(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103836
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】エアゾール組成物及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240726BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240726BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240726BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240726BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/86
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007756
(22)【出願日】2023-01-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】森川 明希乃
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC421
4C083AD152
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB11
4C083BB49
4C083CC02
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】スプレー吐出により泡状を呈することができ、手で塗り広げる必要がないことから塗布面の偏りが生じない、新規エアゾール組成物を提供する。
【解決手段】(A)水性成分、(B)油性成分、(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物、並びに(F)液化ガス、を含み、
スプレー吐出により泡状を呈する、エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水性成分、(B)油性成分、(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物、並びに(F)液化ガス、を含み、
スプレー吐出により泡状を呈する、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記エアゾール組成物中の(F)液化ガスの含有量は10質量%~25質量%である、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記(F)液化ガスは、LPGを含む、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記(D)ノニオン界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
前記(E)アニオン界面活性剤は、アシル乳酸塩を含む、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
エアゾール組成物をスプレー状に吐出し得るアクチュエータを備えた吐出機構を有するエアゾール容器に、請求項1~5の何れか1項に記載のエアゾール組成物が充填されたエアゾール製品。
【請求項7】
前記アクチュエータの噴射口φが0.2mm~2.0mmの範囲内である、請求項6に記載のエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物及びエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
原液組成物と噴射剤とからなるエアゾール組成物は、フォームが形成されたのちにパチパチと破裂音を発しながら破泡し、良好な使用感を付与するクラッキング性を付与することができることから、スキンケア化粧料への展開が検討されている。
例えば特許文献1には、クラッキング製剤をスキンケア化粧料に適用する技術が開示されており、具体的には、2種類のポリオキシエチレンアルキルエーテルと、水溶性高分子と、水と、液化ガスを含む噴射剤と、を含有する、エアゾール組成物が開示されている。そして、特許文献1に開示のエアゾール組成物は、冷感、破泡音及び泡持ちに優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のエアゾール組成物はクラッキング製剤であり、泡を含む吐出物がクリーム状やローション状で吐出され、その後に手で塗広げて吐出物にせん断力与えることで、破泡する組成物である。このクラッキング製剤はスキンケア化粧料として使用されるものであるが、組成物を肌に馴染ませるのに手間となり、また手で広範囲に塗広げることから塗布面の偏りが生じる。
【0005】
本発明は、このような従来のエアゾール組成物の課題を解決するものであり、スプレー吐出により泡状を呈することができ、手で広範囲に塗り広げる必要がないことから塗布面の偏りが生じない、新規エアゾール組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、スプレー吐出により泡状を呈することができる新規エアゾール組成物について検討を重ね、(A)水性成分、(B)油性成分、(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物、並びに(F)液化ガス、を含み、スプレー吐出により泡状を呈するエアゾール組成物により、課題を解決できることを見出した。本発明は以下のものを含み得る。
【0007】
[1](A)水性成分、(B)油性成分、(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物、並びに(F)液化ガス、を含み、
スプレー吐出により泡状を呈する、エアゾール組成物。
[2]前記エアゾール組成物中の(F)液化ガスの含有量は10質量%~25質量%である、[1]に記載のエアゾール組成物。
[3]前記(F)液化ガスは、LPGを含む、[1]又は[2]に記載のエアゾール組成物。
[4]前記(D)ノニオン界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のエアゾール組成物。
[5]前記(E)アニオン界面活性剤は、アシル乳酸塩を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエアゾール組成物。
[6]エアゾール組成物をスプレー状に吐出し得るアクチュエータを備えた吐出機構を有するエアゾール容器に、[1]~[5]の何れかに記載のエアゾール組成物が充填されたエアゾール製品。
[7]前記アクチュエータの噴射口φが0.2mm~2.0mmの範囲内である、[6]に記載のエアゾール製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、スプレー吐出により泡状を呈することができる新規エアゾール組成物であって、スプレー吐出した泡状物は、手で広範囲に塗り広げる必要がないことから塗布面の偏りが生じにくく、また付着面で泡状を呈して垂れ落ちにくく泡質に優れ、更に、エマルション安定性が高いエアゾール組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
本発明の一形態は、(A)水性成分、(B)油性成分、(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物、並びに(F)液化ガス、を含み、スプレー吐出により泡状を呈する、エアゾール組成物である。
(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤、及び(E)アニオン界面活性剤を含む原液組成物は、(F)液化ガスとの乳化に優れ、安定したエマルションを形成するとともに、スプレー吐出したエアゾール組成物は、付着面で泡状を呈して垂れ落ちにくく、泡質に優れる。このような効果を奏するメカニズムは定かではないが、本発明者らは(C)高級アルコール、(D)ノニオン界面活性剤及び(E)アニオン界面活性剤の組み合わせが、(F)液化ガスと原液組成物との乳化安定性を著しく向上させるとともに、スプレーにて肌に付着させたエアゾール組成物の付着面での泡質の向上にも寄与していると推測する。
【0011】
<(A)水性成分>
(A)水性成分は、典型的には水であるが、水に水溶性有機溶媒を少量加えたものであってもよい。水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒、などがあげられる。
水性成分における水の含有量は通常50体積%以上であり、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、100体積%であることが更に好ましい。
【0012】
原液組成物中、(A)水性成分の含有量は、通常40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、75質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、(C)高級アルコールに該当するアルコールは、(A)水性成分には含まれないものとする。
【0013】
<(B)油性成分>
(B)油性成分は、水と相分離する水に不溶な公知の油性成分を使用でき、例えば植物性油脂、動物性油脂、炭化水素油、脂肪酸、エステル油、ロウエステル、多価アルコールと一価アルコールとのエーテル、シリコーン類等が挙げられる。また、油性成分に溶解する、油性の有効成分を含んでいてもよい。なお「水に不溶」とは、例えば、25℃におい
て、100gの水への溶解度が1.0g以下であることを指す。油性成分は、単独で含有させてもよいし、2種以上組み合わせて含有させてもよい。
【0014】
植物性油脂としては、杏仁油、椿油、アルガン油、大豆油、オリーブ油、ひまし油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、ごま油、ホホバ油、綿実油、なたね油、アマニ油、ローズヒップ油、ヒマワリ油、精油、アボカド油、アルモンド油、米ヌカ油、サフラワー油、トウモロコシ油、グレープシード油、ヤシ油、アルガニアスピサノ核油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、ククイナッツ油、クランベアビシニカ種子油、アサ種子油、落花生油、サザンカ油、月見草油、ピスタチオ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、カカオ脂、シアバター、モクロウなどが挙げられる。
【0015】
動物性油脂としては、エミュー油、馬油、牛脂、豚脂、羊脂、ミンク油、卵黄脂肪油、コイ脂、マグロ脂、メンヘーデン脂などが挙げられる。
【0016】
炭化水素油としては、軽質イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、ドデカン、テトラデカン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン、セレシン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、水添ポリイソパラフィン、リモネン、テレビン油などが挙げられる。
【0017】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オキシステアリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。
脂肪酸を用いる場合は、通常炭素数6以上40以下のものを用い、炭素数12以上30以下の脂肪酸を用いることが好ましい。
【0018】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチルなどの直鎖脂肪酸と低級アルコールのエステル;ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ステアリン酸ステアリルなどの直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸エチルヘキシルなどの直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピルなどの分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルなどの分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ジカプリル酸PG、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルなどの脂肪酸と多価アルコールとのエステル;ネオペンタン酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル:乳酸ラウリル、クエン酸トリ2-エチルヘキシル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのヒドロキシカルボン酸とアルコールとのエステル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルなどの2塩基酸のエステルなどが挙げられる。
【0019】
ロウエステルとしては、ホホバ油、ホホバ脂、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラック、ラノリン、ミツロウ、モンタンロウ、鯨ロウ、オレンジラフィー油、サトウキビロウ、パームロウ、虫白ロウ、羊毛脂などが挙げられる。
【0020】
多価アルコールと一価アルコールとのエーテルとしては、キミルアルコール、バチルアルコール、セラキルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
シリコーン類としては、アルキル変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン(ジメチコン))、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0022】
油性の有効成分としては、紫外線吸収剤(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ポリシリコーン-15)、ディート、イカリジン、香料などが挙げられる。
【0023】
原液組成物中、(B)油性成分の含有量は、通常1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
<(C)高級アルコール>
高級アルコールは、炭素数12以上の脂肪族アルコールであり、具体的には、カプロイルアルコール、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、コレステロール、フィトステロールなどが挙げられる。これらのうち炭素数18以上24以下の脂肪族アルコールが好ましく、ベヘニルアルコールがより好ましい
【0025】
原液組成物中、(C)高級アルコールの含有量は、通常0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、高級アルコールは単独で含有させてもよいし、2種以上組み合わせて含有させてもよい。
【0026】
<(D)ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤は、水に溶解してもイオン性を示さない界面活性剤である。具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、プルロニック型界面活性剤などが挙げられる。
これらのうち、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0027】
原液組成物中、(D)ノニオン界面活性剤の含有量は、通常0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、ノニオン界面活性剤は単独で含有させてもよいし、2種以上組み合わせて含有させてもよい。
【0028】
<(E)アニオン界面活性剤>
アニオン界面活性剤は、陰イオン性の親水基を有する界面活性剤である。具体的には、ラウリル硫酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルアミノ酸塩、アシル乳酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルケンスルホン酸塩、ア
シルイセチオン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル、モノアシルグリセリン硫酸エステル、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
これらのうち、アシル乳酸塩を含むことが好ましく、塩としてはナトリウム塩が好ましい。
【0029】
原液組成物中、(E)アニオン界面活性剤の含有量は、通常0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。また、アニオン界面活性剤は単独で含有させてもよいし、2種以上組み合わせて含有させてもよい。
【0030】
<その他成分>
原液組成物中には、上記(A)乃至(E)成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、エアゾール原液組成物中に含有し得るその他成分を含んでもよい。例えば、紫外線吸収剤、害虫忌避剤、酸化防止剤、防腐剤、ビタミン類、消臭成分、抗炎症剤、殺菌消毒剤、保湿剤、増粘剤、色素などの基材調整剤、薬剤、香料、pH調整剤、などが挙げられる。
【0031】
<乳化組成物>
原液組成物は、(D)ノニオン界面活性剤、及び(E)アニオン界面活性剤を含むことから、乳化組成物であることが好ましい。乳化組成物である原液組成物は、1気圧、温度25℃の条件で測定した粘度が、好ましくは10~10000mPa・sであり、より好ましくは50~7500mPa・sであり、更に好ましくは100~5000mPa・sである。
原液組成物の粘度が上記範囲内であることで、軽くて滑らかな泡沫を形成できる。なお、ここでの粘度は、音叉型振動式粘度計(RV-10000A:株式会社エー・アンド・デイ)を用い、振幅0.4mm、25℃条件で測定した値である。
【0032】
原液組成物中、(D)ノニオン界面活性剤と、(E)アニオン界面活性剤との含有量比(質量比)は、10:1~1:2の範囲内であることが好ましく5:1~1:1の範囲内であることが好ましい。
また、原液組成物中、(C)高級アルコールと、(E)ノニオン界面活性剤との含有量比(質量比)は、5:1~1:3の範囲内であることが好ましく、3:1~1:2の範囲内であることが好ましい。
【0033】
<(F)液化ガス>
本実施形態のエアゾール組成物は、噴射剤として液化ガスを含む。液化ガスとしては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンなどの液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、ジメチルエーテル、及びLPGとジメチルエーテルとの混合物、などがあげられる。LPGを含むことが好ましく、液化ガス全量中におけるLPGの含有割合は70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
噴射剤として、液化ガス以外の圧縮ガスを含んでもよい。圧縮ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。圧縮ガスは、好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム及び圧縮空気などからなる群から選択されるが、噴射剤が液化ガスのみからなることが好ましい。
【0034】
エアゾール組成物中の、液化ガスの含有量は、5質量%以上30質量%以下の範囲内であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
<エアゾール製剤>
本発明の別の形態は上記エアゾール組成物をエアゾール容器に充填してなるエアゾール製剤である。エアゾール容器内にさらに内容器を設け、原液と噴射剤とを内容器により隔離した、いわゆる二重容器を採用してもよい。
エアゾール製品の吐出形態はスプレー状、フォーム状又はクリーム状など特に制限されないが、スプレー状であることが好ましい。即ち、上記エアゾール組成物をスプレー状に吐出し得るアクチュエータを備えた吐出機構を有するエアゾール容器に、上記エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品が、好ましい形態である。
本実施形態のアクチュエータは、その噴口孔径が0.2mm~2.0mmの範囲内であることが好ましく、0.2mm~1.2mmの範囲内であることがより好ましく、0.2~1.0mmの範囲内であることが更に好ましい。
【0036】
エアゾール製品は、その組成成分の種類によって種々の用途のエアゾール製品として提供することができ、人体用、家庭用、工業用などの様々な用途に用いることができる。
人体用としては、例えばボティーローション剤、スキンケア剤、育毛剤、クレンジング剤、マッサージング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、シャンプー剤、コンディショナー剤、メークアップ化粧料、忌避剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などが挙げられる。
家庭用としては、例えば洗浄剤、消臭剤、芳香剤、除菌剤、殺虫剤、防虫剤、防水剤、撥水剤などが挙げられる。
工業用としては、例えば潤滑剤、コーティング剤、接着剤、塗料などが挙げられる。
これらの中でも特に人体用として好適に用いることができ、より好ましくはスキンケア剤である。
【実施例0037】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0038】
<実施例、比較例>
表1に示す処方(質量%)にてエアゾール製剤を調製した。具体的には、原液組成物の原料を均一に混合して原液組成物を調製し、得られた原液組成物と噴射剤(液化ガス)とを、表1に記載の質量比率で、スプレー噴射可能なアクチュエータ(噴口孔径:0.4mm)を備えたエアゾール容器に充填した。こうして得られた実施例1のエアゾール製品及び比較例1~4のエアゾール製品を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1の原液組成物の粘度(音叉型振動式粘度計(RV-10000A:株式会社エー・アンド・デイ)を用い、振幅0.4mm、25℃条件で測定)は2549mPa・sであった。
【0039】
【0040】
・グリセリン:濃グリセリン(花王)
・ミネラルオイル:CARNATION(島貿易)
・ジメチコン:KF-96A-6cs(信越化学)
・パルミチン酸イソプロピル:IPP(花王)
・ホホバ油:ホホバ油(日光ケミカルズ)
・ベヘニルアルコール:NIKKOL ベヘニルアルコール 80(日光ケミカルズ)
・ペンタステアリン酸ポリグリセリル:NIKKOL Decaglyn 5-SV(日光ケミカルズ)
・ステアロイルラクチレートNa:ステアロイル乳酸ナトリウム(日光ケミカルズ)
・ステアリン酸グリセリル:NIKKOL MGS-BV2(日光ケミカルズ)
・ベヘニルアルコールポリエチレングリコールエーテル:NIKKOL BB-20(日光ケミカルズ)
・フェノキシエタノール:フェノキシエタノールSP(四日市合成)
【0041】
<評価>
・使用感
25℃に温調したエアゾール組成物を、皮膚の上へ約1g吐出し、泡沫を指で塗り広げて、以下の評価基準に従って評価した。
5 泡が濃密で塗り広げやすい
4 泡がやや濃密で塗り広げやすい
3 泡は濃密でないが塗り広げられる
2 泡はすかすかだが塗り広げられる
1 泡にならない
【0042】
・乳化安定性
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、25℃の条件下で、得られたエアゾール製品を手に取って上下に30cmのストロークで振り、1往復を1回として乳化するまでの回数をカウントし、以下の評価基準に従って評価した。なお、乳化安定性の評価は、5℃、25℃及び45℃で行った。
5 10回×1セット以内の振とうでエマルションが形成された
4 10回×3セット以内の振とうでエマルションが形成された
3 10回×5セット以内の振とうでエマルションが形成された
2 10回×10セット以内の振とうでエマルションが形成された
1 振とうにより内容物が析出した、又は10回×10セットの振とうしてもエマルションを形成しなかった
【0043】
・噴射状態
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、25℃の条件下で、得られたエアゾール製品を手に取って振とうし、エアゾール組成物を空間中へ約3g吐出し、噴射状態を目視で、以下の評価基準に従って評価した。
5 細かい霧状である
4 霧状である
3 噴射した一部が霧状である
2 ほぼ霧状ではない
1 霧状でない
【0044】
・垂れ落ち
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、25℃の条件下で、得られたエアゾール製品を手に取って振とうし、エアゾール組成物を垂直に設置したアクリル板に、5cmの距離から1秒間噴射し、噴射物の20秒後の垂れ落ち具合を、以下の評価基準に従って評価した。
5 垂れ落ち幅が1cm以内
4 垂れ落ち幅が3cm以内
3 垂れ落ち幅が5cm以内
2 垂れ落ち幅が10cm以内
1 垂れ落ち幅が10cmよりも大きい
【0045】
次に、表2に記載のとおり、噴射剤の種類及びエアゾール組成物中の噴射剤の量を変更し、スプレー噴射可能なアクチュエータ(噴口孔径:0.4mm)を備えたエアゾール容器に充填した。こうして得られた実施例2~6及び比較例5~6のエアゾール製品を用いて上記と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
次に、表3に記載のとおり、エアゾール容器に備えたアクチュエータの噴射口の孔径を変更し、上記の評価のうち、噴射状態の評価を行った。結果を表3に示す。
【0048】