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特開2024-103840端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法
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  • 特開-端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103840
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20240726BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R43/048 A
H01B13/00 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007761
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智彦
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CB01
5E063CC05
5E063XA02
(57)【要約】
【課題】電線に対して圧着端子を適正に圧着することができる端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法を提供する。
【解決手段】端子圧着装置100は、圧着端子20が支持される支持面101aを有する第一金型101と、第一金型との間に圧着端子の芯線圧着部21を挟み込んで、電線10の末端部において被覆部11aから露出する芯線10aに対して芯線圧着部を圧着させる第二金型102と、第一金型との間に圧着端子の被覆圧着部22を挟み込んで被覆部に対して被覆圧着部22を圧着させる第三金型103と、を備え、第三金型は、第一金型に向けて下降することによって被覆部に対して被覆圧着部を加締める被覆加締面103aを有し、被覆加締面は、被覆部の延在方向に対して傾斜しており、第二金型に近づくにつれて、被覆加締面と支持面との間の間隔が狭くなっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着端子が支持される支持面を有する第一金型と、
前記第一金型との間に前記圧着端子の芯線圧着部を挟み込んで、電線の末端部において被覆部から露出する芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させる第二金型と、
前記第一金型との間に前記圧着端子の被覆圧着部を挟み込んで前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる第三金型と、
を備え、
前記第三金型は、前記第一金型に向けて下降することによって前記被覆部に対して前記被覆圧着部を加締める被覆加締面を有し、
前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっている
ことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記支持面において、前記芯線圧着部における前記被覆圧着部側の後端が支持される部分には、傾斜面が形成されており、前記支持面における前記被覆圧着部が支持される面に対して、前記支持面における前記芯線圧着部が支持される面は前記第二金型側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
圧着端子が支持される支持面を有する第一金型と、前記第一金型との間に前記圧着端子の芯線圧着部を挟み込んで電線の末端部において被覆部から露出する芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させる第二金型と共に端子圧着装置を構成して、前記第一金型との間に前記圧着端子の被覆圧着部を挟み込んで前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる被覆加締面を備え、
前記被覆加締面は、前記第一金型に向けて下降することによって前記被覆部に対して前記被覆圧着部を加締め、
前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっている
ことを特徴とする第三金型。
【請求項4】
圧着端子の底部を第一金型の支持面で支持する端子支持工程と、
前記第一金型に対して前記圧着端子の芯線圧着部を間に置いて対向配置した第二金型を前記第一金型に向けて下降させながら、前記第一金型及び前記第二金型の間で前記芯線圧着部を挟み込み、前記芯線圧着部の内方の空間部に入り込ませた電線の末端部の被覆部から露出している芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させ、前記第一金型に対して前記圧着端子の被覆圧着部を間に置いて対向配置した第三金型を前記第一金型に向けて移動させながら、前記第一金型及び前記第三金型の間で前記被覆圧着部を挟み込み、前記被覆圧着部の内方の空間部に入り込ませた前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる圧着工程と、を備え、
前記第三金型は、前記圧着工程において、前記支持面に向けて下降することによって前記被覆圧着部を前記被覆部に対して加締める被覆加締面を有し、
前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっている
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子圧着装置において、電線の芯線に対して圧着端子を圧着させる端子圧着装置がある。例えば、特許文献1には、芯線圧着部の底壁が載置される下金型と、芯線圧着部の底壁から突出する圧着片を底壁に載置された芯線露出部に上方から圧着する上金型とを備え、芯線圧着部の長さ方向となる上金型の押圧面の長さ方向の少なくとも一方の角部に、斜め上方に傾斜する上型傾斜面が設けられている一方、下金型の押圧面の上型傾斜面と対向する部位に、斜め下方に傾斜する下型傾斜面が設けられており、上型傾斜面と下型傾斜面が長さ方向で同じ位置から延び出している端子付電線の製造装置が開示されている。特許文献1によれば、芯線の断線と端子金具のベントアップをいずれも有利に抑制乃至は防止することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5720527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の端子付電線の製造装置において、圧着端子を電線の芯線に圧着させることについて、なお改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、電線に対して圧着端子を適正に圧着することができる端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の端子圧着装置は、圧着端子が支持される支持面を有する第一金型と、前記第一金型との間に前記圧着端子の芯線圧着部を挟み込んで、電線の末端部において被覆部から露出する芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させる第二金型と、前記第一金型との間に前記圧着端子の被覆圧着部を挟み込んで前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる第三金型と、を備え、前記第三金型は、前記第一金型に向けて下降することによって前記被覆部に対して前記被覆圧着部を加締める被覆加締面を有し、前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第三金型は、圧着端子が支持される支持面を有する第一金型と、前記第一金型との間に前記圧着端子の芯線圧着部を挟み込んで電線の末端部において被覆部から露出する芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させる第二金型と共に端子圧着装置を構成して、前記第一金型との間に前記圧着端子の被覆圧着部を挟み込んで前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる被覆加締面を備え、前記被覆加締面は、前記第一金型に向けて下降することによって前記被覆部に対して前記被覆圧着部を加締め、前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の端子付き電線の製造方法は、圧着端子の底部を第一金型の支持面で支持する端子支持工程と、前記第一金型に対して前記圧着端子の芯線圧着部を間に置いて対向配置した第二金型を前記第一金型に向けて下降させながら、前記第一金型及び前記第二金型の間で前記芯線圧着部を挟み込み、前記芯線圧着部の内方の空間部に入り込ませた電線の末端部の被覆部から露出している芯線に対して前記芯線圧着部を圧着させ、前記第一金型に対して前記圧着端子の被覆圧着部を間に置いて対向配置した第三金型を前記第一金型に向けて移動させながら、前記第一金型及び前記第三金型の間で前記被覆圧着部を挟み込み、前記被覆圧着部の内方の空間部に入り込ませた前記被覆部に対して前記被覆圧着部を圧着させる圧着工程と、を備え、前記第三金型は、前記圧着工程において、前記支持面に向けて下降することによって前記被覆圧着部を前記被覆部に対して加締める被覆加締面を有し、前記被覆加締面は、前記被覆部の延在方向に対して傾斜しており、前記第二金型に近づくにつれて、前記被覆加締面と前記支持面との間の間隔が狭くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法は、電線に対して圧着端子を適正に圧着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る端子圧着装置を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る端子圧着装置を示す正面図である。
図3図3は、実施形態に係る端子圧着装置を示す部分拡大図である。
図4図4は、図3のA-A線における断面図である。
図5図5は、実施形態の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。
図6図6は、実施形態の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。
図7図7は、参考例の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。
図8図8は、参考例の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図1から図6を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、端子圧着装置、第三金型、及び、端子付き電線の製造方法に関する。図1は、実施形態に係る端子圧着装置を示す斜視図、図2は、実施形態に係る端子圧着装置を示す正面図、図3は、実施形態に係る端子圧着装置を示す部分拡大図、図4は、図3のA-A線における断面図、図5は、実施形態の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図、図6は、実施形態の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。
【0013】
実施形態の端子圧着装置100は、電線に対して圧着端子を加締めて圧着させる装置である。図1~3に示すように、端子圧着装置100は、第一金型101、第二金型102、及び第三金型103を含む。図4に示すように、電線10の端部において、電線10の芯線10aは、被覆部11aから露出しており、圧着端子20は、電線10の端部における芯線10a及び被覆部11aに対して圧着される。
【0014】
本明細書では、芯線10aの延在方向を第一方向Xと称する。第一方向Xは、圧着端子20の長さ方向である。また、圧着端子20の幅方向を第二方向Yと称する。圧着端子20において、第一方向X及び第二方向Yの何れとも直交する方向を第三方向Zと称する。第三方向Zは、第一金型101、第二金型102及び第三金型103によって、圧着端子20が圧着される際の第二金型102及び第三金型103の移動方向に沿う方向である。第三方向Zは、圧着端子20の高さ方向である。
【0015】
実施形態において、芯線10aは、複数本の素線の集合体である。芯線10aは、銅やアルミニウムなどの導電性を有する金属によって形成されている。被覆部11aは、芯線10aの外周を覆う電線被覆である。被覆部11aは、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0016】
圧着端子20は、電線10が電気的に接続され、導電性を有する相手側部材に接続される端子金具である。相手側部材は、例えば、接続対象に設けられた相手方端子である。図4に示すように、圧着端子20は、芯線圧着部21、被覆圧着部22、電気接続部23及び、連結部24を含んでいる。芯線圧着部21、被覆圧着部22、電気接続部23及び、連結部24は、導電性を有する金属材料によって、全体が一体として形成されている。圧着端子20は、第一方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部23、連結部24、芯線圧着部21、被覆圧着部22の順で並んで相互に連結されている。
【0017】
芯線10aに対して圧着される前の芯線圧着部21は、第一方向Xに沿って延在する芯線10aの先端側から見てU字状の形状に形成されている。芯線圧着部21は、底部と、第一バレル片部と、第二バレル片部とを有する。底部は、芯線圧着部21の底壁部であり、後述する端子圧着装置100の第一金型101に支持される。第一バレル片部は、底部の幅方向(第二方向Y)の一端から突出している側壁部である。第二バレル片部は、底部の幅方向(第二方向Y)の他端から突出している側壁部である。
【0018】
第一バレル片部及び第二バレル片部は、底部の幅方向(第二方向Y)に対して交差する方向に延出している。第一バレル片部と第二バレル片部とは、第二方向Yにおいて互いに対向している。第二方向Yにおける第一バレル片部と第二バレル片部との間隔は、底部側から先端側へ向かうに従って広がっている。芯線圧着部21は、第一金型101及び芯線圧着部21用の第二金型102によって芯線10aに対して圧着される。
【0019】
被覆圧着部22は、底部、第三バレル片部及び、第四バレル片部を有する。被覆部11aに対して圧着される前の被覆圧着部22の形状は、U字状の形状である。底部は、被覆圧着部22の底壁部である。第三バレル片部は、底部の幅方向(第二方向Y)の一端から突出している側壁部である。第四バレル片部は、底部の幅方向(第二方向Y)の他端から突出している側壁部である。第三バレル片部と第四バレル片部とは第二方向Yにおいて互いに対向している。第三バレル片部と第四バレル片部との間隔は、底部側から先端側へ向かうに従って広がっている。被覆圧着部22は、第一金型101及び被覆圧着部用の第三金型103によって被覆部11aに対して圧着される。
【0020】
連結部24は、芯線圧着部21と電気接続部23とを連結する部分である。連結部24は、芯線圧着部21の底壁部と連続する底壁部と、第二方向Yにおいて連結部24の底壁部から第三方向Zに沿って上側に向けて突出している側壁部とを有する。
【0021】
実施形態では、芯線圧着部21と被覆圧着部22とは、中間部によって連結されている。圧着端子20は、中間部を介して、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部とが分断された所謂別体バレル型の圧着端子として形成されている。
【0022】
圧着後の圧着端子20の上側部分(第二金型102側の部分)においては、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間から被覆部11a及び芯線10aが圧着端子20から露出している(図6参照)。例えば、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間から露出する被覆部11a及び芯線10aを覆うように防食剤を塗布し、塗布した防食剤を硬化させることにより、端子付き電線1の防食性能を向上させることができる。
【0023】
端子圧着装置100の第一金型101は、芯線圧着部21を下方から支持する下金型である。第一金型101は、圧着端子20が支持される支持面101aを有する。支持面101aは、圧着端子20の底部を支持する。実施形態の支持面101aは、芯線圧着部21が支持される面(第1支持面111a)と被覆圧着部22が支持される面(第2支持面112a)を含む。
【0024】
支持面101aにおいて、芯線圧着部21における被覆圧着部22側の後端が支持される部分には、傾斜面101tが形成されており、支持面101aにおける被覆圧着部22が支持される面(第2支持面112a)に対して、支持面101aにおける芯線圧着部21が支持される面(第1支持面111a)が第二金型102側に位置している。つまり、高さ方向(第三方向Z)において、支持面101aにおける芯線圧着部21が支持される面(第1支持面111a)が、支持面101aにおける被覆圧着部22が支持される面(第2支持面112a)よりも高い位置に形成されている。
【0025】
実施形態の傾斜面101tは、第1支持面111a側から第2支持面112a側に近づくにつれて、第三方向Zにおける位置が、第二金型102から離れるように傾斜している。また、第一金型101の第1支持面111aに対して第2支持面112a側とは反対側の端部には、傾斜面101uが形成されている。傾斜面101uは、第三方向Zにおいて、第2金型102と重なっておらず、第一方向Xにおいて、第2金型102よりもやや電気接続部23側に位置している。傾斜面101uは、第1支持面111a側から電気接続部23側に近づくにつれて、第三方向Xにおける位置が第二金型102から離れるように傾斜している。なお、支持面101aにおいて、傾斜面101t及び101uは、形成されていなくともよい。つまり、支持面101aは、第1支持面111a側から第2支持面112aにかけて、実質的に段差のない面として形成されていてもよい。
【0026】
圧着端子20が第一金型101によって支持されている状態において、芯線圧着部21における第一バレル片部及び第二バレル片部は、底部から斜め上方に向けて延出した姿勢となる。また、圧着端子20が第一金型101によって支持されている状態において、被覆圧着部22における第三バレル片部及び第四バレル片部は、底部から斜め上方に向けて延出した姿勢となる。
【0027】
第二金型102は、芯線圧着部21及び芯線10aを第一金型101との間に挟み込んで芯線圧着部21を芯線10aに対して圧着させる上金型である。第二金型102は、第一金型101の上方に配置されている。第二金型102は、第一金型101に対して上下方向に沿って相対移動する。図4に示すように、端子圧着装置100は、第二金型102を上下動させる駆動装置110を有している。
【0028】
図4に示すように、第二金型102は、芯線圧着部21と対向する部分に配置されている。第二金型102は、第三方向Zにおいて、芯線圧着部21と対向する芯線加締面102aを有している。芯線加締面102aは、支持面101a側とは反対側に向けて湾曲した凹状の面として設けられている。
【0029】
図3に示すように、芯線加締面102aは、第二方向Yにおいて互いに隣接し、かつ、支持面101a側とは反対側に向けて凹状に湾曲している第一曲面122a及び第二曲面122bを有する。芯線加締面102aにおける第一曲面122aと第二曲面122bとの境界122cは、支持面101aに向けて突出している峰状に形成されている。第一曲面122aと第二曲面122bとは、第二方向Yに関して、実質的に対称に形成されている。第一曲面122a及び第二曲面122bの断面形状は、例えば、円弧形状あるいは略円弧形状である。
【0030】
第二金型102において、第二方向Yにおける第一曲面122aの第二曲面122b側とは反対側には、第一壁面122dが設けられている。第一壁面122dは、第一曲面122aの第二曲面122b側とは反対側の端部から第三方向Zに沿って延在している。第二金型102において、第二方向Yにおける第二曲面122bの第一曲面122a側とは反対側には、第二壁面122eが設けられている。第二壁面122eは、第二曲面122bの第一曲面122a側とは反対側の端部から第三方向Zに沿って延在している。第一壁面122dと第二壁面122eとは、第二方向Yにおいて互いに対向している。第一壁面122dと第二壁面122eとは、第二方向Yに関して、実質的に対称に形成されている。第三方向Zにおいて、第一壁面122dは、第一バレル片部の上に配置され、第二壁面122eは、第二バレル片部の上に配置される。
【0031】
第三金型103は、被覆圧着部22及び被覆部11aを第一金型101との間に挟み込んで被覆圧着部22を被覆部11aに対して圧着させる上金型である。第三金型103は、第二金型102とは別体の上金型として設けられている。第三金型103は、第一金型101の上方に配置されている。第三金型103は、第一方向Xにおいて、第二金型102に対して被覆部11a側に配置されている。第三金型103は、支持面101a側とは、反対側に向けて凹状に湾曲している被覆加締面103aを有する。第三金型103は、第一金型101に対して上下方向に沿って相対移動する。被覆加締面103aは、第三金型103が第一金型101に向けて下降することによって、被覆部11aに対して被覆圧着部22を加締める面である。被覆加締面103aは、被覆圧着部22における第三バレル片部及び第四バレル片部を所謂オーバーラップクリンプにより被覆部11aに圧着する形状とされている。
【0032】
具体的には、図4に示すように、被覆加締面103aは、第二方向Yにおいて互いに隣り合う弧状の第三曲面123a及び第四曲面123bを有している。第二金型102において、第三曲面123a及び第四曲面123bは、後述する傾斜面123cと共に、支持面101a側とは反対側に向けて凹状に湾曲している被覆加締面103aを構成している。第三方向Zにおいて、第三曲面123aの頂部は、第四曲面123bの頂部よりも支持面101側に位置しており、第二方向Yにおける第三曲面123aと第四曲面123bとの間には、第三曲面123aにおける第四曲面123b側の端と第四曲面123bにおける第三曲面側の端とを結ぶ傾斜面123cが形成されている。
【0033】
第三金型103において、第二方向Yにおける第三曲面123aの第四曲面123b側とは反対側には、第三壁面123dが設けられている。第三壁面123dは、第三曲面123aの第四曲面123b側とは反対側の端部から第三方向Zに沿って延在している。第三金型103において、第二方向Yにおける第四曲面123bの第三曲面123a側とは反対側には、第四壁面123eが設けられている。第四壁面123eは、第四曲面123bの第三曲面123a側とは反対側の端部から第三方向Zに沿って延在している。第三壁面123dと第四壁面123eとは、第二方向Yにおいて互いに対向している。第三壁面123dと第四壁面123eとは、第二方向Yに関して、実質的に対称に形成されている。
【0034】
被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向(第一方向X)に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。つまり、第三曲面123a、傾斜面123c、及び第四曲面123bは、第一方向Xと直交する断面形状を維持した状態で、第二金型102から近い箇所ほど支持面101aに近づくように傾斜している。言い換えれば、被覆加締面103aは、第二金型102から遠い箇所ほど支持面101aから遠ざかるように傾斜している。
【0035】
図5、6は、実施形態の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図であり、図5では、簡単のため、電線10、圧着端子20及び、第三金型103以外の部材が省略されている。図5に示すように、芯線圧着部21が芯線10aに圧着されることで、芯線圧着部21が第一方向Xに延びる。芯線圧着部21が第一方向Xに延びることで、芯線圧着部21から被覆圧着部22に対して電気接続部23側とは反対側に向かう力Y1が作用する。ここで、上述したように、実施形態に係る第三金型103の被覆加締面103aは、第二金型102から近い箇所ほど支持面101aに近づくように傾斜している。この構成により、加締め圧着時において、第三金型103が被覆圧着部22に対して加える押圧力は、電気接続部23側ほど大きくなる。つまり、第三金型103が被覆圧着部22の電気接続部23側の端部に加える押圧力Y2は、第三金型103が被覆圧着部22における電気接続部23側とは反対側の端部に加える押圧力Y3よりも大きくなる。
【0036】
第三金型103が被覆圧着部22に対して加える押圧力が電気接続部23側ほど大きくなることで、被覆圧着部22には、被覆圧着部22に対して電線接続部23側とは反対側に向かう力Y1と第三金型103が被覆圧着部22に対して加える下方に向かう力との合成力Y5を弱める(又は打ち消す)向きの力Y4が作用し、合成力Y5を力Y4で弱める(又は打ち消す)ことができる。この構成により、図6に示すように、被覆圧着部22の第三金型103側の部分(上側部分)が電気接続部23側に向けて倒れることを抑制することができる。
【0037】
例えば、被覆圧着部22の第三金型103側の部分(上側部分)が電気接続部23に向けて倒れることを抑制することで、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間に形成された隙間に防食剤を塗布することが容易となる。第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間において、圧着端子20から露出する被覆部11a及び芯線10aを防食剤で覆うことが容易となり、端子付き電線1の防食性能を向上させることができる。
【0038】
次に、実施形態に係る端子付き電線1の製造方法について説明する。実施形態に係る、端子付き電線1の製造方法は、端子支持工程と、圧着工程とを備える。
【0039】
(端子支持工程)
端子支持工程は、圧着端子20の底部を第一金型101の支持面101aで支持する工程である。実施形態では、図4に示すように、端子支持工程において、第1支持面111a上に芯線圧着部21が載置される。このとき、第2支持面112a上には、被覆圧着部22が配置されており、第2支持面112aと被覆圧着部22との間には隙間が形成されている。
【0040】
(圧着工程)
圧着工程は、芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着させ、被覆部11aに対して被覆圧着部22を圧着させる工程である。圧着工程では、第一金型101に対して圧着端子20の芯線圧着部21を間に置いて対向配置した第二金型102を第一金型101に向けて下降させながら、第一金型101及び第二金型102の間で芯線圧着部21を挟み込み、芯線圧着部21の内方の空間部に入り込ませた電線10の末端部の被覆部11aから露出している芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着させる。
【0041】
また、圧着工程では、第一金型101に対して圧着端子20の被覆圧着部22を間に置いて対向配置した第三金型103を第一金型101に向けて移動させながら、第一金型101と第三金型103との間で被覆圧着部22を挟み込み、被覆圧着部22の内方の空間部に入り込ませた被覆部11aに対して被覆圧着部22を圧着させる。
【0042】
実施形態の圧着工程では、芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着しつつ、被覆部11aに対して被覆圧着部22が圧着される。このとき、支持面101aには傾斜面101tが形成されているため、被覆圧着部22の底部は、第2支持面112aまで押し下げられて第2支持面112aによって支持される。被覆圧着部22の底部が、第2支持面112aまで押し下げられることで、芯線圧着部21の底部は、第三方向Zにおいて、被覆圧着部22の底部よりも第二金型側に配置される。つまり、圧着後の圧着端子20においては、被覆圧着部22の底部は、芯線圧着部21の底部よりもやや下方に位置することになる。圧着工程において、被覆圧着部22の底部が、第2支持面112aまで押し下げられることで、第一方向Xに沿って芯線圧着部21が伸びることを抑制することができる。つまり、図5に示す、被覆圧着部22に対して作用する電気接続部23側とは反対側に向かう力Y1を小さくすることができる。
【0043】
実施形態の圧着工程において、第三金型103を支持面101aに向けて下降することによって、被覆加締面103aによって被覆圧着部22を被覆部11aに対して加締める。被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。この構成により、既に図5、6を用いて説明したように、被覆圧着部22の第三金型103側の部分(上側部分)が電気接続部23に向けて倒れることを抑制することができる。したがって、電線10に対して圧着端子20を適正に圧着することができる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着端子20が支持される支持面101aを有する第一金型101と、第一金型101との間に圧着端子20の芯線圧着部21を挟み込んで、電線10の末端部において被覆部11aから露出する芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着させる第二金型102と、第一金型101との間に圧着端子20の被覆圧着部22を挟み込んで被覆部11aに対して被覆圧着部22を圧着させる第三金型103と、を備え、第三金型103は、第一金型101に向けて下降することによって被覆部11aに対して被覆圧着部22を加締める被覆加締面103aを有し、被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面(101a)との間の間隔が狭くなっている。
【0045】
実施形態において、被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。この構成によって、被覆加締面103aは、被覆圧着部22の上側部分に対して圧着端子20の後端側(電気接続部23側とは反対側)に向かう力を加えることができる。この力により、端子圧着時において、芯線圧着部が端子の長さ方向(第一方向X)に延びることで被覆圧着部22の上側部分に作用する圧着端子20の前端側(電気接続部23側)に向かう力を相殺することができる。したがって、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着端子20を電線10に圧着する際に、被覆圧着部22の上側部分が前端側(電気接続部23側)に傾くことを抑制することができる。以上により、電線10に対して圧着端子20を適正に圧着することができるという効果を奏する。また、上述したように、被覆圧着部22の上側部分が前端側(電気接続部23側)に傾くことを抑制することで、防食剤の塗布が容易となる。また、被覆圧着部22の上側部分が前端側(電気接続部23側)に傾くことを抑制することで、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間において圧着端子20から露出する被覆部11aが傾いた被覆圧着部22のエッジ等と接触して損傷することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の端子圧着装置100の支持面101aにおいて、芯線圧着部21における被覆圧着部22側の後端が支持される部分には、傾斜面101tが形成されており、支持面101aにおける被覆圧着部22が支持される面に対して、支持面101aにおける芯線圧着部21が支持される面は第二金型102側に位置している。
【0047】
本実施形態の端子圧着装置100は、傾斜面101tによって、端子圧着時における芯線圧着部21の第一方向Xへの延びを抑えることで、被覆圧着部22の上側部分が前端側に傾くことを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の第三金型103は、圧着端子20が支持される支持面101aを有する第一金型101と、第一金型101との間に圧着端子20の芯線圧着部21を挟み込んで電線10の末端部において被覆部11aから露出する芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着させる第二金型102と共に端子圧着装置100を構成して、第一金型101との間に圧着端子20の被覆圧着部22を挟み込んで被覆部11aに対して被覆圧着部22を圧着させる被覆加締面103aを備え、被覆加締面103aは、第一金型101に向けて下降することによって被覆部11aに対して被覆圧着部22を加締め、被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。
【0049】
実施形態の第三金型103において、被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。この構成によって、被覆加締面103aは、被覆圧着部22の上側部分に対して圧着端子20の後端側(電気接続部23側とは反対側)に向かう力を加えることができる。この力により、端子圧着時において、芯線圧着部が端子の長さ方向(第一方向X)に延びることで被覆圧着部22の上側部分に作用する圧着端子20の前端側(電気接続部23側)に向かう力を相殺することができる。したがって、本実施形態の第三金型103は、圧着端子20を電線10に圧着する際に、被覆圧着部22の上側部分が前端側(電気接続部23側)に傾くことを抑制することができる。したがって、電線10に対して圧着端子20を適正に圧着することができるという効果を奏する。
【0050】
また、説明したように、本実施形態の端子付き電線1の製造方法は、圧着端子20の底部を第一金型101の支持面101aで支持する端子支持工程と、第一金型101に対して圧着端子20の芯線圧着部21を間に置いて対向配置した第二金型102を第一金型101に向けて下降させながら、第一金型101及び第二金型102の間で芯線圧着部21を挟み込み、芯線圧着部21の内方の空間部に入り込ませた電線10の末端部の被覆部11aから露出している芯線10aに対して芯線圧着部21を圧着させ、第一金型101に対して圧着端子20の被覆圧着部22を間に置いて対向配置した第三金型103を第一金型101に向けて移動させながら、第一金型101及び第三金型103の間で被覆圧着部22を挟み込み、被覆圧着部22の内方の空間部に入り込ませた被覆部11aに対して被覆圧着部22を圧着させる圧着工程と、を備え、第三金型103は、圧着工程において、支持面101aに向けて下降することによって被覆圧着部22を被覆部11aに対して加締める被覆加締面103aを有し、被覆加締面103aは、被覆部11aの延在方向に対して傾斜しており、第二金型102に近づくにつれて、被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなっている。
【0051】
実施形態の端子付き電線1の製造方法では、第二金型102に近づくにつれて被覆加締面103aと支持面101aとの間の間隔が狭くなるように形成された第三金型(103)を用いて、圧着工程が行われる。この構成により、圧着工程において、被覆加締面103aは、被覆圧着部22の上側部分に対して圧着端子20の後端側(電気接続部23側とは反対側)に向かう力を加えることができる。この力により、端子圧着時において、芯線圧着部が端子の長さ方向(第一方向X)に延びることで被覆圧着部22の上側部分に作用する圧着端子20の前端側(電気接続部23側)に向かう力を相殺することができる。したがって、本実施形態の第三金型103は、圧着端子20を電線10に圧着する際に、被覆圧着部22の上側部分が前端側(電気接続部23側)に傾くことを抑制することができる。したがって、電線10に対して圧着端子20を適正に圧着することができるという効果を奏する。
【0052】
[参考例]
図7は、参考例の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図、図8は、参考例の端子圧着装置による圧着端子の圧着を示す模式図である。図7、8は、それぞれ図5、6に対応する模式図であり、図7では、簡単のため、端子付き電線と第三金型以外の部材が省略されている。
【0053】
参考例の第三金型104は、実施形態の第三金型103と異なり、被覆加締面104aが第一方向Xに沿っている。つまり、参考例の被覆加締面104aは、第一方向Xに対して傾斜していない。このような第三金型103で圧着工程を行った場合、第三金型103は、被覆圧着部22の上側部分の全体に対して一定の押圧力Y3を加える。つまり、第二金型102が被覆圧着部22の電気接続部23側の端部に加える押圧力は、第二金型102が被覆圧着部22の電気接続部23側とは反対側の端部に加える押圧力とほぼ等しくなる。
【0054】
第二金型102によって、芯線圧着部21が圧着されることで、芯線圧着部21は、第一方向Xに向けて延びて被覆圧着部22の下側部分に対して、電気接続部23側とは反対側に向かう力Y1を作用させる。また、被覆圧着部22は、第三金型103によって一定の押圧力Y3が加えられ固定されている。したがって、被覆圧着部22には、力Y1と押圧力Y3との合成力Y5が作用することで、被覆圧着部22の上側部分には、電気接続部23側に向かう力Y6が作用する。このような力の作用により、被覆圧着部22の上側部分は、電気接続部23側に倒れた形状となる。被覆圧着部22の上側部分が電気接続部23側に倒れている場合、第一、第二バレル片部と第三、第四バレル片部との間に形成された隙間に防食剤を塗布することが困難となる場合がある。したがって、端子付き電線の防食性能を損なう可能性がある。
【0055】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0056】
10:電線、10a:芯線、11a:被覆部
20:圧着端子、21:芯線圧着部、22:被覆圧着部、23:電気接続部
24:連結部、100:端子圧着装置、101:第一金型、101t:傾斜面
102:第二金型、103:第三金型、103a:被覆加締面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8