(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103814
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】レーザ溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20240725BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240725BHJP
【FI】
B23K26/064 K
B23K26/21 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024093797
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2023189877
(32)【優先日】2023-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523422691
【氏名又は名称】株式会社KS・S
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 健一郎
(57)【要約】
【課題】出射部の内部においてミラーを容易に前後方向に移動させることができるレーザ溶接機を提供する。
【解決手段】レーザ光発振器5から発振されたレーザ光が光ファイバ部8を介して伝送され、伝送されたレーザ光を出射するレーザトーチ3を備え、レーザトーチ3は、光ファイバ部8から出射されたレーザ光を筒状のハンドル部18から筒状の出射部17内へミラー28により屈折させ、屈折したレーザ光を集光レンズ27により集光し、出射部17の前端部から出射するものであり、出射部17の後側筒部25内にミラー28を保持するミラー保持部31を前後方向に移動可能に嵌め合わせ、ミラー保持部31の後端部を出射部17の後側筒部25から突出させ、出射部17およびハンドル部18を覆うカバー20の第二蓋部材20bを開けた状態で、カバー20の第二開口部20dからミラー保持部31の後端部が出射部17に対して前後方向に移動操作可能となっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光発振器と、
前記レーザ光発振器から発振されたレーザ光が伝送される光ファイバ部と、
前記光ファイバ部により伝送されたレーザ光が出射されるレーザトーチとを備え、
前記レーザトーチは、前端部からレーザ光が出射される筒状の出射部と、
前記出射部の後端側に下方に延び出す状態で設けられ、前記光ファイバ部が接続される筒状のハンドル部と、
前記レーザ光発振器からレーザ光を発振させるスイッチ部とを有し、
前記出射部が、前記光ファイバ部から前記ハンドル部内へ出射されるレーザ光を前記出射部内へ屈折させるミラーと、前記ミラーにより屈折されたレーザ光を集光する集光レンズとを有し、
作業者により前記レーザトーチのハンドル部が把持されている状態で、前記レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザ溶接機において、
前記出射部がその後端部の内部に前後方向に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部を有し、前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に前後方向に移動可能な状態に保持され、前記ミラー保持部の後端部が前記出射部の後端部から突出する状態であることを特徴とするレーザ溶接機。
【請求項2】
前記出射部が、その周方向の一部に設けられる収納口と前記収納口を通して前記集光レンズを出し入れ可能に収納するレンズ収納部とを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項3】
前記レーザトーチが前記出射部およびハンドル部を覆うカバーを有し、
前記カバーが、前記ミラー保持部の後端部を覆う状態であり、
前記カバーが、外部に開口する第一開口部と前記第一開口部を開閉する第一蓋部材と、外部に開口する第二開口部と前記第二開口部を開閉する第二蓋部材とを有し、
前記第一蓋部材を開いた状態で、前記第一開口部が前記出射部の収納口を露出させる位置に設けられており、
前記第二開口部が前記出射部の後端部側に設けられ、前記第二蓋部材を開いた状態で、前記ミラー保持部の後端部が前記第二開口部から前記出射部に対して前後方向に移動操作可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接機。
【請求項4】
前記レンズ収納部が、前記集光レンズを収納する第一凹部と、前記第一凹部の前側に設けられる第二凹部とを有し、保護レンズが前記レンズ収納部の収納口を通して、前記第二凹部に出し入れ可能に収納されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接機。
【請求項5】
前記ハンドル部にハンドル部側給水口とハンドル部側排水口とを有するハンドル部側水路が設けられ、
前記ハンドル部側水路を通る水で前記ハンドル部を冷却する水冷部をさらに備え、
前記水冷部が、
前記水を貯めるタンクと、
前記タンクから前記ハンドル部側給水口へ前記水を送る送り配管と、
前記ハンドル部側排水口から前記タンクに前記水を戻す戻り配管と、
前記タンクに貯めた前記水を前記送り配管に送り出すポンプとを有し、
前記タンクに貯めた前記水が所定の温度範囲内に維持されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のレーザ溶接機。
【請求項6】
前記光ファイバ部が前記レーザ光発振器と反対側の端部に取り付けられる筒状のコネクタを有し、前記ハンドル部が筒状のソケットを有し、前記ソケットの内部に前記コネクタが着脱可能に接続され、
前記コネクタにコネクタ側給水口とコネクタ側排水口を有するコネクタ側水路が設けられ、
前記コネクタ側給水口に、前記送り配管から分岐する分岐送り配管が接続され、前記コネクタ側排水口に、前記戻り配管から分岐する分岐戻り配管が接続されていることを特徴とする請求項5に記載のレーザ溶接機。
【請求項7】
前記レーザトーチおよび前記水冷部が複数設けられ、前記水冷部が前記レーザトーチごとに対応して1つずつ設けられ、前記レーザトーチは、その対応する前記水冷部によりハンドル部が冷却されることを特徴とする請求項5に記載にレーザ溶接機。
【請求項8】
前記レーザトーチに対して単数または複数のワイヤ状の溶接材料を供給するワイヤ供給部をさらに備え、
前記レーザトーチが、前記出射部の前端部に取り付けられるノズルと、前記出射部に取り付けられるワイヤホルダとを有し、前記ノズルの前端部からレーザ光が出射され、
前記ワイヤホルダが、前記ワイヤ供給部から供給される前記溶接材料を前記ノズルの前端部の前方へ案内することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のレーザ溶接機。
【請求項9】
前記ワイヤ供給部が前記レーザトーチごとに対応して1つずつ設けられていることを特徴とする請求項8に記載のレーザ溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業者が手に持ってレーザ溶接を行うレーザトーチを有するレーザ溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ溶接機としては、作業者が手に持ってレーザ溶接を行うレーザトーチを有するものがある。このレーザトーチは、レーザ光発振器から発振されるレーザ光が光ファイバを介して内部に導かれ、集光されたレーザ光が先端のノズルから出射され、ワークを溶接するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されたレーザ溶接機のレーザトーチは、下部にノズルが接続されるレーザトーチ本体(出射部)と、出射部の側部に接続され、作業者が手に持つ把持部(ハンドル部)とを有している。ハンドル部には光ファイバの一端が接続されており、光ファイバの他端にはレーザ光発振器が接続されている。ハンドル部には、レーザ光発振器を動作させるための出射スイッチ(スイッチ部)が設けられ、ハンドル部の内部には、コリメートレンズが設けられている。トーチ本体部の内部には集光レンズと、集光レンズの上方に位置するベンドミラー(ミラー)が配置されている。
【0004】
上記レーザ溶接機では、以下のようにして、レーザトーチのノズルからレーザ光が出射される。すなわち、レーザ光発振器から発振されるレーザ光が光ファイバを介してレーザトーチのハンドル部の内部に導かれ、コリメートレンズにより平行光へ屈折される。平行光となったレーザ光はレーザトーチのトーチ本体部内に導かれて、ミラーにより集光レンズに向かって反射され、集光レンズにより集光されてレーザトーチのノズルからレーザ光が出射される。このようにして、上記レーザ溶接機では、作業者がハンドル部を手で持った状態で、レーザトーチのノズルから出射されたレーザ光により複数のワークを溶接することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、レーザトーチを有するレーザ溶接機では、レーザトーチのノズルは、交換可能に構成されている場合が多く、ノズル先端の孔径、先端までの長さの違いなど様々な形状の物があり、溶接内容に応じて選定される。このため、ノズルの交換の度に、ノズルの位置と、レーザ光の光軸の位置が適切になるように、微調整する必要がある。すなわち、ノズルのレーザ光出射孔の中心と、出射されるレーザ光の光軸の位置とを合致させる作業、いわゆる芯出しを行う必要がある。
【0007】
レーザ溶接時には、アシストガスとなる不活性ガス(エアー)等がノズルのレーザ光出射孔からワークの溶接位置に向けて吹き付けられている。この吹付けエアーの中心にレーザ光の光軸が位置していない場合、ワークの溶接位置に対して均等にエアーが吹き付けられない状態となり、溶接品質の低下を招くおそれがあるためである。
【0008】
特許文献1に記載のレーザ溶接機のレーザトーチには、集光レンズやミラーの位置をレーザ光の光軸と交差する方向を移動させる機構が設けられていない。このため、作業者は、芯出し作業が完了するまで、何度もトーチ本体部の構成部材を解体し、集光レンズやミラーの位置を調整して、トーチ本体部の構成部材を組み直す必要があり、溶接の作業性が悪いという問題があった。
【0009】
そこで、この発明の解決すべき課題は、出射部の内部においてミラーを容易に前後方向に移動させることができるレーザ溶接機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、以下の構成1~9を備えるものである。
[構成1]
レーザ光発振器と、
前記レーザ光発振器から発振されたレーザ光が伝送される光ファイバ部と、
前記光ファイバ部により伝送されたレーザ光が出射されるレーザトーチとを備え、
前記レーザトーチは、前端部からレーザ光が出射される筒状の出射部と、前記出射部の後端側に下方に延び出す状態で設けられ、前記光ファイバ部が接続される筒状のハンドル部と、前記レーザ光発振器からレーザ光を発振させるスイッチ部とを有し、
前記出射部が、前記光ファイバ部から前記ハンドル部内へ出射されるレーザ光を前記出射部内へ屈折させるミラーと、前記ミラーにより屈折されたレーザ光を集光する集光レンズとを有し、
作業者により前記レーザトーチのハンドル部が把持されている状態で、前記レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザ溶接機において、
前記出射部がその後端部の内部に前後方向に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部を有し、前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に前後方向に移動可能な状態に保持され、前記ミラー保持部の後端部が前記出射部の後端部から突出する状態であることを特徴とするレーザ溶接機。
【0011】
ここで、前後方向とは、作業者がレーザトーチのハンドル部を、出射部に対して下側に位置させて把持する状態であって、出射部から出射する方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であって、作業者が前方を向いた状態で、左側が「左」、右側が「右」と規定する。上下方向は鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は相互に直交する。
【0012】
この構成では、レーザトーチの出射部の後端部からミラー保持部の後端部が突出している。このミラー保持部の後端部を出射部に対して、前後方向に移動させることで、出射部の内部でミラーを前後方向に移動させることができる。
【0013】
[構成2]
前記出射部が、その周方向の一部に設けられる収納口と、前記収納口を通して前記集光レンズを出し入れ可能に収納するレンズ収納部とを有することを特徴とする構成1に記載のレーザ溶接機。
【0014】
この構成によると、集光レンズの交換は、出射部の収納口を通して、レンズ収納部に収納されている集光レンズを取り出し、出射部の収納口を通して、新たな集光レンズをレンズ収納部に収納することにより、容易に行うことができる。
【0015】
[構成3]
前記レーザトーチが前記出射部およびハンドル部を覆うカバーを有し、
前記カバーが、前記ミラー保持部の後端部を覆う状態であり、
前記カバーが、外部に開口する第一開口部と前記第一開口部を開閉する第一蓋部材と、外部に開口する第二開口部と前記第二開口部を開閉する第二蓋部材とを有し、
前記第一蓋部材を開いた状態で、前記第一開口部が前記出射部の収納口を露出させる位置に設けられており、
前記第二開口部が前記出射部の後端部側に設けられ、前記第二蓋部材を開いた状態で、前記ミラー保持部の後端部が前記第二開口部から前記出射部に対して前後方向に移動操作可能となっていることを特徴とする構成2に記載のレーザ溶接機。
【0016】
この構成によると、カバーの第一蓋部材を開くことで、第一開口部から収納口を通して集光レンズをレンズ収納部から出し入れすることができる。第一開口部を第一蓋部材で閉じると、第一蓋部材によって、外部からレンズ収納部内への異物の侵入を防止することができる。
【0017】
また、出射部の後端部から突出しているミラー保持部の後端部をカバーにより覆うことができるので、溶接作業中に、作業者が不用意にミラー保持部に接触すること防止することができる。また、カバーの第二蓋部材を開くことで、第二開口部からミラー保持部の後端部へアクセスし、ミラー保持部を出射部に対して前後方向に移動させることができる。
【0018】
[構成4]
前記レンズ収納部が、前記集光レンズを収納する第一凹部と、前記第一凹部の前側に設けられる第二凹部とを有し、保護レンズが前記レンズ収納部の収納口を通して、前記第二凹部に出し入れ可能に収納されていることを特徴とする構成2に記載のレーザ溶接機。
【0019】
通常、溶接作業時にワークから発生するスパッタが、出射部の前端部から出射部内に侵入することがある。このようなスパッタから集光レンズを保護する目的で、出射部の内部において、集光レンズの前側に保護レンズが配置されている。この保護レンズは一定期間ごとに交換する必要がある。この構成によると、レンズ収納部の第一凹部に収納されている集光レンズの前側で、保護レンズをレンズ収納部の第二凹部に容易に出し入れ可能に収納することができる。
【0020】
[構成5]
前記ハンドル部にハンドル部側給水口とハンドル部側排水口とを有するハンドル部側水路が設けられ、
前記ハンドル部側水路を通る水で前記ハンドル部を冷却する水冷部をさらに備え、
前記水冷部が、
前記水を貯めるタンクと、
前記タンクから前記ハンドル部側給水口へ前記水を送る送り配管と、
前記ハンドル部側排水口から前記タンクに前記水を戻す戻り配管と、
前記タンクに貯めた前記水を前記送り配管に送り出すポンプとを有し、
前記タンクに貯めた前記水が所定の温度範囲内に維持されていることを特徴とする構成1~4のいずれかに記載のレーザ溶接機。
【0021】
この構成では、水冷部のタンクに貯めた水がポンプにより送り配管を介してハンドル部側給水口からハンドル部側水路に送られる。そのハンドル部側水路を通る水によりレーザトーチのハンドル部を冷却することができる。ハンドル部が冷却されると、レーザ溶接時にレーザトーチのハンドル部に熱が籠もらなくなり、作業者がより長い時間ハンドル部を把持して、溶接作業を行うことができる。
【0022】
また、ハンドル部側排水口から戻り配管を介して水がタンクに戻り、タンクに貯められた水が所定の温度範囲内に維持される。このため、タンクに貯められた水が所定の温度範囲を超える温度となって、ハンドル部に対する冷却能力が低下することを防止することができる。さらに、溶接の作業現場の気温が低い場合であっても、溶接作業の開始する際、タンクに貯められた水を所定の温度範囲内へ昇温させるので、溶接作業を行う準備時間を短縮することが可能となる。
【0023】
[構成6]
前記光ファイバ部が前記レーザ光発振器と反対側の端部に取り付けられる筒状のコネクタを有し、前記ハンドル部が筒状のソケットを有し、前記ソケットの内部に前記コネクタが着脱可能に接続され、
前記コネクタにコネクタ側給水口とコネクタ側排水口を有するコネクタ側水路が設けられ、
前記コネクタ側給水口に、前記送り配管から分岐する分岐送り配管が接続され、前記コネクタ側排水口に、前記戻り配管から分岐する分岐戻り配管が接続されていることを特徴とする構成5に記載のレーザ溶接機。
【0024】
この構成によると、ハンドル部を水により冷却する水冷部を利用して、光ファイバ部の端部に取り付けられたコネクタも水により冷却することができる。このため、ハンドル部がさらに冷却され、作業者が把持するハンドル部に熱が籠もらず、レーザ溶接の連続運転時間をさらに延ばすことができる。
【0025】
[構成7]
前記レーザトーチおよび前記水冷部が複数設けられ、前記水冷部が前記レーザトーチごとに対応して1つずつ設けられ、前記レーザトーチは、その対応する前記水冷部によりハンドル部が冷却されることを特徴とする構成5または構成6に記載のレーザ溶接機。
【0026】
この構成では、それぞれのレーザトーチは、その対応する水冷部によりハンドル部が冷却されるものである。このため、様々な溶接作業をレーザトーチごとに独立して、かつ同時に行うことが可能となり、溶接の作業効率を向上させることができる。
【0027】
[構成8]
前記レーザトーチに対して単数または複数のワイヤ状の溶接材料を供給するワイヤ供給部をさらに備え、
前記レーザトーチが、前記出射部の前端部に取り付けられるノズルと、前記出射部に取り付けられるワイヤホルダとを有し、前記ノズルの前端部からレーザ光が出射され、
前記ワイヤホルダが、前記ワイヤ供給部から供給される前記溶接材料を前記ノズルの前端部の前方へ案内することを特徴とする構成1~7のいずれかに記載のレーザ溶接機。
【0028】
この構成では、ワイヤ供給部から供給される単数または複数のワイヤ状の溶接材料が、ワイヤホルダを介してノズルの前端部の前方に案内される。このため、溶接作業時、ワークの溶接部に対して溶接材料が安定的に供給され、ワークの溶接部に安定したビード形成が可能となり、また、ワークの溶接部の機械的強度を向上することができる。
【0029】
[構成9]
前記ワイヤ供給部が前記レーザトーチごとに対応して1つずつ設けられていることを特徴とする構成8に記載のレーザ溶接機。
【0030】
この構成では、例えば、レーザトーチを複数備えている場合であっても、レーザトーチごとに行われる溶接において、ワイヤ状の溶接材料の太さや本数を変えることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係るレーザ溶接機は、ミラー保持部の後端部を出射部に対して前後方向に移動させることで、出射部の内部でミラーの前後方向の位置を調整し、レーザ光の光軸の上下方向の位置を調整することができ、上述の芯出し作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】この発明に係る第一実施形態のレーザ溶接機を示す概略図
【
図2】レーザ溶接機のレーザトーチとコネクタとを示す一部切り欠き側面図
【
図4】レーザ溶接機のレーザトーチの第一蓋部材を開けた状態を示す斜視図
【
図5】レーザ溶接機のレーザトーチの第二蓋部材を開けた状態を示す斜視図
【
図6】(a)レーザトーチのミラー調整部の前後方向への移動前の状態を示す一部切り欠き断面図、(b)レーザトーチのミラー調整部の前後方向への移動後の状態を示す一部切り欠き断面図
【
図7】カバーを外したレーザトーチとガス配管及び電気ケーブルとの接続を示す側面図
【
図11】この発明に係る第二実施形態のレーザ溶接機を示す概略図
【
図12】この発明に係る第二実施形態のレーザ溶接機を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明に係る第一実施形態のレーザ溶接機を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、レーザ溶接機1は、筐体2と、レーザトーチ3と、ワイヤ供給部4を備えている。
【0034】
図1、
図2に示すように、筐体2は、レーザ光発振器5、水冷部6および制御部7を内部に備えている。レーザ光発振器5は、制御部7の制御によりレーザ光を発振するものである。レーザ光発振器5には光ファイバ部8が光学的に接続されている。レーザ光発振器5により発振されたレーザ光が光ファイバ部8を介して、レーザトーチ3に伝送される(
図2参照)。レーザ光発振器5から発振されるレーザ光は、ファイバーレーザである。ファイバーレーザの出力は、100~2000Wの範囲内とするのが好ましい。ファイバーレーザの波長は、1060~1080nmの範囲内とすることが好ましい。
【0035】
水冷部6は、レーザトーチ3を冷却する冷却水Wを貯めるタンク9と、タンク9内の冷却水Wをレーザトーチ3へ送る送り配管10と、レーザトーチ3からタンク9内へ冷却水Wを戻す戻り配管11と、タンク9内の冷却水Wを送り配管10へ送り出すポンプ12とを有する。タンク9には、内部に貯められた冷却水Wを加熱するヒータ9aと、内部に貯められた冷却水Wを冷却するチラー9bとが設けられている。タンク9内に貯められた冷却水Wは、ヒータ9aおよびチラー9bを使用して、制御部7の制御に基づき、所定の温度範囲内(例えば、25℃~30℃)に維持されている。
【0036】
送り配管10は、レーザトーチ3寄りの位置で分岐する分岐送り配管10aを有する。分岐送り配管10aは、後述する光ファイバ部8のコネクタ13に接続されている。戻り配管11は、レーザトーチ3寄りの位置から分岐する分岐戻り配管11aを有する。分岐戻り配管11aは、後述する光ファイバ部8のコネクタ13に接続されている。
【0037】
光ファイバ部8はレーザ光発振器5と反対側(レーザトーチ3側)の端部にコネクタ13が取り付けられている。コネクタ13は筒状の金属製部材であり、レーザトーチ3のハンドル部18に着脱可能に接続される。コネクタ13内の筒軸の位置に、光ファイバ部8のレーザトーチ3側の端部がスリーブ(図示省略)により保持されている。コネクタ13は、その内周面と光ファイバ部8の外周面の間で構成されるコネクタ側水路13aと、コネクタ側水路13aに通じるコネクタ側給水口13bおよびコネクタ側排水口13cと有する。コネクタ側給水口13bには、管継手を介して分岐送り配管10aが接続されている。コネクタ側排水口13cには、管継手を介して分岐戻り配管11aが接続される。
【0038】
筐体2には、レーザトーチ3にシールドガスを供給するガス配管14と、外部電源に接続され、レーザトーチ3に電力を供給する電気ケーブル15とが設けられている。シールドガスは、不活性ガスであり、例えば、窒素ガスやアルゴンガスを使用することができる。ガス配管14は、シールドガスを充填したガスボンベ(図示省略)に接続されており、シールドガスの供給量が制御部7により制御される。
【0039】
筐体2の上部から延びる光ファイバ部8、送り配管10、戻り配管11、ガス配管14および電気ケーブル15は、まとめられて筒状の可とう性を有するケーブルカバー16により覆われている。
【0040】
レーザトーチ3は、レ-ザ光が前端から出射される筒状の出射部17と、出射部17の後側寄りの位置に一体に設けられる筒状のハンドル部18と、レーザ光発振器5を動作させるスイッチ部19と、出射部17およびハンドル部18を覆う樹脂製のカバー20と、出射部17の前端部に着脱可能に取り付けられるノズル21とを有する。
【0041】
図3に示すように、出射部17は長さ方向の軸線Sを有する金属製の筒状部材である。出射部17は、前側筒部22と、レンズ収納部23と、ミラー収容部24と、後側筒部25とが一体に形成されたものである。前側筒部22、レンズ収納部23、ミラー収容部24および後側筒部25は、前側からこの順序で前後方向に並んでいる。
【0042】
前側筒部22は、内周面22aと外周面に設けられたおねじ部22bとを有している。内周面22aは、軸線Sを中心とする円筒面である。前側筒部22の内部にノズル21の後端部を保持するコレット21aが収納されている。前側筒部22の内部にコレット21aが収納された状態で、おねじ部22bにコレットナット21bがねじ結合している。コレットナット21bにより、コレット21aに対してノズル21の後端部分がチャックされる。このとき、ノズル21が前側筒部22から前方に突出する状態となる。ノズル21の前端部(先端部)にはノズルチップ21cが着脱可能に取り付けられている。
【0043】
前側筒部22の下部には、ワイヤホルダ40が固定されている。ワイヤホルダ40は、ワイヤ供給部4から供給される単数または複数のワイヤ状の溶接材料Yをノズル21のノズルチップ21cの前方へ案内するものである。
【0044】
図3、
図4に示すように、レンズ収納部23は、内周面23aと、内周面23aの内部と連通する第一凹部23bおよび第二凹部23cとを有する。内周面23aは、軸線Sを中心とする円筒面である。第一凹部23bおよび第二凹部23cは、上方に開放する収納口を有しており、軸線Sに対して直交する状態で前後方向に並んで設けられている。第一凹部23bおよび第二凹部23cは、軸線Sに対して直交する断面が長方形となっている。第一凹部23bおよび第二凹部23cの下面(底面)は、内周面23aよりも下方に位置している。
【0045】
第一凹部23bの内部には、保護レンズ26を装着した第一ホルダ26aが出し入れ可能に嵌め込まれている。第一凹部23b内に第一ホルダ26aが嵌め込まれた状態で、保護レンズ26は、厚さ方向が前後方向となるように軸線Sに交差している。第二凹部23cの内部には、集光レンズ27を装着した第二ホルダ27aが出し入れ可能に嵌め込まれている。第二凹部23c内に第二ホルダ27aが嵌め込まれた状態で、集光レンズ27は、厚さ方向が前後方向となるように軸線Sに交差している。
【0046】
ミラー収容部24は、内周面24aを有している。内周面24aは軸線Sを中心とする円筒面である。内周面24aの内径は、レンズ収納部23の内周面23aの内径よりも大きい。ミラー収容部24の内部には、レーザ光を屈折させるミラー28が配置される。
【0047】
図5、
図6に示すように、後側筒部25は、内周面25aを有し、後方に開口している。内周面25aは、軸線Sを中心とする円筒面である。内周面25aの内径は、ミラー収容部24の内周面24aの内径よりも大きい。後側筒部25の後端部の上部にめねじ25bが上下方向に沿って設けられている。後側筒部25の内部には、ミラー調整部29が後方から嵌め合わされる。ミラー調整部29は、スリーブ30と、スリーブ30内に前後方向に移動可能に嵌め合わされたミラー保持部31とを有する。
【0048】
スリーブ30の前側部分の外周面に周溝30aとキー溝30bが設けられ、周溝30aにOリングが装着されている。スリーブ30の後側部分の上部にめねじ30cが、前後方向に複数(この実施形態では2つ)並んで設けられている。それぞれのめねじ30cは、スリーブ30を貫通している。それぞれのめねじ30cには、固定ねじ30dがねじ結合され、この固定ねじ30dのねじ結合により、スリーブ30に対してミラー保持部31が固定される。
【0049】
スリーブ30の前側部分が後側筒部25の内部に嵌め込まれており、Oリングにより後側筒部25の内周面25aとスリーブ30との間の気密性が確保されている。スリーブ30は、後側筒部25のめねじ25bにキー部材としてのおねじ部材25cがねじ込まれて、おねじ部材25cがキー溝30bに係合する。この係合により、スリーブ30が後側筒部25から抜け止めされる。
【0050】
ミラー保持部31は、円筒状をなしており、回転アクチュエータ(図示省略)を内蔵している。ミラー保持部31の前端部にミラー28が軸線Sに対して所定の角度をもって保持されている。この回転アクチュエータがミラー28を軸線S回りに所定の角度範囲内(例えば、上下方向の仮想線を基準として±2.5度の範囲内)で回転(揺動)させる。ミラー28は、ミラー収容部24内に配置されており、光ファイバ部8からハンドル部18の内部に出射されたレーザ光を出射部17の内部へと屈折させるものである。
図6(a)、(b)に示すように、ミラー保持部31は、ミラー保持部31をスリーブ30に対して前後方向に移動することにより、出射部17の内部へと屈折させるレーザ光の光軸の上下方向の位置を調整することができる。ミラー保持部31をスリーブ30に対して前後方向に移動させるには、固定ねじ30dをめねじ30cに対して緩めればよい。
図7に示すように、ミラー保持部31は、ハンドル部18の外側に沿って配線された電気ケーブル15に接続されている。
【0051】
図3に示すように、ハンドル部18は、出射部17のミラー収容部24の下部に対して、下方へ向かって後ろ向きに延び出して一体に設けられている。ハンドル部18は金属製の筒状部材である。ハンドル部18の内部にレーザ光が通る光路18aが設けられる。ハンドル部18の下端部に筒状のソケット32が固定されている。光路18aとソケット32の内部は連通しており、ソケット32にコネクタ13が着脱可能に取り付けられる。光路18aの内部には、コリメートレンズ18gが配置されている。コリメートレンズ18gにより、光ファイバ部8から光路18a内に出射されるレーザ光が平行光となる。
【0052】
図8、
図9に示すように、ハンドル部18は、光路18aに対して前側部分にハンドル部側水路18bおよびガス供給路18cが設けられている。ハンドル部側水路18bは、ハンドル部18の長さ方向に沿って、左右方向一方側(この実施形態では右側)に設けられている。
図10に示すように、ハンドル部側水路18bは、ハンドル部18の下部で分岐しており、その分岐端にハンドル部側給水口18dおよびハンドル部側排水口18eを有する。ハンドル部側給水口18dに送り配管10が接続され、ハンドル部側排水口18eに戻り配管11が接続されている。
【0053】
ガス供給路18cは、ハンドル部18の左右方向他方側(この実施形態では左側)に設けられている。ガス供給路18cは、ハンドル部18の上部に設けられるガス供給口18fを有する。ガス供給口18fにガス配管14が接続されている。
図7に示すように、ガス供給路18cは、ハンドル部18の上部からミラー収容部24の下部およびレンズ収納部23の下部を経て、前側筒部22の内部に接続されている。ガス供給路18cが設けられることで、ガス配管14内に圧送されるシールドガスが前側筒部22内に供給され、ノズル21の先端から噴出される。
【0054】
図5に示すように、カバー20は、出射部17、ハンドル部18およびミラー保持部31を覆う樹脂製の部材である。
図4に示すように、カバー20は、出射部17のレンズ収納部23の上方に設けられる第一開口部20cと、第一開口部20cを開閉する第一蓋部材20aとを有している。第一開口部20cは、第一蓋部材20aを開いた状態で、レンズ収納部23の第一凹部23bおよび第二凹部23cの収納口が露出する位置に設けられている。
【0055】
また、
図5に示すように、カバー20は、出射部17の後端部側に設けられる第二開口部20dと第二開口部20dを開閉する第二蓋部材20bとを有する。第二開口部20dは、出射部17の後端部の上方に設けられている。第二開口部20dは、第二蓋部材20bを開いた状態で、出射部17の後側筒部25からミラー保持部31の後端部に至る部位が露出する位置に設けられている。
【0056】
この発明の第一実施形態のレーザ溶接機1は以上のように構成される。このレーザ溶接機1は、第二蓋部材20bを開いた状態では、例えば工具41等を用いて、スリーブ30の固定ねじ30dを緩めて、ミラー保持部31をスリーブ30に対して前後方向に移動操作することができる。このため、
図6(a)、(b)に示すように、ミラー保持部31に保持されているミラー28をミラー保持部31と一体に前後方向に容易に移動させることができる。従って、レーザ溶接機1は、出射部17のノズル21の前端部からレーザ光が出射され、ノズル21のノズルチップ21cの形状に応じて、ノズルチップ21cの開口孔の中央にレーザ光の光軸に合わせることが容易となり、上述の芯出し作業が容易となって、溶接の作業性が向上する。
【0057】
また、レーザ溶接機1は、出射部17にレンズ収納部23が設けられている。レンズ収納部23は、出射部17の周方向の一部となる上方に収納口を有する第一凹部23bおよび第二凹部23cが設けられたものである。第一凹部23bの内部には、保護レンズ26を装着した第一ホルダ26aが出し入れ可能に嵌め込まれている。また、第二凹部23cの内部には、集光レンズ27を装着した第二ホルダ27aが出し入れ可能に嵌め込まれている。さらに、カバー20は、第一凹部23bおよび第二凹部23cの収納口の上方に位置する第一開口部20cと、第一開口部20cを開閉する第一蓋部材20aを有する。第一蓋部材20aを開いた状態で、第一凹部23bおよび第二凹部23cの収納口が露出する(
図4参照)。この状態で、第一開口部20cを通して、第一凹部23bに第一ホルダ26aを介して保護レンズ26を出し入れすることができる。また、第二凹部23cに第二ホルダ27aを介して集光レンズ27を出し入れすることができる。
【0058】
レーザ溶接機1は、ハンドル部18に、ハンドル部側水路18bが設けられている。水冷部6のタンク9に貯めた水がポンプ12により送り配管10を介してハンドル部側給水口18dからハンドル部側水路18bに送られる。そのハンドル部側水路18bを通る水によりレーザトーチ3のハンドル部18を冷却することができる。その結果、レーザ溶接時にレーザトーチ3のハンドル部18に熱が籠もらなくなり、作業者がより長い時間、ハンドル部18を把持して、溶接作業を行うことができる。
【0059】
また、水冷部6は、タンク9に貯めた水が所定の温度範囲内に維持されている。このため、タンク9に貯められた水が所定の温度範囲を超える温度となって、ハンドル部に対する冷却能力が低下することを防止することができる。さらに、溶接の作業現場の気温が低い場合であっても、溶接作業の開始する際、タンク9に貯められた水を所定の温度範囲内へ昇温させるので、溶接作業を行う準備時間を短縮することが可能となる。
【0060】
レーザ溶接機1は、光ファイバ部8がレーザ光発振器5と反対側の端部に筒状のコネクタ13を有し、ハンドル部18が筒状のソケット32を有し、ソケット32の内部にコネクタ13が着脱可能に接続されるものである。そして、コネクタ13は、コネクタ側水路13aと、コネクタ側水路13aに通じるコネクタ側給水口13bおよびコネクタ側排水口13cと有している。コネクタ側給水口13bには、送り配管10から分岐する分岐送り配管10aが接続されている。コネクタ側排水口13cには、戻り配管11から分岐する分岐戻り配管11aが接続されている。このため、ハンドル部18を水により冷却する水冷部6を利用して、光ファイバ部の端部に取り付けられたコネクタ13も水により冷却することができる。
【0061】
レーザ溶接機1は、ワイヤ状の溶接材料Yを供給するワイヤ供給部4を備えている。また、レーザトーチ3は、出射部17に取り付けられたワイヤホルダ40を有している。ワイヤ供給部4から供給された溶接材料Yが、ワイヤホルダ40を介してレーザトーチ3のノズル21の先端へ案内される。このため、溶接作業時、ワークの溶接部に対して溶接材料が安定的に供給され、ワークの溶接部に安定したビード形成が可能となり、また、ワークの溶接部の機械的強度を向上することができる。
図1に示すワイヤ供給部4は、複数の(2本の)ワイヤ状の溶接材料Yを供給しているが、これに限られず、1本(単数)のワイヤ状の溶接材料Yを供給するものであってもよい。
【0062】
この発明に係る第二実施形態のレーザ溶接機50を図面に基づいて説明する。
図11に示すように、このレーザ溶接機50は、1つの筐体2と、2つのレーザトーチ3と、2つのワイヤ供給部4と、2つのレーザ光発振器5と、2つの水冷部6と、2つの制御部7を備えている点で、上述の第一実施形態と相違する。その他の構成は、第一実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
図11に示すように、レーザ溶接機50は、1つの筐体2と、2つのレーザトーチ3およびワイヤ供給部4を備えている。筐体2は、その内部に2つのレーザ光発振器5と、2つの水冷部6と、2つの制御部7を有する。筐体2内の上部には2つの制御部7が設けられている。2つの制御部7のうちの第一制御部7aが、筐体2の正面部に正対した状態での左右方向(筐体2の左右方向)右側に位置し、第一制御部7aの表示部や操作部が筐体2内の上部の正面に配置されている。また、2つの制御部7のうちの第二制御部7bが、筐体2の左右方向左側に位置し、第二制御部7bの表示部や操作部が筐体2内の上部の正面に配置されている。
【0064】
筐体2内の下部は上下2段に仕切られている。筐体2内の上段には、2つのレーザ光発振器5のうちの第一レーザ光発振器5aと、2つの水冷部6のうちの第一水冷部6aが配置されている。筐体2内の下段には、2つのレーザ光発振器5のうちの第二レーザ光発振器5bと、2つの水冷部6のうちの第二水冷部6bが配置されている。2つの水冷部6の筐体2の正面部には、タンク9内の冷却水Wの水温が表示されている。
【0065】
第一レーザ光発振器5aには、2つのレーザトーチ3のうちの第一レーザトーチ3aが光ファイバ部8を介して接続されている。第一レーザトーチ3aのハンドル部18が第一水冷部6aにより冷却されている。第一レーザトーチ3aの光ファイバ部8、送り配管10、戻り配管11、ガス配管14および電気ケーブル15がケーブルカバー16により覆われている。第一レーザ光発振器5aは、第一制御部7aによりレーザ光の発振が制御される。
【0066】
第二レーザ光発振器5bには、2つのレーザトーチ3のうちの第二レーザトーチ3bが光ファイバ部8を介して接続されている。第二レーザトーチ3bのハンドル部18が第二水冷部6bにより冷却されている。第二レーザトーチ3bの光ファイバ部8、送り配管10、戻り配管11、ガス配管14および電気ケーブル15がケーブルカバー16により覆われている。第二レーザ光発振器5bは、第二制御部7bによりレーザ光の発振が制御される。
【0067】
筐体2は、筐体2の左右方向の両側面部に収容凹部51が設けられている。
図12に示すように、収容凹部51は、筐体2の左右方向内向きに凹み、その左右方向外向きが開放している。それぞれの収容凹部51にホイール52が設けられている。それぞれの収容凹部51は側面扉53を有している。側面扉53は、収容凹部51の左右方向外側を覆う状態と開放する状態との間で開閉可能に取り付けられている。
【0068】
筐体2の内部から筐体2の左右方向右側の収容凹部51内へ第一レーザトーチ3aのケーブルカバー16が延び出している。第一レーザトーチ3aのケーブルカバー16は、ホイール52に巻き回されることで、筐体2の左右方向右側の収容凹部51内に第一レーザトーチ3aが収容される。この収容状態で、筐体2の左右方向右側の側面扉53を閉じることができる。
【0069】
筐体2の左右方向右側の収容凹部51の下方の正面側に切り欠き51aが設けられている。この切り欠き51aに第一レーザトーチ3aのケーブルカバー16を通して、側面扉53を閉じた状態で、第一レーザトーチ3aを収容凹部51の外部に持ち出すことができる。筐体2の内部から筐体2の左右方向左側の収容凹部51内へ第二レーザトーチ3bのケーブルカバー16が延び出している。筐体2の左右方向左側の収容凹部51の構造は、筐体2の左右方向右側の収容凹部51と同じ構造であるので、その説明を省略する。
【0070】
筐体2は正面扉54を有している。正面扉54は、筐体2の正面部を覆う状態と筐体2の正面部が露出する状態との間で開閉可能に取り付けられている。正面扉54を開く状態では、2つの水冷部6のタンク9内の冷却水Wの水温を水温表示部(図示省略)により確認することができる。
【0071】
第一レーザトーチ3aおよび第二レーザトーチ3bはワイヤホルダ40を有する。2つのワイヤ供給部4のうちの第一ワイヤ供給部4aから供給された溶接材料Yが、ワイヤホルダ40を介して第一レーザトーチ3aのノズル21のノズルチップ21cの前端部へ案内される。2つのワイヤ供給部4のうちの第二ワイヤ供給部4bから供給された溶接材料Yが、ワイヤホルダ40を介して第二レーザトーチ3bのノズル21のノズルチップ21cの前端部へ案内される。
【0072】
以上のように構成された第二実施形態のレーザ溶接機50では、第一レーザトーチ3aが、これに対応する第一水冷部6aによりハンドル部18が冷却される。また、第二レーザトーチ3bが、これに対応する第二水冷部6bによりハンドル部18が冷却される。このため、第一レーザトーチ3aと第二レーザトーチ3bとで、それぞれ独立して、かつ同時に様々な溶接作業を行うことができる。例えば、第一レーザトーチ3aを使用して、ワークの仮溶接を行い、第二レーザトーチ3bを用いて、仮溶接後のワークの本溶接を行うことができる。また、例えば、第一レーザトーチ3aと第二レーザトーチ3bとを使用して、それぞれ別部材となるワークの溶接作業を同時に行うことも可能となり、溶接作業の効率を向上させることができる。
【0073】
また、レーザ溶接機50では、第一レーザトーチ3aに対応して、第一ワイヤ供給部4aが設けられ、第二レーザトーチ3bに対応して、第二ワイヤ供給部4bが設けられている。すなわち、レーザトーチ3ごとに対応して1つずつワイヤ供給部4が設けられている。このため、第一レーザトーチ3aと第二レーザトーチ3bに対して個別に、それぞれのワークの溶接に適した太さや本数のワイヤ状の溶接材料Yを、第一ワイヤ供給部4aと第二ワイヤ供給部4bとからそれぞれ供給することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 レーザ溶接機
2 筐体
3 レーザトーチ
3a 第一レーザトーチ
3b 第二レーザトーチ
4 ワイヤ供給部
4a 第一ワイヤ供給部
4b 第二ワイヤ供給部
5 レーザ光発振器
6 水冷部
6a 第一水冷部
6b 第二水冷部
7 制御部
8 光ファイバ部
9 タンク
10 送り配管
10a 分岐送り配管
11 戻り配管
11a 分岐戻り配管
13 コネクタ
13a コネクタ側水路
13b コネクタ側給水口
13c コネクタ側排水口
14 ガス配管
15 電気ケーブル
16 ケーブルカバー
17 出射部
18 ハンドル部
18a 光路
18b ハンドル部側水路
18c ガス供給路
18d ハンドル部側給水口
18e ハンドル部側排水口
18f ガス供給口
19 スイッチ部
20 カバー
20a 第一蓋部材
20b 第二蓋部材
20c 第一開口部
20d 第二開口部
21 ノズル
22 前側筒部
23 レンズ収納部
23b 第一凹部
23c 第二凹部
24 ミラー収容部
25 後側筒部
26 保護レンズ
26a 第一ホルダ
27 集光レンズ
27a 第二ホルダ
28 ミラー
29 ミラー調整部
30 スリーブ
30c めねじ
30d 固定ねじ
31 ミラー保持部
32 ソケット
40 ワイヤホルダ
41 工具
50 レーザ溶接機
S 軸線
Y 溶接材料