(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103827
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】端子付き電線及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 11/12 20060101AFI20240726BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01R11/12 D
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007737
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和也
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB03
(57)【要約】
【課題】接続端子と電線との接合強度を確保しつつ、接続端子の小型化を図ること。
【解決手段】絶縁性を有する被覆25の端末から導電性を有する芯線21が露出した電線20と、芯線21に超音波接合された接続端子30とを備え、接続端子30は、ボルト挿通孔32が形成される電気接続部31と、電線20の芯線21が接合される電線接合部35とを備え、電気接続部31と電線接合部35とは、芯線21の延在方向においてオーバーラップして形成され、芯線21は、芯線21の延在方向における先端部22が先割れすることにより、電気接続部31のボルト挿通孔32を回避して電線接合部35に接合される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する被覆の端末から導電性を有する芯線が露出した電線と、
前記芯線に超音波接合された接続端子とを備え、
前記接続端子は、ボルト挿通孔が形成される電気接続部と、前記電線の前記芯線が接合される電線接合部とを備え、
前記電気接続部と前記電線接合部とは、前記芯線の延在方向においてオーバーラップして形成され、
前記芯線は、前記芯線の延在方向における先端部が先割れすることにより、前記電気接続部の前記ボルト挿通孔を回避して前記電線接合部に接合されることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記電気接続部には、前記電線接合部における前記芯線が接合される側の面と同じ側の面に、前記電気接続部から立設するリブが配置される請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
ボルト挿通孔が形成される電気接続部と、電線の芯線が接合されると共に前記電気接続部に対して前記芯線の延在方向においてオーバーラップして形成される電線接合部とを備えた接続端子の、前記電気接続部の前記ボルト挿通孔に治具となるピンを入り込ませた状態で前記電線接合部に前記芯線を載置することにより、前記芯線の延在方向における先端部を前記ピンによって先割れさせる工程と、
前記ピンを前記ボルト挿通孔から抜くと共に前記芯線と前記電線接合部とを超音波接合する工程と、
を含むことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線及び端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の芯戦を有する電線を接続端子に接続する構造としては、例えば、超音波接合が知られている。例えば、特許文献1、2に記載された電線の接続構造では、電線の導体部分を接続端子の接続位置に位置させた状態で、超音波接合装置の加圧加振ホーンを導体部分に圧接して加圧加振することにより、導体部分を接続端子に対して電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-211952号公報
【特許文献2】特開2009-21176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接続端子と電線とを超音波接合によって接合する場合は、接続端子と電線との接合部分は通電に見合うだけの長さを確保する必要がある。ここで、近年では、接続端子が搭載される機器の小型化に伴い、接続端子に対しても小型化が求められている。しかし、接続端子の安易な小型化は、接続端子と電線との接合部分に通電に見合うだけの長さを確保することができなくなり、接合が不十分となって接続端子と電線との接合強度の確保が困難になるおそれがある。このため、接続端子と電線との接合強度を確保と、接続端子の小型化との両立の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接続端子と電線との接合強度を確保しつつ、接続端子の小型化を図ることのできる端子付き電線及び端子付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、絶縁性を有する被覆の端末から導電性を有する芯線が露出した電線と、前記芯線に超音波接合された接続端子とを備え、前記接続端子は、ボルト挿通孔が形成される電気接続部と、前記電線の前記芯線が接合される電線接合部とを備え、前記電気接続部と前記電線接合部とは、前記芯線の延在方向においてオーバーラップして形成され、前記芯線は、前記芯線の延在方向における先端部が先割れすることにより、前記電気接続部の前記ボルト挿通孔を回避して前記電線接合部に接合される。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線の製造方法は、ボルト挿通孔が形成される電気接続部と、電線の芯線が接合されると共に前記電気接続部に対して前記芯線の延在方向においてオーバーラップして形成される電線接合部とを備えた接続端子の、前記電気接続部の前記ボルト挿通孔に治具となるピンを入り込ませた状態で前記電線接合部に前記芯線を載置することにより、前記芯線の延在方向における先端部を前記ピンによって先割れさせる工程と、前記ピンを前記ボルト挿通孔から抜くと共に前記芯線と前記電線接合部とを超音波接合する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る端子付き電線及び端子付き電線の製造方法は、接続端子におけるボルト挿通孔が形成される電気接続部と、超音波接合によって電線の芯線が接合される電線接合部とを、芯線の延在方向においてオーバーラップさせる。これにより、電気接続部と電線接合部とがオーバーラップされない形態と比較して接続端子の長さを短くすることができる。また、電気接続部と電線接合部がオーバーラップすることにより、ボルト挿通孔は一部が電線接合部に入り込むが、芯線の先端部を先割れさせることにより、芯線はボルト挿通孔を回避して電線接合部に接合される。これにより、接続端子に対する芯線の接合部分の長さがボルト挿通孔によって短くなることを抑制でき、接続端子に対する芯線の接合部分の面積が小さくなることを極力抑制することができる。この結果、接続端子と電線との接合強度を確保しつつ、接続端子の小型化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子付き電線の要部平面図である。
【
図2】
図2は、接続端子を接合装置にセットした状態を示す接続端子の平面図である。
【
図5】
図5は、電線の芯線を先割れさせた状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、電線の芯線と接続端子とを接合する状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る端子付き電線の製造方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は、電気接続部と電線接合部とがオーバーラップしていない接続端子を有する端子付き電線の要部平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る端子付き電線の変形例であり、リブが形成される接続端子が用いられる端子付き電線の要部平面図である。
【
図11】
図11は、
図9に示す接続端子のボルト挿通孔にボルトを通した状態におけるC-C矢視図である。
【
図12】
図12は、
図9に示す接続端子のボルト挿通孔にボルトを通した状態におけるD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る端子付き電線10の要部平面図である。実施形態に係る端子付き電線10は、電線20の芯線21と接続端子30とを、超音波接合により接合する端子付き電線10になっている。電線20は、金属材料からなる芯線21と、芯線21を覆う被覆25とを有している。芯線21は、導電性の金属の線材からなる複数本の素線が束ねられて構成されている。例えば、素線は、アルミニウムからなるもの、アルミニウム合金からなるもの、銅からなるもの、銅合金からなるもの、銅からなる線材に錫メッキを施したもの等が適用される。芯線21における素線の配置構成は、複数本の素線が撚られた撚り線や、複数本の素線が平行に並んで配置される線素線等が適用される。
【0012】
被覆25は、芯線21における被覆25から露出している部分以外を覆う絶縁性の樹脂材料で成形されている。即ち、芯線21は、大部分が被覆25により覆われており、電線20の延在方向における端部付近で被覆25から露出している。このため、電線20は、絶縁性を有する被覆25の端末から、導電性を有する芯線21が露出している。
【0013】
接続端子30は、金属等の導電性材料で成形される。接続端子30は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等を用いて成形される。また、接続端子30は、母材となる金属板に対する折り曲げ加工や切断加工等のプレス成型によって所定形状に成形される。接続端子30は、ボルト挿通孔32が形成される電気接続部31と、電線20の芯線21が接合される電線接合部35とを備えている。接続端子30は、略長方形の板状の形状で形成されており、長手方向における一端寄りにボルト挿通孔32が形成され、長手方向における他端寄りに電線接合部35が形成されている。
【0014】
電気接続部31に形成されるボルト挿通孔32は、接続端子30の板の厚み方向にあけられ、板を貫通する孔になっている。長方形に形成される接続端子30の角部のうち、長手方向における電気接続部31が位置する側の2つの角部は、円弧状に形成され、いわゆる丸面取りが施された形状になっている。
【0015】
電線接合部35に接合される電線20の芯線21は、芯線21の延在方向が、接続端子30の形状である長方形の長手方向に沿った向きで電線接合部35に接合されている。この場合における芯線21の延在方向は、芯線21における電線接合部35に接合される部分の、芯線21全体としての延在方向になっている。また、電線20は、接続端子30に対して、長手方向における電気接続部31が位置する側の反対側から、芯線21が電線接合部35に接合されている。芯線21は、電線接合部35に対して物理的に、且つ、電気的に接合される。これにより、電線20は、端部に接続端子30が接合された、端子付き電線10として構成される。
【0016】
これらのように形成される接続端子30の電気接続部31と電線接合部35とは、電線接合部35に接合される芯線21の延在方向においてオーバーラップして形成されている。つまり、電気接続部31と電線接合部35とは、接続端子30の形状である長方形の長手方向において、互いに重複する部分を有して形成されている。
【0017】
詳しくは、接続端子30の電気接続部31は、接続端子30の長手方向における電気接続部31側の端部からボルト挿通孔32の中心までの距離と同じ距離をボルト挿通孔32の中心から電線接合部35が位置する側に取った位置から、接続端子30の電気接続部31側の端部までの範囲になっている。また、電線接合部35は、接続端子30の長手方向における電線接合部35側の端部から、電線接合部35に接合される芯線21における電気接続部31が位置する側の端部である先端部22の位置までの範囲になっている。接続端子30は、これらの電気接続部31と電線接合部35とが、芯線21の延在方向において、或いは接続端子30の形状である長方形の長手方向において、オーバーラップして形成されている。
【0018】
接続端子30は、電気接続部31と電線接合部35とがオーバーラップしているため、電気接続部31に形成されるボルト挿通孔32は、一部が電線接合部35に入り込んでいる。また、電線接合部35に接合される電線20の芯線21は、一部が電気接続部31に入り込んでいる。このため、電気接続部31に形成されるボルト挿通孔32と、電線接合部35に接合される電線20の芯線21とは、芯線21の延在方向において、互いにオーバーラップしている部分を有している。
【0019】
このように、芯線21の延在方向において、ボルト挿通孔32とオーバーラップする部分を有する電線20の芯線21は、芯線21の延在方向における先端部22が先割れしている。詳しくは、電線20の芯線21は、芯線21の延在方向における、電気接続部31が位置する側の先端部22寄りの部分が、接続端子30の短手方向、即ち、接続端子30の幅方向に分岐することにより、先端部22寄りの部分が先割れする状態で電線接合部35に接合されている。
【0020】
芯線21は、少なくとも芯線21の延在方向においてボルト挿通孔32に対してオーバーラップしている部分が先割れしている。これにより、電線20の芯線21は、電気接続部31のボルト挿通孔32を回避して電線接合部35に接合されている。つまり、芯線21は、先端部22寄りの部分が先割れをすることにより、芯線21における、ボルト挿通孔32に対してオーバーラップしている部分は、接続端子30の幅方向における両側に位置している。これにより、電線20の芯線21は、芯線21の延在方向において、電気接続部31のボルト挿通孔32に対してオーバーラップをしている部分がボルト挿通孔32を回避して、電線接合部35に接合されている。
【0021】
次に、端子付き電線10の製造に用いる接合装置50と、端子付き電線10の製造方法について説明する。
図2は、接続端子30を接合装置50にセットした状態を示す接続端子30の平面図である。
図3は、
図2のA-A矢視図である。なお、接合装置50についての以下の説明では、接合装置50に接続端子30をセットした状態における接続端子30の幅方向を第1方向Xとし、接続端子30の長手方向を第2方向Yとし、接続端子30の厚み方向を第3方向Zとして説明する。
【0022】
接合装置50は、電線20の芯線21と接続端子30とを超音波接合により接合するための装置になっている。接合装置50は、グライディングジョー51と、アンビル52と、ピン53と、ホーン54とを有している。接合装置50は、第1方向X及び第2方向Yが水平方向となり、第3方向Zが上下方向となる向きで設置されて使用される。
【0023】
グライディングジョー51は、一対が第1方向Xにおいて互いに対向して配置されている。一対のグライディングジョー51における、互いに対向する面は、第2方向Yと第3方向Zとに沿った平面形状になっている。
【0024】
アンビル52は、グライディングジョー51の下側に配置されている。アンビル52は、上側の面が、第1方向Xと第2方向Yとに沿った平面形状になっている。アンビル52は、グライディングジョー51に対して、接続端子30の厚みと同程度の間隔をあけて第3方向Zにおける下側に配置されている。アンビル52の上面は、電線20の芯線21と接続端子30とを接合する際に、接続端子30の載置する面になっている。
【0025】
ピン53は、直径が接続端子30に形成されるボルト挿通孔32の内径より僅かに小さい略円筒形の形状で形成され、軸方向が第3方向Zとなる向きでアンビル52に配置されている。このため、ピン53は、接続端子30の上面に載置する際に、接続端子30のボルト挿通孔32に入り込ませることができる。ボルト挿通孔32に入り込ませることが可能なピン53は、接合装置50に対する接続端子30の位置決めを行う、位置決め用のピン53として設けられている。
【0026】
図4は、
図2のB-B断面図である。ピン53は、第3方向Zに移動可能になっており、第3方向Zに移動することにより、アンビル52の上面から上方に突出する状態と、アンビル52の上面から突出しない状態とに切り替えることができる。これにより、接続端子30がアンビル52に載置された際に、ピン53がアンビル52の上面から突出する状態では、ピン53は接続端子30のボルト挿通孔32に入り込み、ピン53がアンビル52の上面から突出しない状態では、ピン53はボルト挿通孔32から下側に抜け出る。
【0027】
ホーン54は、第3方向Zにおけるアンビル52の上方に配置されており、第3方向Zに移動可能になっている。このため、ホーン54は、アンビル52に載置された接続端子30に電線20の芯線21が乗せられた状態において、ホーン54が第3方向Zにおける下側に移動した際には、ホーン54は芯線21に接触し、芯線21に対して加圧することができる。ホーン54は、超音波発信器(図示省略)によって加振されることにより、超音波振動をする。さらに、接合装置50は、グライディングジョー51やピン53、ホーン54を移動させるそれぞれの駆動機構(図示省略)と、駆動機構や超音波発信器を制御する制御部(図示省略)とを備えている。ホーン54を移動させる駆動機構は、ホーン54を芯線21に対して加圧させる加圧機も兼ねている。
【0028】
接合装置50を用いて電線20の芯線21と接続端子30とを接合する際には、ピン53をアンビル52の上面から上方に突出させる。このように、ピン53をアンビル52の上面から突出させた状態で、電気接続部31に形成されるボルト挿通孔32に入り込ませ、接続端子30をアンビル52の上面に載置する。その際に、接続端子30は、接続端子30の幅方向が、一対のグライディングジョー51が対向する向き、即ち、第1方向Xとなる向きで、アンビル52の上面に載置する。
【0029】
一対のグライディングジョー51は、接続端子30をアンビル52に載置したら、第1方向Xにおける間隔を接続端子30の幅と同程度の間隔にして接続端子30全体を抑え込む。これにより、一対のグライディングジョー51は、接続端子30に乗せた芯線21をホーン54によって加圧した際における、第1方向Xへの芯線21の余剰の広がりを抑える。
【0030】
図5は、電線20の芯線21を先割れさせた状態を示す説明図である。電線20は、アンビル52上の接続端子30の電線接合部35に芯線21を乗せる。また、芯線21は、先端部22が、第2方向Yにおいてボルト挿通孔32が形成される位置にかかる位置関係で、接続端子30の電線接合部35に載置する。その際に、ボルト挿通孔32には、ピン53が入り込んでいるため、芯線21は先端部22付近を第1方向Xに先割れさせ、ピン53に対して第1方向Xにおける両側に芯線21を回避させる状態で、接続端子30の電線接合部35に載置する。ピン53は、このように電線20の芯線21と接続端子30とを接合する際に、芯線21を先割れさせるために用いる治具になっており、芯線21は、ピン53によって先端部22付近を先割れさせる。
【0031】
接続端子30の電線接合部35に乗せた芯線21の先端部22付近を、ピン53によって先割れさせたら、ピン53を第3方向Zにおける下側に移動させる。これにより、ボルト挿通孔32に入り込んでいるピン53をボルト挿通孔32から下側に抜き、芯線21よりも上側にピン53が突出しない状態にする。
【0032】
ピン53を下側に移動させたら、ホーン54を下側に移動させて芯線21にホーン54を接触させる。つまり、芯線21を先割れさせることに用いたピン53は、下側に移動することにより芯線21よりも上側に突出していないため、ホーン54は芯線21に接触させることができる。
【0033】
図6は、電線20の芯線21と接続端子30とを接合する状態を示す平面図である。ホーン54は、さらに芯線21に対して加圧力と超音波振動を加えることにより、芯線21と接続端子30とを超音波接合させる。つまり、ホーン54は、加圧機からの力によって芯線21に対して下側方向への加圧を行うことにより、芯線21を接続端子30の電線接合部35に押し付ける。また、ホーン54は、芯線21に対して加圧力を付与しながら、超音波発信器からの超音波振動を芯線21に対して加える。これにより、芯線21と接続端子30の電線接合部35は、超音波接合される。
【0034】
図7は、実施形態に係る端子付き電線10の製造方法のフローチャートである。以上のように、本実施形態の端子付き電線10の製造方法は、
図7のフローチャートに示すように、接続端子30の電気接続部31のボルト挿通孔32に治具となるピン53を入り込ませた状態で電線接合部35に芯線21を載置することにより、芯線21の延在方向における先端部22をピン53によって先割れさせる工程(ステップS1)と、ピン53をボルト挿通孔32から抜くと共に芯線21と電線接合部35とを超音波接合する工程(ステップS2)とを含むものである。
【0035】
即ち、本実施形態の端子付き電線10の製造方法では、先割れ工程(ステップS1)でピン53によって芯線21の先端部22を先割れさせた後、接合工程(ステップS2)で、ボルト挿通孔32からピン53を抜くと共に芯線21と電線接合部35とを超音波接合する。これにより、芯線21がボルト挿通孔32を塞ぐことなく、芯線21の延在方向においてボルト挿通孔32が位置する位置まで、電線接合部35側から芯線21を延在させて接続端子30に芯線21を接合することができる。
【0036】
これらのように製造される端子付き電線10は、当該端子付き電線10を接続する相手側の部材に接続する際には、接続端子30を用いて接続する。つまり、接続端子30の電気接続部31に形成されるボルト挿通孔32に対して、電線接合部35に電線20の芯線21が接合される側の面側からボルト(図示省略)を通し、ボルトとナット(図示省略)とによって、端子付き電線10と相手側部材とを接続する。これにより、端子付き電線10と相手側部材とを電気的に接続する。
【0037】
ここで、接続端子30は、電気接続部31と電線接合部35とが芯線21の延在方向においてオーバーラップして形成されているため、芯線21の延在方向における全長が、電気接続部31と電線接合部35とがオーバーラップしていない形態と比較して小さくなっている。
【0038】
図8は、電気接続部131と電線接合部135とがオーバーラップしていない接続端子130を有する端子付き電線100の要部平面図である。
図8に示す端子付き電線100は、電線120と接続端子130とを有しており、接続端子130は、ボルト挿通孔132が形成される電気接続部131と、電線120における被覆125から露出する芯線121が接合される電線接合部135とを有している。また、
図8に示す端子付き電線100では、電気接続部131と電線接合部135とがオーバーラップしておらず、電線接合部135は、芯線121の延在方向において電気接続部131から離れた位置に形成されている。
【0039】
このように、電気接続部131と電線接合部135とがオーバーラップせずに接続端子130が形成されている場合、芯線121の延在方向における接続端子130の全長には、電気接続部131と電線接合部135とのそれぞれの長さが積算されることになる。このため、接続端子130は、全長が長くなり易くなる。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る端子付き電線10では、接続端子30は、電気接続部31と電線接合部35とが芯線21の延在方向においてオーバーラップして形成されている。このため、接続端子30の全長は、
図8に示す例のように、電気接続部131と電線接合部135とがオーバーラップしていない形態と比較して、電気接続部31と電線接合部35とが芯線21の延在方向においてオーバーラップしている部分の長さの分、短くなる。これにより、接続端子30は、電気接続部131と電線接合部135とがオーバーラップして形成されない接続端子130と比較して小型化される。従って、本実施形態に係る端子付き電線10は、小型化された機器に対しても容易に配置することができ、端子付き電線10の配置性を高めることができる。
【0041】
一方で、接続端子30は、芯線21の延在方向における電線接合部35の長さを短くすることなく全長を短くしており、芯線21を接合する電線接合部35の長さが確保されている。このため、電線20の芯線21は、接続端子30に対して強固に接合されている。従って、ボルト挿通孔32にボルトを通して接続端子30と相手側部材とを接続する際に、ボルトを用いて接続する際におけるボルトの軸方向における締結力である軸力を確保することができる。
【0042】
つまり、ボルト挿通孔32に通すボルトは、電線接合部35に電線20の芯線21が接合される側の面側から通す。このため、ボルトを締め付ける際には、ボルトの頭は、接続端子30における、芯線21が接合される側の面に接触する。その際に、接続端子30は、電気接続部31と電線接合部35とがオーバーラップすることにより、ボルト挿通孔32の近傍には芯線21の先端部22付近が位置している。このため、ボルトを締め付ける際には、ボルトの頭は芯線21に接触し、ボルトの締め付け力や、ボルトを回転させる際における回転方向の力は、芯線21に対して付与される。
【0043】
このように、芯線21には、ボルトから大きな力が付与されるが、芯線21と接続端子30とが接合される部分である電線接合部35は、芯線21の延在方向における長さが確保されており、芯線21と接続端子30とは、接合強度を得るのに十分な長さで接合されている。従って、ボルトから芯線21に対して、締め付け力や回転方向の力が付与された場合でも、芯線21と接続端子30との接合が外れることなく、芯線21はボルトからの力を受けることができる。このため、ボルトは、接続端子30と相手側部材との締結に必要な力で締め込むことができ、接続端子30と相手側部材とを締結するのに必要な軸力を確保することができる。
【0044】
以上の実施形態に係る端子付き電線10は、接続端子30におけるボルト挿通孔32が形成される電気接続部31と、超音波接合によって電線20の芯線21が接合される電線接合部35とが、芯線21の延在方向においてオーバーラップして形成されている。これにより、電気接続部31と電線接合部35とがオーバーラップされない形態と比較して、芯線21の延在方向における接続端子30の長さを短くすることができる。
【0045】
また、電気接続部31と電線接合部35がオーバーラップすることにより、ボルト挿通孔32は一部が電線接合部35に入り込んでいるが、芯線21の先端部22が先割れすることにより、芯線21はボルト挿通孔32を回避して電線接合部35に接合されている。これにより、芯線21は、接続端子30に対する芯線21の接合部分の長さがボルト挿通孔32によって短くなることを抑制でき、接続端子30に対する芯線21の接合部分の面積が小さくなることを極力抑制することができる。従って、電気接続部31と電線接合部35とをオーバーラップさせて接続端子30の長さを短くした形態においても、芯線21と接続端子30との接合強度を確保することができる。この結果、実施形態に係る端子付き電線10は、接続端子30と電線20との接合強度を確保しつつ、接続端子30の小型化を図ることができる。
【0046】
また、実施形態に係る端子付き電線10の製造方法では、電気接続部31のボルト挿通孔32に、接合装置50が有するピン53を入り込ませた状態で電線接合部35に電線20の芯線21を載置することにより、芯線21の先端部22をピン53によって先割れさせる。その後、ボルト挿通孔32からピン53を抜き、芯線21と電線接合部35とを超音波接合する。これにより、芯線21がボルト挿通孔32を塞ぐことなく、芯線21をボルト挿通孔32の位置まで配置して芯線21と接続端子30とを接合することができる。従って、電気接続部31と電線接合部35とオーバーラップさせることによって接続端子30の長さを短くしつつ、接続端子30と芯線21との接合部分の長さを確保して接合部分の面積を確保することができる。この結果、実施形態に係る端子付き電線10の製造方法は、接続端子30と電線20との接合強度を確保しつつ、接続端子30の小型化を図ることができる。
【0047】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、接続端子30は平板状の形状で形成されているが、接続端子30は、平板以外の形状で形成されていてもよい。
図9は、実施形態に係る端子付き電線10の変形例であり、リブ33が形成される接続端子30が用いられる端子付き電線10の要部平面図である。
図10は、
図9に示す接続端子30の斜視図である。接続端子30の電気接続部31には、電線接合部35における芯線21が接合される側の面と同じ側の面に、
図9、
図10に示すように、電気接続部31から立設するリブ33が配置されていてもよい。
【0048】
電気接続部31から立設するリブ33は、接続端子30の幅方向における電気接続部31の両端に配置されており、それぞれ同じ高さで芯線21の延在方向に延びて形成されている。さらに、電気接続部31の両端のリブ33は、接続端子30の幅方向における両端の位置から、芯線21の延在方向における電気接続部31が位置する側の接続端子30の角部の形状である、丸面取りの部分にも亘って形成されている。このように電気接続部31に配置されるリブ33は、電気接続部31におけるリブ33が配置されている面からの、接続端子30の厚み方向における高さが、芯線21における電線接合部35に接合されている部分の高さよりも高くなっている。
【0049】
なお、
図9、
図10に示す例では、電線接合部35におけるリブ33が形成されていない部分の、接続端子30の幅方向における幅は、同方向における電気接続部31の幅よりも広くなっている。
【0050】
図11は、
図9に示す接続端子30のボルト挿通孔32にボルト60を通した状態におけるC-C矢視図である。
図12は、
図9に示す接続端子30のボルト挿通孔32にボルト60を通した状態におけるD-D断面図である。端子付き電線10と相手側部材とを接続する際には、接続するためのボルト60を、電気接続部31におけるリブ33が配置されている側の面側から、ボルト挿通孔32に通す。ボルト60には、例えば、
図11、
図12に示すような、座金が一体となったいわゆる座金付きボルトを用いる。このため、ボルト60は、座金状に形成された座金部61を有している。
【0051】
ボルト挿通孔32に対して、電気接続部31におけるリブ33が配置されている側の面側からボルト60を通した場合、ボルト60はリブ33に当接する。具体的には、ボルト60は、座金部61がリブ33に当接する。つまり、リブ33は、接続端子30の厚み方向における高さが、電線接合部35に接合される芯線21の高さよりも高いため、ボルト挿通孔32に通したボルト60は、上述した実施形態とは異なり、芯線21には接触せずにリブ33に当接する。このため、接続端子30と相手側部材とを接続するためにボルト60を締め込んだ場合は、ボルト60からの締め付け力はリブ33に対して付与される。
【0052】
従って、接続端子30と相手側部材とをボルト60を用いて接続する際において、ボルト60の軸方向における締結力である軸力に対する要求が高く、高い軸力を得ることができるようにボルト60を締め付ける必要がある場合でも、ボルト60からの力はリブ33で受けることができる。即ち、ボルト60を大きな締め付け力で締め付けた場合でも、ボルト60からの力は芯線21には伝達されず、ボルト60からの力はリブ33で受けることができる。このため、ボルト60を大きな締め付け力で締め付けても、電気接続部31にオーバーラップする芯線21には影響を与えることがないため、大きな締め付け力でボルト60を締め付けることができる。これにより、必要な軸力を確保することができ、接続端子30と相手側部材とを、ボルト60の高い軸力で接続することができる。
【0053】
また、上述した本発明の実施形態、変形例に係る端子付き電線及び端子付き電線の製造方法は、上述した実施形態、変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態、変形例に係る端子付き電線及び端子付き電線の製造方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10、100 端子付き電線
20、120 電線
21、121 芯線
22 先端部
25、125 被覆
30、130 接続端子
31、131 電気接続部
32、132 ボルト挿通孔
33 リブ
35、135 電線接合部
50 接合装置
51 グライディングジョー
52 アンビル
53 ピン
54 ホーン
60 ボルト
61 座金部