(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103856
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240726BHJP
H01R 13/6581 20110101ALI20240726BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/6581
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007792
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高木 章義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義直
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FB21
5E021FC08
5E021LA09
5E021LA10
5E021LA15
5E087LL04
5E087LL13
5E087LL17
5E087MM05
5E087MM12
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR06
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】防水性能及び衝撃耐性を向上させたコネクタを得ることを目的とする。
【解決手段】コネクタ1は、端子付き電線11を収容するハウジング12と、ハウジング12内方にアクセス可能な作業孔1221bを備える筒部1221と、作業孔1221bを閉塞するように筒部1221に嵌め込まれるキャップ13と、キャップ13の外面と筒部1221の内面との間に介在し、筒部1221を、筒部1221の外方である反発方向に押圧するシール部材14と、筒部1221を介してシール部材14と対向する規制部153を有し規制部153によって筒部1221の反発方向への変形を規制する第一シールドシェル15と、第一シールドシェル15を含んでハウジング12の少なくとも一部を覆う第二シールドシェル16と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子付き電線を収容するハウジングと、
前記ハウジングに形成される筒部であって前記ハウジングの内方にアクセス可能な孔部を備える筒部と、
前記孔部を閉塞するように前記筒部に嵌め込まれる栓部材と、
前記栓部材の外面と前記筒部の内面との間に介在し、前記筒部を、前記筒部の外方である反発方向に押圧するシール部材と、
前記筒部を介して前記シール部材と対向する規制部を有し前記規制部によって前記筒部の前記反発方向への変形を規制する第一シールドシェルと、
前記第一シールドシェルを含んで前記ハウジングの少なくとも一部を覆う第二シールドシェルと、を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、相手コネクタの相手ハウジングに接続され、
前記端子付き電線の端子は、前記相手コネクタの相手端子にボルト締結により接続され、
前記孔部は、前記ハウジングの外部から前記ボルト締結に用いるボルトにアクセス可能な作業孔であり、
前記第一シールドシェルは、前記筒部の外面及び前記栓部材を覆う形状を有し、
前記第二シールドシェルは、前記第一シールドシェルの外面全体を覆う形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記作業孔の内部には、ボルト締結された前記端子及び前記相手端子が、複数組配置されている請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングにシールドシェルが組み付けられたシールドコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタは、第1ハウジングと、第1ハウジングに形成された作業孔を塞ぐキャップと、キャップに装着されるシールリングと、第1ハウジングの露出部を覆うシェルカバーと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したコネクタでは、キャップの装着時に、シールリングが作業孔の開口縁部を外方に押圧することで、同方向に作業孔周辺が変形し、キャップとハウジングとのラップ量、すなわち当接量が低下してしまうことがある。このため、キャップ及びシールリングによるシール性能が低下し、コネクタの防水機能が低下する。また、第1ハウジングの露出部を覆う部材が単一のシェルカバーであるため、コネクタの強度を保ちにくい。このため、コネクタに対してハウジングの外部から衝撃が加わった場合に衝撃に耐えられず、シェルカバー内の部品が損傷するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、防水性能及び衝撃耐性を向上させたコネクタを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、コネクタは、端子付き電線を収容するハウジングと、前記ハウジングに形成される筒部であって前記ハウジング内方にアクセス可能な孔部を備える筒部と、前記孔部を閉塞するように前記筒部に嵌め込まれる栓部材と、前記栓部材の外面と前記筒部の内面との間に介在し、前記筒部を、前記筒部の外方である反発方向に押圧するシール部材と、前記筒部を介して前記シール部材と対向する規制部を有し前記規制部によって前記筒部の前記反発方向への変形を規制する第一シールドシェルと、前記第一シールドシェルを含んで前記ハウジングの少なくとも一部を覆う第二シールドシェルと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防水性能及び衝撃耐性を向上させたコネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタ、相手コネクタ、及びユニットを示す分解斜視図。
【
図2】接続された状態にあるコネクタ、相手コネクタ、及びユニットの断面図。
【
図5】ハウジングに栓部材を取り付ける様子を示す斜視図。
【
図6】(A)は、ハウジングに第一シールドシェルを取り付ける様子を示す斜視図であり、(B)は、第一シールドシェルの取り付けが完了した状態のコネクタを示す斜視図。
【
図7】(A)は、ハウジングに第二シールドシェルを取り付ける様子を示す斜視図であり、(B)は、第二シールドシェルの取り付けが完了した状態のコネクタを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コネクタ1について説明する。本実施形態のコネクタ1は、例えば、ハイブリッド車両に搭載されたモータ等の機器に電力を供給する電線111に設けられたメスコネクタである。コネクタ1は、機器側のコネクタである相手コネクタ2(オスコネクタ)に接続され、機器を収容するユニット3に取り付けられる。
【0010】
本実施形態の説明では、まず、コネクタ1の接続対象となる相手コネクタ2と、相手コネクタ2の取り付け対象となるユニット3について説明し、その後、コネクタ1の詳細について説明する。
【0011】
なお、図において、X、Y、Zは、互いに直交する方向である。そして、
図1に示すように、コネクタ1及び相手コネクタ2が、ユニット3に近接又は離間する方向を接続方向とし、「接続方向X」と記す。また、接続方向Xにおいてコネクタ1がユニット3に近接する側を「前側X1」、前側X1の反対側を「後側X2」と記す。
【0012】
そして、ユニット3の短辺方向を左右方向とし、「左右方向Y」と記す。また、左右方向Yの一方側を「左側Y1」、他方側を「右側Y2」と記す。また、ユニット3の長辺方向を上下方向とし、「上下方向Z」と記す。また、上下方向Zの一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」と記す。
【0013】
これは、あくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもコネクタ1の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、コネクタ1の実際の使用状態における方向を限定するものではない。
【0014】
相手コネクタ2は、コネクタ1に接続されるオスコネクタであり、
図1に示すように、相手ハウジング21(オスハウジング)と、相手端子22(オス端子)と、を備えている。
【0015】
相手ハウジング21は、相手端子22を収容する部材であり、接続方向Xに延びて筒状に形成されている。相手ハウジング21は、前側X1を向く取付部211と、取付部211から後側X2に延びて後側X2に開口する被嵌合部212と、を備えている。
【0016】
取付部211は、後述するユニット3の取付孔3aに嵌合する部分である。取付部211の外面には、全周に亘って環状溝211aが形成されており、環状溝211aには、第一パッキンP1が嵌め込まれている。被嵌合部212は、後述するコネクタ1のハウジング12における嵌合部1222に接続される部分である。被嵌合部212は、取付部211よりも左右方向Yに長い略長方形枠状の開口部212aを有し、内部に相手端子22の固定部221を収容している。
【0017】
相手端子22は、コネクタ1の端子112に接続されるオス端子であり、本実施形態では2個設けられ、被嵌合部212の内部で、左右方向Yに並んで配置されている。各相手端子22は、取付部211内に固定される固定部221(
図1参照)と、固定部221と別体で設けられた接続部222(
図4参照)と、を備えている。
【0018】
固定部221は、
図1に示すように、後側X2に延びる突起状に形成され、被嵌合部212内部に固定されている。接続部222は、固定部221に接続される部分であり、
図4に示すように、接続方向Xに延びる筒状の基端部2221と、基端部2221の後側X2の端部から上側Z1に傾斜して後側X2に延びる板状の傾斜部2222と、を備えている。
【0019】
筒状の基端部2221の内径は、突起状の固定部221の外径よりも大きく形成されており、これによって、
図2に示すように、基端部2221は、固定部221の外周を覆いながら固定部221対して接続方向Xに接続される。
【0020】
傾斜部2222は、コネクタ1の端子112に接続される部分である。傾斜部2222には、板厚方向に貫通する接続孔222aが形成されている。接続孔222aの前側X1の縁部には、ナット部4が嵌め込まれており、このナット部4には、第一ボルト5(ボルト)が締結される。
【0021】
ユニット3は、例えば、ハイブリッド車両に搭載されたモータやインバータ等の機器を収容するものである。ユニット3は、シールド機能を有する金属材料を用いて、上下方向Z及び左右方向Yに延在する矩形箱状に形成されている。ユニット3には、
図1に示すように、接続方向X(板厚方向)に貫通する取付孔3aが形成されており、この取付孔3aには、相手コネクタ2の取付部211が嵌合する。
【0022】
取付部211が取付孔3aに嵌合した状態では、上述した第一パッキンP1によって、取付部211の外面と取付孔3aの内面との間が封止され、液体又は固体等がハウジング12内に侵入することが防止されている。このようにして、ユニット3に対して相手コネクタ2が取り付けられる。そして、ユニット3に取り付けられた相手コネクタ2に対してコネクタ1が接続される。
【0023】
コネクタ1は、
図2に示すように、端子付き電線11と、ハウジング12と、キャップ13と、シール部材14と、第一シールドシェル15と、第二シールドシェル16と、を備えている。
【0024】
端子付き電線11は、ユニット3に収容された機器と、他の機器とを接続するシールド電線であり、本実施形態では、左右方向Yに並んで2個設けられている。各端子付き電線11は、電線111と、電線111に接続される端子112と、を備えている。電線111は、
図2に示すように上下方向Zに延び、その上側Z1の部分が後述するハウジング12の第一収容部121に挿入される。電線111の上側Z1の端部には、樹脂で形成された矩形平板状の端子保持部1111が設けられている。端子保持部1111は、前側X1を向く面が、後側X2に傾斜している。この端子保持部1111の傾斜角度は、上述した相手端子22における傾斜部2222の傾斜角度と略同じとなっている。
【0025】
端子112は、導電性の板部材で構成され、
図4に示すように、上側Z1の端部が上側Z1に凸の半円形板状に形成されている。端子112は、後側X2の板面を端子保持部1111の前側X1の板面に重ねた状態で端子保持部1111に固定されている。端子112には、相手端子22との接続時に上述した相手端子22の接続孔222aと同軸となる接続孔112a、が形成されている。
【0026】
図2に示すように、同軸となった接続孔112a及び接続孔222aには、導電性の第一ボルト5が挿入され、この第一ボルト5は、上述したナット部4に締結される。すなわち、第一ボルト5の締結(ボルト締結)によって端子112と相手端子22とが接続、固定される。なお、第一ボルト5は、頭部とねじ部との間にフランジを備えるフランジボルトであってもよいし、フランジの代わりにワッシャを設置したボルトであってもよい。
【0027】
ハウジング12は、端子付き電線11を収容するとともに、相手ハウジング21に接続される部分である。ハウジング12は、
図4に示すように、左右方向Yに並んで上下方向Zに延びる2連筒状の第一収容部121と、第一収容部121に連通し、左右方向Yに並んで接続方向Xに延びる2連筒状の第二収容部122と、を備えている。
【0028】
第一収容部121は、端子付き電線11の電線111を収容する部分であり、下側Z2に向かって開口している。
図2に示すように、第一収容部121の内部における下側Z2の端部には、挿入された電線111の外周面を周方向に囲む環状の第二パッキンP2が設置されている。第二パッキンP2の設置により、電線111の外面と第一収容部121の内面との間が封止され、液体又は固体等がハウジング12内に侵入することが防止されている。
【0029】
第一収容部121の内部における第二パッキンP2の下側Z2の部分には、第一収容部121の開口を閉じるリアホルダ1211が嵌め込まれている。リアホルダ1211は、第二パッキンP2と同様、電線111の外周面を周方向に囲むに環状に形成されている。リアホルダ1211の設置により、電線111の外周面と第一収容部121の内周面との間に隙間が生じなくなる。このため、端子112や第二パッキンP2が下側Z2に移動することが規制され、端子付き電線11や第二パッキンP2の下側Z2への脱落が抑制される。
【0030】
第一収容部121の後側X2の壁面には、後側X2に立ち上がる台座部1212が形成されている。台座部1212は、
図5に示すように、左右方向Yに間隔をあけて上下方向Zに延びるストレート部1212aと、ストレート部1212aの上側Z1の端部を接続するように左右方向Yに延びる湾曲部1212bと、を備えている。ストレート部1212aは、後述する端部シールド部17の延出部173が載置される部分であり、略直方体状に形成されている。湾曲部1212bは、後述する設置部1221aの外周面に対向する部分であり、設置部1221aの外周面に沿って延びている。
【0031】
第一収容部121の下側Z2の端部には、第一収容部121の下側Z2を向く壁面から後側X2を向く壁面にかけて、端部シールド部17が設置されている。端部シールド部17は、電線111と導通可能なシールド部材である。端部シールド部17は、導電性の金属板をプレス加工等することで、第一収容部121の下側Z2の端部周辺を覆う形状に形成されている。具体的には、端部シールド部17は、
図4に示すように、筒状部171と、固定板部172と、延出部173と、を備えている。
【0032】
筒状部171は、各第一収容部121の下側Z2の端部を周方向に覆い、帯状の固定部材174によって周方向に締め付けられることで固定される。固定板部172は、筒状部171の上側Z1の端部から径方向外方に拡がる矩形板状に形成されている。延出部173は、固定板部172の後側X2の端部から後側X2に立ち上がり、台座部1212のストレート部1212aの後側X2の外壁面に沿って接続方向Xに延びている。
【0033】
延出部173は、
図2に示す導電性の第二ボルト6によって第一収容部121に固定される。このように、端部シールド部17は、筒状部171を締め付ける固定部材174と、延出部173を固定する第二ボルト6によって、第一収容部121に固定される。
【0034】
第二収容部122は、接続された状態の端子112及び相手端子22を収容する部分である。第二収容部122は、
図4に示すように、接続方向Xに延びる筒状に形成されている。第二収容部122は、後側X2に開口する筒部1221と、筒部1221の前側X1に取り付けられ、上述した相手ハウジング21の被嵌合部212に嵌合する嵌合部1222と、を備えている。
【0035】
筒部1221は、円筒状に形成されている。筒部1221の後側X2の端部は、キャップ13を設置する設置部1221aを構成し、上述した第一収容部121の後側X2の端部よりも後側X2に位置している。筒部1221の内方は、ハウジング12の外部から上述の第一ボルト5(ボルト締結による用いるボルト)にアクセス可能な長円形状の作業孔1221b(孔部)を構成している。すなわち、ハウジング12には、ハウジング12内方にアクセス可能な作業孔1221bを備える筒部1221が形成されている。
【0036】
作業孔1221bの内部には、
図5に示すように、上下方向Zに延びる仕切板1221cが設置され、この仕切板1221cで仕切られた筒部1221内のそれぞれに、ボルト締結された端子112及び相手端子22が配置されている。
【0037】
設置部1221aの外周面において下側Z2を向く部分は、上述した第一収容部121の台座部1212における湾曲部1212bと上下方向Zに間隔をあけて対向している。これにより、
図3に示すように、設置部1221aと湾曲部1212bとの間には、溝状の空間Sが形成されており、この空間Sには、後述する第一シールドシェル15の規制部153が嵌め込まれる。また、
図5に示すように、設置部1221aの外周面には、作業孔1221bの径方向外方に開口する凹状の位置決め部1221dが形成されている。位置決め部1221dには、後述するキャップ13の爪部1331が係合して位置決めされる。
【0038】
筒部1221の前側X1の端部の外周面には、
図2に示すように、環状の第三パッキンP3が装着されている。筒部1221における第三パッキンP3が装着された部分は、嵌合部1222とともに相手ハウジング21の取付部211内に挿入される。この状態では、ハウジング12と相手ハウジング21との間が第三パッキンP3により封止され、液体又は固体等がハウジング12及び相手ハウジング21内に侵入することが防止されている。
【0039】
嵌合部1222は、
図2に示すように、上述した相手ハウジング21における取付部211の内壁面に嵌合する第一嵌合部1222aと、上述した相手端子22の基端部2221を接続方向Xに挿通させて保持する保持部1222bと、を備えている。第一嵌合部1222aは、筒状に形成され、筒部1221の前側X1の端部に取り付けられている。保持部1222bは、第一嵌合部1222aよりも小径な筒状に形成され、第一嵌合部1222aの中央部に挿通し、前側X1に延びている。
【0040】
キャップ13は、設置部1221a(筒部1221)に嵌め込まれて作業孔1221bを閉塞する栓部材である。
図2に示すように、キャップ13は、作業孔1221b内に収容される筒状の挿入部131と、挿入部131の後側X2の端部開口を閉じる蓋部132と、蓋部132の径方向外方に拡がるフランジ部133と、を備えている。
【0041】
挿入部131は、その外径寸法が、作業孔1221bの内径寸法よりもやや小さくなるように設定されている。挿入部131の外周面には、環状のシール部材14が装着されている。シール部材14の詳細は後述する。蓋部132は、挿入部131の上端を閉塞するよう略長円形に形成されている。
【0042】
フランジ部133は、その外形寸法が、設置部1221aの外径寸法と略同じになるように設定されており、キャップ13の装着時には、前側X1の壁面が設置部1221aに当接する。フランジ部133の上側Z1及び下側Z2の縁部には、接続方向Xに垂下する爪部1331がそれぞれ形成されている。爪部1331は、キャップ13がハウジング12に設置される際に、上述の位置決め部1221dに係合する。これにより、キャップ13の位置決め部1221dに対する位置ずれが抑制される。
【0043】
シール部材14は、キャップ13の外面と設置部1221aの内面との間に介在してその部分を封止する部材である。シール部材14は、例えば、弾性の樹脂材料で構成されるパッキンでもよい。シール部材14は、
図3に示すように、キャップ13の挿入部131の外周面を周方向に囲んで装着される。シール部材14の前側X1の端部は、その肉厚(上下方向Zの寸法)が、挿入部131の外周面(外面)と作業孔1221bの内周面(内面)との間の径方向寸法よりも大きな肉厚部141を構成している。
【0044】
これにより、シール部材14を装着した状態のキャップ13を作業孔1221bに嵌め込むと、挿入部131の外周面(キャップ13の外面)と、作業孔1221bの内周面(設置部1221aの内面)と、の間にシール部材14が介在することとなる。この際、肉厚部141が作業孔1221bの径方向内方に変形するとともに、変形前の状態に復元しようとする反発力によって、設置部1221aを作業孔1221bの径方向外方に押圧する。すなわち、シール部材14が設置部1221aを、設置部1221aの外方である反発方向に押圧する。
【0045】
第一シールドシェル15は、上述した電線111や端部シールド部17と導通可能なシールド部材である。第一シールドシェル15は、導電性の金属板をプレス加工等することで、設置部1221aの外周面(外面)及びキャップ13を覆う形状に形成されている。具体的には、第一シールドシェル15は、
図6(A)に示すように、キャップ13の蓋部132と接続方向Xに対向する平面部151と、平面部151の上側Z1の縁部から前側X1に延びるカバー部152と、平面部151の下側Z2の縁部から前側X1に延びる規制部153と、を備えている。
【0046】
平面部151は、キャップ13の蓋部132と略同形状になるよう、円板状に形成されている。カバー部152は、上述したハウジング12の第二収容部122における上側Z1の外周面を覆うように、第二収容部122に沿って略筒状に形成されている。
【0047】
規制部153は、上述した設置部1221aと湾曲部1212bとの間の空間Sに嵌合する部分であり、平面部151の下側Z2の縁部に沿って形成されている。空間Sに嵌合した状態の規制部153は、
図3に示すように、設置部1221aを介してシール部材14と、作業孔1221bの径方向に対向している。これにより、設置部1221aが上述した反発方向に変形しようとしても、規制部153に当接することでその変形が規制されることとなっている。すなわち、規制部153(第一シールドシェル15)は、設置部1221aが反発方向に変形することを規制している。
【0048】
第二シールドシェル16は、第一シールドシェル15全体と、ハウジング12と、を覆うシールド部材であり、導電性の金属板をプレス加工等することで略箱状に形成されている。第二シールドシェル16は、
図7(A)に示すように、第一シールドシェル15の平面部151及びハウジング12の第一収容部121における台座部1212を覆う平板部161と、平板部161の左側Y1、上側Z1、及び右側Y2の縁部から前側X1に延びる側壁部162と、を備えている。
【0049】
第二シールドシェル16は、
図7(B)に示すように、ハウジング12に対して後側X2から前側X1に被せられる。これにより、ハウジング12の一部(例えば、第一収容部121の下側Z2の端部)を除き、第一シールドシェル15の外面全体とハウジング12が第二シールドシェル16に覆われることとなる。すなわち、第二シールドシェル16は、第一シールドシェル15の全面を含んでハウジング12の少なくとも一部を覆っている。
【0050】
ハウジング12を覆った第二シールドシェル16は、
図1に示すように、2個の第二ボルト6によってハウジング12に固定される。この第二ボルト6は、上述した端部シールド部17の延出部173を固定する際の第二ボルト6と同じボルトである。上述のとおり、第二ボルト6は導電性を有することから、第二ボルト6による固定によって、電線111、端部シールド部17、及び第二シールドシェル16が導通する。
【0051】
また、ハウジング12を覆った第二シールドシェル16は、2個の第二ボルト6の間に配置される第三ボルト7によって第一収容部121に固定される。この際、
図2に示すように、第二シールドシェル16の平板部161と、第一シールドシェル15の平面部151とが接触し、導通する。したがって、電線111、端部シールド部17、第一シールドシェル15、及び第二シールドシェル16は、全て導通することとなる。
【0052】
次に、コネクタ1の組み立てについて説明する。
図4に示すように、まず、端部シールド部17を設置した状態のハウジング12を用意し、相手端子22の接続部222と、端子付き電線11と、をハウジング12内に配置する。具体的には、先ず接続部222を第二収容部122の筒部1221に挿入する。この際、筒部1221の前側X1の端部に取り付けられた保持部1222bに接続部222が挿通するようにし、保持部1222bによって接続部222を保持する。
【0053】
次に、端子付き電線11を第一収容部121内部に配置する。この際、端子付き電線11の電線111における端子112と反対側の端部に第一パッキンP1及びリアホルダ1211を設置し、この状態で、第二収容部122の作業孔1221bを介して、電線111を第一収容部121内部に侵入させる。そして、この状態の電線111を、上側Z1から下側Z2に向かって挿入していく。
【0054】
次に、相手端子22の接続部222と、端子112と、を接続する。この際、
図2に示すように、接続部222の接続孔222aと、端子112の接続孔112aと、が同軸となるように相手端子22の位置と端子112の位置とを合わせ、接続孔222a、112aに第一ボルト5を挿通させ、ナット部4に締結する。このようにして、
図5に示すように、ハウジング12に対する相手端子22の接続部222と、端子付き電線11と、の配置が完了する。
【0055】
次に、筒部1221の設置部1221aにキャップ13を設置する。ここでは、シール部材14が装着されたキャップ13を設置部1221aに嵌め込み、作業孔1221bを閉塞する。この際、
図5に示すように、キャップ13の爪部1331の位置と、筒部1221の位置決め部1221dの位置、とを合わせた状態で、キャップ13を、前側X1に向かって移動させ、設置部1221aに嵌合させる。これにより、キャップ13が筒部1221に固定され、キャップ13の設置部1221aへの設置が完了する。
【0056】
次に、第一シールドシェル15を装着する。
図6(A)に示すように、第一シールドシェル15の平面部151がキャップ13の蓋部132と接続方向Xに対向する位置に第一シールドシェル15をセットし、この第一シールドシェル15を後側X2から前側X1に向かってハウジング12に被せる。この際、第一シールドシェル15の規制部153が上述した設置部1221aと湾曲部1212bとの間の空間Sに嵌合する。これにより、
図6(B)に示すように、第一シールドシェル15のハウジング12への装着が完了する。
【0057】
なお、キャップ13が設置されると、シール部材14における肉厚部141が、上述したとおり反発力によって設置部1221aを反発方向に押圧する。しかしながら、押圧された設置部1221aが反発方向に変形しようとしても、空間Sに嵌合した規制部153に当接することでその変形は規制される。
【0058】
次に、第二シールドシェル16を装着する。
図7(A)に示すように、第二シールドシェル16の平板部161が第一シールドシェル15の平面部151と接続方向Xに対向する位置に第二シールドシェル16をセットする。そして、この第二シールドシェル16を、後側X2から前側X1に向かってハウジング12に被せる。そして、2個の第二ボルト6と1個の第三ボルト7とを用いて、第二シールドシェル16をハウジング12に固定する。
【0059】
この際、第二ボルト6は、端部シールド部17の延出部173も併せてハウジング12に固定することとなっており、これによって、端部シールド部17及び第二シールドシェル16が導通する。また、これらと電線111とが端部シールド部17を介して導通する。また、第二ボルト6及び第三ボルト7で第二シールドシェル16を固定する際には、
図3に示すように、第二シールドシェル16の平板部161と、第一シールドシェル15の平面部151と、が接触する。これにより、第一シールドシェル15と第二シールドシェル16とが導通する。以上で、コネクタ1の組み立てが完了する。
【0060】
以上、上述した実施形態によれば、コネクタ1は、端子付き電線11を収容するハウジング12と、ハウジング12に形成される筒部1221であってハウジング12内方にアクセス可能な作業孔1221b(孔部)を備える筒部1221と、作業孔1221bを閉塞するように筒部1221に嵌め込まれるキャップ13(栓部材)と、キャップ13の外面と筒部1221の内面との間に介在し、筒部1221を、筒部1221の外方である反発方向に押圧するシール部材14と、筒部1221を介してシール部材14と対向する規制部153を有し規制部153によって筒部1221の反発方向への変形を規制する第一シールドシェル15と、第一シールドシェル15を含んでハウジング12の少なくとも一部を覆う第二シールドシェル16と、を備える。
【0061】
このような実施形態によれば、第一シールドシェル15の規制部153が、キャップ13を嵌め込む筒部1221を介してシール部材14と対向している。このため、キャップ13で筒部1221を塞いだ場合、シール部材14の押圧により筒部1221が反発方向に変形しようとしても、規制部153に当接することによりその変形が抑制される。このため、キャップ13とハウジング12との間に隙間が生じ難く、キャップ13とハウジング12とのラップ量が低下することを抑制することができる。したがって、シール部材14によるシール性能を向上し、コネクタ1の防水機能を向上させることができる。
【0062】
また、第二シールドシェル16が、第一シールドシェル15を含んでハウジング12の少なくとも一部を覆うため、少なくとも2個のシールドシェルによってハウジング12を覆うことができ、ハウジング12の強度を向上することができる。これにより、コネクタ1に対してハウジング12の外部から衝撃が加わった場合にも、衝撃による影響を少なくすることができ、ハウジング12内の部品の損傷を防止することができる。したがって、防水性能及び衝撃耐性を向上させたコネクタ1を得ることができる。
【0063】
また、上記実施形態によれば、作業孔1221bを通してハウジング12内のボルト締結された端子112及び相手端子22にアクセスすることができる。そして、この作業孔1221bをキャップ13で塞いだ場合に、上述のラップ量の低下を抑制することができる。そして、この構成によれば、作業孔1221bの周辺を第一シールドシェル15と第二シールドシェル16とで覆うことができるので、特に、コネクタ1における作業孔1221bの周辺の衝撃耐性を向上させることができる。
【0064】
また、本構成によれば、筒部1221内に複数の端子112を収容することができる。このため、作業孔1221b内にボルト締結された端子112及び相手端子22が複数組配置されるタイプのコネクタについて、防水性能及び衝撃耐性を向上させることができる。
【0065】
以上、コネクタ1の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、本実施形態では、ハウジング12の第一収容部121及び第二収容部122は、それぞれ2連筒状に形成し、複数の端子112及び相手端子22を収容可能とした。しかしながら、ハウジング12の形状はこれに限らない。すなわち、ハウジング12は、2以上の筒で構成される第一収容部及び第二収容部を備えていてもよいし、逆に、1つの筒で構成される第一収容部及び第二収容部としてもよい。そして、これに合わせ、端子112及び相手端子22の数を調整してよい。
【0067】
また、本実施形態では、孔部を作業孔1221bとし、その周辺の構成(筒部1221の設置部1221a等)を変形しにくくした。しかしながら、孔部は作業孔1221bに限らず、ハウジング12に形成される孔で、シール部材14を装着したキャップ13が設置される孔であれば、どんな孔であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 コネクタ
11 端子付き電線
12 ハウジング
1221 筒部
1221b 作業孔(孔部)
13 キャップ(栓部材)
14 シール部材
15 第一シールドシェル
153 規制部
16 第二シールドシェル