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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103786
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】入庫時安全確認装置と方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20240725BHJP
   E04H 6/18 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/18 601G
E04H6/18 601F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092336
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2020157461の分割
【原出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】巽 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂野 瑛彦
(57)【要約】
【課題】リモート車両とノーマル車両が入庫する場合に、乗降室内に車又は人が進入したことを検知して記憶し、入庫後に記憶を確実かつ安全に解除できる入庫時安全確認手段を提供する。
【解決手段】入庫時において、出入口扉の開後に、ノーマル車両の運転手が入庫操作(S7)を開始し、又は、リモート車両の運転手が遠隔操作を開始(T4)して入庫操作を実施する。入庫操作中に、乗降室2への車両の進入を検出して在室記憶Aをセットし(S10)、在室記憶のセット中は出入口扉3の閉動作をインターロックする。次いで、ノーマル車両の場合には、乗降室からの人の退出を検出して在室記憶をリセットし(S13)、リモート車両の場合には、運転手による遠隔操作終了の確認(T6)により在室記憶をリセットする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手が目視で車を確認しながら遠隔操作可能なリモート車両又は前記運転手が乗車して操作するノーマル車両の車両が乗降室に入庫する機械式駐車装置の入庫時安全確認装置であって、
前記乗降室の出入口扉を前記車両又は人が通過したことを検出する通過検出装置と、
前記出入口扉の開閉を制御する開閉制御装置と、を備え、
前記開閉制御装置は、
(A)前記出入口扉の開後に、前記ノーマル車両の前記運転手が入庫操作を開始し、又は、前記リモート車両の前記運転手が遠隔操作を開始して入庫操作を開始し、
(B)入庫操作中に、前記通過検出装置により前記乗降室への前記車両の進入を検出して在室記憶をセットし、該在室記憶のセット中は前記出入口扉の閉動作をインターロックし、
次いで、
(C)前記ノーマル車両の場合には、前記通過検出装置により前記乗降室からの人の退出を検出して前記在室記憶をリセットし、前記リモート車両の場合には、前記運転手による遠隔操作終了の確認により前記在室記憶をリセットし、
(D)前記在室記憶がリセットされた後、前記インターロックを解除して前記出入口扉の閉動作を可能にする、入庫時安全確認装置。
【請求項2】
前記通過検出装置は、
前記出入口扉の近傍の前記車両又は人を検出する扉閉保護装置と、
前記扉閉保護装置より内側の前記車両又は人を検出する侵入検知装置と、を有し、
前記開閉制御装置は、前記扉閉保護装置が非検出になり、かつ、前記侵入検知装置のみが検出することで、前記通過検出装置の検出と判断する、請求項1に記載の入庫時安全確認装置。
【請求項3】
前記乗降室内の異常又は正常を検出する庫内センサを備え、
前記インターロックが解除された後、
前記庫内センサにより、前記正常を検出する場合は、前記出入口扉の閉動作を開始し、前記異常を検出する場合は、前記出入口扉の閉動作を開始せずに、安全確認を促す、請求項1に記載の入庫時安全確認装置。
【請求項4】
前記庫内センサは、前記乗降室内の乗降領域にミリ波を照射して生体を検出する生体検出装置を有し、
前記リモート車両の前記遠隔操作終了の確認の後、生体を検出しない場合に前記在室記憶をリセットする、請求項3に記載の入庫時安全確認装置。
【請求項5】
前記庫内センサは、生体から発せられる遠赤外線を検出するパッシブセンサを有する、請求項4に記載の入庫時安全確認装置。
【請求項6】
前記庫内センサは、さらに、在庫検出装置、車両位置検出装置、半ドア検知装置、又は庫内カメラを有する、請求項5に記載の入庫時安全確認装置。
【請求項7】
運転手が目視で車を確認しながら遠隔操作可能なリモート車両又は前記運転手が乗車して操作するノーマル車両の車両が乗降室に入庫する機械式駐車装置の入庫時安全確認方法であって、
前記乗降室の出入口扉を前記車両又は人が通過したことを検出する通過検出装置と、
前記出入口扉の開閉を制御する開閉制御装置と、を準備し、
前記開閉制御装置は、
(A)前記出入口扉の開後に、前記ノーマル車両の前記運転手が入庫操作を開始し、又は、前記リモート車両の前記運転手が遠隔操作を開始して入庫操作を開始し、
(B)入庫操作中に、前記通過検出装置により前記乗降室への前記車両の進入を検出して在室記憶をセットし、該在室記憶のセット中は前記出入口扉の閉動作をインターロックし、
次いで、
(C)前記ノーマル車両の場合には、前記通過検出装置により前記乗降室からの人の退出を検出して前記在室記憶をリセットし、前記リモート車両の場合には、前記運転手による遠隔操作終了の確認により前記在室記憶をリセットし、
(D)前記在室記憶がリセットされた後、前記インターロックを解除して前記出入口扉の閉動作を可能にする、入庫時安全確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の乗降室へリモート車両とノーマル車両が入庫する際の入庫時安全確認手段に関する。
【背景技術】
【0002】
「リモート車両」とは、運転手が目視で車を確認しながら遠隔操作可能な車両(例えば乗用車)である。例えば並列駐車や縦列駐車の場合に、運転手は車両から降り、車両の外部からスマートフォン等のアプリで、車両を駐車することができる。
近年、かかるリモート車両(又は、「リモートパーキング車両」)が、実用化され販売されている。
なお以下、「リモート車両」に対して、運転手が乗車して操作する車両を「ノーマル車両」(又は、「通常車両」)と呼ぶ。
【0003】
機械式駐車装置(例えば、エレベータ方式、垂直循環方式、等)には、車両が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室と、乗降室へ車両が出入するための出入口扉が設けられている。
機械式駐車装置の乗降室へ車両が入庫する際には、安全性を確保するために、人が乗降室内に残っていないことを確認し、出入口扉を全閉する必要がある。
【0004】
なお、通常車両と自動運転車両の混在による安全性の低下を防止することを目的として、例えば特許文献1が提案されている。
【0005】
特許文献1には、「運転手は、駐車建屋の出入口から出て操作盤から出入口扉を閉じる操作を行う」と記載されている。また、「自動運転移動処理部は、ふさわしいタイミングのステップで出入口扉閉操作信号を出入口扉閉処理部に与えると、出入口扉が自動で閉状態とされる。」と記載されている。
しかし、「ふさわしいタイミング」に関しては、「例えばその完了信号を出入口扉閉操作信号として出入口扉閉処理部に与えるなどの処理を行う。」と記載しているにすぎない。
また、特許文献1の自動運転車両は、無人運転ができる自動運転車であり、上述したリモート車両とは相違する。
そのため、特許文献1を適用しても、リモート車両と通常車両(ノーマル車両)が入庫する際の安全性を確保することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-26619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、車両は通常車両(ノーマル車両)のみであり、入庫する際の安全性の確保のため、機械式駐車場の出入口扉付近に、乗降室への車両又は人の進入を検知する入庫時保護装置を設置していた。
従来の入庫時保護装置は、運転手が車両を運転して、乗降室内へ入庫した際に、乗降室内に車両又は人が進入したことを検知して在室記憶をセットし、入庫後に、運転手のみが乗降室外へ退出したことを検出して在室記憶をリセットする。
また在室記憶のセット中は、運転手が扉閉を操作しても、インターロックにより扉を閉めることができないようになっている。
【0008】
この構成により、車両が通常車両のみの場合、人が乗降室内に残っている間は、運転手が扉閉を操作しても、扉を閉めることができないため、乗降室へ車両が入庫する際の安全性を確保することができる。
【0009】
しかし、入庫時保護装置を設置した従来の乗降室へリモート車両が入庫する場合、以下の問題点があった。
リモート車両を乗降室内に駐車をする際に、運転手が乗降室の外で車両から降車し、リモート車両を乗降室の外側から遠隔操作して駐車する。この場合、リモート車両が乗降室内に進入したことを検知して在室記憶をセットすることはできるが、運転手が乗降室の外にいるため、入庫後の運転手の退出を検知することができない。そのため、在室記憶がリセットされず、扉を閉めることができない。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、リモート車両とノーマル車両が入庫する場合に、乗降室内にいずれかの車両又は人が進入したことを検知して記憶し、車両の入庫後に前記記憶を確実かつ安全に解除できる入庫時安全確認手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、運転手が目視で車を確認しながら遠隔操作可能なリモート車両又は前記運転手が乗車して操作するノーマル車両の車両が乗降室に入庫する機械式駐車装置の入庫時安全確認装置であって、
前記乗降室の出入口扉を前記車両又は人が通過したことを検出する通過検出装置と、
前記出入口扉の開閉を制御する開閉制御装置と、を備え、
前記開閉制御装置は、
(A)前記出入口扉の開後に、前記ノーマル車両の前記運転手が入庫操作を開始し、又は、前記リモート車両の前記運転手が遠隔操作を開始して入庫操作を開始し、
(B)入庫操作中に、前記通過検出装置により前記乗降室への前記車両の進入を検出して在室記憶をセットし、該在室記憶のセット中は前記出入口扉の閉動作をインターロックし、
次いで、
(C)前記ノーマル車両の場合には、前記通過検出装置により前記乗降室からの人の退出を検出して前記在室記憶をリセットし、前記リモート車両の場合には、前記運転手による遠隔操作終了の確認により前記在室記憶をリセットし、
(D)前記在室記憶がリセットされた後、前記インターロックを解除して前記出入口扉の閉動作を可能にする、入庫時安全確認装置が提供される。
【0012】
また本発明によれば、運転手が目視で車を確認しながら遠隔操作可能なリモート車両又は前記運転手が乗車して操作するノーマル車両の車両が乗降室に入庫する機械式駐車装置の入庫時安全確認方法であって、
前記乗降室の出入口扉を前記車両又は人が通過したことを検出する通過検出装置と、
前記出入口扉の開閉を制御する開閉制御装置と、を準備し、
前記開閉制御装置は、
(A)前記出入口扉の開後に、前記ノーマル車両の前記運転手が入庫操作を開始し、又は、前記リモート車両の前記運転手が遠隔操作を開始して入庫操作を開始し、
(B)入庫操作中に、前記通過検出装置により前記乗降室への前記車両の進入を検出して在室記憶をセットし、該在室記憶のセット中は前記出入口扉の閉動作をインターロックし、
次いで、
(C)前記ノーマル車両の場合には、前記通過検出装置により前記乗降室からの人の退出を検出して前記在室記憶をリセットし、前記リモート車両の場合には、前記運転手による遠隔操作終了の確認により前記在室記憶をリセットし、
(D)前記在室記憶がリセットされた後、前記インターロックを解除して前記出入口扉の閉動作を可能にする、入庫時安全確認方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出入口扉の開後に、ノーマル車両の運転手が入庫操作を開始し、又は、リモート車両の運転手が遠隔操作を開始して入庫操作を開始する。
従って、ノーマル車両の場合には、従来と同様に運転手が車両を運転して入庫操作ができ、リモート車両の場合は、運転手が乗降室の外で車から降車し、乗降室の外側から遠隔操作して入庫操作をすることができる。
【0014】
また、入庫操作中に、通過検出装置により乗降室への車両の進入を検出して在室記憶をセットし、在室記憶のセット中は出入口扉の閉動作をインターロックする。
従って、ノーマル車両とリモート車両の両方において、在室記憶のセット中は、運転手が扉閉を操作しても、インターロックにより扉を閉めることができないようになる。
【0015】
次いで、ノーマル車両の場合には、通過検出装置により乗降室からの人の退出を検出して在室記憶をリセットし、リモート車両の場合には、運転手による遠隔操作終了の確認により在室記憶をリセットする。
従って、ノーマル車両とリモート車両の両方において、入庫操作が終了した後に、在室記憶をリセットすることができる。
【0016】
上述したように、本発明によれば、リモート車両とノーマル車両が入庫する場合に、乗降室内にいずれかの車両又は人が進入したことを検知して記憶(在室記憶:セット)し、車両の入庫後に記憶を確実かつ安全に解除(在室記憶:リセット)できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】入庫時安全確認装置の実施形態図である。
図2】入庫時安全確認方法の開始から記憶セットまでのフロー図である。
図3】入庫時安全確認方法の記憶セットから記憶リセットまでのフロー図である。
図4】入庫時安全確認方法の記憶リセットから終了までのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、入庫時安全確認装置50の実施形態図である。
この図において、Mは運転手(人)、1は車両、2は乗降室、3は出入口扉、4はパレット(又は車両1の乗降領域)、50は入庫時安全確認装置、100は機械式駐車装置である。
運転手Mは、適切な指導と教育を受けた装置操作者であるのがよい。
【0020】
入庫時安全確認装置50は、リモート車両1R又はノーマル車両1Nの車両1が乗降室2に入庫する際の安全確認装置である。入庫時安全確認装置50は、在室記憶Aのセット中は、運転手Mが扉閉を操作しても、インターロックにより扉を閉めることができないようして、入庫時の安全性を確保する機能を有する。
在室記憶Aとは、乗降室2の内部に人がいるか否かの記憶状態であり、セット時とは人がいる可能性が高い状態、リセット時とは人がいる可能性が低い状態を意味する。在室記憶Aは、好ましくはコンピュータ内で2値(0と1)で記憶される。
【0021】
車両1は、リモート車両1R又はノーマル車両1Nである。
リモート車両1Rは、運転手Mが目視で車を確認しながら遠隔操作可能な車両である。かかる駐車を「リモートパーキング」と呼ぶ。リモート車両1Rの遠隔操作は、車両(例えば乗用車)の外部からスマートフォン等のアプリで実施するのがよい。
ノーマル車両1Nは、運転手Mが乗車して操作(駐車)する通常の車両である。
【0022】
乗降室2は、この例で機械式駐車装置100の入出庫フロアである。入出庫フロアは、この例では壁2aで四方が囲まれた矩形平面であり、車両1及び運転手Mが出入りする出入口2bを有する。出入口扉3は、出入口2bを開閉するために設けられている。
機械式駐車装置100は、例えばエレベータパーキングであるが、乗降室2を有する他の機種、例えば、垂直循環方式であってもよい。
【0023】
図1において、入庫時安全確認装置50は、乗降室2の出入口扉3を車両1又は人が通過したことを検出する通過検出装置10と、出入口扉3の開閉を制御する開閉制御装置20と、を備える。
【0024】
通過検出装置10は、この例で扉閉保護装置11と侵入検知装置12を有する。
扉閉保護装置11は、出入口扉3の近傍の車両1又は人Mを検出する。扉閉保護装置11は、例えば出入口扉3の全幅に沿ってレーザ光を照射する光電センサである。
侵入検知装置12は、扉閉保護装置11より内側の車両1又は人Mを検出する。侵入検知装置12は、例えば扉閉保護装置11の内側に乗降室2の全幅に沿ってレーザ光を照射する光電センサである。
なお、扉閉保護装置11及び侵入検知装置12は、光電センサに限定されず、例えばライトカーテン、2次元レーザースキャナー、3次元レーザーレーダー、画像検出装置、等であってもよい。
【0025】
開閉制御装置20は、例えば入力装置、出力装置、記憶装置、及び演算装置を有するコンピュータ(PC)である。
開閉制御装置20は、入力装置及び出力装置として、入庫モード選択器22を有する。入庫モード選択器22は、例えばディスプレイ装置に表示された操作盤であり、ノーマル車両1N又はリモート車両1Rを選択するようになっている。
この選択は、運転手Mによるのが好ましいが、リモート車両1R又はノーマル車両1Nを自動判別して自動で選択してもよい。
【0026】
また、開閉制御装置20は、扉閉保護装置11が非検出になり、かつ、侵入検知装置12のみが検出することで、通過検出装置10の検出と判断する。
【0027】
図1において、入庫時安全確認装置50は、さらに乗降室内の異常又は正常を検出する庫内センサ13を備える。
庫内センサ13は、この例で生体検出装置14とパッシブセンサ15を有する。
生体検出装置14は、乗降室内の乗降領域にミリ波を照射して生体(例えば人M)を検出するミリ波センサである。
パッシブセンサ15は、生体(例えば人M)から発せられる遠赤外線を検出する赤外線受動センサである。
【0028】
図1において、庫内センサ13は、さらに在庫検出装置16、車両位置検出装置17、半ドア検知装置18、又は、庫内カメラ19を有する。
在庫検出装置16は、例えば乗降室内の乗降領域にレーザ光を照射して車両1の有無を検出する光電センサである。
車両位置検出装置17は、例えば乗降室内の乗降領域の前後及び左右にレーザ光を照射して車両1のはみだしの有無を検出する光電センサである。
半ドア検知装置18は、例えば乗降室内の乗降領域の車両1の左右にレーザ光を照射して車両1の半ドアの有無を検出する光電センサである。
庫内カメラ19は、例えば乗降室内を撮影する監視カメラである。
なお、在庫検出装置16、車両位置検出装置17、及び半ドア検知装置18は、光電センサに限定されず、例えばライトカーテン、2次元レーザースキャナー、3次元レーザーレーダー、画像検出装置、等であってもよい。
【0029】
(センサの故障検出)
なお、各センサは、故障する可能性があるため、「状態が健全」の場合に信号を出力するように設定することが好ましい。この構成により、故障時は信号を出力しない(OFF)状態となり、インターロックの動作状態にできる。これにより、庫内の安全装置が不完全な状態での動作を未然に防ぐことができる。
従って、各センサは、検出と健全の判断のどちらも同時に実施していることになる。
【0030】
図2図4は、本発明による入庫時安全確認方法の全体フロー図である。
このうち、図2は開始から記憶セットまで、図3は記憶セットから記憶リセットまで、図4は記憶リセットから終了までのフロー図である。
入庫時安全確認方法は、上述した入庫時安全確認装置50を準備して実施する。
【0031】
(ノーマル車両1Nの場合)
初めに、ノーマル車両1Nの場合を説明する。
ノーマル車両1Nの場合、図2図4において、S1~S22の各ステップ(工程)を実行する。
【0032】
図2において、S1で車両1を出入口扉前に停車し、S2で運転手Mが操作認証し、S4で入庫呼び操作をし、S5で出入口扉3が開く。
次いで、「ノーマル車両」の場合、出入口扉3の開後(好ましくは全開後)、S6で運転手Mが運転を開始し、S7で入庫操作を実施する。また、S7と並行して、S8で扉閉保護装置11が非検出(NO)になり、かつ、S9で侵入検知装置12のみが検出(YES)することで車両1の通過を検出し、S10で在室記憶Aをセットする。在室記憶Aのセット中は出入口扉3の閉動作をインターロックする。
【0033】
上述したように、本発明では、扉閉保護装置11が非検出、かつ侵入検知装置12のみが検出することにより、通過検出装置10の検出と判断する。
この条件により、庫内への車両、あるいは人の通過を検出できる。
なお、この検出の効力を最大限発揮させるためには、扉開に付随して検出を有効化、扉閉に付随して検出を無効化することが望ましい。
【0034】
上述した方法により、ノーマル車両1Nの場合には、従来と同様に運転手Mが車両1を運転してS6,S7で入庫操作ができる。
【0035】
また、入庫操作中に、通過検出装置10(=扉閉保護装置11と侵入検知装置12)により乗降室2への車両1の進入を検出して在室記憶Aをセットし、在室記憶Aのセット中は出入口扉3の閉動作をインターロックする。
従って、在室記憶Aのセット中は、運転手M以外が扉閉を操作しても、インターロックにより扉を閉めることができないようになる。
【0036】
図3において、「ノーマル車両」の場合、S11で運転手Mが乗降室2から退出する。またS11と並行して、S12で扉閉保護装置11が人(運転手Mの退出)を検出する場合(YES)、S13で在室記憶Aをリセットする。
在室記憶Aがリセットされると、インターロックが解除され出入口扉3の閉動作が可能となる。
またS12で運転手Mの退出を検出しない場合には、S12を繰り返す。
【0037】
上述した方法により、ノーマル車両1Nの入庫操作が終了した後に、通過検出装置10により乗降室2からの人の退出を検出して在室記憶Aをリセットするので、インターロックを解除して出入口扉3の閉動作を可能にできる。
【0038】
図4において、S14で運転手Mが庫内安全確認を行い、S15で操作認証し、S16で庫内センサ13が正常である場合(YES)、S17で出入口扉3の閉動作を開始する。
【0039】
次いで、ノーマル車両1Nの閉動作中に、S18,S19,S20で扉閉保護装置11、侵入検知装置12、パッシブセンサ15による検知又は検出を継続する。S21の出入口扉閉限までに、S18,S19,S20のいずれも検出しない(NO)の場合に、本発明の方法を終了する。
また、S18,S19,S20で人を検出する場合(YES)は、S22で異常を発報し装置を停止する。
【0040】
上述した方法により、ノーマル車両1Nの閉動作中に、S21の出入口扉閉限までS18,S19,S20で検知又は検出を継続するので、出入口扉3を安全に全閉することができる。
【0041】
(運転手Mが入室中に他の人が入室した場合)
S10で在室記憶Aがセットされた後、運転手Mが入室中(記憶中)に他の人が入室すると、S12でYESとなり、S13で在室記憶Aがリセットされる可能性がある。
しかし、機械式駐車装置内には、複数のセンサ(例えば庫内センサ13)が設置されている。S16でこれらすべてのセンサが「人を検出していない」という結果にならない限りは、S14,S15を繰り返し、庫内の無人確認を運転手Mに求め、S17の出入口扉3の閉動作が開始できないようにインターロックが作動する。
例えば、庫内に設置されたパッシブセンサ15が、人体から発せられる遠赤外線を検出しインターロックが作動する。
【0042】
(車両1の同乗者が庫内に残ったままの場合)
S11で運転手Mが退出し、車両1の同乗者が庫内に残ったままの場合、S16で庫内センサ13が異常を検出し、S14に戻り、運転手Mに安全確認を促す。同乗者が庫内にいる場合はパッシブセンサ15で検出できる。また同乗者が車内にいる場合には生体検出装置14で検出できる。生体検出装置14は、人体から生じる呼吸などの微細な振動を検出することで、車内1の人(等の生物)の残留を判別する。
【0043】
(運転手Mが入室中に、運転手M又は同乗者が複数回出入りする場合)
複数のセンサ(例えば庫内センサ13)が多角的に、庫内の人の有無を検出しており、一つでも人体を検出していればS16で上述したインターロックが作動する。ただし、上述の通り、最終的な判断は,「適切な指導・教育を受けた装置操作者」に委ねることが好ましい。従って、一般的な使用においては、誤動作は生じない。
しかし、以下のような特殊な場合は、誤動作が生じる可能性がある。
(1)庫内のセンサを覆い隠す、(2)遠赤外線を遮断する特殊な衣服を全身にまとって装置内に侵入する、(3)人体から生じる呼吸などの微細な振動をすべて遮断する甲冑などをまとって装置内に侵入する、等。
【0044】
(リモート車両1Rの場合)
次に、リモート車両1Rの場合を説明する。
リモート車両1Rの場合、図2図4において、T1~T8の各ステップ(工程)を追加で実行する。
【0045】
図2において、S1~S2は、ノーマル車両1Nの場合と同じである。
次いで、T1の操作盤表示により、S4で入庫呼び操作をし、S5で出入口扉3が開く。
【0046】
次に、「リモート車両」の場合、T4で運転手Mが遠隔操作を開始し、S7で入庫操作を実施する。S7の入庫操作は遠隔操作による。
なお、S7と並行するS8~S10はノーマル車両1Nの場合と同じである。
ここでいう「遠隔操作」とは、いわゆる自動運転車両のことではない。運転者が目視で車を確認しながら、専用キーやスマートフォンなどを使用して車両1をリモートコントロール(遠隔操作)することを意味する。
【0047】
上述した方法により、リモート車両1Rの場合は、運転手Mが乗降室2の外で車両1から降車し、乗降室2の外側から遠隔操作して入庫操作をすることができる。
【0048】
図3において、T5で「リモート車両」の場合、T6で運転手Mにより遠隔操作終了を確認し、T7で生体検出装置14が検出しない(NO)の場合に在室記憶Aをリセットする。
在室記憶Aがリセットされると、インターロックが解除され出入口扉3の閉動作が可能となる。
またT7で生体検出装置14が検出する(YES)の場合には、T7を繰り返す。
従って、リモート車両1Rの場合も、入庫操作が終了した後に、在室記憶Aをリセットすることができる。
【0049】
図4において、S14~S17は、ノーマル車両1Nの場合と同じである。
なお、S14において、物理的な操作(例えば押ボタン)は同一であるが、「適切な指導・教育を受けた装置操作者」に対して、何を確認させるかという「ボタンを押す行為の意味合い」は異なる。
リモート車両1Rの場合は「遠隔操作が終了したこと=車がこれ以上は動かないこと」を操作者に確認させる。操作者がこの操作を実施後、装置は庫内の安全機構を稼働させ、庫内が無人であるかどうかの判断を開始する。その後、ノーマル車両1Nの場合と同様に、操作者に庫内の無人を確認させ、全センサのインターロックの動作がなく、無人の承認を得られた場合にのみ、装置がS19の閉動作を開始する。
【0050】
次いで、リモート車両1Rの閉動作中に、ノーマル車両1Nの場合のS18、S19、S20による検知又は検出の継続に加えて、T8で生体検出装置14による検出も継続する。S21の出入口扉閉限までに、いずれも検出又は検出しない(NO)の場合に、本発明の方法を終了する。
また、S18,S19,S20,T8で人を検出する場合(YES)は、S22で異常の発報をし装置を停止する。
【0051】
上述した方法により、リモート車両1Rの閉動作中に、S21の出入口扉閉限までS18,S19,S20,T8で検知又は検出を継続するので、出入口扉3を安全に全閉することができる。
【0052】
(生体検出装置14をノーマル車両1Nに使用しない理由)
T7,T8の生体検出装置14による検出をノーマル車両1Nに適用しない理由は、有人での入庫(ノーマル車両1N)は既存の技術ですでに安全性が確立されているため、通常の運用ではさらにセンサを加える必要はないためである。なおさらに安全性を高めるために、T7,T8の生体検出装置14による検出をノーマル車両1Nに適用してもよい。
【0053】
(自動運転車の場合)
無人運転ができる自動運転車の場合、運転手Mは自動運転車の動作を確認せずに「運転手Mが車から降車し、そのまま目的地に向かう」ことができる。
この場合、上述したT2,T4,又はT6の操作を省略することができる。
なお、上述した実施形態は、あくまで、「遠隔操作(リモートコントロール)による機械式駐車場への駐車」を対象としている。そのため車両1が人の監視もなく自動的に駐車を開始することはできない。
【0054】
上述した実施形態によれば、ノーマル車両1Nの場合には、従来と同様に運転手Mが車両1を運転して入庫操作ができ、リモート車両1Rの場合は、運転手Mが乗降室2の外で車両1から降車し、乗降室2の外側から遠隔操作して入庫操作をすることができる。
【0055】
また、ノーマル車両1Nとリモート車両1Rの両方において、在室記憶Aのセット中は、運転手Mが扉閉を操作しても、インターロックにより扉を閉めることができないようになる。
【0056】
さらに、ノーマル車両1Nとリモート車両1Rの両方において、入庫操作が終了した後に、在室記憶Aをリセットすることができる。
【0057】
従って、本発明によれば、リモート車両1Rとノーマル車両1Nが入庫する場合に、乗降室内にいずれかの車両1又は人が進入したことを検知して記憶(在室記憶A:セット)し、車両1の入庫後に記憶を確実かつ安全に解除(在室記憶A:リセット)できる。
【0058】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
A 在室記憶、M 運転手(人)、1 車両、
1R リモート車両、1N ノーマル車両、
2 乗降室、2a 壁、2b 出入口、
3 出入口扉、4 パレット(又は乗降領域)、
10 通過検出装置、11 扉閉保護装置、12 侵入検知装置、
13 庫内センサ、14 生体検出装置(ミリ波センサ)、
15 パッシブセンサ(赤外線受動センサ)、16 在庫検出装置、
17 車両位置検出装置、18 半ドア検知装置、19 庫内カメラ、
20 開閉制御装置、22 入庫モード選択器、
50 入庫時安全確認装置、100 機械式駐車装置
図1
図2
図3
図4