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特開2024-103956還元剤供給システム及び還元剤供給システムの制御装置並びに還元剤供給システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103956
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】還元剤供給システム及び還元剤供給システムの制御装置並びに還元剤供給システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007924
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】田代 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 匡教
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA18
3G091AB04
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA17
3G091FA06
(57)【要約】
【課題】供給通路から分岐する還流通路に連通された圧力ゲージ通路への液体還元剤の残留を抑制し、圧力センサの破損を防止する。
【解決手段】還元剤供給システム(1)の制御装置(50)は、内燃機関(11)の停止時に供給通路(45)内の液体還元剤を貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第1のパージ処理と、第1のパージ処理に続いて、液体還元剤を、供給通路(45)から分岐して貯蔵タンク(17)に接続された還流通路(47)が分岐する分岐位置に到達させない実行時間で、液体還元剤を供給通路(45)側へ圧送し、還流通路(47)へ空気を供給する再充填処理と、再充填処理に続いて、供給通路(45)内の液体還元剤を貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第2のパージ処理と、を実行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤を圧送するポンプ(21)と、
前記液体還元剤を内燃機関(11)の排気通路(13)内に噴射する還元剤噴射弁(19)と、
前記ポンプ(21)と前記還元剤噴射弁(19)とを接続する供給通路(45)と、
前記供給通路(45)から分岐して前記液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンク(17)に接続された還流通路(47)と、
前記還流通路(47)に設けられて前記供給通路(45)側から前記貯蔵タンク(17)側への前記液体還元剤の流通を可能とする一方、前記貯蔵タンク(17)側から前記供給通路(45)側への前記液体還元剤の流通を遮断する一方向弁(29)と、
前記供給通路(45)から前記還流通路(47)が分岐する分岐位置と前記一方向弁(29)との間の前記還流通路(47)から分岐する圧力ゲージ通路(49)と、
前記圧力ゲージ通路(49)に設けられた圧力センサ(31)と、
前記ポンプ(21)及び前記還元剤噴射弁(19)の駆動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置(50)は、前記内燃機関(11)の停止時に前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)に回収する還元剤回収処理を実行する還元剤供給システム(1)において、
前記制御装置(50)は、
前記内燃機関(11)の停止時に、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第1のパージ処理と、
前記第1のパージ処理に続いて、前記還元剤噴射弁(19)を閉じて前記ポンプ(21)を駆動することにより、前記液体還元剤を前記分岐位置に到達させない実行時間で、前記液体還元剤を前記供給通路(45)側へ圧送し、前記還流通路(47)へ空気を供給する再充填処理と、
前記再充填処理に続いて、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第2のパージ処理と、
を実行する、ことを特徴とする還元剤供給システム。
【請求項2】
前記制御装置(50)は、
前記第1のパージ処理の開始後、前記圧力センサ(31)により検出される圧力値が所定の閾値以上上昇したときに前記第1のパージ処理を停止し、前記再充填処理を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給システム。
【請求項3】
前記制御装置(50)は、
前記再充填処理の開始後、所定の実行時間を経過したときに前記再充填処理を停止し、前記第2のパージ処理を開始する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の還元剤供給システム。
【請求項4】
液体還元剤を圧送するポンプ(21)と、前記液体還元剤を内燃機関(11)の排気通路(13)内に噴射する還元剤噴射弁(19)と、を備えた還元剤供給システム(1)の前記ポンプ(21)及び前記還元剤噴射弁(19)の駆動を制御する制御装置(50)において、
前記制御装置(50)は、
前記内燃機関(11)の停止時に前記液体還元剤を貯蔵タンク(17)に回収する還元剤回収処理を実行する際に、
前記内燃機関(11)の停止時に、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記ポンプ(21)と前記還元剤噴射弁(19)とを接続する供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第1のパージ処理と、
前記第1のパージ処理に続いて、前記還元剤噴射弁(19)を閉じて前記ポンプ(21)を駆動することにより、前記液体還元剤を、前記供給通路(45)から分岐して前記貯蔵タンク(17)に接続された還流通路(47)が分岐する分岐位置に到達させない実行時間で、前記液体還元剤を前記供給通路(45)側へ圧送し、前記還流通路(47)へ空気を供給する再充填処理と、
前記再充填処理に続いて、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻す第2のパージ処理と、
を実行する、ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンク(17)と、
前記液体還元剤を圧送するポンプ(21)と、
前記液体還元剤を内燃機関(11)の排気通路(13)内に噴射する還元剤噴射弁(19)と、
前記ポンプ(21)と前記還元剤噴射弁(19)とを接続する供給通路(45)と、
前記供給通路(45)から分岐して前記貯蔵タンク(17)に接続された還流通路(47)と、
前記還流通路(47)に設けられて前記供給通路(45)側から前記貯蔵タンク(17)側への前記液体還元剤の流通を可能とする一方、前記貯蔵タンク(17)側から前記供給通路(45)側への前記液体還元剤の流通を遮断する一方向弁(29)と、
前記供給通路(45)から前記還流通路(47)が分岐する分岐位置と前記一方向弁(29)との間の前記還流通路(47)から分岐する圧力ゲージ通路(49)と、
前記圧力ゲージ通路(49)に設けられた圧力センサ(31)と、
前記ポンプ(21)及び前記還元剤噴射弁(19)の駆動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置(50)は、前記内燃機関(11)の停止時に前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)に回収する還元剤回収処理を実行する還元剤供給システム(1)の制御方法において、
前記制御装置(50)は、
前記内燃機関(11)の停止時に、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻すことと、
続いて、前記還元剤噴射弁(19)を閉じて前記ポンプ(21)を駆動することにより、前記液体還元剤を前記分岐位置に到達させない実行時間で、前記液体還元剤を前記供給通路(45)側へ圧送し、前記還流通路(47)へ空気を供給することと、
続いて、前記還元剤噴射弁(19)を開いて前記ポンプ(21)を駆動することにより前記供給通路(45)内の前記液体還元剤を前記貯蔵タンク(17)へ吸い戻すことと、
を実行する、ことを特徴とする還元剤供給システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤供給システム及び還元剤供給システムの制御装置並びに還元剤供給システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気中にはNO(窒素酸化物)が含まれる。このNOを浄化する排気浄化装置の一つとして、内燃機関の排気通路中に配置される還元触媒と、還元触媒の上流側で尿素水溶液等のアンモニア由来の液体還元剤を噴射する還元剤供給システムとを備えた排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置は、還元触媒中で、排気中のNOと、液体還元剤から生成されるアンモニアとを還元反応させ、NOを窒素や水等に分解する。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給システムの一態様として、ポンプ及び還元剤噴射弁を備え、貯蔵タンク内の液体還元剤をポンプによって圧送するとともに、排気通路に固定された還元剤噴射弁を介して液体還元剤を排気通路内に供給するシステムがある。
【0004】
ここで、液体還元剤として尿素水溶液を使用する場合、尿素水溶液が凍結しないように、凍結温度が最も低くなる濃度の尿素水溶液が用いられる。ただし、尿素水溶液の凍結温度は低くても-11℃程度であり、寒冷地等においては還元剤供給システムによる尿素水溶液の供給が停止されている間に尿素水溶液が凍結するおそれがある。
【0005】
尿素水溶液が凍結すると、次回の始動時に長時間の解凍時間が必要になったり、凍結した尿素水溶液の体積が膨張して還元剤供給システムの構成部品が破損したりするおそれがある。そのため、内燃機関の停止時には、還元剤供給システム内の液体還元剤が流通する空間に残留する尿素水溶液を貯蔵タンク内に回収する制御が行われる。尿素水溶液の回収は、尿素水溶液を圧送するポンプを逆回転させたり、あるいは、尿素水溶液の流路の接続を切り換えてポンプを駆動したりすることで、尿素水溶液を貯蔵タンクへ吸い戻すことによって行われる。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-232298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載の還元剤供給システムは、ポンプと還元剤噴射弁とを接続する供給通路から分岐して貯蔵タンクに接続された還流通路を備え、当該還流通路に、供給通路から貯蔵タンクへの尿素水溶液の流通を可能とする一方で逆方向への液体還元剤の流通を遮断する一方向弁を備えている。このような還元剤供給システムは、液体還元剤を還元剤噴射弁へ供給するとともに一部の液体還元剤を還流通路を介して貯蔵タンクへ還流させて、還元剤噴射弁へ供給する液体還元剤の圧力を所定の圧力に維持しながら還元剤噴射弁の開弁時間を調節することで、液体還元剤の噴射量を制御する。
【0008】
また、供給通路から分岐する還流通路に圧力ゲージ通路を連通させ、当該圧力ゲージ通路に圧力センサが設けられた還元剤供給システムがある。このような還元剤供給システムでは、内燃機関の停止時に上記の尿素水溶液を回収する制御を実行する間、供給通路内の圧力は負圧になり、一方向弁は閉じた状態になる。このため、還流通路及び圧力ゲージ通路に液体還元剤が残留するおそれがある。特に、圧力ゲージ通路内に残留する液体還元剤が凍結した場合、圧力センサの破損につながるおそれがあり、次回以降に液体還元剤の噴射量の制御ができなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、供給通路から分岐する還流通路に連通された圧力ゲージ通路への液体還元剤の残留を抑制し、圧力センサの破損を防止可能な還元剤供給システム及び還元剤供給システムの制御装置並びに還元剤供給システムの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある観点によれば、液体還元剤を圧送するポンプと、上記液体還元剤を内燃機関の排気通路内に噴射する還元剤噴射弁と、上記ポンプと上記還元剤噴射弁とを接続する供給通路と、上記供給通路から分岐して上記液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンクに接続された還流通路と、上記還流通路に設けられて上記供給通路側から上記貯蔵タンク側への上記液体還元剤の流通を可能とする一方、上記貯蔵タンク側から上記供給通路側への上記液体還元剤の流通を遮断する一方向弁と、上記供給通路から上記還流通路が分岐する分岐位置と上記一方向弁との間の上記還流通路から分岐する圧力ゲージ通路と、上記圧力ゲージ通路に設けられた圧力センサと、上記ポンプ及び上記還元剤噴射弁の駆動を制御する制御装置と、を備え、上記制御装置は、上記内燃機関の停止時に上記液体還元剤を上記貯蔵タンクに回収する還元剤回収処理を実行する還元剤供給システムにおいて、上記制御装置は、上記内燃機関の停止時に、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻す第1のパージ処理と、上記第1のパージ処理に続いて、上記還元剤噴射弁を閉じて上記ポンプを駆動することにより、上記液体還元剤を上記分岐位置に到達させない実行時間で、上記液体還元剤を上記供給通路側へ圧送し、上記還流通路へ空気を供給する再充填処理と、上記再充填処理に続いて、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻す第2のパージ処理と、を実行する還元剤供給システムが提供される。
【0011】
本発明の別の観点によれば、液体還元剤を圧送するポンプと、上記液体還元剤を内燃機関の排気通路内に噴射する還元剤噴射弁と、を備えた還元剤供給システムの上記ポンプ及び上記還元剤噴射弁の駆動を制御する制御装置において、上記制御装置は、上記内燃機関の停止時に上記液体還元剤を貯蔵タンクに回収する還元剤回収処理を実行する際に、上記内燃機関の停止時に、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記ポンプと上記還元剤噴射弁とを接続する供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻す第1のパージ処理と、上記第1のパージ処理に続いて、上記還元剤噴射弁を閉じて上記ポンプを駆動することにより、上記液体還元剤を、上記供給通路から分岐して上記貯蔵タンクに接続された還流通路が分岐する分岐位置に到達させない実行時間で、上記液体還元剤を上記供給通路側へ圧送し、上記還流通路へ空気を供給する再充填処理と、上記再充填処理に続いて、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻す第2のパージ処理と、を実行する制御装置が提供される。
【0012】
本発明の別の観点によれば、液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンクと、上記液体還元剤を圧送するポンプと、上記液体還元剤を内燃機関の排気通路内に噴射する還元剤噴射弁と、上記ポンプと上記還元剤噴射弁とを接続する供給通路と、上記供給通路から分岐して上記貯蔵タンクに接続された還流通路と、上記還流通路に設けられて上記供給通路側から上記貯蔵タンク側への上記液体還元剤の流通を可能とする一方、上記貯蔵タンク側から上記供給通路側への上記液体還元剤の流通を遮断する一方向弁と、上記供給通路から上記還流通路が分岐する分岐位置と上記一方向弁との間の上記還流通路から分岐する圧力ゲージ通路と、上記圧力ゲージ通路に設けられた圧力センサと、上記ポンプ及び上記還元剤噴射弁の駆動を制御する制御装置と、を備え、上記制御装置は、上記内燃機関の停止時に上記液体還元剤を上記貯蔵タンクに回収する還元剤回収処理を実行する還元剤供給システムの制御方法において、上記制御装置は、上記内燃機関の停止時に、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻すことと、続いて、上記還元剤噴射弁を閉じて上記ポンプを駆動することにより、上記液体還元剤を上記分岐位置に到達させない実行時間で、上記液体還元剤を上記供給通路側へ圧送し、上記還流通路へ空気を供給することと、続いて、上記還元剤噴射弁を開いて上記ポンプを駆動することにより上記供給通路内の上記液体還元剤を上記貯蔵タンクへ吸い戻すことと、を実行する還元剤供給システムの制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、供給通路から分岐する還流通路に連通された圧力ゲージ通路への液体還元剤の残留を抑制し、圧力センサの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る還元剤供給システムを備えた排気浄化システムの構成図である。
図2】本実施形態に係る還元剤供給システムの制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態による還元剤回収処理のフローチャートである。
図4】本実施形態による第1のパージ処理開始時の液体還元剤の様子を示す説明図である。
図5】本実施形態による還元剤回収処理中の第2の供給通路内の圧力を示す説明図である。
図6】本実施形態による第1のパージ処理中の液体還元剤の様子を示す説明図である。
図7】本実施形態による再充填処理中の液体還元剤の様子を示す説明図である。
図8】本実施形態による第2のパージ処理中の液体還元剤の様子を示す説明図である。
図9】参考例による還元剤回収処理中の第2の供給通路内の圧力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.排気浄化システムの全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る還元剤供給システム10を備えた排気浄化システム1の全体構成の一例を示す説明図である。
排気浄化システム1は、排気中のNOを浄化するシステムであり、ディーゼルエンジン等の内燃機関11の排気通路13に設けられている。排気浄化システム1は、排気通路13の途中に介装された還元触媒15と、還元触媒15よりも上流側で排気通路13内に液体還元剤を供給する還元剤供給システム10とを備えている。
【0017】
還元触媒15は、排気中のNOの還元を促進する機能を有する触媒であり、液体還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、還元触媒15に流れ込む排気中のNOを還元成分によって選択的に還元する。本実施形態の排気浄化システム1は、液体還元剤として尿素水溶液を用いるシステムであり、尿素水溶液が排気通路13中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成され、還元触媒15に吸着される。
【0018】
<2.還元剤供給システム>
続いて、排気浄化システム1に備えられた還元剤供給システム10を説明する。
【0019】
還元剤供給システム10は、液体還元剤が貯蔵される貯蔵タンク17と、液体還元剤を圧送するためのポンプユニット20と、液体還元剤を排気通路13内に噴射する還元剤噴射弁19とを備えている。ポンプユニット20は、ポンプ21及び流路切換弁23を備えている。還元剤噴射弁19、ポンプ21及び流路切換弁23の駆動は、制御装置50によって行われる。
【0020】
ポンプ21と貯蔵タンク17とは第1の供給通路41によって接続されている。第1の供給通路41の貯蔵タンク17側の端部は、液体還元剤の吸い上げを可能にするために、貯蔵タンク17の底面近傍に位置している。ポンプ21と還元剤噴射弁19とは第2の供給通路45によって接続されている。ポンプ21と、第1の供給通路41及び第2の供給通路45とは、流路切換弁23を介して接続されている。
【0021】
流路切換弁23は、ポンプ21によって圧送される液体還元剤の流れる方向を、貯蔵タンク17側から還元剤噴射弁19側に流れる方向(以下「正方向」という。)と、還元剤噴射弁19側から貯蔵タンク17側に流れる方向(以下「逆方向」という。)とに切換える。本実施形態では、流路切換弁23は、非通電状態で第1の供給通路41をポンプ21の吸入側21aに連通するとともに第2の供給通路45をポンプ21の吐出側21bに連通する一方、通電状態で第1の供給通路41をポンプ21の吐出側21bに連通するとともに第2の供給通路45をポンプ21の吸入側21aに連通する。
【0022】
つまり、内燃機関11の排気通路13への液体還元剤の噴射制御を行う際には、液体還元剤を還元剤噴射弁19側に供給するために、流路切換弁23は非通電状態とされる。このとき、液体還元剤は正方向に流れる。一方、内燃機関11の停止時において、還元剤供給システム10内の液体還元剤を貯蔵タンク17に回収する際には、流路切換弁23は通電状態とされる。このとき、液体還元剤は逆方向に流れる。
【0023】
なお、液体還元剤を貯蔵タンク17に回収するための構成は、流路切換弁23を設ける例に限られない。例えばポンプ21を逆回転可能なポンプとして、液体還元剤を回収可能に構成することもできる。
【0024】
第2の供給通路45には、第2の供給通路45から分岐して貯蔵タンク17に接続された還流通路47が接続されている。還流通路47の貯蔵タンク17側の端部は、液体還元剤の逆流を防ぐために、貯蔵タンク17内の気相部分に接続されている。なお、貯蔵タンク17は、内部の圧力が大気圧で保たれるように構成されている。
【0025】
還流通路47の途中には、流路面積が小さく絞られたオリフィス27と、一方向弁29とが設けられている。オリフィス27及び一方向弁29のうち、第2の供給通路45側に設けられたオリフィス27は、第2の供給通路45内の圧力を保持する機能を有する。また、オリフィス27よりも貯蔵タンク17側に設けられた一方向弁29は、第2の供給通路45側から貯蔵タンク17側への液体還元剤の流通を可能とする一方、貯蔵タンク17側から第2の供給通路45側への液体還元剤の流通を遮断する。一方向弁29に設けられたスプリングのばね力は、第2の供給通路45内の圧力が正圧(大気圧よりも高い状態)となったときに一方向弁29が開弁する程度に設定されている。
【0026】
還流通路47のうち、第2の供給通路45から分岐する還流通路47の分岐位置とオリフィス27及び一方向弁29との間の領域には、圧力ゲージ通路49が接続されている。圧力ゲージ通路49は、第2の供給通路45及び還流通路47内の圧力を圧力センサ31に導く通路であり、反対側の端部に圧力センサ31が設けられている。
【0027】
ポンプ21は、制御装置50による通電制御によって、所定の流量の液体還元剤を圧送する。本実施形態では、ポンプ21は電磁式ポンプであり、駆動デューティ比が大きいほどポンプ21の出力(吐出流量)が大きくなる。本実施形態で、当該ポンプ21が、液体還元剤を貯蔵タンク17に回収する機能も有する。
【0028】
内燃機関11の排気通路13への液体還元剤の噴射制御時において、制御装置50は、圧力センサ31によって検出される圧力値(以下、この値を「検出圧力」と称する。)Puが、あらかじめ設定された所定の目標圧力Pu_tgtで維持されるように、ポンプ21の出力をフィードバック制御する。具体的に、第2の供給通路45へ圧送される液体還元剤の一部が還流通路47を介して貯蔵タンク17へ循環可能な状態で、制御装置50は、圧力センサ31の検出圧力Puと所定の目標圧力Pu_tgtとの差分ΔPuに基づいてポンプ21の出力をフィードバック制御する。また、液体還元剤を逆方向に流して貯蔵タンク17に回収する場合において、制御装置50は、基本的に出力を一定にしてポンプ21の駆動を制御する。
【0029】
還元剤噴射弁19は、内燃機関11の運転状態において、制御装置50による通電制御によって開閉され、所定量の液体還元剤を排気通路13内に噴射する。本実施形態では、還元剤噴射弁19は、非通電状態で閉弁し、通電状態で開弁する、電磁式のオンオフ弁である。制御装置50は、所定の演算式に基づいて目標噴射量Qdv_tgtを求めるとともに、第2の供給通路45内の圧力(検出圧力Pu)が所定の目標圧力Pu_tgtとなっているものとして、あらかじめ定められた噴射周期ごとに、目標噴射量Qdv_tgtに応じた駆動デューティ比で還元剤噴射弁19の通電制御を行う。還元剤噴射弁19の駆動デューティ比とは、一噴射周期中の開弁時間の割合をいう。
【0030】
一方、制御装置50は、内燃機関11の停止時において、液体還元剤を回収する際に、還元剤噴射弁19を開いた状態で保持する。これにより、還元剤噴射弁19の噴孔を介して空気(排気)が第2の供給通路45に導入され、液体還元剤が貯蔵タンク17内に回収されやすくなる。
【0031】
<3.制御装置>
続いて、還元剤供給システム10の制御装置50を説明する。
【0032】
(3-1.構成)
図2は、本実施形態の制御装置50のうち、液体還元剤の回収処理に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示す。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置からなる制御部51と、制御部51と通信可能に接続された記憶部61とを備えている。
【0033】
記憶部61は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶素子を含む。記憶部61は、制御部51により実行されるコンピュータプログラムや演算処理に用いられるパラメータ、制御部51による演算結果等のデータを記憶する。記憶部61の一部は、制御部51のワーク領域として使用される。ただし、記憶部61を構成する記録媒体の種類や数は特に限定されるものではない。
【0034】
制御装置50は、その他、ポンプ21、流路切換弁23及び還元剤噴射弁19を駆動する図示しない駆動回路や、図示しないタイマカウンタ等を備えている。また、制御装置50には、還元剤供給システム10の起動及び停止を指示する信号S_swと、圧力センサ31から出力されるセンサ信号S_puが入力される。
【0035】
制御部51は、回収制御部53、流路切換弁駆動制御部55、ポンプ駆動制御部57及び噴射弁駆動制御部59を備えている。具体的に、これらの各部は、演算処理装置によるコンピュータプログラムの実行によって実現される機能である。ただし、これらの各部の一部が、アナログ回路により構成されていてもよい。
【0036】
流路切換弁駆動制御部55、ポンプ駆動制御部57及び噴射弁駆動制御部59は、それぞれ、回収制御部53からの指令に従って、図示しない流路切換弁駆動回路、ポンプ駆動回路及び還元剤噴射弁駆動回路に対して指令信号を出力する。
【0037】
回収制御部53は、例えば、還元剤供給システム10の停止を指示する信号S_swが入力されたときに、液体還元剤の回収処理を開始する。回収制御部53は、第1のパージ処理、再充填処理及び第2のパージ処理を順次実行し、液体還元剤を貯蔵タンク17内へ回収する。
【0038】
第1のパージ処理及び第2のパージ処理において、回収制御部53は、還元剤噴射弁19及び流路切換弁23を通電状態にし、ポンプ21を所定の出力で駆動する。これにより、還元剤噴射弁19の噴孔を介して第2の供給通路45内へ空気が導入されつつ、液体還元剤が第2の供給通路45側から貯蔵タンク17側へ吸い戻される。

また、再充填処理において、回収制御部53は、還元剤噴射弁19及び流路切換弁23を非通電状態にし、ポンプ21を所定の出力で駆動する。これにより、一旦液体還元剤が回収された第2の供給通路45内の空気が圧縮されつつ、液体還元剤が第2の供給通路45側へ圧送される。
【0039】
(3-2.処理動作)
続いて、制御装置50の制御部51による還元剤回収処理の動作を具体的に説明する。
【0040】
図3は、制御部51による還元剤回収処理のフローチャートを示す。図3のフローチャートに示される還元剤回収処理は、内燃機関11の停止時において常時実行される。
【0041】
制御装置50は、還元剤供給システム10の起動を停止する信号S_swを検知すると(ステップS1)、第1のパージ処理を実行する(ステップS3)。還元剤供給システム10の起動を停止する信号S_swは、内燃機関11のイグニッションスイッチがオフにされたことを示す信号であってもよく、内燃機関11の駆動を制御する制御装置からの指令信号であってもよい。
【0042】
制御装置50は、第1のパージ処理において、流路切換弁23を通電状態にして液体還元剤が第2の供給通路45側から貯蔵タンク17側へ流れるように流路を切り換えた後、還元剤噴射弁19を通電状態にして開弁する。ポンプ21は駆動状態となっているために、液体還元剤が貯蔵タンク17内に回収され始めるとともに、還元剤噴射弁19の噴孔を介して第2の供給通路45に空気(排ガス)が導入される。
【0043】
このとき、還元剤噴射弁19を開弁する時刻を、流路切換弁23を切換える時刻よりも遅らせることにより、排気通路13内に液体還元剤が漏出することを防ぐことができる。ただし、開弁時期を遅らせることは必須の事項ではない。また、流路切換弁23に通電する際に、一旦ポンプ21の駆動を停止し、流路切換弁23を通電状態にした後でポンプ21の駆動を再開してもよい。
【0044】
本実施形態では、制御装置50は、第1のパージ処理の実行中、ポンプ21の出力を所定値に固定する。このため、第1のパージ処理の継続時間によって、第2の供給通路45から貯蔵タンク17に回収される液体還元剤の量を把握することができる。なお、第1のパージ処理時におけるポンプ21の出力は可変となっていてもよい。
【0045】
図4は、第1のパージ処理の開始後の液体還元剤の様子を示す模式図である。第1のパージ処理が開始されると、還元剤噴射弁19の噴孔を介して第2の供給通路45に空気が導入されつつ、ポンプ21により第2の供給通路45内の液体還元剤が貯蔵タンク17側へ吸い戻される。還元剤噴射弁19の噴孔の面積が小さいために、第1のパージ処理の実行中、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puは負圧になる。
【0046】
図5は、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puを示す説明図である。図5中の横軸は時間Tiを示し、縦軸は検出圧力Puを示す。また、図5中の圧力Peは、大気圧を示す。内燃機関11が始動し、液体還元剤を内燃機関11の排気通路13内へ供給する還元剤噴射制御(pc)の実行期間には、検出圧力Puは、所定の目標圧力(図示せず)で維持される。内燃機関11が停止した時刻Ti_1において第1のパージ処理(pg1)の実行が開始されると、検出圧力Puは低下し、負圧を示す。
【0047】
図3に戻り、第1のパージ処理を開始した後、制御装置50は、再充填処理の開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS5)。再充填処理の開始条件は、第2の供給通路45内の液体還元剤の大部分が貯蔵タンク17側へ吸い戻された状態を判定可能な条件として任意に設定されてよい。本実施形態では、制御装置50は、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puが所定の閾値以上上昇したときに、再充填処理の開始条件が成立したと判定する。
【0048】
具体的に、第1のパージ処理を開始した後、第2の供給通路45から大部分の液体還元剤が貯蔵タンク17へ吸い戻されると、ポンプ21は空気を吸入し吐出するようになる。このため、ポンプ21の駆動に対する抵抗が低下し、第2の供給通路45内の圧力は、減圧された状態から所定の閾値以上上昇する(図5の時刻Ti_2)。したがって、制御装置50は、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puが所定の閾値以上上昇したときに、再充填処理の開始条件が成立したと判定することができる。所定の閾値は、あらかじめ実験やシミュレーションに基づいて任意の適切な値に設定され得る。
【0049】
なお、制御装置50は、第1のパージ処理を開始してからの経過時間が所定の閾値に到達したときに、再充填処理の開始条件が成立したと判定してもよい。この場合、第1のパージ処理を実施する際の条件下で、第2の供給通路45内の液体還元剤の大部分が貯蔵タンク17側へ吸い戻される時間をあらかじめ求め、所定の閾値に設定する。
【0050】
図6は、第1のパージ処理を停止する直前の液体還元剤の様子を示す説明図である。第1のパージ処理により、第2の供給通路45から大部分の液体還元剤が貯蔵タンク17へ吸い戻されているものの、還流通路47は一方向弁29により閉じられていることから、還流通路47内の液体還元剤は残留した状態となっている。また、還流通路47から分岐した圧力ゲージ通路49内の液体還元剤も同様に残留した状態となっている。
【0051】
図3に戻り、制御装置50は、再充填処理の開始条件が成立するまでの間、ステップS5の判定を繰り返す。制御装置50は、再充填処理の開始条件が成立したと判定すると(S5/yes)、第1のパージ処理を停止し、再充填処理を開始する(ステップS7)。制御装置50は、再充填処理において、還元剤噴射弁19を非通電状態にして閉弁した後、流路切換弁23を非通電状態にして液体還元剤が貯蔵タンク17側から第2の供給通路45側へ流れるように流路を切り換える。ポンプ21は駆動状態となっているために、液体還元剤が再び第2の供給通路45側へ圧送される。ただし、流路切換弁23への通電を停止する際に、一旦ポンプ21の駆動を停止し、流路切換弁23を非通電状態にした後でポンプ21の駆動を再開してもよい。
【0052】
図7は、再充填処理を実行中の液体還元剤の様子を示す説明図である。再充填処理の実行中、還元剤噴射弁19が閉弁されるため、再充填処理の開始時に第2の供給通路45内に滞留する空気は第2の供給通路45内で圧縮され、第2の供給通路45内の検出圧力Puは上昇する(図5の再充填処理rbの実行期間Ti2~Ti3の検出圧力Puを参照)。このとき、圧縮された空気の一部が圧力ゲージ通路49内にも押し込まれ、圧力ゲージ通路49内の液体還元剤が圧縮状態となる。一方向弁29が開かれると、還流通路47内に残留していた液体還元剤が一方向弁29を通過して貯蔵タンク17へ排出される。この段階で、圧力ゲージ通路49内の一部の液体還元剤を除き、還元通路47内に残留していた液体還元剤が貯蔵タンク17へ排出される。
【0053】
図3に戻り、再充填処理を開始した後、制御装置50は、再充填処理の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS9)。再充填処理の終了条件は、還流通路47内の液体還元剤が貯蔵タンク17側へ排出される一方、ポンプ21により圧送される液体還元剤が還流通路47へ流入することのない実行時間の上限を判定可能な条件として任意に設定されてよい。つまり、圧力ゲージ通路49内の液体還元剤を流出させるために還流通路47から液体還元剤を排出したにもかかわらず、再び還流通路47に液体還元剤が流れ込むことのないように再充填処理を終了させる時刻を判定する。
【0054】
本実施形態では、制御装置50は、再充填処理を開始してからの経過時間が所定の閾値に到達したときに、再充填処理の終了条件が成立したと判定する。この場合、再充填処理を実施する際の条件下で、還流通路47内の液体還元剤が一方向弁29を介して貯蔵タンク17側へ流出する時間をあらかじめ求め、所定の閾値に設定する。本実施形態では、制御装置50は、再充填処理の実行中、ポンプ21の出力を所定値に固定する。このため、再充填処理の継続時間によって、還流通路47内の液体還元剤が一方向弁29を介して貯蔵タンク17側へ流出するまでの時間を把握することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2の供給通路45のうち、ポンプ21と還流通路47の分岐位置との間には、液体還元剤中の異物を捕集するフィルタ25が備えられている。したがって、当該フィルタの容量分の空気も第2の供給通路45側へ圧送されるため、ポンプ21により圧送される液体還元剤が還流通路47へ流入することなく還流通路47内の液体還元剤を貯蔵タンク17側へ排出させることができる。
【0056】
制御装置50は、再充填処理の終了条件が成立するまでの間、ステップS9の判定を繰り返す。制御装置50は、再充填処理の終了条件が成立したと判定すると(S9/yes)、再充填処理を停止し、第2のパージ処理を開始する(ステップS11)。
【0057】
制御装置50は、第2のパージ処理において、流路切換弁23を再び通電状態にして液体還元剤が第2の供給通路45側から貯蔵タンク17側へ流れるように流路を切り換えるとともに、還元剤噴射弁19を通電状態にして開弁する。ポンプ21は駆動状態となっているために、還元剤噴射弁19の噴孔を介して第2の供給通路45に空気(排ガス)が導入されつつ、再び液体還元剤が貯蔵タンク17内に回収され始める。ただし、流路切換弁23に通電する際に、一旦ポンプ21の駆動を停止し、流路切換弁23を通電状態にした後でポンプ21の駆動を再開してもよい。
【0058】
本実施形態では、制御装置50は、第2のパージ処理の実行中、ポンプ21の出力を所定値に固定する。このため、第2のパージ処理の継続時間によって、再充填処理の停止時に第2の供給通路45内に残留していた液体還元剤が貯蔵タンク17に回収される時間を把握することができる。
【0059】
図8は、第2のパージ処理を実行中の液体還元剤の様子を示す説明図である。第2のパージ処理を実行中、第2の供給通路45内に残留していた液体還元剤は、ポンプ21によって貯蔵タンク17側へ吸い戻される。このとき、一方向弁29は閉弁状態になるが、すでに還流通路47内の液体還元剤は、一方向弁29を通過して排出されている。また、第2のパージ処理により、圧力ゲージ通路49内の圧力が減圧され、再充填処理中に圧力ゲージ通路49内に圧縮されていた空気が解放される。これにより、圧力ゲージ通路49内に残留していた液体還元剤が還流通路47へ押し出され、圧力ゲージ通路49が液体還元剤により塞がれた状態が解消される。
【0060】
図3に戻り、第2のパージ処理を開始した後、制御装置50は、還元剤回収処理の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS13)。還元剤回収処理の終了条件は、第2の供給通路45内の液体還元剤が貯蔵タンク17側へ回収されたと判定し得る条件であれば特に限定されるものではない。本実施形態では、制御装置50は、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puが所定の閾値以上上昇したときに、還元剤回収処理の終了条件が成立したと判定する。
【0061】
図5に示すように、第2のパージ処理(pg2)の開始時には第2の供給通路45の一部には液体還元剤が残留しているため、時刻Ti3で第2のパージ処理(pg2)の実行が開始されると、検出圧力Puは低下し始め、負圧を示す。その後、第2の供給通路45から液体還元剤が貯蔵タンク17へ吸い戻されると、ポンプ21は空気を吸入し吐出するようになる。このため、第2の供給通路45内の圧力は、減圧された状態から所定の閾値以上上昇する(時刻Ti_4)。したがって、制御装置50は、圧力センサ31により検出される第2の供給通路45内の検出圧力Puが所定の閾値以上上昇したときに、還元剤回収処理の終了条件が成立したと判定することができる。所定の閾値は、あらかじめ実験やシミュレーションに基づいて任意の適切な値に設定され得る。
【0062】
なお、制御装置50は、第2のパージ処理を開始してからの経過時間が所定の閾値に到達したときに、還元剤回収処理の終了条件が成立したと判定してもよい。この場合の所定の閾値は任意に設定されてよいが、終了時刻が遅れるほど電力の浪費となることから、あらかじめ任意の適切な値に設定されることが望ましい。
【0063】
制御装置50は、還元剤回収処理の終了条件が成立したと判定するまでの間、ステップS13の判定を繰り返す。制御装置50は、還元剤回収処理の終了条件が成立したと判定した場合(S13/Yes)、制御装置50は、第2のパージ処理を停止し、還元剤回収処理を終了する(ステップS15)。具体的に、制御装置50は、ポンプ21を停止するとともに、流路切換弁23及び還元剤噴射弁19を非通電状態として、還元剤供給システム10の起動を停止する。第2のパージ処理を停止した後、第2の供給通路45内の検出圧力Puは、大気圧Peとなる(図5の時刻Ti_4以降)。
【0064】
なお、本実施形態の還元剤回収処理を実行することにより、還元剤回収処理の終了後において、圧力ゲージ通路49の一部に液体還元剤が残留している場合であっても、圧力ゲージ通路49を塞ぐことのない残留量となる。したがって、圧力ゲージ通路49内で当該液体還元剤が凍結した場合であっても、凍結した液体還元剤の体積の膨張等によって圧力センサ31が破損することを防ぐことができる。また、凍結した少量の液体還元剤は、還元剤供給システム10の次の起動時に供給される液体還元剤によって融解される。あるいは、凍結した少量の液体還元剤は、還元剤供給システム10の次の起動時に実行される解凍制御によって融解される。
【0065】
図9は、本実施形態に係る制御装置50による再充填処理を実行しない参考例における、第2の供給通路45内の検出圧力Puを示す説明図である。参考例では、還元剤噴射制御(pc)の停止後、パージ処理(pg)が実行される一方、再充填処理は実行されない。この場合、図6に示した状態で還元剤供給システム10が停止されるため、液体還元剤の凍結によって圧力センサ31が破損するおそれがある。
【0066】
これに対して、本実施形態の還元剤供給システム10において、制御装置50は、第1のパージ処理を実行した後、再充填処理を実行して還流通路47及び圧力ゲージ通路49内の液体還元剤を一方向弁29を通過させて排出する。その後、制御装置50は、第2パージ処理を実行して、第2の供給通路45内に残留する液体還元剤を貯蔵タンク17側へ吸い戻す。したがって、還元剤供給システム10の停止時に第2の供給通路45、還流通路47及び圧力ゲージ通路49内に残留する液体還元剤を極わずかとすることができる。これにより、特に圧力ゲージ通路49に残留した液体還元剤の凍結によって圧力センサ31が破損することを防ぐことができる。
【0067】
また、本実施の形態の還元剤供給システム10において、制御装置50は、第1のパージ処理の開始後、圧力センサ31により検出される検出圧力Puが所定の閾値以上上昇したときに第1のパージ処理を停止し、再充填処理を開始する。これにより、再充填処理を開始させるタイミングが適切に判定され、第1のパージ処理の実行時間が必要以上に長くなることを防ぐことができる。したがって、還元剤回収処理時間が必要以上に長くなることを抑制し、かつ、電力消費量の増加を抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態の還元剤供給システム10において、制御装置50は、再充填処理の開始後、所定の実行時間を経過したときに再充填処理を停止し、第2のパージ処理を開始する。これにより、ポンプ21により圧送される液体還元剤が、液体還元剤を排出した還流通路47及び圧力ゲージ通路49に再び流入することを防ぐことができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0070】
1:排気浄化システム、10:還元剤供給システム、11:内燃機関、13:排気通路、15:還元触媒、17:貯蔵タンク、19:還元剤噴射弁、20:ポンプユニット、21:ポンプ、23:流路切換弁、25:フィルタ、27:オリフィス、29:一方向弁、31:圧力センサ、41:第1の供給通路、45:第2の供給通路、47:還流通路、49:圧力ゲージ通路、50:制御装置、51:制御部、53:回収制御部、55:流路切換弁駆動制御部、57:ポンプ駆動制御部、59:噴射弁駆動制御部、61:記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9