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特開2024-103955社会的インパクト提示システム、情報処理装置、レポート表示端末および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103955
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】社会的インパクト提示システム、情報処理装置、レポート表示端末および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20240726BHJP
【FI】
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007918
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】523025333
【氏名又は名称】インパクトサークル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智志
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB57
5L055BB57
(57)【要約】
【課題】資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化した資金提供者向けのレポートを適切な内容で作成することができるようにする。
【解決手段】資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を取得するインパクト関連情報取得部11と、投資家の属性情報である投資家属性を投資家端末10’から取得する投資家属性取得部21と、取得したインパクト関連情報を用いて、投資家属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成するレポート作成部15と、作成したレポートを投資家端末10’に提示するレポート提示部16とを備え、投資家属性に応じた内容のレポートを作成することにより、社会的インパクトを可視化した投資家向けのレポートを適切な内容で作成することができるようにする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を取得するインパクト関連情報取得部と、
上記資金提供者の属性情報である資金提供者属性を取得する資金提供者属性取得部と、
上記インパクト関連情報取得部により取得された上記インパクト関連情報を用いて、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成するレポート作成部と、
上記レポート作成部により作成されたレポートを上記資金提供者に提示するレポート提示部とを備えた
ことを特徴とする社会的インパクト提示システム。
【請求項2】
上記資金提供対象者の属性情報である資金提供対象者属性を取得する資金提供対象者属性取得部と、
上記資金提供者属性に対して上記資金提供対象者属性が所定のマッチング条件に合致する資金提供対象者を抽出し、抽出した資金提供対象者を資金提供候補者として上記資金提供者に提示するマッチング部とを更に備え、
上記レポート作成部は、上記インパクト関連情報取得部により取得された上記インパクト関連情報を用いて、上記資金提供候補者の中から上記資金提供者により選択された資金提供対象者により行われた事業によって生み出される社会的インパクトの内容を含むレポートを作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項3】
上記資金提供者属性および上記資金提供対象者属性はデモグラフィック属性を含み、
上記マッチング部は、上記資金提供者のデモグラフィック属性に対して上記資金提供対象者のデモグラフィック属性が同一または類似するというマッチング条件に合致する資金提供対象者を抽出する
ことを特徴とする請求項2に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項4】
上記資金提供者属性は、上記資金提供者の興味・関心事項を示す情報を含み、
上記資金提供対象者属性は、上記資金提供対象者が行う事業に関する事業属性情報を含み、
上記マッチング部は、上記資金提供者の上記興味・関心事項に対して上記資金提供対象者の上記事業属性情報に含まれる事項が同一または類似するというマッチング条件に合致する資金提供対象者を抽出する
ことを特徴とする請求項2に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項5】
上記資金提供対象者ごとに上記資金提供対象者属性を記録して管理するためのデータベースにおいて、上記資金提供者により選択された資金提供対象者に対して投資実行フラグを付与する情報管理部と、
上記資金提供者属性と複数の上記資金提供対象者属性との各組み合わせを機械学習済みのモデルにそれぞれ入力し、当該モデルから複数の資金提供対象者属性に対応する投資実行確率を取得する投資実行確率取得部とを備え、
上記モデルは、上記資金提供者属性、上記資金提供対象者属性および上記投資実行フラグを学習用データとして用いた機械学習処理により生成されており、
上記マッチング部は、上記投資実行確率取得部により取得された上記複数の投資実行確率のうち上記所定のマッチング条件に合致する投資実行確率に対応する上記資金提供対象者属性を有する資金提供対象者を抽出する
ことを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項6】
入力情報項目およびレイアウトの少なくとも一方があらかじめ規定された複数のレポートフォーマットをそれぞれの識別情報と共に記憶するフォーマット記憶部と、
上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて特定されるレポートフォーマットを上記フォーマット記憶部から取得するフォーマット取得部とを備え、
上記レポート作成部は、上記インパクト関連情報取得部により取得された上記インパクト関連情報および上記フォーマット取得部により取得された上記レポートフォーマットを用いて、当該レポートフォーマットで規定される内容を含むレポートを作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項7】
上記資金提供者属性は、個人投資家か機関投資家かを識別する情報を含み、
上記フォーマット取得部は、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて、上記個人投資家が重視するものとして想定される入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットまたは上記機関投資家が重視するものとして想定される入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットの何れかを上記フォーマット記憶部から取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項8】
上記資金提供者属性は、上記個人投資家であることを示す情報を含む場合には上記個人投資家の興味・関心事項を示す情報を更に含み、
上記フォーマット取得部は、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて、上記個人投資家の興味・関心事項に関する入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットを上記フォーマット記憶部から取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項9】
上記資金提供者属性は、上記個人投資家であることを示す情報を含む場合には上記個人投資家のパーソナリティを示す情報を更に含み、
上記フォーマット取得部は、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて、上記パーソナリティに応じてあらかじめ規定された入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットを上記フォーマット記憶部から取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項10】
上記資金提供者属性は、上記資金提供者が上記機関投資家であることを示す情報を含む場合には、上記機関投資家が金融機関か投資専業か事業会社かを識別する情報を更に含み、
上記フォーマット取得部は、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて、上記機関投資家に関するレポートフォーマットを取得する場合、上記金融機関、上記投資専業または上記事業会社の何れかに対してあらかじめ関連付けられたレポートフォーマットを上記フォーマット記憶部から取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項11】
上記資金提供者属性は、上記資金提供者が上記金融機関であることを示す情報を含む場合には、上記金融機関の顧客層がインパクト投資家か否かを識別する情報を更に含み、
上記フォーマット取得部は、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に基づいて、上記金融機関に関するレポートフォーマットを取得する場合、上記金融機関の顧客層がインパクト投資家であるか否かに応じてあらかじめ関連付けられたレポートフォーマットを上記フォーマット記憶部から取得する
ことを特徴とする請求項10に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項12】
上記資金提供者ごとに上記資金提供者属性を記録して管理するためのデータベースにおいて、上記資金提供者により追加投資アクションがなされた場合に追加投資実行フラグを付与する情報管理部を更に備え、
上記フォーマット取得部は、機械学習済みのモデルに上記資金提供者属性を入力し、当該モデルからレポートフォーマットの識別情報を取得するようになされ、
上記モデルは、上記レポート作成部による上記レポートの作成に使用されたレポートフォーマットの識別情報、上記資金提供者属性および上記追加投資実行フラグを学習用データとして用いた機械学習処理により生成されている
ことを特徴とする請求項6~11の何れか1項に記載の社会的インパクト提示システム。
【請求項13】
資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を取得するインパクト関連情報取得部と、
上記資金提供者の属性情報である資金提供者属性を取得する資金提供者属性取得部と、
上記インパクト関連情報取得部により取得された上記インパクト関連情報を用いて、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成するレポート作成部と、
上記レポート作成部により作成されたレポートを上記資金提供者に提示するレポート提示部とを備えた
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の情報処理装置に対して、資金提供者の属性情報である資金提供者属性を提供する資金提供者属性提供部と、
上記資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化したレポートであって、上記資金提供者属性に応じて特定される内容を含むレポートを上記情報処理装置から取得して表示するレポート表示部とを備えた
ことを特徴とするレポート表示端末。
【請求項15】
コンピュータのインパクト関連情報取得部が、資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を取得するステップと、
上記コンピュータの資金提供者属性取得部が、上記資金提供者の属性情報である資金提供者属性を取得するステップと、
上記コンピュータのレポート作成部が、上記インパクト関連情報取得部により取得された上記インパクト関連情報を用いて、上記資金提供者属性取得部により取得された上記資金提供者属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成するステップと、
上記コンピュータのレポート提示部が、上記レポート作成部により作成されたレポートを上記資金提供者に提示するステップとを有する
ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、社会的インパクト提示システム、情報処理装置、レポート表示端末および情報処理方法に関し、特に、投資家などの資金提供者からの資金を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
2015年国連サミットにおいて「持続可能な開発のための国際目標(SDGs)」が提唱されて以来、より公益的で長期持続な事業に対する注目が高まっている。また近年では、インパクト投資と呼ばれる投資活動も注目を集めている。インパクト投資とは、経済的リターンを得ることだけでなく、事業や活動を通じて社会的または環境的な成果である社会的インパクトを同時に生み出すことも意図する投資行動である。このような背景の下、投資家による投資に対応して事業の担い手の活動が生み出す社会的インパクトを可視化することによって、社会にとって有益な事業への投資を加速させる仕組みの構築が求められている。
【0003】
これに対し、事業の社会的インパクトを少ない労力で評価して可視化することを目的とした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の事業評価装置では、事業理論作成プログラムが事業の種類に応じてデータベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、ユーザがこの事業理論テンプレートで設定されている指標を用いて事業の結果・成果を入力する。そして、社会的インパクト評価プログラムが当該入力された事業の結果・成果を定量的、定性的な形式に変換することによって事業の社会的インパクトの評価結果を生成する。また、レポート作成プログラムがレポートテンプレートを生成し、ユーザがこのレポートテンプレートを用いて、上記のように生成された事業の社会的インパクトの評価結果を入力して事業に関するインパクトレポートを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-77772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の記載によれば、当該特許文献1に記載の技術を用いることにより、様々な事業の社会的インパクト評価に要する人的・時間的負担を減らすことが可能であり、また、様々な事業の社会的インパクト評価の標準的な手法と評価基準を提供することが可能とされる。しかしながら、特許文献1には、レポートの受取者(政府や許認可団体)、事業の実施者、事業の受益者、事業の評価者、評価者の支援者(伴走者)などに向けた各種のレポート様式に従ってレポートを作成することは開示されているものの、インパクト投資を行った投資家に向けたレポートを適切に作成することについては開示されていない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、投資家などの資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化した資金提供者向けのレポートを適切な内容で作成することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、資金提供者からの資金提供を受けた資金提供対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を取得するとともに、資金提供者の属性情報である資金提供者属性を取得し、当該取得したインパクト関連情報を用いて、資金提供者属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成し、作成したレポートを資金提供者に提示するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、資金提供者属性に応じた内容のレポートが作成されるので、社会的インパクトを可視化した資金提供者向けのレポートを適切な内容で作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態によるインパクト管理サーバの機能構成例を示すブロック図である。
図3】定量的インパクトの予定量の一例を模式的に示す図である。
図4】定量的インパクトの予定量および実績量を累積値として可視化した情報の一例を示す図である。
図5】レポート作成部により作成されるレポートの一例を示す図である。
図6】第1の実施形態によるインパクト管理サーバの動作例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。
図8】第2の実施形態によるインパクト管理サーバの機能構成例を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態によるインパクト管理サーバの動作例を示すフローチャートである。
図10】第3の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。
図11】第3の実施形態によるインパクト管理サーバの機能構成例を示すブロック図である。
図12】複数のレポートフォーマットの一例を示す図である。
図13】第3の実施形態によるインパクト管理サーバの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の社会的インパクト提示システムは、投資家端末10、投資対象者端末20A、運用管理者端末20B、組合管理者端末20C、情報収集サーバ30、投資管理サーバ40およびインパクト管理サーバ100を備えている。
【0011】
投資家端末10は、所望の事業または当該事業を行う事業者(個人または法人の何れでもよい)に対してインパクト投資を行う投資家が使用する端末であり、パーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレットなどにより構成される。投資家端末10はウェブブラウザを備えており、投資家はウェブブラウザを通じて、投資管理サーバ40またはインパクト管理サーバ100から提供されるウェブページを閲覧したり、ウェブページを通じて情報を入力したりすることが可能となっている。
【0012】
投資対象者端末20Aは、投資家からの投資を受ける投資対象者が使用する端末であり、パーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレットなどにより構成される。投資対象者端末20Aはウェブブラウザを備えており、投資対象者はウェブブラウザを通じて、情報収集サーバ30から提供されるウェブページを閲覧したり、ウェブページを通じて情報を入力したりすることが可能となっている。
【0013】
なお、本実施形態では、事業者が投資家から投資を受けて事業を行う場合で説明するが、事業者が資金提供者からの資金提供を受けて事業を行う場合に広く適用され得る。資金提供者は、投資家のほか、寄付や補助金、助成金等を拠出する者、金融機関で貸し出しをする者などを含む、いかなる資金提供者であってもよく、資金提供対象者はその提供された資金を受けとったことによりインパクトが創出される対象者のことを指す。従い、以降の説明では投資家を資金提供者と読み替え、投資対象者を資金提供対象者と読み替えることができる。また、投資の運用を資金の運用と読み替えることができる。
【0014】
運用管理者端末20Bは、投資対象者が行う事業の運用を管理する運用管理者が使用する端末であり、パーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレットなどにより構成される。運用管理者端末20Bはウェブブラウザを備えており、運用管理者はウェブブラウザを通じて、情報収集サーバ30から提供されるウェブページを閲覧したり、ウェブページを通じて情報を入力したりすることが可能となっている。
【0015】
組合管理者端末20Cは、投資対象者が行う事業に関連する組合の管理者が使用する端末であり、パーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレットなどにより構成される。組合には複数の投資対象者が所属しており、投資対象者は組合の管理のもとで事業を実施する。組合管理者端末20Cはウェブブラウザを備えており、組合管理者はウェブブラウザを通じて、情報収集サーバ30から提供されるウェブページを閲覧したり、ウェブページを通じて情報を入力したりすることが可能となっている。
【0016】
以下の説明において、投資対象者端末20A、運用管理者端末20Bおよび組合管理者端末20Cをまとめて事業関連者端末20ということがある。また、投資対象者、運用管理者および組合管理者をまとめて事業関連者ということがある。なお、投資対象者が実施する事業の内容によっては、運用管理者および組合管理者の少なくとも一方が事業の実施に関与しないことがある。この場合、運用管理者端末20Bおよび組合管理者端末20Cの少なくとも一方はなくてもよい。
【0017】
情報収集サーバ30は、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に資するインパクト関連情報を事業関連者端末20から収集する。インパクト関連情報は、社会的インパクトの定量化に資する情報を少なくとも含み、社会的インパクトの定性化に資する情報を更に含んでもよい。インパクト関連情報の詳細については後述する。なお、投資家側の目線に立ち投資が実際に社会的インパクトと経済的リターンの両方を創出しているかを管理するものを以下の説明において、投資管理者ということがある。事業関連者と投資管理者が同じ場合もあるが便宜上、投資家目線の説明の際には投資管理者と表記する。
【0018】
情報収集サーバ30は、社会的インパクトの定量化に資する情報および定性化に資する情報を所定のフォーマットで事業関連者端末20から収集する。例えば、情報収集サーバ30は、所定の情報入力項目を含む所定フォーマットの情報入力用ウェブページを事業関連者端末20に提供し、当該情報入力用ウェブページを通じて事業関連者端末20から入力されるインパクト関連情報を収集する。所定フォーマットに基づいて情報収集を行うことにより、情報の一定の品質を担保することができる。特に、社会的インパクトの定性化に資する情報は、定量化に資する情報に比べてバラつきが大きくなる可能性が大きいが、所定フォーマットに基づき情報収集することで一定の品質を担保することが可能である。
【0019】
所定フォーマットの情報入力用ウェブページは、例えば事業のカテゴリごとにあらかじめ用意されている。事業関連者は、実施する事業に該当するカテゴリを選択することにより、選択したカテゴリに対応する情報入力用ウェブページを事業関連者端末20のウェブブラウザに表示させ、情報入力用ウェブページに含まれる情報入力項目にインパクト関連情報を入力して情報収集サーバ30に送信する。情報収集サーバ30は、事業関連者端末20から収集したインパクト関連情報をインパクト管理サーバ100に提供する。
【0020】
投資管理サーバ40は、投資家からの投資を管理するための装置である。例えば、投資管理サーバ40は、クラウドファンディングに関する処理を実行する。クラウドファンディングに関する処理は、投資対象者からの事業支援希望を募集することに関する処理、支援事業に対する投資家からの出資を募集することに関する処理、複数の投資家から調達した資金を投資対象者に提供して運用することに関する処理、投資対象者の事業実施による成果を管理することに関する処理、事業実施の成果に基づいて投資家に対する経済的リターンを計算する処理などを含む。投資管理サーバ40は、これらの処理を通じて得られる投資に関する情報の少なくとも一部をインパクト管理サーバ100に提供する。
【0021】
なお、投資管理サーバ40が管理する投資は、クラウドファンディングに限定されない。事業に対するファンドであればよく、例えば金融機関が実施する投資信託や投資事業組合などの形式のファンドであってもよい。また、必ずしも投資はファンドであることを要するものではなく、1人または1団体で構成される投資家から1人または1団体で構成される投資対象者に対する1:1の形式の投資であってもよい。
【0022】
情報収集サーバ30および投資管理サーバ40からインパクト管理サーバ100に提供される各種情報は、例えば、各投資家をユニークに識別する投資家IDおよび各投資対象者をユニークに識別する投資対象者IDにより紐づけて管理される。インパクト管理サーバ100は、情報収集サーバ30および投資管理サーバ40から提供される情報に基づいて、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの可視化に関する各種処理を実行する。各種処理の具体的な内容は、図2以降の図面を用いて後述する。
【0023】
本実施形態において、インパクト管理サーバ100は、社会的インパクトをレポートの形式で可視化し、レポートを投資家端末10に提供する。投資家に対するレポートの提供は、ウェブページを通じて行ってもよいし、電子メール(メール本文への記述または添付ファイルの何れでもよい)の送信により行ってもよいし、プリントアウトしたドキュメントの住所地への送付により行ってもよい。
【0024】
なお、ここでは、インパクト管理サーバ100と情報収集サーバ30とが別に存在する構成について説明したが、情報収集サーバ30の機能をインパクト管理サーバ100が備えるようにしてもよい。また、ここでは、インパクト管理サーバ100が投資管理サーバ40から投資に関する情報を取得する構成について説明したが、別の手段によって取得するようにしてもよい。例えば、投資管理サーバ40から所定のデータファイルにエクスポートされた情報をインポートする方法や、投資管理サーバ40から所定のデータファイルにエクスポートされた情報またはプリントアウトされた情報をもとにオペレータが必要な情報を手入力する方法などによって投資に関する情報を取得するようにしてもよい。なお同じく、インパクト管理サーバ100が投資管理サーバ40の機能を備えるようにしてもよい。
【0025】
図2は、第1の実施形態によるインパクト管理サーバ100の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、第1の実施形態によるインパクト管理サーバ100は、機能構成として、インパクト関連情報取得部11、投資関連情報取得部12、定量的インパクト算出部13、定性的インパクト評価部14、レポート作成部15およびレポート提示部16を備えている。定量的インパクト算出部13は、具体的な機能構成として、予定インパクト算出部13Aおよび実績インパクト算出部13Bを備えている。
【0026】
上記機能ブロック11~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック11~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0027】
インパクト関連情報取得部11は、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの定量化に資する情報(定量的な社会的インパクトの可視化に資する情報)を情報収集サーバ30から取得する。また、インパクト関連情報取得部11は、投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの定性化に資する情報(定性的な社会的インパクトの可視化に資する情報)を情報収集サーバ30から取得する。以下の説明において、定量的な社会的インパクトを定量的インパクトといい、定性的な社会的インパクトを定性的インパクトという。また、社会的インパクトの定量化および定性化に資する情報をインパクト関連情報という。
【0028】
投資関連情報取得部12は、投資に関する情報(以下、投資関連情報という)を投資管理サーバ40から取得する。投資関連情報は、投資家に関する情報、投資対象者に関する情報、投資の運用期間を示す情報、投資家に対する経済的リターンを示す情報などを含む。
【0029】
インパクト関連情報取得部11および投資関連情報取得部12は、投資の運用を開始したときから定期または非定期の複数のタイミングでインパクト関連情報および投資関連情報を取得し、取得した情報を記憶媒体に記憶して保存する。投資の運用を開始したときとは、例えばクラウドファンディングや機関投資家向けの投資運用ファンドの出資募集期間が終了し、複数の投資家から調達した資金を投資対象者に提供して運用を開始したときである。投資の運用を開始したことは、投資関連情報取得部12が投資管理サーバ40から取得する投資関連情報により認識することが可能である。
【0030】
情報を取得する定期または非定期の複数のタイミングは、例えば、社会的インパクトに関するレポートを作成するタイミングである。定期のタイミングとは、例えば1ヵ月ごとのタイミングである。非定期のタイミングとは、定期のタイミング以外に特別にレポートを作成するタイミングである。非定期のタイミングは、例えばインパクト管理サーバ100の管理者が任意に指定可能である。なお、情報を取得した後に一定期間を置いてからレポートを作成する場合もあるため、情報取得とレポート作成のタイミングが必ずしも完全に一致していなくてもよい。また、複数のタイミングで取得する情報は、上述のレポート作成のために使う場合に加え、インパクトが創出されているかを投資管理者が確認するためだけに使う場合がある。後者の場合には、投資家向けのレポートは作成されないこともある。
【0031】
定量的インパクト算出部13は、インパクト関連情報取得部11により取得されたインパクト関連情報および投資関連情報取得部12により取得された投資関連情報に基づいて、投資対象者の事業実施により生み出される定量的インパクトを算出する。ここで、定量的インパクト算出部13は、上述した複数のタイミングごとに定量的インパクトを算出する。定量的インパクト算出部13は、今回および次回以降のレポート作成に利用可能とするために、算出した定量的インパクトを記憶媒体に記憶して保存する。
【0032】
定量的インパクト算出部13は、予定インパクト算出部13Aおよび実績インパクト算出部13Bによって2種類の定量的インパクトを算出する。予定インパクト算出部13Aは、投資の運用を開始したときから所定長のレポーティング対象期間中に事業の実施によって生み出される可能性のある定量的インパクトの予定量を算出する。実績インパクト算出部13Bは、投資の運用を開始した後に投資対象者が事業を実施したことによって実際に生み出された定量的インパクトの実績量を、上述した複数のタイミングごとに算出する。
【0033】
レポーティング対象期間は、レポートに含める定量的インパクトの算出対象期間として設定された期間であり、投資の運用期間(ファンド運用期間)と、当該運用期間が終了した後のモニター期間とを含む。ファンド運用期間は、投資管理サーバ40が実施するクラウドファンディングや投資ファンドごとにあらかじめ決められており、その運用期間を示す情報が投資関連情報に含まれている。あるいは、投資対象者が実施する事業の内容などに応じて投資管理サーバ40の管理者が任意に運用期間を設定することも可能である。
【0034】
モニター期間は、定量的インパクトの実績量の算出をファンド運用期間の終了後も継続する期間である。モニター期間は、投資管理サーバ40が実施するクラウドファンディングごとにあらかじめ決められていてもよいし、投資対象者が実施する事業の内容などに応じてインパクト管理サーバ100の管理者が任意に決めるようにしてもよい。
【0035】
なお、ファンド運用期間とモニター期間とを足した期間よりも長い期間を対象として定量的インパクトの予定量を算出するようにしてもよく、この場合にレポーティング対象期間は、モニター期間が終了した後の期間を更に含む。予定インパクト算出部13Aが定量的インパクトの予定量を算出する対象期間は、レポーティング対象期間の全体である。実績インパクト算出部13Bが定量的インパクトの実績量を算出する複数のタイミングは、ファンド運用期間中のタイミングおよびモニター期間中のタイミングを含む。
【0036】
本実施形態において、投資家や投資対象者、投資対象者が行う事業の内容などは任意である。一例として、投資対象者は、投資家からの投資を受けて事業を行う個人であり、定量的インパクト算出部13により算出される定量的インパクトは、投資対象者がローンを組んで購入した機材を用いて行う事業によって得られる収入の、当該事業を開始する前の元収入からの増加量を含むものとすることが可能である。
【0037】
この場合の投資対象者は、事業の実施に必要な機材を購入するための自前資金を有しておらず、ローンを組むこともできない貧困層の個人を想定している。この種の投資対象者がファンドから調達した資金をもとにローンを組んで機材を購入し、事業を開始すれば、収入が大幅に増加することが期待できる。定量的インパクト算出部13は、この収入増加量を定量的インパクトとして算出する。
【0038】
ここで、ローンの返済期間は、ファンド運用期間と同じ期間として設定される。定量的インパクト算出部13は、ファンド運用期間中についてはローン返済後収入から事業開始前の元収入を減算した収入増加量を定量的インパクトとして算出する。ローン返済後収入とは、事業の実施によって得られる実際の収入から月々や年次のローン返済額を減算した金額である。また、定量的インパクト算出部13は、ファンド運用期間の終了後の期間中については実際の収入から事業開始前の元収入を減算した収入増加量を定量的インパクトとして算出する。
【0039】
図3は、予定インパクト算出部13Aにより算出される定量的インパクトの予定量の一例を模式的に示す図である。図3において、横軸は時間を示し、縦軸は月収を示している。図3の例では、ファンドの運用開始時から36ヵ月間が運用期間に設定されている。このファンド運用期間は、ローンの返済期間と同じ期間である。また、ファンド運用期間の終了時から数ヵ月間がモニター期間に設定されている。また、ファンドの運用開始時から、投資対象者が購入する機材の耐用年数終了時までの期間がレポーティング対象期間として設定されている。この場合のレポーティング対象期間は、ファンド運用期間とモニター期間とを足した期間よりも長くなっている。
【0040】
図3において、ICは事業開始前の元収入、ICは事業開始後のファンド運用期間中におけるローン返済後収入、ICはファンド運用期間の終了後における実際の収入を示している。投資対象者の収入は、事業の開始によって短期間のうちに大幅に増加し、その後は一定額で推移している。ファンド運用期間中はローン返済額があるため、ローン返済後収入ICは実際の収入ICより低い額となっているが、ローン返済期間が終了した後は実際の収入ICで推移することになる。
【0041】
図3の例において、予定インパクト算出部13Aは、ファンド運用期間中についてはローン返済後収入ICと元収入ICとの差分を定量的インパクトの予定量として算出し、ファンド運用期間の終了後の期間中については実際の収入ICと元収入ICとの差分を定量的インパクトの予定量として算出する。元収入IC、ローン返済後収入IC(またはローン返済額)および実際の収入ICは、インパクト関連情報取得部11が取得するインパクト関連情報に含まれている。
【0042】
ここで、予定インパクト算出部13Aは、ファンド運用期間の開始時から所定期間後のタイミングでインパクト関連情報取得部11により取得されるインパクト関連情報に基づいて、レポーティング対象期間中(ファンドの運用期間中および運用期間終了後の期間中)における定量的インパクトの予定量を算出する。所定期間後のタイミングは、収入額がほぼ一定に安定することが見込まれるタイミングである。例えば、ファンドの運用開始から4ヵ月後(最初の四半期)のタイミングとすることが可能である。なお、インパクト関連情報を何回か取得してみて収入額が安定したかを判断するようにしてもよい。この場合は収入額の変動率を見て予定インパクト算出部13Aが統計的に判断する。個々の投資対象者によって定常的な収入額が異なるため、複数回取得することでより正確な予定量を得ることができる。
【0043】
予定インパクト算出部13Aは、ファンド運用期間の終了時またはその後のタイミングでインパクト関連情報取得部11により取得されるインパクト関連情報に基づいて、ファンド運用期間の終了後の期間における定量的インパクトの予定量を算出し直すようにしてもよい。ファンドの運用開始から4ヵ月後にインパクト関連情報として取得されたその当時の実際の収入ICと、36ヵ月の運用期間が終了した後にインパクト関連情報として取得される直近の収入ICとの間に差が生じている可能性があるためである。直近の収入ICに基づいてファンド運用期間の終了後における定量的インパクトの予定量を算出し直すことにより、より正確な予定量を得ることができる。
【0044】
予定インパクト算出部13Aは、レポーティング対象期間中における定量的インパクトの予定量の総額を算出するようにしてもよい。同様に、実績インパクト算出部13Bは、ファンドの運用開始時から現在タイミングまでの定量的インパクトの実績量の総額を算出するようにしてもよい。図3の例において、レポーティング対象期間中における定量的インパクトの予定量の総額は、斜線で示す領域の合計金額に相当し、以下の式により概算することが可能である。
IC×36ヵ月+IC×(レポーティング対象期間-36ヵ月)-IC×レポーティング対象期間
【0045】
ファンドから資金を調達して事業を行う投資対象者が1人以上の個人(例えば、事業組合に所属する複数の個人)である場合、インパクト関連情報取得部11は、1人以上の個人に関するインパクト関連情報をそれぞれ取得する。そして、定量的インパクト算出部13は、インパクト関連情報取得部11により取得された1人以上の個人に関するインパクト関連情報に基づいて、一人当たりの定量的インパクトの予定量と実績量とを個人ごとに算出するようにしてもよい。一人当たりの定量的インパクトの予定量については、図3に例示した通りである。
【0046】
これに加えて定量的インパクト算出部13は、ファンド全体の定量的インパクトの予定量と実績量とを算出するようにしてもよい。ファンド全体の定量的インパクトは、個人ごとに算出した一人当たりの定量的インパクトを合計することによって求めることが可能である。また、ファンド全体の定量的インパクトの予定量を算出する場合に、レポーティング対象期間の途中で事業を離脱する投資対象者がいる可能性がいることを考慮して決定されたロス率を含む関数に従ってファンド全体の定量的インパクトの予定量を算出するようにしてもよい。この場合におけるファンド全体の定量的インパクトの予定量は、以下の式により算出することが可能である。
人数分のΣ(一人当たりの定量的インパクトの予定量総額)×(1-ロス率)
【0047】
定性的インパクト評価部14は、インパクト関連情報取得部11により取得されたインパクト関連情報(特に、社会的インパクトの定性化に資する情報)に基づいて、投資対象者が事業を開始する前と比べて投資対象者の生活が定性的に改善されているか否かを評価する。定性的インパクト評価部14は、今回および次回以降のレポート作成に利用可能とするために、定量的インパクトの評価結果を記憶媒体に記憶して保存する。
【0048】
社会的インパクトの定性化に資する情報は、例えば投資対象者の生活の状況が分かる画像、動画、インタビュー記事、アンケート回答情報などである。定性的インパクト評価部14は、例えばアンケート回答情報に基づいて、生活が改善されているか否かを評価する。あるいは、定性的インパクト評価部14は、インタビュー記事の文章を自然言語解析して単語を抽出し、抽出された単語が、生活が改善されていることを示す単語としてあらかじめ登録されたキーワードと一致するか否かを解析することにより、生活が改善されているか否かを評価するようにしてもよい。また、定性的インパクト評価部14は、動画に含まれる発話音声を音声認識してテキスト化し、そこから自然言語解析して抽出した単語がキーワードと一致するか否かを解析することにより、生活が改善されているか否かを評価するようにしてもよい。
【0049】
なお、定性的インパクトを複数のカテゴリに分類し、投資対象者が事業を開始する前と比べて投資対象者の生活が定性的に改善されているか否かをカテゴリごとに評価するようにしてもよい。カテゴリは、例えば衣・食・住の3つとすることが可能である。さらに、貯蓄、教育などのカテゴリを加えてもよい。
【0050】
レポート作成部15は、定量的インパクト算出部13により算出された定量的インパクトおよび定性的インパクト評価部14により評価された定性的インパクトを含むレポートを作成する。定性的インパクト評価部14による評価結果に加え、インパクト関連情報取得部11により取得された社会的インパクトの定性化に資する情報(投資対象者の生活の状況が分かる画像、動画、インタビュー記事、アンケート回答情報など)を含む内容のレポートを作成するようにしてもよい。さらに、定量的インパクトおよび定性的インパクトに加え、投資関連情報取得部12により取得される投資に対する経済的リターンを含むレポートを作成するようにしてもよい。なお、資金提供者による資金提供が、利益を得ることを目的としていない寄付等の場合は、経済的リターンの情報をレポートに含めなくてもよい。
【0051】
定量的インパクトに関しては、定量的インパクトの予定量および実績量が可視化されたレポートを作成する。定性的インパクトに関しては、投資対象者が事業を開始する前と比べて投資対象者の生活が定性的に改善されていることが可視化されたレポートを作成する。社会的な貢献思考の強い特に個人投資家にとっては、定量的な効果よりも定性的な効果の方が実感しやすい傾向がある。そのため、投資前後における投資対象者の生活状況の変化が分かるレポートを作成することにより、経済的リターンが弱くても社会的インパクトを重視して投資をする投資家層を呼び込み、より一層の社会的インパクトを創出することが期待できる。
【0052】
ここで、レポート作成部15は、実績インパクト算出部13Bにより複数のタイミングごとに算出される定量的インパクトの実績量の変化が可視化されたレポートを作成するようにしてもよい。例えば、前回の定量的インパクトの実績量と今回の定量的インパクトの実績量とを含むレポートあるいは前回と今回の定量的インパクトの差分を含むレポートを作成することが可能である。あるいは、実績インパクト算出部13Bが複数のタイミングごとに算出される定量的インパクトの実績量を複数のタイミングごとに累積し、レポート作成部15が複数のタイミングごとに定量的インパクトの実績量の累積値が可視化されたレポートを作成するようにしてもよい。
【0053】
定量的インパクトの実績量に加えて、定量的インパクトの予定量についても累積値が可視化されたレポートを作成するようにしてもよい。この場合、予定インパクト算出部12Aは、レポーティング対象期間中の複数時点における定量的インパクトの予定量を複数時点ごとに累積する。レポート作成部15は、複数のタイミングごとに定量的インパクトの実績量の累積値が可視化されるとともに、複数時点ごとに定量的インパクトの予定量の累積値が可視化されたレポートを作成する。
【0054】
図4は、定量的インパクトの予定量および実績量を累積値として可視化した情報の一例を示す図である。図4は、横軸を時間、縦軸を収入増加量の累積値として、図3に示した例をもとに描画した折れ線グラフを示している。図4(a)は、ファンド運用期間中に作成される3回目のタイミングのレポートに含まれる折れ線グラフを示す。図4(b)は、ファンド運用期間の終了時に作成されるレポートに含まれる折れ線グラフを示す。
【0055】
図4(a)において、実績量の折れ線グラフAPは、3回分の定量的インパクトの実績量を累積値として示したものである。予定量の折れ線グラフEX,EXは、運用期間中の予定量および運用期間経過後の予定量を累積値として示したものである。図3で説明したように、事業を開始した後の投資対象者の収入ICが一定値で推移することを前提として定量的インパクトの予定量を算出しているが、累積値で表すと右肩上がりの直線となる。ファンド運用期間中の直線EXの傾きはローン返済後収入ICによるものであり、ファンド運用期間の経過後の直線EXの傾きは実際の収入ICによるものである。ファンド運用期間の経過によりローン返済がなくなるので、その後は直線EXの傾きが直線EXの傾きよりも大きくなっている。
【0056】
図4(b)において、実績量の折れ線グラフAP’は、ファンド運用期間中における複数のタイミングごとに算出された定量的インパクトの実績量を累積値として示したものである。予定量の折れ線グラフEX,EXは、図4(a)と同じものである。図4(b)では、ファンド運用期間の経過後の直線EX’が追加されている。この直線EX’は、ファンド運用期間の終了時のタイミングでインパクト関連情報取得部11により取得されるインパクト関連情報に基づいて算出し直された定量的インパクトの予定量の累積値を示している。図4(b)の例では、直線EX’の傾きが直線EXの傾きよりも大きくなっている。これにより、当初の予定よりも実績が向上していることを一目で確認することができる。
【0057】
また、事業を行う投資対象者が複数の個人である場合に、投資家がその中から任意の投資対象者を選択して投資できるようにし、選択された投資対象者に関する社会的インパクトとファンド全体の社会的インパクトとが可視化されたレポートを作成するようにしてもよい。例えば、投資対象者選択用のウェブページを投資家端末10に表示し、投資家が投資対象として希望する事業を選択すると、その事業に関する組合に所属する複数の投資候補者が一覧表示されるようにする。投資家は、この候補一覧の中から所望の投資対象者を選択する。レポート作成部15は、このようにして選択された投資対象者に関する社会的インパクトとファンド全体の社会的インパクトとが可視化されたレポートを作成する。投資家が投資対象者を自分で選ぶことができるようにすることで、投資家の投資に対するモチベーションを向上させることが可能である。なお、投資家に対して、自分が投資した投資対象者の顔が見えることが重要なポイントであるため、選択自体は投資家が行わずシステムが行うようにしてもよい。
【0058】
図5は、レポート作成部15により作成されるレポートの一例を示す図である。このレポートは、投資家により選択された3人の投資対象者に関する社会的インパクトとファンド全体の社会的インパクトとを可視化したものである。
【0059】
このレポートには、ファンド全体における定量的インパクトの累積値51が含まれている。図5の例では、ファンド運用期間の終了時における定量的インパクトの予定量の累積値と、現在までの定量的インパクトの実績量の累積値とが示されている。これにより、投資家は、定量的インパクトの予定量と実績量の全体像を把握することができ、社会的意味の大きい(規模の大きい)ファンドへ参加していることを認識することができる。
【0060】
また、レポートには、3人の投資対象者それぞれについての定量的インパクトの実績量の前回からの変化量52と、レポーティング対象期間における定量的インパクトの予定量および実績量を累積値として可視化した折れ線グラフ53とが含まれている。これにより、投資家は、個々の投資対象者に生じている社会的インパクトの変化を一目で分かりやすく認識することができ、投資対象者の社会的インパクトに自分が貢献していることを実感することができる。
【0061】
また、レポートには、ファンド運用期間中における定量的インパクトの予定量の3人分の総額54が含まれている。図5の例では、投資家の出資額と、投資対象者の収入増加量の予定量総額とが示されている。これにより、投資家は、定量的インパクトの予定量総額が出資額以上に生まれることを認識することができる。
【0062】
また、レポートには、定性的インパクトの評価結果55と、投資対象者の生活状況を示したインタビュー記事またはアンケート回答情報56とが含まれている。図5の例では、定性的インパクトの評価結果55として、投資対象者が事業を開始する前と比べて投資対象者の生活が定性的に改善されているカテゴリが示されている。具体的には、複数のカテゴリを示すアイコンが示されており、改善したカテゴリのアイコンは“済”の意味でグレーアウトされている。これにより、投資家は、投資対象者の生活状況に関する定性的な変化を実感することが可能である。複数回のレポート受領において前回報告済みの項目を思い出すことができ、さらにカテゴリのマスを埋めていくゲーミフィケーションの要素で継続的な投資に対するモチベーションも維持することが可能である。
【0063】
また、レポートには、投資家が投資対象者に対して親近感を持つことができるように、投資対象者の写真57と、投資対象者から送られたメッセージ58とが含まれている。また、レポートには、投資に対する経済的リターンに関する情報59が含まれている。図5の例では、投資の運用開始日、運用終了日、経済的リターンの支払い予定月と予定額、これまでの支払い総額が示されている。
【0064】
なお、達成された社会的インパクトの大きさに応じてレポートの背景色や背景デザインを変えるようにしてもよい。例えば、達成された社会的インパクトが小さいうちはグレーまたは曇り空とし、達成された社会的インパクトが大きい場合は青色または青空とすることで、達成された社会的インパクトの大きさを直感的に把握することができる。
【0065】
レポート提示部16は、レポート作成部15により作成されたレポートを投資家に提示する。例えば、レポート提示部16は、レポートをウェブページの形態で投資家端末10に提示する。具体的には、レポート提示部16は、レポートのウェブページのデータを生成し、投資家端末10が所定のURL(Uniform Resource Locator)を指定してアクセス可能な格納場所にそのデータを保存する。これにより投資家は、任意のタイミングで投資家端末10のウェブブラウザからURLを指定することにより、レポートのウェブページを閲覧することが可能である。
【0066】
レポート提示部16は、レポートを所定フォーマットのドキュメントファイルとして生成し、これを電子メールに添付して投資家端末10へ送信するようにしてもよい。あるいは、ドキュメントファイルを添付することに代えて、上述のURLをメール本文に記述した電子メールを投資家端末10へ送信するようにしてもよい。別の例として、レポート提示部16は、レポートをプリントアウトするようにしてもよい。この場合は、プリントアウトされたレポートを投資家の住所地あるいは指定場所へ送付する。
【0067】
図6は、以上のように構成した第1の実施形態によるインパクト管理サーバ100の動作例を示すフローチャートである。まず、インパクト関連情報取得部11は、前回の情報収集(最初は投資の運用開始)から1ヵ月が経過したか否かを判定する(ステップS1)。まだ1ヵ月が経過していない場合は、ステップS1の判定を繰り返す。1ヵ月が経過した場合、インパクト関連情報取得部11は、社会的インパクトの定量化および定性化に資する情報を情報収集サーバ30から取得する(ステップS2)。また、投資関連情報取得部12は、投資関連情報を投資管理サーバ40から取得する(ステップS3)。
【0068】
次に、定量的インパクト算出部13は、現在が投資の運用開始から所定期間後(例えば、最初の四半期)のタイミングであるか否かを判定する(ステップS4)。所定期間後のタイミングに該当する場合、定量的インパクト算出部13は、予定インパクト算出部13Aによりレポーティング対象期間における定量的インパクトの予定量を算出するとともに、実績インパクト算出部13Bにより現在の定量的インパクトの実績量を算出する。また、定性的インパクト評価部14により現在の投資対象者の生活の改善状況を評価する(ステップS5)。
【0069】
上記ステップS4において、現在が所定期間後のタイミングに該当しないと判定された場合、定量的インパクト算出部13は、現在がファンド運用期間の終了時のタイミングであるか否かを判定する(ステップS6)。運用期間終了時のタイミングに該当する場合、定量的インパクト算出部13は、予定インパクト算出部13Aにより運用期間終了後の期間における定量的インパクトの予定量を算出し直すとともに、実績インパクト算出部13Bにより現在の定量的インパクトの実績量を算出する。また、定性的インパクト評価部14により現在の投資対象者の生活の改善状況を評価する(ステップS7)。
【0070】
上記ステップS6において、現在がファンド運用期間の終了時のタイミングに該当しないと判定された場合、定量的インパクト算出部13は、現在がモニター期間の終了後のタイミングであるか否かを判定する(ステップS8)。モニター期間の終了後のタイミングに該当しない場合、定量的インパクト算出部13は、実績インパクト算出部13Bにより現在の定量的インパクトの実績量を算出するとともに、定性的インパクト評価部14により現在の投資対象者の生活の改善状況を評価する(ステップS9)。
【0071】
ステップS5、ステップS7またはステップS9の何れかにより定量的インパクトの算出および定性的インパクトの評価が行われた後、レポート作成部15は、定量的インパクト算出部13により算出された定量的インパクトおよび定性的インパクト評価部14により評価された定性的インパクトを含むレポートを作成する(ステップS10)。そして、レポート提示部16は、レポート作成部15により作成されたレポートを投資家に提示する(ステップS11)。なお、レポートの提示をウェブページにより行う場合、ステップS11では、当該ウェブページのURLで示される格納場所にレポートのデータを保存する処理を行う。その後、処理はステップS1に戻る。
【0072】
上記ステップS8において、現在がモニター期間の終了後のタイミングに該当すると判定された場合、図6に示すフローチャートの処理は終了する。なお、図6に示すフローチャートの処理が終了した後においても、投資家は任意のタイミングでウェブページにアクセスしてレポートを閲覧することが可能である。
【0073】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトの定量化および定性化に資するインパクト関連情報を、投資の運用を開始したときから定期または非定期の複数のタイミングで取得し、取得したインパクト関連情報に基づいて、定量的インパクトおよび定性的インパクトを複数のタイミングごとに算出および評価するようにしている。このように構成した第1の実施形態によれば、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを、定期または非定期の複数のタイミングごとにモニタリングするような形で算出および評価することができるので、当該社会的インパクトを適切な内容で算出および評価することができる。また、特許文献1のように、ユーザ属性の異なる2以上のユーザが評価することによって社会的インパクト評価の適切性を担保する必要がなく、単一の投資管理者であっても複数のタイミングでモニタリングすることで適切性を担保できる。
【0074】
なお、上記実施形態では、インパクト管理サーバ100がインパクト関連情報取得部11、投資関連情報取得部12、定量的インパクト算出部13および定性的インパクト評価部14を備える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、事業関連者端末20に専用のアプリケーションプログラムをインストールし、このアプリケーションプログラムが上記の機能構成11~14を備えるようにしてもよい。インパクト管理サーバ100は、事業関連者端末20から定量的インパクトおよび定性的インパクトの情報を取得して、社会的インパクトを可視化したレポートを作成する。
【0075】
また、上記実施形態では、定量的インパクトおよび定性的インパクトの両方を含むレポートを作成する例について説明したが、定量的インパクトのみを含むレポートを作成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、定量的インパクトの予定量および実績量の両方を含むレポートを作成する例について説明したが、実績量のみを含むレポートを作成するようにしてもよい。ただし、予定量および実績量の両方を含むレポートを作成することで、予定と実績との差を認識することができる点で好ましい。
【0076】
また、上記実施形態では、定量的インパクトとして収入増加量を算出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。収入増加量は投資額に直接起因する定量的インパクトと言えるが、これに加えて、直接起因する定量的インパクトから派生する副次的なインパクトを算出するようにしてもよい。例えば、収入が増加した結果として教育を受けられるようになった子供の人数などを副次的な定量的インパクトとして算出するようにしてもよい。また、相対的貧困あるいは絶対的貧困の収入額と比較したときの、貧困層からの脱出数を副次的な定量的インパクトとして算出するようにしてもよい。
【0077】
副次的な社会的インパクトが中長期的に貧富の格差を是正する根源的な要素であり、これを定量的に可視化することで、真の意味での社会的インパクトが評価できるようになる。また、これによって、インパクトウォッシュやSDGsウォッシュの疑念を防ぐことができ、社会的貢献思考が強い投資家の投資を呼び込むことが可能となる。
【0078】
また、実績インパクト算出部13Bは、定量的インパクトの実績量として、投資化個人の投資額に基づくインパクト額を算定するようにしてもよい。例えば、実績インパクト算出部13Bは、定量的インパクトの実績量のファンド全体での総額を投資ファンドの全体の投資額で除算することにより、投資単位当たりのインパクト額を算定する。さらに、実績インパクト算出部13Bは、投資単位当たりのインパクト額に対して投資家個人の投資額を積算することにより、投資家個人のインパクト額を算出する。このようにすることで、投資家は自分の貢献度合いが明確に分かるため、ファンドでありながら個別に融資をしている感覚を得ることができる。これにより、投資家の満足度を高めることができ、継続的な投資行動へつながることが期待できる。
【0079】
また、上記実施形態では、ローンの返済期間をファンド運用期間と同じ期間としたが、ファンド組成して運用開始後に事業へ参加する投資対象者を随時募集や入れ替えするパターンの場合には、ファンド運用期間とローンの返済期間が一致していなくてもよい。この場合は、上記実施形態のファンド運用の開始タイミングをローンの実行開始タイミングとして読み替えることで、同等の効果を創出することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、投資家に対して投資候補者のリストを提示し、その中から投資対象者を選択可能とする例について説明したが、投資対象者を選択した後、例えばブロックチェーン技術を利用して、投資家と投資対象者とが直接金融取引できる手段を備えるようにしてもよい。また、デフォルト回避の管理システムを更に備えるようにしてもよい。例えば、人的資本をデフォルト回避に集中投入するようにしてもよい。
【0081】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図7は、第2の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。この図7において、図1に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図7に示すように、第2の実施形態では、図1に示した投資家端末10および投資対象者端末20Aに代えて投資家端末10’および投資対象者端末20A’を備えている。また、図1に示したインパクト管理サーバ100に代えてインパクト管理サーバ200を備えている。インパクト管理サーバ200は特許請求の範囲の情報処理装置に相当し、投資家端末10’は特許請求の範囲のレポート表示端末に相当する。
【0082】
第2の実施形態において、投資家端末10’は、投資家の属性情報(以下、投資家属性という)をインパクト管理サーバ200に提供して登録する投資家属性提供部の機能と、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化したレポートであって、投資家属性に応じて特定される内容を含むレポートをインパクト管理サーバ200から取得して表示するレポート表示部の機能とを備えている。投資対象者端末20A’は、投資対象者の属性情報(以下、投資対象属性という)をインパクト管理サーバ200に提供して登録する機能を有している。なお、この属性情報は情報収集サーバ30へ一旦登録され、情報収集サーバ30からインパクト管理サーバ200に提供して登録されるようにしてもよい。なお、第2の実施形態および後述する第3の実施形態において、投資家属性を資金提供者属性と読み替え、投資対象属性を資金提供対象者属性と読み替えることができる。また、投資候補者を資金提供候補者と読み替えることができる。
【0083】
第2の実施形態において、インパクト管理サーバ200は、投資家端末10’から取得される投資家属性と、投資対象者端末20A’から取得される投資対象属性とに基づいて、投資家と投資対象者とをマッチングさせる処理を実行する。投資家は、マッチングされた投資候補者の中から所望の投資対象者を選択して投資することが可能である。インパクト管理サーバ200は、投資家により選択された投資対象者により行われた事業によって生み出される社会的インパクトの内容を含むレポートを作成する。
【0084】
図8は、第2の実施形態によるインパクト管理サーバ200の機能構成例を示すブロック図である。この図8において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図8に示すように、第2の実施形態によるインパクト管理サーバ200は、図1に示したレポート作成部15に代えてレポート作成部15’を備えている。また、第2の実施形態によるインパクト管理サーバ200は、機能構成として、投資家属性取得部21、投資対象属性取得部22、マッチング部24、情報管理部23および投資実行確率取得部25を更に備えている。また、第2の実施形態によるインパクト管理サーバ200は、記憶媒体として、属性情報記憶部26を更に備えている。
【0085】
上記機能ブロック21~25は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック21~25は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0086】
なお、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様のインパクト管理サーバ100を用い、機能ブロック21~25の構成を投資管理サーバ40が備えるようにしてもよい。あるいは、投資管理サーバ40およびインパクト管理サーバ100とは別にマッチングサーバを設け、機能ブロック21~25の構成をマッチングサーバが備えるようにしてもよい。前者の場合、投資管理サーバ40およびインパクト管理サーバ100により特許請求の範囲の情報処理装置が構成される。後者の場合、インパクト管理サーバ100およびマッチングサーバにより特許請求の範囲の情報処理装置が構成される。
【0087】
投資家属性取得部21は、投資家の属性情報である投資家属性を投資家端末10’から取得する。例えば、投資家属性取得部21は、投資家属性入力用のウェブページを投資家端末10’に表示し、投資家がそのウェブページを通じて入力した投資家属性を投資家端末10’から取得する。投資家属性取得部21が取得する投資家属性は、例えば投資家のデモグラフィック属性(年齢、性別、職業、家族構成など)である。また、投資家属性は、投資家の興味・関心事項を示す情報を含んでもよい。具体的には、投資家の好み(家族有無、関心地域、関心業種など)、関心のあるインパクトテーマ(貧困、環境、ヘルスケア、ジェンダー、雇用就業など)を取得するようにしてもよい。
【0088】
投資対象属性取得部22は、投資対象者の属性情報である投資対象属性を投資対象者端末20A’から取得する。例えば、投資対象属性取得部22は、投資対象属性入力用のウェブページを投資対象者端末20A’に表示し、投資対象者がそのウェブページを通じて入力した投資対象属性を投資対象者端末20A’から取得する。投資対象属性取得部22が取得する投資対象属性は、例えば投資対象者のデモグラフィック属性である。また、投資対象属性は、投資対象者が行う事業に関する事業属性情報を含んでもよい。事業属性情報は、例えば、投資対象者が事業を行う地域、事業が属する業種、事業に関するインパクトテーマなどを含む。
【0089】
情報管理部23は、投資家ごとに投資家属性を属性情報記憶部26のデータベースに記録して管理するとともに、投資対象者ごとに投資対象属性を属性情報記憶部26のデータベースに記録して管理する。
【0090】
マッチング部24は、属性情報記憶部26のデータベースに記憶された投資家属性および投資対象属性に基づいて、投資家属性に対して投資対象属性が所定のマッチング条件に合致する投資対象者を抽出し、抽出した投資対象者を投資候補者として投資家端末10’に提示する。投資家は、マッチング部24により提示される投資候補者の中から所望の投資対象者を選択して投資することが可能である。
【0091】
例えば、マッチング部24は、投資家のデモグラフィック属性に対して投資対象者のデモグラフィック属性が同一または類似するというマッチング条件に合致する投資対象者を投資候補者として抽出する。このようなマッチング条件で投資候補者を抽出することにより、投資家は投資候補者の中から選択した投資対象者に対して親近感を感じ、投資活動に対する満足感、貢献を実感することが可能となる。
【0092】
また、マッチング部24は、投資家の興味・関心事項に対して投資対象者の事業属性情報に含まれる事項またはデモグラフィック属性が同一または類似するというマッチング条件に合致する投資対象者を投資候補者として抽出する。このようなマッチング条件で投資候補者を抽出することにより、もともと目的を持った投資家に対して適切なマッチングを行うことができ、投資家の投資に対するモチベーションを向上させることができる。また、投資家が希望するインパクトテーマに関する事業を行っている投資対象者を選ぶことで、自分が最も関心のある社会課題への貢献を実感することが可能となる。
【0093】
投資家が何れかの投資対象者を選択すると、選択された投資対象者がマッチング部24を通じて情報管理部23に通知される。情報管理部23は、属性情報記憶部26に記憶されているデータベースにおいて、投資家により選択された投資対象者に対して投資実行フラグを付与する。
【0094】
レポート作成部15’は、インパクト関連情報取得部11により取得されたインパクト関連情報および投資関連情報取得部12により取得された投資関連情報を用いて定量的インパクト算出部13により算出された定量的インパクトと定性的インパクト評価部14により評価された定性的インパクトのうち、投資候補者の中から投資家により選択された投資対象者により行われた事業によって生み出される社会的インパクトの内容を含むレポートを作成する。例えば、投資家が3人の投資対象者を選択した場合に作成されるレポートは、図5に示したものと同様になる。投資家により選択された投資対象者は、属性情報記憶部26に記憶されている投資実行フラグを参照することによって認識することが可能である。
【0095】
投資実行確率取得部25は、属性情報記憶部26に記憶されている投資家属性と複数の投資対象属性との各組み合わせを機械学習済みのモデルにそれぞれ入力し、当該モデルから複数の投資対象属性に対応する投資実行確率を取得する。ここで、投資実行確率取得部25のモデルは、投資家属性、投資対象属性および投資実行フラグを学習用データとして用いた機械学習処理により生成されている。投資実行確率は、ある投資家属性に対して、どの投資対象属性を組み合わせたときに投資が実行される可能性(投資候補者の中から投資対象者として選択される可能性)が高いかを示す値である。
【0096】
属性情報記憶部26のデータベースに投資実行フラグが多数記録されていった後には、投資家属性、投資対象属性および投資実行フラグを学習用データとして用いた機械学習処理を行うことにより、投資家属性と投資対象属性との組み合わせが入力された際に投資実行確率が出力されるように構成したモデルを生成することが可能である。
【0097】
マッチング部24は、投資実行確率取得部25により投資家属性と投資対象属性との複数の組み合わせごとに取得された複数の投資実行確率のうち、所定のマッチング条件に合致する投資実行確率に対応する投資対象属性を有する投資対象者を投資候補者として抽出するようにしてもよい。例えば、投資実行確率が最も大きい方から所定数の投資対象者を投資候補者として抽出することが可能である。このようなマッチングを行うことにより、投資の行われる可能性の高い投資候補者を投資家に提示することができる。
【0098】
また例えば、投資実行確率が最も大きい方からと最も小さい方から、それぞれ所定数の投資対象者を投資候補者として抽出するようにしてもよい。あるいは、投資実行確率の最も大きい方からの所定数と、残りはランダムに所定数を抽出するようにしてもよい。このようにすれば、同じ傾向の投資対象者のみがリストアップされることで投資家が飽きてしまう問題を防ぐことができる。
【0099】
なお、マッチング部24は、デモグラフィック属性や興味・関心事項に基づくマッチングを行うことなく、投資実行確率のみに基づくマッチングを行うようにしてもよい。また、マッチング部24は、デモグラフィック属性や興味・関心事項に基づくマッチングと投資実行確率に基づくマッチングとの両方を行うようにしてもよい。両方のマッチングを行う場合、両マッチングのOR条件で抽出される投資候補者を投資家に提示するようにしてもよいし、両マッチングのAND条件で抽出される投資候補者を投資家に提示するようにしてもよい。
【0100】
図9は、以上のように構成した第2の実施形態によるインパクト管理サーバ200が備えるマッチング部24の動作例を示すフローチャートである。この図9に示すフローチャートの処理は、例えば投資家が投資家端末10’からインパクト管理サーバ200に対してマッチングの実行を指示したときに開始する。このとき、その投資家の投資家属性は属性情報記憶部26に既に記憶されており、複数の投資対象者の投資対象属性も属性情報記憶部26に既に記憶されている。
【0101】
まず、マッチング部24は、マッチングの実行を指示した投資家の投資家属性を属性情報記憶部26から取得する(ステップS21)。そして、マッチング部24は、取得した投資家属性と、属性情報記憶部26に記憶されている複数の投資対象者の投資対象属性とに基づいてマッチングを行うことにより、投資家属性に対して投資対象属性が所定のマッチング条件に合致する1以上の投資対象者を抽出し(ステップS22)、抽出した投資対象者を投資候補者として投資家端末10’に提示する(ステップS23)。
【0102】
そして、マッチング部24は、投資候補者の中から何れかが投資家により選択されたか否かを判定する(ステップS24)。選択が行われていない場合、マッチング部24は、投資家から処理終了の指示を受けたか否かを判定する(ステップS25)。処理終了の指示を受けていない場合はステップS24に戻り、投資家により選択が行われるのを待機する。投資家から処理終了の指示を受けた場合は、図9に示すフローチャートの処理を終了する。
【0103】
上記ステップS24において、投資候補者の中から何れかが投資家により選択された場合、マッチング部24は、選択された投資対象者を情報管理部23に通知する。これを受けて情報管理部23は、属性情報記憶部26に記憶されているデータベースにおいて、投資家により選択された投資対象者に対して投資実行フラグを付与する(ステップS26)。これにより、図9に示すフローチャートの処理が終了する。
【0104】
なお、ここでは、投資家がマッチングの実行を指示したときに図9の処理が開始すると説明したが、投資家が投資家属性をインパクト管理サーバ200に登録する処理に続けて図9の処理を実行するようにしてもよい。
【0105】
第2の実施形態においてレポート作成部15’がレポートを作成する際の動作は、図6のフローチャートに示した動作例と同様である。レポート作成部15’は、ステップS10においてレポートを作成する際に、属性情報記憶部26に記憶されている投資実行フラグを参照することにより、レポート対象の投資家により選択された投資対象者を確認し、当該選択された投資対象者により行われた事業によって生み出される社会的インパクトの内容を含むレポートを作成する。
【0106】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、投資家属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成し、作成したレポートを投資家に提示するようにしている。具体的には、投資家属性に対して投資対象属性が所定のマッチング条件に合致する投資対象者を抽出し、抽出した投資対象者を投資候補者として投資家に提示し、投資候補者の中から投資家により選択された投資対象者により行われた事業によって生み出される社会的インパクトの内容を含むレポートを作成するようにしている。
【0107】
このように構成した第2の実施形態によれば、投資家属性に応じた内容のレポートが作成されるので、社会的インパクトを可視化した投資家向けのレポートを適切な内容で作成することができる。また、投資家属性に応じて最適な投資対象者が選定されるので、投資に繋がる確率を上げることができ、結果として社会へのインパクトを最大化することが可能となる。
【0108】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。図10は、第3の実施形態による社会的インパクト提示システムの全体構成例を示す図である。この図10において、図1に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図10に示すように、第3の実施形態では、図1に示した投資家端末10に代えて投資家端末10”を備えている。また、図1に示したインパクト管理サーバ100に代えてインパクト管理サーバ300を備えている。インパクト管理サーバ300は特許請求の範囲の情報処理装置に相当し、投資家端末10”は特許請求の範囲のレポート表示端末に相当する。
【0109】
第3の実施形態において、投資家端末10”は、投資家属性をインパクト管理サーバ300に提供して登録する投資家属性提供部の機能と、投資家からの投資を受けた投資対象者が行う事業によって生み出される社会的インパクトを可視化したレポートであって、投資家属性に応じて特定される内容を含むレポートをインパクト管理サーバ300から取得して表示するレポート表示部の機能とを備えている。第3の実施形態において、インパクト管理サーバ300は、投資家端末10から取得される投資家属性に応じて特定されるレポートフォーマットを用いて、当該レポートフォーマットで規定される内容を含むレポートを作成する。
【0110】
図11は、第3の実施形態によるインパクト管理サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。この図11において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図11に示すように、第3の実施形態によるインパクト管理サーバ300は、図1に示したレポート作成部15に代えてレポート作成部15”を備えている。また、第3の実施形態によるインパクト管理サーバ300は、機能構成として、投資家属性取得部31、情報管理部32およびフォーマット取得部33を更に備えている。また、第3の実施形態によるインパクト管理サーバ300は、記憶媒体として、フォーマット記憶部34および属性情報記憶部35を更に備えている。
【0111】
上記機能ブロック31~33は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック31~33は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0112】
フォーマット記憶部34は、入力情報項目およびレイアウトの少なくとも一方があらかじめ規定された複数のレポートフォーマットをそれぞれの識別情報(以下、フォーマットIDという)と共に記憶する。例えば、フォーマット記憶部34は、図12(a)のように定量的インパクトに関する入力情報項目が多く含まれる客観的パターンのレポートフォーマットと、図12(b)のように定性的インパクトに関する入力情報項目が多く含まれる情緒的パターンのレポートフォーマットとを記憶している。客観的パターンのレポートフォーマットは、機関投資家が重視するものとして想定される入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットである。情緒的パターンのレポートフォーマットは、個人投資家が重視するものとして想定される入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットである。
【0113】
投資家属性取得部31は、投資家の属性情報である投資家属性を投資家端末10”から取得する。例えば、投資家属性取得部31は、投資家属性入力用のウェブページを投資家端末10”に表示し、投資家がそのウェブページを通じて入力した投資家属性を投資家端末10”から取得する。投資家属性取得部31が取得する投資家属性は、例えば投資家が個人投資家か機関投資家かを識別する情報を含む。
【0114】
情報管理部32は、投資家ごとに投資家属性を属性情報記憶部35のデータベースに記録して管理する。また、情報管理部32は、投資家により追加投資アクションがなされた場合に、属性情報記憶部35のデータベースにおいて、追加投資を行った投資家に対して追加投資実行フラグを付与する。
【0115】
フォーマット取得部33は、投資家属性取得部31により取得された投資家属性(属性情報記憶部35のデータベースに記憶されている投資家属性)に基づいて特定されるレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。例えば、ある投資家向けのレポートを作成する場合、フォーマット取得部33は、その投資家の投資家属性を属性情報記憶部35から抽出し、抽出した投資家属性に基づいて特定されるレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。
【0116】
例えば、フォーマット取得部33は、属性情報記憶部35から抽出した投資家属性により投資家が機関投資家であることが示されている場合は、客観的パターンのレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。一方、フォーマット取得部33は、属性情報記憶部35から抽出した投資家属性により投資家が個人投資家であることが示されている場合は、情緒的パターンのレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。
【0117】
レポート作成部15”は、インパクト関連情報取得部11により取得されたインパクト関連情報および投資関連情報取得部12により取得された投資関連情報、更にこれらの情報を用いて定量的インパクト算出部13により算出された定量的インパクトおよび定性的インパクト評価部14により評価された定性的インパクトを用いて、フォーマット取得部33により取得されたレポートフォーマットで規定される内容を含むレポートを作成する。
【0118】
個人投資家は社会課題への貢献度合いを重視する可能性がある一方、機関投資家はより定量的な情報や経済的リターンを重視する可能性がある。これに対し、以上のように投資家属性に応じてレポートフォーマットを切り替えることで、投資家にとって最適な情報を含んだレポートを作成して投資家に提供することができる。これにより、個人投資家のモチベーション向上や、機関投資家の業務効率化(機関投資家の先の投資家への報告などの効率化)に資することができる。
【0119】
なお、以上に説明した投資家属性および投資家属性に応じたレポートフォーマ
ットは一例であり、これに限定されるものではない。例えば、投資家属性は、個人投資家であることを示す情報である場合に、当該個人投資家の興味・関心事項を示す情報を更に含んでもよい。具体的には、投資家の好み(家族有無、関心地域、関心業種など)、関心のあるインパクトテーマ(貧困、環境、ヘルスケア、ジェンダー、雇用就業など)を示す情報を含んでもよい。
【0120】
フォーマット取得部33は、投資家属性に基づいて、個人投資家の興味・関心事項に関する入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。例えば、投資家属性が個人投資家であることを示されており、かつ、投資家の好みとして家族有りが示されている場合は、家族が喜んでいる写真や仕事を頑張っている写真などを多めに含むレポートフォーマットを取得する。あるいは、投資家属性が個人投資家であることを示されており、かつ、環境テーマに関心を有していることが示されている場合は、投資対象者の使用する機材が環境負荷低減に貢献するものであるかどうかなど、インパクトテーマにそった入力情報項目を含むレポートフォーマットを取得する。
【0121】
また、投資家属性は、個人投資家であることを示す情報である場合に、当該個人投資家のパーソナリティを示す情報を更に含んでもよい。パーソナリティを示す情報は、アンケート調査や公知のビッグファイブ等の性格特性診断など一般的な手段で取得するようにしてもよい。また、パーソナリティを示す情報は、個人投資家が富裕層か否かを示す情報を含んでもよい。この場合、フォーマット取得部33は、投資家属性に基づいて、パーソナリティに応じてあらかじめ規定された入力情報項目もしくはレイアウトを含むレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。
【0122】
以上のように、個人投資家の投資家属性を細分化し、細分化した投資家属性に応じてレポートフォーマットを切り替えることで、個人投資家の興味・関心、あるいはパーソナリティに合わせたレポートを作成して投資家に提供することが可能となる。これにより、投資家の満足度を高めることができ、個人投資家の投資へのインセンティブを高めていくことが可能である。
【0123】
また、投資家属性は、投資家が機関投資家であることを示す情報である場合に、機関投資家が金融機関か投資専業か事業会社かを識別する情報を更に含んでもよい。この場合、フォーマット取得部33は、投資家属性に基づいて、金融機関、投資専業または事業会社の何れかに対してあらかじめ関連付けられたレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。
【0124】
さらに、投資家属性は、投資家が金融機関であることを示す情報である場合に、金融機関の顧客層がインパクト投資家か否かを識別する情報を更に含んでもよい。この場合、フォーマット取得部33は、金融機関に関するレポートフォーマットを取得する場合、金融機関の顧客層がインパクト投資家であるか否かに応じてあらかじめ関連付けられたレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する。
【0125】
以上のように、機関投資家の投資家属性を細分化し、細分化した投資家属性に応じてレポートフォーマットを切り替えることで、機関投資家がその先の顧客層(出資者)へレポートを提供することを効率的に行うことが可能となり、顧客層の満足度を高めることもできる。
【0126】
なお、フォーマット取得部33は、追加投資実行フラグを利用した機械学習処理によって生成したモデルを用いて、投資家属性に応じたレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得するようにしてもよい。すなわち、フォーマット取得部33は、機械学習済みのモデルに投資家属性を入力し、当該モデルからフォーマットIDを取得するように構成してもよい。
【0127】
ここで、フォーマット取得部33のモデルは、レポート作成部15”によるレポートの作成に使用されたレポートフォーマットのフォーマットIDと、投資家属性と、追加投資実行フラグとを学習用データとして用いた機械学習処理により生成される。この場合のモデルは、ある投資家属性に対して、どのレポートフォーマットを利用したときに追加投資が実行される可能性が高くなるかが学習されたものである。
【0128】
属性情報記憶部35のデータベースに追加投資実行フラグが多数記録していった後に、フォーマットID、投資家属性および追加投資実行フラグを学習用データとして用いた機械学習処理を行うことにより、投資家属性が入力された際に追加投資が実行される可能性の高いレポートフォーマットのフォーマットIDが出力されるように構成したモデルを生成することが可能である。
【0129】
図13は、以上のように構成した第3の実施形態によるインパクト管理サーバ300の動作例を示すフローチャートである。この図13において、図6に示したステップ番号と同一のステップ番号を付したところは同一の処理を実行する部分であるので、ここでは重複する説明を省略する。なお、図13の処理が開示されるとき、投資家の投資家属性は属性情報記憶部35に既に記憶されている。
【0130】
図13において、ステップS5、ステップS7またはステップS9の何れかにより定量的インパクトの算出および定性的インパクトの評価が行われた後、フォーマット取得部33は、レポート対象とする投資家の投資家属性を属性情報記憶部35から取得し(ステップS31)、当該取得した投資家属性に基づいて特定されるレポートフォーマットをフォーマット記憶部34から取得する(ステップS32)。
【0131】
次いで、レポート作成部15”は、インパクト関連情報取得部11により取得されたインパクト関連情報および投資関連情報取得部12により取得された投資関連情報、更にこれらの情報を用いて定量的インパクト算出部13により算出された定量的インパクトおよび定性的インパクト評価部14により評価された定性的インパクトを用いて、フォーマット取得部33により取得されたレポートフォーマットで規定される内容を含むレポートを作成する(ステップS10)。
【0132】
以上詳しく説明したように、第3の実施形態においても、投資家属性に応じて特定される内容を含むレポートを作成し、作成したレポートを投資家に提示するようにしている。具体的には、第3の実施形態では、投資家属性に応じて特定されるレポートフォーマットを用いてレポートを作成するようにしている。
【0133】
このように構成した第3の実施形態によれば、投資家属性に応じた入力情報項目およびレイアウトを有するレポートフォーマットに従ってレポートが作成されるので、社会的インパクトを可視化した投資家向けのレポートを適切な内容で作成することができる。これにより、投資家の満足度を上げることができ、追加投資に繋がる確率を上げることができ、結果として社会へのインパクトを最大化することが可能となる。
【0134】
以上、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態について説明したが、これらのうち任意の2つまたは3つの実施形態を組み合わせて適用するようにしてもよい。
【0135】
その他、上記第1~第3の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0136】
11 インパクト関連情報取得部
12 投資関連情報取得部
13 定量的インパクト算出部
13A 予定インパクト算出部
13B 実績インパクト算出部
14 定性的インパクト評価部
15,15’,15” レポート作成部
16 レポート提示部
21 投資家属性取得部
22 投資対象属性取得部
23 情報管理部
24 マッチング部
25 投資実行確率取得部
26 属性情報記憶部
31 投資家属性取得部
32 情報管理部
33 フォーマット取得部
34 フォーマット記憶部
35 属性情報記憶部
10,10’,10” 投資家端末
20 事業関連者端末
20A,20A’ 投資対象者端末
20B 運用管理者端末
20C 組合管理者端末
30 情報収集サーバ
40 投資管理サーバ
100,200,300 インパクト管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13