY2上における円12-2の中心c
22)は、カバー層501の中心c
1からZ軸に沿ってd/2だけずれている。そうすると、円12-2の中心c
22は、コア502の中心c
2から、Z軸に沿ってd/2+p
zだけずれている。このとき、
図21から明らかであるように、円12-2の中心c
22及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L12と、第2仮想面XY2と仮想面YZ1とコア502の球面502sとが交わる点t2及びコア502の中心c
2を結ぶ線分L22と、点t2及び円12-2の中心c
22を結ぶ線分L32とは、線分L22が斜辺となる直角三角形を形成する。ここで、線分L12の長さは、d/2+p
zとなる。線分L22の長さは、線分L22がコア502の中心c
2とコア502の球面502s上の点t2とを結ぶ線分であることを考慮すれば、コア502の半径r
2と同一である。線分L32の長さは、線分L32が円12-2の中心c
22と円12-2上の点t2とを結ぶ線分であることを考慮すれば、円12-2の半径r
22と同一である。その結果、ピタゴラスの定理から、偏心量成分p
zは、円12-2の半径r
22及びコア502の半径r
2に対して数式11に示す関係を有することが分かる。
【0130】
【0131】
数式10及び数式11から分かるように、数式10の左辺と数式11の左辺は等しくなる。このため、数式10の左辺=数式11の左辺という数式を展開すると、偏心量成分pzは、円12-1の半径r21及び円12-2の半径r22並びに第1仮想面XY1と第2仮想面XY2との間隔dに対して数式12に示す関係を有することが分かる。
【0132】
【0133】
以上の理由から、上述した数式6を用いて偏心量pを算出することができることが分かる。
【0134】
その後、第2算出動作においても、第1算出動作と同様に、偏心量算出装置1は、ステップS110からステップS112までの動作を行う(
図18のステップS110からステップS112)。つまり、偏心量pが許容値未満である場合にゴルフボール500が不図示の良品用排出シュータに送り込まれる一方で、偏心量pが許容値未満でない場合にはゴルフボール500が不良品用排出シュータに送り込まれる。
【0135】
(3)偏心量算出装置1の技術的効果
以上説明したように、偏心量算出装置1は、第1算出動作又は第2算出動作を行うことで、偏心量pを好適に算出することができる。特に、偏心量算出装置1は、取り扱いに注意が必要なX線及び伝搬させるための媒介が必要な超音波に代えて、テラヘルツ波THzを用いて偏心量pを算出することができる。このため、本実施例の偏心量算出装置1は、手間をかけることなく使用することができる装置であるといえる。つまり、ユーザは、偏心量pを算出するために相対的に手間をかけることなく、本実施例の偏心量算出装置1を使用することができる。
【0136】
加えて、偏心量算出装置1は、第1算出動作又は第2算出動作を行うことで、一つのゴルフボール500の偏心量pを算出する際には当該ゴルフボール500を1回だけチャッキングすれば、偏心量pを算出することができる。つまり、偏心量算出装置1は、一つのゴルフボール500の偏心量pを算出する際に当該ゴルフボール500をチャッキングし直さなくてもよい。言い換えれば、偏心量算出装置1は、一つのゴルフボール500の偏心量pを算出する際に、当該ゴルフボール500を複数回チャッキングしなくてもよい。従って、ゴルフボール500のチャッキングに相対的に多くの時間を要することを考慮すれば、偏心量pの算出に要する時間の相対的な短縮化が実現される。
【0137】
加えて、偏心量算出装置1は、第1算出動作を行うことで、単一の仮想面XY1とゴルフボール500の表面との交線である円周に沿ってテラヘルツ波THzを1回だけ照射すれば、偏心量pを算出することができる。つまり、偏心量算出装置1は、複数の仮想面XY1とゴルフボール500の表面との交線である円周(つまり、複数の円周)に沿ってテラヘルツ波THzを複数回照射することなくことなく、偏心量pを算出することができる。従って、第1算出動作により偏心量pの算出に要する時間の相対的な短縮化が実現される。
【0138】
加えて、偏心量算出装置1は、第2算出動作を行うことで、テラヘルツ波THzを照射することで得られる第1及び第2断面データ並びにテラヘルツ波THzを照射する際のチャッキングユニット200の移動量(つまり、間隔d)を用いて、偏心量pを算出することができる。従って、偏心量算出装置1は、第2算出動作を行うことで、コア502の半径r2を動作パラメータとして予め保有していなくても、偏心量pを算出することができる。ここで、第1及び第2断面データは、偏心量算出装置1自身の動作によって取得可能なデータである。更に、チャッキングユニット200の移動量(つまり、間隔d)もまた、偏心量算出装置1自身の動作を規定している情報であるがゆえに、偏心量算出装置1自身の動作によって取得可能なデータである。従って、偏心量算出装置1は、第2算出動作を行うことで、偏心量算出装置1自身の動作によって取得可能な情報のみを用いて、偏心量pを算出することができる。
【0139】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う偏心量算出装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。