(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103841
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】保持構造
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240726BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240726BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007762
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰成
(72)【発明者】
【氏名】小薗 諒輔
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】可撓片の圧接力を大きく設定可能にしたり、付勢ばね部を設置する箇所に制約され難く、しかも圧接力を強くしても破損し難い保持構造を実現する。
【解決手段】車両へ取り付けられる保持部材2(6)が取付対象物である物品1(5)を相対的なスライド移動により位置決め係合した状態で、前記物品と前記保持部材の間に設けられた付勢ばね部によりがたつきを吸収する保持構造であって、前記付勢ばね部は、前記保持部材2及び前記物品1の一方に設けられて他方に当接する可撓片3(8)を有し、前記保持部材及び前記物品の一方と前記可撓片との連結部32(80)において、板幅方向の一端を第一連結端部32a(80a)とし他端を第二連結端部32b(80b)として、前記第一連結端部を前記第二連結端部よりも前記物品のスライド移動方向の上流側に位置するよう形成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両へ取り付けられる保持部材が取付対象物である物品を相対的なスライド移動により位置決め係合した状態で、前記物品と前記保持部材の間に設けられた付勢ばね部によりがたつきを吸収する保持構造であって、
前記付勢ばね部は、前記保持部材及び前記物品の一方に設けられて他方に当接する可撓片を有し、前記保持部材及び前記物品の一方と前記可撓片との連結部において、板幅方向の一端を第一連結端部とし他端を第二連結端部として、前記第一連結端部を前記第二連結端部よりも前記物品のスライド移動方向の上流側に位置するよう形成していることを特徴とする保持構造。
【請求項2】
前記可撓片は、前記物品に圧接するよう設けられた突起と、前記突起のうち前記相対的にスライド移動したときに前記物品と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面とを有していることを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項3】
前記保持部材がブラケット、前記取付対象物である物品がレーダーであり、前記可撓片が前記ブラケットに設けられて前記レーダーに圧接してレーダーを車両前後方向に付勢することを特徴とすることを特徴とする請求項1または2に記載の保持構造。
【請求項4】
前記レーダーの上端面又は/及び下端面に設けられた突起と、前記突起と対応して前記ブラケットに弾性揺動可能に設けられた押圧片とを有しており、前記ブラケットに前記レーダーを保持した状態で前記突起が前記押圧片に形成された斜面に圧接することを特徴とする請求項3に記載の保持構造。
【請求項5】
前記可撓片は先端に設けられた係合凸部を有していると共に、前記物品は前記保持部材のメイン部ないしは前記メイン部に装着されるレーダーを露出する窓部、及び前記窓部の内側面に突設された係合突起、並びに係合突起のうち前記可撓片の係合凸部と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面を有しており、 前記相対的なスライド移動により前記係合凸部が前記係合突起に圧接状態で係合することを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項6】
前記保持部材が前記レーダーを装着するブラケット、前記物品がプロテクターであり、前記可撓片が前記ブラケットに設けられて前記プロテクターに当接して車両前後方向と交差する方向に付勢することを特徴とする請求項1又は5に記載の保持構造。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記プロテクターに設けられた受入部に差し込まれる差込部と、前記差込部に対応して設けられて前記相対的なスライド移動方向と交差する方向へ突出した押圧片とを有し、前記押圧片が前記受入部背面側に圧接して前記プロテクターを車両前後方向に付勢することを特徴とする請求項5又は6に記載の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付対象物である車載用レーダー等の物品を保持部材に相対的なスライド移動により係合した状態で保持する場合に好適な保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用レーダーやプロテクタ等の物品は、保持部材に対し相対的なスライド移動により位置決め係合された状態で、保持部材に設けられたがたつき吸収用の付勢ばね部によりがたつかないよう付勢される。
図14はその一例として特許文献1に開示の保持構造を示している。この保持構造において、保持部材1は車体側への取付部2とレーダー等の車載機器用保持部3とを備えている。すなわち、保持部3は、車載機器Rのメイン部を露出する窓穴6と、車載機器Rの一部を車載機器のスライド移動により受け入れる受入部分7と、車載機器Rの上下側面に突設された突出部Rdをスライド移動方向に沿って案内するガイド部分8とを備えている。受入部分7は、車載機器Rの側部に対する位置決め壁7bと、受入部分の一部から受入部分から離れる方向へ延びて車載機器の正面に圧接する付勢ばね部である押さえ片7cとを備えている。ガイド部分8は、スライド移動の過程で突出部Rdに接触して弾性変形され、スライド移動の終了位置で弾性復帰して車載機器の復動を阻止するように突出部Rdに係合される弾性片8aを備えている。
【0003】
この保持構造では、特に、車載機器の突出部Rdをガイド部分8に沿ってスライド移動させて車載機器の移動前方側(先頭側)を受入部分7に受け入れるため車載機器の一部を確実かつ安定的に保持でき、押さえ片7cとガイド部分8により車載機器を挟み込み状に保持でき、スライド移動の終了位置で弾性片8aを突出部Rdに係合させて車載機器の復動を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した保持構造では、押さえ片が受入部分よりも離れる方向へ延び、その先端に形成したカール部を車載機器に圧接するため、押さえ片を邪魔にならないよう設置するスペースが必要となり、カール部の圧接力を増大すると車載機器のスライド係合操作が悪くなり、しかも車載機器をスライド移動する過程で押さえ片と受入部分との連結部の全幅に均等に応力が加わって連結部が破損される虞もある。
【0006】
本発明の目的は、以上のような問題を解消して、可撓片の圧接力を大きく設定可能にしたり、付勢ばね部を設置する箇所に制約され難く、しかも圧接力を強くしても破損し難い保持構造を提供することにある。他の目的は以下の説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、第1形態(
図1~
図7)を参考にして特定すると、車両へ取り付けられる保持部材2(6)が取付対象物である物品1(5)を相対的なスライド移動により位置決め係合した状態で、前記物品と前記保持部材の間に設けられた付勢ばね部によりがたつきを吸収する保持構造であって、前記付勢ばね部は、前記保持部材2及び前記物品1の一方に設けられて他方に当接する可撓片3(8)を有し、前記保持部材及び前記物品の一方と前記可撓片との連結部32(80)において、板幅方向の一端を第一連結端部32a(80a)とし他端を第二連結端部32b(80b)として、前記第一連結端部を前記第二連結端部よりも前記物品のスライド移動方向の上流側に位置するよう形成していることを特徴としている。なお、()内には第2形態(
図8~
図13)に対応した符号である。
【0008】
本発明において、『相対的なスライド移動により位置決め係合した状態』とは、
図3の例だと、保持部材2に対し物品1を摺動操作したり、逆に物品1に対し保持部材2を摺動操作したり、更に保持部材2と物品1を互いに近づく方向に摺動操作して、
図4のごとく弾性係合片27と物品の突出部12とを係合した状態である。
図11の例だと、保持部材6に対し物品5を下向きに摺動操作したり、逆に物品5に対し保持部材2を上向きに摺動操作したり、更に保持部材6と物品5を互いに近づく方向に摺動操作して、
図10のごとく可撓片8の係合凸部8bと物品の係合突起56とを係合した状態である。
【0009】
以上の本発明は、第1形態に基づいて特定した請求項2~4、第2形態に基づいて特定した請求項5~7のように具体化されることが好ましい。
(1)、請求項1において、前記可撓片3は、前記物品に圧接するよう設けられた突起31と、前記突起のうち前記相対的にスライド移動したときに前記物品と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面31aとを有している構成である(請求項2)。
(2)、請求項1又は2において、前記保持部材がブラケット2、前記取付対象物である物品がレーダー1であり、前記可撓片が前記ブラケットに設けられて前記レーダーに圧接してレーダーを車両前後方向に付勢する構成である(請求項3)。このレーダーは、例えば、送受信面(
図1(a)の手前側の面つまり正面)から電波を放出し、障害物等から反射された電波を受信することにより自動車と他の物体との距離などを検知可能にするものである。このレーダーはセンサと称されることもある。
(3)、請求項3において、前記レーダーの上端面又は/及び下端面に設けられた突出部12と、前記突出部と対応して前記ブラケットに弾性揺動可能に設けられた押圧片4とを有しており、前記ブラケットに前記レーダーを保持した状態で前記突出部が前記押圧片に形成された斜面41に圧接する構成である(請求項4)。
【0010】
(4)、請求項1において、前記可撓片(8)は先端に設けた係合凸部(8b)を有していると共に、前記物品は前記保持部材のメイン部ないしは前記メイン部に装着されるレーダーを露出する窓部(53)、及び前記窓部の内側面に突設された係合突起(56)、並びに係合突起のうち前記可撓片の係合凸部と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面56aを有しており、 前記相対的なスライド移動により前記係合凸部が前記係合突起に圧接状態で係合する構成である(請求項5)。
(5)、請求項1又は5において、前記保持部材が前記レーダー(7)を装着するブラケット(6)、前記物品がプロテクター(5)であり、前記可撓片が前記ブラケットに設けられて前記プロテクターの係合突起に当接して車両前後方向と交差する方向に付勢する構成である(請求項6)。
(6)、前記ブラケットは、前記プロテクターに設けられた受入部(57)に差し込まれる差込部(64)と、前記差込部に対応して設けられて前記相対的なスライド移動方向と交差する方向へ突出した押圧片(9)とを有し、前記押圧片が前記受入部の背面側に圧接して前記プロテクターを車両前後方向に付勢する構成である(請求項7)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、物品と保持部材の間に設けられたがたつき吸収用の付勢ばね部として、保持部材及び物品の一方に設けられて他方に当接する可撓片を有し、この可撓片が保持部材及び物品の一方との連結部において、板幅方向の一端を第一連結端部とし他端を第二連結端部として、第一連結端部を第二連結端部よりも物品のスライド移動方向の上流側に位置するよう形成している。このため、この保持構造では、可撓片が従来のごとく物品のスライド方向に延びていないので、物品が電波を前方へ送信したり前方から受信するようなレーダー等であってもスペース的な制約を受け難くなる。また、可撓片基端である連結部が物品のスライド方向にずれているため、スライド操作時の衝撃荷重が上流側にある第一連結端部に集中して連結部が全幅に亘って破損するような虞を解消できる。
【0012】
請求項2の発明では、可撓片が物品に圧接する突起を有していると、突起の突出寸法の設定により物品に対する押圧力を調整容易となる。また、突起が物品と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面を有していると、物品が曲面ないしは斜面のガイド作用により大きな付加を受けずスライド操作可能となる。
【0013】
請求項3の発明では、可撓片が保持部材であるブラケットに設けられて物品であるレーダーに圧接してレーダーを車両前後方向に付勢するため、特に走行時や急停車時に加わり易い荷重に基因したレーダーのがたつきを確実に防止可能となる。
【0014】
請求項4の発明では、ブラケットにレーダーを保持した状態で、レーダー側突出部がブラケット側押圧片に形成された斜面に圧接するため、がたつき防止用の押圧片を複数の方向に設けなくても、第1形態のごとく車両前後方向と交差する上下方向及び左右方向のがたつきを吸収可能となる。
【0015】
請求項5の発明では、 保持部材の可撓片が物品の窓部内側面に設けられた係合突起及び係合突起のうち可撓片の係合凸部と最初に当たる端部側に形成された曲面ないしは斜面を有しているため、物品が曲面ないしは斜面のガイド作用により大きな付加を受けずスライド操作可能となる。
【0016】
請求項6の発明では、可撓片が保持部材であるブラケットに設けられて物品であるプロテクターの窓部の内側部に設けられた係合突起に当接係合して車両前後方向と交差する方向に付勢するため、特に車両上下の振動に基因した保持部材ないしはレーダーのがたつきを防止可能となる。
【0017】
請求項7の発明では、ブラケットにプロテクターを保持した状態で、ブラケット側の押圧片が受入部の背面側に圧接してプロテクターを車両前後方向に付勢するため、第2形態のごとく特に車両前後方向のがたつきを吸収可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1形態であり、(a)は保持部材に物品(レーダー)を保持した状態を示す斜視図、(b)は保持部材から物品を外した状態を示す分解斜視図である。
【
図2】(a)は保持部材単品を示す背面図であり、(b)はそのA-A線拡大断面図、(c)はB-B線拡大断面図である。
【
図3】(a)は保持部材に物品を保持した状態での背面図であり、(b)はそのA1-A1線拡大断面図、(c)はB1-B1線拡大断面図である。
【
図4】(a)は
図2のC-C線矢視拡大模式図、(b)は
図3のD-D線矢視拡大断面図である。
【
図5】(a)は
図2のE部を拡大した模式図、(b)は可撓片の変形例1を前記E部に対応して示す模式図、(c)はそのF-F線断面図である。
【
図6】可撓片の変形例2を前記E部に対応して示す模式図、(b)はそのF1-F1線断面、(c)は可撓片の変形例3を前記E部に対応して示す模式図である。
【
図7】(a)は可撓片の変形例4を示す模式図、(b)は可撓片の変形例5を示す模式図、(c)は可撓片の変形例6を示す模式図である。
【
図8】本発明の第2形態であり、(a)と(b)は保持部材に物品(プロテクター)を保持した状態を示す上面図と正面図である。
【
図9】(a)は上記保持部材から物品を外した状態で示す分解斜視図、(b)と(c)は(a)のL部の拡大図とM部の拡大図である。
【
図10】(a)は
図8のG-G線拡大断面図、(b)は
図8のH-H線拡大断面図、(c)は
図8のI-I線拡大断面図である。
【
図11】(a)は上記保持部材と物品の相対的なスライド移動前の状態を示す模式図、(b)は
図8のK部を拡大した模式図、(c)は相対的なスライド移動前の状態を(b)に対応して示す模式図である。
【
図12】保持部材単品を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のN-N線断面図、(c)は(a)のP-P線断面図、(d)は背面図である。
【
図13】押圧片の変形例を
図11のQ部に対応して示す模式図、(b)は(a)のR-R線模式断面図である。
【
図14】特許文献1であり、(a)は文献1の
図2を示し、(b)は文献1の
図4を示し、(c)は文献1の
図6を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した2つの形態例を用いて明らかにする。具体的には、
図1~
図7に示した第1形態及びその変形例、
図8~
図13に示した第2形態及びその変形例の順で説明する。説明では、各形態の主なる構成と共に作用効果も含めて明らかにする。
【0020】
(第1形態)この保持構造において、保持部材であるブラケット2は、特許文献1と同様に取付対象物として物品であるレーダー1などを相対的なスライド移動により位置決め係合した状態で、自動車のバンパーの内面に対し向き合わせられるよう配置されて両面テープや溶着などによりに一体的に取り付けられる。また、バンパーには、レーダー1を係合保持したブラケット2が長手方向の左右に取り付けられる。そのうち、図示したブラケット2はバンパーの左側に配置されるものである。バンパーの右側に配置されるブラケット2は、図示を省略したが、左側に配置されるブラケット2と左右対称に形成されている。
【0021】
なお、ブラケット2は、樹脂の射出成形品であるが、樹脂以外でも差し支えない。
図1(a)において、xは上下方向、yは前後方向、zは左右方向を示している。
【0022】
ここで、形態のレーダー1は、矩形板状のメイン部10及びメイン部10の右側に設けられたコネクタ部11とからなる。メイン部10は、
図1の正面が送受信面に設定されていると共に、上下の側面にあって所定間隔を保って突設された一対の突出部12を有している。そして、レーダー1は、コネクター部11を介して外部と電気的に接続されて、例えば、メイン部10の送受信面から電波を放出し、障害物等から反射された電波を受信することにより障害物等を検知したり、障害物等との距離を検知することができる。なお、コネクター部11には図示を省略したハーネスの一端が接続されている。
【0023】
ブラケット2の細部は以下の通りである。ブラケット2は、略矩形枠状をなしていると共に、バンパーに対応して左右に多少湾曲している。ブラケット2は、
図1~
図4に示されるように、上下壁部21,22に立設された上下の縁取部21a,22aと、上下壁部21,22の左右を連結している両側の縁取部23,23と、上下の縁取部21a,22aの背面側上下縁に沿って左右に延びてレーダーの突出部12を案内する上下のガイド部21b,22bと、ガイド部21b,22bの右端側を繋ぐよう設けられた受入部26などを備えている。そして、枠内の窓穴25は、上下のガイド部21b,22bと、受入部26及び受入部26と対向する左側の縁取部23とで区画されている。なお、符号21cと22cは、上下壁部21,22と対応する上下の縁取部21a,22aに接合された状態に突設された補強リブである。
【0024】
上下の縁取部21a,22aは、左右側にそれぞれ突設された合計4つ略矩形状の取付部24を有している。そして、ブラケット2は、後述するごとくレーダー1をスライド移動操作により保持した状態で、不図示のバンパ内面に対し各取付部24を両面テープなどを介し接合状態に取り付けられる。
【0025】
各ガイド部21b同士、及び各ガイド部22b同士は間隔を保って設けられている。ガイド部21b同士の間と、ガイド部22b同士の間には、ガイド部より後方ないしは背面から離れる方向へ張り出した張出部21d,22dが設けられている。そして、この保持構造では、
図4(b)に示されるごとく張出部21dの受面21eと対応するガイド部21bとの間にレーダーの突出部12のうち、コネクタ部11に近い側の突出部12を摺動可能に挟み込む。また、受入部26の上下端側と上下壁部21,22との間には、受面21eと同じ面上となる受面21fが設けられている。この受面12fも、対応するガイド部21bとの間にレーダーの突出部のうち、コネクタ部11から離れる側の突出部12を摺動可能に挟み込む。
【0026】
また、上下のガイド部21b,22bには、弾性係合片27がL形スリット28を介して前後揺動可能に設けられている。各係合片27は、
図4に示されるごとく先端側に形成された段差状係合部27aを有している。そして、この保持構造では、
図4(b)のごとく係合片27がレーダー1をブラケット2に対しスライド移動する過程でコネクタ部側の突出部12から受ける応力により弾性変位し、最後までスライド移動した時点で復元して同突出部12の端部と係合部27aとが係合して摺動不能に保持される。
【0027】
また、ガイド部21b,22bには、一部から後方向へ突設された張出部21d,22dが設けられている。このうち、
図2の拡大図に示されるごとくガイド部21b側にある張出部21dと上壁部21との間に設けられて、レーダー本体10の上側にある突出部12と圧接可能な押圧片4が2カ所に有している。各押圧片4は、両側に設けられたスリット40,40を介して揺動変位可能となっている。また、各押圧片4は、内側に形成された傾斜面41を有し、突出部12が
図3(c)のごとく傾斜面41に当接するようになっている。この構造では、ブラケット2にレーダー1を保持した状態で、レーダー側突出部12が押圧片4に形成された傾斜面41に圧接するため、がたつき防止用の押圧片4を複数の方向に設けなくても、この形態のごとく二方向、例えば車両前後方向と交差する上下方向及び左右方向のがたつきを吸収可能となる。
【0028】
更に、受入部16は、
図2と
図3に示されるごとく対応する側壁23の背面から逆L形に立ち上がっていて、前述したごとくレーダー1がブラケット2に対し摺動不能に保持された状態で本体10の後側部分を内側に受け入れている。この受入部16には、所定間隔をたもって一対の可撓片3が設けられている。
【0029】
各可撓片3は、両側のスリット30で区画されることで弾性揺動可能となっている。各可撓片3は、長手方向の略中間部に設けられた突起31を有しており、突起31を介してレーダー1の背面に圧接される。すなわち、この構造では、可撓片3が突起31を介してレーダー本体10にがたつき吸収用として圧接するため、突起31の突出寸法を工夫して設定することでレーダー1に対する押圧力ないとは圧接力を目的の大きさに簡単に調整することができる。また、この突起31は、片側が曲面ないしは斜面31aに形成されている。この斜面31aは、レーダー1が相対的にスライド移動したときに最初に当たる端部側に設けられており、レーダー1が突起31の曲面ないしは斜面31aのガイド作用により大きな付加を受けずスムーズに最後まで良好に摺動操作可能となる。また、以上の可撓片3は、ブラケット2に設けられてレーダー1に圧接してレーダー背面側から正面側、つくり車両前後方向に付勢することから、特に走行時や急停車時に加わり易い荷重に基因したレーダーのがたつきを確実に防止可能となる。
【0030】
また、この構造では、
図5(a)に示されるごとく可撓片3と受入部26との連結部32、つまり上下の連結部32において、可撓片3の板幅方向の一端を第一連結端部32a、板幅方向の他端を第二連結端部32bとすると、第一連結端部32aが第二連結端部32bよりもレーダー1のスライド移動方向の上流側、つまりレーダー1が最初に当たる側に位置するよう形成されている。このため、この保持構造では、可撓片3が従来のごとく物品のスライド方向に延びていないので、取付対象物である物品が電波を前方へ送信したり前方から受信するようなレーダー1でもスペース的な制約を受け難くなる利点がある。
【0031】
また、以上の連結部32において、第一連結端部32aと第二連結端部32bは、レーダー1のスライド方向にずれているため、スライド操作時の衝撃荷重が上流側にある第一連結端部32aに集中し、第二連結端部32bへの衝撃力を緩和して、連結部32が全幅に亘って破損する虞を解消できる。すなわち、以上の保持構造では、文献1の押さえ片7cのごとく物品のスライド方向に延びて第一連結端部と第2連結端部とがスライド方向で同じ位置にあると、連結部が全幅に亘って破損し易くなるという問題を、第一連結端部32aと第二連結端部32bとをレーダー1のスライド移動方向でずらすことで解消可能にしたものである。
【0032】
(変形例)以下の変形例1~6は上記可撓片3に関連する他の構成例である。この説明では上記形態をベースとして変更した構成だけ詳述する。
【0033】
変形例1の可撓片3Aは、
図5(b),(c)に示されているごとく受入部26に対し側端面から連続した逆L形のスリット34を設けることで揺動可能に設けられており、受入部26に対する連結部32がスライド方向に延びている。このため、この変形例1の可撓片3Aでも、スライド操作時の衝撃荷重が上流側にある第一連結端部32aに集中し、その結果、第二連結端部32bへの衝撃力が緩和されて、連結部32が全幅に亘って破損ないしは切断する虞を解消できる。突起31と斜面31aは形態と同じである。
【0034】
図6(a),(b)は可撓片の変形例2を示している。この可撓片3Bは、形態例の可撓片3及び変形例1の可撓片3Aに対しスリットに代えて断面凹状の溝部35を介して揺動可能に形成されている。溝部35の深さは可撓片3Bの要求される変位量に応じて設計される。可撓片3Bにおいて、突起31と斜面31aは上記形態と同じであり、連結部32、第一連結端部32a、第2連結端部32bも上記形態や変形例1と同じ。
【0035】
図6(c)は以上の可撓片の変形例3を示している。この可撓片3Cは、受入部26に対し略逆U形のスリット37により区画された状態で斜めに設けられている。この場合は、受入部26に対する可撓片3Cの連結部32も斜めとなり、スライド操作時の衝撃荷重が上流側にある第一連結端部32aに集中し、下流側にある第二連結端部32bへの影響を緩和し、結果として連結部32が全幅に亘って破損ないしは切断する虞を解消できる。同図では図示を省いたが、突起31と斜面31aは上記形態や変形例1,2と同じである。
【0036】
図7(a)~(c)は可撓片を上記の受入部26以外の箇所に設けた三例を示している。このうち、変形例4の可撓片3Dは、(a)に示されるごとく上記した窓穴25の下辺部の的位置に連結された状態で立設されている。変形例5の可撓片3Dは、(b)に示されるごとく(a)の可撓片3Dと同じ形状であるが、窓穴25の下辺部に所定高に設けられた受入部26aを有し、該受入部26aに設けられた2本のスリットにより区画されている。変形例6の可撓片3Fは、窓穴25の下辺部の的位置に立設された半円状となっている。すなわち、可撓片3D及び3Fは、窓穴25のうち、レーダー7の送受信を損なわない箇所に設けられていると共に、突起31と斜面31aが上記形態や変形例1,2と同様に形成されている。
【0037】
(第2形態)この保持構造において、取付対象物ないしは物品であるプロテクター5は、保持部材としてレーダー装着用ブラケット6を相対的なスライド移動により位置決め係合した状態で、例えば、自動車のボデーを構成しているバックパネル等に対しブラケット6が固定される。この固定状態では、例えば、プロテクター55の前方にバンパー等が配置されており、ブラケット6の正面に装着されたレーダー7がプロテクター5により保護される。レーダー7は、下側のコネクター部71を介して外部と電気的に接続され、メイン部70の送受信面から電波を放出し、障害物等から反射された電波を受信することにより障害物等を検知したり、障害物等との距離を検知することができる。
【0038】
ここで、ブラケット6にはレーダー7が装着される。この場合、レーダー7は、ブラケット6に対し接着剤などにより接合一体化されたり、レーダー7に取付部を設けておき該取付部をボルト等によりブラケット6に固定されることもある。また、プロテクター5は、一般的に樹脂の射出成形品であるが、電磁波をシールドできれば樹脂以外でもよい。
図8において、xは上下方向、yは前後方向、zは左右方向を示している。なお、ブラケット6やプロテクター5の自動車側への配置については、説明を省略するが、必要であれば特開2019-64417号公報を参照されたい。
【0039】
以上のプロテクター5は、走行中に跳ね上げられる小石や雪などが内部に極力入らないようにして後方に配設されるレーダー7を保護するものである。プロテクター5の形状は、内部が上側覆部50及び下側覆部51とで周囲壁を形成し、前側を大きく開口し、後側をレーダー7のメイン部70を露出可能に配置すべく矩形状の窓穴53に形成している。窓穴53の下側には、レーダー本体70の下側及びコネクタ部71を下へ挿通可能にする下開口54が設けられている。窓穴53の両内側面には係合突起56が対向して設けられている。各係合突起56は、
図11(b),(c)に示されるごとく上側が平面56bに形成され、下側が下から上に行くほど張り出す傾斜面56aに形成されている。
【0040】
また、窓穴53の両側には縦板部55が設けられている。両縦板部55には、左右中間部を低くした受入部57が上下二カ所に設けられている。各受入部57は、
図9(b)に示されるごとく下側を開口58している。そして、受入部57には、ブラケット6に設けられた差込部64が開口58を通って挿入される。
【0041】
すなわち、ブラケット6には、
図12に示されるごとく正面の両側にあって、上下二カ所に設けられた略L状の差込部64と、各差込部64と対向する部分を欠肉した空洞部66と、空洞部66の正面上側縁部分から下設された押圧片9と、左右の差込部64の内側に突設された可撓片8とが設けられている。
【0042】
このうち、押圧片9は、両側のスリット65により区画されると共に、下に行くほど差込部64に近づくよう傾斜している。符号60aはスリット65の外側に沿って設けられた縦リブである。これに対し、両側の可撓片8は、
図12(c)のごとく基端8aがブラケット6を貫通した穴部63の内側面に連結され、先端が穴部63から外へ突出されている。各可撓片8の先端には、それぞれ外面側に突出した係合凸部8bが設けられている。係合凸部8bは、
図9(c)のごとく上下端8dが緩い傾斜面に形成されると共に外側面8cも傾斜面に形成されている。
【0043】
また、穴部63の内壁と連結している基端8a側の連結部80は、
図11(b)のごとく上下に延びており、板幅方向の一端を第一連結端部80aとし、他端を第二連結端部80bとすると、第一連結端部80aが第二連結端部80bよりもプロテクター5のスライド移動方向の上流側に位置するよう設けられている。
【0044】
以上の連結部80において、第一連結端部82aと第二連結端部82bは、ブラケット6のスライド方向にずれているため、スライド操作時において、係合突起56と当たる衝撃荷重が上流側にある第一連結端部80aに集中し、第二連結端部80b側への荷重が緩和され、それにより連結部80が全幅に亘って破損する虞を解消できる。
【0045】
詳述すると、ブラケット6は、レーダー7を正面に装着した状態でプロテクター5にスライド移動により係合保持される。この操作では、まず、各差込部64が受入部57に対し下側開口58より挿入される。この挿入により、
図10(c)のごとくブラケットの押圧片9がプロテクターの受入部57の背面に圧接し、それによりブラケット6とプロテクター6との間のがたつきが吸収される。この構造では、押圧片9が左右上下に合計4つ設けられており、4箇所の受入部57を対応する差込部64と押圧片9の間に挟み込んでがたつきを確実に吸収可能にする。
【0046】
同時に、各差込部64の挿入過程では、可撓片8の係合凸部8bが係合突起56の傾斜面56aに当たり、その後、可撓片8が傾斜面56aから受ける応力により係合突起56から離れる方向へ弾性変位しながら係合突起56を通過し、通過と同時に係合凸部8bが係合突器56の傾斜面56aと反対側の平面56bと係合する。
【0047】
以上の保持構造では、ブラケット6がプロテクター5に対して左右の係合突起56に係合している左右の可撓片8の圧接力により、プロテクター5が左右方向のがたつきが吸収された状態で係合保持される。また、可撓片8として第一連結端部80aと第2連結端部80bとがスライド方向で同じ位置にあるような構成だと、連結部が全幅に亘って破損し易くなるという問題を、第一連結端部80aと第二連結端部80bとをブラケット6のスライド移動方向でずらしたことにより解消可能となる。
【0048】
(変形例)
図13の変形例は上記押圧片9に関連する他の構成例である。この説明では上記形態をベースとして変更した構成だけ詳述する。すなわち、この押圧片9は、先端に突設した圧接用張出部9aを有している。張出部9aには、上側に上に行くほど低くなるガイド用傾斜部9bが設けられている。この構造では、押圧片9の圧接力を張出部9aの突出寸法により変更し易くなる。また、傾斜部9bは、受入部57が差込部64と押圧片9の間に圧入されるときに過大な負荷を受けずスムースに圧入されるよう作用する。
【0049】
なお、以上の各形態や変形例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。その例として、可撓片は保持部材に設けられているが、物品側に設けるようにしてもよい。また、第1形態の可撓片と押圧片、第2形態の可撓片と押圧片は共に弾性変位可能な点で共通していため、例えば押圧片を第2可撓片と称したり、逆に可撓片を押圧片と称し、他の押圧片を第2押圧片と称しても差し支えない。また、各ブラケットやプロテクターは、基本形状を示したが、自動車側の配置部などに応じて色々変更されるものであり、図示したものに何ら制約されない。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・・レーダー(物品に相当し、10は本体、12は突出部)
2・・・・・ブラケット(保持部材に相当し、24は取付部、25は窓穴)
3・・・・・可撓片(30はスリット、31は突起、31aは斜面)
3A・・・・可撓片(32は連結部、34は溝部)
3B・・・・可撓片(32は連結部、35は凹部)
3C・・・・可撓片(32は連結部、37は溝部)
3D・・・・可撓片(32は連結部)
3F・・・・可撓片(32は連結部)
4・・・・・押圧片(41は斜面)
5・・・・・プロテクター(物品に相当し、53は窓穴、56は係合突起)
6・・・・・ブラケット(保持部材に相当し、64は差込部)
7・・・・・レーダー(第二物品であり、70は本体)
8・・・・・可撓片(8aは基端、8bは係合凸部)
9・・・・・押圧片(41は斜面)
26・・・・受入部
26a・・・受入部
27・・・・弾性係合片(27aは係合部)
32・・・・連結部(32aは第一連結端部、32bは第二連結端部)
34・・・・溝部
35・・・・凹状部
37・・・・溝部
53・・・・窓穴(54は下開口)
57・・・・受入部
64・・・・差込部
80・・・・連結部(82aは第一連結端部、82bは第二連結端部)
x・・・・・上下方向
y・・・・・左右方向
z・・・・・前後方向