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特開2024-103825キャップおよびこのキャップに対する加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103825
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】キャップおよびこのキャップに対する加工方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20240726BHJP
   B65D 43/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B65D47/36 310
B65D43/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007733
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秀島 智
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA25
3E084AB01
3E084CA01
3E084DA01
3E084DC04
3E084EA03
3E084EB01
3E084EB02
3E084EC04
3E084FA01
3E084FC07
3E084GA06
3E084GB06
3E084GB12
3E084HB05
3E084HC03
3E084HD01
3E084HD04
3E084JA18
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LB07
(57)【要約】
【課題】密封性を向上させうるとともに、容器内の液体の飛び散りを低減させうるキャップを提供する。
【解決手段】キャップ1は、容器Bに取り付けられるキャップ本体2と、キャップ本体2に着脱自在の上蓋3と、補助栓4とを備える。キャップ本体2は、注出筒24を有する。上蓋3は、注出筒24の内周面244に嵌合する筒状の内周筒34を有する。補助栓4は、前記内周筒34の内側に配置されており、内周筒34の外側に向かって突っ張るとともに、容器B内の内容物Lを留める。補助栓4は、補助筒41と、仕切り部42とを有する。筒状である補助筒41は、内周筒34の内周面341と嵌合する。仕切り部42は、補助筒41の内側の空間を、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとに仕切る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けられるキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱自在の上蓋とを備えるキャップであって、
注出筒を有するキャップ本体と、
前記注出筒の内周面に嵌合する筒状の内周筒を有する上蓋と、
前記内周筒の内側に配置されており、前記内周筒の外側に向かって突っ張るとともに、前記容器内の内容物を留める補助栓とを備え、
前記補助栓は、
前記内周筒の内周面と嵌合する筒状の補助筒と、
前記補助筒の内側の空間を、前記上蓋側の空間と、前記キャップ本体側の空間とに仕切る仕切り部とを有することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記補助栓は、前記キャップ本体側の空間に向かって突出する突状部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
容器に取り付けられるキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱自在の上蓋とを備えるキャップであって、
注出筒を有するキャップ本体と、
前記注出筒の内周面に嵌合する筒状の内周筒を有する上蓋と、
前記キャップ本体に設けられ、前記キャップ本体に前記上蓋が装着された状態における、前記上蓋のある方向に向かう力が加わることで破断する弱化部と、
前記注出筒の内側に配置されており、前記弱化部を介して、前記キャップ本体に保持されている補助栓とを備え、
前記上蓋は、前記内周筒の内側に前記補助栓を保持可能な保持部を有し、
前記補助栓は、
前記内周筒の内周面と嵌合可能な筒状の補助筒と、
前記補助筒の内側の空間を、前記上蓋側の空間と、前記キャップ本体側の空間とに仕切る仕切り部と、
前記保持部によって保持される被保持部を有することを特徴とするキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のキャップに対する加工方法であって、
前記請求項3に記載のキャップを成形する成形工程と、
前記成形工程で成形されたキャップの上蓋を、前記成形工程で成形されたキャップのキャップ本体に装着した状態で、前記成形工程で成形されたキャップの補助栓を前記上蓋のある方向に向かって押圧することで、前記弱化部を破断して、前記キャップ本体から前記補助栓を分離する分離工程を備えることを特徴とするキャップに対する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられるキャップおよびこのキャップに対する加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドレッシング、または醤油などの液体を入れた容器に蓋をするキャップは、その液体の必要性に応じて開閉できる構造となっている。
【0003】
容器内の液体が単に保管される場合、消費者は、キャップを閉じておく。閉じたキャップから容器内の液体が漏れ出してくるのは好ましくないので、キャップには、液体を容器内に密封するための高い密封性が求められる。
【0004】
一方で、容器内の液体が必要な場合、消費者は、キャップを開けて、容器内の液体を注ぎ出す。このとき、キャップに付着した液体が垂れて、容器およびキャップの外に飛び散るのは好ましくない。したがって、キャップには、そのキャップが閉じた状態のときにキャップに付着した液体を、そのキャップ内に留めておく機能が求められる。
【0005】
さらに、多くの人々(消費者)がキャップを利用している。したがって、キャップの製造者は、上記キャップを大量に製造する必要がある。よって、上記キャップの製造が容易であることが求められる。
【0006】
上記要求に応えるキャップの一例である注出キャップが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-101320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の注出キャップは、注出筒にシール筒を嵌合させることで、容器体を密封している。しかしながら、注出筒と、シール筒との間に隙間が生じるような変形が、注出筒および/またはシール筒で生じることによって、注出筒と、シール筒との間に生じた隙間から液体が容器の外に漏れだす問題が生じる。
【0009】
さらに、特許文献1の注出キャップは、輪郭が縦長の棒状の中栓をシール筒に内嵌させることで、容器内にあった液体が、シール筒の内部へ浸入することを抑制している。しかしながら、特許文献1の注出キャップの上蓋を開けると、中栓の下部に付着していた液体が、中栓のテーパ形状の面を伝って、シール筒の外側の面や、上蓋の天板の内側の面に流れ込む。このような箇所に流れ込んだ液体は、消費者の意図しない箇所に飛び散る問題を生じさせる。
【0010】
そこで、本発明は、密封性を向上させうるとともに、容器内の液体の周囲への飛び散りを低減させうるキャップと、前記キャップを容易に製造するためのキャップと、このキャップに対する加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の発明に係るキャップは、容器に取り付けられるキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱自在の上蓋とを備えるキャップであって、注出筒を有するキャップ本体と、前記注出筒の内周面に嵌合する筒状の内周筒を有する上蓋と、前記内周筒の内側に配置されており、前記内周筒の外側に向かって突っ張るとともに、前記容器内の内容物を留める補助栓とを備え、前記補助栓は、前記内周筒の内周面と嵌合する筒状の補助筒と、前記補助筒の内側の空間を、前記上蓋側の空間と、前記キャップ本体側の空間とに仕切る仕切り部とを有することを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係るキャップは、第1の発明に係るキャップにおいて、前記補助筒は、前記キャップ本体側の空間に向かって突出する突状部をさらに有することを特徴とする。
【0013】
第3の発明に係るキャップは、容器に取り付けられるキャップ本体と、前記キャップ本体に着脱自在の上蓋とを備えるキャップであって、注出筒を有するキャップ本体と、前記注出筒の内周面に嵌合する筒状の内周筒を有する上蓋と、前記キャップ本体に設けられ、前記キャップ本体に前記上蓋が装着された状態における、前記上蓋のある方向に向かう力が加わることで破断する弱化部と、前記注出筒の内側に配置されており、前記弱化部を介して、前記キャップ本体に保持されている補助栓とを備え、前記上蓋は、前記内周筒の内側に前記補助栓を保持可能な保持部を有し、前記補助栓は、前記内周筒の内周面と嵌合可能な筒状の補助筒と、前記補助筒の内側の空間を、前記上蓋側の空間と、前記キャップ本体側の空間とに仕切る仕切り部と、前記保持部によって保持される被保持部を有することを特徴とする。
【0014】
第3の発明に係るキャップに対する加工方法は、第3の発明に係るキャップを成形する成形工程と、前記成形工程で成形されたキャップの上蓋を、前記成形工程で成形されたキャップのキャップ本体に装着した状態で、前記成形工程で成形されたキャップの補助栓を前記上蓋のある方向に向かって押圧することで、前記弱化部を破断して、前記キャップ本体から前記補助栓を分離する分離工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキャップによると、補助筒および仕切り部が内周筒に対して、その外側に向かって突っ張り、容器内の空間と、容器外の空間とを連通する隙間が注出筒と内周筒との間に生じるのを抑制するため、密封性を向上させうる。加えて、キャップ本体に上蓋が装着されていない状態で容器内の液体を注ぎ出すとき、補助筒および仕切り部に付着した液体が、補助筒の内側のキャップ本体側の空間に留まるため、容器内の液体の周囲への飛び散りを低減しうる。
【0016】
また、本発明のキャップによると、キャップ本体および/または上蓋に補助栓の機能を有する部分を設ける必要がないため、上蓋およびキャップ本体の構造が簡素になる。よって、前記キャップを容易に製造できる。
【0017】
本発明のキャップに対する加工方法によると、キャップ本体に上蓋を装着した状態で、上蓋に向かって補助栓を押圧するだけで前記キャップを製造できる。よって、本発明のキャップに対する加工方法によると、前記キャップを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態のキャップの断面図であり、上蓋が閉じた状態を示す図である。
図2】同キャップの断面図であり、上蓋が開いた状態を示す図である。
図3】同キャップの断面図であり、図1に示す補助栓の左側周辺を拡大した図である。
図4】同キャップおよびそのキャップが取り付けられた容器の断面図であり、同キャップが容器を密封している状態を示す図である。
図5】同キャップおよびそのキャップが取り付けられた容器の断面図であり、容器内の液体が注出筒から注ぎ出される状態を示す図である。
図6】同キャップの断面図であり、キャップ本体から補助栓を分離する前の状態を示す図である。
図7】同キャップの断面図であり、同キャップの製造方法における成形工程の前段を説明する図である。
図8】同キャップの断面図であり、同キャップの製造方法における成形工程の後段を説明する図である。
図9】成形された同キャップの断面図であり、同キャップの製造方法における分離工程を説明する図である。
図10】成形された同キャップの断面図であり、同キャップの製造方法における保持工程を説明する図である。
図11】成形された同キャップ、および、そのキャップが取り付けられた容器の断面図であり、高温の液体が入れられた前記容器に同キャップが取り付けられる工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るキャップ1およびこのキャップ1の製造方法について、図面に基づき説明する。図面において、「下」の文字が付された矢印の指し示す方向は、重力の方向を示す。そして、明細書においては、重力の方向を「下方向」と称する。また、明細書および図面では、下方向に対して、反対向きの方向を「上」方向と称し、上方向および下方向に対して直交し、紙面に向かって左側に向かう方向を「左」方向とし、左方向に対して反対向きの方向を「右」方向と称する。さらに、以下では、筒状体、または、筒状の部材について説明する。これらの中空部分の出入口を有する両端部を結ぶ方向を長手方向と明細書において称し、長手方向と直交する方向を径方向と称する。
【0020】
まず、実施形態のキャップ1について説明した後に、このキャップ1の製造方法について説明する。なお、実施形態のキャップ1は、ヒンジ式である。しかしながら、本発明は、ヒンジ式のキャップ1に限定されるものではない。
【0021】
図1および図2に示すように、実施形態のキャップ1は、容器Bに取り付けられるキャップ本体2と、キャップ本体2に着脱自在の上蓋3と、上蓋3に取り付けられる補助栓4とを備える。
【0022】
キャップ本体2は、容器Bの口部mに取り付けられる。このため、キャップ本体2は、容器Bの外側から口部mを覆う台座部20と、この台座部20に接続されて口部mに外周から接する外筒部21と、台座部20に接続されて口部mに内側から接する内筒部22とを有する。すなわち、キャップ本体2の台座部20、外筒部21および内筒部22は、口部mを挟みこむように構成されている。また、キャップ本体2には、上蓋3が装着される(上蓋3が閉じられる)。このため、キャップ本体2は、上蓋3に係合する係合部23を有する。
【0023】
キャップ本体2は、容器B内の内容物を注ぎ出す注出筒24を有する。容器Bの内容物は、例えば、ドレッシングまたは醤油などの液体Lである。注出筒24は、容器B内の液体Lが注ぎ出される開口である注出口241と、注出口241に通じる注出通路242と、容器B内の液体Lが注出通路242に入るための開口である注入口243とを有する筒状体である。注出筒24は、容器Bの外側に注出口241が配置されるとともに、注入口243が容器Bの内側に配置されるように台座部20に設けられる。これにより、注出通路242は、容器Bの外側の空間と、容器Bの内側の空間とを連通する。このように注出筒24を台座部20に設けることにより、容器Bを傾けることで、容器B内の液体Lが、注出口241から注出通路242に入って、注出口241から、容器Bの外に注ぎ出される。
【0024】
上蓋3は、閉じた状態に上蓋3が配置された状態において、注出通路242の外側から注出口241を覆う天板31と、前記状態で天板31からキャップ本体2側に向かって延びる筒状のスカート32とを有する。スカート32は、ヒンジ5を介して、キャップ本体2に接続されている。
【0025】
ヒンジ5を変形させることで、上蓋3は、閉じた状態の位置と、キャップ本体2に上蓋3が装着されていない状態(上蓋3が開いた状態)の位置との間を往復できる。スカート32のキャップ本体2側の内縁部には、キャップ本体2の係合部23と係合する被係合部33が設けられている。閉じた状態の位置に上蓋3が移動することで、係合部23が被係合部33と係合する。これにより、上蓋3が、閉じた状態の位置で保持される。
【0026】
閉じた状態の位置にある上蓋3が容器Bを密封するために、上蓋3は、前記状態の位置にある天板31のキャップ本体2側の面から、キャップ本体2に向かって延びる内周筒34を有する。内周筒34は、注出筒24の内側から、その内周面244に嵌合する筒状体である。注出筒24に内周筒34が嵌合することで、注出筒24の内周面244の全周が、内周筒34と当接するとともに、注出口241を天板31が覆う。図3では、注出筒24の内周面244における下側の部分の全周が、内周筒34の下側の部分と当接している。これにより、容器B内の液体Lが注入口243を通って容器B外に出ることを、天板31および内周筒34が阻止する。つまり、閉じた状態の位置に上蓋3が配置されることで、天板31および内周筒34が、容器Bを密封する。
【0027】
ところが、キャップ1を成形したとき、または、上蓋3を繰り返し開閉したときなどに、注出筒24および/または内周筒34が変形して、キャップ1による密封性を損なう場合がある。この場合における、注出筒24および内周筒34の変形について、以下に具体的に説明する。
【0028】
上蓋3が閉じた位置における、内周筒34から離れる方向に注出筒24が変形すると、キャップ1による密封性が損なわれる。具体的には、注出筒24が、その径方向外側に向かって変形すると、キャップ1による密封性が損なわれる。このような変形には、注出筒24の内周面244が部分的に、その径方向外側に向かって変形する場合を含む。注出筒24は、台座部20側の基端部245と、その反対側の先端部246とを有する。上記変形には、基端部245を中心に、先端部246が、その径方向外側に向かう変形も含まれる。このように注出筒24が変形した場合、上蓋3を閉じた状態において、注出口241と、注入口243とを連通する隙間が、注出筒24と、内周筒34との間に生じる。このような隙間に、容器B内の液体Lが入ると、容器B内の液体Lは、注出口241から容器B外に出てしまう。つまり、前記隙間が生じることで、容器Bの密封性が損なわれる。以降において、上蓋3を閉じた状態において、注出筒24と、内周筒34との間に生じる、注出口241と、注入口243とを連通する隙間を、「漏れ隙間」と称する。
【0029】
上蓋3が閉じた位置における、注出筒24から離れる方向に内周筒34が変形すると、キャップ1による密封性が損なわれる。具体的には、内周筒34が、その径方向内側に向かって変形すると、キャップ1による密封性が損なわれる。このような変形には、内周筒34の外周面が部分的に、その径方向内側に向かって変形する場合を含む。内周筒34は、天板31側の基端部342と、その反対側の先端部343とを有する。上記変形には、基端部342を中心に、先端部343が、その径方向内側に向かう変形も含まれる。このように内周筒34が変形した場合も、注出筒24が、その径方向外側に向かって変形した場合と同様に、漏れ隙間が生じる。これにより、容器Bの密封性が損なわれる。
【0030】
補助栓4は、内周筒34の内側に配置される。補助栓4は、内周筒34に対して、その外側に向かって突っ張るとともに、上蓋3が開いた状態のときに、補助栓4に付着している液体Lを一時的に保持する。このために、補助栓4は、内周筒34の内周面341と嵌合する筒状の補助筒41と、補助筒41の内側の空間を仕切る仕切り部42とを有する。
【0031】
補助筒41は、上蓋3に取り付けられる。このため、図3に示すように、上蓋3には、内周筒34の内側に、補助筒41を保持するための保持部35が設けられている。保持部35は、上蓋3が閉じられた状態で天板31からキャップ本体2に向かって延びる保持筒351と、保持筒351の外側に向かって突出する保持用突部352とを有する。補助筒41における上蓋3側の部分には、補助筒41の内側に向かって突出する被保持部412が設けられている。内周筒34と、保持筒351との間に補助筒41が挟まれた状態で、補助栓4の被保持部412が、上蓋3の保持用突部352に係合することで、補助栓4が上蓋3に保持される。
【0032】
仕切り部42は、補助筒41の内側の空間を、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとに仕切る。具体的に、仕切り部42は、上蓋3が閉じた状態で、断面視で、補助筒41の内側の空間を横断するように補助筒41に設けられる。これにより、仕切り部42は、補助筒41を介して、内周筒34に対して、その径方向外側に向かって突っ張る。よって、漏れ隙間が生じても、仕切り部42の突っ張りにより、内周筒34がその径方向外側に向かって変形する。この変形により、内周筒34が、漏れ隙間を埋める。結果、キャップ1による容器Bの密封性が確保される。
【0033】
また、仕切り部42が内周筒34に対して突っ張るので、内周筒34が、その径方向内側に向かって変形することを抑制するための構造を内周筒34に設ける必要がない。言い換えると、内周筒34の変形を抑制するために、内周筒34の剛性を高めるリブなどの厚肉の構造を内周筒34に設ける必要がない。したがって、内周筒34は、射出成形するときの冷却時において、樹脂の収縮による窪み状の変形であるひけマークが生じにくい簡素な構造にできる。これにより、上蓋3を閉じた状態における、注出筒24の内周面244と当接する内周筒34の面にひけマークが生じることが防止される。よって、ひけマークによって漏れ隙間が生じることが防止される。結果、キャップ1による容器Bの密封性が確保される。
【0034】
以下、前記キャップ1の好ましい形態について図3を参照して説明する。
【0035】
補助栓4は、キャップ本体2側の空間42Bに向かって突出する突状部43をさらに有することが好ましい。具体的には、補助筒41は、仕切り部42よりもキャップ本体2側の第1部分416と、仕切り部42よりも上蓋3側の第2部分417とを有する。そして、突状部43は、第1部分416の内周面413からキャップ本体2側の空間42Bに向かって突出する。突状部43は、第1部分416の内周面413の全周または一部分に設けられる。図3に示す突状部43は、内周面413の全周からキャップ本体2側の空間42Bに向かって突出している。
【0036】
さらに、図3には、補助栓4の内周面413の全周に設けられる突状部43が、上蓋3が閉じられた状態で、補助筒41の長手方向(上下方向)に間隔をあけて2か所設けられている。
【0037】
仕切り部42は、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとが連通しないように、補助筒41の内側の空間を仕切ることが好ましい。具体的には、仕切り部42は、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとを連通するような貫通孔などが設けられない構造である。
【0038】
仕切り部42は、内周筒34の径方向に沿った面を有する板状の部分であることが好ましい。具体的には、図3に示す仕切り部42は、板状であり、その板状の平面部分が左右方向、すなわち内周筒34の径方向に沿った形状である。このようにすると、仕切り部42は、内周筒34の径方向外側に向かって直接的に突っ張れる。したがって、仕切り部42は、注出筒24および/または内周筒34の変形が大きくとも、その変形により生じる漏れ隙間を埋めるように内周筒34を変形させることできる。
【0039】
補助筒41は、先端部343から基端部342側の内周面341を覆うことが好ましい。
【0040】
補助筒41における、第2部分417の内周面415は、上蓋3の保持筒351と当接することが好ましい。このようにすると、注出筒24と、内周筒34との間に隙間が生じるような注出筒24および/または内周筒34の変形に対して、上蓋3の保持筒351も内周筒34に対して、その内側から突っ張る。よって、漏れ隙間が生じても、仕切り部42および保持筒351の突っ張りにより、内周筒34が、その径方向外側に向かって変形する。この変形により、内周筒34が漏れ隙間を埋める。結果、キャップ1による容器Bの密封性が確保される。
【0041】
第1部分416の厚み(図3における第1部分416の左右方向の長さ)は、第2部分417の厚み(図3における第2部分417の左右方向の長さ)よりも大きいことが好ましい。このようにすると、先端部343が、内周筒34の径方向内側へ変形することを第2部分417が効果的に防止する。結果、キャップ1による容器Bの密封性が確保される。
【0042】
以下、キャップ1の作用について、図4および図5を参照して説明する。
【0043】
図4に示すように、上蓋3が閉じられた状態で容器Bを斜めに傾けることで、容器B内の液体Lは、注出筒24に到達する。この液体Lは、注入口243から注出通路242に入るが、注出口241に向かうことを内周筒34によって阻止される。したがって、上蓋3が閉じられた状態の容器Bを斜めに傾けても、注出口241から液体Lが出てこない。
【0044】
上蓋3は、閉じた状態の位置と、開いた状態の位置との間を往復する。上蓋3を繰り返し開閉すると、注出筒24における、その径方向外側への変形、および/または、内周筒34における、その径方向内側への変形が生じる場合がある。このような、注出筒24および/または内周筒34の変形により漏れ隙間が生じても、内周筒34に対する仕切り部42の突っ張りにより、内周筒34がその径方向外側に向かって変形する。この変形により、内周筒34が、漏れ隙間を埋める。結果、上蓋3を繰り返し開閉するなどして、注出筒24および/または内周筒34が変形したとしても、上蓋3を閉じた状態では、注出口241から液体Lが出てこない。
【0045】
また、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとが連通しないような構造の仕切り部42であれば、上蓋3側の空間42Aに液体Lが入ることを仕切り部42が阻止する。したがって、容器B内の液体Lの上蓋3への付着が防止される。
【0046】
一方で、図5に示すように、上蓋3が開いた状態で容器Bを斜めに傾けることで、容器B内の液体Lは、注出口241を通って容器Bの外に注ぎ出される。
【0047】
注出口241から液体Lが注ぎ出されるとき、補助筒41および/または仕切り部42に付着している液体Lは、キャップ本体2側の空間42Bに留められる。具体的には、液体Lは、その粘性により、補助筒41の第1部分416の内周面413、および、仕切り部42における、キャップ本体2側の面に保持される。このため、上蓋3を閉じていたときに補助栓4に付着した液体Lは、上蓋3以外の場所に飛び散りにくい。
【0048】
また、突状部43を有する補助栓4であれば、仕切り部42から、第1部分416の内周面413を伝いながら、補助筒41のキャップ本体2側の端部414に向かって流動する液体Lが突状部43によってせき止められる。これにより、突状部43と仕切り部42との間に、液体Lが留められる。結果、上蓋3以外の場所に液体Lが飛び散りにくい。
【0049】
さらに、上下方向に間隔をあけて2か所の突状部43が設けられている補助栓4であれば、突状部43と、仕切り部42との間だけでなく、2か所の突状部43の間にも液体Lを留めることができる。このような補助栓4は、1か所の突状部43がある場合よりも多くの量の液体Lをキャップ本体2側の空間42Bに留めることができる。
【0050】
加えて、上蓋3側の空間42Aと、キャップ本体2側の空間42Bとが連通しない仕切り部42であれば、キャップ本体2側の空間42Bに留まった液体Lが、上蓋3側の空間42Aに流入することを、仕切り部42が阻止する。したがって、容器B内の上蓋3側の空間42Aに液体Lが入って、その液体Lが上蓋3に付着することが防止される。
【0051】
実施形態のキャップ1の製造方法について、図6から図10を参照して説明する。キャップ1の製造方法は、キャップ1を製造するためのキャップ9を一体で成形する成形工程と、キャップ9に対する加工工程であって、キャップ本体2から補助栓4を分離する分離工程と、補助栓4を上蓋3に保持させる保持工程とを備える。
【0052】
図6に示すように、成形工程によって成形されるキャップ9は、補助栓4が弱化部44を介してキャップ本体2に保持されていることが好ましい。具体的に、弱化部44は、その周囲よりも、注出筒24の長手方向(上下方向)に沿った肉厚が小さい部分である。したがって、弱化部44は、上方向、または、下方向への力が加わることで容易に破断する。このような弱化部44に保持された補助栓4は、上蓋3を閉じた状態で、上方向、すなわち上蓋3の方向に向かって押圧される。これにより、弱化部44は破断して、補助栓4が上蓋3に向かって移動した後に、補助栓4が上蓋3に保持される。このようにすると、キャップ本体2および/または上蓋3に補助栓4の機能を有する部分を設ける必要がないため、上蓋3およびキャップ本体2の構造が簡素になる。したがって、上蓋3およびキャップ本体2の成形が容易になる。なお、弱化部44は、注出筒24の長手方向への力が加わることで容易に破断すれば、どのような構造であっても構わない。
【0053】
また、弱化部44は、キャップ本体2における、内周筒34の内側の部分と、補助栓4における、補助筒41の外周面とを接続することが好ましい。かつ、図6に示すように、弱化部44は、補助筒41を仕切り部42とで挟む位置に配置されることが好ましい。
【0054】
図7に示すように、成形工程では、キャップ本体2と、上蓋3と、補助栓4とを一体で成形するための金型に、流動性のある高温の合成樹脂が流し込まれる。金型に流し込まれる合成樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂である。図7に例示する金型は、上方向に移動可能な上型UMと、下方向に移動可能な下型LMとを備える。合成樹脂は、上型UMを下型LMに合わせたときに、上型UMと、下型LMとの間に生じる空間に流し込まれる。
【0055】
上型UMと、下型LMとの間に生じる空間に流し込まれた合成樹脂は、その温度が下がることによって固まり始める。図7に示す上型UMは、複数に分割可能な構造となっており、補助栓4における、第2部分417の内周面415を含む部分を成形するための中央上型UM1と、中央上型UM1を取り囲む外側上型UM2と有する。合成樹脂が一定程度固まると、外側上型UM2がキャップ9から離される。この後、中央上型UM1がキャップ9から離される。
【0056】
中央上型UM1が上方向、すなわちキャップ9から離れる方向に移動するとき、中央上型UM1が、補助栓4の被保持部412に引っ掛かる。このため、補助栓4は、中央上型UM1によって上方向に引っ張られる。一方で、補助栓4の突状部43が下型LMに引っ掛かっているため、補助栓4は、下型LMによって下方向に引っ張られる。つまり、中央上型UM1からキャップ9を離型させるときに補助栓4にかかる力は、弱化部44ではなく、下型LMが受ける。これにより、弱化部44が破断することなく、中央上型UM1がキャップ9から離れて、上型UMからキャップ9が離型される。言い換えると、突状部43は、キャップ9から離れる方向に上型UMを移動させるだけで、上型UMからキャップ9を離型させることを可能にしている。よって、突状部43により、キャップ9の製造が容易となる。
【0057】
さらに、図7に示すように、上下方向に間隔をあけて2か所の突状部43が設けられている補助栓4は、突状部43が1か所に設けられている場合と比較して、下型LMに引っ掛かる部分の面積が大きくなるので、下型LMがより大きな力を受けることができる。したがって、上記2か所の突状部43が設けられている補助栓4は、上型UMによって成形される部分における、アンダーカットとなる部分の面積を、突状部43が1か所に設けられる場合よりも大きくできる。
【0058】
キャップ9を上型UMから離型させた後、図8に示すように、下型LMもキャップ9から離される。図7および図8に示す下型LMは、上型UMと同様に、複数に分割可能な構造となっており、補助栓4における、第1部分416の内周面413を含む部分を成形するための中央下型LM1と、中央下型LM1を取り囲む外側下型LM2と有する。外側下型LM2は、補助栓4における、キャップ本体2側の端部414と下方向から対向する部分を有する。下型LMにおいては、まず、中央下型LM1がキャップ9から離される。この後、外側下型LM2がキャップ9から離される。このようにすることで、中央下型LM1からキャップ9を離型するときに、補助栓4の突状部43が中央下型LM1に引っ掛かったとしても、外側下型LM2がキャップ本体2側の端部414と下方向から当接して、補助栓4に加わる下方向への力を受ける。つまり、下型LMからキャップ9を離型させるときに、弱化部44には、下方向、すなわち下型LMがキャップ9から離れる方向への力が加わらない。よって、下型LMからキャップ9を離型することによる弱化部44の破断が防止される。
【0059】
なお、成形工程の説明では、便宜上、上型UMは上方向に移動し、下型LMは下方向に移動すると説明した。しかしながら、金型の移動方向は、上方向、または下方向に限らず、成形品ごとに定められるものである。また、成形に用いられる金型の分割数は、成形する製品の形状に応じて適宜定められる。
【0060】
図9に、キャップ9に対して行う加工方法である分離工程を示す。分離工程では、まず、上蓋3が閉じられる。分離工程では、上方向、すなわちキャップ本体2から上蓋3のある方向に向かって、仕切り部42が分離用工具STで押圧される。図9に示す分離用工具STは円柱状であり、その円形の面を仕切り部42の下面、すなわちキャップ本体2側の面に押し当てている。
【0061】
補助栓4が分離用工具STによって上方向、すなわちキャップ本体2から上蓋3に向かう方向に押圧されることで、弱化部44が破断して、補助栓4が上方向に移動する。キャップ本体2における、内周筒34の内側の部分と、補助栓4における、補助筒41の外周面とを接続する弱化部44であれば、図10に示すように、破断した弱化部44の一部は、補助栓4の外周面に残る。このため、補助筒41と、内周筒34との間に、破断した弱化部44の一部が入り込む。この弱化部44の一部も、補助筒41および仕切り部42とともに、注出筒24および/または内周筒34の変形に対して突っ張る。つまり、破断した弱化部44の一部も、キャップ1の密封性の向上に貢献する。また、キャップ本体2と、補助筒41の外周面とを接続し、かつ、補助筒41を仕切り部42とで挟む位置に配置される弱化部44であれば、破断した弱化部44の一部は、補助筒41を介して、内周筒34と、仕切り部42とに挟まれる位置に配置される。したがって、破断された弱化部44の一部も、仕切り部42とともに、内周筒34の径方向外側に向かって直接的に突っ張れる。よって、注出筒24および/または内周筒34が大きく変形しても、仕切り部42、および、破断した弱化部44の一部が、漏れ隙間を埋めるように内周筒34を変形させる。
【0062】
補助栓4は、その補助筒41の被保持部412が、上蓋3の保持用突部352に係合するまで押し上げられる。上蓋3の保持用突部352が、キャップ本体2の被保持部412に係合することで、補助栓4が上蓋3に保持される。以上により、キャップ1が製造される。
【0063】
図11に示すように、キャップ1が製造された後、液体Lの入った容器Bの口部mに取り付けられる。ここで、容器Bに入れられる液体Lが高温の場合がある。この場合、合成樹脂で製造されたキャップ1は、容器Bに入れられた高温の液体Lに加熱されて軟化する。高温となって軟化したキャップ1は、その温度が下がるときに局所的な温度差が生じて変形する恐れがある。例えば、内周筒34が変形した場合、密封性が損なわれる問題が生じる。ところが、補助筒41が、先端部343から、基端部342側の内周面341を覆っている。このため、キャップ1が口部mに取り付けられるときに、内周筒34に向かう液体Lは、補助筒41が受ける。したがって、補助筒41は、内周筒34の内周面341に、高温の液体Lが付着するのを防止する。よって、内周筒34の内周面341は、加熱されづらいため、内周筒34の変形が抑制される。結果、内周筒34の変形による密封性の低下が防止される。
【0064】
ところで、実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。前記発明を実施するための形態として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
B 容器
1 キャップ
2 キャップ本体
3 上蓋
4 補助栓
24 注出筒
41 補助筒
42 仕切り部
43 突状部
44 弱化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11