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特開2024-103852食欲評価システム、食欲評価プログラム及び食欲評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103852
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】食欲評価システム、食欲評価プログラム及び食欲評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20240726BHJP
   G01N 33/64 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G01N33/92 Z
G01N33/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007786
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福家 暢夫
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CB22
2G045DA28
2G045DA60
2G045JA01
(57)【要約】
【課題】 一日の食欲の亢進を予測する方法である。
【解決手段】 本願発明者が先ず着目したのは、一日の食欲予測と血中LPS濃度の関係
性である。この関係性を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、一日の食欲
の亢進と起床後の血中LPS濃度の相関性である。この観点から、本発明を定義すると、
食欲評価プログラムによってコンピュータが実行する処理は、少なくとも、判定である。
当該コンピュータで判定されるのは、被測定者の一日の食欲予測であり、その際に参照さ
れるのは、当該被測定者の血中LPS濃度である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食欲評価システムであって、それを構成するのは、少なくとも、以下である:
測定装置:
これで測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度であり、
出力装置:
これで出力されるのは、当該被測定者の一日の食欲予測であり、及び、
処理装置:
これに接続されるのは、当該出力装置であり、かつ、
これで処理されるのは、当該血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度であり、それによ
って得られるのは、当該被測定者の一日の食欲予測である。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、
当該血中LPSが、腸内細菌に由来するものである。
【請求項3】
食欲評価プログラムであって、それによってコンピュータが実行するのは、次の処理で
ある:
判定:ここで判定されるのは、被測定者の一日の食欲予測であり、その際に参照される
のは、
当該被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度である。
【請求項4】
請求項3のプログラムであって、
当該一日の食欲予測は、朝食又は昼食の満腹感の低下、一日の炭水化物摂取量の上昇、
夕食のカロリー摂取量の上昇、夕食の炭水化物摂取量の上昇の少なくとも1つ以上である
【請求項5】
請求項3乃至4のプログラムであって、
当該血中LPSが、腸内細菌に由来するものである。
【請求項6】
食欲評価方法(但し、医療行為を除く。)であって、それを構成するのは、少なくとも
、以下の工程である:
測定:ここで測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度であり

判定:ここで判定されるのは、当該被測定者の一日の食欲予測であり、その際に参照さ
れるのは、当該血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度であり、及び、
提示:ここで提示されるのは、当該一日の食欲予測である。
【請求項7】
請求項6の方法であって、
当該一日の食欲予測は、朝食又は昼食の満腹感の低下、一日の炭水化物摂取量の上昇、
夕食のカロリー摂取量の上昇、夕食の炭水化物摂取量の上昇の少なくとも1つ以上である
【請求項8】
請求項7の方法であって、
当該被測定者は、健常者である。
【請求項9】
請求項6乃至8の方法であって、
当該血中LPSが、腸内細菌に由来するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、食欲評価システム、食欲評価プログラム及び食欲評価方法であ
る。
【背景技術】
【0002】
肥満はメタボリックシンドロームの入り口とされており、その予防は長期的な健康維持
のために重要である。肥満予防のためには過剰なカロリー摂取を避けるべきであるが、一
般に、食事制限を続けることは難しい。なぜなら、食欲は生命維持に必要不可欠なもので
あり、抑制し続けることが難しいからである。また、食欲には日ごとにムラがあり、つい
つい食べ過ぎてしまう日があることが実情である。しかし、一日の食欲を予測することが
できれば、常に食欲を抑制するのではなく、食欲が高まる日にだけ、予め食事に気を遣う
ことができる。さらには、その食欲が自分自身のせいでないことが判れば、食欲を抑制す
る意欲にもつながり、結果として肥満防止につながると考えられる。
【0003】
LPS(lipopolysaccharide)はグラム陰性細菌由来の炎症性物質
であり、内毒素(エンドトキシン)としても知られている。腸内細菌由来のLPSは、高
脂肪食の摂取等によって血中に流入し、メタボリックシンドロームや生活習慣病の発症、
重症化につながることが示唆されている(非特許文献1)。
LPSと食欲との関係については、僅かに報告がある。脂肪細胞(3T3-L1)をL
PSで刺激すると食欲抑制ホルモンレプチンの産生量が低下することを示した報告(非特
許文献2)や、LPSを投与したヒトにおいて、食欲増進ホルモングレリンの血中濃度が
一過性に上昇したことを示した報告(非特許文献3)である。一方で、LPSを投与した
マウスにおいて食欲がすることを示した報告(非特許文献4)や、ヒトの血中LPS濃度
が食欲の低下と相関することを示した報告(非特許文献5)がある。LPSは食欲に何ら
かの影響を及ぼすと考えられるが、血中LPS濃度が、一日の食欲予測に与える影響につ
いては明らかではない。また、血中LPS濃度が、食欲を亢進するのか、ないしは抑制す
るのかも定かではない。
【0004】
呼気アセトンは脂質代謝の産物であり、その濃度は脂質代謝の指標、ひいては運動の効
果を測るための指標と捉えられている。そのため、主にダイエット効果の見える化を目的
としたデバイスが研究開発されている(非特許文献6)。また、血糖値との関連があり、
非侵襲の測定装置としても開発がされている。しかしながら、呼気アセトン濃度と一日の
食欲変化に与える影響については明らかではない。また、呼気アセトン濃度と、血中LP
S濃度との関連についても明らかではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Diabetes Care,34:1809-1815(2011)
【非特許文献2】Br J Nutr.2012 Mar;107(6):826-33.
【非特許文献3】J Endocrinol.2009 Oct;203(1):175-9.
【非特許文献4】PLoS One.2016 Sep 15;11(9):e0162971.
【非特許文献5】Clin Diagn Lab Immunol.1994 Nov;1(6):684-8.
【非特許文献6】NTT DOCOMO テクニカル・ジャーナル、Vol.29、No.1、p.49-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一日の食欲を予測する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者が先ず着目したのは、一日の食欲と血中リポポリサッカライド(LPS)濃
度(以下、「血中LPS濃度」という。)の関係性である。この関係性を踏まえて、本願
発明者が鋭意検討して見出したのは、一日の食欲の亢進と起床後の血中LPS濃度の相関
性である。
本願発明者が次に着目したのは、呼気アセトン濃度と血中LPS濃度の関係性である。
この関係性を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、一日の食欲の予測と呼
気アセトン濃度との相関性である。これらの観点から、本発明を定義すると、以下のとお
りである。
【0008】
<食欲評価システム>食欲評価システムを構成するのは、少なくとも、測定装置、出力
装置、及び、処理装置である。当該測定装置で測定されるのは、被測定者の血中LPS濃
度又は呼気アセトン濃度である。当該出力装置で出力されるのは、当該被測定者の一日の
食欲予測である。当該処理装置に接続されるのは、少なくとも、当該出力装置である。当
該処理装置で処理されるのは、当該血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度であり、それに
よって得られるのは、当該被測定者の一日の食欲予測である。
【0009】
<食欲評価プログラム>食欲評価プログラムによってコンピュータが実行する処理は、
少なくとも、判定である。当該コンピュータで判定されるのは、被測定者の一日の食欲の
予測であり、その際に参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセトン
濃度である。
<食欲評価方法>食欲評価方法(但し、医療行為を除く。)を構成するのは、少なくと
も、測定、判定、及び、提示である。すなわち、人又は装置若しくは器具によって測定さ
れるのは、被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度である。人又は装置若しくは
器具によって判定されるのは、当該被測定者の一日の食欲予測であり、その際に参照され
るのは、当該血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度である。人又は装置若しくは器具によ
って提示されるのは、当該一日の食欲予測である。
【発明の効果】
【0010】
本発明が可能にするのは、一日の食欲予測による食欲のコントロールである。なぜなら
、被測定者が朝のうちに一日の食欲予測を知ることで、食欲及び食事に対して注意を向け
ることが可能だからである。さらには、その食欲が自分自身のせいでないことが判れば、
食欲を抑制する意欲にもつながるからである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】食欲評価システムの構成である。
図2】判定処理の流れである。
図3】LPS診断の流れである。
図4】食欲評価の出力画面であって、そのLPS診断値が正常時のものである。
図5】食欲評価の出力画面であって、そのLPS診断値が異常時のものである。
図6】食欲評価方法の流れである。
図7】食欲判定表である。
図8】試験2における、被験者の血中LPS濃度の推移である。
図9】試験2における、血中LPS濃度と呼気アセトン濃度の相関である。
図10】健常者対NAFLD患者の血中LPS濃度に対する評価結果であり、(a)血中LPS濃度の比較結果(健常者対NAFLD患者)であり、(b)ROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施の形態>本発明を具現化するのは、以下の実施の形態である。ここで用いる語
句の定義は、以下のとおりである。
【0013】
<血中LPS濃度>血中LPS濃度とは、血液に含まれるリポポリサッカライド(LP
S)の濃度(単位:EU/mL)をいう。「血中LPS濃度」に含まれるのは、血漿中L
PS濃度及び血清中LPS濃度である。血漿中LPS濃度とは、血漿に含まれるLPSの
濃度(単位:EU/mL)をいう。血清中LPS濃度とは、血清に含まれるLPSの濃度
(単位:EU/mL)をいう。本実施の形態で採用するのは、血漿中LPS濃度である(
以下、単に「血中LPS濃度」ということもある。)。なぜなら、血中LPS濃度に略等
しいのは、血漿中LPS濃度だからである(すなわち、「血中LPS濃度」≒「血漿中L
PS濃度」)。
【0014】
<呼気アセトン濃度>呼気アセトン濃度とは、呼気に含まれるアセトンガスの濃度(単
位:ppm)をいう。
【0015】
<食欲>食欲とは、食物を食べる願望である。身体機能を維持する為に必要なエネルギ
ーを取り入れるのに役立ち、食欲は、消化管、脂肪組織及び脳の相互作用により調節され
ている。食欲の調節が正常にできなくなった場合、神経性無食欲症(拒食症)または神経
性大食症(過食症)の原因となり、栄養失調や肥満につながる。
食欲の調節機能には、レプチン(食欲減退)に代表される多くのホルモン、心身の状態
や季節などの外的要因、体内時計など様々な要因が関与している。また、美味しいものを
みると食べたくなるなど、食欲は報酬系の影響も受けている。
【0016】
<食欲の亢進>食欲の亢進とは、食欲が増した状態をさす。前述のようにその要因は様
々であるが、本発明においては特に、食前及び食後の食欲、空腹感、満腹感、prosp
ective food consumption(PFC;どれだけの食べ物を食べら
れそうと感じるか)のことをいう。
【0017】
<食欲評価システム>図1で示すのは、食欲評価システムの構成である。食欲評価シス
テム10を構成するのは、測定装置20、出力装置30、処理装置40、入力装置50、
及び、外部記憶装置60である。これらの装置の一部又は全部を接続する方式は、有線又
は無線である。これらの装置は、互いに独立し、或いは、一部又は全部が一体化している
。出力装置30及び処理装置40並びに入力装置50が一体化している場合、そのような
一体化を具現化するのは、パーソナルコンピュータやタブレット端末等である。各装置の
詳細は、以下のとおりである。
【0018】
<測定装置>測定装置20で測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度又は呼気アセ
トン濃度である。
血中LPS濃度の場合に、測定装置20で先ず分析されるのは、被測定者の血液又は血
漿であり、それによって出力されるのが当該被測定者の血中LPS濃度である。当該血液
及び血漿は、前処理される。当該前処理の詳細は、後述する。当該血中LPS濃度の出力
先は、不問であるが、好ましくは、処理装置30である。測定装置20を具現化するもの
は、様々であり特に限定されないが、例示すると、分光計、分光光度計、マイクロプレー
トリーダ等である。本実施の形態で採用したのは、マイクロプレートリーダ(バイオテッ
ク社製のマイクロプレートリーダELx808)である。
呼気アセトン濃度の場合に、測定装置20で先ず分析されるのは、被測定者の呼気であ
り、それによって出力されるのが当該被測定者の呼気アセトン濃度である。当該呼気アセ
トン濃度の出力先は、不問であるが、好ましくは、処理装置30である。測定装置20を
具現化するものは、様々であり特に限定されないが、例示すると、センサガスクロマトグ
ラフィ質量分析装置、ポータブル呼気アセトン測定器等である。本実施の形態で採用した
のは、ポータブル呼気アセトン測定器(Ketonix社製のKetonix)である。
【0019】
<出力装置>出力装置30で出力されるのは、被験者の血中LPS濃度及び又は呼気ア
セトン濃度、及び被験者の一日の食欲予測である。これらの情報を出力する態様は、不問
であり、具体的には、画像出力、音声出力、紙出力、これらの組合せ等である。出力装置
30を例示すると、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ等である。
【0020】
<処理装置>処理装置40に接続されるのは、出力装置30、入力装置50及び外部記
憶装置60である。処理装置40で処理されるのは、被測定者の血中LPS濃度度及び又
は呼気アセトン濃度であり、その結果、得られるのは、被験者の一日の食欲予測である。
本実施の形態では、被測定者の血中LPS濃度度及び又は呼気アセトン濃度の源泉は、測
定装置20である。また、当該血中LPS濃度度及び又は呼気アセトン濃度を直接的に入
力するのは、入力装置50である。
処理装置40を構成するのは、コンピュータの基本要素であり、具体的には、入出力部
、通信部、プログラム記憶部、一時記憶部、及び、処理部である。これらの部品は、互い
に、バス接続されている。これらの部品の説明は、次のとおりである。
【0021】
<入出力部>入出力部で授受されるのは、各種データである。入出力部に接続されるの
は、出力装置40、入力装置50、及び、外部記憶装置60である。入出力部に接続可能
なのは、測定装置20である。この場合、測定装置20に備わっているのは、入出力機能
である。
【0022】
<通信部>通信部で送受されるのは、各種データである。通信部に接続されるのは、ネ
ットワークである。通信部を例示すると、ダイヤルアップ接続モジュール、ワイファイ(
Wi-Fi)モジュール、ブルートゥース(登録商標)“Bluetooth”、モジュ
ール等である。
【0023】
<プログラム記憶部>プログラム記憶部に記憶されるのは、各種プログラムである。プ
ログラム記憶部を具現化するのは、不揮発性記憶装置(例えば、ROMなど)及び不揮発
記憶装置(例えば、HDDやSSDなど)である。不揮発性記憶装置に記憶されるのは、
基本プログラム(それに必要なデータを含む。)である。基本プログラムを例示すると、
ベーシックインプット/アウトプットシステム(BIOS)、オペレーションシステム(
OS)設定プログラム、ネットワーク設定プログラムなどである。不揮発記憶装置に記憶
されるのは、オペレーションシステム(OS)及びアプリケーションプログラムである。
オペレーションシステム(OS)を例示すると、ウィンドウズ(登録商標)“Windo
ws”、リナックス(登録商標)“Linux(登録商標)”、アンドロイド(登録商標
)“Android”などである。アプリケーションプログラムを例示すると、後述する
食欲評価プログラムである。
【0024】
<一時記憶部>一時記憶部に一時的に記憶されるのは、各種プログラム及び各種データ
である。各種プログラムは、前述のとおりである。各種データが示すのは、入力値や出力
値などである。一時記憶部を例示すると、揮発性記憶装置(例えば、RAMなど)である
【0025】
<処理部>処理部で実行されるのは、各種プログラムであり、かつ、処理されるのは、
各種データである。各種プログラムが実行されることで、入力値が処理されて出力値とな
る。処理部を具現化するのは、中央演算装置(いわゆるCPU)である。
【0026】
<入力装置>入力装置50で入力されるのは、各種データである。入力装置50を例示
すると、タッチパネル、操作キー、ボタン、キーボードやマウス等である。
【0027】
<外部記憶装置>外部記憶装置60で記憶されるのは、各種データ及び各種プログラム
である。外部記憶装置を例示すると、磁気記憶装置(HDDなど)、光学記憶装置(CD
、DVD、BDなど。その駆動装置を含む。)、半導体記憶装置(USBメモリ、SDカ
ードメモリ、SSDなど)などである。
【0028】
<食欲評価プログラム>食欲評価プログラムによって処理装置30が実行するのは、判
定処理である。すなわち、処理装置30で判定されるのは、被測定者の一日の食欲予測で
ある。その際に、処理装置30で参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度又は呼
気アセトン濃度を元にした血中LPS濃度予測値(以下、これらをあわせて「血中LPS
値」という。)である。
図2で示すのは、判定処理の流れである。判定処理を構成するのは、LPS診断(S1
0)、及び、食欲評価出力(S20)である。
【0029】
<LPS診断(S10)>LPS診断で得られるのは、LPS診断値である。LPS診
断の詳細は、以下のとおりである。
図3で示すのは、LPS診断の流れである。血中LPS値が読み出されて(S31)、
戻り値が返される(S32~S36)。
血中LPS値「Y」が基準値「a」未満(Y<a)であれば、戻り値「A」が返される
(S32)。戻り値「A」が意味するのは、一日の食欲亢進が推認されないこと、より具
体的には、炭水化物摂取量の増加、カロリー摂取量の増加、食事の満足感低下の何れも推
認されないことである。
【0030】
血中LPS値「Y」が基準値「a」以上、かつ、「b」未満(a≦Y<b)であれば、
戻り値「B」が返される(S33)。戻り値「B」が意味するのは、一日の食欲亢進がや
や推認されることである。具体的には、炭水化物摂取量の増加、カロリー摂取量の増加、
食事の満足感低下の何れかが推認される。
【0031】
血中LPS値「Y」が基準値「b」以上、かつ、「c」未満(b≦Y<c)であれば、
戻り値「C」が返される(S34)。戻り値「C」が意味するのは、一日の食欲亢進が推
認されることである。具体的には、炭水化物摂取量の増加、カロリー摂取量の増加、食事
の満足感低下の何れかが推認される。
【0032】
血中LPS値「Y」が基準値「c」以上、かつ、「d」以下(c≦Y≦d)であれば、
戻り値「D」が返される(S35)。戻り値「D」が意味するのは、一日の食欲亢進がか
なり推認されることである。具体的には、炭水化物摂取量の増加、カロリー摂取量の増加
、食事の満足感低下の何れかが推認される。
【0033】
血中LPS値「Y」が基準値「d」より大きい(Y>d)ならば、戻り値「E」が返さ
れる(S36)。戻り値「E」が意味するのは、一日の食欲の亢進が強く推認されること
である。具体的には、炭水化物摂取量の増加、カロリー摂取量の増加、食事の満足感低下
の何れかが推認される。
以上において、閾値「a」、「b」、「c」、及び「d」が依存するのは、人種及び居
住地である。日本人の場合、閾値「a」、「b」、「c」、及び「d」は、それぞれ、「
0.0001」、「0.001」、「0.004」、及び「0.010」である。
【0034】
<食欲評価出力(S20)>食欲評価が出力されるのは、LPS診断が終了した後であ
る。食欲評価の出力態様は、大きく分けて、3つである。その詳細は、以下のとおりであ
る。
図4で示すのは、食欲評価の出力画面であって、LPS診断値が正常時のものである。
この画面が出力されるのは、LPS診断値(戻り値)が「A」である場合である。すなわ
ち、被験者は、一日の食欲の亢進が推認されない者である。その総合判定結果は、「異常
なし」(又は「正常」)である。
【0035】
【表1】
【0036】
図5で示すのは、食欲評価の出力画面であって、LPS診断値が異常時のものである。
この画面が出力されるのは、LPS診断値(戻り値)が「B」、「C」、「D」及び「E
」の何れかである場合である。すなわち、被験者は、一日の食欲の亢進が推認されるもの
である。その総合判定結果は、「正常」(又は「異常なし」)であるものの、そこに付さ
れるのは、注記(例えば、アスタリスク「*」等)である。注記の出力態様を変える要素
は、戻り値である。注記「*」が採用される場合、戻り値が「B」であれば、1つの「*
」が付される。戻り値が「E」であれば、4つの「*」が付される。
【0037】
【表2】
【0038】
<食欲評価方法>図6で示すのは、食欲評価方法の流れである。食欲評価方法を構成す
るのは、測定(P1)、判定(P2)、及び、提示(P3)である。具体的には、以下の
とおりである。
【0039】
<測定(P1)>測定の目的は、被測定者の血中LPS濃度を把握することである。す
なわち、人又は装置若しくは器具によって測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度又
は呼気アセトン濃度である。言い換えれば、当該血中LPS濃度又は呼気アセトン濃度の
測定態様は、自動、手動又は半自動である。測定原理は、不問であり、それぞれ例示する
と、血中LPS濃度ではLALエンドポイントアッセイ(比色法)、呼気アセトン濃度で
は、アセトン特異的ガスセンサーである。
【0040】
本実施の形態で採用するのは、血中LPS濃度ではLALエンドポイントアッセイであ
る。この場合、当該血中LPS濃度の測定手順は、次のとおりである。
【0041】
検体は、被測定者の血液である。この血液の保管温度は、-80℃~35℃であり、好
ましくは、-10℃~10℃である。当該血液の画分は、特に限定されないが、好ましく
は、血漿である。当該画分が排除しないのは、血清である。
当該血漿は、前処理される。具体的には、先ず、当該血漿を希釈する。その希釈溶媒は
、LPS非含有の液体(例えば、蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水など)であり、
かつ、その希釈率は、10倍である。次に、そのように希釈された血漿を加熱する。その
加熱温度は、70度であり、かつ、その加熱時間は、10分間である。そのように処理さ
れた血漿に反応させるのは、LAL試薬である。この試薬は、市販されている。市販のキ
ットを例示すると、エンドトキシン-シングルテストワコー(富士フイルム和光純薬株式
会社製)やLimulus amebocyte lysate assay kit(
QCL-1000、Lonza)等である。
前処理された血漿を分析するのは、後述する測定装置である。この血漿が分析されて得
られるのは、被測定者の血中LPS濃度である。
【0042】
また、本実施の形態で採用するのは、呼気アセトン濃度では、アセトン特異的ガスセン
サである。この場合、当該呼気アセトン濃度の測定手順は、次のとおりである。
検体は、被測定者の呼気である。当該呼気の採取方法は、特に限定されないが、好まし
くは、直接的にガスセンサに吹きかけることである。当該採取方法が排除しないのは、呼
気バッグに採取することである。
呼気に反応させるのは、アセトン特異的ガスセンサである。このセンサは、市販されて
いる。市販の製品を例示すると、Ketonix(Ketonix社製)やKetone
Meter(EEK-Brand社製)等である。
呼気を分析するのは、後述する測定装置である。この呼気が分析されて得られるのは、
被測定者の呼気アセトン濃度である。
【0043】
<判定(P2)>判定の目的は、被測定者の食欲評価を導出することである。人又は装
置によって判定されるのは、当該被測定者の食欲であり、その際に参照されるのは、当該
血中LPS濃度又は当該呼気アセトン濃度を元にした血中LPS濃度予測値(これらをあ
わせて「血中LPS値」という。)である。
【0044】
図7で示すのは、食欲判定表である。当該食欲判定表で示されるのは、血中LPS値と
食欲判定値との関係である。当該食欲判定表に当てはめられるのは、被測定者の血中LP
S値であり、その結果、得られるのは、被測定者の食欲判定値である。閾値「a」、「b
」、「c」、及び「d」が依存するのは、人種及び居住地である。
【0045】
<提示(P3)>提示の目的は、被測定者の食欲を認知させることである。人又は装置
若しくは器具によって提示されるのは、当該血中LPS値及び当該食欲であり、その提示
先は、当該被測定者である。測定された血中LPS値及び食欲を提示する方式は、問わな
いが、具体的には、電磁的(電子的又は磁気的)である。また、当該血中LPS値及び食
欲を提示する態様は、問わないが、具体的には、視覚的態様である。血中LPS値及び当
該食欲を提示する手段は、限定されず、例示すると、紙や画面などである。
【0046】
<食欲評価システム、食欲評価プログラム及び食欲評価方法の効果>これらの実施の形
態で奏されるのは、一日の食欲予測である。
【0047】
<本実施の形態が依拠する試験結果>本実施の形態が依拠するのは、食欲と血中LPS
値の相関性である。これらの相関性を導くのは、以下の試験結果である。
【0048】
<試験1>
試験1で把握するのは、(1)食欲と血中LPS濃度との相関の有無である。
この試験の手順は、以下のとおりである。
【0049】
<被験者の選定>インフォームドコンセントが得られた20歳以上の成人男女25名を
選定し、被験者とした。
【0050】
除外基準は、(1)食生活以外で血中LPS濃度に大きく影響する因子がある方(試験
開始の1か月以内に感染症に罹患している、または、抗生物質を服用している等)、(2
)血中LPS濃度以外で食欲に大きく影響する因子がある方(ホルモン治療を行っている
等)、(3)採血に際して有害事象のおそれがある方(アルコール過敏等)、(4)本試
験開始の1か月以内に他のヒト試験に参加している方、(5)授乳中又は妊娠中あるいは
試験期間中、妊娠を希望する方、(6)その他、試験責任医師又は研究責任者が不適当と
判断した方である。
【0051】
<データ収集>被験者のデータを収集した。
<問診>
試験責任医師が研究対象候補者に問診を行い、試験への参加可否を判断した。問診票に
は、被験者識別番号、選定基準に関わる項目、除外基準に関わる項目を記入した。
【0052】
<血液及び血漿の採取>被験者の血液を採取した。これらの血液を用いて、測定し或い
は算出したのは、被験者の血中LPS濃度である。具体的な手順は、以下のとおりである
【0053】
手順1:各日の起床から朝食までの間に被験者が自宅にて採血を行った。具体的には、
指先を50%(v/v)エタノール含浸綿で拭き上げた。
手順2:続いて、ランセットで指先を穿刺し、漏出した血液約100μLをヘパリン採
血菅に採取した。採取した血液を速やかに保冷剤入りの容器に入れ、当日午前中のうちに
分析者へ手渡した。
手順3:分析者は、提出された血液を遠心分離し血漿を調製した。血漿の一部は、当日
のうちにLPS濃度測定に供した。
【0054】
<LPS濃度測定>
手順4:撹拌された血漿の一部を分取した後、分取された血漿を希釈した。その希釈条
件は、希釈溶媒が大塚蒸留水であり、希釈倍率(血漿の量に対する希釈溶媒の量)が10
倍であり、かつ、希釈環境が氷中である。
手順5:希釈された血漿を加熱した。その条件は、加熱温度が70℃であり、かつ、加
熱時間が10分間である。
【0055】
手順6:加熱された血漿を氷中で冷却したことで、当該血漿の温度を室温程度(25℃
前後)とした。
手順7:当該室温の血漿を撹拌した。その条件は、撹拌時間が約30秒であり、かつ、
撹拌器具が試験管ミキサである。
【0056】
手順8:プレート1を作成した。具体的には、96穴プレートを準備した。(1)被験
者1人の血漿(1検体)に使用したのは、プレート1の96穴のうち1穴である(1穴/
検体)。つまり、血漿が注入されたのは、計25穴(25名×1穴)である。当該血漿の
1穴当たりの注入量は、50μL/穴である。また、各穴にそれぞれ入れたのは、さらに
、リムルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工業株式会社
製)50μLである(50μL/穴)。(2)蒸留水(大塚製薬株式会社製)が注入され
たのは、残り71穴のうち1穴である。また、各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、リム
ルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工業株式会社製)5
0μLである(50μL/穴)。(3)検量線を作成するため、エンドトキシン標準品(
生化学工業株式会社製)を用いて調整したのは、7種の標準LPS水溶液である。7種の
標準LPS水溶液の濃度は、それぞれ、0.0001EU/mL、0.0004EU/m
L、0.0016EU/mL、0.0063EU/mL、0.025EU/mL、及び、
0.10EU/mL、2.0EU/mLである。1種の標準LPS水溶液に使用したのは
、残り70穴のうち1穴である(1穴/検量線用LPS水溶液)。つまり、標準LPS水
溶液が注入されたのは、計7穴(7種×1穴)である。また、各穴にそれぞれ入れたのは
、さらに、リムルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工業
株式会社製)50μLである(50μL/穴)。
【0057】
手順9:プレート1をインキュベートした。その条件は、インキュベート温度が37℃
であり、かつ、インキュベート時間が1時間である。
手順10:プレート2を作成した。その目的は、吸光度測定で血漿の色の影響をキャン
セルすることである。具体的には、96穴プレートを準備した。(1)血漿が注入された
のは、計25穴(25名×1穴)である。当該血漿の1穴当たりの注入量は、50μL/
穴である。各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、蒸留水(大塚製薬株式会社製)50μL
である(50μL/穴)。(2)蒸留水(大塚製薬株式会社製)が注入されたのは、残り
71穴のうち1穴である。各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、蒸留水(大塚製薬株式会
社製)50μLである(50μL/穴)。
手順11:プレート2をインキュベートした。その条件は、インキュベート温度が37
℃であり、かつ、インキュベート時間が1時間である。
【0058】
<吸光度の測定>インキュベート後、405nmの吸光度(対照波長492nm)を測
定した。ここで、対照波長とは、波長であって、吸光妨害因子(例えば、プレートの傷や
歪み等)が与える影響を補正するためのものをいい、具体的には、リムルス試薬の製造企
業(本実施の形態では、生化学工業株式会社)が指定したものをいう。各吸光度の関係は
、次式のとおりである。ここで、各サンプルの吸光度に用いたのは、1穴の実測値である

(式)吸光度A=吸光度B-{吸光度C+(吸光度D1-吸光度D2)}
吸光度A:血漿中LPS及びリムルス試薬の反応
吸光度B:血漿及びリムルス試薬(プレート1)
吸光度C:蒸留水及びリムルス試薬(プレート1)
吸光度D1:血漿及び蒸留水(プレート2)
吸光度D2:蒸留水(プレート2)
【0059】
<検量線の作成手順>検量線の作成手順は、次のとおりである。標準LPS水溶液及び
リムルス試薬の反応物(手順8の(3)を参照。)の405nmの吸光度(対照波長49
2nm)を測定したことで、LPS濃度及び吸光度の関係(検量線)を得た。この検量線
の適否を確認した。具体的には、当該適否の判断基準は、全被験者の吸光度Aが当該各反
応物の吸光度の範囲内か否かである。
【0060】
<血液(血漿)中LPS濃度の演算>被験者毎の血液(血漿)中LPS濃度を演算した

当該検量線に当てはめたのは、被験者毎の吸光度Aであり、それによって得られたのは
、被験者毎の血漿中LPS濃度(EU/mL)である。
【0061】
<食欲スコア>
食前及び食後10~60分(10分間隔)の食欲、空腹感、満腹感、prospect
ive food consumption(PFC;どれだけの食べ物を食べられそう
と感じるか)を150mmのvisual analogue scale(VAS)で
被験者が評価し、日誌に記録した。評価は朝、昼、夕の毎食時に行った。
【0062】
<食品摂取状況>
朝食、昼食、夕食、間食の摂取時間帯、摂取所要時間、各種栄養素量[カロリー、脂質
、タンパク質、炭水化物、食物繊維、カルシウム、鉄、ビタミン類(A、E、B1、B2
、C、飽和脂肪酸、塩分])を被験者が日誌に記録した。各種栄養素量の算出には食事解
析アプリ「あすけん」(asken社)を用い、各被験者自身で入力・解析のうえ、結果
のみを日誌に記入した。
【0063】
<血中LPS濃度と食欲スコア>
採血当日の朝食時の食欲スコアを目的変数、血中LPS濃度のlog値を説明変数とし
、総エネルギー摂取量で調整したときの重回帰分析の結果を表3に示す。血中LPS濃度
は、朝食前の食欲、空腹感、PFCと有意な正の相関を示し、満腹感と有意な負の相関を
示した。
また、採血当日の昼食時の食欲スコアを目的変数、血中LPS濃度のlog値を説明変
数とし、総エネルギー摂取量で調整したときの重回帰分析の結果を表4に示す。血中LP
S濃度は、昼食前の食欲、空腹感と有意な正の相関を示し、満腹感と負の相関傾向を示し
た。
さらに、採血当日の夕食時の食欲スコアを目的変数、血中LPS濃度のlog値を説明
変数とし、総エネルギー摂取量で調整したときの重回帰分析の結果を表5に示す。血中L
PS濃度は、夕食前の食欲、空腹感と有意な正の相関を示し、PFCと正の相関傾向を示
した。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
これらの結果で示唆されるのは、起床後の血中LPS濃度が、食事の際の食欲や空腹感
と有意な正の相関を示すこと、及び、満腹感と負の相関を示すことである。
【0068】
<試験2>
試験2で把握するのは、(1)食欲と血中LPS濃度との相関の有無、(2)呼気アセ
トン濃度と血中LPS濃度との相関の有無、(3)呼気アセトン濃度と食欲との相関の有
無である。
この試験の手順は、以下のとおりである。
【0069】
<被験者の選定>20歳以上40歳未満の成人男性4名を選定し、被験者とした。
選定条件は、(1)インフォームドコンセントが得られたこと、(2)ボディマス指数
(BMI)が22kg/m2以上であること(日本肥満学会の定める適正体重の目安)、
(3)週に最低1日は野菜摂取量が4ベジハンド(240g)以下の日があること、(4
)人より太りやすいと感じていること、及び、(5)週に最低1日は食欲を抑えられない
日があると感じていること、である。
【0070】
除外基準は、(1)食生活以外で血中LPS濃度に大きく影響する因子がある方(試験
開始の1か月以内に感染症に罹患している、または、抗生物質を服用している等)、(2
)血中LPS濃度以外で食欲に大きく影響する因子がある方(ホルモン治療を行っている
等)、(3)採血に際して有害事象のおそれがある方(アルコール過敏等)、(4)本試
験開始の1か月以内に他のヒト試験に参加している方、(5)授乳中又は妊娠中あるいは
試験期間中、妊娠を希望する方、(6)その他、試験責任医師又は研究責任者が不適当と
判断した方である。
【0071】
<データ収集>被験者のデータを収集した。
<問診>
試験責任医師が研究対象候補者に問診を行い、試験への参加可否を判断した。問診票に
は、被験者識別番号、選定基準に関わる項目[性別、年齢、BMI、BMIの過去最高値
(記憶している範囲で)、野菜摂取量が4ベジハンド(240g:日本人の平均野菜摂取
量)以下の日の頻度、食欲を抑えられない日の頻度]、除外基準に関わる項目(既往歴、
現病歴、喫煙習慣、飲酒習慣、欠食の有無、アルコール過敏症の有無、他のヒト試験への
参加状況)、測定結果開示希望の有無を記入した。
【0072】
<血液及び血漿の採取>被験者の血液を採取した。これらの血液を用いて、測定し或い
は算出したのは、被験者の血中LPS濃度である。具体的な手順は、試験1と同様である
【0073】
<LPS濃度測定>
具体的な手順は、試験1と同様である。
<吸光度の測定>
具体的な手順は、試験1と同様である。
<検量線の作成手順>
具体的な手順は、試験1と同様である。
<血液(血漿)中LPS濃度の演算>
具体的な手順は、試験1と同様である。
【0074】
<呼気アセトン濃度測定>
各日の呼気アセトン濃度を、起床から朝食までの間の空腹時に被験者が自宅で測定した
。測定にはポータブル呼気アセトン計[KETONIX(KETONIX社)]を用い、
専用スマートフォンアプリで解析・算出された呼気アセトン濃度を日誌に記録した。
【0075】
<食欲スコア>
各日の食前及び食後10~60分(10分間隔)の食欲、空腹感、満腹感、prosp
ective food consumption(PFC;どれだけの食べ物を食べら
れそうと感じるか)を150mmのvisual analogue scale(VA
S)で被験者が評価し、日誌に記録した。評価は朝、昼、夕の毎食時、及び、就寝前に行
った(就寝前は、10分間隔の経時的評価は実施しなかった)。
【0076】
<食品摂取状況>
試験開始時に、被験者がBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票:過去1か月間の食習
慣を評価)に回答した。また、各日の朝食、昼食、夕食、間食の摂取時間帯、摂取所要時
間、各種栄養素量[カロリー、脂質、タンパク質、炭水化物、食物繊維、カルシウム、鉄
、ビタミン類(A、E、B1、B2、C、飽和脂肪酸、塩分)]を被験者が日誌に記録し
た。各種栄養素量の算出には食事解析アプリ「あすけん」(asken社)を用い、各被
験者自身で入力・解析のうえ、結果のみを日誌に記入した。
【0077】
<解析対象者とパラメータ>
被験者の年齢は28~31歳、BMIは22.3~25.1kg/mであった。
【0078】
(1)食欲と血中LPS濃度との相関の有無
<被験者の血中LPS濃度の推移>図8で示すのは、被験者(A~Dとする)の血中L
PS濃度の推移である。なお、Bの1日目、Cの1、2日目は外れ値であった(Smir
nov-Grubbs検定、P<0.05)。外れ値を示したデータは、各被験者におけ
る血中LPS濃度の日常的な変動から逸脱していることから、以降はこれらを除外したデ
ータセットでの解析を実施した。なお、検出限界は0.0001EU/mLであった。
【0079】
<血中LPS濃度と食欲スコア>
食欲スコア(食前から食後60分までのスコアの曲線化面積[AUC]の試験0日目を基
準とした変化量)を目的変数、血中LPS濃度(試験0日目を基準とした変化量)を説明
変数としたときの一般化線形混合モデルの解析をおこなった(表6)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は食事のカロリーを調整因子とし、M
odel-3はModel-2に加えて食事の摂取時間を調整因子とし、Model-4
はModel-3に加えて一つ前の食事の摂取カロリーを調整因子とし、Model-5
はModel-4に加えて一つ前の食欲評価後から当該食事までの活動量、及び、当該食
事の食欲評価中の活動量を調整因子とした。
血中LPS濃度(試験0日目を基準とした変化量)は、朝食及び昼食の満腹感の変化量
と有意な負の相関を示した。この相関は、Model-2(食事のカロリー)、Mode
l-3(食事の摂取時間)、Model-4(一つ前の食事の摂取カロリー)、Mode
l-5(一つ前の食欲評価後から当該食事までの活動量、及び、当該食事の食欲評価中の
活動量)による調整後も維持された。
【0080】
【表6】
【0081】
<血中LPS濃度と摂取栄養素量>
一日当たり(間食含む)の摂取栄養素(試験0日目を基準とした変化量)を目的変数、
血中LPS濃度(試験0日目を基準とした変化量)を説明変数としたときの一般化線形混
合モデルの解析をおこなった(表7)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は朝食前の空腹感、昼食前の空腹感、
及び、夕食前の空腹感を調整因子とし、Model-3はModel-2に加えて一日の
活動量を調整因子とした。
血漿中LPS濃度(試験0日目を基準とした変化量)は、一日の炭水化物摂取量(間食
含む)と有意な正の相関を示した。この相関は、Model-2(各食前の空腹感)、M
odel-3(一日の活動量)による調整後も維持された。血漿中LPS濃度は、Mod
el-1において一日のカルシウム摂取量、ビタミンE摂取量、塩分摂取量と有意な負の
相関を示したが、この有意差はModel-2(各食前の空腹感)では消失した。
これらの結果は間食からの摂取栄養素量を含まない場合でも同様であった(表8)。血
漿中LPS濃度と各食事での摂取栄養素量との相関を一般化線形混合モデルの解析(調整
因子なし)で解析した結果、血漿中LPS濃度は夕食のカロリー摂取量、炭水化物摂取量
と有意な正の相関を示していた(それぞれt=2.3、t=4.2)。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
これらの結果で示唆されるのは、(1)血中LPS濃度が朝食及び昼食の満腹感の低下
と関連すること、(2)血中LPS濃度が一日の炭水化物摂取量の上昇と関連すること、
(3)血中LPS濃度が夕食のカロリー摂取量、炭水化物摂取量の上昇と関連することで
ある。
【0085】
(2)呼気アセトン濃度と血中LPS濃度との相関の有無
<血中LPS濃度と呼気アセトン濃度>
呼気アセトン濃度を目的変数、血中LPS濃度を説明変数としたときの一般化線形混合
モデルの解析をおこなった(表9)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は絶食時間を調整因子とした。呼気ア
セトン濃度は血中LPS濃度と、Model-1において有意な正の相関を示した。この
相関は、Model-2(絶食時間)の調整後も維持された。
さらに、呼気アセトン濃度は脂肪燃焼の指標であり、血中TG濃度と関連すると考えら
れることから、呼気アセトン濃度を目的変数、血中LPS濃度を説明変数、調整因子を絶
食時間及び血中TG濃度とした場合においても、呼気アセトン濃度は血中LPS濃度と有
意な正の相関を示し、呼気アセトン濃度と血中LPS濃度との有意な正の相関は維持され
た(t=7.3)。
同様に、呼気アセトン濃度(変化量)を目的変数、血中LPS濃度(変化量)を説明変
数としたときの一般化線形混合モデルの解析をおこなった(表10)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は絶食時間を調整因子とした。呼気ア
セトン濃度(変化量)は血中LPS濃度(変化量)と、Model-1において有意な正
の相関を示した。この相関は、Model-2(絶食時間)の調整後も維持された。呼気
アセトン濃度(変化量)を目的変数、血中LPS濃度(変化量)を説明変数、調整因子を
絶食時間及び血中TG濃度とした場合においても、呼気アセトン濃度(変化量)は血中L
PS濃度(変化量)と有意な正の相関を示し、呼気アセトン濃度(変化量)と血中LPS
濃度(変化量)との有意な正の相関は維持された(t=7.7)。
血中LPS濃度(x)と呼気アセトン濃度(y)の線形回帰直線の傾きは1515.4
、切片は-1.4547であった(図9)。
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
これらの結果で示唆されるのは、呼気アセトン濃度と血中LPS濃度が、濃度において
も変化量においても相関することであり、(式)y=1515.4x-1.4547によ
って、呼気アセトン濃度を元にした血中LPS濃度予測値を算出できることである。
【0089】
(3)呼気アセトン濃度と食欲との相関の有無
<呼気アセトン濃度と食欲スコア>
食欲スコア(AUCの変化量)を目的変数、呼気アセトン濃度(変化量)を説明変数と
したときの一般化線形混合モデルの解析をおこなった(表11)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は食事のカロリーを調整因子とし、M
odel-3はModel-2に加えて食事の摂取時間を調整因子とし、Model-4
はModel-3に加えて一つ前の食事の摂取カロリーを調整因子とし、Model-5
はModel-4に加えて一つ前の食欲評価後から当該食事までの活動量、及び、当該食
事の食欲評価中の活動量を調整因子とした。
呼気アセトン濃度(試験0日目を基準とした変化量)は、朝食及び昼食の満腹感の変化
量と有意な負の相関を示した。この相関は、Model-2(食事のカロリー)、Mod
el-3(食事の摂取時間)、Model-4(一つ前の食事の摂取カロリー)、Mod
el-5(一つ前の食欲評価後から当該食事までの活動量、及び、当該食事の食欲評価中
の活動量)による調整後も維持された。
【0090】
【表11】
【0091】
<呼気アセトン濃度と摂取栄養素量>
一日当たり(間食含む)の摂取栄養素(変化量)を目的変数、呼気アセトン濃度(変化
量)を説明変数としたときの一般化線形混合モデルの解析をおこなった(表12)。
Model-1は調整因子なし、Model-2は朝食前の空腹感、昼食前の空腹感、
及び、夕食前の空腹感を調整因子とし、Model-3はModel-2に加えて一日の
活動量を調整因子とした。
呼気アセトン濃度(試験0日目を基準とした変化量)は、一日の炭水化物摂取量(間食
含む)と有意な正の相関を示した。この相関は、Model-2(各食前の空腹感)、M
odel-3(一日の活動量)による調整後も維持された。
これらの結果は間食からの摂取栄養素量を含まない場合でも同様であった(表13)。
呼気アセトン濃度と各食事での摂取栄養素量との相関を一般化線形混合モデルの解析(調
整因子なし)で解析した結果、呼気アセトン濃度は夕食の炭水化物摂取量と有意な正の相
関を示していた(t=2.6)。
【0092】
【表12】
【0093】
【表13】
【0094】
これらの結果で示唆されるのは、(1)呼気アセトン濃度が朝食及び昼食の満腹感の低
下と関連すること、(2)呼気アセトン濃度が一日の炭水化物摂取量の上昇と関連するこ
と、(3)呼気アセトン濃度が夕食の炭水化物摂取量の上昇と関連することである。
【0095】
<試験3>
健常者の血中LPS濃度及び非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic
fatty liver disease)患者(以下、「NAFLD患者」という。
)の血中LPS濃度を評価した。ここで、非アルコール性脂肪性肝疾患とは、脂肪性肝疾
患であって、その原因が明らかにアルコール性肝障害以外であるものをいい、肥満との関
りも強いといわれている。
被験者の血中LPS濃度を測定した。その測定方法は、試験1と同様である。被験者を
構成したのは、健常者31名及びNAFLD患者31名である。
【0096】
<結果>図10で示すのは、健常者対NAFLD患者の血漿中LPS濃度に対する評価
結果である。図10(a)で示すのは、血漿中LPS濃度の比較結果(健常者対NAFL
D患者)である。箱髭図の横線で示すのは、下から最小値、第一四分位、中央値、第三四
分位、最大値である。最大値より上部にあるドットで示すのは、外れ値である。健常者の
血漿中LPS濃度は、中央値0.0038EU/mL(0~0.0117EU/mL)で
ある。NAFLD患者は、中央値0.0169EU/mL(0.0009~0.3003
EU/mL)である。両者を比較すると、NAFLD患者の血漿中LPS濃度は、健常者
と比較して有意(p<0.05)に高値である。
【0097】
図10(b)で示すのは、Reciever Оperating Characte
ristic(ROC)曲線である。NAFLDに対する血漿中LPS濃度の診断能は、
ROC曲線下面積(area under the curve;AUC)=0.87で
ある。血漿中LPS濃度が0.010EU/mLであれば、カットオフ値(点線)が最適
である。この場合、陽性的中率(感度)は、71.0%であり、陰性的中率(特異度)は
、96.8%である。
これらの結果から示唆されるのは、健常者との境界が血漿中LPS濃度0.010EU
/mLであることである。
【0098】
<本実施の形態の効果>本実施の形態が奏する効果は、一日の食欲予測である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明が有用な分野は、健康サービス事業である。
【符号の説明】
【0100】
10 健康状態評価システム
20 測定装置
30 出力装置
40 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10