(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103777
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】膣用固形医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4164 20060101AFI20240725BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K31/4164
A61P15/02
A61K47/38
A61K9/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091958
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2019200764の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018207090
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 真之介
(57)【要約】
【課題】(A)オキシコナゾール及び/又はその塩を含有し、アプリケータに収容されている膣用固形医薬組成物を提供する。
【解決手段】(A)オキシコナゾール及び/又はその塩と、グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子とを共存させ、アプリケータに収容する。(A)オキシコナゾール及び/又はその塩を含有する固形医薬組成物を、アプリケータに収容した場合にも、固形医薬組成物の破損抑制が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び
(B)セルロース類を含有する膣用固形医薬組成物であって、該固形医薬組成物が、アプリケータに収容されており、
アプリケータに該固形医薬組成物を配置した状態で流通及び保管する為の膣用固形医薬組成物。
【請求項2】
(A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(B)セルロース類を含有する固形医薬組成物を調製する工程;及び
該固形医薬組成物を、アプリケータに収容する工程
を含む、膣用固形医薬組成物の製造方法。
【請求項3】
(A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(B)セルロース類を含有する固形医薬組成物、及び該固形医薬組成物を収容したアプリケータを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膣用固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カンジダ・アルビカンスなどのカンジダ属の真菌は皮膚、粘膜、腸管等において、他の常在菌と共に存在している非病原性の真菌である。しかしながら、ステロイド、抗生物質、免疫抑制剤等の薬物の過剰投与、糖尿病や免疫不全等による免疫力の低下、衛生状態の劣悪化等が要因となって、常在菌のバランスが崩れ、カンジダ属が局所的に蔓延すると、皮膚カンジダ症、膣カンジダ症、外陰部カンジダ症、口腔カンジダ症、カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲爪炎、食道・腸管カンジダ症等のカンジダ症が引き起こされる。
【0003】
イミダゾール系抗真菌剤であるオキシコナゾール又はその塩を含む製剤は、このようなカンジダ症の治療に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オキシコナゾール及び/又はその塩を、固形剤にした場合に、特に膣への投与が困難となる場合がある。
【0006】
そこで本発明は、オキシコナゾール及び/又はその塩を含有し、アプリケータに収容した膣用固形医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、オキシコナゾール及び/又はその塩を含有する膣用固形剤を、アプリケータでの使用に適した態様とし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び
(B)セルロース類
を含有する膣用固形医薬組成物であって、該組成物が、アプリケータに収容されている、膣用固形医薬組成物;
[2]前記組成物の1単位当たりの前記(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の含有量が、100~600mgである、前記[1]に記載の膣用固形医薬組成物;
[3]前記(B)セルロース類が、
結晶セルロース及び粉末セルロースからなる群より選択される少なくとも1種のセルロース、及び/又は
セルロースの水酸基の一部を他の置換基で置換した誘導体であって、
(1)置換基がヒドロキシプロポキシ基であるセルロース誘導体、
(2)置換基がカルボキシル基であるセルロース誘導体、
(3)置換基がメチル基であるセルロース誘導体、及び
(4)置換基がヒドロキシプロポキシ基、カルボキシル基、及びメチル基からなる群より選択される2種以上であるセルロース誘導体、からなる群より選択される少なくとも1種のセルロース誘導体の1種以上を含有する、[1]又は[2]に記載の膣用固形医薬組成物;
[4]前記組成物の1単位あたりの前記(B)セルロース類の含有量が0.05~640mgである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[5]前記(A)オキシコナゾール及び/又はその塩100重量部に対し、前記(B)セルロース類を、0.001~1000重量部の割合で含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[6]さらに、乳糖、乳糖水和物、ステアリン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[7]錠剤である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[8](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(B)セルロース類を含有する固形剤を調製する工程;及び
該固形剤をアプリケータに収容する工程を含む、膣用固形医薬組成物の製造方法。
【0009】
本発明は、また、以下の態様を含む。
[9](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び
(C)デンプン類
を含有する膣用固形医薬組成物であって、該組成物が、アプリケータに収容されている、膣用固形医薬組成物;
[10]前記組成物の1単位当たりの(A)成分の含有量が、600mgである、前記[9]に記載の膣用固形医薬組成物;
[11]前記(C)デンプン類が、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸デンプン1000、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン及びバレイショデンプンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記[9]又は[10]に記載の膣用固形医薬組成物;
[12]前記組成物の1単位当たりの(C)成分の含有量が、0.05~640mgである、前記[9]~[11]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[13]前記(A)オキシコナゾール及び/又はその塩100重量部に対し、前記(C)デンプン類を、0.005~640重量部の割合で含有する、前記[9]~[12]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[14]さらに、乳糖、乳糖水和物、ステアリン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、前記[9]~[13]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[15]錠剤である、前記[9]~[14]のいずれかに記載の膣用固形医薬組成物;
[16](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(C)デンプン類を含有する固形剤を調製する工程;及び
該固形剤をアプリケータに収容する工程を含む、膣用固形医薬組成物の製造方法。
【0010】
また、別の実施形態において、本発明は、以下の態様を含む。
[17](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(B)セルロース類を含有する膣用固形医薬組成物、並びにアプリケータを含む、キット;
[18](A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及び(C)デンプン類を含有する膣用固形医薬組成物、並びにアプリケータを含む、キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明の膣用固形医薬組成物は、アプリケータに収容されており、投与の利便性と安全性に資する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
固形剤を配置したアプリケータを膣に挿入し、アプリケータに備えられた押出部材で固形剤をアプリケータの外へ押し出す方法により、膣への投与を衛生的かつ簡易に行い得る。しかしながら、使用者がアプリケータに固形剤を配置する際や、アプリケータに固形剤を配置した状態で製造、流通、保管する際に、固形剤がアプリケータに衝突したり、摩擦が生じ、固形剤が破損する恐れがある。このことは、特に固形剤が錠剤の場合に顕著である。固形剤の破損は、薬剤の有効量の患部への到達を困難にするばかりでなく、固形剤の破損片や破損粒がアプリケータの外筒と押し棒の隙間に入り込んで固形剤が押し出しにくくなることや、アプリケータの内壁に付着して固形剤の押し出しを物理的に阻害するなどの適用上の不都合につながる。さらには、固形剤の破損箇所の凸形状が膣粘膜に刺激や傷を与える場合がある。本発明では、オキシコナゾール及び/又はその塩を含有する固形剤のアプリケータ内での破損を抑制できる。破損を抑制できる固形剤では、固形剤の形状ごとにアプリケータの形状や大きさを変更する必要がないという製造上の利点がある。
【0014】
[膣用固形医薬組成物]
本発明の膣用固形医薬組成物は、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩、及びグルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子を含有し、該組成物が、アプリケータに収容されている、膣用固形医薬組成物に関する。
【0015】
ここで、グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子は、(B)セルロース類又は(C)デンプン類である。
【0016】
((A)オキシコナゾール及び/又はその塩)
オキシコナゾールは、真菌類の細胞膜障害作用を有し、抗真菌作用を発揮するイミダゾール系抗真菌剤である。
【0017】
オキシコナゾールの塩は、薬理学的に又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。オキシコナゾールの塩として、例えば、有機酸塩、無機酸塩、金属塩等の各種の塩が挙げられる。オキシコナゾールの塩は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の好ましいものとしては、オキシコナゾール硝酸塩が挙げられる。
【0018】
(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の用量(投与量)は、本発明の効果を顕著に奏する観点からは、600mg/週である。典型的には、1単位(すなわち固形物1個)あたり100~600mgのオキシコナゾール硝酸塩が含まれる錠剤の形態で提供され、特に好ましくは、600mgの硝酸オキシコナゾールが含まれる錠剤の形態で提供され得る。
【0019】
すなわち、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の含有量は、他の成分の種類や量、服用者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、および剤形等によって異なっていても良いが、膣用固形医薬組成物の総量を基準として、通常8~95質量%、好ましくは12~90質量%、さらに好ましくは15~85質量%、最も好ましくは18~80質量%である。
【0020】
((B)セルロース類)
本発明で用いられるセルロース類としては、通常医薬品に用いられることができるセルロース類であれば特に限定はされず、セルロース又はセルロース誘導体である。ここで、セルロース誘導体とは、セルロースの水酸基の一部を他の置換基で置換した誘導体を指す。このようなセルロース誘導体としては、(1)置換基がヒドロキシプロポキシ基であるセルロース誘導体、(2)置換基がカルボキシル基であるセルロース誘導体、(3)置換基がメチル基であるセルロース誘導体、又は(4)置換基がヒドロキシプロポキシ基、カルボキシル基、及びメチル基からなる群より選択される2種以上であるセルロース誘導体がある。セルロースとしては、結晶セルロース又は粉末セルロースなどのセルロース非誘導体が含まれる。
【0021】
ここで、(1)置換基がヒドロキシプロポキシ基であるセルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロースが例示される。(2)置換基がカルボキシル基であるセルロース誘導体としては、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、カルメロースカルシウム(カルボキシメチルセルロースカルシウム)、又はカルメロースカリウム(カルボキシメチルセルロースカリウム)が例示される。(3)置換基がメチル基であるセルロース誘導体としては、メチルセルロースが例示される。(4)置換基がヒドロキシプロポキシ基、カルボキシル基、及びメチル基からなる群より選択される2種以上であるセルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。置換基がヒドロキシプロポキシ基であるヒドロキシプロピルセルロースとしては、置換されたヒドロキシプロポキシ基の割合は3.0%以上、5.0%以上、8.0%以上、10.0%以上、14.0%以上のいずれでもよく、限定はされない。置換基がヒドロキシプロポキシ基であるヒドロキシプロピルセルロースとしては、置換されたヒドロキシプロポキシ基の割合は85.0%以下、82.0%以下、78.0%以下、70.0%%以下、60.0%以下、55.0%以下、50.0%以下、40.0%以下、30.0%以下、20.0%以下のいずれでも良く、限定はされない。さらには、例えば、場合によって、置換基がヒドロキシプロポキシ基であるヒドロキシプロピルセルロースとして、置換されたヒドロキシプロポキシ基の割合が、5以上20%以下程度、20%以上90%以下程度、あるいは、50%以上85%以下程度であっても良い。本発明で用いられるセルロース類は、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、及びメチルセルロースからなる群より選択される1種以上のセルロース誘導体である。これら(B)成分は、粒子の形状に限定されないが、粒状のものでもよく、粉末状のものであってもよい。また、粒子の大きさ(平均粒子径)はどのようなものであってもよい。
【0022】
本発明の膣用固形医薬組成物における1単位あたりの(B)セルロース類の含有量は、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、通常0.05~950mgとすることができ、好ましくは、0.1~800mg、さらに好ましくは、0.5~650mg、最も好ましくは、1~500mgとすることができる。
【0023】
(B)セルロース類の総含有量は、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の量、(B)成分の種類、他の成分の種類や量等によって異なり得るが、膣用固形医薬組成物の総量を基準として、通常0.001~80質量%とすることができ、好ましくは0.005~70質量%、さらに好ましくは0.01~55質量%、最も好ましくは0.05~45質量%である。
【0024】
また、本発明の膣用固形医薬組成物における(A)オキシコナゾール及び/又はその塩と(B)セルロース類との含有量比は、他の成分の種類や量等に応じて適宜設定でき、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩100重量部に対し、(B)セルロース類を通常0.001~1000重量部とすることができ、好ましくは0.03~900重量部、さらに好ましくは0.1~650重量部、特に好ましくは0.15~500重量部、最も好ましくは0.35~20重量部の割合とすることができる。
【0025】
本発明においてオキシコナゾール及び/又はその塩とセルロース類とを含有する固形組成物の破損が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察できる。オキシコナゾール及び/又はその塩とセルロース類とを含有する固形組成物がアプリケータに配置される際や、アプリケータに配置された固形組成物が製造、流通、保管される際、アプリケータに配置された固形組成物が患部へ押し出される際等に衝突や摩擦等の力が生じ、外部から固形組成物に力が加わると、セルロース類の高次構造である結晶構造、非晶構造、それらの分布等が関連し、固形組成物の内部に伝わる外力が分散されるため破損を抑制することが要因の一つとして考えられる。特に、セルロース類が水酸基の一部を置換したセルロース誘導体である場合、固形組成物におけるセルロース誘導体の高次構造によって、セルロース誘導体とオキシコナゾール及び/又はその塩がより均一に配置されることが破損抑制の要因の一つとして考えられる。水酸基の一部が極性の官能基に置換されたセルロース誘導体では固形組成物を作製する際にオキシコナゾール及び/又はその塩との何らかの相互作用によりオキシコナゾール及び/又はその塩の配置がより均一になり破損が抑制される可能性がある。
【0026】
((C)デンプン類)
本発明で用いられるデンプン類としては、通常医薬品に用いられることができるデンプン類であれば特に限定はされないが、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸デンプン1000、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプ、又はコメデンプンなどが挙げられる。好ましくは、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸デンプン1000、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、及びバレイショデンプからなる群より選択される1種以上である。これら(C)成分は、粒子の形状に限定されないが、粒状のものでもよく、粉末状のものであってもよい。また、粒子の大きさ
(平均粒子径)はどのようなものであってもよい。
【0027】
本発明の膣用固形医薬組成物における1単位あたりの(C)デンプン類の含有量は、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、通常0.05~640mgとすることができ、好ましくは、0.1~480mg、さらに好ましくは、0.5~320mg、最も好ましくは、1~160mgとすることができる。
【0028】
(C)デンプン類の総含有量は、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の量、(C)成分の種類、他の成分の種類や量等によって異なり得るが、膣用固形医薬組成物の総量を基準として、通常0.001~55質量%とすることができ、好ましくは0.01~45質量%、さらに好ましくは0.035~30質量%、最も好ましくは0.05~10質量%である。
【0029】
また、本発明の膣用固形医薬組成物における(A)オキシコナゾール及び/又はその塩と(C)デンプン類との含有量比は、他の成分の種類や量等に応じて適宜設定でき、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩100重量部に対し、(C)デンプン類を通常0.005~640重量部とすることができ、好ましくは0.01~480重量部、さらに好ましくは0.03~390重量部、特に好ましくは0.05~320重量部、最も好ましくは0.15~160重量部の割合とすることができる。
【0030】
(その他の成分)
本発明の膣用固形医薬組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その形態等に応じて、結合剤、賦形剤、滑沢剤、流動化剤等を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して含有することができる。
【0031】
より具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ショ糖、乳糖、乳糖水和物、軽質無水ケイ酸、マンニトール、ソルビトール、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸及びその塩、タルク、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸を例示することができる。
【0032】
この他に、分散剤、乳化剤、安定化剤、緩衝剤、溶解補助剤、pH調節剤、防腐剤(保存剤)、抗酸化剤、着色剤、および香料などを適宜添加してもよい。
【0033】
これらの添加物のなかでも、本発明の効果を安定的に発揮する観点から、乳糖、乳糖水和物、及びステアリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。さらには、乳糖水和物及びステアリン酸マグネシウムの組み合わせを用いることがより好ましい。
【0034】
(アプリケータ)
本発明で用いることができるアプリケータは、膣への挿入に適した形であれば、特に限定はされない。具体的には、挿入物である固形剤を保持しかつ先端部から排出可能な外筒と、該外筒内に移動自在に配置され、その基端部を押圧して前記外筒内に挿入された前記挿入物を前記先端部から排出させる押出部材とを備えたアプリケータである。
【0035】
このようなアプリケータには、限定はされないが、任意に、前記外筒の内周面に被係合部が形成されるとともに、前記押出部材には該押出部材により前記挿入物を前記外筒内の所定の位置に至らせたときに前記被係合部と係合して、前記挿入物の位置を知覚させる係合部が形成されていてもよい。
【0036】
前記係合部と前記被係合部とは、任意に、前記挿入物が前記押出部材により前記外筒の排出待機領域に配置され前記挿入物の排出が開始可能とされたときに互いに係合する位置関係となるよう形成されていてもよい。
【0037】
あるいは、任意に、前記係合部と前記被係合部とは、前記挿入物の先端部が前記押出部材により前記外筒の前記先端部から突出したときに互いに係合する位置関係となるよう形成されていてもよい。
【0038】
任意に、前記係合部と前記被係合部とは、前記挿入物が前記押出部材により押し出され、前記外筒の前記先端部から完全に排出されたときに互いに係合する位置関係となるよう形成されていてもよい。
【0039】
前記係合部は、少なくとも、前記被係合部と係合したときに前記挿入物が前記排出待機領域に配置されたことを知覚させる第1の係合部と、前記被係合部と係合したときに前記挿入物が排出完了したことを知覚させる第2の係合部とにより構成されていてもよい。
【0040】
前記被係合部は、前記挿入物が前記排出待機領域に配置されたことを知覚させる一の凸部と、前記挿入物が前記先端部から突出したことを知覚させる他の凸部とを備えてなり、これら一の凸部と他の凸部とがこの順に前記先端部方向へ向けて隣接配置されていてもよい。
【0041】
前記外筒には、前記第1の係合部が前記凸部に係合したときに、前記第2の係合部に係合して前記押出部材の前記外筒の基端部方向への移動を制限する補助凸部が形成されていてもよい。
【0042】
前記外筒には、前記第1の係合部が前記凸部に係合したときに、前記第2の係合部に係合して前記押出部材の前記外筒の基端部方向への移動を制限する補助凸部が形成されていてもよい。
【0043】
アプリケータの外筒の外径は、膣用固形医薬組成物を収容するため、8~20mmとすることができ、好ましくは9~19mm、さらに好ましくは10~18mmである。外筒の長さは、膣用固形医薬組成物を収容するため、60~150mmとすることができ、好ましくは70~140mm、さらに好ましくは80~130mmである。アプリケータの押出部材の外径は、端部は、9~16mmとすることができ、好ましくは10~15mm、さらに好ましくは11~14mmである。筒部は、9~18mmとすることができ、好ましくは10~17mm、さらに好ましくは11~16mmである。
【0044】
以下、アプリケータの一態様を図を参照して説明する。
【0045】
図1に示すように、本実施形態のアプリケータ1は、挿入物である固形剤2を内部に保持し先端から排出させ得る外筒3と、この外筒3内に移動自在に挿入され、固形剤2をその基端から押圧し移動させる押出部材4とを備えて構成されている。
【0046】
外筒3は有底筒状に形成されたものであり、先端部は半円球状にすぼむように形成され、基端部は外筒3の軸線に対して略垂直な面上で開口され、固形剤2及び押出部材4を挿入できるように形成されている。
【0047】
外筒3の先端部には、
図1に示すように、固形剤2を排出可能な排出孔5と、該排出孔5に連通する複数の切れ目とが形成されており、これら複数の切れ目の間に複数の舌片が形成されている。
この舌片は、押出部材4を外筒3内に挿入して固形剤2を外方へ送り出す際に弾性変形して互いに拡開し、固形剤2が外部へ排出された際に弾性復帰して元の形状に戻るように形成されたものである。
【0048】
複数の切れ目は、各舌片が均等に拡開し得るように、外筒3の先端部3a側から矢印P方向に視て排出孔5から放射線状かつ先端部を周方向に適宜等分(通常6~10等分)するように均等に形成されている。この外筒3の内部は、排出孔5の手前側の一定の領域が固形剤2を排出開始可能とする排出待機領域として設定されている。
【0049】
押出部材4は、固形剤2を外筒3の排出待機領域Wにセットする際に、外筒3内に挿入されて該外筒3内を摺動する摺動部と、該摺動部の基端部に設けられ、固形剤2が排出待機領域Wに配置された状態において外筒3の基端部から外方へ突出し、固形剤2の排出に際してさらに外筒3内に進入して摺動部を前進させる押圧部とを備えて構成されている。
【0050】
また、外筒3先端の保護のために、外筒3の先端3aに被冠させるキャップ等を利用してもよい。
【0051】
アプリケータの外筒及び押出部材を成形する材料は、特に限定はされないが、成形性や本発明の効果を顕著に奏する観点から、ポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル共重合体及びエチレンビニルアルコール共重合体などを含有する合成樹脂が挙げられる。好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンであり、さらに好ましくはポリエチレンであり、特に好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0052】
[製剤と製造方法]
本発明の膣用固形医薬組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、又はこれらの原料[例えば、医薬製剤、医薬部外品製剤]であることができるが、特に好ましくは医薬品である。
【0053】
本発明の膣用固形医薬組成物は、その製剤形態に応じて、通常の製剤化の方法を採用して固形剤の形態に製造することができる。固形製剤の形状や大きさには特に限定はなく、例えば、膣用錠剤、特には、膣錠であり得る。
【0054】
例えば、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩及びグルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である(B)セルロース類、及び/又は(C)デンプン類、並びにその他の成分を、造粒(例えば、押出し造粒、流動層造粒又は噴霧乾燥式造粒等)、乾燥、及び篩過して顆粒剤を製造できる。造粒物はさらにコーティング剤によって被覆されていてもよい。好ましくは、このような造粒物をさらに打錠工程に供し、錠剤を製造することができる。ここで、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩及びグルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である(B)セルロース誘導体、及び/又は(C)デンプン類、並びにその他の成分が十分に混合される方法を採用することが好ましい。
【0055】
本発明の膣用固形医薬組成物は、当業者に公知の方法に従って、より簡易に錠剤などの固形製剤としての剤形に調製することができる。錠剤を調製する場合、上記化合物(A)オキシコナゾール及び/又はその塩及び(B)セルロース類、及び/又は(C)デンプン類、並びにその他の成分を十分に混合し、混合物をそのまま打錠工程に供することもできる。
【0056】
打錠工程は、典型的には、圧力を加えて、圧縮成形することができ、通常の打錠機などを好ましく用い得る。錠剤の表面にコーティング層を設けることができ、従来知られたコーティング方法を用いることができる。多層錠とすることもできる。
【0057】
固形製剤の形状や大きさには特に限定はなく、例えば、膣用錠剤、特には、膣錠であり得る。膣用錠剤は、膣に挿入する際に固形であり、膣において体温や分泌液によって崩壊することが望ましい。形状は限定されないが、矢尻形、カプレット形、円錐形、紡錘形、アーモンド形、球形、又は卵形などであり得る。このうち、特に、矢尻形であって、長径方向の片側の先端部に向けて次第に細くなり、かつ該片側と反対側の端部に窪みを有する膣用錠剤が好ましい。錠剤のサイズは限定はされないが、縦径(長径)10~30mm、横径(短径)5~15mm、厚さ1~15mmの矢尻形が特に好ましい。錠剤の硬度は、限定はされないが、30N以上であり得る。本発明の膣用固形医薬組成物はコーティングされていてもよい。
【0058】
[キット]
本発明の膣用固形医薬組成物は、典型的には、膣用錠剤として、アプリケータに収容する。最も好ましくは、膣挿入可能な材料で成形された、膣用アプリケータとともにキットとしての形態で提供される。キットは、膣用錠剤がアプリケータに収容されている態様であり得る。別の態様では、使用者がアプリケータに固形剤を配置することができるように、膣用錠剤とアプリケータを別々に1つのキット内に提供することもできる。キットに含まれる膣用錠剤とアプリケータの条件、すなわち、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の量、グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である(B)セルロース類及び/又は(C)デンプン類の種類や量、その他の成分の種類や量は、上記の[膣用固形医薬組成物]の場合と同様である。
【0059】
[適用]
本発明の膣用固形医薬組成物は、適用対象として、カンジダ症が主な症状になる。例えば、膣カンジダ症に対して治療又は予防の為に適用することができる。膣カンジダ症の治療を目的として使用してもよく、また、膣カンジダ症の予防や再発防止を目的として使用してよい。なお、限定はされないが、膣カンジダの再発治療が特に好ましい適用対象である。
【0060】
これまで、膣粘膜を通した経粘膜投与可能な形態は、少ない投与回数を可能とする固形物、特に錠剤が好ましい。このような固形物の膣への投与を1日1回又は1回複数錠の形態で行うこともできる。しかしながら、固形物の形態では、投与が負担となる場合があり、そのような場合には、本発明では、多量の(A)オキシコナゾール及び/又はその塩を含有する膣用錠剤を提供することもできる。このような膣用錠剤は、週1回で、1回1錠のみの投与での効果持続をも可能とし、患者のQOLの向上にも資する。
【0061】
すなわち、本発明の膣用固形医薬組成物の投与量や投与頻度については、該組成物の使用目的、カンジダ症の種類や症状の程度、使用する他の成分の種類、使用者の年齢等に応じて適宜設定され得るが、典型的には、週1回の投与を可能にする、有効成分が600mg含まれる1単位(1錠)の錠剤(膣用錠剤)を投与することが好ましい。
【0062】
[破損抑制能を膣用固形医薬組成物に付与する方法]
本発明の膣用固形医薬組成物は、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩とグルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である(B)セルロース類及び/又は(C)デンプン類とが膣用固形医薬組成物において共存することによって、アプリケータに収容した際の破損抑制能が付与され得る。
【0063】
すなわち、本発明により、(A)オキシコナゾール及び/又はその塩と、グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である(B)セルロース類及び/又は(C)デンプン類とを膣用固形医薬組成物に共存させることを含む、破損抑制能を該膣用固形医薬組成物に付与する方法を提供することが可能である。(A)オキシコナゾール及び/又はその塩の量、(B)セルロース類及び/又はデンプン類の種類や量、その他の成分の種類や量は、上記の[膣用固形医薬組成物]の場合と同様である。
【実施例0064】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[試験例1:破損評価(1)]
表1に示す錠剤を同一の常法によって調製した。錠剤の形状は同一で、縦径13mm、横径6.5mm、厚さ5.9mmのカプレット形とした。2個をアプリケータの排出待機領域に配置した。ここで、アプリケータとしては、外筒の外径15mm、外筒の長さ105mm、押出部材の端部外径11mmであって、外筒における排出待機領域の長さは23mmであるものを用いた。外筒及び押出部材はPEを含有する樹脂で成形された。
【0066】
各成分は、第十七改正日本薬局方に収載される項目を満たすものを用いた。固形剤の排出孔が地面に向き、アプリケータの縦長の軸が地面に垂直方向となる向きになるようにアプリケータを振とう機(KMシェイカーV-DX、株式会社イワキ製)に固定し、350spmで10分間振とうした。アプリケータの排出孔が下向きである為、破損片や破損粒が生じればアプリケータの外に落下する。振とう前後の重量(アプリケータ及びアプリケータ内の錠剤の総重量)を測定し、下記式1により重量変化率を算出した。
[式1]重量変化率(%)={1-(振とう後の重量)/(振とう前の重量)}×100
【0067】
この操作を別々のアプリケータを用いて3回行い、重量変化率の3回の平均を算出し、試験例の重量変化率とした。結果を表1に併せて示す。
【0068】
[試験例2:破損評価(2)]
次に、アプリケータ内で破損した錠剤の形状を評価した。
試験例1を行った後の錠剤は、同一の処方では同様の状況であった。そこで、試験例1を行った後の錠剤のうち、同一処方について任意の錠剤3個の表面と、破損によって生じた凹部との境界に、指先を滑らせ、評価基準に従って評価した。結果を表1に併せて示す。◎:3個のすべてについて指先に引っかかりを感じず、膣に適用するために良好であると感じる。○:2個について指先に引っかかりを感じない。1個について僅かに指先に引っかかりを感じるが、錠剤表面と破損の境界は滑らかで膣に適用するために全く問題はないと感じる。△:2個について指先に引っかかりを感じない。1個について指先に引っかかりを感じるが、膣に適用するために問題はないと感じる。×:3個又は2個に指先に引っかかりを感じる。
【0069】
表1に示す通り、以下のことが明らかになった。
オキシコナゾール及び/又はその塩とヒドロキシプロピルセルロースとを共存する処方1~4は、重量変化が少なく良好で、固形剤面の滑らかさも良好であることが見出された。錠剤表面と破損の境界が鋭い場合には、使用時に粘膜を傷つける恐れがあり、危険であるが、本実施例の態様では、このようなリスクが低いことが確認された。
オキシコナゾール硝酸塩600mg、ヒドロキシプロピルセルロース60mg、結晶セルロース80mg、乳糖水和物368mg、ステアリン酸マグネシウム30mgを含有する合計1138mgの矢尻形(縦径21mm、横径11mm、厚さ9mm)の錠剤1個を試験例1と同じアプリケータに配置し、試験例1を行ったところ、処方1より重量変化率の値は低く、良好な結果であった。
【0070】
ヒドロキシプロピルセルロースを、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸デンプン1000、アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンにそれぞれ入れ替えて処方1及び2と同様の試験を行ったところ、重量変化は抑制され、固形剤表面の滑らかさも使用に耐えうる程度であった。
【0071】
【0072】
[製造例]
表2に記載される処方例について、常法に従い、錠剤を調製し、アプリケータ内に収容した。表中の重量は、1錠の含有量とした。
【0073】