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特開2024-103900ハイサイド駆動回路及び電力供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103900
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ハイサイド駆動回路及び電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/32 20060101AFI20240726BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240726BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20240726BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240726BHJP
   H03K 17/567 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01H47/32 A
H02J1/00 309Q
H02H3/087
H03K17/08 Z
H03K17/567
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007848
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓介
【テーマコード(参考)】
5G004
5G057
5G165
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA04
5G057AA15
5G057BC04
5G057KK12
5G057KK32
5G057RS07
5G165BB04
5G165NA04
5G165NA10
5J055AX34
5J055AX53
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX13
5J055DX09
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY10
5J055FX05
5J055FX08
5J055FX13
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】駆動トランジスタの過電流を防止することが可能なハイサイド駆動回路を提供する。
【解決手段】負荷の高電位側に駆動トランジスタが設けられたハイサイド駆動回路であって、駆動トランジスタの出力端電圧に基づいて駆動トランジスタの出力電流を制限する電流リミット回路を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の高電位側に駆動トランジスタが設けられたハイサイド駆動回路であって、
前記駆動トランジスタの出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタの出力電流を制限する電流リミット回路を備えるハイサイド駆動回路。
【請求項2】
前記電流リミット回路は、前記出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタの制御電流を低下させることにより前記出力電流を制限する請求項1に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項3】
異常発生時に前記駆動トランジスタを非導通状態に保持する自己保護回路をさらに備える請求項1又は2に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項4】
前記自己保護回路は、前記出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタを非導通状態に保持する請求項3に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のハイサイド駆動回路と、
直流電源と、
前記ハイサイド駆動回路の入力端と前記直流電源との間に設けられたヒューズと、
前記ハイサイド駆動回路の出力端から供給される駆動電流に基づいて開閉するリレーとを備え、
前記リレーを介して前記直流電源の直流電力を負荷に給電する電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイサイド駆動回路及び電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リレー駆動回路が開示されている。このリレー駆動回路は、電源とリレー(負荷)との間に設けられるリレー駆動トランジスタを備え、当該リレー駆動トランジスタをON状態又はOFF状態に切替えることによってリレーを開閉駆動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63-99735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記リレー駆動回路は、リレー(負荷)の電源側(高電位側、ハイサイド)にリレー駆動用トランジスタ(駆動トランジスタ)が設けられたハイサイド駆動回路である。負荷の駆動回路には、このようなハイサイド駆動回路の他に、負荷の低電位側(ローサイド)に駆動トランジスタが設けられたローサイド駆動回路や負荷の両側に駆動トランジスタが設けられた両サイド駆動回路が周知である。
【0005】
上記リレー駆動回路(ハイサイド駆動回路)は、リレー駆動用トランジスタとリレーとの接続線つまりリレー駆動用トランジスタの出力端が地絡した場合、リレー駆動用トランジスタ(駆動トランジスタ)に過電流が通電され、当該リレー駆動用トランジスタが損傷する虞がある。また、リレー駆動用トランジスタと電源との間にヒューズを設けた場合には、ヒューズが溶断してしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、駆動トランジスタの過電流を防止することが可能なハイサイド駆動回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、ハイサイド駆動回路に係る解決手段として、負荷の高電位側に駆動トランジスタが設けられたハイサイド駆動回路であって、前記駆動トランジスタの出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタの出力電流を制限する電流リミット回路を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動トランジスタの過電流を防止することが可能なハイサイド駆動回路を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るハイサイド駆動回路の構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係るハイサイド駆動回路の動作を示す第1のタイミングチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るハイサイド駆動回路の動作を示す第2のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るハイサイド駆動回路Aは、図1に示すように、駆動トランジスタ1、第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6、制御トランジスタ7、コンデンサ8、I/F回路9及びマイコン10を備えている。
【0011】
なお、これら構成要素のうち、第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6及び制御トランジスタ7は、本発明の電流リミット回路を構成している。すなわち、第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6及び制御トランジスタ7は、駆動トランジスタ1の出力端における電圧(出力端電圧)に基づいて駆動トランジスタ1のゲート電流Ib(制御電流)を低下させることにより駆動トランジスタ1の出力電流を制限する電流リミット回路として機能する。
【0012】
また、これら第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6及び制御トランジスタ7は、本発明の自己保持回路をも構成している。すなわち、第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6及び制御トランジスタ7は、異常発生時に駆動トランジスタ1を非導通状態に保持する自己保持回路として機能する。
【0013】
このハイサイド駆動回路Aは、図示するようにヒューズFを介して入力端に直流電源Eから所定電圧(電源電圧)の直流電力が給電される。また、このハイサイド駆動回路Aは、出力端がワイヤーハーネスWを介してリレーRの第1制御端子P1に接続されている。ワイヤーハーネスWは、ハイサイド駆動回路Aの出力端とリレーRの第1制御端子P1とを接続する接続線であり、一端がハイサイド駆動回路Aの出力端に接続され、他端がリレーRの第1制御端子P1に接続されている。
【0014】
上記直流電源Eは、図示するようにプラス端子がヒューズFの一端に接続され、マイナス端子が接地されている。この直流電源Eは、電源電圧をヒューズFの一端に印加する。ヒューズFは、一端が直流電源Eのプラス端子に接続され、他端がハイサイド駆動回路Aの入力端及びリレーRの第1入出力端子P3に接続されている。
【0015】
このヒューズFは、直流電源Eからハイサイド駆動回路Aに給電される電源電流に対する安全装置である。すなわち、このヒューズFは、電源電流が所定の電流値を超えると溶断することによって直流電源Eとハイサイド駆動回路Aとの接続を遮断する。ヒューズFは、自身の溶断によって直流電源E及びハイサイド駆動回路Aの損傷を防止する。
【0016】
リレーRは、第1制御端子P1、第2制御端子P2、第1入出力端子P3及び第2入出力端子P4を備えている。このリレーRは、図示するように第1制御端子P1がワイヤーハーネスWを介してハイサイド駆動回路Aの出力端に接続され、第2制御端子P2が接地され、第1入出力端子P3がヒューズFの他端に接続され、また第2入出力端子P4が負荷Lの一端に接続されている。
【0017】
このリレーRは、ハイサイド駆動回路Aの出力端からワイヤーハーネスWを介して入力される駆動電流のON/OFFに基づいて開状態又は閉状態に設定される。すなわち、このリレーRは、ハイサイド駆動回路Aから駆動電流が入力されない状態では第1入出力端子P3と第2入出力端子P4とが開状態(非接続状態)となり、ハイサイド駆動回路Aから駆動電流が入力された状態では第1入出力端子P3と第2入出力端子P4とが閉状態(接続状態)となる。
【0018】
このようなリレーRは、開状態において直流電源Eと負荷Lとを非接続状態に設定し、閉状態において直流電源Eと負荷Lとを接続状態に設定する。すなわち、リレーRは、ハイサイド駆動回路Aから入力される駆動電流に基づいて負荷Lへの通電を操作する開閉装置である。
【0019】
負荷Lは、一端がリレーRの第2入出力端子P4に接続され、他端が接地されている。この負荷Lは、リレーRを介して直流電源Eから給電される直流電力によって所定の機能を発揮する。なお、この負荷Lは、様々な回路素子や電子回路を総称するものである。例えば、負荷Lは、コイル等の誘導性負荷、コンデンサ等の容量性負荷又は集積回路等である。
【0020】
駆動トランジスタ1は、図示するようにエミッタ端子、コレクタ端子及びゲート端子を備えるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である。この駆動トランジスタ1は、エミッタ端子がヒューズFの他端及び第1抵抗器2に接続されている。すなわち、駆動トランジスタ1のエミッタ端子は、ハイサイド駆動回路Aの入力端である。
【0021】
この駆動トランジスタ1は、コレクタ端子がワイヤーハーネスWの一端及び第3抵抗器4の一端に接続されている。すなわち、駆動トランジスタ1のコレクタ端子は、ハイサイド駆動回路Aの出力端である。また、駆動トランジスタ1は、ゲート端子が第1抵抗器2の他端及び第2抵抗器3の一端に接続されている。
【0022】
駆動トランジスタ1は、第1抵抗器2、第2抵抗器3及び制御トランジスタ7によってゲート端子に印加されるバイアス電圧に基づいてON/OFF動作する。この駆動トランジスタ1は、OFF状態(非導通状態)ではエミッタ端子とコレクタ端子との導通が遮断されるので、リレーRに駆動電流を出力しない。これに対して、駆動トランジスタ1は、ON状態(導通状態)ではエミッタ端子とコレクタ端子とが導通するので、リレーRに駆動電流を出力する。
【0023】
第1抵抗器2は、一端がヒューズFの他端及び駆動トランジスタ1のエミッタ端子に接続され、他端が駆動トランジスタ1のゲート端子及び第2抵抗器3の一端に接続されている。この第1抵抗器2は、所定の抵抗値(第1抵抗値)を有している。このような第1抵抗器2は、駆動トランジスタ1のバイアス抵抗器であり、電源電圧を第1抵抗値と第2抵抗器3の抵抗値(第2抵抗値)とで略分圧したバイアス電圧を駆動トランジスタ1のゲート端子に印加する。
【0024】
第2抵抗器3は、一端が駆動トランジスタ1のゲート端子及び第1抵抗器2の他端に接続され、他端が制御トランジスタ7のコレクタ端子に接続されている。この第2抵抗器3は、所定の抵抗値(第2抵抗値)を有している。この第2抵抗器3は、第1抵抗器2と同様に駆動トランジスタ1のバイアス抵抗器であり、電源電圧を第1抵抗値と第2抵抗値とで略分圧したバイアス電圧を駆動トランジスタ1のゲート端子に印加する。
【0025】
また、この第2抵抗器3には、駆動トランジスタ1のゲート電流Ib(制御電流)が制御トランジスタ7のコレクタ端子に向かって流れる。このゲート電流Ibは、電流増幅素子として機能する駆動トランジスタ1の出力電流を支配するものである。本実施形態における電流リミット回路は、駆動トランジスタ1の出力端電圧に基づいて制御トランジスタ7を制御することにより上記ゲート電流Ibを低下させ、以って駆動トランジスタ1の出力電流を制限する。
【0026】
第3抵抗器4は、駆動トランジスタ1のコレクタ端子及びワイヤーハーネスWの一端に接続されており、他端が第4抵抗器5の一端、コンデンサ8の一端及びI/F回路9の入力端に接続されている。この第3抵抗器4は、所定の抵抗値(第3抵抗値)を有しており、駆動トランジスタ1の出力電圧(コレクタ電圧)を駆動トランジスタ1のゲート端子にフィードバックするフィードバック抵抗器である。
【0027】
第4抵抗器5は、一端が第3抵抗器4の他端、コンデンサ8の一端及びI/F回路9の入力端に接続され、他端が制御トランジスタ7のゲート端子及び第5抵抗器6の一端に接続されている。この第4抵抗器5は、所定の抵抗値(第4抵抗値)を有している、第4抵抗器5の一端には、第3抵抗器4の他端からフィードバック電圧が印加される。
【0028】
また、第4抵抗器5の一端には、コンデンサ8を介してマイコン10の制御パルスの交流成分が印加される。このような第4抵抗器5は、制御トランジスタ7のバイアス抵抗器であり、フィードバック電圧と制御パルスの交流成分との合成電圧を第4抵抗値と第5抵抗器6の抵抗値(第6抵抗値)とで分圧した制御電圧を制御トランジスタ7のゲート端子に印加する。
【0029】
第5抵抗器6は、一端が制御トランジスタ7のゲート端子及び第4抵抗器5の他端に接続され、他端が接地されている。この第5抵抗器6は、所定の抵抗値(第5抵抗値)を有している。この第5抵抗器6は、第4抵抗器5と同様に制御トランジスタ7のバイアス抵抗器であり、フィードバック電圧を第4抵抗値と第5抵抗値とで分圧した分圧電圧を制御トランジスタ7のゲート端子に印加する。
【0030】
制御トランジスタ7は、駆動トランジスタ1と同様にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である。この制御トランジスタ7は、ゲート端子が第4抵抗器5の他端及び第5抵抗器6の一端に接続され、エミッタ端子が接地され、またコレクタ端子が第2抵抗器3の他端に接続されている。
【0031】
制御トランジスタ7は、ゲート端子に入力される分圧電圧に基づいてON/OFF動作することにより、駆動トランジスタ1のバイアス電圧を2値に切り替える。すなわち、制御トランジスタ7は、OFF状態(非導通状態)ではエミッタ端子とコレクタ端子との導通が遮断されるので、第2抵抗器3の他端を接地させない。これに対して、制御トランジスタ7は、ON状態(導通状態)ではエミッタ端子とコレクタ端子とが導通するので、第2抵抗器3の他端を接地させる。
【0032】
コンデンサ8は、一端がマイコン10の出力端に接続され、他端が第3抵抗器4の他端、第4抵抗器5の一端及びI/F回路9の入力端に接続されている。コンデンサ8は、所定の静電容量を有しており、マイコン10の出力端から一端に入力される制御パルスの交流成分のみを他端から第4抵抗器5の一端に出力するカップリングコンデンサである。
【0033】
I/F回路9は、入力端が第3抵抗器4の他端、第4抵抗器5の一端及びコンデンサ8の他端に接続され、出力端がマイコン10の入力端に接続されている。このI/F回路9は、入力端に入力されるフィードバック電圧と制御パルスの交流成分との合成電圧をバッファリングし、モニタ信号としてマイコン10に出力する。
【0034】
マイコン10は、出力端がコンデンサ8の一端に接続され、入力端がI/F回路9の出力端に接続されている。このマイコン10は、制御パルスを生成してコンデンサ8の一端に出力することにより駆動トランジスタ1の動作状態を制御するとともに、上記モニタ信号に基づいて駆動トランジスタ1の動作状態を監視する。
【0035】
このようなハイサイド駆動回路Aは、駆動トランジスタ1がリレーRを介して負荷Lの高電位側に設けられており、駆動トランジスタ1をON状態又はOFF状態に切替えることによってリレーRを開閉駆動する。ハイサイド駆動回路Aは、リレーRの開閉駆動によって負荷Lへの駆動電流の通電を調節する。
【0036】
また、このようなハイサイド駆動回路A、直流電源E、ヒューズF及びリレーRは本発明の電力供給装置を構成している。本実施形態に係る電力供給装置は、ハイサイド駆動回路Aによって駆動されるリレーRを介して直流電源Eの出力である直流電力を負荷Lに給電する。
【0037】
次に、本実施形態に係るハイサイド駆動回路Aの動作について、図2及び図3に示すタイミングチャートを参照して詳しく説明する。
【0038】
なお、これら図2及び図3では、図1に示したa~gの回路部位の電圧波形又は電流波形を波形a~gとして示している。すなわち、波形aはヒューズFを流れる電流波形であり、波形bはマイコン10の制御パルス電圧波形であり、波形cは第4抵抗器5の一端における電圧波形である。また、波形dは制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形であり、波形eは駆動トランジスタ1の出力電圧波形であり、波形fはリレーRの駆動電流波形であり、波形gはモニター電圧波形である。
【0039】
〔通常動作〕
図2(a)は、ハイサイド駆動回路Aの通常動作を示している。ハイサイド駆動回路Aの通常動作では、マイコン10は、波形bに示すようにLo状態とHi状態とを必要に応じて切り替える制御パルスを生成してコンデンサ8の一端に出力する。この場合、電源電圧波形(波形a)は、制御パルスに基づいて駆動トランジスタ1がON/OFF動作するために、駆動トランジスタ1のON/OFF動作に同期して若干変動する。
【0040】
また、第4抵抗器5の一端には、波形cで示すように、制御パルス電圧波形(波形b)の立上り及び立下りがオーバーシュートした電圧が印加される。このオーバーシュートは、コンデンサ8と第3抵抗器4、第4抵抗器5及び第5抵抗器6とから構成される微分回路の作用である。
【0041】
制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)は、制御トランジスタ7によって制御パルス(波形b)が位相反転した電圧波形である。また、駆動トランジスタ1の出力電圧波形(波形e)は、駆動トランジスタ1によってコレクタ電圧波形(波形d)が位相反転した電圧波形である。すなわち、ハイサイド駆動回路Aの出力波形は、制御パルス電圧波形(波形b)と同相のパルス波形である。
【0042】
また、リレーRの駆動電流波形(波形f)は、駆動トランジスタ1がON状態のときのみに駆動電流をリレーRに通電する波形である。モニター電圧波形(波形g)は、駆動トランジスタ1がON/OFF動作に同期して正常電圧範囲のモニター電圧がマイコン10に入力されることを示している。
【0043】
〔自己保護回路の異常検出動作〕
一方、ハイサイド駆動回路Aは、自己保護回路の故障を検出する場合、図2(b)に示すように動作する。この場合、マイコン10は、波形bに示すようにLo状態からHi状態に遷移するステップ信号をコンデンサ8の一端に出力する。
【0044】
このようなステップ信号に対して、ワイヤーハーネスWが地絡している場合には、駆動トランジスタ1のコレクタ端子が強制的に接地されるので、第4抵抗器5の一端における電圧波形(波形c)は、ステップ信号のHi状態を保持することができない。すなわち、電圧波形(波形c)は、ステップ信号の遷移点で電圧が一時的に上昇する波形となる。
【0045】
そして、制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)は、電圧波形(波形c)に基づいてステップ信号の遷移点で一時的にLo状態からHi状態に遷移し、速やかにLo状態に戻るパルス信号となる。そして、駆動トランジスタ1の出力電圧波形(波形e)は、駆動トランジスタ1によってコレクタ電圧波形(波形d)が位相反転した電圧波形となる。
【0046】
そして、リレーRの駆動電流波形(波形f)は、駆動トランジスタ1がON状態のときのみに駆動電流をリレーRに通電する波形となる。また、モニター電圧波形(波形g)は、第4抵抗器5の一端における電圧波形(波形c)と同様な波形となる。このモニター電圧波形(波形g)は、ステップ信号(波形b)とは明らかに異なる電圧波形である。マイコン10は、モニター電圧波形(波形g)のステップ信号(波形b)との相違に基づいて自己保護回路に故障が発生したと判定する。
【0047】
〔ワイヤーハーネスの異常検出動作〕
また、ハイサイド駆動回路AとリレーRとを接続するワイヤーハーネスWに地絡が発生した場合、ハイサイド駆動回路Aは、図3(a)に示すように動作する。なお、図3(a)において、時刻taはワイヤーハーネスWに地絡が発生した時刻である。
【0048】
すなわち、図3(a)は、波形bに示すようにマイコン10が制御パルスをLo状態からHi状態に切替え、ハイサイド駆動回路AからリレーRに駆動電流を通電している状態において、時刻taでワイヤーハーネスWに地絡が発生した場合の動作を示している。
【0049】
時刻taにおいてワイヤーハーネスWに地絡が発生すると、第4抵抗器5の一端における電圧波形(波形c)は、時刻ta以降においてHi状態を保持することができず、強制的にLo状態に遷移する。そして、制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)は、電圧波形(波形c)に同期して時刻taにおいてLo状態からHi状態に遷移する。
【0050】
ここで、ハイサイド駆動回路Aは、上述した自己保持回路を備えているので、制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)は、Hi状態に保持される。すなわち、ワイヤーハーネスWに地絡が発生すると、第3抵抗器4の一端は接地され、この結果フィードバック電圧は接地電位となる。
【0051】
この結果、第4抵抗器5の一端には、接地電位がフィードバック電圧として印加されることになる。このフィードバック電圧は、制御トランジスタ7のベース電位を接地電位に固定するもの、つまり制御トランジスタ7をOFF状態に保持し、この結果として駆動トランジスタ1をOFF状態に保持するものである。
【0052】
このような本実施形態に係るハイサイド駆動回路Aによれば、ワイヤーハーネスWの地絡発生時に駆動トランジスタ1をOFF状態に保持することができるので、駆動トランジスタ1がON状態を保持することにより異常発熱することを防止することができる。したがって、本実施形態によれば、駆動トランジスタ1の損傷を効果的に防止することができる。
【0053】
この結果、駆動トランジスタ1の出力電圧波形(波形e)は、制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)に同期して時刻taにおいてHi状態からLo状態に遷移する。そして、リレーRの駆動電流は、波形fに示すように駆動トランジスタ1の出力電圧波形(波形e)がHi状態からLo状態に遷移する際に一時的に電流値が上昇するものの、速やかにゼロとなる。
【0054】
ここで、上述した駆動電流の一時的な上昇は、リレーRが誘導性負荷であることに起因する。ハイサイド駆動回路Aは、上述した電流リミット回路を備えているので、駆動電流の一時的な上昇におけるピーク電流値Vaが駆動トランジスタ1の損傷電流以下又は/及びヒューズFの溶断電流値以下に抑制される。
【0055】
すなわち、本実施形態に係るハイサイド駆動回路Aによれば、ワイヤーハーネスWの地絡に起因する駆動トランジスタ1の過電流を防止することにより、駆動トランジスタ1の損傷を防止することができる。また、本実施形態によれば、ワイヤーハーネスWの地絡に起因するヒューズFの溶断をも防止することができるので、ワイヤーハーネスWの地絡解消後において速やかに作動を開始することが可能である。
【0056】
そして、モニター電圧波形(波形g)は、駆動トランジスタ1の出力電圧波形(波形e)と同様な波形となる。このモニター電圧波形(波形g)は、ステップ信号(波形b)とは明らかに異なる電圧波形である。マイコン10は、モニター電圧波形(波形g)のステップ信号(波形b)との相違に基づいてワイヤーハーネスWに地絡が発生したと判定する。
【0057】
〔コンデンサの異常検出動作〕
また、ハイサイド駆動回路Aは、コンデンサ8の故障を検出する場合、図3(b)に示すように動作する。図3(b)の波形bに示すようにマイコン10が制御パルスをLo状態からHi状態に切替えるた状態で、時刻tbにおいてコンデンサ8の両端がショートが発生すると、第4抵抗器5の一端における電圧波形(波形c)、制御トランジスタ7のコレクタ電圧波形(波形d)及びリレーRの駆動電流波形(波形f)は、特に異常を示さない。
【0058】
しかしながら、コンデンサ8の両端がショートすることによって、モニター電圧波形(波形g)は、時刻tb以降において通常電圧とは異なる電圧値となる。マイコン10は、モニター電圧波形(波形g)のステップ信号(波形b)との相違に基づいて自己保護回路に故障が発生したと判定する。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、第1抵抗器2、第2抵抗器3、第3抵抗器4、第4抵抗器5、第5抵抗器6及び制御トランジスタ7によって電流リミット回路及び自己保持回路を構成したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、電流リミット回路及び自己保持回路の構成には様々な変形例が考えられる。
【0060】
(2)上記実施形態では、リレーRを介して負荷Lを駆動したが、本発明はこれに限定されない。ハイサイド駆動回路の駆動対象はリレーRに限定されず、様々な回路素子や回路が考えられる。
【0061】
(3)上記実施形態では、マイコン10が生成した制御パルスを微分回路を介して制御トランジスタ7に入力させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御トランジスタ7のON状態からOFF状態への遷移及びOFF状態からON状態への遷移の高速化を図る必要がない場合には、微分回路を削除してもよい。
【0062】
(付記1)
負荷の高電位側に駆動トランジスタが設けられたハイサイド駆動回路であって、
前記駆動トランジスタの出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタの出力電流を制限する電流リミット回路を備えるハイサイド駆動回路。
【0063】
(付記2)
前記電流リミット回路は、前記出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタの制御電流を低下させることにより前記出力電流を制限する付記1に記載のハイサイド駆動回路。
【0064】
(付記3)
異常発生時に前記駆動トランジスタを非導通状態に保持する自己保護回路をさらに備える付記1又は2に記載のハイサイド駆動回路。
【0065】
(付記4)
前記自己保護回路は、前記出力端電圧に基づいて前記駆動トランジスタを非導通状態に保持することを特徴とする付記3に記載のハイサイド駆動回路。
【0066】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のハイサイド駆動回路と、
直流電源と、
前記ハイサイド駆動回路の入力端と前記直流電源との間に設けられたヒューズと、
前記ハイサイド駆動回路の出力端から供給される駆動電流に基づいて開閉するリレーとを備え、
前記リレーを介して前記直流電源の直流電力を負荷に給電する、という手段を採用する電力供給装置。
【符号の説明】
【0067】
A ハイサイド駆動回路
E 直流電源
F ヒューズ
L 負荷
R リレー
W ワイヤーハーネス
1 駆動トランジスタ
2 第1抵抗器
3 第2抵抗器
4 第3抵抗器
5 第4抵抗器
6 第5抵抗器
7 制御トランジスタ
8 コンデンサ
9 I/F回路
10 マイコン
図1
図2
図3