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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103733
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】成形方法及び模型部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/28 20060101AFI20240725BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20240725BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B29C45/28
B29C45/38 A
B29C45/17
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090910
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2020128452の分割
【原出願日】2019-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸山 博文
(72)【発明者】
【氏名】脇田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】中野 博貴
(57)【要約】
【課題】成形型においてパーツ毎に成形するかしないかを容易に切替えることを可能とする成形方法及び当該成型方法により成形された模型部品を提供する。
【解決手段】磁性体材料で形成された成形型に成形材料を注入して、複数のパーツがランナーに接続されて構成される第1の成形物を成形する第1の成形工程と、前記成形型に成形材料を注入して、第2の成形物であって、前記第1の成形物を構成する前記複数のパーツの一部を含まない第2の成形物を成形する第2の成形工程とを選択的に実行して成形物を成形する成形方法であって、前記成形型は、前記複数のパーツの一部に対応する前記成形型の所定部分に対する前記成形材料の流入を、磁気スイッチの着脱により遮断また許容するためのスイッチ収容部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体材料で形成された成形型に成形材料を注入して、複数のパーツがランナーに接続されて構成される第1の成形物を成形する第1の成形工程と、
前記成形型に成形材料を注入して、第2の成形物であって、前記第1の成形物を構成する前記複数のパーツの一部を含まない第2の成形物を成形する第2の成形工程と
を選択的に実行して成形物を成形する成形方法であって、
前記成形型は、前記複数のパーツの一部に対応する前記成形型の所定部分に対する前記成形材料の流入を、磁気スイッチの着脱により遮断また許容するためのスイッチ収容部を備え、
前記第1の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていないことにより前記成形材料の流入が許容され、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含む前記第1の成形物が形成され、
前記第2の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていることにより前記成形材料の流入が遮断されて、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含まない前記第2の成形物が形成される
ことを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記成形型は、前記ランナーを形成するためのランナー溝に前記スイッチ収容部が設けられ、
前記第2の成形工程では、前記磁気スイッチが装着された前記スイッチ収容部よりも下流側の前記ランナー溝を含む前記所定部分に対する前記成形材料の流入が遮断されることを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記成形型は、前記複数のパーツを成形するための複数のパーツ成形部と、前記複数のパーツ成形部それぞれに前記成形材料を供給するための主ランナー溝と、前記主ランナー溝と前記パーツ成形部とを接続し、前記主ランナー溝からの前記成形材料を前記パーツ成形部に供給するための副ランナー溝とを含み
前記スイッチ収容部は、前記主ランナー溝に設けられる第1のスイッチ収容部と、前記副ランナー溝に設けられる第2のスイッチ収容部とのうち、少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記第1のスイッチ収容部の径は、前記第2のスイッチ収容部の径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の成形方法。
【請求項5】
前記第2のスイッチ収容部の径は、前記成形型が有する最短の副ランナー溝の長さよりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の成形方法。
【請求項6】
前記第2のスイッチ収容部の径は4mmであることを特徴とする請求項4または5に記載の成形方法。
【請求項7】
前記第2のスイッチ収容部は、前記第1のスイッチ収容部の下流側に設けられることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項8】
前記第2のスイッチ収容部は、前記成形材料の流入を遮断しようとするパーツ成形部と接続する全ての副ランナー溝に設けられることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項9】
前記磁気スイッチは球状の磁石であり、
前記スイッチ収容部は、前記磁気スイッチの球状の形状に対応する凹部を有することを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項10】
第1のランナーと接続された第2のランナーと接続した少なくとも1つ以上の成形物を含む模型部品であって、
前記第1のランナー及び前記第2のランナーの少なくともいずれかの端部に球状凹面を有することを特徴とする模型部品。
【請求項11】
前記端部は、前記第1のランナーと前記第2のランナーとで構成される面に直交することを特徴とする請求項10に記載の模型部品。
【請求項12】
並行して配置された同種のランナーのそれぞれが前記端部を有することを特徴とする請求項10または11に記載の模型部品。
【請求項13】
前記第1のランナー及び前記第2のランナーが前記球状凹面をそれぞれ有する場合、前記第1のランナーに形成された球状凹面の径は、前記第2のランナーに形成された球状凹面の径よりも大きいことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項14】
前記第1のランナー及び前記第2のランナーの少なくともいずれかは球状凸面を有することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項15】
前記第1のランナー及び前記第2のランナーが前記球状凸面をそれぞれ有する場合、前記第1のランナーに形成された球状凸面の径は、前記第2のランナーに形成された球状凸面の径よりも大きいことを特徴とする請求項14に記載の模型部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形方法及び模型部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に樹脂を用いて成形されたプラモデルのような成形物は、ランナーに組み立ての対象となる複数のパーツが接続されて構成されている(特許文献1を参照)。パーツを組み立てて出来上がる完成品の種類や形状に応じてそれぞれ異なるパーツの組み合わせが提供されることが一般的であるが、中には完成品として異なるものの、パーツは一部が異なるだけで共通のパーツを有するバリエーション製品も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-142578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバリエーション製品用のパーツを成形する場合、製品毎にそれぞれ専用の成形型(金型)を作ることもできる。また、元の製品の金型をそのまま転用し、バリエーション商品では使用されないパーツも含めて成形することもできる。前者の場合には、一部の不要なパーツのためだけに追加の成形型を造るためのコストが発生するので非効率であり、後者についてはバリエーション商品では使われないパーツが成形され、成形材料の無駄が発生する。
【0005】
そこで、成形型においてパーツ毎に成形するかしないかを容易に切替え可能とすることで、必要とする共通パーツのみを成形可能とする技術が求められている。
【0006】
本発明は、成形型においてパーツ毎に成形するかしないかを容易に切替えることを可能とする成形方法及び当該成型方法により成形された模型部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、成型方法であって
磁性体材料で形成された成形型に成形材料を注入して、複数のパーツがランナーに接続されて構成される第1の成形物を成形する第1の成形工程と、
前記成形型に成形材料を注入して、第2の成形物であって、前記第1の成形物を構成する前記複数のパーツの一部を含まない第2の成形物を成形する第2の成形工程と
を選択的に実行して成形物を成形する成形方法であって、
前記成形型は、前記複数のパーツの一部に対応する前記成形型の所定部分に対する前記成形材料の流入を、磁気スイッチの着脱により遮断また許容するためのスイッチ収容部を備え、
前記第1の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていないことにより前記成形材料の流入が許容され、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含む前記第1の成形物が形成され、
前記第2の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていることにより前記成形材料の流入が遮断されて、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含まない前記第2の成形物が形成される。
【0008】
また、模型部品は、第1のランナーと接続された第2のランナーと接続した少なくとも1つ以上の成形物を含む模型部品であって、前記第1のランナー及び前記第2のランナーの少なくともいずれかの端部に球状凹面を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形型においてパーツ毎に成形するかしないかを容易に切替えて、模型部品を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の実施形態に係る成形装置の断面を例示する図。
図2】(a)は磁気スイッチが装着されていない状態を示すランナー溝の斜視図、(b)は(a)の状態における断面図、(c)は磁気スイッチが装着された状態を示すランナー溝の斜視図、(d)は(c)の状態における断面図。
図3】(a)は磁気スイッチを装着していない場合の成形結果、(b)は磁気スイッチを装着した場合の成形結果を、それぞれ示す成形型の断面図、(c)は、(b)の成形結果における成形物と磁気スイッチとの関係を示す図。
図4】(a)は磁気スイッチを適用する前の成形型400の一例を示す図、(b)は磁気スイッチを適用後の成形型400Aの一例を示す図、(c)は400及び400Aを用いて成形した成形物410Aの一例を示す図。
図5】(a)は一部に磁気スイッチを装着した成形型400Bの一例を示す図、(b)は400Bを用いて成形した成形物410Bの一例を示す図。
図6】(a)は一部に磁気スイッチを装着した成形型400Cの一例を示す図、(b)は400Cを用いて成形した成形物410Cの一例を示す図。
図7】(a)は一部に磁気スイッチを装着した成形型400Dの一例を示す図、(b)は400Dを用いて成形した成形物410Dの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
なお、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における装置の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態おいて成形材料として樹脂材料を例示するがこれに限定されず、他の材質(ポリスチレン、ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)も適用可能である。
【0013】
図1に発明の実施形態に対応する成形装置の断面図を示す。本実施形態の成形装置は図1に示すように、成形材料を射出する射出装置の移動側に取り付けられる移動金型本体102と、射出装置の固定側に取り付けられる固定金型本体103とを有する。移動金型本体102と固定金型本体103とにはそれぞれ成形材料が流入される溝が形成されている。
【0014】
移動金型本体102は、雄型106を取り付ける雄型取付板107と、雄型取付板107を固定する固定台108と、成形材射出装置に取り付けられる移動側取付板109と、固定台108と移動側取付板109との間に設けられたスペーサ110と、を有している。固定台108には空室111が形成され、空室111内には移動可能な押し出し板112が設けられている。押し出し板112は、固定台108に形成された開口部114、115に設けられた押圧軸116に固定されている。また、押し出し板112には、雄型取付板107及び雄型106を貫通するノックアウトピン113が形成されている。ここで、押し出し板112を移動することにより、ノックアウトピン113の先端がランナー溝内に突出するように形成されている。
【0015】
固定金型本体103は、成形材射出装置に取り付けられる固定取付板117と、雌型118が取り付けられる雌型取付板119と、固定取付板117と雌型取付板119との間に設けられるスペーサ120とを有している。
【0016】
また、雄型106及び雌型118に形成された溝により、成形材料が流入される空間105が形成される。当該空間105には、複数のパーツを形成するためのパーツ成形部分として成形空間(キャビティ)、及び、キャビティに成形材料を供給するためのランナー溝が含まれる。また、ランナー溝には、所定のキャビティへの成形材料の供給を制御するための磁気スイッチ104を装着可能なスイッチ収容部105a、105bが形成される。磁気スイッチ104は球状の磁石として構成することができ、スイッチ収容部105a及び105bは、磁気スイッチ104を吸着させるために磁気スイッチ104の形状に対応した凹面(本実施形態では、半球状の凹面)を有する。球状の磁石としてはネオジム(ネオジウム)磁石を用いることができる。雄型106及び雌型118は磁性体材料(例えば、鉄)から形成されており、磁気スイッチ104をスイッチ収容部105aや105bに容易に吸着させることができる。本実施形態では雄型106及び雌型118の両方が磁性体材料で形成されている場合を説明するが、いずれか一方だけを磁性体材料で形成してもよい。吸着した磁気スイッチ104は、例えばネオジム磁石等を使って取り外すことができる。なお、本実施形態では、磁気スイッチ104として球形の磁石を用いる例を説明するが、雄型106または雌型118への磁気吸着力を利用してキャビティへの成形材料の供給の有無を切り替えることが可能なものであれば、これに限られることはない。例えば、磁気スイッチ104として円柱状の磁石を用いてもよい。その場合、スイッチ収容部105a、105bには、磁気スイッチ104を吸着させるために半円柱状の凹面を形成するとよい。
【0017】
また、本実施形態では、ランナー溝を幅の異なる複数種のランナー溝とすることができ、それぞれにスイッチ収容部を設けてもよい。或いは、複数種のランナー溝のうちの一部にのみスイッチ収容部を設けるようにしてもよい。本実施形態では、幅の異なる2種類のランナー溝について説明する。具体的には、第1の幅(LW1)を有する主ランナー溝と、第2の幅(LW2)を有する副ランナー溝とがある。LW1>LW2であり、LW1は例えば7~12mmの範囲をとり、LW2は例えば2~3mmの範囲をとることができる。
【0018】
主ランナー溝用の第1のスイッチ収容部105aは、主ランナー溝の幅LW1よりも大きい内径SW1を有し、副ランナー溝用の第2のスイッチ収容部105bは、副ランナー溝の幅LW2よりも大きい内径SW2を有する。SW1>SW2であり、例えば、SW1を9から14mmの範囲とし、SW2を3から4mmとすることができる。従って、スイッチ収容部の内径は、第1のスイッチ収容部105aの内径の方が、第2のスイッチ収容部105bの内径よりも大きくなる。
【0019】
本実施形態において、スイッチ収容部の内径は、同種の磁気スイッチについて共通とし、例えば、主ランナー溝の第1のスイッチ収容部105aの内径は、使用する成形型において最短の主ランナー溝の長さよりも小さい値とする。同様に副ランナー溝の第2のスイッチ収容部105bの内径は、使用する成形型において最短の副ランナー溝の長さよりも小さい値とする。これによりどの主ランナー溝、副ランナー溝に対しても適用することが可能となる。
【0020】
図1に示す成形装置において、ランナー溝や各パーツを形成するための成形空間(キャビティ)に成形材料を流入させて成形物を形成した後、移動金型本体102を固定金型本体103から離し、押圧板116を押圧して押し出し板112を移動させる。このとき、磁気スイッチ104は成型物の端部の球状凹面により支持されることで雄型106側に残り、誤って外れてしまったために成形型を破損するといった危険性を確実に回避することができる。雄型106に残存した磁気スイッチ104は、例えばネオジム磁石のような強力な磁力を有する磁石を使って吸着することにより回収することができる。また、押し出し板112に設けられたノックアウトピン113が移動金型本体102を構成する雄型106に付着した成形物を押し出し、成形物を容易に取り出すことができる。なお、図1は成形装置の構造を一例として示す図であって、成形装置の構造は図1に示すものに限定されず、様々な変更が可能である。
【0021】
次に図2を参照して、磁気スイッチ104と成形型上に形成されたランナー溝105a及び105bとの位置関係について説明する。図2では、磁気スイッチ104と、雄型106に形成された主ランナー溝の第1のスイッチ収容部105aとの関係で説明するが、第2のスイッチ収容部105bと雄型106上の副ランナー溝との関係、及び、各ランナー溝が雌型118に形成された場合の関係も内容は同様であるので説明を省略する。
【0022】
まず、図2(a)は、磁気スイッチ104が装着される前の状態の雄型106を示している。雄型106には主ランナー溝201が形成されており、当該主ランナー溝201の途中に磁気スイッチ104を装着するための凹部202が形成されている。凹部202は、図1に示した第1のスイッチ収容部105aの一部を構成する。図2(a)に示す状態では、主ランナー溝201は磁気スイッチ104により遮断されていないため、供給される成形材料は、凹部202を超えて主ランナー溝201上を流れることができる。図2(b)は、図2(a)のA-A断面図であり、凹部202は球状の部材である磁気スイッチ104の外面形状に対応した球状凹面を有する。
【0023】
図2(c)は、凹部202に対して磁気スイッチ104が装着された状態の一例を示す。磁気スイッチ104は球形状を有しているため、対応する内面を有する凹部202と面で接触し吸着する。これにより、主ランナー溝201が磁気スイッチ104により接続が遮断されることになるため、成形材料は磁気スイッチ104を超えて流れることができない。図2(d)は、図2(c)のB-B断面図であり、凹部202の内面に磁気スイッチ104が吸着されている。
【0024】
次に、磁気スイッチ104の使用形態について図3を参照して説明する。図3図1に示す破線部121の拡大図を示し、雄型106及び雌型118に設けられたランナー溝に成形材料を流入させた状態の一例を示している。図3では、磁気スイッチ104と、雄型106及び雌型118に形成された副ランナー溝における第2のスイッチ収容部105bとの関係で説明するが、主ランナー溝に形成された第1のスイッチ収容部105aとの関係も内容は同様であるので説明を省略する。
【0025】
図3(a)は、第2のスイッチ収容部105bに磁気スイッチ104が収容されていない状態の断面図を示す。図3(b)は、第2のスイッチ収容部105bに磁気スイッチ104が収容された状態にあり、磁気スイッチ104により副ランナー溝の接続が遮断される。
【0026】
図3では、一点鎖線303を境として、一点鎖線303よりも左側を上流とし、上流側から成形材料が供給されるものとする。一点鎖線303よりも右側は、磁気スイッチ104の存在の有無により成形材料の流入が遮断されるか、それとも許容されるかが制御される。図3(a)では、第2のスイッチ収容部105bには磁気スイッチ104が収容されていないので、成形材料の流入が許容される。よって、第2のスイッチ収容部105bの領域を超えて成形物301が成形される。一方の図3(b)では、第2のスイッチ収容部105bに磁気スイッチ104が収容された状態にあり、副ランナー溝に流入した成形材料は、磁気スイッチ104の側面に衝突して、下流側への流入が遮断される。このように成形材料は磁気スイッチ104により堰き止められるため、成形物302は磁気スイッチ104を超えては成形されない。
【0027】
図3(c)は、図3(b)の点線304で囲った部分における成形物302と磁気スイッチ104との関係を示す図である。点線305は磁気スイッチ104の輪郭の一部を示しており、成形物302は当該輪郭305に沿った球状凹面306を有するように形成される。このような球状凹面306により磁気スイッチ104は支持されるため、雄型106と雌型118とが分離される際に成形物が残存する雄型106において磁気スイッチ104の位置が固定され、容易に脱落することがない。
【0028】
次に、図4から図7を参照して、上記の磁気スイッチ104を成形型に適用して成形物を成形する方法について説明する。
【0029】
まず、図4(a)は、磁気スイッチ104を適用する前の成形型の一例を示す。成形型400は、複数のパーツを形成するためのパーツ成形部分として複数の成形空間(キャビティ)403aから403e(以下、簡単のため「キャビティ403」という)を有する成形型であって、各キャビティ403は副ランナー溝402を介して主ランナー溝401と接続されている。成形材射出口404から溶融した成形材料が注入されると、主ランナー溝401から副ランナー溝402を介してキャビティ403に成形材料が流入する。全てのキャビティ403に成形材料が充填された後、冷却することにより成形物を作製することができる。
【0030】
次に、図4(b)は、成形型400に磁気スイッチ104を収容するためのスイッチ収容部405及び406を設けた成形型400Aの一例を示す。図4(b)の成形型400Aでは、第1のスイッチ収容部405aから405eまでが主ランナー溝401上に設けられている。第2のスイッチ収容部406aから406fまでが副ランナー溝402上に設けられている。第1のスイッチ収容部405は、複数のパーツをまとめて成形対象から除外したい場合に、パーツと接続する副ランナーと接続している主ランナーを成形する主ランナー溝上に設けることができる。また、第2のスイッチ収容部406は、個々のパーツを成形するか否かを制御するために、対象となるパーツと直接に接続しているランナー溝の全てに設けることができる。ここで、第1のスイッチ収容部405の内径は、第2のスイッチ収容部406の内径よりも大きい。
【0031】
第2のスイッチ収容部406が、第1のスイッチ収容部405が配置された主ランナーの下流側で、当該主ランナーに接続する副ランナーを成形する副ランナー溝に適用されると、第1のスイッチ収容部405を利用することで主ランナーの下流側のパーツを形成対象から除外可能とする一方で、第2のスイッチ収容部406を個別に利用して個々のパーツ単位に形成対象を定めることができる。また、第2のスイッチ収容部406の配置位置は、第1のスイッチ収容部405が配置された主ランナーの下流側でなくてもよい。特定のパーツだけを形成対象から除外したい場合には、第1のスイッチ収容部405を配置せず、第2のスイッチ収容部406だけを配置すればよい。成形型は、第1のスイッチ収容部405と第2のスイッチ収容部406の少なくとも一方だけを含んでいてもよい。
【0032】
図4(b)の例では、副ランナー溝402上でキャビティ403a、403eを囲むように第2のスイッチ収容部406aから406fが設けられている。これにより、キャビティ403a、403eを個々に成形するか否かを制御することができる。また、第2のスイッチ収容部406gは、キャビティ403cと接続する一部の副ランナー402上に設けられている。第2のスイッチ収容部406gは、キャビティ403aから403cを成形しない場合に第1のスイッチ収容部405aから405cと共に使用される。
【0033】
図4(b)では、第1のスイッチ収容部405及び第2のスイッチ収容部406には磁気スイッチ104が装着されておらず、キャビティ403への成形材料の流入を許容する状態となっている。従って、図4(a)及び図4(b)の成形型400及び400Aを用いた成形結果は実質的に同一のものとなる。図4(c)は、図4(b)の成形型400Aを用いた場合に得られる成形物410Aである。
【0034】
成形物410Aは、主ランナー411、副ランナー412、パーツ413aから413eで構成され、各パーツ413aから413eは、成形型400等のキャビティ403aから403eに対応する形状を有する。これらのパーツ413aから413eは副ランナー412を介して主ランナー411に接続される。また、主ランナー411には第1のスイッチ収容部405に対応する第1の球状凸面(球状凸部)が形成され、副ランナーには第2のスイッチ収容部406に対応する第2の球状凸面(球状凸部)が形成されている。ここで、第1の球状凸面の径は、第2の球状凸面の径よりも大きい。
【0035】
次に、図5から図7を参照して第1のスイッチ収容部405及び第2のスイッチ収容部406に磁気スイッチ104を装着することにより、成形物410Aに含まれる一部または全部のパーツの成形を行うか否かを制御する例を説明する。
【0036】
まず、図5を参照して第1のスイッチ収容部405及び第2のスイッチ収容部406に磁気スイッチ104を装着することにより、成形物410Aに含まれる一部のパーツの成形を行わない例を説明する。図5(a)は、キャビティ403a、403b、403cに成形材料が流入しないように磁気スイッチ104aから104dを配置した場合の成形型400Bを示す。このとき、第1のスイッチ収容部405a、405b、405cに、主ランナー溝401の接続(成形部材の流れ)を遮断するように磁気スイッチ104aから104cを装着する。一方、第1のスイッチ収容部405dには、キャビティ403d及び403eに成形材料を供給するために磁気スイッチ104は装着されない。但し、このままでは第1のスイッチ収容部405dが設けられている主ランナー溝401と接続しているキャビティ403c用の副ランナー溝402に成形材料が流入してしまう。そこで、第2のスイッチ収容部406gには磁気スイッチ104dを装着しておく。
【0037】
図5(a)に示す成形型400Bを用いた成形結果は図5(b)に示すようなものとなる。成形物410Bは、主ランナー411、副ランナー412、パーツ413d及び413eで構成され、パーツ413aから413cは成形されない。このとき、主ランナー411は成形材料の供給を磁気スイッチ104により遮断したことにより形成された端部(例えば、図5(b)の参照番号501で示す端部)を有する。当該端部は、主ランナー411及び副ランナー412により形成される平面(例えば、図5の正面に平行な面)に直交して形成され、磁気スイッチ104の球状面に対応する球状凹面を有する。
【0038】
次に、図6を参照して第2のスイッチ収容部406に磁気スイッチ104を装着することにより、成形物410に含まれる一部のパーツの成形を行わない例を説明する。まず、図6(a)は、キャビティ403a及び403eに成形材料が流入しないように第2のスイッチ収容部406aから406fに磁気スイッチ104aから104fを装着した場合の成形型400Cを示す。このとき、第1のスイッチ収容部405aから405e及び第2のスイッチ収容部406gには磁気スイッチ104を装着しない。これにより、第2のスイッチ収容部406aから406fが設けられている副ランナー溝402と接続しているキャビティ403a及び403eに対する成形材料の流入が遮断される。
【0039】
図6(a)に示す成形型400Cを用いた成形結果は図6(b)に示すようなものとなる。成形物410Cは、主ランナー411、副ランナー412、パーツ413bから413dで構成され、パーツ413a及び413eは含まれない。このとき、副ランナー412は、成形材料の供給を磁気スイッチ104により遮断したことにより形成された端部を有する。図6(b)では、並行して配置されている2本の副ランナー412のそれぞれに端部601及び端部602が形成される。これ以外にも、端部は向かい合うように形成される場合もある。当該端部は、主ランナー411及び副ランナー412により形成される平面(例えば、図6の正面に平行な面)に直交して形成され、磁気スイッチ104の球状面に対応する球状凹面を有する。
【0040】
次に、図7を参照して第1のスイッチ収容部405に磁気スイッチ104を装着することにより、成形物410に含まれるパーツの成形を行わない例を説明する。まず、図7(a)は、キャビティ403aから403eに成形材料が流入しないように第1のスイッチ収容部405a、405b、405d及び405eに磁気スイッチ104aから104dを装着した場合の成形型400Dを示す。このとき、他の第1のスイッチ収容部405c及び第2のスイッチ収容部406aから406gには磁気スイッチ104を装着しなくてもよい。これにより、第1のスイッチ収容部405a、405b、405d及び405eが設けられている主ランナー溝401の各スイッチ収容部よりも下流には成形部材が流入しないので、キャビティ403aから403eに対する成形材料の流入が全て遮断される。
【0041】
図7(a)に示す成形型400Dを用いた成形結果は図7(b)に示すようなものとなる。成形物410Dでは、成形材射出口404よりも左側にはパーツが全く含まれない。このとき、主ランナー411は、成形材料の供給を磁気スイッチ104により遮断したことにより形成された端部(例えば、図7(b)の参照番号701で示す端部)を有する。当該端部は、主ランナー411及び副ランナー412により形成される平面(例えば、図7の正面に平行な面)に直交して形成され、磁気スイッチ104の球状面に対応する球状凹面を有する。
【0042】
以上の実施形態において、図4の成形型400Aを用いる場合と、図5から図7の成形型400Bから400Dのいずれかを用いる場合とを切替えることにより、成形装置101を用いた成形方法を選択的に実行することができる。ここでは、元々の製品を成形型400Aを用いて作りつつ、バリエーション製品を成形型400Bから400Dのいずれかを用いて作ることもできる。
【0043】
以上に説明した実施形態によれば、成形型に含まれる主ランナー溝と、副ランナー溝とにスイッチ収容部を配置することにより、成形物を構成する複数のパーツのうちの一部のパーツを個別に、或いは、一括に成形対象から除外するように制御可能となる。これにより、バリエーション商品が企画され、成形型に含まれるメインパーツのうちの1つを別の新規パーツに置き換えるような場合に、商品に使わないメインパーツは成形対象から除外することが可能となる。特に本実施形態によれば、マグネットスイッチを用いることでランナー枠単位、或いは、個々のパーツ単位に成形する・しないを切り換えることができるので、バリエーション商品への対応が容易であり、かつ、バリエーション商品では使われないパーツが成形され、成形材料が無駄になることを未然に防止することができる。また、そのような不要パーツが仮に成形物に含まれている場合、商品購入者に対して当該パーツは不要である旨を通知しなければないが、本実施形態では当該パーツは成形対象から除外され商品には含まれないので、そのような手間を省略することができる。
【0044】
また、本実施形態では、主ランナー溝に形成される第1のスイッチ収容部の径SW1は、使用する成型型に含まれる主ランナー溝の幅LW1より大きいが、使用する成形型において最短の主ランナー溝の長さよりも小さい値とされる。また、副ランナー溝に形成される第2のスイッチ収容部の径SW2は、使用する成型型に含まれる副ランナー溝の幅LW2より大きいが、使用する成形型において最短の副ランナー溝の長さよりも小さい値とされている。このことにより、第1のスイッチ収容部は、成形型上のどの主ランナー溝にも適用可能であり、また、第2のスイッチ収容部も、成形型上のどの副ランナー溝に対しても適用することが可能となっている。
【0045】
そのため、第1のスイッチ収容部は成形型の所望の主ランナー溝に後から追加することが可能であり、第2のスイッチ収容部は成形型の所望の副ランナー溝に後から追加することが可能である。その際、スイッチ収容部を追加するために行う加工は、例えばドリルにより金型の表面に球状凹面を形成するだけなので作業を必要最低限に抑えることができる。スイッチ収容部の径は、成形型において最短のランナー溝の長さよりも小さい値であれば、入手可能な磁気スイッチの大きさに合わせて設定することができる。
【0046】
よって、バリエーション商品が企画された場合に、その商品の形態に応じて既存の成形型に任意に追加することができる。また、スイッチ収容部は、磁気スイッチ104を装着する、或いは、装着しないという2つの状態を有しているので、あるバリエーション商品では不要なパーツであって磁気スイッチを装着した後に、更なるバリエーション商品で当該パーツが必要となった場合であっても、磁気スイッチを磁石を使って取り外すだけで同一の成形型を再利用することができるので、スイッチ構造を追加する不利益もない。
【0047】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体材料で形成された成形型に成形材料を注入して、複数のパーツがランナーに接続されて構成される第1の成形物を成形する第1の成形工程と、
前記成形型に成形材料を注入して、第2の成形物であって、前記第1の成形物を構成する前記複数のパーツの一部を含まない第2の成形物を成形する第2の成形工程と
を選択的に実行して成形物を成形する成形方法であって、
前記成形型は、前記複数のパーツの一部に対応する前記成形型の所定部分に対する前記成形材料の流入を、磁気スイッチの着脱により遮断また許容するためのスイッチ収容部を備え、
前記第1の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていないことにより前記成形材料の流入が許容され、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含む前記第1の成形物が形成され、
前記第2の成形工程では、前記スイッチ収容部に磁気スイッチが装着されていることにより前記成形材料の流入が遮断されて、前記所定部分に対応する前記複数のパーツの一部を含まない前記第2の成形物が形成される
ことを特徴とする成形方法。