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  • 特開-化粧壁の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103850
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】化粧壁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
E04F13/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007780
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】523025126
【氏名又は名称】株式会社イワサ・アンド・エムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】安川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】大坪 力也
(57)【要約】
【課題】熟練した技術を必要とすることなく高級感のある外観を有する化粧壁を簡単に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】化粧壁の製造方法は、下地壁に複層塗材の主材を塗布する主材塗布工程(S2)と、主材塗布工程(S2)により塗布された主材を指触乾燥させ(S3)た状態で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラを用いて主材の表面に凹凸を形成する凹凸形成工程(S4)とを含む。凹凸形成工程(S4)では、ローラとしてコアの周囲に厚さが4mm以上6mm以下の繊維層を形成したローラブラシを用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級感のある外観を有する化粧壁を製造する方法であって、
下地壁に複層塗材の主材を塗布する主材塗布工程と、
前記主材塗布工程により塗布された前記主材を指触乾燥させた状態で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラを用いて前記主材の表面に凹凸を形成する凹凸形成工程と
を含み、
前記凹凸形成工程では、前記ローラとしてコアの周囲に厚さが4mm以上6mm以下の繊維層を形成したローラブラシを用いる、
化粧壁の製造方法。
【請求項2】
前記主材は、ケイ酸質系複層仕上塗材である、請求項1に記載の化粧壁の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸形成工程では、前記ローラブラシを用いて凹凸を形成する前に、前記ローラとして前記ローラブラシよりも硬質のヘッドカットローラを用いる、請求項1に記載の化粧壁の製造方法。
【請求項4】
前記主材塗布工程は、吹付により前記主材を塗布する工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧壁の製造方法。
【請求項5】
前記凹凸形成工程の後に、前記主材の表面に前記複層塗材の上塗材を塗布する上塗材塗布工程をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧壁の製造方法。
【請求項6】
前記上塗材塗布工程の後に、スポンジを用いて着色材により前記上塗材の表面を着色する着色工程をさらに含む、請求項5に記載の化粧壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧壁の製造方法に係り、特に高級感のある外観を有する化粧壁を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外壁などに対して、経年変化した際に生じる重厚感やアンティーク感を生じさせる処理を施し、高級感のある化粧壁とすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の方法では、刷毛などの塗装工具を巧みに駆使して表面に凹凸を形成する必要があり、熟練した塗装工でなければこのような高級感のある外観を実現することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-133066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、熟練した技術を必要とすることなく高級感のある外観を有する化粧壁を簡単に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、熟練した技術を必要とすることなく高級感のある外観を有する化粧壁を簡単に製造することができる方法が提供される。この化粧壁の製造方法は、下地壁に複層塗材の主材を塗布する主材塗布工程と、上記主材塗布工程により塗布された上記主材を指触乾燥させた状態で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラを用いて上記主材の表面に凹凸を形成する凹凸形成工程とを含む。上記凹凸形成工程では、上記ローラとしてコアの周囲に厚さが4mm以上6mm以下の繊維層を形成したローラブラシを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の一実施形態における化粧壁の製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた硬質ヘッドカットローラのみを用いて凹凸を形成した壁板パネルを示す写真である。
図3図3は、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた硬質ヘッドカットローラを用いた後に、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた厚さ5mmの繊維層を有するローラブラシによって表面に凹凸を形成した壁板パネルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る化粧壁の製造方法の実施形態について図1から図3を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における化粧壁の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る方法は、例えば建築物の外壁などの下地壁に経年変化した際に生じる重厚感やアンティーク感を生じさせる処理を施し、高級感のある外観を有する化粧壁を作製するために用いられる。以下、この方法について説明する。
【0008】
まず、図1に示すように、例えば建築物の外壁などの下地壁の表面に、複層塗材の下塗材を塗布する(下塗材塗布工程:ステップS1)。ここで、下塗材とは、主として下地壁に対する主材の吸込み調整及び付着性を高めるために使用される塗材をいう。このような下塗材としては、例えばエスケー化研株式会社製のマイルドシーラーEPOを用いることができる。この下塗材の塗布方法としては、吹付器具を用いた吹付やローラブラシや刷毛を用いた塗布が考えられる。このときの下塗材の塗布量は例えば0.10kg/m2とすることができる。下塗材塗布工程の後は、塗布した下塗材を所定時間(例えば2時間以上)乾燥させる。
【0009】
次に、下塗材の表面に複層塗材の主材を均一に塗布する(主材塗布工程:ステップS2)。ここで、主材とは、主として仕上がり面に後述するような立体的な模様(凹凸)を形成するために使用される塗材をいう。このような主材としては、ケイ酸質系複層仕上塗材を用いることができ、このようなケイ酸質系複層仕上塗材の一例としてエスケー化研株式会社製のセラミタイトタイルを挙げることができる。例えば、この主材塗布工程を2段階に分け、砂骨ローラを用いて主材を塗布した(ステップS2-1)後、所定時間(例えば16時間以上)乾燥させ、さらに万能ガンなどの吹付具を用いてさらに主材を吹き付けてもよい(ステップS2-2)。一例として、砂骨ローラを用いた主材の塗布量は0.50kg/m2であり、吹付による主材の塗布量は0.80kg/m2である。
【0010】
吹付により主材を塗布した後、主材を指触乾燥させる(指触乾燥工程:ステップS3)。すなわち、塗面を指先で静かに軽く触れたときに指先を塗料で汚れない程度に主材を乾燥させ硬化させる。例えば指触乾燥の時間は30分以内である。
【0011】
このように主材を指触乾燥させた状態で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラを用いて主材の表面に凹凸を形成する(凹凸形成工程:ステップS4)。この凹凸形成工程においては、コアの周囲に厚さが4mm以上6mm以下、好ましくは約5mmの繊維層を形成したローラブラシを用いる。例えば、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた硬質のプラスチック製ヘッドカットローラを用いて凹凸を形成すると、凹凸の度合いが強くなり過ぎてしまい、高級な外観を実現することが難しい。本件発明者等は、上述した厚さ4mm以上6mmの樹脂層を有するローラブラシに合成樹脂塗料用シンナーを含有させれば、主材をローラブラシに付着させることなく、エッジが丸くマイルドな凹凸を形成できることを発見した。なお、最初に合成樹脂塗料用シンナーを含有させたヘッドカットローラを用いてある程度主材の表面を潰した後に、ローラブラシによって凹凸を形成してもよい。
【0012】
このような凹凸形成工程の後、塗料を完全に硬化させるために所定時間(例えば18時間以上)乾燥させる。その後、ローラブラシを用いて複層塗材の上塗材を塗布する(上塗材塗布工程:ステップS5)。ここで、上塗材とは、仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上、吸水防止などのために使用される塗材をいう。このような上塗材として、例えばエスケー化研株式会社製の水性コンポウレタンを用いることができる。このような上塗材塗布工程は複数回繰り返してもよい。
【0013】
このような上塗材塗布工程の後、必要に応じて、例えばスポンジを用いて所望の色の顔料を含んだ着色材により着色をしてもよい(着色工程:ステップS6)。このような着色材としては、例えば上述したエスケー化研株式会社製の所望の色の水性コンポウレタンを清水で希釈したものやターナー色彩株式会社製のアクリルガッシュを用いることができる。このような着色材により化粧壁を着色することで、化粧壁の重厚感やアンティーク感を増すことができる。
【0014】
以上のように、本実施形態によれば、下地壁に主材を塗布した(主材塗布工程S2)後に、主材を指触乾燥させた状態(指触乾燥工程S3)で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた4mm以上6mm以下の繊維層を有するローラブラシを用いて表面に凹凸を形成する(凹凸形成工程S4)ことにより、主材をローラブラシに付着させることなく、凹凸のエッジを丸くマイルドな形状とすることができる。したがって、熟練した技術を有していない塗装工であっても、上述した合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラブラシを用いて凹凸を形成するだけで、経年変化した際に生じる重厚感やアンティーク感を有する外観を有する化粧壁を簡単に作製することができる。
【実施例0015】
下地壁としての壁板パネルに対して上述した下塗材塗布工程S1、主材塗布工程S2、及び指触乾燥工程S3を行った後、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた硬質ヘッドカットローラのみを用いて凹凸を形成し、その後、上塗材塗布工程S5及び着色工程S6を行ったところ、図2に示すように、凹部及び凸部が大きくなってしまい、重厚感やアンティーク感が十分に得られなかった。
【0016】
一方、壁板パネルに対して上述した下塗材塗布工程S1、主材塗布工程S2、及び指触乾燥工程S3を行った後、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた硬質ヘッドカットローラによって主材の表面を潰した後に、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた厚さ5mmの繊維層を有するローラブラシによって凹凸を形成し、その後、上塗材塗布工程S5及び着色工程S6を行ったところ、図3に示すように、凹部及び凸部のエッジが丸くなりマイルドな凹凸となり、重厚感及びアンティーク感のある壁板パネルを得ることができた。
【0017】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、熟練した技術を必要とすることなく高級感のある外観を有する化粧壁を簡単に製造することができる方法が提供される。具体的には、本発明に係る化粧壁の製造方法は、下地壁に複層塗材の主材を塗布する主材塗布工程と、上記主材塗布工程により塗布された上記主材を指触乾燥させた状態で、合成樹脂塗料用シンナー(弱溶剤系塗料用シンナー)を含有させたローラを用いて上記主材の表面に凹凸を形成する凹凸形成工程とを含む。上記凹凸形成工程では、上記ローラとしてコアの周囲に厚さが4mm以上6mm以下の繊維層を形成したローラブラシを用いる。
【0018】
このような方法によれば、下地壁に主材を塗布した後に、主材を指触乾燥させた状態で、合成樹脂塗料用シンナーを含有させた4mm以上6mm以下の繊維層を有するローラブラシを用いて表面に凹凸を形成することにより、主材をローラブラシに付着させることなく、凹凸のエッジを丸くマイルドな形状にすることができる。したがって、熟練した技術を有していない塗装工であっても、上述した合成樹脂塗料用シンナーを含有させたローラブラシを用いて凹凸を形成するだけで、経年変化した際に生じる重厚感やアンティーク感を有する外観を有する化粧壁を簡単に作製することができる。
【0019】
上記主材としてケイ酸質系複層仕上塗材を用いることが好ましい。
【0020】
上記凹凸形成工程では、上記ローラブラシを用いて凹凸を形成する前に、上記ローラとして上記ローラブラシよりも硬質のヘッドカットローラを用いてもよい。
【0021】
下地壁に均一に主材を塗布するために、上記主材塗布工程は、吹付により上記主材を塗布する工程を含むことが好ましい。
【0022】
仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上、吸水防止などのために、上記化粧壁の製造方法は、上記凹凸形成工程の後に、上記主材の表面に上記複層塗材の上塗材を塗布する上塗材塗布工程をさらに含むことが好ましい。
【0023】
また、化粧壁の重厚感やアンティーク感を増すために、上記化粧壁の製造方法は、上記上塗材塗布工程の後に、スポンジを用いて着色材により上記上塗材の表面を着色する着色工程をさらに含むことが好ましい。
【0024】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
S1 下塗材塗布工程
S2 主材塗布工程
S3 指触乾燥工程
S4 凹凸形成工程
S5 上塗材塗布工程
S6 着色工程
図1
図2
図3