(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103944
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】スクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41F 15/12 20060101AFI20240726BHJP
B41F 15/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B41F15/12 A
B41F15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007902
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】舩山 耕生
(72)【発明者】
【氏名】梶山 昌平
(72)【発明者】
【氏名】小松 敬
(72)【発明者】
【氏名】麿 整
【テーマコード(参考)】
2C035
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FA24
2C035FB23
2C035FD01
(57)【要約】
【課題】版離れの状況を知り得るスクリーン印刷装置を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷装置1は、被印刷物が載置されるテーブルと、被印刷物から間隔をおいて配置されたスクリーン版と、スクリーン版に押圧された状態で、スクリーン版上を摺動するスキージと、測定器23と、コントローラ24と、を備える。測定器23は、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置でのスクリーン版までの距離を測定する。コントローラ24は、測定器23からの出力に基づいて、スクリーン版の高さ位置のデータを取得する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物が載置されるテーブルと、
前記被印刷物から間隔をおいて配置されたスクリーン版と、
前記スクリーン版に押圧された状態で、前記スクリーン版上を摺動するスキージと、
前記スキージの摺動方向で前記スキージより後方の所定位置での前記スクリーン版までの距離を測定する測定器と、
前記測定器からの出力に基づいて、前記スクリーン版の高さ位置のデータを取得するコントローラと、を備える、スクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記高さ位置の経時的変化のデータを取得する、請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記高さ位置の経時的変化の前記データから、前記スクリーン版の版離れの特徴量を抽出する、請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定する、請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記スクリーン版に対する前記スキージの押圧力を調整する第一機構、又は、前記被印刷物と前記スクリーン版との間隔を調整する第二機構の少なくとも一方を更に備え、
前記コントローラは、前記特徴量に基づいて、前記押圧力又は前記間隔の少なくとも一方を調整するように、前記第一機構又は前記第二機構の前記少なくとも一方を制御する、請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記所定位置は、前記スキージから5mm以上8mm以下離れた位置である、請求項1~5のいずれか一項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
前記測定器は、前記スキージと共に前記スキージの前記摺動方向に移動する、請求項1~5のいずれか一項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
前記測定器は、前記スクリーン版にレーザ光を照射して、前記スクリーン版の変位を測定するレーザ変位計を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
被印刷物にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
スクリーン版と、スキージと、スクリーン版までの距離を測定する測定器と、を準備することと、
前記スクリーン版を、被印刷物から間隔をおいて配置することと、
前記スクリーン版上に、前記ペーストを載せることと、
前記スキージを、前記スクリーン版に押圧した状態で、前記スクリーン版上を摺動させることにより、前記被印刷物に前記ペーストを印刷することと、
前記測定器を用い、前記スキージの摺動方向で前記スキージより後方の所定位置での前記スクリーン版までの距離の測定を行うことと、
前記測定の結果に基づいて、前記スクリーン版の高さ位置のデータを取得することと、を含む、スクリーン印刷方法。
【請求項10】
前記データを取得することは、前記高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含む、請求項9に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項11】
前記高さ位置の経時的変化の前記データから、前記スクリーン版の版離れの特徴量を抽出することを更に含む、請求項10に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項12】
前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを更に含む、請求項11に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項13】
前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版に対する前記スキージの押圧力、又は、前記被印刷物と前記スクリーン版との間隔の少なくとも一方を調整することを更に含む、請求項11に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項14】
前記測定を行うことは、前記スキージから5mm以上8mm以下離れた位置での前記スクリーン版までの距離の測定を行うことを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項15】
前記測定を行うことは、前記測定器を、前記スキージと共に前記スキージの前記摺動方向に移動させることを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項16】
前記測定を行うことは、前記測定器としてレーザ変位計を用い、前記スクリーン版にレーザ光を照射して、前記スクリーン版の変位を測定することを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のスクリーン印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているスクリーン印刷方法は、スクリーン版とスキージとを準備することと、スクリーン版を、被印刷物から間隔をおいて配置することと、スクリーン版上に、ペーストを載せることと、スキージを、スクリーン版に押圧した状態で、スクリーン版上を摺動させることにより、被印刷物にペーストを印刷することと、を含む(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したスクリーン印刷方法では、スキージの通過後、スクリーン版が被印刷物から離れる、版離れといわれる現象が生じる。この版離れの状況が変化すると、スクリーン印刷の印刷品質が劣化するおそれがある。たとえば、スクリーン版と被印刷物との離れが悪くなる、すなわち版離れに遅れが生じると、スクリーン印刷における印刷品質が劣化するおそれがある。このことから、版離れの状況を知り得る技術が望まれている。
【0005】
本発明の一つの態様は、版離れの状況を知り得るスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、版離れの状況を知り得るスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係るスクリーン印刷装置は、被印刷物が載置されるテーブルと、被印刷物から間隔をおいて配置されたスクリーン版と、スクリーン版に押圧された状態で、スクリーン版上を摺動するスキージと、測定器と、コントローラと、を備える、測定器は、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置でのスクリーン版までの距離を測定する。コントローラは、測定器からの出力に基づいて、スクリーン版の高さ位置のデータを取得する。
【0007】
上記一つの態様では、コントローラが取得する、スクリーン版の高さ位置のデータは、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置での、スクリーン版の高さ位置のデータに対応する。版離れの状況は、上述した所定位置でのスクリーン版の高さ位置に反映され得る。したがって、上記一つの態様は、版離れの状況を知り得る。
【0008】
上記一つの態様では、コントローラは、高さ位置の経時的変化のデータを取得してもよい。
コントローラが、高さ位置の経時的変化のデータを取得する構成では、コントローラが取得する、スクリーン版の高さ位置の経時的変化のデータは、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置での、スクリーン版の高さ位置の経時的変化のデータに対応する。版離れの状況は、上述した所定位置でのスクリーン版の高さ位置の経時的変化に確実に反映され得る。したがって、本構成は、版離れの状況を確実に知り得る。
【0009】
上記一つの態様では、コントローラは、高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版の版離れの特徴量を抽出してもよい。
コントローラが、高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版の版離れの特徴量を抽出する構成では、版離れの状況が特徴量という定量的な値で抽出される。したがって、本構成は、版離れの状況を定量的に知り得る。
【0010】
上記一つの態様では、コントローラは、特徴量に基づいて、スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定してもよい。
コントローラが、特徴量に基づいて、スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定する構成では、スクリーン印刷の良否が、定量的な値に基づいて判定される。したがって、本構成は、スクリーン印刷の良否を適切に判定する。
【0011】
上記一つの態様では、スクリーン印刷装置は、スクリーン版に対するスキージの押圧力を調整する第一機構、又は、被印刷物とスクリーン版との間隔を調整する第二機構の少なくとも一方を備えていてもよい。コントローラは、特徴量に基づいて、押圧力又は間隔の少なくとも一方を調整するように、第一機構又は第二機構の少なくとも一方を制御してもよい。
コントローラが、上述したように、第一機構又は第二機構の少なくとも一方を制御する構成では、版離れの特徴量に基づいて、押圧力又は間隔の少なくとも一方が調整される。押圧力又は間隔の少なくとも一方の調整は、版離れの状況を変化させ得る。版離れの特徴量に基づいた、押圧力又は間隔の少なくとも一方の調整は、版離れの状況を改善し得る。したがって、上記一つの態様は、印刷品質の低下を抑制し得る。
【0012】
上記一つの態様では、所定位置は、スキージから5mm以上8mm以下離れた位置であってもよい。
所定位置が、上述した位置である構成は、版離れの状況をより一層確実に知り得る。
【0013】
上記一つの態様では、測定器は、スキージと共にスキージの摺動方向に移動してもよい。
測定器がスキージと共にスキージの摺動方向に移動する構成は、スキージが摺動している間でも、上述した所定位置でのスクリーン版までの距離を適切に測定する。
【0014】
上記一つの態様では、測定器は、スクリーン版にレーザ光を照射して、スクリーン版の変位を測定するレーザ変位計を含んでもよい。
測定器が、スクリーン版にレーザ光を照射して、スクリーン版の変位を測定するレーザ変位計を含む構成は、上述した所定位置でのスクリーン版までの距離を簡便に測定する。
【0015】
別の一つの態様に係るスクリーン印刷方法は、被印刷物にペーストを印刷するスクリーン印刷方法である。このスクリーン印刷方法は、スクリーン版と、スキージと、スクリーン版までの距離を測定する測定器と、を準備することを含む。このスクリーン印刷方法は、スクリーン版を、被印刷物から間隔をおいて配置することと、スクリーン版上に、ペーストを載せることと、スキージを、スクリーン版に押圧した状態で、スクリーン版上を摺動させることにより、被印刷物にペーストを印刷することと、を含む。このスクリーン印刷方法は、測定器を用い、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置でのスクリーン版までの距離の測定を行うことと、測定の結果に基づいて、スクリーン版の高さ位置のデータを取得することと、を含む。
【0016】
上記別の一つの態様では、取得される、スクリーン版の高さ位置のデータは、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置での、スクリーン版の高さ位置のデータに対応する。したがって、上記別の一つの態様では、版離れの状況が知られ得る。
【0017】
上記別の一つの態様では、データを取得することは、高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含んでもよい。
データを取得することが、高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含む場合、取得される、スクリーン版の高さ位置の経時的変化のデータは、スキージの摺動方向でスキージより後方の所定位置での、スクリーン版の高さ位置の経時的変化のデータに対応する。したがって、この場合、版離れの状況が確実に知られ得る。
【0018】
上記別の一つの態様では、スクリーン印刷方法は、高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版の版離れの特徴量を抽出することを含んでもよい。
スクリーン印刷方法が、高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版の版離れの特徴量を抽出することを含む場合、版離れの状況が特徴量という定量的な値で抽出される。したがって、この場合、版離れの状況が定量的に知られ得る。
【0019】
上記別の一つの態様では、スクリーン印刷方法は、特徴量に基づいて、スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを含んでもよい。
スクリーン印刷方法が、特徴量に基づいて、スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを含む場合、スクリーン印刷の良否が、定量的な値に基づいて判定される。したがって、この場合、スクリーン印刷の良否が適切に判定される。
【0020】
上記別の一つの態様では、スクリーン印刷方法は、特徴量に基づいて、スクリーン版に対するスキージの押圧力、又は、被印刷物とスクリーン版との間隔の少なくとも一方を調整することを含んでもよい。
上記別の一つの態様が、特徴量に基づいて、スクリーン版に対するスキージの押圧力又は被印刷物とスクリーン版との間隔の少なくとも一方を調整することを含む場合、版離れの特徴量に基づいて、押圧力又は間隔の少なくとも一方が調整される。したがって、この場合は、印刷品質の低下が抑制され得る。
【0021】
上記別の一つの態様では、測定を行うことは、スキージから5mm以上8mm以下離れた位置でのスクリーン版までの距離の測定を行うことを含んでもよい。
測定を行うことが、上述した位置でのスクリーン版までの距離の測定を行うことを含む場合、版離れの状況がより一層確実に知られ得る。
【0022】
上記別の一つの態様では、測定を行うことは、測定器を、スキージと共にスキージの摺動方向に移動させることを含んでもよい。
測定を行うことが、測定器を、スキージと共にスキージの摺動方向に移動させることを含む場合、スキージが摺動している間でも、上述した所定位置でのスクリーン版までの距離が適切に測定される。
【0023】
上記別の一つの態様では、測定を行うことは、測定器としてレーザ変位計を用い、スクリーン版にレーザ光を照射して、スクリーン版の変位を測定することを含んでもよい。
測定を行うことが、測定器としてレーザ変位計を用い、スクリーン版にレーザ光を照射して、スクリーン版の変位を測定することを含む場合、上述した所定位置でのスクリーン版までの距離が簡便に測定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一つの態様は、版離れの状況を知り得るスクリーン印刷装置を提供する。本発明の別の一つの態様は、版離れの状況を知り得るスクリーン印刷方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、測定器とスクリーン版との距離の経時的変化を示す線図である。
【
図5】
図5は、測定器とスクリーン版との距離の経時的変化を示す線図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、スクリーン版の高さ位置の経時的変化を示す線図である。
【
図9】
図9は、スクリーン版の高さ位置の経時的変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0027】
図1~
図3を参照して、本実施形態に係るスクリーン印刷装置1の構成を説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
図3は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
スクリーン印刷装置1は、被印刷物W1にペーストP1をスクリーン印刷するための装置である。被印刷物W1は、たとえば、セラミックグリーンシート又は基板を含む。ペーストP1は、導電性ペースト、樹脂ペースト、又はセラミックペーストを含む。
図1に示されるように、スクリーン印刷装置1は、スクリーン印刷の機能を実現するために、印刷テーブル機構A1、版取付機構B1、及び印刷機構C1を備えている。
【0029】
印刷テーブル機構A1は、テーブル2と、駆動部3と、を有している。テーブル2は、被印刷物W1が載置される載置面2aを含んでいる。すなわち、スクリーン印刷装置1は、被印刷物W1が載置されるテーブル2を備えている。載置面2aは、たとえば矩形状を呈しており、テーブル2において被印刷物W1を支持する。スクリーン印刷装置1においてスクリーン印刷を行う際には、被印刷物W1が、たとえば搬送装置により、載置面2a上に載置される。スクリーン印刷装置1においてスクリーン印刷が完了した際には、被印刷物W1が、搬送装置により、載置面2a上から排出される。上記搬送装置は、たとえばコンベアである。駆動部3は、テーブル2の載置面2aの位置を調節する。本実施形態では、テーブル2の載置面2aに沿う方向が第一方向D1であり、テーブル2の載置面2aに直交する方向が第二方向D2であり、第一方向D1及び第二方向D2に直交する方向が第三方向D3である。
【0030】
版取付機構B1は、版保持部4を有している。版保持部4は、型枠5と、スクリーン版6と、を含んでいる。型枠5は、スクリーン版6を取り付けるための枠であり、載置面2aから間隔をおいて配置されている。本実施形態では、型枠5は、第二方向D2において、載置面2aから間隔をおいて配置されている。スクリーン版6は、テーブル2の載置面2aに沿うようにして、型枠5の内側に張られた状態で取り付けられている。上述したように、型枠5は、載置面2aから間隔をおいて配置されているので、スクリーン版6も、載置面2aから間隔をおいて配置されている。本実施形態では、スクリーン版6も、第二方向D2において、載置面2aから間隔をおいて配置されている。載置面2a上には被印刷物W1が載置されるので、スクリーン印刷装置1がスクリーン印刷を行う際には、スクリーン版6は、被印刷物W1から間隔をおいて配置される。すなわち、スクリーン印刷装置1は、被印刷物W1から間隔をおいて配置されるスクリーン版6を備えている。このスクリーン版6と被印刷物W1との間隔は、たとえば、印刷開始前に予め定められた間隔となるように、調整される。
【0031】
版取付機構B1は、支持台7と、ベース8と、脚部9と、間隔調整機構10と、を更に有している。支持台7は、型枠5及びスクリーン版6を支持する。ベース8は、第三方向D3において、テーブル2の両側に設けられていると共に、テーブル2より第一方向D1での長さが大きくなるように延在している。脚部9は、ベース8上に設けられていると共にベース8と支持台7とを接続している。本実施形態では、複数の脚部9が、ベース8上に設けられている。
【0032】
間隔調整機構10は、支持台7上に取り付けられている。間隔調整機構10は、版保持部4を第二方向D2で移動させるための機構である。間隔調整機構10は、版保持部4を第二方向D2で移動させることにより、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔を調整する。したがって、間隔調整機構10は、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔を調整する機構ともいえる。本実施形態では、間隔調整機構10は、モータ駆動によって、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔を調整する。間隔調整機構10は、当該機能を実現するために、モータ10aと、シャフト10bと、を含んでいる。モータ10aは、支持台7上に配置されている。シャフト10bは、モータ10aに接続されていると共にモータ10aから第二方向D2に延在している。シャフト10bは、版保持部4を支持している。たとえば、モータ10aはサーボモータであり、シャフト10bはボールネジである。本実施形態では、モータ10aがシャフト10bを回転させることによって、版保持部4が第二方向D2で移動し、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔が調整される。
【0033】
印刷機構C1は、機枠11と、ガイドレール12と、支持台13と、押圧力調整機構14と、固定機構15と、スキージ16と、ブレード17と、を有している。機枠11は、版取付機構B1上に配置されていると共に、ガイドレール12、支持台13、押圧力調整機構14、及び固定機構15を収容している。ガイドレール12は、機枠11内において、第一方向D1に沿うように延在している。支持台13は、ガイドレール12によって、支持されている。本実施形態では、支持台13は、ガイドレール12によって、第一方向D1で移動可能に支持されている。
【0034】
押圧力調整機構14は、スキージ16を第二方向D2で移動させると共にスクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を調整するための機構である。本実施形態では、押圧力調整機構14は、モータ駆動によって、スキージ16を第二方向D2で移動させると共にスクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を調整する。押圧力調整機構14は、当該機能を実現するために、モータ14aと、シャフト14bと、を含んでいる。モータ14aは、支持台13上に配置されている。シャフト14bは、モータ14aに接続されていると共にモータ14aから第二方向D2に延在している。たとえば、モータ14aはサーボモータであり、シャフト14bはボールネジである。
たとえば、押圧力調整機構14が第一機構を構成する場合、間隔調整機構10が第二機構を構成する。
【0035】
固定機構15は、ブレード17を固定するための機構である。固定機構15は、当該機能を実現するために、基部15aと、接続部15bと、を含んでいる。基部15aは、支持台13上に取り付けられている。本実施形態では、基部15aは、第一方向D1において、モータ14aと隣り合うように、支持台13上に取り付けられている。すなわち、本実施形態では、押圧力調整機構14と固定機構15とは、第一方向D1において、互いに隣り合うように配置されている。接続部15bは、基部15aの一端から第二方向D2に延在している。
【0036】
スキージ16は、スクリーン版6に押圧された状態でスクリーン版6上を摺動することにより、スクリーン版6上に載せられたペーストP1を被印刷物W1に印刷するための部材である。スキージ16は、第一方向D1に、スクリーン版6上を摺動する。スキージ16は、スクリーン版6上に位置するように、シャフト14bに取り付けられている。スクリーン印刷装置1がスクリーン印刷を行う際には、スキージ16は、押圧力調整機構14により、スクリーン版6に押圧される。本実施形態では、モータ14aがシャフト14bを回転させることによって、スキージ16が、第二方向D2で移動し、スクリーン版6に押圧される。
【0037】
ブレード17は、スキージ16によるスクリーン印刷の開始前に、スクリーン版6上に載せられたペーストP1を塗り広げるための部材である。ブレード17は、スクリーン版6上を移動することで、スクリーン版6上にペーストP1を塗り広げる。本実施形態では、ブレード17は、スクリーン版6と離間した状態でスクリーン版6上を移動することで、スクリーン版6上にペーストP1を塗り広げる。ブレード17は、第一方向D1に、スクリーン版6上を移動する。本実施形態では、ブレード17は、第一方向D1に移動し、第二方向D2には移動しない。すなわち、本実施形態では、ブレード17とスクリーン版6との間隔は調整されない。ブレード17は、スクリーン版6上に位置するように、接続部15bに取り付けられている。
【0038】
ブレード17の移動方向は、第一方向D1のみに限定されない。たとえば、ブレード17は、スクリーン版6との間隔を調整するために、第二方向D2に移動してもよい。この場合、印刷機構C1は、ブレード17とスクリーン版6との間隔を調整するための別の間隔調整機構を有していてもよい。上記別の間隔調整機構は、モータ駆動によって、ブレード17を第二方向D2で移動させ、ブレード17とスクリーン版6との間隔を調整してもよい。
【0039】
上述したように、スキージ16は第一方向D1にスクリーン版6上を摺動し、ブレード17は第一方向D1にスクリーン版6上を移動する。印刷機構C1は、当該機能を実現するために、プーリ18,19と、ベルト20と、モータ21と、ベルト22と、を更に有している。プーリ18,19、ベルト20、モータ21、及びベルト22は、機枠11内に収容されている。プーリ18,19は、支持台13の第一方向D1における両端に配置されている。ベルト20は、プーリ18とプーリ19との間に掛け渡されていると共に、支持台13に連結されている。モータ21は、ベルト22を介して、プーリ18に接続されている。これにより、モータ21の回転駆動がベルト22を介してプーリ18に伝達され、ベルト20が回転する。ベルト20が回転することによって、支持台13が、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向に移動する。これにより、スキージ16は、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向にスクリーン版6上を摺動する。同様に、ブレード17は、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向にスクリーン版6上を移動する。すなわち、本実施形態では、スキージ16の摺動方向及びブレード17の移動方向は、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向である。
【0040】
スクリーン印刷装置1は、測定器23と、コントローラ24と、を更に有している。本実施形態では、スクリーン印刷装置1は、一つの測定器23を有している。測定器23は、シャフト14bに取り付けられている。本実施形態では、測定器23は、接続部23aと、レーザ変位計23bと、を含んでいる。接続部23aは、レーザ変位計23bとシャフト14bとを接続するための部材である。接続部23aの一端は、シャフト14bに接続されている。接続部23aの他端は、レーザ変位計23bに接続されている。
【0041】
レーザ変位計23bは、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定する。本実施形態では、
図2に示されるように、レーザ変位計23bが、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定する。これにより、測定器23は、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定する。測定器23は、たとえば、所定時間ごとに、スクリーン版6までの距離を測定する。測定器23は、測定された上記距離に関するデータをコントローラ24に逐次出力する。
所定位置S1は、版離れの状況を知り得る範囲の値に設定される。所定位置S1は、たとえば、版離れに遅れが生じていることを知り得る範囲の値に設定される。所定位置S1は、たとえば、スキージ16の形状又はスキージ16の幅に応じて設定されてもよい。本実施形態では、所定位置S1は、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置である。すなわち、本実施形態では、所定位置S1は、スキージ16の摺動方向で、スキージ16から5mm以上8mm以下後方の位置である。
【0042】
測定器23は、上述したように、シャフト14bに取り付けられている。したがって、測定器23は、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動する。本実施形態では、スクリーン印刷中において、測定器23は、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動しながら、所定時間ごとに、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定する。
測定器23は、シャフト14bに取り付けられている必要はない。測定器23は、シャフト14bとは別の移動機構に取り付けられていてもよい。この場合、移動機構は、測定器23がスキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動するように、測定器23を移動させる。
【0043】
コントローラ24は、測定器23、間隔調整機構10、及び押圧力調整機構14に接続されている。コントローラ24は、測定器23の動作と、間隔調整機構10及び押圧力調整機構14の少なくとも一方の動作を制御する。コントローラ24は、測定器23から出力されたデータに基づいて、間隔調整機構10及び押圧力調整機構14の少なくとも一方の動作を制御する。
コントローラ24は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。コントローラ24は、たとえば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することによって、
図3に示された機能要素を含む。コントローラ24は、取得部25と、抽出部26と、判定部27と、制御部28と、を含んでいる。コントローラ24は、測定器23から出力されたデータ、及び、演算結果を記憶する記憶部(不図示)を含む。記憶部は、コントローラ24による処理に必要なパラメータ及び数値を記憶する。
【0044】
取得部25は、測定器23から出力されたデータに基づいて、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。本実施形態では、取得部25は、記憶部から、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離のデータを取得する。取得部25は、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離と測定器23の高さ位置とに基づいて、スクリーン版6の高さ位置を算出する。本実施形態では、高さ位置は、第二方向D2における被印刷物W1との距離を示す。すなわち、測定器23の高さ位置は第二方向D2における測定器23と被印刷物W1との距離を示し、スクリーン版6の高さ位置は第二方向D2におけるスクリーン版6と被印刷物W1との距離を示す。本実施形態では、取得部25は、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離と測定器23の高さ位置との差分を、スクリーン版6の高さ位置として算出する。これにより、取得部25は、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。取得部25は、上述した処理を、記憶部に記憶されている、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離の各データに対して行うことで、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得する。取得部25は、取得したスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを抽出部26に送る。コントローラ24は、測定器23から出力されたデータを記憶することなく、測定器23から出力されたデータに基づいて取得された、スクリーン版6の高さ位置のデータを記憶してもよい。すなわち、コントローラ24は、測定器23から出力されたデータに基づいて、スクリーン版6の高さ位置のデータを逐次取得し、記憶してもよい。
【0045】
抽出部26は、取得部25から送られたスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する。本実施形態では、スクリーン版6の版離れの特徴量は、スクリーン版6の版離れの状況の特徴を示す。たとえば、スクリーン版6の版離れの特徴量は、スクリーン版6の高さ位置のばらつきを示す。本実施形態では、抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置のばらつきに基づいて、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する。
【0046】
抽出部26は、たとえば、以下のようにして、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する。
抽出部26は、取得部25から送られたスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の高さ位置の平均値を算出する。抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータのうち、全データポイントを用いてスクリーン版6の高さ位置の平均値を算出してもよい。あるいは、抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータのうち、一部のデータポイントのみを用いてスクリーン版6の高さ位置の平均値を算出してもよい。
【0047】
抽出部26は、取得部25から取得したスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差を算出する。抽出部26は、算出したスクリーン版6の高さ位置の平均値を用いて、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差を算出する。抽出部26は、以下のようにして、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差を算出する。
抽出部26は、平均値を算出する際に用いたデータポイントにおけるスクリーン版6の高さ位置と、算出したスクリーン版6の高さ位置の平均値との差の2乗を合計する。抽出部26は、合計した値を用いたデータポイント数で除算する。抽出部26は、除算した値の平方根を取ることで、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差を算出する。
【0048】
抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置の平均値とスクリーン版6の高さ位置の標準偏差との比を、スクリーン版6の版離れの特徴量として抽出する。あるいは、抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差を、スクリーン版6の版離れの特徴量として抽出してもよい。抽出部26は、抽出したスクリーン版6の版離れの特徴量を判定部27及び制御部28に送る。抽出部26は、抽出したスクリーン版6の版離れの特徴量を記憶部に格納してもよい。
【0049】
判定部27は、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する。判定部27は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する。本実施形態では、判定部27は、スクリーン版6の版離れの特徴量と所定の閾値との比較を行った上で、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する。
スクリーン版6の版離れの特徴量が所定の閾値より大きい場合、判定部27は、スクリーン版6の高さ位置のばらつきが小さいとして、行われたスクリーン印刷が良好であると判定する。スクリーン版6の版離れの特徴量が所定の閾値より小さい場合、判定部27は、スクリーン版6の高さ位置のばらつきが大きいとして、行われたスクリーン印刷が良好でないと判定する。判定部27は、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を示す情報を制御部28に送る。判定部27は、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を示す情報を記憶部に格納してもよい。
【0050】
制御部28は、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。制御部28は、抽出部26から送られたスクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力又はスクリーン版6と被印刷物W1との間隔の少なくとも一方を調整するように、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。本実施形態では、制御部28は、スクリーン版6の版離れの特徴量に加えて、判定部27から送られたスクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を示す情報に基づいて、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。
【0051】
制御部28は、以下のようにして、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。制御部28は、スクリーン印刷の良否を示す情報が良好でないスクリーン印刷を示す場合、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。この場合、制御部28は、スクリーン印刷を良好に行うために、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御する。たとえば、制御部28は、スクリーン印刷が良好に行われるように、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔を増加させるように、間隔調整機構10に信号を出力する。間隔調整機構10は、制御部28からの信号に基づいて、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔を増加させる。
【0052】
制御部28は、スクリーン印刷が良好に行われるように、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を増減させるように、押圧力調整機構14に信号を出力してもよい。この場合、押圧力調整機構14は、制御部28からの信号に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を増減させる。
スクリーン版6と被印刷物W1との間隔が増加した場合、スクリーン版6の張力により、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力は変化し得る。したがって、制御部28が、スクリーン印刷を良好に行うために、押圧力調整機構14及び間隔調整機構10の両方の動作を制御する場合、制御部28は、上記間隔の増加量に対応して、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を増減させるように、押圧力調整機構14に信号を出力してもよい。すなわち、制御部28は、スクリーン印刷が良好に行われるように、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔を増加させると共にスクリーン版6に対するスキージ16の押圧力を増減させるように、間隔調整機構10及び押圧力調整機構14のそれぞれに信号を出力してもよい。
【0053】
スクリーン印刷の良否を示す情報が、スクリーン印刷が良好に行われたことを示す場合、制御部28は、押圧力調整機構14及び間隔調整機構10の動作を制御しなくてもよい。すなわち、スクリーン印刷が良好に行われた場合、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力、及び、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔は調整されなくてもよい。
【0054】
以上説明したように、スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が取得する、スクリーン版6の高さ位置のデータは、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1での、スクリーン版6の高さ位置のデータに対応する。版離れの状況は、所定位置S1でのスクリーン版6の高さ位置に反映され得る。したがって、スクリーン印刷装置1は、版離れの状況を知り得る。
【0055】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得する。
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が取得する、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータは、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1での、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータに対応する。版離れの状況は、所定位置S1でのスクリーン版6の高さ位置の経時的変化に確実に反映され得る。したがって、スクリーン印刷装置1は、版離れの状況を確実に知り得る。
【0056】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する。
スクリーン印刷装置1では、版離れの状況が特徴量という定量的な値で抽出される。したがって、スクリーン印刷装置1は、版離れの状況を定量的に知り得る。
【0057】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する。
スクリーン印刷装置1では、スクリーン印刷の良否が、定量的な値に基づいて判定される。したがって、スクリーン印刷装置1は、スクリーン印刷の良否を適切に判定する。
【0058】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力又は被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整するように、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御する。
スクリーン印刷装置1では、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、上記押圧力又は上記間隔の少なくとも一方が調整される。上記押圧力又は上記間隔の少なくとも一方の調整は、版離れの状況は変化させ得る。版離れの特徴量に基づいた、押圧力又は間隔の少なくとも一方の調整は、版離れの状況を改善し得る。したがって、スクリーン印刷装置1は、印刷品質の低下を抑制し得る。
【0059】
スクリーン印刷装置1では、所定位置S1は、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置である。
スクリーン印刷装置1は、版離れの状況をより一層確実に知り得る。
【0060】
スクリーン印刷装置1では、測定器23は、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動する。
スクリーン印刷装置1は、スキージ16が摺動している間でも、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を適切に測定する。
【0061】
スクリーン印刷装置1では、測定器23は、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定するレーザ変位計23bを含んでいる。
スクリーン印刷装置1は、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を簡便に測定する。
【0062】
次に、
図4~
図9を参照して、本実施形態に係るスクリーン印刷装置1を用いたスクリーン印刷方法について説明する。
図4及び
図5は、測定器とスクリーン版との距離の経時的変化を示す線図である。
図6及び
図7は、本実施形態に係るスクリーン印刷装置の構成を示す図である。
図8及び
図9は、スクリーン版の高さ位置の経時的変化を示す線図である。
【0063】
本実施形態では、スクリーン印刷を行う動作と、測定器23及びコントローラ24による動作と、が行われる。以下では、スクリーン印刷を行う動作について説明する。
本印刷方法では、まず、スクリーン版6、スキージ16、及び測定器23を備えるスクリーン印刷装置1が準備される。すなわち、本印刷方法では、スクリーン版6と、スキージ16と、スクリーン版6までの距離を測定する測定器23と、が準備される。続いて、被印刷物W1がテーブル2の載置面2a上に載置される。本印刷方法では、被印刷物W1が載置面2a上に載置された状態のスクリーン印刷装置1が準備されてもよい。続いて、スクリーン版6が被印刷物W1から間隔をおいて配置される。本印刷方法では、間隔調整機構10によって、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔が調整される。続いて、スクリーン版6上にペーストP1が載せられる。
【0064】
続いて、ペーストP1がスクリーン版6上に塗り広げられる。本印刷方法では、ブレード17を、スクリーン版6と離間した状態で、スクリーン版6上を移動させることによって、ペーストP1をスクリーン版6上に塗り広げる。ブレード17は、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向に、スクリーン版6上を移動する。この際、スキージ16及び測定器23は、スクリーン版6から間隔を置いた状態で、ブレード17と共に、ブレード17の移動方向にスクリーン版6上を移動する。
【0065】
続いて、押圧力調整機構14がスキージ16及び測定器23を第二方向D2で移動させる。これにより、スキージ16及び測定器23はスクリーン版6に接近し、スキージ16がスクリーン版6に押圧される。
続いて、スキージ16がスクリーン版6に押圧された状態でスクリーン版6上を摺動することで、被印刷物W1にペーストP1が印刷される。すなわち、スキージ16を、スクリーン版6に押圧した状態で、スクリーン版6上を摺動させることで、被印刷物W1にペーストP1を印刷する。スキージ16は、第一方向D1のうちプーリ18からプーリ19に向かう方向に、スクリーン版6上を摺動する。本印刷方法では、モータ21の回転駆動によって、スキージ16を、スクリーン版6に押圧した状態で、スクリーン版6上を摺動させる。この際、ブレード17及び測定器23は、スクリーン版6から間隔を置いた状態で、スキージ16と共に、スキージ16の摺動方向にスクリーン版6上を移動する。
【0066】
続いて、押圧力調整機構14が再びスキージ16を第二方向D2で移動させる。これにより、スキージ16によるスクリーン版6の押圧が解除され、スキージ16が、第二方向D2において印刷開始時の位置にまで戻る。すなわち、スキージ16は、スクリーン版6から離れるように、第二方向D2で移動する。
続いて、モータ21の回転駆動によって、スキージ16が第一方向D1に移動する。これにより、スキージ16は、第一方向D1において印刷開始時の位置にまで戻る。この際、スキージ16、ブレード17、及び測定器23は、スクリーン版6から間隔を置いた状態で、スクリーン版6上を移動する。
【0067】
次に、測定器23及びコントローラ24による動作について説明する。本印刷方法では、まず、測定器23によって、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が測定される。すなわち、本印刷方法では、測定器23を用い、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定する。たとえば、上述したスクリーン印刷を行う動作中において、測定器23によって、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が測定される。本印刷方法では、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定するにあたって、所定位置S1は、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置として設定される。上述したように、測定器23は、レーザ変位計23bを含んでいる。したがって、本印刷方法では、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定するにあたって、測定器23としてレーザ変位計23bを用い、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定する。測定器23は、測定の結果をコントローラ24に出力する。コントローラ24は、スクリーン版6までの距離に関するデータを記憶部に格納する。
【0068】
続いて、取得部25が、測定の結果に基づいて、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。すなわち、本印刷方法では、測定器23の測定の結果に基づいて、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。取得部25は、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得するにあたって、まず、記憶部から、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離のデータを取得する。所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は、
図4に示されるように、上述したスクリーン印刷を行う動作中において、変化する。
図4に示されるグラフの横軸は時間であり、縦軸は所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を示す。
【0069】
図4に示される例では、時点t1までの期間は、ブレード17によって、被印刷物W1にペーストP1が塗り広げられる期間に対応する。時点t1までの期間においては、上述したように、スキージ16及び測定器23は、スクリーン版6から間隔を置いた状態で、スクリーン版6上を移動する。したがって、時点t1までの期間においては、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は一定となる。
【0070】
時点t1から時点t2までの期間は、スキージ16がスクリーン版6に押圧されるまでの期間に対応する。すなわち、時点t1においてスキージ16及び測定器23の第二方向D2での移動が開始され、時点t2においてスキージ16がスクリーン版6に押圧された状態となる。したがって、時点t1から時点t2までの期間においては、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は減少する。
【0071】
時点t2から時点t3までの期間は、スキージ16がスクリーン版6に押圧された状態でスクリーン版6上を摺動する期間に対応する。すなわち、時点t2から時点t3までの期間は、被印刷物W1にペーストP1が印刷されている期間に対応する。すなわち、時点t2においてスクリーン印刷が開始され、時点t3においてスクリーン印刷が終了する。時点t2から時点t3までの期間においては、スキージ16はスクリーン版6に押圧された状態で、スクリーン印刷が実施されるため、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は、時点t1から時点t2までの期間と比して、大きく変化しない。
【0072】
しかしながら、
図5に示されるように、時点t2から時点t3までの期間において、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は、細かく変化する。
図5に示されるグラフの横軸は時間であり、縦軸は所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を示す。
図5に示されるグラフは、
図4における時点t2から時点t3までのグラフを拡大したグラフである。
図5に示される例では、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は、時点t2から時点t3にかけて、細かい変化を重畳しつつ、緩やかに減少する。
【0073】
図4に戻る。時点t3から時点t4までの期間は、スキージ16が、スクリーン版6から離れるように、第二方向D2で移動する期間に対応する。すなわち、時点t3においてスキージ16によるスクリーン版6の押圧が解除され、時点t4においてスキージ16が第二方向D2において印刷開始時の位置にまで戻る。したがって、時点t3から時点t4までの期間においては、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は増加する。
【0074】
時点t4からの期間は、スキージ16が、第一方向D1でスクリーン版6上を移動する期間に対応する。上述したように、スキージ16及び測定器23はスクリーン版6から間隔を置いた状態で、スクリーン版6上を移動する。したがって、時点t4からの期間においては、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離は一定となる。
【0075】
取得部25は、上述した変化を示す、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離から、スクリーン版6の高さ位置を算出することで、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。本印刷方法では、取得部25は、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離と測定器23の高さ位置との差分を、スクリーン版6の高さ位置として算出する。これにより、取得部25は、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得する。本印刷方法では、取得部25は、取得した所定位置S1でのスクリーン版6までの距離の各データに対して、上述した処理を行うことで、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得する。取得部25は、取得したスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを抽出部26に送る。コントローラ24は、上述したように、測定器23から出力されたデータを記憶する代わりに、取得されたスクリーン版6の高さ位置のデータを記憶してもよい。
【0076】
続いて、抽出部26によって、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量が抽出される。本印刷方法では、抽出部26が、スクリーン版6の高さ位置のばらつきに基づいて、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する。本印刷方法では、たとえば、以下のようにして、スクリーン版6の版離れの特徴量が抽出される。
【0077】
まず、抽出部26によって、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の高さ位置の平均値が算出される。本印刷方法では、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータのうち、時点t2から時点t3までの期間におけるデータポイントを用いて、スクリーン版6の高さ位置の平均値が算出される。すなわち、本印刷方法では、被印刷物W1にペーストP1が印刷されている際の、スクリーン版6の高さ位置の平均値が算出される。
【0078】
続いて、抽出部26によって、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差が算出される。まず、抽出部26は、時点t2から時点t3までの期間におけるスクリーン版6の高さ位置と、算出したスクリーン版6の高さ位置の平均値との差の2乗を合計する。次に、抽出部26は、合計した値を、時点t2から時点t3までの期間におけるデータポイント数で除算する。次に、抽出部26は、除算した値の平方根を取ることで、標準偏差を算出する。これにより、時点t2から時点t3までの期間における、スクリーン版6の高さ位置の標準偏差が算出される。
続いて、抽出部26は、スクリーン版6の高さ位置の平均値とスクリーン版6の高さ位置の標準偏差との比を、スクリーン版6の版離れの特徴量として抽出する。抽出部26は、抽出したスクリーン版6の版離れの特徴量を判定部27及び制御部28に送る。
【0079】
続いて、判定部27によって、スクリーン版6のスクリーン印刷の良否が判定される。本印刷方法では、判定部27が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6のスクリーン印刷の良否を判定する。本印刷方法では、判定部27が、スクリーン版6の版離れの特徴量と所定の閾値との比較を行った上で、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する。スクリーン版6の版離れの特徴量が所定の閾値より大きい場合、判定部27によって、行われたスクリーン印刷が良好であると判定される。スクリーン版6の版離れの特徴量が所定の閾値より小さい場合、判定部27によって、行われたスクリーン印刷が良好でないと判定される。判定部27は、スクリーン版6のスクリーン印刷の良否を示す情報を制御部28に送る。
【0080】
続いて、制御部28によって、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方が制御される。本印刷方法では、制御部28が、抽出部26から送られたスクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力又はスクリーン版6と被印刷物W1との間隔の少なくとも一方を調整するように、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御する。本印刷方法では、制御部28が、スクリーン版6の版離れの特徴量に加えて、判定部27から送られたスクリーン版6のスクリーン印刷の良否を示す情報に基づいて、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御する。
【0081】
本印刷方法では、以下のようにして、制御部28によって、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方が制御される。スクリーン印刷の良否を示す情報が、スクリーン印刷が良好に行われなかったことを示す場合、制御部28は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御する。この場合、スクリーン印刷を良好に行うために、制御部28によって、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作が制御される。たとえば、スクリーン印刷が良好に行われるように、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔が増加する。スクリーン版6と被印刷物W1との間隔が増加する代わりに、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力が増減してもよい。スクリーン印刷が良好に行われるように、スクリーン版6と被印刷物W1との間隔が増加すると共にスクリーン版6に対するスキージ16の押圧力が増減してもよい。
【0082】
スクリーン版6のスクリーン印刷の良否を示す情報が、スクリーン印刷が良好に行われたことを示す場合、制御部28は、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方の動作を制御しなくてもよい。すなわち、スクリーン印刷が良好に行われた場合、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力及びスクリーン版6と被印刷物W1との間隔は調整されなくてもよい。
【0083】
ここで、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化とスクリーン版6の版離れの状況との関係について、説明する。本発明者らは、スクリーン版6の版離れの高さ位置の経時的変化とスクリーン版6の版離れの状況との関係を明らかにするために、実験を行った。まず、行った実験の内容に先立って、版離れが良好な状態及び版離れに遅れが生じている状態における、スキージ16とスクリーン版6、被印刷物W1との関係について、説明する。
【0084】
図6に示される例は、版離れが良好な状態である場合の、スキージ16とスクリーン版6、被印刷物W1との関係を示している。版離れが良好な状態は、たとえば、スキージ16の通過後、速やかにスクリーン版6が被印刷物W1から離れる状態を示す。
図7に示される例は、版離れが悪い状態、すなわち版離れに遅れが生じている状態での、スキージ16とスクリーン版6、被印刷物W1との関係を示している。版離れに遅れが生じている状態とは、たとえば、スキージ16の通過後であっても、
図7に示されるように、スクリーン版6と被印刷物W1とが接した状態が続く状態を示す。たとえば、版離れが良好な状態では所定位置S1においてスクリーン版6と被印刷物W1とが離れており、版離れに遅れが生じている状態では所定位置S1においてスクリーン版6と被印刷物W1とが接している。したがって、所定位置S1は版離れの遅れが検出され得る位置ともいえる。
【0085】
続いて、本発明者らが行った実験の内容について説明する。本発明者らは、まず、版離れが良好な状態及び版離れに遅れが生じている状態で、時点t2から時点t3までの期間における、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を測定し、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得した。すなわち、本発明者らは、まず、実測による、スクリーン印刷中でのスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得した。
図8は、実測による、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化を示す線図である。
図8に示されるグラフの横軸は時間であり、縦軸はスクリーン版6の高さ位置を示す。
図8において、変化G1は版離れが良好な状態でのスクリーン版6の高さ位置の経時的変化を示す。変化G2は版離れに遅れが生じている状態でのスクリーン版6の高さ位置の経時的変化を示す。
【0086】
上述したように、版離れが良好な状態では、所定位置S1においてスクリーン版6と被印刷物W1とが離れているため、時点t2から時点t3にかけて、スクリーン版6の高さ位置は、細かい変化を重畳しつつ、緩やかに減少する。一方で、版離れに遅れが生じている場合では、或る時点において、所定位置S1でスクリーン版6と被印刷物W1とが接するので、該時点において、スクリーン版6の高さ位置が急激に減少する。
図8に示される例では、変化G2において、時点tdで、スクリーン版6の高さ位置が急激に減少していることが見て取れる。したがって、
図8に示される例では、時点tdにおいて、版離れに遅れが生じ始めたと理解される。
【0087】
続いて、両場合において、版離れが理想的に行われた状態でのスクリーン版6の高さ位置の経時的変化をシミュレーションにより算出した。
図9は、シミュレーションによる、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化を示す線図である。
図9に示されるグラフの横軸は時間であり、縦軸はスクリーン版6の高さ位置を示す。
図9において、変化G3は変化G1の理想的な状態を示すグラフであり、変化G4は変化G2の理想的な状態を示すグラフである。変化G3と変化G1とを比較すると、変化G3の外形と変化G1の外形とで大きな差異はなく、時点t2から時点t3にかけて緩やかに減少するという傾向は一致している。一方で、変化G4と変化G2とを比較すると、変化G2では時点tdにおいて版離れに遅れが生じているため、変化G4の外形と変化G2の外形とが互いに異なっていることが見て取れる。
【0088】
版離れに遅れが生じている状態では、上述したように、或る時点においてスクリーン版6の高さ位置が急激に減少する。すなわち、版離れに遅れが生じている状態では、版離れが良好な状態と比較して、スクリーン版6の高さ位置のばらつきが大きくなる。以上のことから、スクリーン版6の版離れの状況が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化に確実に反映され得ることが理解される。
【0089】
以上説明したように、本印刷方法は、被印刷物W1にペーストP1を印刷するスクリーン印刷方法であって、スクリーン版6と、スキージ16と、スクリーン版6までの距離を測定する測定器23と、を準備することと、スクリーン版6を、被印刷物W1から間隔をおいて配置することと、スクリーン版6上に、ペーストP1を載せることと、スキージ16を、スクリーン版6に押圧した状態で、スクリーン版6上を摺動させることにより、被印刷物W1にペーストP1を印刷することと、測定器23を用い、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1でのスクリーン版6までの距離の測定を行うことと、測定の結果に基づいて、スクリーン版6の高さ位置のデータを取得することと、を含む、スクリーン印刷方法を開示している。
【0090】
本印刷方法では、取得されるスクリーン版6の高さ位置のデータは、スキージ16の摺動方向でスキージ16より後方の所定位置S1での、スクリーン版6の高さ位置のデータに対応する。したがって、本印刷方法では、版離れの状況が知られ得る。
【0091】
本印刷方法では、データを取得することが、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含んでいる。
本印刷方法では、取得される、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータは、所定位置S1での、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータに対応する。したがって、本印刷方法では、版離れの状況が確実に知られ得る。
【0092】
本印刷方法は、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出することを含んでいる。
本印刷方法では、スクリーン版6の版離れの状況が特徴量という定量的な値で抽出される。したがって、本印刷方法では、版離れの状況が定量的に知られ得る。
【0093】
本印刷方法は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを含んでいる。
本印刷方法では、スクリーン印刷の良否が、定量的な値に基づいて判定される。したがって、本印刷方法では、スクリーン印刷の良否が適切に判定される。
【0094】
本印刷方法は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力、又は、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整することを含んでいる。
本印刷方法では、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、上記押圧力又は上記間隔の少なくとも一方が調整される。したがって、本印刷方法では、印刷品質の低下が抑制され得る。
【0095】
本印刷方法では、測定を行うことが、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置でのスクリーン版6までの距離の測定を行うことを含んでいる。
本印刷方法では、版離れの状況がより一層確実に知られ得る。
【0096】
本印刷方法では、測定を行うことが、測定器23を、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動させることを含んでいる。
本印刷方法では、スキージ16が摺動している間でも、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が適切に測定される。
【0097】
本印刷方法では、測定を行うことが、測定器23としてレーザ変位計23bを用い、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定することを含んでいる。
本印刷方法では、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が簡便に測定される。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0099】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得しなくてもよい。
コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得する、スクリーン印刷装置1は、上述したように、版離れの状況を確実に知り得る。
【0100】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出しなくてもよい。
コントローラ24が、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出する、スクリーン印刷装置1は、上述したように、版離れの状況を定量的に知り得る。
【0101】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定しなくてもよい。
コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定する、スクリーン印刷装置1は、上述したように、スクリーン印刷の良否を適切に判定する。
【0102】
スクリーン印刷装置1では、コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージの押圧力又は被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整するように、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御しなくてもよい。
コントローラ24が、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力又は被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整するように、押圧力調整機構14又は間隔調整機構10の少なくとも一方を制御する、スクリーン印刷装置1は、上述したように、印刷品質の低下を抑制し得る。
【0103】
スクリーン印刷装置1では、所定位置S1は、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置でなくてもよい。
所定位置S1が、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置である、スクリーン印刷装置1は、上述したように、版離れの状況をより一層確実に知り得る。
【0104】
スクリーン印刷装置1では、測定器23は、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動しなくてもよい。
測定器23が、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動する、スクリーン印刷装置1は、上述したように、スキージ16が摺動している間でも、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を適切に測定する。
【0105】
スクリーン印刷装置1では、測定器23は、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版の変位を測定するレーザ変位計23bを含んでいなくてもよい。
測定器23が、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定するレーザ変位計23bを含んでいる、スクリーン印刷装置1は、上述したように、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離を簡便に測定する。
【0106】
上記印刷方法では、データを取得することが、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含んでいなくてよい。
データを取得することが、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含んでいる、印刷方法では、上述したように、版離れの状況が確実に知られ得る。
【0107】
上記印刷方法は、スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出することを含んでいなくてもよい。
スクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータから、スクリーン版6の版離れの特徴量を抽出することを含んでいる、印刷方法では、上述したように、版離れの状況が定量的に知られ得る。
【0108】
上記印刷方法は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを含んでいなくてもよい。
スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを含んでいる、印刷方法では、上述したように、スクリーン印刷の良否が適切に判定される。
【0109】
上記印刷方法は、スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力、又は、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整することを含んでいなくてもよい。
スクリーン版6の版離れの特徴量に基づいて、スクリーン版6に対するスキージ16の押圧力、又は、被印刷物W1とスクリーン版6との間隔の少なくとも一方を調整することを含んでいる、印刷方法では、上述したように、印刷品質の低下が抑制され得る。
【0110】
上記印刷方法では、測定を行うことが、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置でのスクリーン版6までの距離の測定を行うことを含んでいなくてもよい。
測定を行うことが、スキージ16から5mm以上8mm以下離れた位置でのスクリーン版6までの距離の測定を行うことを含んでいる、印刷方法では、上述したように、版離れの状況がより一層確実に知られ得る。
【0111】
上記印刷方法では、測定を行うことが、測定器23を、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動させることを含んでいなくてもよい。
測定を行うことが、測定器23を、スキージ16と共にスキージ16の摺動方向に移動させることを含んでいる、印刷方法では、上述したように、スキージ16が摺動している間でも、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が適切に測定される。
【0112】
上記印刷方法では、測定を行うことが、測定器23としてレーザ変位計23bを用い、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定することを含んでいなくてもよい。
測定を行うことが、測定器23としてレーザ変位計23bを用い、スクリーン版6にレーザ光を照射して、スクリーン版6の変位を測定することを含んでいる、印刷方法では、上述したように、所定位置S1でのスクリーン版6までの距離が簡便に測定される。
【0113】
上述した実施形態では、コントローラ24が抽出部26を有しているが、コントローラ24は抽出部26を必ずしも有していなくてもよい。この場合、コントローラ24は、たとえば、外部サーバと所定の通信ネットワークを介して接続されていてもよい。コントローラ24の取得部25は、取得したスクリーン版6の高さ位置の経時的変化のデータを外部サーバに出力し、該外部サーバにおいて、スクリーン版6の版離れの抽出が実施されてもよい。
【0114】
上述した実施形態では、スクリーン印刷装置1は、一つの測定器23を備えているが、スクリーン印刷装置1が備える測定器23の数は、上述した数に限定されない。すなわち、スクリーン印刷装置1は、複数の測定器23を備えていてもよい。たとえば、スクリーン印刷装置1は、三つの測定器23を備えていてもよい。この場合、三つの測定器23は、第三方向D3で互いに隣り合うように配置されていてもよい。
【0115】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
被印刷物が載置されるテーブルと、
前記被印刷物から間隔をおいて配置されたスクリーン版と、
前記スクリーン版に押圧された状態で、前記スクリーン版上を摺動するスキージと、
前記スキージの摺動方向で前記スキージより後方の所定位置での前記スクリーン版までの距離を測定する測定器と、
前記測定器からの出力に基づいて、前記スクリーン版の高さ位置のデータを取得するコントローラと、を備える、スクリーン印刷装置。
(付記2)
前記コントローラは、前記高さ位置の経時的変化のデータを取得する、付記1に記載のスクリーン印刷装置。
(付記3)
前記コントローラは、前記高さ位置の経時的変化の前記データから、前記スクリーン版の版離れの特徴量を抽出する、付記2に記載のスクリーン印刷装置。
(付記4)
前記コントローラは、前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定する、付記3に記載のスクリーン印刷装置。
(付記5)
前記スクリーン版に対する前記スキージの押圧力を調整する第一機構、又は、前記被印刷物と前記スクリーン版との間隔を調整する第二機構の少なくとも一方を更に備え、
前記コントローラは、前記特徴量に基づいて、前記押圧力又は前記間隔の少なくとも一方を調整するように、前記第一機構又は前記第二機構の前記少なくとも一方を制御する、付記3又は4に記載のスクリーン印刷装置。
(付記6)
前記所定位置は、前記スキージから5mm以上8mm以下離れた位置である、付記1~5のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷装置。
(付記7)
前記測定器は、前記スキージと共に前記スキージの前記摺動方向に移動する、付記1~6のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷装置。
(付記8)
前記測定器は、前記スクリーン版にレーザ光を照射して、前記スクリーン版の変位を測定するレーザ変位計を含む、付記1~7のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷装置。
(付記9)
被印刷物にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
スクリーン版と、スキージと、スクリーン版までの距離を測定する測定器と、を準備することと、
前記スクリーン版を、被印刷物から間隔をおいて配置することと、
前記スクリーン版上に、前記ペーストを載せることと、
前記スキージを、前記スクリーン版に押圧した状態で、前記スクリーン版上を摺動させることにより、前記被印刷物に前記ペーストを印刷することと、
前記測定器を用い、前記スキージの摺動方向で前記スキージより後方の所定位置での前記スクリーン版までの距離の測定を行うことと、
前記測定の結果に基づいて、前記スクリーン版の高さ位置のデータを取得することと、を含む、スクリーン印刷方法。
(付記10)
前記データを取得することは、前記高さ位置の経時的変化のデータを取得することを含む、付記9に記載のスクリーン印刷方法。
(付記11)
前記高さ位置の経時的変化の前記データから、前記スクリーン版の版離れの特徴量を抽出することを更に含む、付記10に記載のスクリーン印刷方法。
(付記12)
前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版を用いたスクリーン印刷の良否を判定することを更に含む、付記11に記載のスクリーン印刷方法。
(付記13)
前記特徴量に基づいて、前記スクリーン版に対する前記スキージの押圧力、又は、前記被印刷物と前記スクリーン版との間隔の少なくとも一方を調整することを更に含む、付記11又は12に記載のスクリーン印刷方法。
(付記14)
前記測定を行うことは、前記スキージから5mm以上8mm以下離れた位置での前記スクリーン版までの距離の測定を行うことを含む、付記9~13のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷方法。
(付記15)
前記測定を行うことは、前記測定器を、前記スキージと共に前記スキージの前記摺動方向に移動させることを含む、付記9~14のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷方法。
(付記16)
前記測定を行うことは、前記測定器としてレーザ変位計を用い、前記スクリーン版にレーザ光を照射して、前記スクリーン版の変位を測定することを含む、付記9~15のいずれか一つの付記に記載のスクリーン印刷方法。
【符号の説明】
【0116】
1…スクリーン印刷装置、2…テーブル、6…スクリーン版、16…スキージ、23…測定器、23b…レーザ変位計、24…コントローラ、P1…ペースト、S1…所定位置、W1…被印刷物。