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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103723
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】細胞培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240725BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090602
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2022535004の分割
【原出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020116946
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 豊之
(72)【発明者】
【氏名】田窪 健二
(72)【発明者】
【氏名】井上 統宏
(72)【発明者】
【氏名】米田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智樹
(57)【要約】
【課題】細胞培養容器ごとの比較分析に適した細胞培養システムを提供する。
【解決手段】細胞培養システムは、第1ポンプと、第1細胞培養容器及び第2細胞培養容器とを備えている。第1細胞培養容器は、第1培地循環流路を有している。第2細胞培養容器は、第1培地循環流路から独立している第2培地循環流路を有している。第1培地循環流路及び第2培地循環流路は、第1ポンプに流体接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプと、
第1細胞培養容器及び第2細胞培養容器と、
配線基板を有し、前記第1細胞培養容器及び前記第2細胞培養容器が着脱可能に取り付けられた第1基台と、
前記配線基板に電気的に接続された経上皮電気抵抗測定装置とを備え、
前記第1細胞培養容器は、底壁と、前記底壁に埋設されて前記第1細胞培養容器内にある第1培地に電気的に接続される第1電極と、前記第1細胞培養容器内にある前記第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地に電気的に接続される第2電極とを有し、
前記第1細胞培養容器の前記第1電極は、前記第1細胞培養容器が前記第1基台に取り付けられることにより、前記配線基板に電気的に接続され、
前記経上皮電気抵抗測定装置は、前記第1電極と前記第2電極との間の電気抵抗値を測定する、細胞培養システム。
【請求項2】
前記第1細胞培養容器は、第1培地流路を有し、
前記第2細胞培養容器は、前記第1培地流路から独立している第2培地流路を有し、
前記第1培地流路及び前記第2培地流路は、前記第1ポンプに流体接続されており、
前記第1培地流路及び前記第2培地流路は、それぞれ第1培地回収容器及び第2培地回収容器に流体接続されている、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項3】
第2ポンプと、
第3細胞培養容器及び第4細胞培養容器とをさらに備え、
前記第3細胞培養容器は、第3培地流路を有し、
前記第4細胞培養容器は、前記第3培地流路から独立している第4培地流路を有し、
前記第3培地流路及び前記第4培地流路は、前記第2ポンプに流体接続されている、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記第1培地流路は、培地供給容器に流体接続され、
前記培地供給容器、前記第1培地回収容器及び前記第2培地回収容器を支持するラックをさらに備え、
前記ラックは、着脱可能に前記第1基台に取り付けられている、請求項2に記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記第1細胞培養容器は、前記第1細胞培養容器内に配置され、前記第1培地が貯留される第1貯留部と前記第2培地が貯留される第2貯留部とを仕切る酸素透過性のメンブレンを含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記第1細胞培養容器は、
容器本体と、
筒状部を含み、底面に前記メンブレンが配置されたセルカルチャーインサートと、
前記容器本体を封止するための蓋部材とを有し、
前記容器本体は、開口が形成された上壁と、前記底壁と、前記上壁及び前記底壁に連なっている側壁とを含み、
前記底壁は、前記上壁と間隔を空けて対向し、
前記筒状部の第1端は、前記メンブレンにより閉塞されており、
前記筒状部の第2端は、前記蓋部材により閉塞されており、
前記筒状部は、前記筒状部の前記第1端が前記容器本体の内部に位置するように前記上壁の前記開口に挿入されており、
前記第1培地は、前記容器本体の内部に貯留されており、
前記第2培地は、前記筒状部の内部に貯留されている、請求項5に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
第1チューブ及び第2チューブと、
培地供給容器及び培地回収容器とをさらに備え、
前記第1チューブの第1端及び前記第2チューブの第1端は、前記第1細胞培養容器における前記蓋部材に挿入されて前記筒状部の前記内部に接続されており、
前記第1チューブの第2端及び前記第2チューブの第2端は、前記培地供給容器及び前記培地回収容器にそれぞれ接続されており、
前記第1ポンプは、前記第2培地を前記培地供給容器から前記第1細胞培養容器における前記筒状部の前記内部へと前記第1チューブを介して送液するとともに前記第2培地を前記第1細胞培養容器における前記筒状部の前記内部から前記培地回収容器へと前記第2チューブを介して送液するように構成されている、請求項6に記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記セルカルチャーインサートは、前記容器本体から取り外し可能であり、
前記蓋部材は、前記セルカルチャーインサートから取り外し可能であり、
前記第1チューブ及び前記第2チューブは、それぞれ、前記培地供給容器及び前記培地回収容器から取り外し可能であり、
前記第1チューブ及び前記第2チューブは、それぞれ、前記第1ポンプから取り外し可能であり、
前記第1チューブ及び前記第2チューブは、前記第1細胞培養容器の前記蓋部材から取り外し可能である、請求項7に記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記培地供給容器及び前記培地回収容器を支持し、前記第1基台に着脱可能に取り付けられているラックをさらに備え、
前記第1ポンプは、磁石を有しており、
前記ラックは、磁性材料により形成されている、請求項7又は請求項8に記載の細胞培養システム。
【請求項10】
前記第1基台には、前記第1細胞培養容器及び前記第2細胞培養容器が配置される凹部が形成されており、
前記第1基台には、前記凹部内に配置されている前記第1細胞培養容器及び前記第2細胞培養容器の前記側壁に向かって付勢力を発生させるばねが埋設されている、請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項11】
第1リード線をさらに備え、
前記第1リード線の第1端は、前記第1細胞培養容器の前記第2電極に電気的に接続され、
前記第1リード線の第2端は、前記配線基板に電気的に接続される、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項12】
嫌気チャンバと、
前記第1ポンプの制御を行うコントローラとをさらに備え、
前記コントローラ及び前記経上皮電気抵抗測定装置は、前記嫌気チャンバ内に常置されている、請求項11に記載の細胞培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開第2018/079793号)には、腸管上皮細胞が多孔質膜上に播種された細胞培養容器を嫌気チャンバ内に配置し、当該腸管上皮細胞と培地中に含まれる細菌とを共培養するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/079793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、様々な条件で細胞培養を行い、その結果として細胞培養容器ごとに細胞状態や培地成分の比較分析を行うことに適したシステムの設計について、十分に検討されていない。
【0005】
本発明は、細胞培養容器ごとの比較分析に適した細胞培養システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の細胞培養システムは、第1ポンプと、第1細胞培養容器及び第2細胞培養容器とを備えている。第1細胞培養容器は、第1培地循環流路を有している。第2細胞培養容器は、第1培地循環流路から独立している第2培地循環流路を有している。第1培地循環流路及び第2培地循環流路は、第1ポンプに流体接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の細胞培養システムによると、細胞培養容器ごとの比較分析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】細胞培養システム100の斜視図である。
図2】基台10の断面図である。
図3】細胞培養容器20の断面図である。
図4】基台10に取り付けられた状態のラック40の斜視図である。
図5】チャンバ装置200の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0010】
(実施形態に係る細胞培養システムの構成)
以下に、実施形態に係る細胞培養システム(以下「細胞培養システム100」とする)の構成を説明する。
【0011】
図1は、細胞培養システム100の斜視図である。図1に示されるように、細胞培養システム100は、基台10と、独立した複数の細胞培養容器20と、複数の培地容器30a及び培地容器30bと、ラック40と、複数のチューブ50a及びチューブ50bと、ポンプ60と、複数のリード線70a(図示せず)及びリード線70b(図示せず)とを有している。なお、図1中には、二対のチューブ50a及びチューブ50bのみが示されている。細胞培養システム100は、コントローラ80(図5参照)と、経皮上電気抵抗測定装置90(図5参照)と、チャンバ装置200(図5参照)とをさらに有している。基台10の数、ラック40及びポンプ60の数は、複数であってもよい。
【0012】
培地容器30a及び培地容器30bの数、チューブ50a及びチューブ50bの数並びにリード線70a及びリード線70bの数は、細胞培養容器20の数に等しい。図1の例では、1つの基台10あたりの細胞培養容器20の数は、3つである。但し、図1において、チューブ50a及びチューブ50bは、一対のみが示されている。
【0013】
基台10は、本体11と、配線基板12と、ばね13と、玉14とを有している。本体11は、上面と、底面とを有している。本体11の底面は、本体11の上面の反対面である。本体11には、凹部11aが形成されている。凹部11aにおいて、本体11の上面は、本体11の底面側へと窪んでいる。凹部11aは、基台10(本体11)の長手方向に沿って延在している。
【0014】
本体11には、穴11bと、穴11cとが形成されている。穴11bにおいて、本体11の上面は、本体11の底面側へと窪んでいる。穴11cは、本体11の内部空間と連通するように形成されている。
【0015】
図2は、基台10の断面図である。図2に示されるように、本体11の内部空間には、配線基板12が配置されている。図示されていないが、配線基板12は、配線12aが形成されている。配線基板12は、複数の突出電極12bと、複数の突出電極12cとを有している。突出電極12b及び突出電極12cの数は、細胞培養容器20の数に等しい。突出電極12bの一方端及び突出電極12cの一方端は、配線12aに電気的に接続されている。突出電極12bの他方端及び突出電極12cの他方端は、凹部11aの底面から突出している。
【0016】
玉14は、ばね13の先端に取り付けられている。ばね13は、先端に取り付けられた玉14が凹部11aの側面から突出するように、基台10に埋設されている。
【0017】
図3は、細胞培養容器20の断面図である。図3に示されるように、細胞培養容器20は、容器本体21と、セルカルチャーインサート22と、蓋部材23と、蓋部材24と、電極25a及び電極25bとを有している。
【0018】
容器本体21の内部には、第1培地26が貯留されている。容器本体21は、上壁21aと、底壁21bと、側壁21cとを有している。容器本体21は、樹脂材料により形成されていることが好ましい。
【0019】
上壁21aには、開口21aaが形成されている。開口21aaは、上壁21aを厚さ方向に沿って貫通している。なお、上壁21aは、底壁21b及び側壁21cと別体に形成されていてもよい。
【0020】
底壁21bは、上壁21aと間隔を空けて対向している。底壁21bには、電極21ba及び電極21bbが埋設されている。電極21ba及び電極21bbは、第1培地26に電気的に接続されている。電極21ba及び電極21bbは、底壁21bの外面から露出されている。電極21ba及び電極21bbは、容器本体21が凹部11a内に配置された際に、突出電極12b及び突出電極12cにそれぞれ電気的に接続される。
【0021】
側壁21cは、上壁21a及び底壁21bに連なっている。側壁21cの外面には、凹部21caが形成されている。凹部21caは、容器本体21が凹部11a内に配置された際に玉14と対向する位置に形成されている。
【0022】
セルカルチャーインサート22は、筒状部22aと、酸素透過性のメンブレン22bとを有している。筒状部22aの下端側は、メンブレン22bにより閉塞されている。筒状部22aの上端側は、蓋部材23により閉塞されている。蓋部材23は、筒状部22aから取り外し可能である。
【0023】
筒状部22aの内部には、第2培地27が貯留されている。第2培地27の溶存酸素濃度は、第1培地26の溶存酸素濃度よりも低い。すなわち、第1培地26は好気培地であり、第2培地27は嫌気培地である。第2培地27は、例えば嫌気性細菌を含んでいる。
【0024】
筒状部22aは、その下端側が容器本体21の内部にあるように、開口21aaに挿入されている。これにより、セルカルチャーインサート22は、容器本体21に取り付けられている。セルカルチャーインサート22は、容器本体21から取り外し可能である。
【0025】
メンブレン22bは、例えば、ポリカーボネート製のトラックエッチ膜である。メンブレン22bは、第1主面22baと、第2主面22bbとを有している。第1主面22baは、容器本体21の内部側を向いている。第2主面22bbは、筒状部22aの内部側を向いている。第2主面22bbは、第1主面22baの反対面である。
【0026】
第2主面22bb上において、細胞が培養される。この細胞は、例えば第2主面22bb上においてタイトジャンクション(密着結合)を形成する腸管上皮細胞である。この細胞の具体例としては、Caco-2細胞が挙げられる。この細胞には、メンブレン22bを介して第1培地26中の酸素が供給される。
【0027】
蓋部材24は、容器本体21に着脱可能に取り付けられている。これにより、セルカルチャーインサート22が容器本体21から脱落することが防止されている。なお、蓋部材24には開口が形成されており、当該開口から蓋部材23の上面が露出している。
【0028】
電極25a及び電極25bは、蓋部材23に挿入されている。電極25aの一方端及び電極25bの一方端は、第2培地27に電気的に接続されている。電極25aの他方端及び電極25bの他方端は、蓋部材23から露出している。
【0029】
細胞培養容器20は、着脱可能に基台10に取り付けられる。より具体的には、細胞培養容器20は、容器本体21を凹部11a内に配置することにより、基台10に取り付けられる。この取り付けにより、電極21ba及び電極21bbがそれぞれ突出電極12b及び突出電極12cと電気的に接続される。
【0030】
細胞培養容器20が基台10に取り付けられた状態において、玉14が凹部21caに接触する。ばね13は、玉14を介して側壁21cに向かって付勢力を発生させている。これにより、細胞培養容器20(容器本体21)の凹部11a内での位置ずれが抑制されている。
【0031】
培地容器30a及び培地容器30bは、ラック40に支持されている。図4は、基台10に取り付けられた状態のラック40の斜視図である。図4において、チューブ50a及びチューブ50bの図示は省略されている。図4に示されるように、ラック40は、基台10に着脱可能に取り付けられる。より具体的には、ラック40は、支柱41を有している。ラック40は、支柱41が穴11bに挿入されることにより、基台10に取り付けられる。ラック40は、磁性材料(軟磁性材料)により形成されている。
【0032】
培地容器30aには、第2培地27が貯留されている。チューブ50aの一方端は、蓋部材23に挿入されている。これにより、チューブ50aと筒状部22aの内部とが接続されている。チューブ50aの他方端は、培地容器30aに接続されている。チューブ50bの一方端は、蓋部材23に挿入されている。これにより、チューブ50bと筒状部22aの内部とが接続されている。
【0033】
チューブ50aには、ポンプ60が取り付けられている。ポンプ60は、チューブ50aを介して培地容器30aに貯留されている第2培地27を筒状部22aの内部へと送液する。チューブ50bには、ポンプ60が取り付けられている。ポンプ60は、チューブ50bを介して筒状部22aに貯留されている第2培地27を培地容器30bへと送液する。すなわち、ポンプ60を動作させることにより、筒状部22aの内部に貯留されている第2培地27が交換される。細胞培養システム100では、培地容器30aから細胞培養容器20への第2培地27の供給及び細胞培養容器20から培地容器30bへの第2培地27の回収が1つのポンプ60により行われるため、ポンプの個体差に起因した培地供給量と培地回収量との間のずれを低減できる。
【0034】
ポンプ60は、第2培地27と接触することなく上記の送液を行うことができるポンプである。ポンプ60は、例えば、チューブポンプである。但し、ポンプ60は、これに限られるものではない。ポンプ60は、例えばシリンジポンプであってもよい。
【0035】
ポンプ60は、磁石61を有している。ラック40は磁性材料により形成されているため、ポンプ60は、磁石61により、ラック40に取り付けることが可能である(図4参照)。
【0036】
チューブ50aは、蓋部材23及び培地容器30aから取り外し可能である。チューブ50bは、蓋部材23及び培地容器30bから取り外し可能である。ポンプ60は、チューブ50aから取り外し可能である。
【0037】
なお、複数の細胞培養容器20の各々に接続されているチューブ50aは、1つのポンプ60に接続されていることが好ましい。これにより、細胞培養システム100では、複数の細胞培養容器20のうちの1つ(以下においては、細胞培養容器20Aとする)に対する第2培地27の供給・回収及び複数の細胞培養容器20のうちの他の1つ(以下においては、細胞培養容器20Bとする)に対する第2培地27の供給・回収を1つのポンプ60で行われることになるため、細胞培養容器20A及び細胞培養容器20Bに対し、同様の流量制御を行うことができる。細胞培養容器20Aと細胞培養容器20Bとでは、流量以外の培養条件(例えば、細胞の播種量、菌の種類等)が同一であってもよい。但し、細胞培養容器20Aと細胞培養容器20Bとで、流量以外の培養条件が異なっていてもよい。
【0038】
複数の基台10のうちの1つを、基台10Aとする。複数の基台10のうちの他の1つを、基台10Bとする。基台10Aに取り付けられているラック40を、ラック40Aとする。基台10Bに取り付けられているラック40を、ラック40Bとする。ラック40Aに取り付けられているポンプ60を、ポンプ60Aとする。ラック40Bに取り付けられているポンプ60を、ポンプ60Bとする。ポンプ60Aに対する流量制御は、ポンプBに対する流量制御と異なっていてもよい。基台10A上の細胞培養容器20と基台10B上の細胞培養容器20とでは、流量以外の培養条件(例えば、細胞の播種量、菌の種類等)が、異なっていてもよい。但し、基台10A上の細胞培養容器20と基台10B上の細胞培養容器20とで、流量以外の培養条件(例えば、細胞の播種量、菌の種類等)が同一であってもよい。
【0039】
リード線70aの一方端及びリード線70bの一方端は、穴11cを通って配線基板12(配線12a)に電気的に接続されている。リード線70aの一方端及びリード線70bの一方端は、好ましくは、配線基板12から取り外し可能になっている。リード線70aの他方端及びリード線70bの他方端は、例えばICクリップにより、電極25a及び電極25bに着脱可能に電気的に接続されている。
【0040】
コントローラ80は、ポンプ60の制御を行う。より具体的には、コントローラ80には、マイクロコントローラが内蔵されている。このマイクロコントローラは、コントローラ80の操作ボタン等からの入力内容に応じた制御信号を生成し、当該制御信号をポンプ60に配線(図示せず)を介して送信する。これにより、ポンプ60の制御が行われる。
【0041】
経皮上電気抵抗測定装置90は、配線(図示せず)を介して配線基板12に接続されており、当該配線、配線基板12、リード線70a及びリード線70bを介して電極21ba及び電極21bbと電極25a及び電極25bとの間の電気抵抗値を測定する。この測定は、例えば四端子法により行われる。
【0042】
なお、電極21ba、電極21bb、電極25a及び電極25bは、それぞれ複数存在しているため、配線基板12からは複数の信号が出力されることになる。これら複数の出力は、1つの分配器に入力される。この分配器は、これら複数の出力のうちの1つを時分割で選択して経皮上電気抵抗測定装置90に入力する。これにより、経皮上電気抵抗測定装置90を複数準備する必要がなくなる。
【0043】
第2主面22bb上に培養されている細胞がタイトジャンクションを形成している場合とそうでない場合とで電極21ba及び電極21bbと電極25a及び電極25bとの間の電気抵抗値が変動する。そのため、上記の電気抵抗値の測定により、第2主面22bb上に培養されている細胞がタイトジャンクションを形成しているか否かの判定が可能である。
【0044】
細胞培養システム100は、酸素センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。酸素センサは、チューブ50bの経路上に配置されており、チューブ50bを流れる第2培地27の溶存酸素濃度を検知可能に構成されている。これにより、細胞培養システム100は、共培養時の細菌の増殖状況をモニタリングすることができる。
【0045】
図5は、チャンバ装置200の斜視図である。図5に示されるように、チャンバ装置200は、エアロック210と、嫌気チャンバ220とを有している。エアロック210とチャンバ装置200の外部とは、外部ドア230により仕切られている。エアロック210と嫌気チャンバ220とは、内部ドア240により仕切られている。嫌気チャンバ220内は、嫌気的な環境(酸素濃度が低い環境)が保たれている。
【0046】
嫌気チャンバ220は、前面パネル221を有している。前面パネル221には、アームポート222が形成されている。アームポート222は、前面パネル221を貫通して嫌気チャンバ220の内部空間と連通している。アームポート222に取り付けられるスリーブ(図示せず)やグローブ(図示せず)に手を差し入れることにより、嫌気チャンバ220内において各種の作業を行うことができる。アームポート222は、アームポートドア223により閉塞されている。
【0047】
嫌気チャンバ220内に物を配置するためには、第1に、外部ドア230を開いてエアロック210内に当該物を配置し、外部ドア230を閉じる。第2に、エアロック210内を嫌気化する。第3に、嫌気化の完了後、内部ドア240を開き、エアロック210内にある物を嫌気チャンバ220内に移動させる。嫌気チャンバ220内から物を取り出すためには、上記と逆の動作が行われる。
【0048】
基台10、細胞培養容器20と、培地容器30a及び培地容器30b、ラック40、チューブ50a及びチューブ50b、ポンプ60、リード線70a及びリード線70b、コントローラ80並びに経皮上電気抵抗測定装置90は、嫌気チャンバ220内に配置されている。
【0049】
コントローラ80及び経皮上電気抵抗測定装置90は、嫌気チャンバ220内に常置されている。しかしながら、基台10、細胞培養容器20と、培地容器30a及び培地容器30b、ラック40、チューブ50a及びチューブ50b、ポンプ60並びにリード線70a及びリード線70bは、嫌気チャンバ220内から取り出し可能になっている。
【0050】
なお、嫌気チャンバ220から取り出された培地容器30b中の第2培地27及び容器本体21内の第1培地26を分析することにより、共培養時の代謝や吸収の動態を分析することができる。
【0051】
(実施形態に係る細胞培養システムの効果)
以下に、細胞培養システム100の効果を説明する。
【0052】
細胞培養システム100は、互いに独立した複数の細胞培養容器20を有するため、細胞培養容器20ごとに比較分析を行うことが可能である。細胞培養システム100においては、複数の独立した細胞培養容器20が1つの基台10に着脱可能に取り付けられている。そのため、細胞培養システム100によると、複数の独立した細胞培養容器20を基台10とともに持ち運ぶことができるため、複数の独立した細胞培養容器20を嫌気チャンバ220から容易に取り出すことができる。
【0053】
細胞培養システム100は、培地容器30a及び培地容器30bと、チューブ50a及びチューブ50bと、ポンプ60とを有している。そのため、細胞培養システム100によると、筒状部22aの内部に貯留される第2培地27を交換しながら細胞及び細菌の共培養を行うことができる。
【0054】
細胞培養システム100においては、複数の培地容器30a及び培地容器30bを支持しているラック40を基台10に着脱可能に取り付けることができる。また、細胞培養システム100においては、磁石61によりポンプ60をラック40に取り付けることができる。そのため、細胞培養システム100によると、基台10、細胞培養容器20、培地容器30a及び培地容器30b、ラック40、チューブ50a及びチューブ50b並びにポンプ60を一体化させて嫌気チャンバ220内から取り出すことができる。
【0055】
容器本体21、セルカルチャーインサート22、培地容器30a及び培地容器30b、チューブ50a及びチューブ50bは、培地に接触する。そのため、これらの部品は、細胞培養システム100を用いて共培養を行った後に廃棄し、新たな部品と交換されることが好ましい。しかしながら、これらの部品の取り外しができない場合、これらの部品もオートクレーブ等の除菌処理を行った上で再利用に供さなければならないため、実験効率が落ちる。
【0056】
細胞培養システム100においては、容器本体21からセルカルチャーインサート22を取り外すととともに、蓋部材23をセルカルチャーインサート22から取り外すことが可能である。また、細胞培養システム100においては、チューブ50aを蓋部材23及び培地容器30aから取り外すとともに、チューブ50bを蓋部材23及び培地容器30bから取り外すことが可能である。さらに、細胞培養システム100においては、ポンプ60をチューブ50aから取り外すことが可能である。
【0057】
このように、細胞培養システム100によると、除菌した上で再利用する部品と廃棄する部品とを分別することができるため、除菌処理の効率化を図ることができ、ひいては実験効率を高めることができる。
【0058】
細胞培養システム100においては、ばね13が玉14を介して側壁21cに向かって付勢力を発生させているため、細胞培養容器20の凹部11a内での位置ずれが抑制されている。これにより、容器本体21に軽量な材料(樹脂材料等)を用いて細胞培養容器20にぐらつきが生じやすい場合でも、安定した共培養が可能となる。
【0059】
細胞培養システム100においては、経皮上電気抵抗測定装置90により電極21ba及び電極21bbと電極25a及び電極25bとの間の電気抵抗値を測定しているため、第2主面22bb上に培養されている細胞の状態をモニタリングしながら共培養を進めることができる。
【0060】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10,10A,10B 基台、11 本体、11a 凹部、11b,11c 穴、12 配線基板、12a 配線、12b,12c 突出電極、13 ばね、14 玉、20,20A,20B 細胞培養容器、21 容器本体、21a 上壁、21aa 開口、21b 底壁、21ba 電極、21bb 電極、21c 側壁、21ca 凹部、22 セルカルチャーインサート、22a 筒状部、22b メンブレン、22ba 第1主面、22bb 第2主面、23,24 蓋部材、25a,25b 電極、26 第1培地、27 第2培地、30a,30b 培地容器、40 ラック、40A,40B ラック、41 支柱、50a,50b チューブ、60,60A,60B ポンプ、61 磁石、70a,70b リード線、80 コントローラ、90 経皮上電気抵抗測定装置、100 細胞培養システム、200 チャンバ装置、210 エアロック、220 嫌気チャンバ、221 前面パネル、222 アームポート、223 アームポートドア、230 外部ドア、240 内部ドア。
図1
図2
図3
図4
図5