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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103910
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】防護柵を設置する方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007866
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594116334
【氏名又は名称】筑豊金網工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西島 武良
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA05
2D001PA06
2D001PB04
2D001PC03
2D001PD05
2D001PD10
2D001PD11
(57)【要約】
【課題】防護柵を設置に係る施工費用を抑制する。
【解決手段】防護柵1を構築する方法は、基礎地盤Gに所定の間隔をあけて支柱構造10を構築する工程と、支柱構造10に防護網30を取り付ける工程と、を備える。支柱構造10を構築する工程は、両端が開口した基礎鋼管11を基礎地盤Gに埋め込む工程と、両端が開口した支柱鋼管15を基礎鋼管11の内側に設置する工程と、基礎鋼管11と支柱鋼管15との間の隙間SにモルタルMを充填する工程と、支柱鋼管15の上端側の開口15bからモルタルMを該支柱鋼管15内に充填する工程と、を含む。支柱鋼管15は、基礎鋼管11の内側の基礎地盤Gに設置された状態において、地上側に露出した位置に貫通孔15cを有し、第2充填工程において、モルタルMが貫通孔15cから流出するまでモルタルMを充填する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に所定の間隔をあけて支柱構造を構築する工程と、
前記支柱構造に防護網を取り付ける工程と、
を備え、
前記支柱構造を構築する工程は、
両端が開口した第1鋼管を基礎に埋め込む鋼管埋込み工程と、
両端が開口した第2鋼管を前記第1鋼管の内側に設置する鋼管設置工程と、
前記第1鋼管と前記第2鋼管との間の隙間にモルタルを充填する第1充填工程と、
前記第2鋼管の上端側の開口からモルタルを該第2鋼管内に充填する第2充填工程と、
を含み、
前記第2鋼管は、前記第1鋼管の内側の基礎に設置された状態において、地上側に露出した位置に貫通孔を有し、前記第2充填工程において、前記モルタルが前記貫通孔から流出するまで前記モルタルを充填する
ことを特徴とする防護柵を設置する方法。
【請求項2】
前記鋼管埋込み工程と前記鋼管設置工程との間に、前記基礎に埋設された前記第1鋼管の内側の基礎に鋼製の棒材の一端が前記第1鋼管の上端側の開口よりも上方に突出しているように前記棒材を打設する打設工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2充填工程において、前記棒材の一端が前記モルタルによって埋もれるまで前記モルタルを充填することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防護柵を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、落石や土砂等を捕捉するために傾斜面や崖等の法尻に設置された防護柵が知られている。防護柵は、例えば、地盤や地山、コンクリート等の基礎に埋設して立設された複数の支柱と、複数の支柱にわたって設置された防護網(ネット)とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された防護柵においては、所定の間隔をあけて複数の支柱と、支柱の間に設けられる高強度網体と、を備えられている。各支柱は、それぞれコンクリート製の基礎に対してアンカーボルトにより固定され、同様にコンクリート製の基礎にアンカーボルトにより固定されるサポート支柱によって支柱が補強される。各支柱(H鋼)の下端には、ベースプレート及び補強リブが溶接され、当該ベースプレートに形成されるボルト締結孔に対してアンカーボルトが取り付けられる。これにより、各支柱がコンクリート性の基礎に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-014760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の防護柵においては、防護柵を設置する地盤にコンクリート製の基礎を構築する必要があり、また、支柱の下端に設けられたベースプレートに形成されたボルト締結孔を通じてアンカーボルトをコンクリート製の基礎に設ける必要がある。コンクリート製の基礎の構築及びアンカーボルトの設置には施工費用が嵩むことがあり、施工費用を抑制したいという需要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、防護柵を設置に係る施工費用を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る防護柵を設置する方法は、基礎に所定の間隔をあけて支柱構造を構築する工程と、前記支柱構造に防護網を取り付ける工程と、を備え、前記支柱構造を構築する工程は、両端が開口した第1鋼管を基礎に埋め込む鋼管埋込み工程と、両端が開口した第2鋼管を前記第1鋼管の内側に設置する鋼管設置工程と、前記第1鋼管と前記第2鋼管との間の隙間にモルタルを充填する第1充填工程と、前記第2鋼管の上端側の開口からモルタルを該第2鋼管内に充填する第2充填工程と、を含み、前記第2鋼管は、前記第1鋼管の内側の基礎に設置された状態において、地上側に露出した位置に貫通孔を有し、前記第2充填工程において、前記モルタルが前記貫通孔から流出するまで前記モルタルを充填することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る方法の一態様において、前記第1埋込み工程と前記第2埋込み工程との間に、前記基礎に埋設された前記第1鋼管の内側の基礎に鋼製の棒材の一端が前記第1鋼管の上端側の開口よりも上方に突出しているように前記棒材を打設する打設工程を含む。
【0009】
また、本発明に係る方法の一態様は、前記第2充填工程において、前記棒材の一端が前記モルタルによって埋もれるまで前記モルタルを充填する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防護柵を設置に係る施工費用を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る支柱構造を有する防護柵が設置された状態を一部断面にして示す正面図である。
図2】支柱構造の下端部を拡大した断面図である。
図3】基礎地盤に基礎鋼管を埋め込む工程を示す図である。
図4】アンカーを基礎地盤に打設する工程を示す図である。
図5】基礎地盤に支柱鋼管を埋め込む工程を示す図である。
図6】モルタルを基礎鋼管の開口から充填する工程を示す図である。
図7】モルタルを支柱鋼管の開口から充填する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
<防護柵の構成>
本実施の形態に係る防護柵1は、斜面を転がり落ちてくる落石や土砂等が道路や住宅等に流出することを防ぐための構造物である。防護柵1は、例えば、斜面の山側において傾斜方向に交差するように設置されている。なお、防護柵1の用途は、落石や土砂等を捕捉することに限定されず、例えば、雪崩による雪の流出を防ぐためにも用いられる。
【0014】
本実施の形態に係る防護柵1を構築する方法は、基礎地盤Gに所定の間隔をあけて支柱構造10を構築する工程と、支柱構造10に防護網30を取り付ける工程と、を備え、支柱構造10を構築する工程は、両端が開口した基礎鋼管11を基礎地盤Gに埋め込む鋼管埋込み工程と、両端が開口した支柱鋼管15を基礎鋼管11の内側に設置する鋼管設置工程と、基礎鋼管11と支柱鋼管15との間の隙間SにモルタルMを充填する第1充填工程と、支柱鋼管15の上端側の開口15bからモルタルMを該支柱鋼管15内に充填する第2充填工程と、を含み、支柱鋼管15は、基礎鋼管11の内側の基礎地盤Gに設置された状態において、地上側に露出した位置に貫通孔15cを有し、第2充填工程において、モルタルMが貫通孔15cから流出するまでモルタルMを充填することを特徴とする。以下、本実施の形態に係る防護柵1の構成について具体的に説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る支柱構造10を有する防護柵1が設置された状態を一部断面にして示す正面図である。本実施の形態に係る防護柵1は、複数の支柱構造10と、ネット(防護網)30と、を備える。本発明に係る防護柵1の支柱構造10は、その下端部が、防護柵1が設置される現場の基礎地盤Gに埋設されて立設されている。
【0016】
(支柱構造)
複数の支柱構造10は、互いに所定の間隔をあけて設けられている。図2は、支柱構造10の下端部を拡大した断面図である。支柱構造10は、基礎鋼管(第1鋼管)11と、アンカー(棒材)13と、支柱鋼管(第2鋼管)15と、モルタル部17と、を備える。基礎鋼管11は両端において、2つの開口11a,11bを有している。基礎鋼管11が基礎地盤Gに埋め込まれた状態において、開口11aは、基礎地盤G内に位置し、開口11bは、地上側に位置する。基礎鋼管11は、例えば、平面視円形又は略円形の鋼管により形成されている。なお、基礎鋼管11は、平面視三角形状、四角形状等の多角形状に形成されていてもよい。
【0017】
アンカー13は、鋼製の棒状部材により形成されている、例えば、鉄筋鋼である。アンカー13は、基礎鋼管11の中心又は略中心を通るように基礎地盤Gに埋め込まれている。アンカー13が基礎地盤Gに打設された状態において、一方の端部13aは、基礎鋼管11の開口11aを超えており、他方の端部13bは、基礎鋼管11の開口11bから地上側に所定の量だけ、後述する支柱鋼管15内に突出している。具体的には、アンカー13の他方の端部13bは、後述する支柱鋼管15に形成された貫通孔15cと同じ高さに位置する又は貫通孔15cの下側に位置する。
【0018】
支柱鋼管15は、例えば、平面視円形又は略円形の鋼管により形成されている。支柱鋼管15の外径は、基礎鋼管11の外径よりも小さい。支柱鋼管15は、2つの開口15a,15bを有している(図5参照)。なお、支柱鋼管15は、平面視三角形状、四角形状等の多角形状に形成されていてもよい。
【0019】
支柱鋼管15は、地上に突出していて、各支柱構造10における支柱鋼管15に後述する防護網30が支持されている。支柱鋼管15は、一方の開口15aの側で部分的に基礎鋼管11とアンカー13との間に設けられていて、他方の開口15bの側で地上に突出している。支柱鋼管15には貫通孔15cが形成されている。貫通孔15cは、基礎地盤Gから所定の高さ位置にあるように形成されている。貫通孔15cの高さ位置は、防護柵1の規模に応じて適宜設定することができる。
【0020】
モルタル部17は、モルタルMを充填材とした部分であり、モルタルMを固化することにより形成されている。モルタル部17は、基礎鋼管11の上端部の一部と、支柱鋼管15の内部を、貫通孔15cが形成されている位置まで設けられている。アンカー13は、モルタル部17内に埋設されている。モルタル部17よりも下側において基礎鋼管11は、基礎地盤Gの土砂によって充填されている。
【0021】
(ネット)
ネット30は、防護柵1の支柱鋼管15全体にわたって面状に張り渡されている。ネット30は、例えば、高強度金網により形成されているが、これに限定されず、所定の強度を有していれば、繊維製のネット、リング状に編んだ特殊金網等であってもよい。
【0022】
(支柱構造の構築)
次に、図3から図7を用いて、防護柵1を設置する工程について説明する。図3は、基礎地盤Gに基礎鋼管11を埋め込む工程を示す図である。まず、本実施の形態に係る防護柵1を設置する現場において、所定の間隔をあけて基礎鋼管11を、例えば、打設用ブレーカー等を用いて基礎地盤Gに埋め込む(鋼管埋込み工程)。基礎鋼管11を基礎地盤Gに押し込むに連れて、基礎鋼管11の内部には開口11aの側から基礎地盤Gの土砂が入り込んでくる。
【0023】
基礎鋼管11の開口11bが基礎地盤Gの土面と同一平面又は略同一平面に達するまで基礎鋼管11が基礎地盤G内に押し込まれると、基礎鋼管11内に入り込んだ基礎地盤Gの土砂の土面は、基礎鋼管11の外側における基礎地盤Gの土面よりも地中側に低い位置にある。これにより、基礎鋼管11の内側には、空所(隙間)Sが確保されている。なお、空所Sが確保されていない場合には、基礎鋼管11の内側にある土砂を除去したりして、転圧して空所Sを確保する。
【0024】
図4は、アンカー13を基礎地盤Gに打設する工程を示す図である。次いで、基礎地盤Gに埋め込まれた基礎鋼管11の内側にアンカー13を打設する(打設工程)。アンカー13は、例えば、削孔機、自穿孔アンカー等を用いて、地上側の端部が基礎鋼管11から地上側に突出しているように基礎地盤Gに打設する。
【0025】
図5は、基礎地盤Gに支柱鋼管15を埋め込む工程を示す図である。次いで、支柱鋼管15にアンカー13を通すように、基礎鋼管11とアンカー13との間の空所(隙間)Sに支柱鋼管15を設置する(鋼管設置工程)。具体的には、支柱鋼管15の一方の端部を基礎鋼管11の内側の空所Sに設置する。この場合、アンカー13が支柱鋼管15の中心又は略中心に位置するように支柱鋼管15を設置することが好ましい。
【0026】
図6は、モルタルMを基礎鋼管11の開口11bから充填する工程を示す図である。次いで、地上側に開口している基礎鋼管11の開口11bから空所SにモルタルMを充填する(第1充填工程)。これにより、基礎鋼管11と支柱鋼管15との間の空所Sは、モルタルMにより充填された状態になる。
【0027】
図7は、モルタルMを支柱鋼管15の開口15bから充填する工程を示す図である。次いで、支柱鋼管15の開口15bからモルタルMを支柱鋼管15の内側に充填する(第2充填工程)。モルタルMは、アンカー13の地上側の端部13bがモルタルM内に埋没するまで充填する。さらに、モルタルMは、支柱鋼管15の貫通孔15cから外部に流出するまで充填される。
【0028】
モルタルMが固化してモルタル部17が形成されば支柱構造10が構築される。最終的に各支柱構造10にネット30を取り付けて防護柵1が完成する。
【0029】
以上のような防護柵1を設置する方法によれば、防護柵1の設置現場にある基礎地盤Gを改良等することなく、また、ベースプレートを介して地盤に支柱をボルト接合して設置することなく、支柱構造10を構築することができる。本実施の形態によれば、基礎鋼管11を基礎地盤Gに埋め込み、基礎鋼管11内に入り込んだ基礎地盤G上に支柱鋼管15を設置して、支柱鋼管15の貫通孔15cから外部へモルタルMが流出するまで支柱鋼管15内にモルタルMを充填するので、モルタルMが必要な量だけ充填されているかを確実に確認することができる。
【0030】
さらに、アンカー13を基礎地盤Gに打ち込むことにより、支柱構造10の強度が向上し、ひいては防護柵1全体の強度が向上する。また、アンカー13の端部13bは、支柱鋼管15内に、少なくとも貫通孔15cを通じて外部からアンカー13を視認できる高さ位置(貫通孔15cの下側)にまで達している。これにより、モルタルMが支柱鋼管15の貫通孔15cから外部に流出することにより、最終的にアンカー13が確実にモルタル部17内に埋め込まれた支柱構造10を構築することができる。
【0031】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記実施の形態において、支柱構造10は、アンカー13を有していたが、アンカー13を有していなくてもよい。この場合、アンカー13を打設する打設工程を省略すればよい。
【0032】
さらに、支柱鋼管15は、ガイド部材(図示せず)を有していてもよい。ガイド部材15は、例えば、格子体により形成されている。ガイド部材は、支柱鋼管15の内側で、開口15a近傍の内周面に設けられている。ガイド部材は、支柱鋼管15内で、当該支柱鋼管15に対して同心上にアンカー13を配置するための部材であり、格子状のガイド部材の中心又は略中心の孔にアンカー13を通すことにより、アンカー13を支柱鋼管15の中心又は略中心に設置することができる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・防護柵、10・・・支柱構造、11・・・基礎鋼管(第1鋼管)、13・・・アンカー、15・・・支柱鋼管(第2鋼管)、17・・・モルタル部、30・・・防護網、M・・・モルタル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7