(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103790
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092495
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2020070972の分割
【原出願日】2020-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 美波
(72)【発明者】
【氏名】服部 圭
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】出村 健介
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将也
(57)【要約】
【課題】凍結前の液体が基板の周縁から排出されるのを抑制することができる基板処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る基板処理装置は、基板を支持可能な載置台と、前記載置台と、前記基板と、の間の空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、前記基板の、前記載置台側とは反対側の面に液体を供給可能な液体供給部と、板状を呈し、前記基板の周縁を囲むプレートと、少なくとも、前記プレートの、前記載置台側とは反対側の面に設けられ、前記基板よりも前記液体をはじきやすい性質を有する撥液部と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持可能な載置台と、
前記載置台と、前記基板と、の間の空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、
前記基板の、前記載置台側とは反対側の面に液体を供給可能な液体供給部と、
板状を呈し、前記基板の周縁を囲むプレートと、
少なくとも、前記プレートの、前記載置台側とは反対側の面に設けられ、前記基板よりも前記液体をはじきやすい性質を有する撥液部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記撥液部は、前記プレートの、前記基板側の側面にさらに設けられている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記撥液部は、膜状を呈し、飽和フルオロアルキル基、フルオロシリル基、アルキルシリル基、および長鎖アルキル基のいずれかを有する材料を含む請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記撥液部は、フラクタル構造を有する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記プレートの熱伝導率は、前記基板の熱伝導率と同じである請求項1~4のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記プレートの線膨張係数は、前記基板の線膨張係数と同じである請求項1~5のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、半導体ウェーハなどの基板の表面には、微細な凹凸部が形成されている。この様な基板の表面に付着したパーティクルなどの汚染物を除去する方法として、凍結洗浄法が提案されている。
【0003】
凍結洗浄法においては、まず、基板の表面に純水などの液体を供給して液膜を形成する。次に、基板の表面側に冷却ガスを供給して液膜を凍結させる。液膜が凍結して凍結膜が形成される際に汚染物が凍結膜に取り込まれることで、汚染物が基板の表面から分離される。次に、凍結膜に純水などの液体を供給して凍結膜を融解し、液体とともに汚染物を基板の表面から除去する。凍結洗浄法によれば、基板の表面に形成された微細な凹凸部が破損するのを抑制することができる。
【0004】
凍結洗浄では、通常回転させながら凍結を行っている。このため、基板の周縁領域は、外気の影響を受けやすく、冷却が抑制される。そのため、基板の周縁領域の冷却効率を向上させることができる基板処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基板の周縁領域の冷却効率を向上させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る基板処理装置は、基板を支持可能な載置台と、前記載置台と、前記基板と、の間の空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、前記基板の、前記載置台側とは反対側の面に液体を供給可能な液体供給部と、板状を呈し、前記基板の周縁を囲むプレートと、少なくとも、前記プレートの、前記載置台側とは反対側の面に設けられ、前記基板よりも前記液体をはじきやすい性質を有する撥液部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、基板の周縁領域の冷却効率を向上させることができる基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
【
図2】
図1における載置部のA-A線方向の模式図である。
【
図3】
図2における載置部のB-B線方向の模式断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、撥液部を例示するための模式断面図である。
【
図5】基板処理装置の作用を例示するためのタイミングチャートである。
【
図6】比較例に係る載置台を例示するための模式図である。
【
図7】(a)、(b)は、撥液部を例示するための模式断面図である。
【
図8】は、複数の小片を有するプレートを例示するための模式平面図である。
【
図9】は、複数の小片を有するプレートを例示するための模式断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下に例示をする基板100は、例えば、半導体ウェーハ、インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いられる板状体、フラットパネルディスプレイ用基板などとすることができる。
また、以下においては、一例として、基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合を説明する。基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合には、基板100の平面形状は、略四角形とすることができる。基板100の一方の面には、マスクのパターンである凹凸部が形成されている。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置1を例示するための模式図である。
図2は、
図1における載置部2のA-A線方向の模式図である。
図3は、
図2における載置部2のB-B線方向の模式断面図である。
図4は、撥液部2d2を例示するための模式断面図である。
【0012】
図1に示すように、基板処理装置1には、載置部2、冷却部3、第1液体供給部4、第2液体供給部5、筐体6、送風部7、測定部8、制御部9、および排気部11が設けられている。
【0013】
載置部2は、載置台2a、回転軸2b、駆動部2c、およびプレート2dを有する。
載置台2aは、筐体6の内部に回転可能に設けられている。載置台2aは、板状を呈し
ている。
載置台2aの一方の主面には、基板100を支持する複数の支持部2a1が設けられている。基板100を複数の支持部2a1に支持させる際には、基板100の表面100b(凹凸部が形成された側の面)が、載置台2a側とは反対の方を向くようにする。
【0014】
複数の支持部2a1には、基板100の裏面100aの縁(エッジ)が接触する。支持部2a1の、基板100の裏面100aの縁と接触する部分が、テーパ面または傾斜面とすることができる。
【0015】
また、載置台2aの中央部分には、載置台2aの厚み方向を貫通する孔2aaが設けられている。
【0016】
回転軸2bの一方の端部は、載置台2aの孔2aaに嵌合されている。回転軸2bの他方の端部は、筐体6の外部に設けられている。回転軸2bは、筐体6の外部において駆動部2cと接続されている。
【0017】
回転軸2bは、筒状を呈している。回転軸2bの載置台2a側の端部には、吹き出し部2b1が設けられている。吹き出し部2b1は、載置台2aの、複数の支持部2a1が設けられる面に開口している。吹き出し部2b1の開口側の端部は、孔2aaの内壁に接続されている。吹き出し部2b1の開口は、載置台2aに支持された基板100の裏面100aに対峙している。
【0018】
吹き出し部2b1は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる形状を有している。そのため、吹き出し部2b1の内部の孔は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる。なお、回転軸2bの先端に吹き出し部2b1を設ける場合を例示したが、吹き出し部2b1は、冷却ノズル3dの先端に設けることもできる。また、載置台2aの孔2aaを吹き出し部2b1とすることもできる。
【0019】
吹き出し部2b1を設ければ、放出された冷却ガス3a1を、基板100の裏面100aのより広い領域に供給することができる。また、冷却ガス3a1の放出速度を低下させることができる。そのため、基板100が部分的に冷却されたり、基板100の冷却速度が速くなりすぎたりするのを抑制することができる。その結果、後述する液体101の過冷却状態を生じさせることが容易となる。
【0020】
回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部には、冷却ノズル3dが取り付けられている。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部と、冷却ノズル3dとの間には、図示しない回転軸シールが設けられている。そのため、回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は、気密となるように封止されている。
【0021】
駆動部2cは、筐体6の外部に設けられている。駆動部2cは、回転軸2bと接続されている。駆動部2cは、モータなどの回転機器を有することができる。駆動部2cの回転力は、回転軸2bを介して載置台2aに伝達される。そのため、駆動部2cにより載置台2a、ひいては載置台2aに支持された基板100を回転させることができる。
【0022】
また、駆動部2cは、回転の開始と回転の停止のみならず、回転数(回転速度)を変化させることができる。駆動部2cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0023】
図2~
図4に示すように、プレート2dは、板状を呈し、基板100の外側に設けられている。プレート2dは、基板100の周縁を囲んでいる。プレート2dは、例えば、スペーサ2d1などを介して載置台2aに設けることができる。
【0024】
プレート2dの厚みは、基板100の厚みと略同じか小さくすることができる。また、
図2に示すように、プレート2dの外形寸法は、基板100の角を含む外接円100dよりも大きくすることができる。なお、
図2に例示をしたプレート2dの輪郭は円であるが、四角形や六角形などの多角形としてもよい。
【0025】
プレート2dの載置台2a側とは反対側の面を表面2db、プレート2dの載置台2a側の面を裏面2daと呼称する。
プレート2dの表面2dbと、載置台2aとの間の距離は、基板100の表面100bと載置台2aとの間の距離と同じとなるか、0.1mm程度小さくなるようにすることが好ましい。この様にすれば、後述する解凍工程において、液体101と、液体101が凍結したものと、を基板100の表面100bから排出する際に、プレート2dが障害となるのを抑制することができる。
【0026】
プレート2dの裏面2daと、載置台2aとの間の距離は、基板100の裏面100aと載置台2aとの間の距離と同じとなるか、0.1mm程度大きくなるようにすることが好ましい。この様にすれば、後述する予備工程や冷却工程において、載置台2aと基板100の裏面100aとの間の空間を流れる冷却ガス3a1の流れが乱れるのを抑制することができる。また、プレート2dの裏面2daには、複数の支持部2a1に対応する位置に不図示の溝が設けられている。この溝により、支持部2a1との接触を防いでいる。
【0027】
また、後述する予備工程、冷却工程、解凍工程などにおいて、基板100の表面100bに供給された液体101が、プレート2dの基板100側の側面2dcと基板100の側面(周端面)との間から載置台2a側に漏れると、漏れた液体101が、載置台2aや基板100の裏面100aなどにおいて凍結するおそれがある。漏れた液体101が、載置台2aや基板100の裏面100aなどにおいて凍結すると、冷却ガス3a1の流れが乱れるおそれがある。
【0028】
そのため、プレート2dは、基板100の側面に接触させることが好ましい。プレート2dが、基板100の側面に接触していれば、基板100の表面100bに供給された液体101が、プレート2dの側面2dcと基板100の側面との間から載置台2a側に漏れるのを抑制することができる。
【0029】
また、プレート2dの熱伝導率は、基板100の熱伝導率となるべく近くなるようにすることが好ましい。この様にすれば、熱の伝導の際に、プレート2dを基板100の延長部分と見なすことができる。後述するように、基板100の周縁領域には外部からの熱が入熱し易くなるが、プレート2dを基板100の延長部分と見なすことができれば、基板100の周縁領域を外部雰囲気から離すことができるので、外部からの熱が基板100の周縁領域に入熱し難くなる。そのため、後述する予備工程や冷却工程において、基板100の周縁領域の温度と基板100の中央領域の温度を略同じとすることが容易となる。この場合、プレート2dの熱伝導率は、基板100の熱伝導率と同じとすることがより好ましい。
【0030】
また、プレート2dの線膨張係数は、基板100の線膨張係数となるべく近くなるようにすることが好ましい。この様にすれば、熱膨張または熱収縮の際に、プレート2dを基板100の延長部分と見なすことができる。そのため、後述する予備工程、冷却工程、解凍工程などにおいて、プレート2dの側面2dcと基板100の側面との間に隙間が生じたり、プレート2dと基板100に力が加わったりするのを抑制することができる。
【0031】
熱伝導率および線膨張係数を考慮すると、プレート2dの材料は、基板100の主材料と同じとすることが好ましい。例えば、基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合には、プレート2dの材料は石英とすることができる。
【0032】
後述するように、プレート2dの少なくとも表面2dbには、撥液部2d2が設けられている(
図4(a)参照)。撥液部2d2は、基板100よりも液体101をはじきやすい性質(撥液性)を有している。撥液部2d2は、例えば、膜状を呈し、トリフルオロメチル基などの飽和フルオロアルキル基、フルオロシリル基、アルキルシリル基、長鎖アルキル基などの官能基を有する材料を含むことができる。例えば、撥液部2d2は、プレート2dの表面にフッ素樹脂をコーティングすることで形成することができる。
【0033】
また、撥液部2d2は、プレート2dの表面を加工して、フラクタル構造としたものとすることもできる。フラクタル構造は、例えば、プレート2dの表面を、プラズマや腐食性液などを用いてエッチングすることで形成することができる。なお、前述した官能基を有する材料を含む膜の表面をフラクタル構造とすることもできる。すなわち、撥液部2d2は、フラクタル構造を有するものとすることができる。
【0034】
次に、
図1に戻って、基板処理装置1に設けられた他の構成要素について説明する。
図1に示すように、冷却部3は、載置台2aと、基板100の裏面100aと、の間の空間に、冷却ガス3a1を供給する。冷却部3は、冷却液部3a、フィルタ3b、流量制御部3c、および冷却ノズル3dを有する。冷却液部3a、フィルタ3b、および流量制御部3cは、筐体6の外部に設けられている。
【0035】
冷却液部3aは、冷却液の収納、および冷却ガス3a1の生成を行う。冷却液は、冷却ガス3a1を液化したものである。冷却ガス3a1は、基板100の材料と反応し難いガスであれば特に限定はない。冷却ガス3a1は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。
【0036】
冷却液部3aは、冷却液を収納するタンクと、タンクに収納された冷却液を気化させる気化部とを有する。タンクには、冷却液の温度を維持するための冷却装置が設けられている。気化部は、冷却液の温度を上昇させて、冷却液から冷却ガス3a1を生成する。気化部は、例えば、外気温度を利用したり、熱媒体による加熱を用いたりすることができる。冷却ガス3a1の温度は、液体101の凝固点以下の温度であればよい。
【0037】
なお、冷却液部3aが、タンクに収納された冷却液を気化させることで冷却ガス3a1を生成する場合を例示したが、窒素ガス等をチラーなどで冷却し、冷却ガス3a1とすることもできる。この様にすれば、冷却液部を簡素化できる。
【0038】
フィルタ3bは、配管を介して、冷却液部3aに接続されている。フィルタ3bは、冷却液に含まれていたパーティクルなどの汚染物が、基板100側に流出するのを抑制する。
【0039】
流量制御部3cは、配管を介して、フィルタ3bに接続されている。流量制御部3cは、冷却ガス3a1の流量を制御する。流量制御部3cは、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。また、流量制御部3cは、冷却ガス3a1の供給圧力を制御することで冷却ガス3a1の流量を間接的に制御するものであってもよい。この場合、流量制御部3cは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0040】
冷却液部3aにおいて冷却液から生成された冷却ガス3a1の温度は、ほぼ所定の温度となっている。そのため、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで基板100の温度、ひいては基板100の表面100bにある液体101の温度を制御することができる。この場合、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を生じさせることができる。
【0041】
冷却ノズル3dの一方の端部は、流量制御部3cに接続されている。冷却ノズル3dの他方の端部は、回転軸2bの内部に設けられている。冷却ノズル3dの他方の端部は、吹き出し部2b1の、流量制御部3c側の端部の近傍に位置している。
【0042】
冷却ノズル3dは、筒状を呈している。冷却ノズル3dは、流量制御部3cにより流量が制御された冷却ガス3a1を基板100に供給する。冷却ノズル3dから放出された冷却ガス3a1は、吹き出し部2b1を介して、基板100の裏面100aに直接供給される。
【0043】
第1液体供給部4は、基板100の表面100bに液体101を供給する。後述する凍結工程において、液体101が液体から固体に変化(液固相変化)すると体積が変化するので圧力波が生じる。この圧力波により、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられる。そのため、液体101は、基板100の材料と反応し難いものであれば特に限定はない。
【0044】
なお、液体101を凍結した際に体積が増える液体とすれば、体積増加に伴う物理力を利用して、基板100の表面に付着している汚染物を分離できるとも考えられる。そのため、液体101は、基板100の材料と反応し難く、且つ、凍結した際に体積が増える液体とすることが好ましい。例えば、液体101は、水(例えば、純水や超純水など)や、水を主成分とする液体などとすることができる。
【0045】
水を主成分とする液体とする場合、水以外の成分が余り多くなると、体積増加に伴う物理力を利用することが難しくなるので、汚染物の除去率が低下するおそれがある。そのため、水以外の成分の濃度は、5wt%以上、30wt%以下とすることが好ましい。
【0046】
また、液体101にはガスを溶存させることができる。ガスは、例えば、炭酸ガス、オゾンガス、水素ガスなどとすることができる。
【0047】
第1液体供給部4は、液体収納部4a、供給部4b、流量制御部4c、および液体ノズル4dを有する。液体収納部4a、供給部4b、および流量制御部4cは、筐体6の外部に設けられている。
【0048】
液体収納部4aは、前述した液体101を収納する。
供給部4bは、配管を介して、液体収納部4aに接続されている。供給部4bは、液体収納部4aに収納されている液体101を液体ノズル4dに向けて供給する。供給部4bは、例えば、液体101に対する耐性を有するポンプなどとすることができる。なお、供給部4bがポンプである場合を例示したが、供給部4bはポンプに限定されるわけではない。例えば、供給部4bは、液体収納部4aの内部にガスを供給し、液体収納部4aに収納されている液体101を圧送するものとしてもよい。
【0049】
流量制御部4cは、配管を介して、供給部4bに接続されている。流量制御部4cは、供給部4bにより供給された液体101の流量を制御する。流量制御部4cは、例えば、流量制御弁とすることができる。また、流量制御部4cは、液体101の供給の開始と供給の停止をも行うことができる。
【0050】
液体ノズル4dは、筐体6の内部に設けられている。液体ノズル4dは、筒状を呈している。液体ノズル4dの一方の端部は、配管を介して、流量制御部4cに接続されている。液体ノズル4dの他方の端部は、載置台2aに載置された基板100の表面100bに対峙している。そのため、液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bに供給される。
【0051】
また、液体ノズル4dの他方の端部(液体101の吐出口)は、基板100の表面100bの略中央に位置している。液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bの略中央から拡がり、基板100の表面100bで略一定の厚みを有する液膜が形成される。
【0052】
第2液体供給部5は、基板100の表面100bに液体102を供給する。第2液体供給部5は、液体収納部5a、供給部5b、流量制御部5c、および液体ノズル4dを有する。
【0053】
液体102は、後述する解凍工程において用いることができる。そのため、液体102は、基板100の材料と反応し難く、且つ、後述する乾燥工程において基板100の表面100bに残留し難いものであれば特に限定はない。液体102は、例えば、水(例えば、純水や超純水など)や、水を主成分とする液体とすることができる。
【0054】
液体収納部5aは、前述した液体収納部4aと同様とすることができる。供給部5bは、前述した供給部4bと同様とすることができる。流量制御部5cは、前述した流量制御部4cと同様とすることができる。
【0055】
なお、液体102と液体101が同じである場合には、第2液体供給部5を省くことができる。また、液体ノズル4dを兼用する場合を例示したが、液体101を吐出する液体ノズルと、液体102を吐出する液体ノズルを別々に設けることもできる。
【0056】
また、液体102の温度は、液体101の凝固点よりも高い温度とすることができる。また、液体102の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度とすることもできる。液体102の温度は、例えば、常温(20℃)程度とすることができる。
【0057】
なお、第2液体供給部5が省かれる場合には、液体101の温度は、液体101の凝固点よりも高い温度とすることができる。また、液体101の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度とすることもできる。液体101の温度は、例えば、常温(20℃)程度とすることができる。
【0058】
筐体6は、箱状を呈している。筐体6の内部にはカバー6aが設けられている。カバー6aは、基板100に供給され、基板100が回転することで基板100の外部に排出された液体101、102を受け止める。カバー6aは、筒状を呈している。カバー6aの、載置台2a側とは反対側の端部の近傍(カバー6aの上端近傍)は、カバー6aの中心に向けて屈曲している。そのため、基板100の上方に飛び散る液体101、102の捕捉を容易とすることができる。
【0059】
また、筐体6の内部には仕切り板6bが設けられている。仕切り板6bは、カバー6aの外面と、筐体6の内面との間に設けられている。
【0060】
筐体6の底面側の側面には複数の排出口6cが設けられている。
図1の場合には、排出口6cが2つ設けられている。使用済みの冷却ガス3a1、空気7a、液体101、および液体102は、排出口6cから筐体6の外部に排出される。排出口6cには排気管6c1が接続され、排気管6c1には使用済みの冷却ガス3a1、空気7aを排気する排気部(ポンプ)11が接続されている。また、排出口6cには液体101、102を排出する排出管6c2が接続されている。
【0061】
排出口6cは基板100よりも下方に設けられている。そのため、冷却ガス3a1が排出口6cから排気されることでダウンフローの流れが作りだされる。その結果、パーティクルの舞い上がりを防ぐことができる。
【0062】
平面視において、複数の排出口6cは、筐体6の中心に対して対称となるように設けられている。この様にすれば、筐体6の中心に対して、冷却ガス3a1の排気方向が対称となる。冷却ガス3a1の排気方向が対称となれば、冷却ガス3a1の排気が円滑となる。
【0063】
送風部7は、筐体6の天井面に設けられている。なお、送風部7は、天井側であれば、筐体6の側面に設けることもできる。送風部7は、ファンなどの送風機とフィルタを備えることができる。フィルタは、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などとすることができる。
【0064】
送風部7は、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間に空気7a(外気)を供給する。そのため、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間の圧力が外部の圧力より高くなる。その結果、送風部7により供給された空気7aを排出口6cに導くことが容易となる。また、パーティクルなどの汚染物が、排出口6cから筐体6の内部に侵入するのを抑制することができる。
【0065】
制御部9は、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。制御部9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、半導体メモリなどの記憶素子を有することができる。制御部9は、例えば、コンピュータとすることができる。記憶素子には、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。演算素子は、記憶素子に格納されている制御プログラム、操作者により入力されたデータなどを用いて、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0066】
次に、基板処理装置1の作用について例示をする。
図5は、基板処理装置1の作用を例示するためのタイミングチャートである。
なお、
図5は、基板100が6025クオーツ(Qz)基板(152mm×152mm×6.35mm)、液体101および液体102が純水の場合である。
【0067】
まず、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、基板100が筐体6の内部に搬入される。搬入された基板100は、載置台2aの複数の支持部2a1の上に載置、支持される。
【0068】
基板100が載置台2aに載置、支持された後に、
図5に示すように予備工程、液膜の形成工程、冷却工程(過冷却工程+凍結工程)、解凍工程、乾燥工程を含む凍結洗浄工程が行われる。
【0069】
まず、
図5に示すように予備工程が実行される。予備工程においては、制御部9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体101を供給する。また、制御部9が、流量制御部3cを制御して、基板100の裏面100aに、所定の流量の冷却ガス3a1を供給する。また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100を所定の回転数(第2の回転数)で回転させる。
したがって、回転する基板100およびプレート2dに、液体101がかけ流される状態となる。
【0070】
ここで、冷却部3による冷却ガス3a1の供給により筐体6内の雰囲気が冷やされると、空気中のダストを含んだ霜が基板100に付着し、汚染の原因となる可能性がある。予備工程においては、基板100の表面100bに液体101を供給し続けているので、基板100を均一に冷却しつつ、基板100の表面100bへの霜の付着を防止することができる。
【0071】
例えば、
図5に例示したものの場合には、基板100の回転数を第1の回転数として、例えば50rpm~500rpm程度とできる。また、液体101の流量を0.1L/min~1L/min程度とできる。また、冷却ガス3a1の流量を40NL/min~200NL/min程度、予備工程の工程時間を1800秒程度とすることができる。なお、予備工程の工程時間は、基板100の面内温度が略均一となる時間であればよい。これらの条件は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
【0072】
予備工程における基板100の表面100bの液体101の温度は、液体101がかけ流し状態であるため、供給される液体101の温度とほぼ同じとなる。例えば、供給される液体101の温度が常温(20℃)程度である場合、基板100の表面100bに存在する液体101(以下、液膜という)の温度は常温(20℃)程度となる。
【0073】
次に、
図5に示すように液膜の形成工程が実行される。液膜の形成工程においては、予備工程において供給されていた液体101の供給を停止する。すると、基板100およびプレート2dの回転が維持されているので、基板100の表面100bにある液体101が排出される。そして、基板100の回転数を第2の回転数より遅い第1の回転数まで減速させる。第1の回転数は、例えば、0~50rpmの範囲とすればよい。基板100の回転数を第1の回転数とした後に、所定の量の液体101を基板100に供給して液膜を形成する。なお、冷却ガス3a1の供給は、維持されている。
【0074】
液膜の形成工程において形成される液膜の厚み(過冷却工程を行う際の液膜の厚み)は、200~1300μm程度とすることができる。例えば、制御部9は、液体101の供給量を制御して、基板100の表面100bの上にある液膜の厚みを200~1300μm程度にする。
【0075】
次に、
図5に示すように冷却工程(過冷却工程+凍結工程)が実行される。なお、本実施の形態では、冷却工程のうち、液体101が過冷却状態となってから凍結が始まるまでの工程を「過冷却工程」、過冷却状態の液体101が凍結状態となり、解凍工程により解凍が始まるまでを「凍結工程」と呼称する。
【0076】
ここで、液体101の冷却速度が余り速くなると液体101が過冷却状態とならず、すぐに凍結してしまう。そのため、制御部9は、冷却ガス3a1の流量、および、基板100の回転数の少なくともいずれかを制御することで、基板100の表面100bの液体101が過冷却状態となるようにする。
【0077】
液体101が過冷却状態となる条件は、基板100の大きさ、液体101の粘度、冷却ガス3a1の比熱などの影響を受ける。そのため、液体101が過冷却状態となる条件は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することが好ましい。
【0078】
冷却工程(過冷却工程+凍結工程)では、
図5に例示するように、冷却ガス3a1の流量および回転数は、液膜の形成工程と同じ条件である。基板100の裏面100aに供給され続けている冷却ガス3a1により、基板100上の液膜の温度が、液膜の形成工程における液膜の温度よりもさらに下がり、過冷却状態となる。
【0079】
過冷却状態においては、例えば、液膜の温度、パーティクルなどの汚染物の存在、振動などにより、液体101の凍結が開始する。例えば、パーティクルなどの汚染物が存在する場合、液体101の温度が、-20℃から-35℃程度になると液体101の凍結が開始する。
【0080】
過冷却状態の液体101の凍結が開始すると、過冷却工程から凍結工程に移行する。凍結工程においては、基板100の表面100bの液膜の少なくとも一部を凍結させる。本実施の凍結洗浄工程では、液膜が完全に凍結し氷膜となる場合を説明する。
【0081】
次に、
図5に示すように解凍工程が実行される。なお、
図5に例示をしたものは、液体101と液体102が同じ液体の場合である。そのため、
図5では液体101と記載している。解凍工程においては、制御部9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体101を供給する。なお、液体101と液体102が異なる場合には、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体102を供給する。
【0082】
また、制御部9が、流量制御部3cを制御して、冷却ガス3a1の供給を停止させる。これにより氷膜の解凍が始まり、氷膜は徐々に液体101となってゆく。また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を第2の回転数よりも速い第3の回転数へと増加させる。基板100の回転が速くなれば、液体101と、氷膜の溶け残りと、を遠心力で振り切ることができる。そのため、液体101と、氷膜の溶け残りと、を基板100の表面100bから排出することができる。この際、基板100の表面100bから分離された汚染物も、これらとともに排出される。
【0083】
なお、液体101または液体102の供給量は、解凍ができるのであれば特に限定はない。また、基板100の回転数は、液体101、氷膜の溶け残り、および汚染物が排出できるのであれば特に限定はない。
【0084】
次に、
図5に示すように乾燥工程が実行される。乾燥工程においては、制御部9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、液体101の供給を停止させる。なお、液体101と液体102が異なる液体の場合には、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、液体102の供給を停止させる。
【0085】
また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数をさらに増加させ、第3の回転数よりも速い第4の回転数へと増加させる。基板100の回転が速くなれば、基板100の乾燥を迅速に行うことができる。なお、基板100の回転数は、乾燥ができるのであれば特に限定はない。
以上の様にすることで、基板100の処理(汚染物の除去)を行うことができる。
【0086】
図6は、比較例に係る載置台202aを例示するための模式図である。
図6に示すように、載置台202aの一方の主面には、基板100を支持する複数の支持部2a1が設けられている。また、載置台202aの中央部分には、載置台202aの厚み方向を貫通する孔202aaが設けられている。ただし、前述した載置台2aにはプレート2dが設けられていたが、載置台202aにはプレート2dが設けられていない。
【0087】
孔202aaからは冷却ガス3a1が供給される。供給された冷却ガス3a1は、載置台202aと基板100の裏面100aとの間の空間を流れ、基板100の外部に排出される。冷却ガス3a1が基板100から熱を奪うことで、基板100が冷却される。一方、冷却ガス3a1は、基板100から熱を奪うことで温度が上昇する。
【0088】
載置台202aの面に平行な方向における流路抵抗は、ほぼ同じであるため、
図6に示すように、冷却ガス3a1は孔202aaから略放射状に流れる。冷却ガス3a1は基板100から熱を奪いながらほぼ一方向に流れるので、基板100の周縁側になるに従い冷却ガス3a1の温度が高くなり冷却効率が低下する。また、基板100の周縁領域は、基板100の表面100bに垂直な方向のみならず基板100の表面100bに平行な方向においても外部雰囲気と隣接しているので、外部からの入熱量が多くなる。そのため、基板100の周縁領域の冷却が抑制される。
【0089】
また、
図6に示すように、基板100は孔202aaを中心として回転する。基板100の平面形状が四角形の場合、基板100の辺に接触する内接円100cの内側において、基板100の裏面100aと載置台202aとの間の空間の開口は、内接円100c上を移動し、外部雰囲気中を移動しないので、基板100の回転に伴う外気の侵入が少ない。これに対して、内接円100cの外側、すなわち、四角形の角の近傍の空間の開口は外部雰囲気中を移動するので、基板100の回転に伴い、内接円100cの接線方向から外気が侵入し易くなる。そのため、基板100の平面形状が四角形の場合には、基板100の周縁領域の冷却が抑制されることに加えて、基板100の角の近傍の冷却がさらに抑制されることになる。
【0090】
前述したように、本実施の形態に係る載置台2aには、少なくとも表面2dbに撥液部2d2を有するプレート2dが設けられている。また、プレート2dは、基板100の周縁を囲んでおり、基板100の延長部分と見なすことができる。つまり、基板100の周縁領域をプレート2dの周縁領域まで拡張したとみなすことができる。そのため、基板100の表面100bに平行な方向における、基板100の周縁領域と外部雰囲気との間の距離を大きくすることができる。その結果、基板100の周縁領域における外部からの入熱量を少なくすることができるので、基板100の周縁領域の冷却を効果的に行うことができる。特に、平面形状が四角形の場合、基板の角の近傍が冷却されにくい。プレート2dを配置することで四角形である基板100の角の近傍が、プレート2dの内側に位置して外部に開口しなくなる。そのため、基板100の回転に伴う外気の侵入が少なくなるので、基板100の周縁領域への外部からの入熱量を少なくするだけでなく、冷却ガスへの外部からの入熱量も少なくすることができる。そのため、基板100の平面形状が四角形であっても、角の近傍の冷却を効果的に行うことができる。
このため、予備工程において、基板100をより均一に冷却することができる。
【0091】
また、液膜の形成工程において、プレート2dの撥液部2d2が基板100を囲んでいるため、基板100の表面100bからプレート2dへの液体101の流れを抑制することができる。このため、基板100の表面100bに供給された液体101を、基板100の表面100bに留めることが容易となる。この結果、プレート2dが無い場合と比べて液膜を厚く形成することができる。また、プレート2dの表面2dbにまで液膜を形成する場合と比べて、所望の液膜の厚みを得るために必要な液体101の量を少なくすることができる。
【0092】
なお、基板100の表面bからプレート2dへの液体101の流れを抑制するのに、プレート2dの表面2db全てに撥液部2d2を設ける必要はない。
図4(b)に示すように、プレート2dの厚みをT(mm)、プレート2dの基板100側の側面2dcと、プレート2dの表面2dbに設けられた撥液部2d2の、基板100側とは反対側の端部との間の距離をL(mm)とすると、少なくとも「L≧T」であれば、基板100の表面bからプレート2dへの液体101の流れを抑制することができる。
【0093】
また、液膜の形成工程において、基板100の回転を第1の回転数以下としている。第1の回転数は、遠心力の影響による液膜のばらつきが発生しない回転数である。このため、基板100の周縁領域における外部からの入熱量を少なくすることができ、液膜のばらつきを抑制しつつ、液膜を厚く形成することもできる。
【0094】
また、本実施の形態に係る基板処理装置1においては、基板100の裏面100aに冷却ガス3a1を供給して、基板100の表面100bに供給された液体101を冷却している。基板100の裏面100a側に冷却ガス3a1を供給すると、基板100を介して液膜を冷却することができる。予備工程において基板100は、均一に冷却されているので、基板100の表面100b上に形成された液膜を均一に冷却することができる。その結果、液膜に局所的な凍結が起こるのを抑制することができる。そのため、基板100の表面100bに設けられた凹凸部間にかかる圧力を均一化することができるので、凹凸部の倒壊を抑制することができる。前述の通り、予備工程において、プレート2dにより基板100の周縁領域への外部からの入熱量が抑制されているので、基板100をより均一に冷却することができる。このため、液膜に局所的な凍結がおきるのをより抑制することができる。
【0095】
また、基板100の裏面100aから表面100bに向かって厚み方向に冷却が進むので、液膜に厚さ方向の温度勾配が存在しても、基板100の表面100bと、液体101との界面の温度を最も低くすることができる。そのため、液体101の凍結は、基板100の表面100bと、液体101との界面側から始まる。また、界面付近の液体101の温度を最も低くすることができるので、界面付近において、凍結した液体101の膨張を大きくすることができる。そのため、基板100の表面100bに付着した汚染物を効率よく分離することができる。
【0096】
図7(a)に示すように、撥液部2d2は、プレート2dの表面2dbと、プレート2dの基板100側の側面2dcとに設けることもできる。
製造誤差などにより、意図しない隙間が、プレート2dの側面2dcと基板100の側面との間に形成される場合がある。プレート2dの基板100側の側面2dcにも設けることで、意図しない隙間が、プレート2dの側面2dcと基板100の側面との間に形成されていたとしても、基板100の表面100bに供給された液体101が、プレート2dの側面2dcと基板100の側面との間から載置台2a側に漏れるのを抑制することができる。特に、プレート2dの基板100側の側面2dcに設ける撥液部2d2は、弾性体としての性質を有していると好ましい。例えば、撥液材でコーティングされた弾性体をプレート2dの側面2dcに取り付けるようにすればよい。
また、
図7(b)に示すように、撥液部2d2は、プレート2dの全表面に設けてもよい。
【0097】
また、
図8に示すように、プレート2dは、複数の小片2dd~2dgの複合体とすることができる。
また
図9に示すように、複数の小片2dd~2dgは、載置台2aではなく、載置台2aの周囲に設けられた駆動部2dgに配置され、移動可能としてもよい。
【0098】
図10は、他の実施形態に係る基板処理装置1aを例示するための模式図である。
図10に示すように、基板処理装置1aには、載置部2、冷却部3、第1液体供給部4、第2液体供給部5、筐体6、送風部7、測定部8、温度測定部8a、ガス供給部10、および制御部9が設けられている。
【0099】
温度測定部8aは、基板100と載置台2aとの間の空間の温度を測定する。この温度は、基板100と載置台2aとの間を流れる混合ガス(冷却ガス3a1とガス10dが混合されたガス)の温度とほぼ等しい。温度測定部8aは、例えば、放射線温度計などとすることができる。
【0100】
ガス供給部10は、ガス収納部10a、流量制御部10b、および接続部10cを有する。
ガス収納部10aは、ガス10dの収納と供給を行う。ガス収納部10aは、ガス10dが収納された高圧ボンベや工場配管などとすることができる。
流量制御部10bは、ガス10dの流量を制御する。流量制御部10bは、例えば、ガス10dの流量を直接的に制御するMFCとすることもできるし、圧力を制御することでガス10dの流量を間接的に制御するAPCとすることもできる。
【0101】
接続部10cは、回転軸2bに接続されている。接続部10cは、回転軸2bと冷却ノズル3dとの間の空間と、流量制御部10bとを接続する。接続部10cは、例えば、ロータリージョイントとすることができる。
【0102】
ガス10dは、基板100の材料と反応し難いガスであれば特に限定はない。ガス10dは、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。この場合、ガス10dは、冷却ガス3a1と同じガスとすることができる。ただし、ガス10dの温度は、冷却ガス3a1の温度よりも高くなっている。ガス10dの温度は、例えば、室温とすることができる。
【0103】
液体101の冷却速度が余り速くなると液体101が過冷却状態とならず、すぐに凍結してしまう。すなわち、過冷却工程を行うことができなくなる。この場合、液体101の冷却速度は、冷却ガス3a1の流量、および、基板100の回転数の少なくともいずれかにより制御することができる。ところが、冷却ガス3a1の温度は、冷却ガス3a1を供給する冷却部における温度設定によりほぼ一定となる。そのため、冷却ガス3a1の流量では、液体101の冷却速度を遅くすることが難しくなる場合がある。
【0104】
また、基板100の回転数を少なくすれば、液膜の厚みが厚くなるので冷却速度を遅くすることができる。しかしながら、液膜の厚みには、表面張力によって保たれる限界の厚みがあるので、基板100の回転数では液体101の冷却速度を遅くすることが難しくなる場合がある。
【0105】
そこで、本実施の形態においては、冷却ガス3a1よりも温度の高いガス10dと、冷却ガス3a1とを混合させることで、液体101の冷却速度を遅くすることができる様にしている。液体101の冷却速度は、ガス10dと冷却ガス3a1の流量、ガス10dと冷却ガス3a1の混合割合、ガス10dの温度などにより制御することができる。
【0106】
また、測定部8により、液膜の温度を検出して冷却ガス3a1の流量を制御したとしても、基板100の表面100b側の温度(液膜の温度)と、基板100の裏面100a側の温度と、には差が生じている場合がある。そのため、測定部8で検出された液膜の温度のみに基づいて冷却ガス3a1の流量を制御すると、液膜の温度が適正温度になったとしても、液膜の温度と、基板100の裏面100aの温度との間に差が生じて基板100の厚み方向の温度勾配が大きくなる場合がある。基板100の厚み方向の温度勾配が大きくなると、凍結のタイミングが基板100毎にばらつくおそれがある。
【0107】
本実施の形態によれば、制御部9は、温度測定部8aにより測定された温度に基づいて、ガス10dと冷却ガス3a1の流量、ガス10dと冷却ガス3a1の混合割合の少なくともいずれかを制御することができる。
【0108】
そのため、制御部9は、予備工程においてこのような制御を行い、測定部8で検出された温度と、温度測定部8aで検出された温度との差が所定の範囲内となった後に、予備工程から過冷却工程(液体101の供給停止)に切り替えることができる。この様にすれば、基板100の厚み方向の温度勾配が小さくなった状態で凍結を開始させることができるので、凍結のタイミングがばらつくのを抑制することができる。
【0109】
なお、流量制御部3cにより冷却ガス3a1の流量を制御することなく(冷却ガス3a1の流量を一定にして)、ガス供給部10から供給されるガス10dの流量を制御して、液体101の過冷却状態を制御することもできる。この様な場合には、流量制御部3cを省くことができる。ただし、流量制御部3cおよびガス供給部10を設ければ、液体101の過冷却状態の制御をより容易に行うことができる。
また、送風部7により供給される空気7aの量を制御することで、液体101の過冷却状態の制御を行うこともできる。
【0110】
また、プレート2dにより、基板外周の冷却効率が改善されるので、使用する冷却ガス3a1の温度を従来よりも高い温度とすることができる。そのため、冷却液部3aにおいて冷却ガス3a1を生成する方法において、冷却ガス3a1に比べて安価な常温のガスを混合できるようになり、コストを抑えることができる。また、チラー等によって、ガスを冷却する方法では、冷却ガス3a1の設定温度を従来よりも高くすることができるので、チラーへの負荷が減少され、また、省エネルギーともなる。
【0111】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述した実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0112】
例えば、基板処理装置1が備える各要素の形状、寸法、数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0113】
また、以上においては、基板100の平面形状が四角形の場合を例示したが、基板100の平面形状が円形などの場合も同様とすることができる。例えば、1つの板状体の中央部分に、基板100の平面形状に応じた孔を設けるようにすればよい。平面形状が円形の基板100は、例えば、半導体ウェーハなどとすることができる。
【0114】
また、プレート2dは、筐体6の外部で基板100に取り付けられるようにしてもよい。基板100は、取り付けられたプレート2dと共に筐体6内に搬送される。
【符号の説明】
【0115】
1 基板処理装置、1a 基板処理装置、2 載置部、2a 載置台、2a1 支持部、2aa 孔、2b 回転軸、2c 駆動部、2d プレート、3 冷却部、3a 冷却液部、3a1 冷却ガス、4 第1液体供給部、5 第2液体供給部、6 筐体、9 制御部、10 ガス供給部、10d ガス、100 基板、100a 裏面、100b 表面、101 液体、102 液体
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が四角形の基板を、前記基板との間に空間を形成するように支持可能な載置台と、
前記載置台と前記基板との間の前記空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、
前記基板の、前記載置台側の面とは反対側の面に液体を供給可能な液体供給部と、
板状を呈し、前記載置台との間に前記冷却ガスが流れる空間を形成するように、前記基板の周縁を囲み、前記基板の周縁を拡張するように延びるプレートと、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記プレートの外形は、前記基板の外接円よりも大きい請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記プレートは、同形状の複数の小片を組合せて構成されて成り、
前記載置部は、前記複数の小片を移動させる駆動部を備える請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記プレートは、前記基板と対向する側面に、前記基板の側面に接する、撥液材でコーティングされた弾性体を備える請求項1~3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記プレートの熱伝導率は、前記基板の熱伝導率と同じである請求項1~4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記プレートの線膨張係数は、前記基板の線膨張係数と同じである請求項1~5のいずれかに記載の基板処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
実施形態に係る基板処理装置は、
平面形状が四角形の基板を、前記基板との間に空間を形成するように支持可能な載置台と、
前記載置台と前記基板との間の前記空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、
前記基板の、前記載置台側とは反対側の面に液体を供給可能な液体供給部と、
板状を呈し、前記載置台との間に前記冷却ガスが流れる空間を形成するように、前記基板の周縁を囲み、前記基板の周縁を拡張するように延びるプレートと、
を備える。