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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103834
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】中華まん類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20240726BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240726BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007749
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大濱 庸介
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG34
4B035LG50
4B035LK19
4B035LP03
4B035LP31
4B035LP59
4B036LC05
4B036LF11
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH22
4B036LH25
4B036LH48
4B036LK06
4B036LP01
4B036LP14
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】中華まんは、加湿保温器に保存されると生地がふやけてシワになったり硬化したりし、中華まん本来のふっくらとした外観や歯切れのよさがなくなる。そこで、本発明の目的は、そのような外観や食感の劣化が少ない中華まん類及びその中華まん類の簡便な製造方法を提供することにある。
【解決手段】中華まん類の生地原料となる穀粉100質量部のうち5~40質量部(以降、「対紛5~40質量%」ともいう。)を、エンドウ豆澱粉を原料とする特定の加工澱粉、具体的には、無水11%水懸濁液のRVA最高粘度が300cp以下、かつ最終粘度が500cp以下である加工澱粉に置き換えることにより、加湿保温器に一定時間置かれた後にも生地のふやけや硬化の少ない中華まん類を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を含む、中華まん類用ミックス:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
【請求項2】
前記加工澱粉を対紛5~40%で含む、請求項1記載の中華まん類用ミックス。
【請求項3】
エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を含む、中華まん類用生地:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
【請求項4】
前記加工澱粉を対紛5~40%で含む、請求項3記載の中華まん類用生地。
【請求項5】
請求項4記載の中華まん類用生地が蒸されてなる、中華まん類。
【請求項6】
喫食前に加湿加温器で保存されることを特徴とする、請求項5記載の中華まん類。
【請求項7】
エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を中華まん類生地に添加する、中華まん類の製造方法:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
【請求項8】
前記加工澱粉を対紛5~40%で中華まん類生地に添加する、請求項7記載の中華まん類の製造方法。
【請求項9】
エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を中華まん類生地に添加する、中華まん類の品質劣化抑制方法:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
【請求項10】
前記加工澱粉を対紛5~40%で中華まん類生地に添加する、請求項9記載の中華まん類の品質劣化抑制方法。
【請求項11】
品質劣化が、加湿加温器で保存されたときのふやけ、ベタつき、硬化及びボソつきのいずれか一以上である、請求項10記載の中華まん類の品質劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間加湿保温されても蒸し生地の劣化が少ない中華まん類、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華まん類は、穀粉類を主原料とする発酵生地をそのままで又は包餡(小豆あん、肉野菜餡など)して成形し、ホイロ(二次発酵)を経て蒸し器で蒸し上げて調製される。中華まん類は、常温、冷蔵又は冷凍状態で保存、流通、販売され、喫食前に蒸し器や電子レンジ等で再加熱されることが多く、この再加熱は家庭内にとどまらず、コンビニエンスストアやスーパーなどの店舗で行われて、さらに店頭の加湿保温器(スチームフードストッカー)に長時間置かれることもある。しかし、再加熱や長時間の加湿保温は、中華まん類の外観や食感の劣化をもたらす。
【0003】
そのようなところ、たとえば、特許文献1には、電子レンジなどで再加熱しても硬化やヒキの少ない中華まんを提供しようと、澱粉、加工澱粉(特にヒドロキシプロピル化澱粉)及び粗蛋白量4.5~8.7質量%の穀粉類を含む中華まん類が開示されている。また、特許文献2には、高温の水蒸気に長時間曝露された後においても生地の品質低下が抑制された中華まんを提供しようと、グルコースオキシダーゼ、グルテン、えんどうデンプン(小麦粉の含有量に対して5%以下)及びアルギン酸エステルを含有する中華まん用添加剤が開示されている。また、特許文献3には、電子レンジにより解凍硬化しない冷凍食品用ミックスを提供しようと、小麦粉にα化タピオカ澱粉を加えることを特徴とする冷凍食品用ミックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-167713号公報
【特許文献2】特開2020-18269号公報
【特許文献3】特開平8-66148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長時間加湿保温されると生地が湿度によりふやけてシワになったり加温により硬化したりと、中華まん本来のふっくらとした外観の歯切れのよい生地でなくなるため、そのような外観や食感の劣化が少ない中華まん及びその簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討した結果、中華まんの生地原料の穀粉100質量部のうち5~40部(以降、「対紛5~40質量%」ともいう。)を、エンドウ豆澱粉を原料とする特定の加工澱粉、具体的には、無水11%水懸濁液のRVA最高粘度が300cp以下、かつ最終粘度が500cp以下である加工澱粉に置き換えることにより、加湿保温器に一定時間置かれた後にも、生地のふやけや硬化の少ない中華まんとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、主に以下の〔1〕~〔11〕から構成される。
〔1〕エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を含む、中華まん類用ミックス:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
[2]前記加工澱粉を対紛5~40%で含む、[1]記載の中華まん類用ミックス。
[3]エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を含む、中華まん類用生地:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
[4]前記加工澱粉を対紛5~40%で含む、[3]記載の中華まん類用生地。
[5][4]記載の中華まん類用生地が蒸されてなる、中華まん類。
[6]喫食前に加湿加温器で保存されることを特徴とする、[5]記載の中華まん類。
[7]エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を中華まん類生地に添加する、中華まん類の製造方法:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
[8]前記加工澱粉を対紛5~40%で中華まん類生地に添加する、[7]記載の中華まん類の製造方法。
[9]エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉であって、無水11%水懸濁液を以下(1)~(5)の温度経過で測定したときのRVA最高粘度が300cp以下、かつRVA最終粘度が500cp以下である加工澱粉を中華まん類生地に添加する、中華まん類の品質劣化抑制方法:
(1)50℃で1分間保温、
(2)12.1℃/分で95℃まで昇温、
(3)95℃で2分30秒間保持、
(4)11.8℃/分で50℃まで降温、
(5)50℃で2分間保持。
[10]前記加工澱粉を対紛5~40%で中華まん類生地に添加する、[9]記載の中華まん類の品質劣化抑制方法。
[11]品質劣化が、加湿加温器で保存されたときのふやけ、ベタつき、硬化及びボソつきのいずれか一以上である、[10]記載の中華まん類の品質劣化抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常温、冷蔵、又は冷凍状態にある中華まん類を喫食前に電子レンジや蒸し器で再加熱し、さらに加湿保温器(スチームフードストッカー)に一定時間置いても、生地のふやけや硬化が抑制された、商品価値の高い中華まん類を簡便に提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にいう「中華まん類」は、小麦粉等の穀粉類を原料とし、直捏法、中種法、湯種法などの方法で混捏した生地をイースト発酵させ、そのまま又は包餡(小豆あん、肉野菜餡など)して成形し、ホイロ(二次発酵)を経て蒸し器で蒸し上げて調製されるものである。この中華まん類は、常温、冷蔵又は冷凍状態で保存、流通、販売される。
【0010】
本発明の中華まん類に使用する上記「穀粉類」は、澱粉を主として含む穀類をそのまま又は精製して粉砕したものであり、例えば、小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉など)、澱粉(加工澱粉を含む)、米粉、などである。どのような穀粉類を使用するかは、目的とする出来上がり時の食感により選択することができ、ふんわり食感を目指す場合は薄力粉、もっちり食感を目指す場合は中力粉や強力粉を選択することができ、複数の穀類を組み合わせて使用することもできる。
【0011】
本発明の中華まん類に使用する「エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉」は、無水11%水懸濁液のRVA最高粘度が300cp以下であって、かつ最終粘度が500cp以下である加工澱粉であることを特徴とする。より詳細には、無水11質量%の水懸濁液をRVA(Rapid Visco Analyzer)を用い、50℃で1分間保温後、昇温速度12.1℃/分で95℃まで昇温(3分42秒間)させてから95℃で2分30秒間保持し、次いで降温速度11.8℃/分で50℃まで降温(3分48秒間)させてから50℃で2分間保持したとき(合計13分間)に、降温開始までの最高粘度(以降、単に「RVA最高粘度」ともいう。)が、0を超えて300cp以下、好ましくは5~250cp、より好ましくは5~200cpであり、かつ、最終粘度が0を超えて500cp以下、好ましくは5~450cp、より好ましくは10~400cpである加工澱粉であることを特徴とする。
【0012】
本発明の中華まん類に使用する「エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉」は、上述の特徴を有するところ、架橋処理又は酸化処理された澱粉がこの特徴を有することがある。
架橋澱粉とは、澱粉の水懸濁液に、塩存在下で架橋剤(トリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンを)を投入し、pHを調整しながら所定時間及び所定温度で反応させることにより得られるものであり、得られる架橋澱粉の具体的な物質名は、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンである。
本発明で使用できる架橋澱粉は、架橋度が比較的高度のものであり、具体的には、加熱膨潤度であれば8.9未満が好ましく、8.5以下、8.0以下又は7.5以下であることがより好ましい。ここで、加熱膨潤度とは、90℃で加熱したときの澱粉の糊化の程度(膨潤倍率)を表すものであって、架橋の程度が高い澱粉(高架橋澱粉)ほど小さい数値となる。その測定方法は、例えば、以下である:まず、乾燥物換算で試料1.0gを水100mlに懸濁して90℃で10分間加熱後、直ちに遠心分離(4500r.p.m.30分間)し、ゲル層(下層)と上澄層に分ける。ゲル層の重量を「A」、そのゲル層を乾固(105℃、恒量)したときの重量を「B」としたときの「A/B」の値が加熱膨潤度である。高架橋澱粉は、トリメタリン酸ナトリウムを架橋剤とする場合、原料澱粉100質量部に対して0.2~8質量部、0.3~5質量部、又は0.4~3質量部を目安として使用する一般的な製造方法によって得ることができる。
【0013】
また、酸化澱粉は、澱粉の水懸濁液に酸化剤を作用させることにより得られ、詳細には、アルカリ存在下(pH7~12)、エンドウ豆澱粉が糊化しない温度帯で次亜塩素酸ナトリウムを作用させ、中和、水洗、乾燥して得られる加工澱粉である。この酸化澱粉の酸化度はとくに限定されないが、その酸化度の程度を確認したい場合は、カルボキシル基含量により確認することができるほか、粘度等によっても確認することができる。本発明で使用する酸化澱粉は、90℃達温糊化後の30℃における5%(w/w)粘度の場合、好ましくは0を超えて100mPa・s以下、より好ましくは1~70mPa・s、さらに好ましくは1~50mPa・sである(BM型粘度計、ローターNo.1、60rpm、30秒)。また、上述のとおり、RVA(rapid visco analyser)を用いて測定することもでき、好ましい範囲は上述のとおりである。
【0014】
上述のエンドウ豆を原料とする加工澱粉は、中華まん類生地に使用される原料穀粉100質量部のうち5~40質量部を置き換える(以降、単に「対紛5~40%」ともいう。)ことが好ましく、10~30質量部を置き換えることがより好ましい。この理由は、添加量が対紛5%を下回ると本発明の効果が得られにくく、40%を上回ると本発明の効果であるふやけ防止効果は十分に認められるものの、蒸し加熱後の生地が膨らまずボソついた食感を生じるためである。なお、これらの加工澱粉ごとの添加量を詳述すると、架橋澱粉であれば、対紛5~40%、より好ましくは10~30%、さらに好ましくは15~30%であり、酸化澱粉であれば、対紛5~40%、より好ましくは5~30%、さらに好ましくは10~30%である。
【0015】
本発明の中華まん類は、上述の主原料となる穀粉類、エンドウ豆を原料とする架橋澱粉若しくは酸化澱粉のほか、糖類、イーストフード、水、乳製品、食塩、調味料(アミノ酸)、保存料、ビタミン、ミネラル(カルシウム、鉄)、蛋白質、膨張剤、乳化剤、フレーバー等の副原料を含むことができる。
【0016】
本発明の目的は、中華まん類の品質劣化抑制であって、具体的には、中華まんを加湿加温器に保存したときに中華まん生地が経時的に吸水してふやける若しくはふやけてベタつくのを防ぐことにあって、加えて硬化若しくはヒキが強くなることを防ぐことにもある。よって、本発明の効果を確認する手法としては、重量計測(吸水の確認)、外観目視(シワやふやけの有無の確認)、試食(硬さなど食感の確認)などがあり、例えば、重量計測であれば、加湿加温器に置いたときの経時的重量変化率(0時間時の重量を100としたときの相対値)が、コントロール(澱粉無添加)の経時的重量変化率より小さいこと、より具体的には、RH90%以上の75~80℃の加湿加温器で保存した場合に、少なくとも6時間後までのいずれかの時点での重量変化率がコントロールより小さいときに本発明の効果があるといえる。
【0017】
本発明の中華まん類は、常温、冷蔵又は冷凍の状態で流通した後、電子レンジや蒸し器などにより再加熱されて、加湿加温器で保存される中華まんを想定しており、コンビニエンスストアやスーパーなど店頭に設置された加湿保温器で保存された後にも、ふやけや硬化がなく外観及び食感に優れた中華まん類を提供できるため、本発明によればフードロス削減及び低コスト化が可能となる。
【0018】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0019】
以降の試験に用いた加工澱粉の詳細を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
(中華まんの評価)
表2の各配合の中華まん生地を調製した。全原料を混合し(縦型ミキサー、低速5分→中速1分)、35gずつ分割成形してからホイロ(40℃、RH50%、40分)と蒸し工程(100℃、5分)をとり、放冷後、1晩冷蔵保存した。その後、加湿加温器(75~80℃、RH90%以上)に6時間静置し、0、2、4、6時間時の中華まんの重量変化を確認した(表3)。また、0時間及び6時間後の中華まんの状態を目視(ふやけ)で評価し、試食した感想を付した(表4、表5)。ふやけの評価は、「全くふやけなし」=5点、「ほぼふやけなし」=4点、「ややふやけあり」=3点、「ふやけあり」=2点、「ひどくふやけあり」=1点とした。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
試料No.2(エンドウ豆澱粉の高架橋)、No.3(エンドウ豆澱粉の酸化)を用いたときに、顕著にふやけが改善されていたため、以降、エンドウ豆澱粉の加工澱粉について、詳細に検討することとした。
【0027】
(エンドウ豆澱粉の架橋処理)
水120質量部に硫酸ナトリウム10質量部を溶解しておき、そこへエンドウ豆澱粉100質量部を投入してスラリー(懸濁液)とした。攪拌下、トリメタリン酸ソーダを0.15~0.6部の範囲で加え、40℃で5~6時間反応させ、硫酸で中和,水洗、脱水、乾燥して「試料No.10~12」を得た。
【0028】
(エンドウ豆澱粉の酸化処理)
エンドウ豆澱粉100質量部を水120質量部に懸濁したスラリーを3%水酸化ナトリウムでpH11.5±0.5の範囲で随時調整しながら、13%次亜塩素酸ナトリウムを8質量部添加し、35℃で5時間反応させた。これを水洗・脱水・乾燥して「試料13」を得た。
以上の手順で得られたエンドウ豆澱粉の加工澱粉(試料No.10~13)と、先のエンドウ豆澱粉の加工澱粉(試料No.1~3)の分析値の詳細を表6にまとめて示す。
【0029】
【表6】
【0030】
試料No.10~13の各澱粉を用い、上の表2の配合及び同じ手順で中華まんを作製し、同じ方法で評価した。表7に中華まんの経時的重量変化率(相対値)を、表8に中華まんの写真と評価を示す。
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
エンドウ豆澱粉を原料とする架橋澱粉であっても、その膨潤度が8.9以上のものであるか、RVA最高粘度300cpかつ最終粘度500cpを超えたものであるときは、加湿加温器に6時間放置したときのふやけが進み、好ましい中華まんが得られなかった(試験No.1、10)。一方、エンドウ豆澱粉を原料とする酸化澱粉を用いた場合、加湿加温器に6時間放置しても依然としてふやけのない、好ましい食感が維持されていた(試験No.13)。
【0034】
(エンドウ豆澱粉の添加量の検討)
次に、エンドウ豆澱粉を原料とする加工澱粉の適切な添加量を検討した。エンドウ豆澱粉を原料とする架橋澱粉(試料No.2)については、対紛1、5、10、20、30、40、50%の配合(薄力粉と強力粉の比率は3:2の一定とする)で使用して中華まんを作製して上と同様の手順で評価を行い(表9、10)、エンドウ豆澱粉を原料とする酸化澱粉(試料No.3)については、対紛1、5、20、40、50%の配合(薄力粉と強力粉の比率は3:2の一定とする)で使用して中華まんを作製して上と同様の手順で評価した(表11、12)。
【0035】
【表9】
【0036】
【表10】
【0037】
エンドウ豆澱粉を原料とする架橋澱粉を対紛5~50%、好ましくは10~50%、より好ましくは15~30%で用いたときに、ふやけ抑制効果が確認された。ただし、食感については、対紛40%を超えて50%で用いると硬くなる傾向にあったことから、対紛5~40%又は10~30%の範囲で用いるのが好ましいと考えられた。
【0038】
【表11】
【0039】
【表12】
【0040】
エンドウ豆澱粉を原料とする酸化澱粉を対紛1~50%で用いたとき、好ましくは5~50%で用いたときに、ふやけ抑制効果が確認された。ただし、食感については、対紛40%を超えて50%で用いると硬くなる傾向にあったことから、対紛5~40%、又は10~30%の範囲で用いることが好ましいと考えられた。