(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103906
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】厚さ測定装置、厚さ測定方法、及び構造体厚さ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
G01B15/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007859
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 知将
(72)【発明者】
【氏名】相浦 弘樹
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA28
2F067BB16
2F067DD01
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067LL16
(57)【要約】
【課題】被測定物を構成する複雑な形状の部位における厚さの変化、製造条件を考慮しつつ、測定対象の誤差を少なくして厚さの計測の精度を確保することのできる厚さ測定装置を提供する。
【解決手段】X線源部とX線検出部と演算する処理部とを備え、処理部は、第1部材の厚さと輝度吸収係数の第1部材関係性、第2部材の厚さと輝度吸収係数の第2部材関係性、第3部材の厚さと輝度吸収係数の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定部と、積層物における形状情報と姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得部と、照射X線強度と透過X線強度とを取得しX線透過撮影画像を生成する透過画像生成部と、X線透過撮影画像を構成する画素から組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成部と、組合せ画素情報、第1部材関係性、第3部材関係性から、第1部材の及び第3部材の厚さを特定し第2部材の厚さを算出する演算部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第3部材と、前記第1部材及び前記第3部材に挟まれる第2部材とからなる積層物の厚さ測定装置であって、
前記厚さ測定装置は、
前記積層物へX線を照射するX線源部と、
前記積層物を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記第2部材の厚さを演算する処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記第1部材の厚さ毎に変化する第1部材の厚さと前記第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、前記第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと前記第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、前記第3部材の厚さ毎に変化する第3部材の厚さと前記第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定部と、
前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の形状情報と、前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得部と、
前記X線源部から照射される照射X線強度と、前記積層物を透過して前記X線検出部により検出される前記積層物の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する透過画像生成部と、
前記X線透過撮影画像を構成する画素に、前記形状情報及び前記姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成部と、
前記組合せ画素情報と、前記第1部材関係性と、前記第3部材関係性から、前記第1部材及び前記第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して前記第1部材及び前記第3部材の各部位の厚さを特定し、前記第2部材の厚さを算出する演算部と、を備える
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項2】
前記第2部材関係性は、前記第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと前記第2部材の輝度吸収係数との間に成立する相関性に基づく所定の第2部材相関式として規定され、
前記第2部材相関式は、次の直線回帰の一次相関の式(i)として規定される請求項1に記載の厚さ測定装置。
【数1】
式中において、
μ
A2は第2部材の輝度吸収係数、
t
2は第2部材の厚さ、
aは一次相関の式の係数、
bは一次相関の式の定数である。
【請求項3】
前記演算部は、次の式(ii)を用いて前記第2部材の厚さを算出する請求項2に記載の厚さ測定装置。
【数2】
式中において、
Cは輝度、
C
0は背景の輝度、
μ
A1は第1部材の輝度吸収係数、
μ
A3は第3部材の輝度吸収係数、
t
1は第1部材の厚さ、
t
3は第3部材の厚さ、
aは第2部材の一次相関の式の係数、
bは第2部材の一次相関の式の定数である。
【請求項4】
前記関係性設定部は、
前記第1部材の厚さ毎及び前記X線源部からの距離毎に変化する第1部材の厚さと前記第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、
前記第2部材の厚さ毎及び前記X線源部からの距離毎に変化する第2部材の厚さと前記第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、
及び、前記第3部材の厚さ毎及び前記X線源部からの距離毎に変化する第3部材の厚さと前記第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性、を設定して取得する請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
前記形状情報には、前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の辺の長さの情報と辺同士の接合により生じる角度の情報が含まれる請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項6】
前記形状情報には、前記積層物の製造時における前記第1部材及び前記第3部材の変形量の情報が含まれる請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項7】
前記姿勢情報には、前記積層物を含む製品中における前記積層物の姿勢の情報が含まれる請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項8】
前記積層物において、前記第2部材は前記第1部材及び前記第3部材を接着する接着剤である請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項9】
前記第2部材の厚さの算出結果を出力する出力部が備えられる請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項10】
第1部材と、第3部材と、前記第1部材及び前記第3部材に挟まれる第2部材とからなる積層物の厚さ測定装置における厚さ測定方法であって、
前記厚さ測定装置は、
前記積層物へX線を照射するX線源部と、
前記積層物を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記第2部材の厚さを演算する処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記第1部材の厚さ毎に変化する第1部材の厚さと前記第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、前記第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと前記第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、前記第3部材の厚さ毎に変化する第3部材の厚さと前記第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定ステップと、
前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の形状情報と、前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得ステップと、
前記X線源部から照射される照射X線強度と、前記積層物を透過して前記X線検出部により検出される前記積層物の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する透過画像生成ステップと、
前記X線透過撮影画像を構成する画素に、前記形状情報及び前記姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成ステップと、
前記組合せ画素情報と、前記第1部材関係性と、前記第3部材関係性から、前記第1部材及び前記第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して前記第1部材及び前記第3部材の各部位の厚さを特定し、前記第2部材の厚さを算出する演算ステップと、を実行する
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項11】
第1部材と、第3部材と、前記第1部材及び前記第3部材に挟まれる第2部材とからなる積層物の厚さ測定装置における厚さ測定プログラムであって、
前記厚さ測定装置は、
前記積層物へX線を照射するX線源部と、
前記積層物を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記第2部材の厚さを演算する処理部と、を備え、
前記処理部に、
前記第1部材の厚さ毎に変化する第1部材の厚さと前記第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、前記第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと前記第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、前記第3部材の厚さ毎に変化する第3部材の厚さと前記第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定機能と、
前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の形状情報と、前記積層物における前記第1部材及び前記第3部材の姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得機能と、
前記X線源部から照射される照射X線強度と、前記積層物を透過して前記X線検出部により検出される前記積層物の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する透過画像生成機能と、
前記X線透過撮影画像を構成する画素に、前記形状情報及び前記姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成機能と、
前記組合せ画素情報と、前記第1部材関係性と、前記第3部材関係性から、前記第1部材及び前記第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して前記第1部材及び前記第3部材の各部位の厚さを特定し、前記第2部材の厚さを算出する演算機能と、を実現させる
ことを特徴とする厚さ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ測定装置、厚さ測定方法、及び構造体厚さ測定プログラムに関し、特にX線透過を利用して間に挟まれる部材の厚さについて構成する部材の厚さの変化も考慮して測定する厚さ測定装置、厚さ測定方法、及び厚さ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属等を材料とする複数の部品を接着剤により接合する際、塗布厚さが不均一となったり、接着剤が部品の接合部からはみ出したりする場合がある。接着剤が部品の接合部からはみ出すと、外観不良となり、塗布圧が不均一であると、接着強度不足が懸念される。
【0003】
従来、非破壊で接着厚さの検査を行う際、接着剤の部品の接合部からのはみ出しは目視、接着剤の範囲はX線二次元検査撮影、接着厚さはX線CTによってそれぞれ検査を行っていた。しかしながら、X線CTによる接着厚さの測定は時間と手間を要する。そこで、積層体に対するX線透過撮影の検査方法が提案されている(特許文献1等参照)。
【0004】
特許文献1によると、複層構造体の各部材の厚みの組み合わせとX線の透過濃度との関係を参照情報として有し、X線を照射して得られた複層構造体の透過濃度画像から前記参照情報に基づき各部材厚みの計測を行う各部材厚みのX線計測方法と装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、X線の吸収係数は部品、部材の厚さに左右されず一定である。つまり、X線吸収係数は材質により一定である。しかしながら、透過撮影画像の輝度をもとに厚み算出に用いる輝度吸収係数は、連続したスペクトルが対象物を透過する際の線質硬化の影響を内包するため、部材の厚さにより変化することが分かっている。そのため、ある任意の厚さの標準試験片により被測定物の厚さを算出すると、輝度吸収係数を算出した厚さ付近の厚さでは精度よく算出できる。これに対し、被測定物の厚さが標準試験片の厚さから乖離するほど計測(算出)の精度が低下する問題点がある。ここで、X線吸収係数によって吸収されるX線の強度と、輝度吸収係数によって減弱される輝度は等価である。前出のX線吸収係数と輝度吸収係数との関係については後述する。
【0007】
さらに、現実の製品の場合、同一の部材においても厚さが変化する複雑な形状であったり、プレス加工等を通じて部材に変形、歪み等が生じたりすることがある。このことから、現実の製造に用いられる部材形状、製造条件による変形等を考慮した厚さ測定が課題となっていた。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、被測定物を構成する複雑な形状の部位における厚さの変化、製造条件を考慮しつつ、測定対象の誤差を少なくして厚さの計測の精度を確保することのできる厚さ測定装置、厚さ測定方法、及び構造体厚さ測定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、実施形態は、第1部材と、第3部材と、第1部材及び第3部材に挟まれる第2部材とからなる積層物の厚さ測定装置であって、厚さ測定装置は、積層物へX線を照射するX線源部と、積層物を透過したX線を検出するX線検出部と、第2部材の厚さを演算する処理部とを備え、処理部は、第1部材の厚さ毎に変化する第1部材の厚さと第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、第3部材の厚さ毎に変化する第3部材の厚さと第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定部と、積層物における第1部材及び第3部材の形状情報と、積層物における第1部材及び第3部材の姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得部と、X線源部から照射される照射X線強度と、積層物を透過してX線検出部により検出される積層物の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する透過画像生成部と、X線透過撮影画像を構成する画素に、形状情報及び姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成部と、組合せ画素情報と、第1部材関係性と、第3部材関係性とから、第1部材の及び第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して第1部材及び第3部材の各部位の厚さを特定し、第2部材の厚さを算出する演算部とを備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、厚さ測定装置において、第2部材関係性は、第2部材の厚さ毎及びX線源部からの距離毎に変化する第2部材の厚さと第2部材の輝度吸収係数との間に成立する相関性に基づく所定の第2部材相関式として規定され、第2部材相関式は、次の直線回帰の一次相関の式(i)として規定されていてもよい。
【0011】
【0012】
式中において、
μA2は第2部材の輝度吸収係数、
t2は第2部材の厚さ、
aは一次相関の式の係数、
bは一次相関の式の定数である。
【0013】
さらに、厚さ測定装置において、演算部は、次の式(ii)を用いて第2部材の厚さを算出することとしてもよい。
【0014】
【0015】
式中において、
Cは輝度、
C0は背景の輝度、
μA1は第1部材の輝度吸収係数、
μA3は第3部材の輝度吸収係数、
t1は第1部材の厚さ、
t3は第3部材の厚さ、
aは一次相関の式の係数、
bは一次相関の式の定数である。
【0016】
さらに、厚さ測定装置の処理部において、関係性設定部は、第1部材の厚さ毎及びX線源部からの距離毎に変化する第1部材の厚さと第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、第2部材の厚さ毎及びX線源部からの距離毎に変化する第2部材の厚さと第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、第3部材の厚さ毎及びX線源部からの距離毎に変化する第3部材の厚さと第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得することとしてもよい。
【0017】
さらに、厚さ測定装置において、形状情報には、積層物における第1部材及び第3部材の辺の長さの情報と辺同士の接合により生じる角度の情報が含まれていてもよい。またさらに、厚さ測定装置において、形状情報には、積層物の製造時における第1部材及び第3部材の変形量の情報が含まれていてもよい。
【0018】
さらに、厚さ測定装置において、姿勢情報には、積層物を含む製品中における積層物の姿勢の情報が含まれていてもよい。
【0019】
さらに、積層物において、第2部材は第1部材及び第3部材を接着する接着剤であることとしてもよい。
【0020】
さらに、厚さ測定装置において、第2部材の厚さの算出結果を出力する出力部が備えられていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、第1部材と、第3部材と、第1部材及び第3部材に挟まれる第2部材とからなる積層物の厚さ測定装置であって、厚さ測定装置は、積層物へX線を照射するX線源部と、積層物を透過したX線を検出するX線検出部と、第2部材の厚さを演算する処理部とを備え、処理部は、第1部材の厚さ毎に変化する第1部材の厚さと第1部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、第2部材の厚さ毎に変化する第2部材の厚さと第2部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、第3部材の厚さ毎に変化する第3部材の厚さと第3部材の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する関係性設定部と、積層物における第1部材及び第3部材の形状情報と、積層物における第1部材及び第3部材の姿勢情報を取得する形状姿勢情報取得部と、X線源部から照射される照射X線強度と、積層物を透過してX線検出部により検出される積層物の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する透過画像生成部と、X線透過撮影画像を構成する画素に、形状情報及び姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する組合せ画素情報生成部と、組合せ画素情報と、第1部材関係性と、第3部材関係性とから、第1部材の及び第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して第1部材及び第3部材の各部位の厚さを特定し、第2部材の厚さを算出する演算部とを備えるため、被測定物を構成する複雑な形状の部位における厚さの変化、製造条件を考慮しつつ、測定対象の誤差を少なくして厚さの計測の精度を確保することができる。また、厚さ測定方法及び構造体厚さ測定プログラムにおいても同様の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の厚さ測定装置を示す概略構成図である。
【
図3】厚さ測定装置の構成と機能部を示すブロック図である。
【
図5】(A)X線強度と部材までの距離を示す第1模式図、(B)X線強度と部材までの距離を示す第2模式図である。
【
図6】(A)第1部材のX線強度と輝度吸収係数との関係を示す模式図、(B)第3部材のX線強度と輝度吸収係数との関係を示す模式図、(C)第2部材のX線強度と輝度吸収係数との関係を示す模式図である。
【
図7】(A)X線強度と輝度吸収係数との関係を示す第1模式図、(B)X線強度と輝度吸収係数との関係を示す第2模式図である。
【
図8】形状情報及び姿勢情報を説明するための模式図である。
【
図10】厚さ測定装置内の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1の概略構成図を用い、実施形態の厚さ測定装置1を説明する。厚さ測定装置1は、複数の部材が重なり合った積層物20に対し、X線を用いて内部の層の厚さを非破壊的に算出する装置である。図示の積層物20は、上から順に第1部材21、第2部材22、第3部材23より構成される。具体的には、厚さ測定装置1は、内部の層として、第1部材21と第3部材23の間に挟まれた第2部材22の厚さについて、切断等の破壊手段を用いることなく第2部材22の厚さを算出することができる。図示は模式的に層構造としており、実際には、複雑な形状のため、事実上の外観観察は不可能である。図示は装置の一例の開示である。各部材、装置の配置、向き等は適宜である。
【0024】
積層物20としては、所定の部材同士を接着剤等の樹脂素材により接合した形態が想定される。従って、第2部材22は第1部材21と第3部材23を接着する接着剤からなる層である。また、第1部材21と第3部材23は板金、ボルト、ナット、リベット、各種金属部品、または樹脂製部品等である。これらは接着剤である第2部材22を介して互いに接着される。そこで、第2部材22の接着剤からなる層について、その厚さの把握が構造強度、品質維持の観点から重要である。なお、第2部材22は、接着剤以外に、パッキン、ガスケット、樹脂製ワッシャ等であっても良い。特に実施形態の厚さ測定装置1は、部材内において厚さの異なる部位の存在する複雑な形状の第1部材21と第3部材23の場合、さらには、第1部材21または第3部材23に変形が生じる場合おいても、第2部材22の厚さの算出を可能とする。
【0025】
厚さ測定装置1の使用に際し、第1部材21、第2部材22、第3部材23より構成される積層物20は所定位置に配置される。積層物20の一方側(第1側)には当該積層物20へX線を照射するX線源部2が配置される。積層物20を挟んでX線源部2と対向する側(第2側)に積層物20を透過したX線を検出するX線検出部3が配置される。X線源部2とX線検出部3は、積層物20の中の第2部材22の厚さの算出を演算する処理部10(コンピュータ)に有線または無線により接続される。
【0026】
図2は積層物20の部分断面の模式図である。積層物20は上から順に第1部材21、第2部材22、第3部材23より構成される。図示の例では、第1部材21と第3部材23は、金属部材である。第1部材21と第3部材23は、例えば、鉄板、アルミニウム板、ステンレス鋼板材(SUS304等)、さらには樹脂の板材である。そして、第2部材22は、第1部材21と第3部材23を接着する接着剤の層である。第2部材22を構成する接着剤には、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、SBR樹脂系、シリコーン樹脂系等の公知の接着剤が使用される。図中、第1部材21の厚さはt
1、第2部材22の厚さはt
2、第3部材23の厚さはt
3である。ただし、図示から理解されるとおり、厚さt
1、t
2、t
3のいずれも一様な厚さではない。
【0027】
第2部材22は、第1部材21と第3部材23の圧着を受けるため、接着前に正確に接着後の第2部材22の層の厚さを予測することは容易ではない。そのため、一般には、複数製造された積層物20の中から所定数を抜き取り、裁断して断面から測定していた。そのため、必ずしも全数を測定することはできない。また、測定作業が煩雑であり作業負担が大きい。加えて、プレス加工等により積層物20を形成する際、部材への加圧から変形が生じ、加工の前後の変形も考慮する必要がある。そこで、実施形態の厚さ測定装置1は、第1部材21、第2部材22、及び第3部材23に関する既知の情報を加味しながら、測定により取得するX線強度により、第2部材22の厚さt2は場所毎に算出される。なお、第1部材21の厚さt1と第3部材23の厚さt3については、設計上、各部材の場所毎に寸法は既知である。
【0028】
図1に示されるX線源部2は、積層物20に対して照射するX線を発生させるX線発生装置であり、主に固定陽極X線管が用いられる。当該X線管の陽極にはターゲットとして、タングステン、モリブデン等の金属が使用される。発生させるX線量(エネルギー量)は、X線を透過させる金属板部材の厚さ、材質等により設定される。X線検出部3は、X線源部2から照射され、積層物20を透過したX線量、及びX線源部2からの照射線量を検出する。X線検出部3には、公知のX線用の検出装置が使用される。
【0029】
処理部10は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム等、種々の電子計算機(計算リソース)である。図示の処理部10はパーソナルコンピュータであり、演算結果の表示のためのディスプレイ16、その他、入力用のキーボード17、マウス18等が接続されている。
【0030】
図3は処理部10の構成と機能部を示すブロック図である。処理部10には、各種の演算実行のためのCPU11、処理用のプログラムを記憶するROM12、データ等の記憶のためのRAM13、各種のデータ及び演算結果等の記憶のための記憶部14、さらに、I/O(インプット・アウトプットインターフェース)15等が備えられる。I/O15は通信(送受信)用のインターフェース、バッファ等である。I/O15は、X線源部2への照射の制御信号の送信、X線検出部3等からの入力信号の受信等に用いられCPU11と連携する。
【0031】
さらに
図3のブロック図はCPU11内の機能部を示す。CPU11の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、CPU11は各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現する。詳細には、関係性設定部110、形状姿勢情報取得部120、透過画像生成部130、組合せ画素情報生成部140、演算部150、出力部160等を備える。
【0032】
関係性設定部110は、第1部材21の厚さ毎及びX線源部2からの距離毎に変化する第1部材21の厚さと第1部材21の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、第2部材22の厚さ毎及びX線源部2からの距離毎に変化する第2部材22の厚さと第2部材22の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、第3部材23の厚さ毎及びX線源部2からの距離毎に変化する第3部材23の厚さと第3部材23の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する。なお、第1部材関係性は第1部材21の厚さ毎の関係性、第2部材関係性は第2部材22の厚さ毎の関係性、第3部材関係性は第3部材23の厚さ毎の関係性として設定することができる。これは、X線源部と部材が極めて近い配置の場合、もしくは部材自体が極めて小型である場合、X線源部と部材との距離は一定とみなすことが可能である。従って、部材の厚さのみを関係性を求めるための条件とすることができる。
【0033】
輝度吸収係数については、物質の厚さによって変化する。しかし、この輝度吸収係数は、ある物質についての特定の厚さにおける測定から導き出された数値である。従前のX線を用いた非破壊の厚さ測定装置においては、単純に物質毎に所定の輝度吸収係数を用い、被検査物に含まれる層の厚さを算出していた。
【0034】
ところが、
図4の模式図のように、厳密には、物質の厚さ(板厚)(横軸)が増減すると、物質の種類によっては、輝度吸収係数は右下がりの曲線のように変化してしまうことが判明した。なお図示とは異なり、物質の種類により、輝度吸収係数の曲線の傾き、右上がり等の変化は見られる。一般に、物質の厚さが増加(厚くなる)すると、算出される数値は実測よりも減少し、逆にある物質の厚さが減少(薄くなる)すると、算出される数値は実測よりも増加する。そのため、所定の厚さ(t
s:例えば厚さ2mm)の1点のみに基づく輝度吸収係数を利用すると、現実の非破壊検査の際の算出では、当然に所定の厚さ(t
s)以外の厚さであることから、算出と実測(正寸)との間の誤差が不可避であった。
【0035】
そこで、予め、計測対象について、厚さの異なる複数の試料が作成され、同時に各試料の輝度吸収係数が求められる。そこで、試料における厚さと輝度吸収係数の相関性に基づいて所定の関係性が設定される。
【0036】
また、X線源、計測対象、及びX線検出部の位置関係により、実際に検出される輝度吸収係数は変化する。位置関係の差異は
図5の模式図として示される。
図5では、X線源部2とX線検出部3の間に厚さの異なる計測対象w1またはw2が設置される。
【0037】
図5(A)のとおり、X線源部2から照射されるX線は放射状に拡散する。設置された計測対象w1を透過してX線検出部3により輝度吸収係数が計測、算出される場合、計測対象w1をX線が透過する部位によりX線の透過強度が変化する。照射線R1は最短距離で計測対象w1を透過してX線検出部3により検出される。これに対し、照射線R2、R3の順にX線検出部3に到達する距離が長くなる。そうすると、X線がX線源部2から照射されてX線検出部3に到達(検出)される距離により輝度吸収係数にも変化が生じる。
【0038】
さらに、
図5(B)は、同一材質としつつ、計測対象w1よりも厚さを厚くした計測対象w2を表している。この場合、計測対象w1と比較して、計測、算出される輝度吸収係数は変化する。
【0039】
従って、算出の前提として、
図4の模式図の曲線を考慮しつつ、
図5の線源から検出に至るまでの距離、同一部材のおける厚さの影響、さらには、積層物20を構成する部材のそれぞれに応じた輝度吸収係数の取得が必要である。
【0040】
そこで、実施形態の厚さ測定装置1では、積層物20を構成する第1部材21、第2部材22、及び第3部材23の全てについて、それぞれの厚さ毎の輝度吸収係数が予め取得される。さらに、厚さ測定の精度向上の観点から、積層物20を構成する第1部材21、第2部材22、及び第3部材23の全てについて、それぞれの厚さ毎の輝度吸収係数とX線源部からの距離毎の輝度吸収係数の両方が予め取得される。X線源部2とX線検出部3の配置は原則直線上に固定されており、個々の測定では、X線源部2から測定対象までは最短距離(直線上)に配置される。測定対象となる第1部材21等では、
図5のように、測定対象の中心部分、中心からずれた位置、部材の縁等の各部分の距離に応じての距離が求められる。
図6(A)では、縦軸に第1部材21の輝度吸収係数μ
A1(縦軸)と第1部材21の厚さt
1(横軸)が示され、距離毎の照射線R1,R2,R3に応じた厚さと輝度吸収係数の関係性が表される。
図6(B)でも、縦軸に第3部材23の輝度吸収係数μ
A3(縦軸)と第3部材23の厚さt
3(横軸)が示され、距離毎の照射線R1,R2,R3に応じた厚さと輝度吸収係数の関係性が表される。
【0041】
図6(C)でも、縦軸に第2部材22の輝度吸収係数μ
A2(縦軸)と第2部材22の厚さt
2(横軸)が示され、距離毎の照射線R1,R2,R3に応じた厚さと輝度吸収係数の関係性が表される。なお、第2部材22(接着剤等の樹脂素材)は、積層物20において加工後に厚さが変化するため、予め第1部材21及び第3部材23のように厚さを特定することができない。そこで、第2部材22(接着剤等の樹脂素材)については、距離毎の照射線R1,R2,R3に応じた各厚さの第2部材22の輝度吸収係数との間に成立する相関式が設定される。
【0042】
相関式については、一次関数、二次関数、べき関数、指数関数、対数関数等の相関性が認められる関数式が採用される。関数式の選択に際しては、第2部材22(接着剤等の樹脂素材)の材質、素材が考慮される。
【0043】
実施形態では、相関式は、直線回帰の一次相関の式(i)として規定される。式(i)は、
図6(C)の模式図のとおり、第2部材の複数の厚さの試料と、第2部材の複数の厚さの試料の輝度吸収係数から最小二乗法により算出され、設定される。一次相関の式とする場合、式中に含まれる係数、定数の個数が少なく、後述の関係式の設定は容易となる。
【0044】
式(i)において、μA2は第2部材の輝度吸収係数、t2は第2部材の厚さ、aは一次相関の式の係数、bは一次相関の式の定数である。なお、係数aと定数bについては、照射線の距離毎に応じて設定される。
【0045】
【0046】
ここで、
図7の模式図を用い、X線強度とX線吸収係数との関係について説明する。
図7(A)の第1模式図では、所定の部材(金属、樹脂等)について、厚さ(X透過距離):t、材質に基づくX線吸収係数:μ、そして、照射X線強度:I
0、及び透過X線強度:Iが求められたとする。すると、式(f1)の関係式が成立する。これより、厚さ:tについて導くと、式(f2)が成立する。式中の「ln」は自然対数である。
なお、X線吸収係数は輝度吸収係数に変換可能である(式(fc)参照)。式(fc)中、照射X線強度I
0は背景の輝度C
0、透過X線強度Iは輝度Cとして置換して、μ
Aは輝度吸収係数、tは厚さである。より詳しく説明すると、X線吸収係数によって吸収されるX線の強度と、輝度吸収係数によって減弱される輝度は等価である。そこで、X線強度のI及びI
0を、C及びC
0に置き換えることによりX線吸収係数を輝度吸収係数に読み替えることが可能である。また、撮影環境では連続したエネルギのスペクトルが生じる。このため、輝度吸収係数には板厚依存性がある。これに対し、エネルギ毎に固有の値を有するX線吸収係数は板厚依存性との関連を有さない。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
次に、
図7(B)の第2模式図では、複数の部材が重なった状態が示される。模式図は、実施形態の第1部材21、第2部材22、及び第3部材23からなる積層物20に対応する3層構造を想定している。図中、Iは透過X線強度(最終透過X線強度)、I
0は透過前のX線強度(照射X線強度)、I
1は第1部材透過後のX線強度、I
2は第2部材透過後のX線強度、μ
A1は第1部材の輝度吸収係数、μ
A2は第2部材の輝度吸収係数、μ
A3は第3部材の輝度吸収係数、t
1は第1部材の厚さ、t
2は第2部材の厚さ、t
3は第3部材の厚さである。なお、これらの記号は、後出の数式においても共通としている。
【0051】
前出の式(f1)に倣って第2模式図の3層構造の関係式を構築すると、式(f3)が成立する。そして、式(f4)のとおり変形することができる。式(f4)の上3段の式では、式(f1)から式(f3)まで拡張する様子の式が示され、続いて両辺はC0で除され、最終的に自然対数をとった式に変形される。こうして、(f5)のt2の式として中間に存在する部材(層)の厚さを求めることができる。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
式(f5)より第1部材21と第3部材23に挟まれた第2部材22の厚さt
2は算出可能である。しかしながら、前掲の
図4の説明のとおり、式(f5)の中の第2部材の輝度吸収係数のμ
A2をそのまま使用すると、測定対象の厚さいかんによって誤差が増大して非破壊検査の精度が低下する。
【0056】
そこで、厚さと輝度吸収係数の相関式、具体的には、前出の一次相関の式(i)が取り入れられる。結果、第2部材の輝度吸収係数のμA2は、一次相関の式(i)を通じて補正される。こうして、式(f6)を得ることができる。さらに、式(f6)において、t2(第2部材の厚さ)を解くことができ、式(ii)を得ることができる。
【0057】
【0058】
【0059】
図3に戻り、形状姿勢情報取得部120は、積層物20における第1部材21及び第3部材23の形状情報と、積層物20における第1部材21及び第3部材23の姿勢情報を取得する。
【0060】
第1部材21と第3部材23については、製品設計のCAD(Computer Aided Design)のデータから、部材の形状、寸法について形状情報として取得することができる。そこで、各部材に存在する厚さの異なる部位が判明する。さらに、同一の部材であっても向きにより、X線が透過、吸収される距離が変化し輝度吸収係数に影響するため、計測時の積層物20を含む製品中における積層物の姿勢の情報、第1部材21と第3部材23のX線の透過撮影時の向き、傾き等の姿勢についても姿勢情報として取得される。各部材の形状情報と姿勢情報の取得に際しては、CAD等の設計データから処理部10へ取り込まれる。
【0061】
図8は第1部材21及び第3部材23の形状情報と姿勢情報を説明するための模式図であり、第1部材21はX線源部2からのX線照射を検出するX線検出部3により撮影される撮影画像範囲40に設置されるイメージ像として表される。図中の矢印41はX線の透過撮影方向である。
【0062】
第1部材21及び第3部材23の形状情報(CAD等の設計データ)が投影されている。ここで、形状情報には、積層物20における第1部材21及び第3部材23の辺の長さの情報と辺同士の接合により生じる角度の情報が含まれる。第1部材21では、当該第1部材21を構成する辺の中から特徴となる辺が2つ抽出されている。図示では太線により表示される紙面横方向の稜線31と紙面奥行き方向の稜線32である。そして、稜線31と32により構成される角度も抽出される。
【0063】
製品となる積層物20における第1部材21辺の長さの情報(稜線)とその形成される角度から、形状情報を通じて第2部材22を介して接合される第3部材23の向き、姿勢も判明する。こうして、第3部材23もX線検出部3により撮影される撮影画像範囲40に設置されるイメージ像として表される。
【0064】
このように、第1部材21及び第3部材23について、両方ともX線検出部3により撮影される撮影画像範囲40が揃えられる。そこで、積層物20を含む製品中における積層物の姿勢の情報として姿勢情報が生成されて取得される。
【0065】
図8に開示の実施形態のように、第1部材21及び第3部材23はX線検出部3により撮影される撮影画像範囲40に設置されるイメージ像として表される。そこで、製品設計のCADの情報をさらに発展させてCAE(Computer aided engineerring)の情報が含められる。
【0066】
例えば、各部材に生じる応力変形、プレス加工等の製造時の押圧により、各部材の部位では厚さが変化することがある。そのため、予めCAEのシミュレーションの結果が変形量の情報に加えられて補正される。そうすると、部材の正確な厚さの把握が可能となり、輝度吸収係数の検出精度が高まる。
【0067】
透過画像生成部130は、X線源部2から照射される照射X線強度と、積層物20を透過してX線検出部3により検出される積層物20の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する。
【0068】
X線透過撮影画像は、実際にX線源部2からX線を照射して積層物20を透過してX線検出部3により検出された際の画像である。
【0069】
組合せ画素情報生成部140は、X線透過撮影画像を構成する画素に、形状情報及び姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する。
【0070】
演算部150は、組合せ画素情報と、第1部材関係性と、第3部材関係性から、第1部材及び第3部材の各部位の輝度吸収係数を算出して、第1部材及び第3部材の各部位の厚さを特定し、第2部材の厚さを算出する。
【0071】
図9の模式図は組合せ画素情報45を表している。実際の撮影のより得られたX線透過撮影画像に形状情報及び姿勢情報が組み合わせられる。図示の例では、第1部材21の投影画像イメージ21g、第3部材23の投影画像イメージ23gが組合せ画素情報45に含まれている。投影画像イメージ21gと23gより、部材の厚さが灰色の濃淡として表される。濃い灰色部分は部材の厚い部分であり、薄い灰色部分は部材の薄い部分である。また、基準となる稜線31と32も表示されている。
【0072】
さらに、組合せ画素情報45では、投影画像イメージ21gと23gにより形成される重なり部分を細分化して表示されるため、組合せ画素情報45は複数の画素46毎に分割される。前述のとおり、組合せ画素情報45は形状情報と姿勢情報を含むため、個々の画素46についてどの程度の部材の厚さであるか、部材の重なり量はどの程度であるか、個別に特定可能である。また、X線源部2と画素46との照射線の距離も特定される。
【0073】
個々の画素46について、それぞれX線源部2からの距離が考慮され、第1部材の厚さt1及び輝度吸収係数μA1と、第3部材23の厚さt3及び輝度吸収係数μA3が特定される。そして、個々の画素46のそれぞれにおける第2部材22の厚さの算出に際し、前出の直線回帰の一次相関の式(i)が適用される。
【0074】
そこで、式(f6)の第2部材22の輝度吸収係数μA2に、直線回帰の一次相関の式(i)のμA2が代入されて、第2部材22の輝度吸収係数μA2の補正が行われる。そして、第2部材22の厚さt2を算出するための式(ii)が得られ、算出に必要な各数値が入力される。こうして、個々の画素46のそれぞれにおける第2部材22の厚さt2は算出される。結果、組合せ画素情報45の第2部材22の存在する領域について、部分毎に細分化して厚さが算出される。
【0075】
出力部160は、積層物20における第2部材22の厚さt
2の算出結果(推定厚さ)を出力する。出力に当たっては、
図1のディスプレイ16への表示である。出力部160により第2部材22の厚さt
2の算出結果(推定厚さ)が出力されるため、逐次の推定の結果の把握が容易となる。表示としては、厚さ毎に色を変える等高線等の表示態様とすることができる。
【0076】
図10のフローチャートは処理部10(CPU11)における厚さ測定装置における厚さ測定方法の全体の流れであり、関係性設定ステップ(S110)、形状姿勢情報取得ステップ(S120)、透過画像生成ステップ(S130)、組合せ画素情報生成ステップ(S140)、演算ステップ(S150)、出力ステップ(S160)の各種ステップを備える。むろん、処理部10自体の可動に必要な各種ステップは当然に含まれる。
【0077】
図10のフローチャートは出力ステップ(S160)を含む構成としている。
図10の構成に代えて出力ステップ(S160)が省略される構成としてもよい。また、関係性設定ステップ(S110)と形状姿勢情報取得ステップ(S120)は、毎回の測定時に必ず実行する処理ではなく、いったん所定の設定が行われた後は、材質、設計変更等がない限り省略は可能である。
【0078】
関係性設定機能は、第1部材21の厚さ毎に変化する第1部材21の厚さと第1部材21の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第1部材関係性、第2部材22の厚さ毎に変化する第2部材22の厚さと第2部材22の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第2部材関係性、及び、第3部材23の厚さ毎に変化する第3部材23の厚さと第3部材23の輝度吸収係数との間に成立する関係性に基づく所定の第3部材関係性を設定して取得する(S110;関係性設定ステップ)。
【0079】
形状姿勢情報取得機能は、積層物20における第1部材21及び第3部材23の形状情報と、積層物20における第1部材21及び第3部材23の姿勢情報を取得する(S120;形状姿勢情報取得ステップ)。透過画像生成機能は、X線源部2から照射される照射X線強度と、積層物20を透過してX線検出部3により検出される積層物20の透過X線強度とを取得し、X線透過撮影画像を生成する(S130;透過画像生成ステップ)。組合せ画素情報生成機能は、X線透過撮影画像を構成する画素に、形状情報及び姿勢情報を組み合わせて組合せ画素情報を生成する(S140;組合せ画素情報生成ステップ)。
【0080】
演算機能は、組合せ画素情報と、第1部材関係性と、第3部材関係性から、第1部材21及び第3部材23の各部位の輝度吸収係数を算出して第1部材21及び第3部材23の各部位の厚さを特定し、第2部材22の厚さを算出する(S150;演算ステップ)。出力機能は、第2部材の厚さの算出結果を出力する(S150;出力ステップ)。
【0081】
上述した本発明のコンピュータプログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
【0082】
なお、上記コンピュータプログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装できる。
【符号の説明】
【0083】
1 厚さ測定装置
2 X線源部
3 X線検出部
10 処理部(コンピュータ)
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 記憶部
15 インプット・アウトプットインターフェース
16 ディスプレイ
17 キーボード
18 マウス
20 積層物
21 第1部材
22 第2部材
23 第3部材
31,32 稜線
40 撮影画像範囲
45 組合せ画素情報
46 画素
110 関係性設定部
120 形状姿勢情報取得部
130 透過画像生成部
140 組合せ画素情報生成部
150 演算部
160 出力部
μ X線吸収係数
μA1 第1部材の輝度吸収係数
μA2 第2部材の輝度吸収係数
μA3 第3部材の輝度吸収係数
t1 第1部材の厚さ
t2 第2部材の厚さ
t3 第3部材の厚さ
I 透過X線強度
I0 照射X線強度
C 輝度
C0 背景の輝度