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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103908
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007863
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】514029991
【氏名又は名称】ウツミ電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕
(72)【発明者】
【氏名】中塚 秀明
(72)【発明者】
【氏名】麻生 茂雄
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA01
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CD02
5H603CD05
5H603CE05
(57)【要約】
【課題】所望の出力を得ることができ、安定した性能を発揮することができるコイルを提供する。
【解決手段】 コイル1を構成するターンT1~T8は、両側帯部51及び52と、上帯部53及び下帯部54とを備える。両側帯部51及び52における平角導体3の外側面31はZ軸方向に対して正面33から背面34に向かって広がるように傾斜する。コイル1は、最初のターンT1の正面33を最も寸法が小さい上底面とし、最後のターンT8の背面34を最も寸法が大きい下底面とする四角錐台を形成する。平角導体3は、外側面31及び内側面32の軸方向の長さ寸法が、一方の端3aにおいて最も大きく、他方の端3bにおいて最も小さくなるように傾斜する。正面33及び背面34の横方向Xの長さ寸法が、一方の端3aにおいて最も小さく、他方の端3bにおいて最も大きくなるように傾斜する。両側帯部51及び52の横方向Xの断面積は等しい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に旋回された平角導体によってターンが形成され、複数のこれらターンによって螺旋構造を構成し、前記軸方向に直交する縦方向及び横方向を有するコイルであって、
前記平角導体は、一方の端から他方の端の間において連続して一体的に形成され、前記螺旋構造の外周を構成する外側面と、内周を構成する内側面と、前記軸方向の一方に位置する正面と、他方に位置する背面とを有し、
前記ターンは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に離間する両側帯部と、前記横方向に延びるとともに前記縦方向に離間する上帯部及び下帯部とを備え、前記両側帯部における前記平角導体の前記外側面は前記軸方向に対して前記正面から前記背面に向かって広がるように傾斜し、前記内側面は前記軸方向に平行であり、
複数の前記ターンにおいて前記両側帯部の前記横方向の断面積は等しく、前記上帯部及び前記下帯部の前記縦方向の断面積以下であり、
前記平角導体は、前記外側面及び前記内側面の前記軸方向の長さ寸法が、前記一方の端において最も大きく、前記他方の端において最も小さくなるように傾斜することを特徴とするコイル。
【請求項2】
複数の前記ターンは、前記一方の端に連続する最初のターンと、前記他方の端に連続する最後のターンとを有し、
複数の前記ターンの積層によりその中心に前記軸方向に延びる貫通孔を有するとともに、前記最初のターンを上底面及び前記最後のターンを下底面とする四角錐台を形成することを特徴とする請求項1記載のコイル。
【請求項3】
隣接する一方の前記ターンの前記背面の前記横方向の寸法よりも、他方の前記ターンの前記正面の前記横方向の寸法が大きいことを特徴とする請求項2記載のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ等の環状のステータコアから突出する複数のティースにそれぞれ装着されるコイルに関し、特にエッジワイズコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角導体を螺旋状に巻回したエッジワイズコイルが知られている。このようなエッジワイズコイルによれば、コアに対する占有率が向上し、モータ効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6841445号
【特許文献2】特許第4462896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2によれば、複数のコイル片の端部を互いに接合することにより、軸方向に巻回される螺旋状のコイルとしている。接合方法としては、溶接や圧接があげられる。このように複数のコイル片を接合することにより、接合部分に歪みが生じたり、断面積が初期設定と相違したりするという問題が生じる。接合部分に生じた歪みにより発生した抵抗や、接合部分における断面積の変化により、所望の出力を得ることができず安定したコイル性能を発揮することができない虞がある。
【0005】
この発明は、所望の出力を得ることができ、安定した性能を発揮することができるコイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、軸方向に旋回された平角導体によってターンが形成され、複数のこれらターンによって螺旋構造を構成し、前記軸方向に直交する縦方向及び横方向を有するコイルであって、前記平角導体は、一方の端から他方の端の間において連続して一体的に形成され、前記螺旋構造の外周を構成する外側面と、内周を構成する内側面と、前記軸方向の一方に位置する正面と、他方に位置する背面とを有し、前記ターンは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に離間する両側帯部と、前記横方向に延びるとともに前記縦方向に離間する上帯部及び下帯部とを備え、前記両側帯部における前記平角導体の前記外側面は前記軸方向に対して前記正面から前記背面に向かって広がるように傾斜し、前記内側面は前記軸方向に平行であり、複数の前記ターンにおいて前記両側帯部の前記横方向の断面積は等しく、前記上帯部及び前記下帯部の前記縦方向の断面積以下であり、前記平角導体は、前記外側面及び前記内側面の前記軸方向の長さ寸法が、前記一方の端において最も大きく、前記他方の端において最も小さくなるように傾斜することを特徴とする。
【0007】
複数の前記ターンは、前記一方の端に連続する最初のターンと、前記他方の端に連続する最後のターンとを有し、
複数の前記ターンの積層によりその中心に前記軸方向に延びる貫通孔を有するとともに、前記最初のターンを上辺及び前記最後のターンを底辺とする四角錐台形を形成することを特徴とする。
【0008】
隣接する一方の前記ターンの前記背面の前記横方向の寸法よりも、他方の前記ターンの前記正面の前記横方向の寸法が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るコイルによれば、平角導体が連続して一体的に螺旋構造を形成するので接合による断面積の変化を抑えることができ、初期設定に応じた所望の出力を得ることができる。これにより安定したコイル性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】コイルの斜視図。
図2図1のコイルの正面図。
図3図2の右側から見た右側面図。
図4図2の下方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図4を参照すると、コイル1は、螺旋状に旋回された平角導体3によって構成される。ただし、線状の平角導体をコイル軸に巻き付けて螺旋構造とするものではなく、例えば機械切削加工やダイキャスト加工によって一方の端3aから他方の端3bの間において一体的に連続した螺旋構造を実現するものである。したがって、コイル1において各ターンを接合する繋ぎ目となる部分は存在しない。
【0012】
平角導体3は、螺旋構造の外周を構成する外側面31と、内周を構成する内側面32と、軸方向Zの一方に位置する正面33と、他方に位置する背面34とを有する。これら外側面31、内側面32、正面33及び背面34によって、平角導体3の断面は矩形を呈する。
【0013】
コイル1は、軸方向Zと、軸方向Zに直交する縦方向Y及び横方向Xを有し、軸方向Zをコイル軸すなわち螺旋構造の中心軸としている。コイル1は、複数のターンTによって形成される。この実施形態では8つのターンT1~T8によって形成される。ターンT1が平角導体3の一方の端3aに連続する最初のターンであり、ターンT8が他方の端3bに連続する最後のターンである。
【0014】
それぞれのターンT1~T8は、縦方向Yに延びるとともに横方向Xに離間する両側帯部51及び52と、横方向Xに延びるとともに縦方向Yに離間する上帯部53及び下帯部54とを備える。両側帯部51、52、上帯部53及び下帯部54によって、コイル1の軸方向Zからの平面視外形は略矩形を呈する。この矩形の外形は平角導体3の外側面31によって画定される。ただし、一方の端3a及び他方の端3bは下帯部54の図面下方へと突出している。
【0015】
両側帯部51、52、上帯部53及び下帯部54によって形成された矩形の中央には矩形の孔が内側面32によって画定される。特に図2に示したように、コイル1を構成するターンT1~T8は平面視すなわち軸方向Zから見た形状が矩形であるが、コイル全体として螺旋構造であるため、側面すなわち横方向Xから見た場合には完全に閉じた矩形とはならない。
【0016】
特に図4を参照すれば、両側帯部51及び52における平角導体3の外側面31はZ軸方向に対して正面33から背面34に向かって広がるように傾斜する。したがって、それぞれのターンT1~T8において、平角導体3の横方向Xの外側はそれぞれ図面下方に向かって広がるような台形となる。
【0017】
隣接する一方のターンの背面34の横方向Xの寸法よりも、他方のターンの正面33の横方向Xの寸法がわずかに大きい。また、一方のターンの背面34と他方のターンの正面33との間には、スペースが形成される。このスペースを介して他方のターンと一方のターンの外側面31が一直線上に位置するように各ターンの正面33及び背面34の横方向Xの寸法を決定する。具体的には、最初のターンT1の背面34における横方向Xの寸法よりも、隣接する2番目のターンT2の正面33における横方向Xの寸法がわずかに大きい。2番目のターンT2の背面34の横方向Xの寸法は、3番目のターンT3の正面33の横方向Xの寸法よりもわずかに大きく、4番目のターンT4以降も同様である。このようにしてコイル1は、最初のターンT1の正面33を最も寸法が小さい上底面とし、最後のターンT8の背面34を最も寸法が大きい下底面とする四角錐台を形成する。
【0018】
コイル1を四角錐台にすることによって、環状のステータコアに装着した場合のコイル占有率を大きくすることができる。すなわち、最初のターンT1をステータコアに対向させるように複数のティースにコイル1を設置することによって、隙間の少ない効率的な配置とすることができ、空間容積率の向上が可能となる。
【0019】
両側帯部51及び52における内側面32は軸方向Zに平行である。したがって、それぞれのターンT1~T8において、内側面32によって画定されるとともに軸方向Zに平行に延びる孔が形成され、これによって螺旋構造において軸方向Zに貫通する貫通孔11が形成される。この貫通孔11をティースに挿入することによってコイル1を容易にステータコアに設置することができる。
【0020】
特に図1を参照すれば、平角導体3は、外側面31及び内側面32の軸方向の長さ寸法、すなわち正面33から背面34までの長さ寸法が、一方の端3aにおいて最も大きく、他方の端3bにおいて最も小さくなるように傾斜する。また、正面33及び背面34の横方向Xの長さ寸法、すなわち外側面31から内側面32までの長さ寸法が、一方の端3aにおいて最も小さく、他方の端3bにおいて最も大きくなるように傾斜する。したがって、平角導体3の断面は一方の端3aでは縦横の比率が1に近い正方形に最も近く、他方の端3bでは縦横の比率が0に近い横方向に長い長方形となる。このように縦横の比率は異なるが、両側帯部51及び52の横方向Xの断面積は等しくなるようにしている。
【0021】
上帯部53及び下帯部54における平角導体3の縦方向Yの断面積は、両側帯部51及び52の横方向Xの断面積と等しいか、それよりも大きくなるようにしている。言い換えると、両側帯部51及び52の横方向Xの断面積は、上帯部53及び下帯部54の縦方向Yの断面積以下である。
【0022】
コイルの出力は導体の最も抵抗が大きくなる部分に依存する。この実施形態では最も断面積が小さくなる部分である両側帯部51及び52の断面積に依存する。この実施形態における平角導体3には接合部分が存在しないからこれら両側帯部51及び52の断面積を等しくすることができるとともに、接合による意図しない抵抗の発生を抑えることができる。したがって、初期設定に応じた所望の出力を得ることができ、安定したコイル性能を発揮することができる。また、接合工程を必要としないのでその分作業工程を簡略化することができる。
【0023】
上帯部53及び下帯部54の断面積を大きくすることによって、組付け時の破損や歪みが生じるのを予防することができる。この実施形態では、特に上帯部53の縦方向Yの長さ寸法を大きくすることによって断面積を大きくし、コイル1の組付け時等における補強をしている。
【0024】
コイル1における平角導体3として、アルミニウムや銅などの導電性材料を用いることができる。また、コイル1のターンTの数や大きさはコイルの大きさ、使用用途などに応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 コイル
11 貫通孔
3 平角導体
31 外側面
32 内側面
33 正面
34 背面
51 側帯部
52 側帯部
53 上帯部
54 下帯部
X 横方向
Y 縦方向
Z 軸方向
図1
図2
図3
図4