IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松谷化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-103833ベーカリー食品用組成物及びそれを利用したベーカリー食品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103833
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ベーカリー食品用組成物及びそれを利用したベーカリー食品
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20240726BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20240726BHJP
   A23G 3/34 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
A21D2/18
A23L29/219
A23G3/34 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007748
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 秀二郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙介
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GG02
4B014GG07
4B014GK03
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP15
4B025LD03
4B025LG01
4B025LG07
4B025LG18
4B025LG21
4B025LP15
4B025LP18
4B032DB01
4B032DB05
4B032DB40
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK47
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ベーカリー製品の老化を改善するためのベーカリー食品用組成物を提供することにあり、また、その組成物を用いたベーカリー食品、さらには老化の改善がされたベーカリー食品の製造方法を提供することにある。
【解決手段】タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を原材料として少量用いる、より具体的には、粉体主原料100質量部に対して0.05~4質量部の割合で用いることにより、上記課題は達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を含む、ベーカリー食品用組成物。
【請求項2】
粉体主原料100質量部に対して前記加水分解物を0.05~4質量部の割合で含む、請求項1記載のベーカリー食品用組成物。
【請求項3】
粉体主原料100質量部に対して前記加水分解物が0.05~4質量部の割合で使用される、請求項1記載のベーカリー食品用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のベーカリ食品用組成物を含んでなる生地。
【請求項5】
請求項4記載の生地を焼成又は蒸してなるベーカリー食品。
【請求項6】
タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を、粉体主原料100質量部に対して0.05~4質量部の割合で配合する、ベーカリー食品の製造方法。
【請求項7】
タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を含む、ベーカリー食品の老化改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー食品用組成物及びそれを利用したベーカリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー食品とは、主原料である穀粉(主に小麦粉などの粉体)に対し、卵、砂糖、塩、牛乳、油脂、イースト、ベーキングパウダーなどの副原料を適宜混合してドウ生地又はバッター生地とし、これを焼成してなるものをいう。具体的には、パン類とケーキ類を指し、パン類であれば、食パン、フランスパン、テーブルロール、クロワッサンなど、イースト発酵と焼成の工程を経てなるものが例示され、ケーキ類であれば、イースト発酵を経ずに焼成してなるスポンジケーキ、シフォンケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキ、どら焼き、たい焼き、カステラ、ワッフルなどが例示される。
【0003】
ベーカリー食品は、主成分が澱粉質であって、澱粉が老化しやすい水分率(30~60%(w/w))及び温度帯(2~15℃)で保存されることが多く、焼成により一旦は糊化した澱粉質は経時的に老化してパサつきやすくなる。そこで、ベーカリー類の老化を改善しようと、これまでに種々の提案がされている。
【0004】
例えば、構成脂肪酸中に炭素数6~10の中鎖脂肪酸を含む油脂を利用する方法(特許文献1)や、油脂、デキストリン類及び乳化剤からなる食品生地練り込み用の水中油型乳化油脂組成物を利用する方法(特許文献2)や、膨潤抑制アセチル化澱粉を利用する方法(特許文献3)のほか、質量平均分子量20万以下のデキストランを利用する方法(特許文献4)などが挙げられる。
【0005】
しかし、油脂や乳化油脂組成物を利用すると、ベーカリー食品中に好ましくない風味が残存し、また、アセチル化澱粉などの加工澱粉は、ベーカリー食品の風味に若干の影響を与えることがあるばかりか、添加量によっては生地物性やベーカリー食品の食感に大きく影響を与えて、所望しないモチモチ食感などに変化しがちである。また、デキストランはクッキーなどの焼き菓子にはほどよいサクサク感を付与できるものの、水分含量の高いベーカリー食品の老化を改善するまでに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-262757号公報
【特許文献2】特開2001-95489号公報
【特許文献3】特開平10-276661号公報
【特許文献4】特開2017-029047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ベーカリー製品の老化を改善するためのベーカリー食品用組成物を提供することにあり、また、その組成物を用いたベーカリー食品、さらには老化の改善がされたベーカリー食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、特定の加工澱粉の分解物、すなわち、ヒドロキシプロピル化された澱粉を加水分解処理して得られる澱粉分解物を少量添加することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、主に以下の[1]~[7]からなる。
[1]タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を含む、ベーカリー食品用組成物。
[2]粉体主原料100質量部に対して前記加水分解物を0.05~4質量部の割合で含む、[1]記載のベーカリー食品用組成物。
[3]粉体主原料100質量部に対して前記加水分解物が0.05~4質量部の割合で使用される、[1]記載のベーカリー食品用組成物。
[4][1]~[3]のいずれかひとつに記載のベーカリ食品用組成物を含んでなる生地。
[5][4]記載の生地を焼成又は蒸してなるベーカリー食品。
[6]タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を、粉体主原料100質量部に対して0.05~4質量部の割合で配合する、ベーカリー食品の製造方法。
[7]タピオカ及びワキシーコーンのいずれか一以上を由来とする澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉の加水分解物であって、DE2~8、かつ、30%(w/w)粘度が50~500mPa・sである加水分解物を含む、ベーカリー食品の老化改善用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象となるベーカリー食品の本来あるべき食感に大きな影響を及ぼすことなく、出来立てはもちろんのこと一定時間経過後も、しっとり感が維持されたベーカリー食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のベーカリー食品用組成物に用いる加工澱粉の分解物の概要は、ヒドロキシプロピル化された澱粉を加水分解して得られる分解物である。
【0012】
本発明において、ヒドロキシプロピル化された澱粉(以下、単に「ヒドロキシプロピル澱粉」ともいう)とは、澱粉にプロピレンオキサイドを定法により作用させて得られる水酸基置換型加工澱粉、すなわち、澱粉グルコースポリマーの水酸基がヒドロキシプロピル化された澱粉のことを指し、当該ヒドロキシプロピル化の反応と同時又は異時に架橋化剤のトリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンなどを定法により作用させて得られるヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを含む。本発明にいうヒドロキシプロピル澱粉を調製するための澱粉原料は、米澱粉、コーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、及びこれらのワキシー種など、どのような澱粉であっても構わないが、ワキシーコーン、タピオカ、ワキシータピオカ、ワキシー馬鈴薯の澱粉を原料とすることが好ましく、ワキシーコーン、タピオカの澱粉を原料とすることがより好ましい。また、上記の置換度や架橋度はとくに限定されるものではないが、本発明の効果をより効率的に発揮できる観点から、置換度のDS(澱粉を構成するグルコース残基の3つのフリーの水酸基すべてが置換されたときの置換度を3とする)が0.03~0.3の範囲にあるものが好ましく、0.07~0.2、さらには0.09~0.15の範囲にあるものが好ましい。また、ヒドロキシプロピル化の置換に加えて架橋化された加工澱粉を用いる場合は、その架橋程度は低度であることが好ましく、加水分解前のヒドロキシプロピル化架橋澱粉としての沈降積でいえば、4~10mlであることが好ましい。
【0013】
上述の沈降積の測定は、以下のとおり行う;まず、澱粉試料0.15g(固形物換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64%により調製)15mLを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25~35℃まで冷却する。そして、この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10mL容量メスシリンダーに10mL流し込み、25℃にて20時間静置後、その沈殿物の目盛値を読み取る。
【0014】
澱粉の加水分解物とは、一般に、澱粉を酵素や酸によって分解して得られる分解物のことであり、本発明で用いる分解物もこれと同様、原料となるヒドロキシプロピル澱粉を酵素又は酸で分解したものである。その分解度の指標となるDE(Dextrose Equivalentの略。澱粉すべてがグルコース単位まで分解されたときのDEを100とする。)は、2~16程度であればよいが、本発明の効果を効率的に得る観点から、DE2~8、DE2~6、又はDE3~5であることがより好ましい。このDEは、ウィルシュテッターシューデル法又はレインエイノン法により分析することができる。本発明で用いる当該澱粉分解物の30%(w/w)粘度は、好ましくは50~500mPa・sであり、より好ましくは80~450mPa・s、最も好ましくは100~400mPa・s(BM型粘度計、60rpm、30秒、30℃)である。
【0015】
本発明における加工澱粉の分解物は、上述のDE及び粘度により特定できるほか、DPによって特定することができる。DPとは、Degree of Polymerizationの略であり、糖鎖を構成する単糖の数を示す。本発明における加工澱粉の分解物は、糖組成におけるDP1、DP2などの重合度の低い糖の割合が小さく、糖組成におけるDP7以上の割合が50%以上であることが特徴であり、好ましくはDP7以上の割合が65%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0016】
本発明のベーカリー食品用組成物は、上記ヒドロキシプロピル澱粉の分解物を必須成分とし、最終的にはベーカリー食品を製造するためのものであるから、小麦粉をはじめとする穀粉類とともに使用される。この穀粉類は、ベーカリー食品の製造時に製造者が好みのものを選択し、そこへ本発明のベーカリー食品用組成物を混合して使用(添加剤としての使用)するのでもよいし、上述のヒドロキシプロピル澱粉の分解物をあらかじめ混合しておき、ベーカリー食品用組成物として使用(ミックス粉の一成分として使用)するのでもよい。本発明のベーカリー食品用組成物に含まれるヒドロキシプロピル澱粉の分解物の含有量は特に限定されないが、添加剤として使用される場合は、効果を謳う観点から少なくとも5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
【0017】
上記穀粉類に制限はないが、少なくとも小麦粉を含み、その一部を全粒粉、ライ麦粉、コーンフラワー、グラハムフラワー、米粉、でん粉、加工澱粉、大麦、アマランサス、キヌアなどで置き換えることもできる。ただし、製造適性の観点から、その置換率は小麦粉の100%(w/w)未満、好ましくは50%(w/w)未満とするのがよい。
【0018】
本発明のベーカリー食品用組成物は、有効成分であるヒドロキシプロピル澱粉の分解物を、粉体主原料100質量部に対して0.05~6質量部の範囲で含めばよく、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.05~4質量部、最も好ましくは0.1~3質量部の範囲で含むのがよい。ここでいう「粉体主原料」とは、上述の穀粉類(小麦粉、米粉、でん粉、加工澱粉など)及び糖(砂糖、果糖、グルコース、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリン、増粘多糖など、穀粉を除く糖質の類であって液体でないもの)を指し、これら以外の粉乳、粉末油脂、塩、食物繊維、ガム、ベーキングパウダーなどの副原料は、粉体状であってもここにいう「粉体主原料」に含まれない。本発明のベーカリー用組成物は、バッター生地若しくはドウ生地に添加して使用され、有効成分のヒドロキシプロピル澱粉の分解物が生地中に少なくとも0.03~3.6質量%、0.03~3質量%、0.06~2.6、又は0.1~1.8となるように適宜使用されればよい。
【0019】
本発明のベーカリー食品用生地は、上述の本発明のベーカリー食品用組成物に粉体主原料及びその他副原料を加えて混捏されて調製されたものであり、焼成や蒸し工程を経てベーカリー食品となる。ここで、副原料とは、ベーカリー食品を製造するにあたり原料として加えられうるものすべてを指し、上述の粉体原料のほか、水、牛乳、バター、生クリーム、マーガリン、ショートニング、オリーブオイル、加工油脂、粉末油脂、異性化糖、はちみつ、イースト、乳化剤、カカオ、チーズ、木の実、ハーブ、フルーツ、ベーキングパウダー、重曹、塩、ガム類、食物繊維などが挙げられる。
【0020】
本発明にいうベーカリー食品の種類はとくに限定されず、いわゆるパン類又はケーキ類であればよい。パン類の具体例としては、食パン類、フランスパン、バンズ、テーブルロール、クロワッサン、デニッシュ、あんぱん、クリームパン、イーストドーナツなどが例示され、ケーキ類の具体例としては、スポンジケーキ、シフォンケーキ、パウンドケーキ、カップケーキ、マドレーヌ、ホットケーキ、パンケーキ、ケーキドーナツ、蒸しケーキ、どら焼き、たい焼き、ワッフルなどが例示される。もっとも、本発明の効果が効率的に発揮される形態は、パン類であれば食パン類、テーブルロールであり、ケーキ類であればスポンジケーキとシフォンケーキである。
【実施例0021】
以下、実験例を提示して本発明を詳細かつ具体的に説明するが、本発明は、これら実験例に限定されるものでない。
【0022】
<ヒドロキシプロピル澱粉の調製>
澱粉100質量部及び水120質量部からなる懸濁液に対し、プロピレンオキサイドを6.2~7.5質量部の範囲で加え、常法に従って反応させた後、水洗、脱水、乾燥してヒドロキシプロピル澱粉(試作品Bの分解前原料)を得た。次に、この各ヒドロキシプロピル澱粉100質 量部に対し、トリメタリン酸ナトリウムを0.005~0.015質量部の範囲で加え、 定法によって反応させた後、水洗、脱水、乾燥してヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(試作品A、C、D又はEの分解前各原料)を得た。
【0023】
<オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの調製>
澱粉100質量部に対し、無水オクテニルコハク酸3質量部を加え、常法に従って反応させた後、水洗、脱水、乾燥してオクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(試作品F及びGの分解前原料)を得た。
【0024】
<ヒドロキシプロピル澱粉分解物の調製>
上の手順で得たヒドロキシプロピル澱粉若しくはヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の30質量%懸濁液(pH6±0.2)を調整し、α-アミラーゼ(クライスターゼL1)を各澱粉に対して0.06質量%となるよう添加した。この酵素-澱粉水懸濁液を83℃の加熱加圧蒸煮釜で10分間酵素反応を行い、0.1MPaにて酵素を失活させ液化液を得た。次に、この液化液を蓚酸または消石灰を用いてpH6±0.2に調整し、0.01質量%となるよう上述のα-アミラーゼを再度添加した。DE3~5となるように83℃で20~40分間保持した後、蓚酸を添加し、pH3.5以下に調整して酵素を失活させ、消石灰で中和して精製後、噴霧乾燥した。
【0025】
<オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム分解物の調製>
上の手順で得たオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの40質量%懸濁液(pH6±0.2)を調製し、α-アミラーゼ(クライスターゼL1)が各澱粉100質量部に対して0.01質量部(試作品Fについては、さらにβ-アミラーゼ(β―アミラーゼF「アマノ」)を0.1質量部)となるよう添加した。85℃昇温後、DE8~25となるように20~40分間保持し、適宜10%塩酸水溶液を投入して酵素を失活させ(pH3.5)、10%NaOH溶液で中和して精製後、噴霧乾燥した。
【0026】
【表1】
【0027】
<どら焼きの確認>
上で調製した加工澱粉の分解物(表1)を用い、下の表2の手順、及び表3又は表5の配合で各どら焼きを焼成した。官能評価は、常温1日後と4日後の比較で行い、常温4日後まで変わらずにしっとり感が保持されていたものは「◎」、4日後にしっとり感が低減傾向にあったものは「○」、4日後にパサついていたものは「△」、1日後にすでにパサついていたものは「×」と評価した。結果は表4又は表6に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの分解物を用いると、非常にパサついてしっとり感は認められなかった(試験区6~7)。他方、ヒドロキシプロピル化の処理がされた澱粉の分解物を用いると、しっとり感が持続していた(試験区1~5)。しかしながら、ヒドロキシプロピル化の処理がされた澱粉の分解物であっても、粉体主原料100質量部に対して4.5質量部以上用いると、しっとりするもののネチャつきが著しかった(試験区10~11)。よって、ケーキとしての全体のバランスを考慮すれば、粉体主原料100質量部に対して0.05~4質量部の範囲で用いることが望ましいと考えられる。