(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103826
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】端子付き電線製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
H01R43/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007736
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健三
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051AA02
5E051AB10
5E051AC00
(57)【要約】
【課題】端子付き電線において電線と端子の接合部分に防食剤を適切に塗布し、適正な防食機能を確保することができる端子付き電線製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】端子付き電線製造方法は、圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分に対し液状の光硬化性樹脂である防食剤11を塗布し(ST14)、塗布終了時から予め設定される許容時間を経過したか否かを判定し(ST16)、この判定により許容時間を経過したと判定された場合に接合部分に塗布された防食剤11に対し光を仮照射し(ST18)、接合部分に塗布された防食剤11又は仮照射された防食剤11を硬化させるように構成されている(ST20)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着端子を取り付けた電線における前記圧着端子と前記電線の接合部分に対し液状の光硬化性樹脂である防食剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の終了時から予め設定される許容時間を経過したか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記許容時間を経過したと判定された場合、前記塗布工程により前記接合部分に塗布された前記防食剤に対し光を仮照射する仮照射工程と、
前記接合部分に塗布された前記防食剤又は仮照射された前記防食剤を硬化させる硬化工程と、を含む、
端子付き電線製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子付き電線製造方法として、例えば、特許文献1~4に記載されるように、端子付き電線において電線と端子の接合部分に防食剤を塗布し硬化させ、電線と端子の接合部分を外部に対し封止して腐食を防止しようとするもの知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-153721号公報
【特許文献2】特開2016-225171号公報
【特許文献3】特開2015-153715号公報
【特許文献4】特開2014-130703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような製造方法において、電線と端子の接合部分の防食剤の塗布すべき領域に防食剤が塗布できていないと、適正な防食性能を発揮することができない。防食剤は、硬化する前は液体であり、接合部分に塗布された時に流動性を有する。このため、このような性質を考慮して電線と端子の接合部分に防食剤を適切に塗布しなければ、適正な防食機能を確保することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、電線と端子の接合部分に防食剤を適切に塗布し、適正な防食機能を有する端子付き電線製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る端子付き電線製造方法は、圧着端子を取り付けた電線における圧着端子と電線の接合部分に対し液状の光硬化性樹脂である防食剤を塗布する塗布工程と、塗布工程の終了時から予め設定される許容時間を経過したか否かを判定する判定工程と、判定工程により許容時間を経過したと判定された場合、塗布工程により接合部分に塗布された防食剤に対し光を仮照射する仮照射工程と、接合部分に塗布された防食剤又は仮照射された防食剤を硬化させる硬化工程とを含むように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る端子付き電線製造方法は、端子付き電線において電線と端子の接合部分に防食剤を適切に塗布し、適正な防食機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子付き電線製造方法により製造される電線の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る端子付き電線製造方法に用いられる製造装置の電気的な構成の概要を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る端子付き電線製造方法における防食剤の塗布位置を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る端子付き電線製造方法の塗布工程及び仮照射工程の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る端子付き電線製造方法の硬化工程の説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る端子付き電線製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る端子付き電線製造方法について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る端子付き電線製造方法により製造される電線の概略構成を示す斜視図である。本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、
図1に示す端子付き電線100を製造する方法である。端子付き電線製造方法の説明に先立ち、
図1に示す端子付き電線100の基本的な構成について説明する。その後、端子付き電線100の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、端子付き電線100は、電線Wの端部に端子金具を取り付けた端子付きの電線であり、例えば、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを一度に各装置に接続するようにしたものである。本実施形態の端子付き電線100は、電線W、圧着端子1及び封止部10を備えている。
【0013】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。軸方向Xは、圧着端子1が取り付けられる電線Wの延在方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。なお、ここでいう直交とは、ほぼ直交を含む。
【0014】
電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性の絶縁被覆部W2とを含んで構成される。すなわち、電線Wは、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性の金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線を複数束ねた芯線である。この導体部W1は、複数の素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。電線Wは、少なくとも導体部W1の一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、当該導体部W1の一方の端末が絶縁被覆部W2の端末から露出しており、当該露出している導体部W1の端末に圧着端子1が圧着される。ここでは、電線Wは、線状に延びる延在方向に対してほぼ同じ径で延びるように形成され、導体部W1の断面形状(延在方向と交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。
【0015】
圧着端子1は、電線Wを他部品に接続するための部材であり、電気接続部2、連結部3及び電線接合部4を備える。電気接続部2、連結部3及び電線接合部4とは、全体が一体で導電性の金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等によって構成され、端子金具5を構成する。圧着端子1は、例えば、電気接続部2、連結部3、電線接合部4等の各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス及び折り曲げ成形することにより各部が立体的に一体で形成される。圧着端子1は、軸方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部2、連結部3、電線接合部4の順で並んで相互に連結される。
【0016】
電気接続部2は、導電性部材と電気的に接続される部分である。本実施形態の導電性部材は、例えば、相手側端子(不図示)である。すなわちここでは、本実施形態の電気接続部2は、相手側端子に対して電気的に接続される端子接続部として構成される。電気接続部2は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の電気接続部2は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手側端子と電気的に接続される。なお、導電性部材は、相手側端子でなくてもよく、例えば、アース部材等の種々の導電性の部材であってもよい。電気接続部2は、相手側端子に対して電気的に接続される端子接続部を構成しなくてもよく、例えば、アース部材等に締結されるいわゆる丸形端子(LA端子)形状であってもよい。
【0017】
連結部3は、電気接続部2と電線接合部4との間に介在し、当該電気接続部2と当該電線接合部4を連結する部分である。圧着端子1は、電気接続部2と電線接合部4とが連結部3を介して電気的に接続され、当該電線接合部4を介して電気接続部2と電線Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
【0018】
電線接合部4は、圧着端子1と電線Wを接続する部分である。電線接合部4は、電線Wの端末で加締められ圧着される。電線接合部4は、基部41、及び、二組の一対のバレル片部42、43、44、45を含んで構成される。基部41は、軸方向Xに沿って延在し、U字状に形成された電線接合部4の底壁となる部分である。基部41には、圧着加工の際に電線Wの端部が載置される。基部41は、軸方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。一対のバレル片部42、43は、基部41から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、基部41との間に電線Wの導体部W1を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片部42、43は、いわゆるBクリンプと称される加締め圧着を行うものとして図示している。すなわち、一対のバレル片部42、43は、電線Wの全周を包んで圧着された状態で、それぞれ基部41側に向けて折り曲げられた状態とされる。そして、この状態で、一対のバレル片部42、43の先端がそれぞれ導体部W1に接触して押し付けられるように加締められ圧着される。なお、一対のバレル片部42、43は、これに限られず、例えばオーバーラップクリンプであってもよい。この場合、一対のバレル片部42、43が電線Wに対して巻き付けられて加締められ圧着された状態で、先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成されてもよい。一対のバレル片部44、45は、基部41から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、基部41との間に電線Wの絶縁被覆部W2を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片部44、45は、いわゆるラウンドクリンプを用いるものとして図示している。すなわち、一対のバレル片部44、45は、絶縁被覆部W2を包んで圧着された状態で、一対のバレル片部44、45の先端が互いに対向して当接するような位置関係で加締められ圧着される。なお、一対のバレル片部44、45は、これに限られず、例えばオーバーラップクリンプであってもよい。この場合、一対のバレル片部44、45が電線Wに対して巻き付けられて加締められ圧着された状態で、先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成されてもよい。電線接合部4は、基部41と二組の一対のバレル片部42、43、44、45とによって電線Wに対して加締められ圧着される。
【0019】
電線接合部4は、導体圧着部46、導体露出部47及び被覆圧着部48を有する。導体圧着部46は、基部41の一部、及び、一対のバレル片部42、43によって構成され、電線Wの導体部W1を包んで加締めて圧着する部分である。導体露出部47は、導体圧着部46と被覆圧着部48の間に形成され、基部41の一部によって構成される。導体露出部47では、導体部W1が露出した状態となっている。被覆圧着部48は、基部41の一部、及び、一対のバレル片部44、45によって構成され、電線Wの絶縁被覆部W2を包んで加締めて圧着する部分である。電線接合部4は、軸方向Xに沿って電気接続部2側から反対側に向かって、導体圧着部46、導体露出部47、被覆圧着部48の順で並んで設けられている。
【0020】
封止部10は、電線Wと圧着端子1の接合を行う接合部分を外部と封止する部分であり、防食剤を塗布し硬化させて形成されている。防食剤は、例えば光硬化性の樹脂が用いられる。具体的には、防食剤は、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化型樹脂が用いられる。UV硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるが、これに限らない。封止部10は、電線Wと圧着端子1の接合部分に設定される塗布領域に対し液状の防食剤を塗布し、塗布した防食剤に対し光を照射して硬化させることにより形成される。
【0021】
次に、本実施形態に係る端子付き電線製造方法について詳述する。
【0022】
図2は実施形態に係る端子付き電線製造方法に用いられる製造装置の電気的な構成の概要を示すブロック図であり、
図3は実施形態に係る端子付き電線製造方法における防食剤の塗布位置を示す図である。
図4は実施形態に係る端子付き電線製造方法の塗布工程及び仮照射工程の説明図であり、
図5は実施形態に係る端子付き電線製造方法の硬化工程の説明図であり、
図6は実施形態に係る端子付き電線製造方法を示すフローチャートである。
【0023】
本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、製造装置により行われてもよいし、作業員の手作業により行われてもよい。ここでは、製造装置により電線を製造する場合について説明する。
図2に示すように、製造装置7は、端子付き電線100を製造する装置であって、圧着端子1を取り付けた電線Wに対し、防食剤を塗布し、塗布した防食剤を硬化させて、端子付き電線100を製造する。
【0024】
製造装置7は、制御装置71、センサ部72、塗布装置73、硬化装置74及び移送装置75を備えている。制御装置71は、製造装置7の製造工程における各制御を行うものであり、例えば、CPU[Central Processing Unit]等のプロセッサ、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等のメモリを有するコンピュータを備えて構成される。なお、この製造装置7は、圧着端子1を取り付けた電線Wに対し封止部10を形成して端子付き電線100を製造するものであるが、圧着端子1を取り付けた電線Wの組み立てなどその他の工程を実行する機能を備えていてもよい。
【0025】
センサ部72は、撮像センサであって、防食剤の塗布及び硬化を行う圧着端子1を取り付けた電線Wを撮像する撮像器である。センサ部72は、例えば、圧着端子1を取り付けた電線Wを上方(高さ方向Z)から撮像し、撮像した画像データを制御装置71へ入力する。
【0026】
制御装置71は、位置補正部711、塗布制御部712、判定部713、硬化制御部714、移送制御部715及び記録部716を有する。位置補正部711、塗布制御部712、判定部713、硬化制御部714及び移送制御部715は、例えば、制御装置71にそれぞれの機能を実行するプログラムを導入することにより構成される。また、位置補正部711、塗布制御部712、判定部713、硬化制御部714及び移送制御部715は、それぞれの機能を実行する制御ユニットして制御装置71に個別に設置されていてもよい。
【0027】
位置補正部711は、防食剤の塗布を行う塗布位置を設定すべく、圧着端子1を取り付けた電線Wの画像に対し、座標位置を補正する。例えば、位置補正部711は、センサ部72から入力される圧着端子1を取り付けた電線Wの画像に基づき、圧着端子1の特徴部位を検出し、塗布領域を設定するために圧着端子1に対する座標を設定し、必要に応じて座標の位置を補正する。そして、位置補正部711は、圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分に対し、防食剤を塗布すべき塗布位置を設定する。例えば、
図3に示すように、塗布位置P1は、異なる位置で複数設定され、圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分において導体部W1が露出する範囲に設定される。具体的には、塗布位置P1は、被覆圧着部48と導体圧着部46の間の導体露出部47の部分、導体圧着部46の中央位置の部分、及び、導体圧着部46から延び出る導体部W1の部分に設定される。圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分は、例えば、電線Wに取り付けられる圧着端子1において電線接合部4が設けられる領域及び電線接合部4の周辺の領域となる。
【0028】
塗布制御部712は、塗布装置73に制御信号を出力し、圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分に対する液状の防食剤の塗布制御を行う。すなわち、塗布制御部712は、位置補正部711により設定された塗布位置P1に対し防食剤が塗布されるように塗布装置73を作動させる。塗布装置73は、
図4に示すように、圧着端子1と電線Wの接合部分に対し防食剤11を塗布するノズル731を備えている。ノズル731は、例えば、軸方向X及び幅方向Yへ移動可能に構成され、上述した塗布位置P1に対し、一滴ずつ防食剤11を吐出又は噴射することが可能となっている。ノズル731により防食剤11を吐出又は噴射させることにより、塗布位置への防食剤11の塗布を正確に行うことができる。
【0029】
また、塗布装置73は、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対し紫外線を照射する光源732を備えている。光源732は、ノズル731に併設され、仮照射を行うための仮照射部と機能するものである。光源732は、防食剤11を塗布した時から予め設定される許容時間を経過した場合に作動され、塗布された防食剤11に対し紫外線を照射する。これにより、塗布された防食剤11が塗布領域から流れ出ることが抑制される。
【0030】
判定部713は、塗布装置73による防食剤11の塗布終了時から予め設定される許容時間を経過したか否かを判定する。許容時間は、防食剤11の塗布量、粘性を含む防食剤データに基づいて設定され、塗布された防食剤11が塗布領域から流れ出ない時間となるように設定される。製造装置7は、例えば、装置内に人体があった場合に安全のために電線Wの移送を停止させるようにプログラムされている。このような停止が行われこの停止の復旧に時間がかかった場合、防食剤11の塗布から硬化までに許容時間を経過してしまう場合がある。この場合、塗布した防食剤11が塗布領域から流れ出るおそれがある。このため、判定部713により、許容時間を経過していないか否かを判定している。
【0031】
硬化制御部714は、硬化装置74に制御信号を出力し、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対する光照射の制御を行う。例えば、硬化制御部714は、圧着端子1を取り付けた電線Wに対し防食剤11が塗布された後に、紫外線を防食剤11に照射するように、硬化装置74を作動させる。硬化装置74は、
図5に示すように、圧着端子1と電線Wの接合部分に対し紫外線を照射する光源741を備えている。光源741により紫外線を照射された防食剤11は、硬化して封止部10となる。
【0032】
移送制御部715は、圧着端子1を取り付けた電線Wの移送制御を行う。例えば、図示しない移送機構に対し制御信号を出力し、圧着端子1を取り付けた電線Wを移送させる。具体的には、移送制御部715は、硬化装置74により防食剤11を硬化された電線Wに対し移送機構によって外部へ移送させ払い出させる。
【0033】
記録部716は、電線製造に関する制御情報を記録するメモリである。例えば、記録部716は、塗布位置データ、許容時間データ、光の照射タイミングデータなどを記録する。
【0034】
次に、本実施形態に係る端子付き電線製造方法の各工程について詳述する。
【0035】
図6に端子付き電線製造方法のフローチャートを示す。
図6のフローチャートは、例えば、圧着端子1を取り付けた電線Wが塗布を行う位置に設置された時に開始され、制御装置71により実行される。
【0036】
まず、ステップST10(以下、単に「ST10」という。以降のステップSTについても同様とする。)に示すように、電線セット工程が行われる。電線セット工程は、圧着端子1を取り付けた電線Wを塗布及び硬化を行う位置にセットし、セット完了を認識する工程である。この電線セットは、図示しない移送機構により行われてもよいが、人員により手動で行われてもよい。また、圧着端子1を取り付けた電線Wが所定の位置にセットされたことは、例えばセンサ部72の検出信号(画像信号)に基づいて認識すればよい。
【0037】
そして、ST12に処理が移行し、位置補正工程が行われる。位置補正工程は、圧着端子1を取り付けた電線Wの画像に対し、座標を設定し、その座標の位置を必要に応じて補正する工程である。座標は、防食剤11の塗布を行う塗布位置を設定するための座標である。この座標の座標値に基づいて防食剤11の塗布が行われる。例えば、位置補正部711は、センサ部72から入力される圧着端子1を取り付けた電線Wの画像において、圧着端子1の特徴部位を検出し、圧着端子1を取り付けた電線Wに対する座標の位置を補正する。そして、位置補正部711は、圧着端子1を取り付けた電線Wに対し、防食剤11を塗布すべき塗布位置P1を設定する。
【0038】
そして、ST14に処理が移行し、塗布工程が行われる。塗布工程は、圧着端子1を取り付けた電線Wにおける圧着端子1と電線Wの接合部分に対し防食剤11を塗布する工程である。例えば、塗布制御部712から塗布装置73へ制御信号が出力され、塗布装置73のノズル731から防食剤11が吐出される。防食剤11は、圧着端子1を取り付けた電線Wの所定の位置に付着して塗布される。防食剤11の塗布は、
図3に示すように、予め設定された複数の塗布位置P1に対し行われる。このとき、各塗布位置P1に対し一滴の防食剤11が吐出されて、防食剤11が塗布されていく。
【0039】
そして、
図6のST16に処理が移行し、塗布工程が終了してから許容時間が経過したか否かが判定される。例えば、判定部713は、塗布装置73の塗布が終了してから許容時間が経過したか否かを判定する。このST16にて、塗布工程が終了してから許容時間が経過しておらず、硬化工程が開始可能な状態となっている場合には、ST20の硬化工程に処理が移行する。硬化工程が開始可能な状態となっている場合とは、例えば各工程において正常な処理が実行され、硬化装置74の作動準備ができている場合である。一方、硬化工程が開始可能な状態となっていない場合とは、例えばST16より前の工程において処理が停止され、硬化工程に処理を進められない場合である。
【0040】
このST16にて、塗布工程が終了してから許容時間が経過していると判定された場合、仮照射工程が行われる(ST18)。仮照射工程は、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対し紫外線を仮照射する工程である。例えば、
図4に示すように、光源732から紫外線が射出され、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対し紫外線が照射される。この紫外線の仮照射により、防食剤11は仮硬化される。このとき紫外線の照射量は、後述する硬化工程における紫外線の照射量と比べて少ないものとされる。例えば、仮照射工程における紫外線の照射時間は後述する硬化工程における紫外線の照射時間と比べて短いものとされ、又は仮照射工程における紫外線の照度は後述する硬化工程における紫外線の照度と比べて小さいものとされる。この仮照射工程により、塗布された防食剤11が塗布領域から流れ出ることを抑制することができる。
【0041】
そして、
図6のST20において、硬化工程が行われる。硬化工程は、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対し紫外線を照射する工程である。例えば、
図5に示すように、光源741から紫外線が射出され、圧着端子1を取り付けた電線Wに塗布された防食剤11に対し紫外線を照射して防食剤11を硬化させる。この防食剤11の硬化により、封止部10が形成される。
【0042】
そして、
図6のST22に処理が移行し、移送工程が行われる。移送工程は、図示しない移送機構により、封止部10が掛止された電線Wを製造装置7の外部へ移送する工程である。このST22び移送工程を終了したら、
図6の一連の制御処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る端子付き電線製造方法によれば、塗布工程の終了時から予め設定される許容時間を経過した場合、塗布工程により塗布された防食剤11に対し光が仮照射される。このため、塗布工程により塗布された防食剤11が塗布領域から流れ出ることを抑制することができる。従って、防食剤11を適切に塗布することにより、適正な防食性能を有する端子付き電線100を製造することができる。
【0044】
例えば、塗布工程の終了時から予め設定される許容時間を経過した場合、塗布工程により塗布された防食剤11に対し仮照射されないとすると、塗布工程により塗布された防食剤11が塗布領域から流れ出るおそれがある。この場合、防食剤11が塗布領域以外に塗布されることとなり、適正な端子付き電線100として製造を行うことができない。また、防食剤11が電気接続部2側へ流れた場合、端子付き電線100の適正な機能に支障が生ずるおそれがある。これに対し、本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、このような不具合を回避し、防食剤11を適切に塗布することにより、適正な防食性能を有する端子付き電線100を製造することができるのである。
【0045】
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線製造方法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る端子付き電線製造方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0046】
例えば、上述した実施形態に係る端子付き電線製造方法では、センサ部72の画像データに基づいて防食剤の塗布領域を設定し、塗布領域に対し塗布位置及び塗布順番を設定しているが、圧着端子1を取り付けた電線Wが予め設定された基準位置にセットされる場合、予め設定された塗布領域及び塗布位置で防食剤11を塗布してもよい。この場合であっても、上述した実施形態に係る端子付き電線製造方法と同じ作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 圧着端子
4 電線接合部
11 防食剤
100 端子付き電線
W 電線