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特開2024-103709レンズ駆動装置及びカメラモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103709
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置及びカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240725BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240725BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240725BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240725BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B30/00
G02B7/08 Z
H04N23/50
H04N23/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090276
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2023505490の分割
【原出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2021040548
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清行
(57)【要約】
【課題】圧電駆動部とレンズ保持部材との間の接触部分で生じた摩耗粉による悪影響を抑制できるレンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】レンズ駆動装置101は、レンズ保持部材2と、レンズ保持部材2を光軸方向へ移動させる圧電駆動部PDと、圧電駆動部PDをレンズ保持部材2側へ付勢する付勢部材6と、を備える。レンズ保持部材2は、圧電素子8が運動することによって駆動される。レンズ保持部材2には、圧電駆動部PDと接触するように対向する受け部材11が設けられている。圧電駆動部PDは、圧電素子8のレンズ保持部材2側の面に、受け部材11と接触する接触部材9を有する。接触部材9は、磁性を有する材料で構成されている。受け部材11は磁石である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、
レンズ体を保持可能なレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材を前記固定側部材に対して光軸方向へ移動可能に案内する案内機構と、
光軸方向と交差する方向に延在する圧電素子を有して構成され、前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる圧電駆動部と、
前記圧電駆動部を前記レンズ保持部材側へ付勢する付勢部材と、を備え、前記圧電素子が運動することによって、前記レンズ保持部材が駆動されるレンズ駆動装置において、
前記レンズ保持部材には、前記圧電駆動部と接触するように対向し前記圧電素子の延在方向と交差する方向に延びる受け部材が設けられ、
前記圧電駆動部は、前記圧電素子の前記レンズ保持部材側の面に、前記受け部材と接触する接触部材を有し、
前記受け部材と前記接触部材とは、何れも磁性を有する材料で構成されており、
前記受け部材と前記接触部材の少なくとも一方は、磁石であることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記受け部材は、磁石である、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記受け部材は、光軸側に位置する内側部分と前記圧電駆動部側に位置する外側部分とが異なる磁極となるように着磁されている、
請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記受け部材は、上側部分と下側部分とが異なる磁極となるように着磁されている、
請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記受け部材及び前記接触部材のそれぞれを構成する材料は金属であり、
前記受け部材を構成する金属は、前記接触部材を構成する金属よりも硬い、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記受け部材は、窒化処理が施されたステンレス鋼で構成されている、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記受け部材及び前記接触部材は何れも磁石である、
請求項1乃至請求項6の何れかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
固定側部材と、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材を前記固定側部材に対して光軸方向へ移動可能に案内する案内機構と、光軸方向と交差する方向に延在する圧電素子を有して構成され、前記圧電素子の運動によって前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる圧電駆動部と、前記圧電駆動部を前記レンズ保持部材側へ付勢する付勢部材と、を備えるレンズ駆動装置と、
前記レンズ体に対向する撮像素子と、
前記圧電駆動部を駆動して前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる制御装置と、を備えるカメラモジュールにおいて、
前記レンズ保持部材には、前記圧電駆動部と接触するように対向し前記圧電素子の延在方向と交差する方向に延びる受け部材が設けられ、
前記圧電駆動部は、前記圧電素子の前記レンズ保持部材側の面に、前記受け部材と接触する接触部材を有し、
前記制御装置は、前記レンズ駆動装置の動作モードを通常モードとクリーニングモードとの間で切り換えできるように構成されており、
前記通常モードが選択されているときに前記接触部材が接触可能な前記受け部材の表面上の範囲である第1接触範囲は、前記クリーニングモードが選択されているときに前記接触部材が接触可能な前記受け部材の表面上の範囲である第2接触範囲よりも小さいことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項9】
前記受け部材及び前記接触部材は、磁性を有する材料で構成されており、
前記受け部材及び前記接触部材の少なくとも一方は、磁石である、
請求項8に記載のカメラモジュール。
【請求項10】
前記第2接触範囲の上限は、前記第1接触範囲の上限よりも高い位置にあり、
前記第2接触範囲の下限は、前記第1接触範囲の下限よりも低い位置にある、
請求項8又は請求項9に記載のカメラモジュール。
【請求項11】
前記制御装置は、電源投入時に、前記レンズ駆動装置の動作モードを前記クリーニングモードに切り換える、
請求項8乃至請求項10の何れかに記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばカメラ付き携帯機器等に搭載されるレンズ駆動装置及びカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を含む圧電駆動部の曲げ運動を利用した摩擦駆動によってレンズキャリア(レンズ保持部材)をモジュールベース(ベース部材)に対して光軸方向に移動させることができるレンズ駆動ユニット(レンズ駆動装置)が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-097216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のレンズ駆動ユニットは、圧電駆動部の接触部をレンズキャリアに固定された軸状ガイド部に接触させてレンズキャリアを光軸方向に移動させている。
【0005】
しかしながら、上述の構成では、接触部と軸状ガイド部との摩擦接触によって摩耗粉が生じ、その摩擦粉がレンズ駆動装置又はカメラモジュールに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで、圧電駆動部とレンズ保持部材との間の接触部分で生じた摩耗粉による悪影響を抑制できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置は、固定側部材と、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材を前記固定側部材に対して光軸方向へ移動可能に案内する案内機構と、光軸方向と交差する方向に延在する圧電素子を有して構成され、前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる圧電駆動部と、前記圧電駆動部を前記レンズ保持部材側へ付勢する付勢部材と、を備え、前記圧電素子が運動することによって、前記レンズ保持部材が駆動されるレンズ駆動装置において、前記レンズ保持部材には、前記圧電駆動部と接触するように対向し前記圧電素子の延在方向と交差する方向に延びる受け部材が設けられ、前記圧電駆動部は、前記圧電素子の前記レンズ保持部材側の面に、前記受け部材と接触する接触部材を有し、前記受け部材と前記接触部材とは、何れも磁性を有する材料で構成されており、前記受け部材と前記接触部材の少なくとも一方は、磁石である。
【0008】
また、本発明の実施形態に係るカメラモジュールは、固定側部材と、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材を前記固定側部材に対して光軸方向へ移動可能に案内する案内機構と、光軸方向と交差する方向に延在する圧電素子を有して構成され、前記圧電素子の運動によって前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる圧電駆動部と、前記圧電駆動部を前記レンズ保持部材側へ付勢する付勢部材と、を備えるレンズ駆動装置と、前記レンズ体に対向する撮像素子と、前記圧電駆動部を駆動して前記レンズ保持部材を光軸方向へ移動させる制御装置と、を備えるカメラモジュールであって、前記レンズ保持部材には、前記圧電駆動部と接触するように対向し前記圧電素子の延在方向と交差する方向に延びる受け部材が設けられ、前記圧電駆動部は、前記圧電素子の前記レンズ保持部材側の面に、前記受け部材と接触する接触部材を有し、前記制御装置は、前記レンズ駆動装置の動作モードを通常モードとクリーニングモードとの間で切り換えできるように構成されており、前記通常モードが選択されているときに前記接触部材が接触可能な前記受け部材の表面上の範囲である第1接触範囲は、前記クリーニングモードが選択されているときに前記接触部材が接触可能な前記受け部材の表面上の範囲である第2接触範囲よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
上述の構成は、圧電駆動部とレンズ保持部材との間で生じた摩耗粉による悪影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】レンズ駆動装置の斜視図である。
図1B】カバー部材が取り外された状態のレンズ駆動装置の斜視図である。
図2】レンズ駆動装置の分解斜視図である。
図3A】リンク機構が取り付けられた状態のレンズ保持部材及びベース部材の上面図である。
図3B】リンク機構が取り付けられた状態のレンズ保持部材及びベース部材の左側面図である。
図3C】第2リンク部材のみが取り付けられた状態のベース部材の斜視図である。
図4A】リンク機構が取り付けられた状態のレンズ保持部材の斜視図である。
図4B】リンク機構が取り付けられた状態のレンズ保持部材の左側面図である。
図4C】リンク機構が取り付けられた状態のレンズ保持部材の左側面図である。
図5A】レンズ保持部材が最も下側に位置するときのリンク機構及びレンズ保持部材の正面図である。
図5B】レンズ保持部材が最も上側に位置するときのリンク機構及びレンズ保持部材の正面図である。
図6A】レンズ保持部材が最も下側に位置するときのレンズ駆動装置(カバー部材を除く)の斜視図である。
図6B】レンズ保持部材が最も上側に位置するときのレンズ駆動装置(カバー部材を除く)の斜視図である。
図7A】ベース部材の斜視図である。
図7B】ボールが取り付けられたベース部材の斜視図である。
図8A】レンズ保持部材及びボールが取り付けられたベース部材の斜視図である。
図8B】ベース部材の一部の斜視図である。
図9A】ベース部材に取り付けられたレンズ保持部材の斜視図である。
図9B】レンズ保持部材の一部の斜視図である。
図10A】レンズ保持部材の斜視図である。
図10B】ボールが取り付けられたレンズ保持部材の斜視図である。
図11A】カバー部材が取り外された状態のレンズ駆動装置の斜視図である。
図11B】カバー部材が取り外された状態のレンズ駆動装置の一部の斜視図である。
図12A】圧電駆動部の斜視図である。
図12B】圧電駆動部の分解斜視図である。
図13A】付勢部材の斜視図である。
図13B】付勢部材の正面図である。
図13C】付勢部材の上面図である。
図13D】付勢部材の左側面図である。
図14A】圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の斜視図である。
図14B】圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の正面図である。
図14C】圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の上面図である。
図14D】圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の左側面図である。
図15A】接着剤を介して圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の一部の正面図である。
図15B】接着剤を介して圧電駆動部が取り付けられた付勢部材の左側面図である。
図16A】ベース部材に取り付けられた付勢部材の斜視図である。
図16B】ベース部材に取り付けられた付勢部材の一部の上面図である。
図17】カメラモジュールの構成例を示すブロック図である。
図18A1】受け部材の正面図である。
図18A2】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図18B1】受け部材の別の構成例の正面図である。
図18B2】圧電駆動部及び図18B1の受け部材の左側面図である。
図19】判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図20A】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図20B】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図20C】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図20D】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図20E】圧電駆動部及び受け部材の左側面図である。
図21A】受け部材の正面図である。
図21B】受け部材の正面図である。
図21C】受け部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置101について図面を参照して説明する。図1A及び図1Bは、レンズ駆動装置101の斜視図である。具体的には、図1Aは、レンズ駆動装置101の全体の斜視図であり、図1Bは、カバー部材1が取り外された状態のレンズ駆動装置101の斜視図である。図2は、レンズ駆動装置101の分解斜視図である。
【0012】
図1AにおけるX1は三次元直交座標系を構成するX軸の一方向を表し、X2はX軸の他方向を表す。また、Y1は三次元直交座標系を構成するY軸の一方向を表し、Y2はY軸の他方向を表す。同様に、Z1は三次元直交座標系を構成するZ軸の一方向を表し、Z2はZ軸の他方向を表す。本実施形態では、レンズ駆動装置101のX1側は、レンズ駆動装置101の前側(正面側)に相当し、レンズ駆動装置101のX2側は、レンズ駆動装置101の後側(背面側)に相当する。また、レンズ駆動装置101のY1側は、レンズ駆動装置101の左側に相当し、レンズ駆動装置101のY2側は、レンズ駆動装置101の右側に相当する。そして、レンズ駆動装置101のZ1側は、レンズ駆動装置101の上側に相当し、レンズ駆動装置101のZ2側は、レンズ駆動装置101の下側に相当する。他の図においても同様である。
【0013】
レンズ駆動装置101は、図2に示すように、固定側部材FB及び可動側部材MBを含む。固定側部材FBは、カバー部材1及びベース部材7を含む。可動側部材MBは、レンズ保持部材2及びリンク機構LMを含む。可動側部材MBは、案内機構GMにより、光軸方向に案内されるように構成されている。光軸方向は、レンズ体に関する光軸JDの方向、及び、光軸JDに平行な方向を含む。また、可動側部材MBは、圧電駆動部PDによって光軸方向に移動させられるように構成されている。
【0014】
カバー部材1は、可動側部材MBを覆うことができるように構成されている。本実施形態では、カバー部材1は、金属板に抜き加工及び絞り加工等を施して作製されている。但し、カバー部材1は、合成樹脂等の他の材料で形成されていてもよい。具体的には、カバー部材1は、図1Aに示すように、矩形筒状の外周壁部1Aと、外周壁部1Aの上端(Z1側の端)と連続するように設けられた平板状且つ矩形環状の天井部1Bとを有する。天井部1Bには中央部分に円形の開口1Kが形成されている。そして、カバー部材1は、収容部1Sを定める箱状の外形を有し、収容部1S内に可動側部材MBを収容できるように構成されている。また、カバー部材1は、接着剤によりベース部材7に接合され、ベース部材7とともに筐体HSを構成する。
【0015】
レンズ保持部材2は、筒状部2Cでレンズ体(図示せず。)を保持できるように構成されている。本実施形態では、レンズ保持部材2は、液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂を射出成形することで作製されている。レンズ体は、例えば、少なくとも1枚のレンズを備えた筒状のレンズバレルである。
【0016】
リンク機構LMは、規制機構の一例である。規制機構は、レンズ保持部材2と固定側部材FBとの間に配置され、レンズ保持部材2が光軸方向へ移動する際の姿勢の変化を抑制するための機構である。レンズ保持部材2の姿勢の変化は、例えば、Z軸方向に対して光軸JDが傾くことを含む。本実施形態では、リンク機構LMは、第1リンク部材3及び第2リンク部材4を含み、レンズ保持部材2と固定側部材FBとしてのベース部材7との間に配置され、レンズ保持部材2が光軸方向へ移動する際の姿勢の変化を抑制できるように構成されている。
【0017】
圧電駆動部PDは、レンズ保持部材2を光軸方向に沿って移動させることができるように構成されている。本実施形態では、圧電駆動部PDは、米国特許第7,786,648号に開示された駆動システムを利用する摩擦駆動部の一例であり、圧電素子8、接触部材9、及び回路基板10を含む。
【0018】
圧電素子8は、印加された電圧に応じて曲げ振動を実現できるように構成されている。本実施形態では、圧電素子8は、光軸方向と直交する(光軸JDに垂直な方向である)Y軸方向に延在しており、二つのノード(節)を有する曲げ振動を実現できるように構成されている。具体的には、圧電素子8は、XY平面上で第1曲げ振動を実現する第1層とYZ平面上で第2曲げ振動を実現する第2層とで構成される二層構造を有する。圧電駆動部PDは、第1層を構成する圧電素子に対する電圧の印加と、第2層を構成する圧電素子に対する電圧の印加とを適切なタイミングで個別に行うことで、圧電素子8の中点が描く軌跡が回転軸8Xを中心とする円軌道となるようにすることができる。図2に示す例では、回転軸8Xは、Y軸に平行である。圧電駆動部PDは、電圧の印加を適切なタイミングで行うことで、円軌道を辿る中点の移動方向(回転方向)をY1側から見て時計回りと反時計回りとの間で切り換えることができる。レンズ保持部材2は、圧電素子8の中点の回転方向が時計回りのときに上方(Z1方向)に移動させられ、圧電素子8の中点の回転方向が反時計回りのときに下方(Z2方向)に移動させられる。圧電素子8の中点は、第1曲げ振動の振幅が最大となる点(第1曲げ振動の腹に対応する点)であり、且つ、第2曲げ振動の振幅が最大となる点(第2曲げ振動の腹に対応する点)である。このように、本実施形態における圧電素子8は、その中点が円を描くような振動(円運動)を実現できるように構成されている。なお、圧電素子8の中点が描く円(円軌道)は、完全な円(真円)ではなく、概略円形状であればよい。
【0019】
接触部材9は、圧電素子8に取り付けられ、レンズ保持部材2と接触するように構成されている。本実施形態では、接触部材9は、圧電素子8の内側(光軸JDに対向する側)の表面の全体を覆うように、接着剤によって圧電素子8の内側の表面に接合されている。接触部材9は、磁性を有する材料で形成されている。磁性を有する材料は、例えば、金属、セラミックス、ゴム、又は合成樹脂等である。接触部材9は、磁石であってもよい。また、接触部材9は、圧電素子8の曲げ振動に応じて曲げ振動を行うように構成されている。本実施形態では、接触部材9は、ステンレス鋼で形成された摩擦板である。接触部材9は、圧電素子8の延在方向と同じY軸方向に延在している。そして、接触部材9は、延在方向の中央部がレンズ保持部材2に取り付けられた受け部材11と接触するように構成されている。具体的には、接触部材9は、曲げ振動の振幅が最大となる点(曲げ振動の腹の部分)で受け部材11と接触するように構成されている。受け部材11は、磁性を有する材料で形成されている。磁性を有する材料は、例えば、金属、セラミックス、ゴム、又は合成樹脂等である。本実施形態では、受け部材11は、光軸方向に二極着磁された金属製の磁石である。接触部材9と受け部材11との接触によって発生する摩耗粉を磁力によって受け部材11の表面に吸着させることで摩耗粉が接触部分から落下してしまうのを防止するためである。具体的には、受け部材11は、光軸方向に延在する円柱形状のピンである。但し、受け部材11は、接触部材9と受け部材11との間で点接触が実現されるのであれば、半円柱形状又は楕円柱形状等、円柱形状以外の形状を有する部材であってもよい。金属製の接触部材9と金属製の受け部材11とを接触させるのは、合成樹脂製のレンズ保持部材2とレンズ保持部材2よりも顕著に硬い(耐摩耗性が高い)金属製の接触部材9との接触によるレンズ保持部材2の摩耗を防止するためである。また、非磁性部材であるレンズ保持部材2に由来する摩耗粉は、接触部材9及び受け部材11を磁石で構成したとしても、磁石に吸着されずに落下してしまうためである。
【0020】
本実施形態では、受け部材11は、ステンレス鋼で形成されており、その表面硬度が接触部材9の表面硬度よりも高くなるように構成されている。表面硬度が高いほど、摩耗粉が発生し難いためである。また、接触部材9の円滑な曲げ振動が妨げられてしまうのを防止するためである。すなわち、接触部材9は、曲げ振動が円滑に行われるよう、比較的低い表面硬度を有することが望ましいためである。但し、接触部材9及び受け部材11のそれぞれに由来する摩耗粉の過度の発生を抑制できるのであれば、受け部材11は、その表面硬度が接触部材9の表面硬度と略同じになるように構成されていてもよく、その表面硬度が接触部材9の表面硬度よりも低くなるように構成されていてもよい。また、受け部材11には、塩浴軟窒化処理等の窒化処理(表面硬化処理)が施されていてもよい。
【0021】
なお、接触部材9と受け部材11との接触が得られるのであれば、Y軸方向における接触部材9の長さ寸法は圧電素子8と同じでなくてもよい。
【0022】
回路基板10は、導電パターンを含む基板であり、外部の電圧印加機能を有する制御装置と圧電素子8とを電気的に接続できるように構成されている。本実施形態では、回路基板10は、可撓性を有するフレキシブルプリント基板であり、圧電素子8に電圧を印加できるように構成されている。圧電素子8は、異方性導電性接着剤によって回路基板10の内側(光軸JDに対向する側)の表面に接合されている。圧電素子8は、異方性導電性接着膜によって回路基板10の内側に接合されていてもよい。
【0023】
圧電駆動部PDは、ベース部材7に固定される付勢部材6によって内方(光軸JDに近づく方向)に付勢されてレンズ保持部材2に押し付けられるように構成されている。本実施形態では、付勢部材6は、金属板で形成され、圧電素子8の曲げ振動の際に形成される二つの節のそれぞれに対応する部分で圧電素子8の外側(光軸JDから遠い側)の表面と回路基板10を介して接触するように構成されている。付勢部材6と圧電駆動部PDとの接合は、例えば、接着剤によって実現される。
【0024】
案内機構GMは、レンズ保持部材2を固定側部材FBに対して光軸方向へ移動可能に案内できるように構成されている。本実施形態では、案内機構GMは、レンズ保持部材2の柱状部2Bに形成された可動側溝部2Gと、ベース部材7の柱状部7Bに形成された固定側溝部7Gと、可動側溝部2Gと固定側溝部7Gとの間で挟持されるボール5と、を含む。なお、レンズ保持部材2の柱状部2Bは、左側柱状部2BL及び右側柱状部2BRを含み、可動側溝部2Gは、左側柱状部2BLに形成された左可動側溝部2GL、及び、右側柱状部2BRに形成された右可動側溝部2GRを含む。
【0025】
具体的には、案内機構GMは、レンズ保持部材2に取り付けられた受け部材11を挟んで互いに対向するように配置された二つの案内部(右側案内部GMR及び左側案内部GML)を有する。
【0026】
右側案内部GMRは、レンズ保持部材2の右側柱状部2BRに形成された右可動側溝部2GRと、ベース部材7の右側柱状部7BRに形成された右固定側溝部7GRと、右可動側溝部2GRと右固定側溝部7GRとの間に配置された右側ボール5Rと、を有する。右側ボール5Rは、右上側ボール5RU及び右下側ボール5RDを含む。
【0027】
左側案内部GMLは、レンズ保持部材2の左側柱状部2BLに形成された左可動側溝部2GLと、ベース部材7の左側柱状部7BLに形成された左固定側溝部7GLと、左可動側溝部2GLと左固定側溝部7GLとの間に配置された左側ボール5Lと、を有する。左側ボール5Lは、左上側ボール5LU及び左下側ボール5LDを含む。
【0028】
ベース部材7は、液晶ポリマー等の合成樹脂を用いた射出成形によって作製される。本実施形態では、ベース部材7は、図2に示すように、略矩形板状の外形を有し、中央に円形の開口7Kが形成されている。また、ベース部材7の被写体側(Z1側)の面(上面)には、上方に向けて突出する角形凸状の二つの柱状部7Bと一つの角形凸状の壁部7Wが設けられている。また、ベース部材7の前側の二つの角部には、上方に向けて突出する挟持部7Cが形成され、ベース部材7の後側の二つの角部には、上方に向けて突出する第3軸支部7Hが形成されている。挟持部7Cは、付勢部材6を挟持できるように構成された部分であり、左側挟持部7CL及び右側挟持部7CRを含む。第3軸支部7Hは、第1リンク部材3の第3軸部3Sを支持できるように構成された部分であり、左側第3軸支部7HL及び右側第3軸支部7HRを含む。更に、ベース部材7の左前側の角部及び左後側の角部には、図3Cに示すように、第4軸支部7Jが形成されている。第4軸支部7Jは、第2リンク部材4の第4軸部4Sを支持できるように少なくとも右側(Y2側)が開放されて構成された部分であり、前側第4軸支部7JF及び後側第4軸支部7JBを含む。
【0029】
ベース部材7の壁部7Wには、センサ12が取り付けられている。具体的には、壁部7Wの後面(X2側の面)には、レンズ保持部材2に取り付けられた磁石13と対向するようにセンサ用回路基板14に実装されたセンサ12が取り付けられている。そして、センサ12は、センサ用回路基板14(図11B参照。)を介して外部の制御装置CTR(図17参照。)に接続される。
【0030】
センサ12は、可動側部材MBの位置を検出できるように構成されている。本実施形態では、センサ12は、ホール素子で構成され、センサ12が受ける磁石13による磁界の大きさに応じて変化する出力電圧を測定し、磁石13を含む可動側部材MB(レンズ保持部材2)の位置を検出するように構成されている。但し、センサ12は、巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto Resistive effect: GMR)素子、半導体磁気抵抗(Semiconductor Magneto Resistive: SMR)素子、異方性磁気抵抗(Anisotropic Magneto Resistive: AMR)素子、又はトンネル磁気抵抗(Tunnel Magneto Resistive: TMR)素子等の磁気抵抗素子を利用して可動側部材MBの位置を検出できるように構成されていてもよい。
【0031】
レンズ駆動装置101は、略直方体形状の外形を有し、撮像素子(図示せず。)を実装した基板(図示せず。)の上に取り付けられる。基板と、レンズ駆動装置101と、レンズ保持部材2に装着されたレンズ体(図示せず。)と、レンズ体に対向するように基板に実装された撮像素子とはカメラモジュールを構成する。圧電素子8は、回路基板10を介して外部の制御装置CTRに接続される。圧電素子8に電圧が印加されると、圧電素子8は、第1曲げ振動及び第2曲げ運動を行い、レンズ保持部材2を光軸方向に沿って移動させる力を発生させる。この力は、レンズ保持部材2に取り付けられた受け部材11と、圧電素子8に接合された接触部材9との接触に伴う摩擦力である。
【0032】
レンズ駆動装置101は、この力を利用し、撮像素子のZ1側(被写体側)で、光軸方向に沿ってレンズ保持部材2を移動させることで自動焦点調節機能を実現する。具体的には、レンズ駆動装置101は、撮像素子から離れる方向にレンズ保持部材2を移動させてマクロ撮影を可能にし、撮像素子に近づく方向にレンズ保持部材2を移動させて無限遠撮影を可能にしている。
【0033】
次に、図3A図3C図4A図4C図5A、及び図5Bを参照し、規制機構の一例であるリンク機構LMの詳細について説明する。図3A図3Cは、リンク機構LMが取り付けられた状態のベース部材7の図である。具体的には、図3Aは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2及びベース部材7の上面図であり、図3Bは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2及びベース部材7の左側面図であり、図3Cは、第2リンク部材4のみが取り付けられた状態のベース部材7の斜視図である。なお、図3A図3Cは何れも、光軸方向に移動可能なレンズ保持部材2が最も下側(Z2側)に位置するときの様子を示す。図4A図4C図5A、及び図5Bは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2の図である。具体的には、図4Aは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2の斜視図であり、図4B及び図4Cは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2の左側面図である。図5A及び図5Bは、リンク機構LMが取り付けられた状態のレンズ保持部材2の正面図である。なお、図4A及び図4Bは、レンズ保持部材2が最も下側(Z2側)に位置するときの様子を示し、図4Cは、レンズ保持部材2が最も上側(Z1側)に位置するときの様子を示す。また、図5Aは、レンズ保持部材2が最も下側(Z2側)に位置するときの様子を示し、図5Bは、レンズ保持部材2が最も上側(Z1側)に位置するときの様子を示す。
【0034】
図3A図3C図4A図4C図5A、及び図5Bに示すように、リンク機構LMは、第1リンク部材3及び第2リンク部材4を有する。本実施形態では、第1リンク部材3及び第2リンク部材4は、液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂を射出成形することで作製されている。
【0035】
第1リンク部材3は、第1回動軸RA1の回りで回動可能となるようにレンズ保持部材2に連結され、第2リンク部材4は、第2回動軸RA2の回りで回動可能となるようにレンズ保持部材2に連結されている。また、第1リンク部材3は、第3回動軸RA3の回りで回動可能となるようにベース部材7に連結され、第2リンク部材4は、第4回動軸RA4の回りで回動可能となるようにベース部材7に連結されている。また、第1回動軸RA1と第3回動軸RA3とは互いに平行となるように配置され、第2回動軸RA2と第4回動軸RA4とは互いに平行になるように配置されている。また、光軸方向から見た平面視において、第1回動軸RA1及び第3回動軸RA3のそれぞれと第2回動軸RA2及び第4回動軸RA4のそれぞれとは互いに直交するように配置されている。具体的には、光軸方向から見た平面視において、第1回動軸RA1と第2回動軸RA2とは、光軸JDの位置で互いに直交するように配置され、第3回動軸RA3と第4回動軸RA4とは、ベース部材7の左後側の角部の位置で互いに直交するように配置されている。また、第1回動軸RA1及び第2回動軸RA2は、それぞれ光軸方向と直交している。
【0036】
レンズ保持部材2は、図5A図8A、及び図10Aに示すように、一対の第1軸部2S(左側第1軸部2SL及び右側第1軸部2SR)と、一対の第2軸部2T(前側第2軸部2TF及び後側第2軸部2TB)とを有する。
【0037】
第1リンク部材3は、図3Aに示すように、ベース部材7に回動可能に支持される一対の第3軸部3S(左側第3軸部3SL及び右側第3軸部3SR)が形成された第1基部3Bと、第1基部3Bに繋がり互いに対向する一対の第1腕部3A(左側第1腕部3AL及び右側第1腕部3AR)とを有する。そして、一対の第1腕部3Aのそれぞれの先端部には第1軸支部3H(左側第1軸支部3HL及び右側第1軸支部3HR)が形成されている。図5Aに示すように、左側第1軸支部3HLは、レンズ保持部材2に形成された左側第1軸部2SLを支持し、右側第1軸支部3HRは、レンズ保持部材2に形成された右側第1軸部2SRを支持している。そして、図3Aに示すように、左側第3軸部3SLは、ベース部材7の左後側の角部に形成された左側第3軸支部7HLによって支持され、右側第3軸部3SRは、ベース部材7の右後側の角部に形成された右側第3軸支部7HRによって支持されている。
【0038】
第2リンク部材4は、図3Cに示すように、ベース部材7に回動可能に支持される一対の第4軸部4S(前側第4軸部4SF及び後側第4軸部4SB)が形成された第2基部4Bと、第2基部4Bに繋がり互いに対向する一対の第2腕部4A(前側第2腕部4AF及び後側第2腕部4AB)とを有する。そして、一対の第2腕部4Aのそれぞれの先端部には第2軸支部4H(前側第2軸支部4HF及び後側第2軸支部4HB)が形成されている。前側第2軸支部4HFは、レンズ保持部材2に形成された前側第2軸部2TF(図8A参照。)を支持し、後側第2軸支部4HBは、レンズ保持部材2に形成された後側第2軸部2TB(図10A参照。)を支持している。そして、図3Cに示すように、前側第4軸部4SFは、ベース部材7の左前側の角部に形成された前側第4軸支部7JFによって支持され、後側第4軸部4SBは、ベース部材7の左後側の角部に形成された後側第4軸支部7JBによって支持されている。
【0039】
このように、レンズ保持部材2と第1リンク部材3とは、第1軸部2S及び第1軸支部3Hを介して連結されており、レンズ保持部材2と第2リンク部材4とは、第2軸部2T及び第2軸支部4Hを介して連結されている。
【0040】
本実施形態では、第1軸支部3Hは、図4Bに示すように、前側(X1側)が開放されたU字形状の第1凹部UR1を有する。第1軸部2Sは、第1凹部UR1内に位置しており、第1凹部UR1の内底面と第1軸部2Sとの間に隙間D1を形成できるように構成されている。
【0041】
第2軸支部4Hは、図5Aに示すように、右側(Y2側)が開放されたU字形状の第2凹部UR2を有する。第2軸部2Tは、第2凹部UR2内に位置しており、第2凹部UR2の内底面と第2軸部2Tとの間に隙間D2を形成できるように構成されている。
【0042】
リンク機構LMは、レンズ保持部材2が光軸方向に沿って移動する際に隙間D1及び隙間D2のそれぞれの大きさが変化するように構成されている。光軸方向に沿ったレンズ保持部材2の移動の際にレンズ保持部材2の姿勢が変化してしまうのを抑制するためである。本実施形態では、リンク機構LMは、図4B及び図4Cに示すように、レンズ保持部材2が上方(Z1方向)に移動する際に隙間D1の大きさが小さくなるように構成されている。また、リンク機構LMは、図5A及び図5Bに示すように、レンズ保持部材2が上方(Z1方向)に移動する際に隙間D2の大きさが小さくなるように構成されている。
【0043】
次に、図6A図6B図7A図7B図8A図8B図9A図9B図10A、及び図10Bを参照し、案内機構GMの詳細について説明する。図6A及び図6Bは、カバー部材1が取り外された状態のレンズ駆動装置101の斜視図である。具体的には、図6Aは、レンズ保持部材2が最も下側(Z2側)に位置するときの様子を示し、図6Bは、レンズ保持部材2が最も上側(Z1側)に位置するときの様子を示す。図7A及び図7Bは、ベース部材7の全体の斜視図である。具体的には、図7Aは、ベース部材7の柱状部7Bに形成された固定側溝部7Gにボール5が設置されていないときの様子を示し、図7Bは、固定側溝部7Gにボール5が設置されているときの様子を示している。図8A及び図8Bは、ベース部材7の斜視図である。具体的には、図8Aは、レンズ保持部材2及びボール5が取り付けられたベース部材7の全体の斜視図である。図8Bは、図8Aに示す破線で囲まれた範囲R1の拡大図である。なお、図8Bでは、明瞭化のため、ベース部材7以外の部材の図示が省略されている。図9A及び図9Bは、レンズ保持部材2の斜視図である。具体的には、図9Aは、ベース部材7に取り付けられたレンズ保持部材2の全体の斜視図である。図9Bは、図9Aに示す破線で囲まれた範囲R2の拡大図である。なお、図9Bでは、明瞭化のため、レンズ保持部材2以外の部材の図示が省略されている。図10A及び図10Bは、レンズ保持部材2の全体の斜視図である。具体的には、図10Aは、レンズ保持部材2の柱状部2Bに形成された可動側溝部2Gにボール5が設置されていないときの様子を示し、図10Bは、可動側溝部2Gにボール5が設置されているときの様子を示している。
【0044】
図6A図6B図7A図7B図8A図8B図9A図9B図10A、及び図10Bに示すように、案内機構GMは、左右方向(Y軸方向)において受け部材11を挟んで対向するように配置された右側案内部GMR及び左側案内部GMLを含む。具体的には、右側案内部GMRは、レンズ保持部材2の右側柱状部2BRに設けられた右可動側溝部2GR(図10A参照。)と、ベース部材7に設けられ右可動側溝部2GRと対向する右固定側溝部7GR(図7A参照。)と、右可動側溝部2GRと右固定側溝部7GRとの間に配置された右側ボール5R(図7B参照。)と、を有する。
【0045】
具体的には、右固定側溝部7GRは、図7Aに示すように、二つの凹部7Vに分割されている。凹部7Vは、右上側凹部7VRU及び右下側凹部7VRDを含む。そして、右側ボール5Rは、図7Bに示すように、右上側凹部7VRUに収容される右上側ボール5RUと、右下側凹部7VRDに収容される右下側ボール5RDと、を含む。一方で、右可動側溝部2GRは、図10Aに示すように、二つの凹部には分割されておらず、光軸方向(Z軸方向)に連続して延びている。この構成により、右上側ボール5RU及び右下側ボール5RDは、レンズ保持部材2が光軸方向に沿って移動した場合であっても互いに接近することなく所定の間隔が空けられた状態で維持される。右上側ボール5RU及び右下側ボール5RDは、右上側凹部7VRU及び右下側凹部7VRDによって光軸方向における移動が制限されるためである。
【0046】
同様に、左側案内部GMLは、レンズ保持部材2の左側柱状部2BLに設けられた左可動側溝部2GL(図10A参照。)と、ベース部材7に設けられ左可動側溝部2GLと対向する左固定側溝部7GL(図7A参照。)と、左可動側溝部2GLと左固定側溝部7GLとの間に配置された左側ボール5L(図7B参照。)と、を有する。
【0047】
具体的には、左固定側溝部7GLは、図8Bに示すように、二つの凹部7Vに分割されている。凹部7Vは、左上側凹部7VLU及び左下側凹部7VLDを含む。そして、左側ボール5Lは、図7Bに示すように、左上側凹部7VLUに収容される左上側ボール5LUと、左下側凹部7VLDに収容される左下側ボール5LDと、を含む。一方で、左可動側溝部2GLは、図9Bに示すように、二つの凹部には分割されておらず、光軸方向(Z軸方向)に連続して延びている。この構成により、左上側ボール5LU及び左下側ボール5LDは、レンズ保持部材2が光軸方向に沿って移動した場合であっても互いに接近することなく図10Bに示されるような所定の間隔が空けられた状態で維持される。左上側ボール5LU及び左下側ボール5LDは、左上側凹部7VLU及び左下側凹部7VLDによって光軸方向における移動が制限されるためである。
【0048】
上述のような案内機構GMを備えることにより、レンズ駆動装置101は、レンズ保持部材2を光軸方向に沿って滑らかに移動させることができる。また、上述のようなリンク機構LMを備えることにより、レンズ駆動装置101は、レンズ保持部材2が光軸方向に沿って移動する際にレンズ保持部材2が傾いてしまうのを抑制することができる。
【0049】
次に、図11A図11B図12A図12B図13A図13D図14A図14D図15A図15B図16A、及び図16Bを参照し、圧電駆動部PDの詳細について説明する。図11A及び図11Bは、カバー部材1が取り外された状態のレンズ駆動装置101の斜視図である。具体的には、図11Aは、更に圧電駆動部PD及び付勢部材6が取り外された状態のレンズ駆動装置101の斜視図である。図11Bは、図11Aに示す破線で囲まれた範囲R3の拡大図である。図12A及び図12Bは、圧電駆動部PDの斜視図である。具体的には、図12Aは、圧電駆動部PDの全体の斜視図であり、図12Bは、圧電駆動部PDの分解斜視図である。図13A図13Dは、付勢部材6の詳細図である。具体的には、図13Aは付勢部材6の斜視図であり、図13Bは付勢部材6の正面図であり、図13Cは付勢部材6の上面図であり、図13Dは付勢部材6の左側面図である。図14A図14Dは、圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の詳細図であり、図13A図13Dに対応している。具体的には、図14Aは、圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の斜視図であり、図13Aに対応している。図14Bは、圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の正面図であり、図13Bに対応している。図14Cは、圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の上面図であり、図13Cに対応している。図14Dは、圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の左側面図であり、図13Dに対応している。図15A及び図15Bは、接着剤ADを介して圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の図である。具体的には、図15Aは、図14Bに示す破線で囲まれた範囲R4の拡大図である。図15Bは、接着剤ADを介して圧電駆動部PDが取り付けられた付勢部材6の左側面図であり、図13D及び図14Dに対応している。図16A及び図16Bは、付勢部材6が取り付けられたベース部材7の図である。具体的には、図16Aは、付勢部材6が取り付けられたベース部材7の全体の斜視図である。図16Bは、図16Aに示す破線で囲まれた範囲R5の拡大上面図である。
【0050】
本実施形態では、付勢部材6は、板ばね部材によって構成されている。具体的には、付勢部材6は、図13A図13Dに示すように、ベース部材7に固定される固定部6Fと、圧電駆動部PDを支持する支持部6Sと、固定部6Fと支持部6Sとの間に設けられた弾性変形可能な弾性変形部6Eとを有する。
【0051】
具体的には、固定部6Fは、左側固定部6FL及び右側固定部6FRを含み、支持部6Sは、左側支持部6SL及び右側支持部6SRを含む。そして、弾性変形部6Eは、左側固定部6FLと左側支持部6SLとの間に設けられた左側弾性変形部6ELと、右側固定部6FRと右側支持部6SRとの間に設けられた右側弾性変形部6ERと、を含む。
【0052】
支持部6Sは、弾性変形部6Eに繋がる板状の基部6Bと、基部6BからL字状に折り曲げられてレンズ保持部材2が位置する側(X2側)に突出する折り曲げ部6Nとを有する。そして、折り曲げ部6Nの先端には凹部RS(図13D参照。)が形成されている。凹部RSは、レンズ保持部材2の位置する側が開放された凹部である。具体的には、基部6Bは、左側支持部6SLの一部である左側基部6BLと、右側支持部6SRの一部である右側基部6BRと、を含む。また、折り曲げ部6Nは、左側支持部6SLの一部である左側折り曲げ部6NLと、右側支持部6SRの一部である右側折り曲げ部6NRと、を含む。凹部RSは、左側折り曲げ部6NL及び右側折り曲げ部6NRのそれぞれの先端に同じ形状で且つ同じ大きさで形成されている。そして、圧電駆動部PDは、図14Dに示すように、一部が凹部RS内に位置するとともに、凹部RSの内縁部BEに接触した状態で、図15Bに示すように接着剤ADによって折り曲げ部6Nに固定されている。なお、図14Dでは、明瞭化のため、折り曲げ部6Nと圧電駆動部PD(回路基板10)との間に隙間が存在するように示されているが、実際には、折り曲げ部6Nと圧電駆動部PD(回路基板10)とは接触している。
【0053】
より具体的には、凹部RSは、図14Dに示すように、内縁部BEを挟んで互いに対向する上側縁部UEと下側縁部DEとを有する。そして、圧電駆動部PDは、上側縁部UEと下側縁部DEとの間に配置されている。
【0054】
凹部RSの内縁部BEと圧電駆動部PDとが接触する位置は、図12Aに示すように、曲げ振動を実現する圧電駆動部PDの節の位置NDに対応している。節の位置NDは、第1位置ND1及び第2位置ND2を含む。図12Aでは、明瞭化のため、節の位置NDには、クロスパターンが付されている。
【0055】
凹部RSの内縁部BEと圧電駆動部PDとが接触する位置は、圧電駆動部PDの端部から所定の距離にある位置に対応している。所定の距離は、例えば、圧電駆動部PDの全長の略四分の一の距離である。すなわち、凹部RSの内縁部BEと圧電駆動部PDとが接触する位置の一つである第1位置ND1は、圧電駆動部PDの左端部LEから距離DX1のところに位置している。そして、距離DX1は、圧電駆動部PDの全長(Y軸方向における長さ)の略四分の一の距離である。同様に、凹部RSの内縁部BEと圧電駆動部PDとが接触する位置の別の一つである第2位置ND2は、圧電駆動部PDの右端部REから距離DX2のところに位置している。そして、距離DX2は、圧電駆動部PDの全長の略四分の一の距離である。
【0056】
圧電駆動部PDと折り曲げ部6Nとは、図15A及び図15Bに示すように、接着剤ADによって固定されている。本実施形態では、接着剤ADは、紫外線硬化型の接着剤である。但し、接着剤ADは、湿気硬化型又は熱硬化型等の他のタイプの接着剤であってもよい。そして、接着剤ADは、折り曲げ部6Nの一面と圧電駆動部PDとの間、及び、折り曲げ部6Nの他面と圧電駆動部PDとの間に付着している。
【0057】
具体的には、接着剤ADは、図12Aに示すように、回路基板10の前側(X1側)の表面における第1位置ND1及び第2位置ND2に塗布される。すなわち、接着剤ADは、第1位置ND1に塗布される接着剤ADと、第2位置ND2に塗布される接着剤ADと、を含む。その上で、付勢部材6は、折り曲げ部6Nの先端に設けられた凹部RSによって回路基板10の前面に塗布された接着剤ADが押し潰されるように回路基板10の前面に押し付けられる。
【0058】
その結果、図15Aに示すように、第1位置ND1に塗布される接着剤ADは、左側折り曲げ部6NLの左側面と圧電駆動部PDとの間に付着する接着剤AD1Lと、左側折り曲げ部6NLの右側面と圧電駆動部PDとの間に付着する接着剤AD1Rとに分けられる。同様に、第2位置ND2に塗布される接着剤ADは、右側折り曲げ部6NRの左側面と圧電駆動部PDとの間に付着する接着剤AD2Lと、右側折り曲げ部6NRの右側面と圧電駆動部PDとの間に付着する接着剤AD2Rとに分けられる。
【0059】
二つの弾性変形部6Eは、図13Aに示すように、対応する基部6Bから互いに離れる方向に延びる。具体的には、左側弾性変形部6ELは、左側基部6BLから左方(Y1方向)に延び、右側弾性変形部6ERは、右側基部6BRから右方(Y2方向)に延びる。また、弾性変形部6Eの延在方向は、図14Cに示すように、圧電素子8の延在方向であるY軸方向に沿っている。
【0060】
弾性変形部6Eの延長線上には固定部6Fが設けられている。そして、固定部6Fは、図16Bに示すように、ベース部材7に設けられた挟持部7Cによって挟持されている。具体的には、挟持部7Cは、ベース部材7の上面から上方(Z1方向)に延びる円柱状の突起PLと、ベース部材7の角部に形成された平面視でL字状の角壁部CNと、を有する。付勢部材6の固定部6Fは、突起PLと角壁部CNとの間に上方から嵌め込まれることで、突起PLと角壁部CNとの間で挟持される。なお、挟持部7Cによる固定部6Fの挟持は、接着剤によって実現されてもよく、接着剤によって補強されてもよい。
【0061】
本実施形態では、付勢部材6の基部6Bには、図13A及び図13Bに示すように、開口6Hが形成されている。具体的には、開口6Hは、左側支持部6SLの左側基部6BLに形成された左側開口6HLと、右側支持部6SRの右側基部6BRに形成された右側開口6HRと、を含む。左側開口6HLは、左側折り曲げ部6NLと圧電駆動部PDとの接続状態が前側(X1側)から視認可能となるように形成されている。接続状態は、例えば、接着剤AD1Lが適切に配置されているか否か等である。同様に、右側開口6HRは、右側折り曲げ部6NRと圧電駆動部PDとの接続状態が前側(X1側)から視認可能となるように形成されている。接続状態は、例えば、接着剤AD2Rが適切に配置されているか否か等である。
【0062】
付勢部材6は、二つの基部6Bを連結する連結部6Cを有する。具体的には、付勢部材6は、図13A及び図13Bに示すように、左側基部6BLと右側基部6BRとを連結する上側連結部6CU及び下側連結部6CDを有する。
【0063】
次に、図17を参照し、上述のレンズ駆動装置101を含むカメラモジュールCMについて説明する。図17は、カメラモジュールCMの構成例を示すブロック図である。図17では、明瞭化のため、カメラモジュールCMを構成する一部の部材の図示が省略されている。
【0064】
カメラモジュールCMは、主に、基板(図示せず。)と、レンズ保持部材2を含むレンズ駆動装置101と、レンズ保持部材2に装着されたレンズ体(図示せず。)と、レンズ体に対向するように基板上に実装された撮像素子IMと、レンズ保持部材2を光軸方向へ移動させるために圧電駆動部PDを駆動できるように構成された制御装置CTRと、を含む。
【0065】
図17に示す例では、制御装置CTRは、レンズ駆動装置101及び撮像素子IMを実装した基板上に実装されている。しかしながら、制御装置CTRは、レンズ駆動装置101を構成している筐体HSの内部に設けられていてもよく、筐体HSの外にある別の基板(レンズ駆動装置101及び撮像素子IMが実装された基板とは別の基板)に実装されていてもよい。
【0066】
本実施形態では、制御装置CTRは、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、制御装置CTRは、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、自動焦点調節機能及びクリーニング機能等である。自動焦点調節機能及びクリーニング機能のそれぞれに対応する処理は、レンズ保持部材2を撮像素子IMから遠ざける方向である上方に移動させる処理、レンズ保持部材2を撮像素子IMに近付ける方向である下方に移動させる処理、及び、レンズ保持部材2を現在位置に停止させる処理等で構成されている。なお、制御装置CTRは、ASIC又はFPGA等で構成されていてもよい。
【0067】
より具体的には、制御装置CTRは、センサ12が出力する信号を受け、その信号に基づき、Z軸方向(光軸方向)におけるレンズ保持部材2の位置(高さ)を検出するように構成されている。また、制御装置CTRは、回路基板10を介して、圧電駆動部PDを構成している圧電素子8に電圧を印加して圧電素子8を振動させることによってレンズ保持部材2を上下方向(光軸方向)に移動させることができるように構成されている。
【0068】
また、制御装置CTRは、レンズ駆動装置101の動作モードを少なくとも通常モードとクリーニングモードとで切り換えることができるように構成されている。
【0069】
通常モードは、カメラモジュールCMが搭載される携帯機器においてカメラ機能が利用されているときに選択される動作モードである。本実施形態では、通常モードは、カメラ機能の使用が開始された時点からカメラ機能の使用が終了するまでの期間にわたって選択される。具体的には、通常モードは、カメラ機能を起動する操作が行われた時点からカメラ機能を停止する操作が行われた時点までの期間にわたって選択される。
【0070】
クリーニングモードは、第1接触範囲内にある摩耗粉を第1接触範囲から取り除く際に選択される動作モードである。第1接触範囲は、受け部材11の表面における、通常モードが選択されているときに接触部材9が接触可能な範囲である。摩耗粉は、磁性部材で形成された接触部材9又は磁石である受け部材11に由来するため、すなわち、磁性を有するため、接触部材9と受け部材11との間の接触部分から落下することなく受け部材11の表面に磁気的に吸着されている。
【0071】
クリーニングモードでは、第1接触範囲内に吸着されている摩耗粉は、接触部材9により、第2接触範囲内における第1接触範囲の外側に押し退けられる。第2接触範囲は、受け部材11の表面における、クリーニングモードが選択されているときに接触部材9が接触可能な範囲であり、第1接触範囲よりも広く、第1接触範囲を完全に包含している。
【0072】
クリーニングモードは、望ましくは、所定の開始条件が満たされた場合に選択される。所定の開始条件は、例えば、カメラモジュールCMの電源が投入されたこと、カメラ機能を起動する操作が行われたこと、カメラ機能を停止する操作が行われたこと、又は、クリーニング機能を起動する操作が行われたこと等である。クリーニングモードは、前回のクリーニング機能が実行された時点からの経過時間が予め設定された期間を上回った場合で、且つ、所定の開始条件が満たされた場合に選択されてもよい。すなわち、クリーニングモードは、所定の開始条件が満たされた場合であっても、前回のクリーニング機能が実行された時点からの経過時間が予め設定された期間に達していない場合には選択されなくてもよい。
【0073】
クリーニング機能は、第1接触範囲内にある摩耗粉を第1接触範囲外に押し出すための機能である。具体的には、クリーニング機能は、少なくとも、第2接触範囲の上限までレンズ保持部材2を移動させる機能、及び、第2接触範囲の下限までレンズ保持部材2を移動させる機能を含む。
【0074】
なお、カメラ機能を起動する操作が行われたときに選択されたクリーニングモードは、クリーニング機能が完了したときに通常モードに切り換えられる。
【0075】
次に、図18A1図18A2図18B1図18B2図19図20A図20E、及び、図21A図21Cを参照し、制御装置CTRが実行するクリーニング機能について説明する。図18A1図18A2図18B1、及び図18B2は、クリーニング機能が実行されるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の位置関係を示す図である。
【0076】
具体的には、図18A1は、受け部材11の正面図であり、図18A2は、圧電駆動部PD及び受け部材11の左側面図である。図18B1は、受け部材11の別の構成例である受け部材11Aの正面図であり、図18B2は、圧電駆動部PD及び受け部材11Aの左側面図である。受け部材11Aは、X軸方向に二極着磁された磁石である点で、光軸方向であるZ軸方向に二極着磁された磁石である受け部材11と異なる。なお、図18A1図18A2図18B1、及び図18B2では、N極部分にクロスパターンが付され、S極部分にドットパターンが付されている。
【0077】
図19は、クリーニング機能を実行するか否かを判定する処理(以下、「判定処理」とする。)の流れの一例を示すフローチャートである。制御装置CTRは、所定の制御周期で繰り返しこの判定処理を実行する。
【0078】
図20A図20Eは、圧電駆動部PD及び受け部材11の左側面図であり、クリーニング機能が実行されるときの圧電駆動部PD(接触部材9)と受け部材11との間の接触点CPの位置を示している。具体的には、図20Aは、接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CLにあるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の状態を示し、図20Bは、接触点CPが第1接触範囲MS1の下限DM1にあるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の状態を示し、図20Cは、接触点CPが第1接触範囲MS1の上限UM1にあるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の状態を示す。また、図20Dは、接触点CPが第2接触範囲MS2の下限DM2にあるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の状態を示し、図20Eは、接触点CPが第2接触範囲MS2の上限UM2にあるときの圧電駆動部PD及び受け部材11の状態を示す。なお、下限DM1は、第1接触範囲MS1内の最も撮像素子IM側の位置であり、上限UM1は、第1接触範囲MS1内の最も撮像素子IMから離れた位置に相当する。また、下限DM2は、第2接触範囲MS2における最も撮像素子IM側の位置であり、上限UM2は、第2接触範囲MS2における最も撮像素子IMから離れた位置に相当する。
【0079】
図21A図21Cは、受け部材11の正面図であり、クリーニング機能によって第1接触範囲MS1内にある摩耗粉AP(上側摩耗粉AP1及び下側摩耗粉AP2)が第1接触範囲MS1外に押し退けられる様子を示している。具体的には、図21Aは、接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CLにあるときの受け部材11の状態を示し、図21Bは、その後に接触点CPが第2接触範囲MS2の上限UM2に達したときの受け部材11の状態を示し、図21Cは、その後に接触点CPが第2接触範囲MS2の下限DM2に達したときの受け部材11の状態を示す。また、図21A及び図21Bでは、第1接触範囲MS1内において受け部材11に吸着されている摩耗粉APがドットパターンで表され、図21B及び図21Cでは、第1接触範囲MS1外に押し出された摩耗粉APである摩耗粉BP(上側摩耗粉BP1及び下側摩耗粉BP2)がクロスパターンで表されている。なお、摩耗粉APは、接触部材9及び受け部材11の少なくとも一方に由来する摩耗粉である。
【0080】
図18A1及び図18A2に示すように、受け部材11は、二極磁石で構成されており、上側部分がN極に着磁され、下側部分がS極に着磁されている。そのため、図21A図21Cに示すように、摩耗粉APは、受け部材11の磁力によって受け部材11の表面に吸着され、受け部材11の表面から落下することはない。
【0081】
ここで、図19を参照し、制御装置CTRが実行する判定処理の流れについて説明する。図19に示すように、制御装置CTRは、クリーニング機能の開始条件が満たされたか否かを判定する(ステップST1)。本実施形態では、制御装置CTRは、携帯機器の操作者によってカメラ機能を起動する操作が行われたときに、クリーニング機能の開始条件が満たされたと判定する。
【0082】
クリーニング機能の開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップST1のNO)、制御装置CTRは、今回の判定処理を終了させる。
【0083】
クリーニング機能の開始条件が満たされたと判定した場合(ステップST1のYES)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2を上方へ移動させる(ステップST2)。本実施形態では、制御装置CTRは、レンズ駆動装置101が初期状態のときに圧電駆動部PD(接触部材9)と受け部材11との間の接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CLに位置するようにレンズ保持部材2を初期位置に位置付けている。初期状態は、カメラ機能が起動されていないときのレンズ駆動装置101の状態である。初期位置は、レンズ駆動装置101が初期状態にあるときのレンズ保持部材2の位置である。具体的には、制御装置CTRは、カメラ機能を停止させるときに、レンズ保持部材2を初期位置に戻すように構成されている。なお、図20Aは、レンズ駆動装置101が初期状態のときの圧電駆動部PD(接触部材9)と受け部材11との間の位置関係を示している。
【0084】
具体的には、制御装置CTRは、クリーニング機能の開始時に初期位置にあるレンズ保持部材2を上方へ移動させるように構成されている。但し、制御装置CTRは、クリーニング機能の開始時に初期位置にあるレンズ保持部材2を下方へ移動させるように構成されていてもよい。また、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の現在位置に応じてレンズ保持部材2の移動方向を決定してもよい。例えば、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の現在位置が初期位置よりも下にある場合にレンズ保持部材2を下方へ移動させてもよく、レンズ保持部材2の現在位置が初期位置よりも上にある場合にレンズ保持部材2を上方へ移動させてもよい。また、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の現在位置にかかわらず、レンズ保持部材2を所定の方向(上方又は下方)に移動させるように構成されていてもよい。
【0085】
その後、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が上側設定位置に達したか否かを判定する(ステップST3)。本実施形態では、制御装置CTRは、センサ12の出力に基づいて上方へ移動するレンズ保持部材2の現在位置を特定する。上側設定位置は、接触点CPが第1接触範囲MS1の下限DM1を横切って第2接触範囲MS2の下限DM2に達したときのレンズ保持部材2の位置である。図18A2の破線で表される図形G1は、レンズ保持部材2が上側設定位置に達したときの受け部材11の位置を示す。また、図20Bは、接触点CPが第1接触範囲MS1の下限DM1に達したときの状態を示し、図20Dは、接触点CPが第2接触範囲MS2の下限DM2に達したときの状態、すなわち、レンズ保持部材2が上側設定位置に達したときの状態を示す。
【0086】
レンズ保持部材2が上側設定位置に達していないと判定した場合(ステップST3のNO)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が上側設定位置に達するまで、ステップST3の判定を繰り返す。
【0087】
レンズ保持部材2が上側設定位置に達したと判定した場合(ステップST3のYES)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2を下方へ移動させる(ステップST4)。本実施形態では、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の上方への移動を下方への移動に反転させる。
【0088】
その後、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が下側設定位置に達したか否かを判定する(ステップST5)。本実施形態では、制御装置CTRは、センサ12の出力に基づいて下方へ移動するレンズ保持部材2の現在位置を特定する。下側設定位置は、接触点CPが第1接触範囲MS1の下限DM1を横切り、第1接触範囲MS1の中央CLを横切り、更に、第1接触範囲MS1の上限UM1を横切って第2接触範囲MS2の上限UM2に達したときのレンズ保持部材2の位置である。図18A2の一点鎖線で表される図形G2は、レンズ保持部材2が下側設定位置に達したときの受け部材11の位置を示す。また、図20Bは、接触点CPが第1接触範囲MS1の下限DM1に達したときの状態を示し、図20Aは、接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CLに達したときの状態を示し、図20Cは、接触点CPが第1接触範囲MS1の上限UM1に達したときの状態を示し、図20Eは、接触点CPが第2接触範囲MS2の上限UM2に達したときの状態、すなわち、レンズ保持部材2が下側設定位置に達したときの状態を示す。
【0089】
レンズ保持部材2が下側設定位置に達していないと判定した場合(ステップST5のNO)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が下側設定位置に達するまで、ステップST5の判定を繰り返す。
【0090】
レンズ保持部材2が下側設定位置に達したと判定した場合(ステップST5のYES)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2を上方へ移動させる(ステップST6)。本実施形態では、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の下方への移動を上方への移動に再び反転させる。
【0091】
その後、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が中央設定位置に達したか否かを判定する(ステップST7)。本実施形態では、制御装置CTRは、センサ12の出力に基づいて上方へ移動するレンズ保持部材2の現在位置を特定する。中央設定位置は、接触点CPが第1接触範囲MS1の上限UM1を横切って第1接触範囲MS1の中央CLに達したときのレンズ保持部材2の位置である。すなわち、中央設定位置は、初期位置である。図20Cは、接触点CPが第1接触範囲MS1の上限UM1に達したときの状態を示し、図20Aは、接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CLに達したときの状態、すなわち、レンズ保持部材2が中央設定位置に達したときの状態を示す。なお、中央設定位置は、接触点CPが第1接触範囲MS1の中央CL以外の位置に達したときのレンズ保持部材2の位置であってもよい。
【0092】
レンズ保持部材2が中央設定位置に達していないと判定した場合(ステップST7のNO)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2が中央設定位置に達するまで、ステップST7の判定を繰り返す。
【0093】
レンズ保持部材2が中央設定位置に達したと判定した場合(ステップST7のYES)、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の移動を停止させる(ステップST8)。本実施形態では、制御装置CTRは、圧電素子8に対する電圧の印加を中止して圧電駆動部PDの動きを停止させることによってレンズ保持部材2の移動を停止させる。
【0094】
この判定処理により、制御装置CTRは、受け部材11の表面のうちの第1接触範囲MS1内の部分に吸着されている摩耗粉を、受け部材11の表面に吸着された状態のまま、第1接触範囲MS1の外側に押し退けることができる。
【0095】
具体的には、制御装置CTRは、クリーニング機能を実行することにより、図21Aに示すような、第1接触範囲MS1の中央CLと上限UM1との間で受け部材11の表面に吸着された上側摩耗粉AP1と、第1接触範囲MS1の中央CLと下限DM1との間で受け部材11の表面に吸着された下側摩耗粉AP2と、を第1接触範囲MS1の外側に押し退けることができる。
【0096】
より具体的には、制御装置CTRは、レンズ保持部材2を初期位置(中央設定位置)から下側設定位置へ移動させることにより、接触点CPを第1接触範囲MS1の中央CLから第1接触範囲MS1の上限UM1を超えて第2接触範囲MS2の上限UM2まで移動させることができる。その結果、制御装置CTRは、図21Bに示すように、第1接触範囲MS1の中央CLと上限UM1との間で受け部材11の表面に吸着されていた上側摩耗粉AP1を、第2接触範囲MS2の上限UM2よりも上側に押し退けることができる。図21Bの上側摩耗粉BP1は、第2接触範囲MS2の外側(上側)に押し退けられた上側摩耗粉AP1である。
【0097】
また、制御装置CTRは、レンズ保持部材2を初期位置(中央設定位置)から上側設定位置へ移動させることにより、接触点CPを第1接触範囲MS1の中央CLから第1接触範囲MS1の下限DM1を超えて第2接触範囲MS2の下限DM2まで移動させることができる。その結果、制御装置CTRは、図21Cに示すように、第1接触範囲MS1の中央CLと下限DM1との間で受け部材11の表面に吸着されていた下側摩耗粉AP2を、第2接触範囲MS2の下限DM2よりも下側に押し退けることができる。図21Cの下側摩耗粉BP2は、第2接触範囲MS2の外側(下側)に押し退けられた下側摩耗粉BP2である。
【0098】
なお、図19に示す例では、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の現在位置又は初期位置(中央設定位置)から上側設定位置への移動と、上側設定位置から下側設定位置への移動と、下側設定位置から初期位置(中央設定位置)への移動とで構成される一回のクリーニング動作を実行することにより、クリーニング機能を実現している。しかしながら、制御装置CTRは、クリーニング動作を二回以上繰り返してもよい。
【0099】
或いは、制御装置CTRは、レンズ保持部材2の現在位置又は初期位置(中央設定位置)から上側設定位置への移動と、上側設定位置から初期位置(中央設定位置)への移動とで構成される一回の下側クリーニング動作、及び、レンズ保持部材2の現在位置又は初期位置(中央設定位置)から下側設定位置への移動と、下側設定位置から初期位置(中央設定位置)への移動とで構成される一回の上側クリーニング動作を別々のタイミングで実行するように構成されていてもよい。例えば、制御装置CTRは、カメラ機能を起動する操作が行われたときに、下側クリーニング動作を一回実行し、カメラ機能を停止する操作が行われたときに、上側クリーニング動作を一回実行するように構成されていてもよい。
【0100】
或いは、制御装置CTRは、カメラ機能を停止する操作が行われたときにレンズ保持部材2を上側設定位置及び下側設定位置のうちの近い方に移動させるように構成されていてもよい。この場合、カメラ機能の停止時にレンズ保持部材2を上側設定位置に移動させていたときには、制御装置CTRは、その後にカメラ機能を起動する操作が行われたときにレンズ保持部材2を下側設定位置に移動させることにより、すなわち、上側クリーニング動作を実行することにより、第1接触範囲MS1内にある摩耗粉を第1接触範囲MS1外に押し出すことができる。カメラ機能の停止時にレンズ保持部材2を下側設定位置に移動させていた場合についても同様である。
【0101】
また、制御装置CTRは、上側クリーニング動作を二回以上繰り返すように構成されていてもよく、下側クリーニング動作を二回以上繰り返すように構成されていてもよい。
【0102】
上述のように、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置101は、図2に示すように、固定側部材FBと、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2を固定側部材FBに対して光軸方向へ移動可能に案内する案内機構GMと、光軸方向と交差する方向に延在する圧電素子8を少なくとも有して構成され、レンズ保持部材2を光軸方向へ移動させる圧電駆動部PDと、圧電駆動部PDをレンズ保持部材2の側へ付勢する付勢部材6と、を備えている。そして、レンズ保持部材2は、圧電素子8が運動(上述の実施形態では、円運動)することによって駆動されるように構成されている。
【0103】
また、レンズ保持部材2には、圧電駆動部PDと接触するように対向し圧電素子8の延在方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に延びる受け部材11が設けられている。そして、圧電駆動部PDは、圧電素子8のレンズ保持部材2の側の面(X2側の面)に、受け部材11と接触する接触部材9を有する。そして、接触部材9及び受け部材11は何れも磁性を有する材料で形成され、少なくとも一方が磁石となるように構成されている。
【0104】
この構成により、レンズ駆動装置101は、圧電駆動部PD(接触部材9)とレンズ保持部材2(受け部材11)との接触部分から摩耗粉が落下してしまうのを抑制できる。磁石で形成された接触部材9又は受け部材11によって摩耗粉が吸着されるためである。そのため、レンズ駆動装置101は、撮像素子IMに摩耗粉が付着してしまい、撮影画像の品質を損ねてしまうのを抑制できる。
【0105】
望ましくは、受け部材11が磁石となるように構成される。上述の実施形態では、接触部材9は、ステンレス鋼で形成された摩擦板であり、受け部材11は、金属製の磁石である。接触部材9は、曲げ振動(円運動)を行うように構成されているためである。すなわち、受け部材11の表面は、レンズ保持部材2が上下に移動している間も変形しないため、摩耗粉の吸着に適しているためである。
【0106】
この構成により、受け部材11は、圧電駆動部PDとレンズ保持部材2との接触部分で発生した摩耗粉を吸着でき、圧電駆動部PDとレンズ保持部材2との接触部分から摩耗粉が落下してしまうのを更に抑制できる。
【0107】
受け部材11は、図18A1及び図18A2に示すように、光軸方向に沿った一方側の部分である上側部分と他方側の部分である下側部分とが異なる磁極となるように着磁されていてもよい。この構成は、受け部材11の着磁が容易であるという効果をもたらす。或いは、受け部材11は、図18B1及び図18B2に示す別の構成例としての受け部材11Aのように、光軸JDの側(X2側)に位置する内側部分と圧電駆動部PDの側(X1側)に位置する外側部分とが異なる磁極となるように着磁されていてもよい。この構成は、図18A1及び図18A2に示す構成と比べ、摩耗粉を強力に吸着させることができる面積が大きくなるという効果をもたらす。図18A1及び図18A2に示す構成では、N極部分とS極部分との境界上で磁力が弱まるためである。
【0108】
受け部材11及び接触部材9のそれぞれを構成する材料は、望ましくは、金属である。そして、受け部材11を構成する金属としては、望ましくは、接触部材9を構成する金属よりも硬い金属が採用される。上述の実施形態では、受け部材11は、その表面硬度が接触部材9の表面硬度よりも高くなるように構成されている。表面硬度が高いほど、摩耗粉が発生し難いためである。また、接触部材9は、曲げ振動(円運動)が円滑に行われるよう、比較的低い表面硬度を有することが望ましいためである。すなわち、接触部材9の高い表面硬度によって接触部材9の円滑な曲げ振動が妨げられてしまうのを防止するためである。なお、受け部材11には、塩浴軟窒化処理等の窒化処理(表面硬化処理)が施されていてもよい。この場合、受け部材11は、ステンレス鋼で形成される。
【0109】
但し、接触部材9及び受け部材11のそれぞれに由来する摩耗粉の過度の発生を抑制できるのであれば、受け部材11は、その表面硬度が接触部材9の表面硬度と略同じになるように構成されていてもよく、その表面硬度が接触部材9の表面硬度よりも低くなるように構成されていてもよい。
【0110】
また、レンズ駆動装置101は、受け部材11及び接触部材9の双方が磁石で構成されていてもよい。この構成は、圧電駆動部PDとレンズ保持部材2との接触部分から摩耗粉が落下してしまうのを更に抑制できる。摩耗粉は、受け部材11の表面ばかりでなく、接触部材9の表面にも吸着されるためである。
【0111】
また、本発明の実施形態に係るカメラモジュールCMは、図17に示すように、レンズ駆動装置101と、レンズ体に対向する撮像素子IMと、圧電素子8が運動(上述の実施形態では、円運動)するように圧電駆動部PDを駆動してレンズ保持部材2を光軸方向へ移動させる制御装置CTRと、を備えている。そして、レンズ保持部材2には、図2に示すように、圧電駆動部PDと接触するように対向し圧電素子8の延在方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に延びる受け部材11が設けられている。圧電駆動部PDは、圧電素子8の内側の面(X2側の面)に、受け部材11と接触する接触部材9を有する。なお、圧電素子8の内側は、レンズ保持部材2が位置する側である。制御装置CTRは、レンズ駆動装置101の動作モードを通常モードとクリーニングモードとの間で切り換えできるように構成されている。そして、図20A図20Eに示すように、通常モードが選択されているときに接触部材9が接触可能な受け部材11の表面上の範囲である第1接触範囲MS1は、クリーニングモードが選択されているときに接触部材9が接触可能な受け部材11の表面上の範囲である第2接触範囲MS2よりも小さい。
【0112】
この構成により、カメラモジュールCMは、第1接触範囲MS1の内側範囲内で生じた摩耗粉を第1接触範囲MS1の外側に押し出すことができる。そのため、カメラモジュールCMは、例えば、第1接触範囲MS1の内側に堆積した摩耗粉によって接触部材9と受け部材11との接触が妨げられ、受け部材11が取り付けられたレンズ保持部材2の上下方向(光軸方向)における移動が妨げられるといった不具合が生じてしまうのを抑制できる。具体的には、カメラモジュールCMは、第1接触範囲MS1に堆積した摩耗粉によって可動範囲が制限されるといった不具合が生じてしまうのを抑制できる。その結果、カメラモジュールCMは、摩耗粉によってその動作寿命が短くなってしまうのを抑制できる。
【0113】
また、受け部材11及び接触部材9の双方は、望ましくは、磁性を有する材料で構成され、受け部材11及び接触部材9の少なくとも一方は、磁石で構成される。
【0114】
この構成により、カメラモジュールCMは、圧電駆動部PDとレンズ保持部材2との間の接触部分から摩耗粉が落下してしまうのを抑制できる。摩耗粉が磁石に吸着されるためである。
【0115】
より具体的には、第2接触範囲MS2の上限UM2は、第1接触範囲MS1の上限UM1よりも撮像素子IMから離れた位置である高い位置にあり、第2接触範囲MS2の下限DM2は、第1接触範囲MS1の下限DM1よりも撮像素子IMに近い位置である低い位置にある。
【0116】
この構成により、カメラモジュールCMは、第1接触範囲MS1内の下側部分にある摩耗粉を第1接触範囲MS1の外側(下側)に押し出すことができ、且つ、第1接触範囲MS1内の上側部分にある摩耗粉を第1接触範囲MS1の外側(上側)に押し出すことができる。そのため、カメラモジュールCMは、第1接触範囲MS1の内側に堆積した摩耗粉によって接触部材9と受け部材11との接触が妨げられ、受け部材11が取り付けられたレンズ保持部材2の上下方向における移動が妨げられるといった不具合が生じてしまうのをより確実に抑制できる。
【0117】
制御装置CTRは、望ましくは、所定の開始条件が満たされた場合に、レンズ駆動装置101の動作モードをクリーニングモードに切り換える。所定の条件は、例えば、カメラモジュールCMの電源が投入されたことである。
【0118】
この構成は、レンズ駆動装置101の円滑な動きが長期にわたって維持されるという効果をもたらす。例えば、カメラモジュールCMの電源が投入される度に、第1接触範囲MS1の内側に堆積している摩耗粉が、第1接触範囲MS1の外側に押し出されるためである。すなわち、レンズ駆動装置101の動作モードとして通常モードが選択されているときには、第1接触範囲MS1の内側に摩耗粉がほとんどない状態が維持されるためである。
【0119】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0120】
例えば、上述の実施形態では、レンズ保持部材2は、軸部(第1軸部2S及び第2軸部2T)を有し、軸支部を有さないように構成されているが、軸支部を有するように構成されていてもよい。この場合、第1リンク部材3は、その軸支部に対応する軸部を有するように構成されていてもよい。第2リンク部材4についても同様である。
【0121】
また、上述の実施形態では、ベース部材7は、軸支部(第3軸支部7H及び第4軸支部7J)を有し、軸部を有さないように構成されているが、軸部を有するように構成されていてもよい。この場合、第1リンク部材3は、その軸部に対応する軸支部を有するように構成されていてもよい。第2リンク部材4についても同様である。
【0122】
また、上述の実施形態では、第1軸部2Sは、左側第1軸部2SL及び右側第1軸部2SRを有するように、すなわち、一対の軸部を有するように構成されているが、軸部と軸支部の組み合わせで構成されていてもよい。例えば、第1軸部2Sは、左側第1軸部2SLと右側第1軸支部(図示せず。)とを有するように構成されていてもよい。この場合、第1軸支部3Hは、左側第1軸支部3HLと右側第1軸部(図示せず。)とを有するように構成されていてもよい。第2軸部2T、第2軸支部4H、第3軸部3S、第3軸支部7H、第4軸部4S、及び第4軸支部7Jについても同様である。
【0123】
また、レンズ保持部材2に保持されるレンズ体が大きくなく、レンズ保持部材2が光軸方向に移動する際の姿勢の変化を許容できる場合には、リンク機構LMが省略されてもよい。
【0124】
また、可動側溝部2Gと固定側溝部7Gとの間に配置される一組のボール5の数は、三つ以上であってもよく、一つであってもよい。
【0125】
また、案内機構は、ボールを用いたものに限定されない。例えば、レンズ保持部材2と固定側部材との間に上側板ばね及び下側板ばねが設けられ、この上側板ばね及び下側板ばねによって案内機構が構成されてもよい。
【0126】
本願は、2021年3月12日に出願した日本国特許出願2021-040548号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0127】
1・・・カバー部材 1A・・・外周壁部 1B・・・天井部 1K・・・開口 1S・・・収容部 2・・・レンズ保持部材 2B・・・柱状部 2BL・・・左側柱状部 2BR・・・右側柱状部 2C・・・筒状部 2G・・・可動側溝部 2GL・・・左可動側溝部 2GR・・・右可動側溝部 2S・・・第1軸部 2SL・・・左側第1軸部 2SR・・・右側第1軸部 2T・・・第2軸部 2TB・・・後側第2軸部 2TF・・・前側第2軸部 3・・・第1リンク部材 3A・・・第1腕部 3AL・・・左側第1腕部 3AR・・・右側第1腕部 3B・・・第1基部 3H・・・第1軸支部 3HL・・・左側第1軸支部 3HR・・・右側第1軸支部 3S・・・第3軸部 3SL・・・左側第3軸部 3SR・・・右側第3軸部 4・・・第2リンク部材 4A・・・第2腕部 4AB・・・後側第2腕部 4AF・・・前側第2腕部 4B・・・第2基部 4H・・・第2軸支部 4HB・・・後側第2軸支部 4HF・・・前側第2軸支部 4S・・・第4軸部 4SB・・・後側第4軸部 4SF・・・前側第4軸部 5・・・ボール 5L・・・左側ボール 5LD・・・左下側ボール 5LU・・・左上側ボール 5R・・・右側ボール 5RD・・・右下側ボール 5RU・・・右上側ボール 6・・・付勢部材 6B・・・基部 6BL・・・左側基部 6BR・・・右側基部 6C・・・連結部 6CD・・・下側連結部 6CU・・・上側連結部 6E・・・弾性変形部 6EL・・・左側弾性変形部 6ER・・・右側弾性変形部 6F・・・固定部 6FL・・・左側固定部 6FR・・・右側固定部 6H・・・開口 6HL・・・左側開口 6HR・・・右側開口 6N・・・折り曲げ部 6NL・・・左側折り曲げ部 6NR・・・右側折り曲げ部 6S・・・支持部 6SL・・・左側支持部 6SR・・・右側支持部 7・・・ベース部材 7B・・・柱状部 7BL・・・左側柱状部 7BR・・・右側柱状部 7C・・・挟持部 7CL・・・左側挟持部 7CR・・・右側挟持部 7F・・・矩形枠部 7G・・・固定側溝部 7GL・・・左固定側溝部 7GR・・・右固定側溝部 7H・・・第3軸支部 7HL・・・左側第3軸支部 7HR・・・右側第3軸支部 7J・・・第4軸支部 7JB・・・後側第4軸支部 7JF・・・前側第4軸支部 7K・・・開口 7V・・・凹部 7VLD・・・左下側凹部 7VLU・・・左上側凹部 7VRD・・・右下側凹部 7VRU・・・右上側凹部 7W・・・壁部 8・・・圧電素子 8X・・・回転軸 9・・・接触部材 10・・・回路基板 11・・・受け部材 12・・・センサ 13・・・磁石 14・・・センサ用回路基板 101・・・レンズ駆動装置 AD、AD1L、AD1R、AD2L、AD2R・・・接着剤 AP・・・摩耗粉 AP1・・・上側摩耗粉 AP2・・・下側摩耗粉 BE・・・内縁部 BP・・・摩耗粉 BP1・・・上側摩耗粉 BP2・・・下側摩耗粉 CL・・・中央 CM・・・カメラモジュール CN・・・角壁部 CP・・・接触点 CTR・・・制御装置 DE・・・下側縁部 DM1、DM2・・・下限 FB・・・固定側部材 GM・・・案内機構 GML・・・左側案内部 GMR・・・右側案内部 HS・・・筐体 IM・・・撮像素子 JD・・・光軸 LE・・・左端部 LM・・・リンク機構 MB・・・可動側部材 MS1・・・第1接触範囲 MS2・・・第2接触範囲 ND・・・位置 ND1・・・第1位置 ND2・・・第2位置 PD・・・圧電駆動部 PL・・・突起 RA1・・・第1回動軸 RA2・・・第2回動軸 RA3・・・第3回動軸 RA4・・・第4回動軸 RE・・・右端部 RS・・・凹部 UE・・・上側縁部 UM1、UM2・・・上限 UR1・・・第1凹部 UR2・・・第2凹部
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A1
図18A2
図18B1
図18B2
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図21A
図21B
図21C