(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010387
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】気泡管及び水準器
(51)【国際特許分類】
G01C 9/36 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01C9/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111701
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】591006634
【氏名又は名称】株式会社エビス
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 清
(57)【要約】
【課題】気泡の位置が確認し易い気泡管及び水準器を提供することを目的とする。
【解決手段】着色された液体2と気泡3とが封入され、前記気泡3の位置により被測定物の水平度や鉛直度を測定することができる気泡管であって、前記液体2及び前記気泡3が封入される本体1は、透明な天面部4と、前記液体2と異なる色に着色された底面部5を有する構成であり、また、前記気泡3は、前記被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置となる前記本体1の中央に位置した状態において、前記天面部4及び前記底面部5の両方に接触する大きさに設定されている気泡管。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された液体と気泡とが封入され、前記気泡の位置により被測定物の水平度や鉛直度を測定することができる気泡管であって、前記液体及び前記気泡が封入される本体は、透明な天面部と、前記液体と異なる色に着色された底面部を有する構成であり、また、前記気泡は、前記被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置となる前記本体の中央に位置した状態において、前記天面部及び前記底面部の両方に接触する大きさに設定されていることを特徴とする気泡管。
【請求項2】
請求項1記載の気泡管において、前記本体は、所定高さを有する円盤状体であり、前記天面部に前記被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置表示部が設けられていることを特徴とする気泡管。
【請求項3】
請求項1記載の気泡管において、前記気泡は、前記本体の中央に位置し前記天面部及び前記底面部の両方に接触した状態において、前記天面部との接触面積が前記底面部との接触面積よりも大きいことを特徴とする気泡管。
【請求項4】
請求項2記載の気泡管において、前記気泡は、前記本体の中央に位置し前記天面部及び前記底面部の両方に接触した状態において、前記天面部との接触面積が前記底面部との接触面積よりも大きいことを特徴とする気泡管。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の気泡管において、前記気泡は、前記本体の中央に位置し前記天面部及び前記底面部の両方に接触した状態において、前記天面部に接触している接触面の直径が該天面部の直径の40%以上となる大きさに設定されていることを特徴とする気泡管。
【請求項6】
請求項1~4いずれか1項に記載の気泡管を備えることを特徴とする水準器。
【請求項7】
請求項5記載の気泡管を備えることを特徴とする水準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡管及びこの気泡管を備えた水準器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電柱や道路標識等の柱状体を立設する場合、正確な鉛直状態に立設することが要求されるため、作業者は、例えば、特許文献1~3に示すような水準器を用いて、柱状体の鉛直状態を確認しながら作業を行っている。
【0003】
これらの水準器は、柱状体表面に当接させるV字状当接面と、
図8に示すような、平面視円形の気泡管本体31内に、着色(例えば黄色)された液体32と気泡33とが封入され、水平状態又は鉛直状態において、気泡管本体31の表面中央に設けられた基準円36内に気泡33が位置するように構成される円形気泡管38とを備え、水準器を所定の姿勢にしてV字状当接面を柱状体表面に当接させ、上方から円形気泡管38を覗き込み、気泡33の位置が基準円36内か否かを確認することで柱状体が鉛直状態であるか否かを確認することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57-118319号公報
【特許文献2】実開昭60-179812号公報
【特許文献3】実開平2-79415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の円形気泡管38は、気泡33の大きさが直径5mm程度に設定されているものが多い。
【0006】
しかしながら、電柱や道路標識の立設作業は基本的に屋外で行われるため、前記のように構成される従来の円形気泡管38では、晴天時の作業において、太陽光の影響(反射など)で気泡33(気泡の輪郭)の位置が確認し難くなることがある。
【0007】
これは、気泡33が小さいため、気泡管本体31の天面34には接触するが底面35には接触せず、したがって、気泡33を良好且つ明確に視認し難いからである。具体的には、無色透明な気泡33に着色された液体32の色が反映するため、気泡33がくっきりと見えないからである。
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、太陽光の影響下でも気泡の位置が確認し易い気泡管及びこの気泡管を備える水準器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
着色された液体2と気泡3とが封入され、前記気泡3の位置により被測定物の水平度や鉛直度を測定することができる気泡管であって、前記液体2及び前記気泡3が封入される本体1は、透明な天面部4と、前記液体2と異なる色に着色された底面部5を有する構成であり、また、前記気泡3は、前記被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置となる前記本体1の中央に位置した状態において、前記天面部4及び前記底面部5の両方に接触する大きさに設定されていることを特徴とする気泡管に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の気泡管において、前記本体1は、所定高さを有する円盤状体であり、前記天面部4に前記被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置表示部6が設けられていることを特徴とする気泡管に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の気泡管において、前記気泡3は、前記本体1の中央に位置し前記天面部4及び前記底面部5の両方に接触した状態において、前記天面部4との接触面積が前記底面部5との接触面積よりも大きいことを特徴とする気泡管に係るものである。
【0013】
また、請求項2記載の気泡管において、前記気泡3は、前記本体1の中央に位置し前記天面部4及び前記底面部5の両方に接触した状態において、前記天面部4との接触面積が前記底面部5との接触面積よりも大きいことを特徴とする気泡管に係るものである。
【0014】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の気泡管において、前記気泡3は、前記本体1の中央に位置し前記天面部4及び前記底面部5の両方に接触した状態において、前記天面部4に接触している接触面の直径が該天面部4の直径の40%以上となる大きさに設定されていることを特徴とする気泡管に係るものである。
【0015】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の気泡管8を備えることを特徴とする水準器に係るものである。
【0016】
また、請求項5記載の気泡管8を備えることを特徴とする水準器に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、気泡の位置が確認し易い気泡管及びこの気泡管を備える水準器となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の気泡管を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【
図2】本実施例の気泡管と従来の円形気泡管の比較写真であり、(a)は液体の色が黄色の従来の円形気泡管と比較した場合、(b)は液体の色がピンク色の従来の円形気泡管と比較した場合である。
【
図4】本実施例の気泡管取付部を示す説明断面図である。
【
図7】本実施例の使用状態を示す説明平面図である。
【
図8】従来の円形気泡管を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
本発明は、被測定物が水平状態または鉛直状態であることを示す基準位置、すなわち、本体1の中央に設けられた基準円6内に気泡3が位置した場合、この気泡3が天面部4及び底面部5の両方に接触した状態となり、この気泡3の接触している部分の底面部5が無色透明な気泡3により露出したような状態となる。
【0021】
ここで、本発明の底面部5は、液体2と異なる色に着色されているから、液体2とコントラストにより、気泡3を明確に視認でき、よって、気泡3の位置を従来よりも明確且つ容易に確認することができる(
図2参照)。
【0022】
したがって、晴天時の屋外作業に用いても、太陽光の影響(反射など)で気泡3(気泡の輪郭)の位置が確認し難くなることが可及的に防止され、スムーズに作業を行うことができる実用性に優れた画期的な気泡管及び水準器となる。
【実施例0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、気泡管8と、この気泡管8が設けられる水準器本体10とからなる電柱や道路標識等の柱状体Pの鉛直度の測定に好適な水準器である。
【0025】
具体的には、本実施例は、テーパー状の柱状体Pの測定に用いるテーパーポール用水準器に係るものである。
【0026】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0027】
気泡管8は、所定高さを有する円盤状体の本体1内に、着色された液体2と気泡3とが封入されてなる円形気泡管であり、前記気泡3の位置により柱状体Pの鉛直度を測定することができるように構成されているものである。
【0028】
具体的には、本体1は、透明な天面部4と、この本体1に封入される液体2と異なる色に着色された底面部5を有する構成であり、また、気泡3は、柱状体Pが鉛直状態であることを示す基準位置となる本体1の中央に位置した状態において、本体1の天面部4及び底面部5の両方に接触する大きさに設定されている。
【0029】
より具体的には、本体1は、
図1に示すように、扁平円筒形の円盤状体に形成され、天面部4の中央に、柱状体Pが鉛直状態であることを示す基準円6が設けられている。なお、この基準円6の大きさは、本体1内に封入される気泡3の大きさにより適宜変更可能なものである。
【0030】
また、天面部4は、
図1(b)に示すように、内面4aが凹湾曲面に形成され、また、底面部5は、白色に着色され、
図1(b)に示すように、天面部4の内面4aと対向する内面5aが周辺部から中央部に向かって緩やかに下っている傾斜面(緩やかなすり鉢状の面)に形成され、さらに、底面部5の中央には、液体2を注入するための注入孔5bと、この注入孔5bを閉塞する蓋部5cが設けられている。
【0031】
また、本体1内に封入される液体2には、石油系溶剤、具体的には、炭化水素系溶剤(本実施例では、合成イソパラフィン)が用いられている。
【0032】
具体的には、液体2は、白色に着色された底面部5と色合い的に明確に区別できる色、具体的には、赤色,ピンク色などの赤色系に着色されている。なお、液体2は、前記に限定されるものではなく、気泡管8が水準器としての機能を発揮できるものであれば適宜採用可能であり、また、液体2の色も、前記に限定されるものではなく、白色に着色された底面部5と色合い的に明確に区別でき、また、太陽光の影響下でも視認し易い色であれば適宜採用可能である。
【0033】
また、この液体2と共に本体1内に封入される気泡3は、
図8に示すような従来の円形気泡管38に封入される気泡33よりも大径な形状に形成され、
図1(b)に示すように、天面部4の中央に設けられた基準円6内に位置した状態において、天面部4及び底面部5の両方に接触するように構成され、具体的には、本実施例の気泡3は、常に(気泡管8内のいずれの位置において)天面部4及び底面部5の両方に接触しているように構成されている。
【0034】
また、気泡3は、本体1の中央に位置し天面部4及び底面部5の両方に接触した状態において、天面部4との接触面積が底面部5との接触面積よりも大きく、具体的には、本実施例の気泡3は、平面視における直径が天面部4の直径(空間部の内径)の40%以上(好適には40%~55%程度)となる大きさに設定され、また、本体1内で最も高さがある(天面部4と底面部5との間隔が最も広い)本体1の中央において、底面部5に対する接触面積が天面部4に対する接触面積の50%以上となる大きさに設定されている。
【0035】
すなわち、本実施例の気泡管8は、本体1内において気泡3が常に天面部4及び底面部5と接触し、しかも、気泡3の底面部5に対する接触面積が適度な大きさを有することで、気泡3の位置に白色に着色された底面部5が円形に露出したような状態となり、この白色円形部7を視認することで気泡3の位置を容易に確認することができるように構成されている。
【0036】
また、この気泡管8が設けられる水準器本体10は、
図3に示すように、ほぼ三角形状に形成された一対の側板部11と、この側板部11の上頂部間に架設される把持部12と、側板部11の左右の下頂部間にそれぞれ架設される架設部13とからなるものである。
【0037】
具体的には、側板部11は、
図3に示すように、左右の下頂部間の底辺部が上頂部側に凸となる円弧状に形成され、円柱(円筒)状の柱状体Pの測定時に底辺部が柱状体Pと干渉しないように構成されている。
【0038】
また、側板部11の一方には、気泡管8が設けられる気泡管取付部14が設けられており、具体的には、
図4に示すように、側板部11の上頂部に気泡管8が嵌入される凹部に形成され、さらに、凹部底面14aが所定角度で傾斜し、気泡管8が所定角度(例えば、勾配度換算で1/75,1/100,1/150など)で傾斜した状態で設けられるように構成されている。
【0039】
なお、本実施例は、一方の側板部11のみに気泡管取付部14を設けた構成であるが、両方の側板部11に気泡管取付部14を設けても良く、その場合、気泡管8を異なる傾斜角度で設けられるように凹部底面14aの角度を異なる角度に設定したり、一方の凹部底面14aを水平に設け、テーパーポールではない柱状体(ストレートポール)を測定することができるように構成しても良い。
【0040】
また、把持部12は、把持し易いように直径25mm~30mm程度、長さ100mm~150mm程度の円筒形(中空体)に形成されている。
【0041】
また、架設部13は、長手方向中央部に水準器本体10を柱状体Pに係止固定するための固定部材20(具体的には、固定バンド20)を掛止する掛止部15が設けられている。
【0042】
さらに、各架設部13は、
図5に示すように、柱状体Pに当接させる当接部の長手方向両端部にそれぞれ突起部16が設けられ、本実施例は、
図6,7に示すように、測定時、この各架設部13に2ずつ設けられた計4つの突起部16を柱状体Pに当接させて測定するように構成されている。すなわち、本実施例は、柱状体Pに対して、面や辺で当接せず、点で当接することで、水準器本体10が安定的に柱状体Pに当接し、精度良く測定できるように構成されている。
【0043】
なお、本実施例の架設部13は、水準器本体10の補強リブとしての効果も発揮する。
【0044】
また、本実施例のような従来の円形気泡管38の気泡33よりも大径な気泡3は、本体1への液体2の注入量を減らすことにより作製可能であり、以下に本実施例における気泡3の作製方法を説明する。
【0045】
本体1の底面部5を上側に配し、この底面部5の中央に設けられた注入孔5bを開口し、注入孔5b介して液体2を本体1内に所定量注入する。この注入量は従来の同型の円形気泡管における液体の注入量よりも少ない注入量であり、これにより本体1内において従来よりも大きな空隙部が形成された状態になる。
【0046】
続いて、注入孔5bに蓋部5cを嵌入し密栓して液体2を本体1に封入することで、前記空隙部により従来よりも大きな気泡3が形成されることとなる。
【0047】
なお、気泡3の大きさは、本体1の大きさ(容量や厚さ(高さ))を考慮し、適正な大きさとなるように適宜調整されるものである。
【0048】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0049】
本実施例は、気泡3が常に本体1の天面部4及び底面部5の両方に接触した状態にあり、この気泡3の天面部4及び底面部の両面への接触により、気泡3が接触する底面部5が無色透明な気泡3を介して露出したような状態となる。
【0050】
すなわち、従来の円形気泡管38は、
図2及び
図8に示すように、気泡33が小さいため、気泡33と底面部35との間に液体32が存在し、気泡管本体31全体が黄色味がかり、気泡33が確認し難いうえに、太陽光に反射し易く、晴天時の屋外作業においては使用し難い点があったが、本実施例は、この露出状態の底面部5が、
図1及び
図2に示すように、気泡3と同位置に白色円形部7として存在し、赤色系に着色された液体2と明確に区別できるから、この白色円形部7を視認することで気泡3の位置を容易に確認することができる。
【0051】
したがって、本実施例を晴天時の屋外作業に用いても、太陽光の影響(反射など)で気泡3(気泡の輪郭)の位置が確認し難くなることが可及的に防止され、スムーズに作業を行うことができることとなる。
【0052】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。