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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103959
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/18 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
B66B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007932
(22)【出願日】2023-01-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
(72)【発明者】
【氏名】山田 真太郎
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA18
3F304DA33
(57)【要約】
【課題】 仮に、ガバナロープが破断している場合でも、かごをかごレールに停止させるときのかごの移動加速度を設定加速度で維持することができるエレベータを提供する。
【解決手段】 エレベータにおいては、調速機は、かごに移動可能に接続される接続体と、かごの移動に伴って走行するように、接続体に接続される無端環状のガバナロープと、かごが設定速度で下方へ移動したときに、ガバナロープの走行を停止させるガバナ停止部と、を備え、接続体は、回転体から分離され、接続体は、ガバナ停止部がガバナロープの走行を停止することによって、回転体が第1回転方向へ回転するように回転体を押す係合部を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
前記かごを案内するかごレールと、
前記かごに接続されて前記かごと共に移動し、前記かごを前記かごレールに停止させる停止装置と、
前記かごの移動速度を検出する調速機と、を備え、
前記停止装置は、
前記かごに回転可能に接続される回転体と、
前記回転体に接続され、前記回転体が回転することによって、前記かごを前記かごレールに停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で可動である可動子と、
前記かごが設定加速度で下方へ移動したときに、弾性復元力を前記回転体に加えて前記回転体を第1回転方向へ回転させることによって前記可動子を前記停止位置に移動させる停止弾性部と、を備え、
前記調速機は、
前記かごに移動可能に接続される接続体と、
前記かごの移動に伴って走行するように、前記接続体に接続される無端環状のガバナロープと、
前記かごが設定速度で下方へ移動したときに、前記ガバナロープの走行を停止させるガバナ停止部と、を備え、
前記接続体は、前記回転体から分離され、
前記接続体は、前記ガバナ停止部が前記ガバナロープの走行を停止することによって、前記回転体が前記第1回転方向へ回転するように前記回転体を押す係合部を備える、エレベータ。
【請求項2】
前記接続体は、前記かごに回転可能に接続され、
前記接続体の回転中心は、前記回転体の回転中心と、同じである、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記調速機は、前記接続体に力を加えることによって、前記接続体の移動を規制する規制部を備える、請求項1又は2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記規制部は、前記かごが前記設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、前記接続体の移動を停止させる、請求項3に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記接続体は、前記かごに回転可能に接続され、
前記調速機は、前記接続体に力を加えることによって、前記接続体の移動を規制する規制部を備え、
前記規制部は、前記接続体に加えられるトルクが設定トルク未満であるときに前記接続体の回転を停止するように、前記かごと前記接続体とを接続するトルクリミッタを備える、請求項1に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータは、かごと、かごを案内するかごレールと、かごをかごレールに停止させる停止装置と、かごの移動速度を検出する調速機とを備えている(例えば、特許文献1)。停止装置は、かごをかごレールに停止させる停止位置へ移動する可動子を備えている。
【0003】
特許文献1に係るエレベータにおいては、調速機は、かごに回転可能に接続される回転体と、回転体に接続されるガバナロープと、かごが設定速度で下方へ移動したときに、ガバナロープの走行を停止させるガバナ停止部とを備えており、そして、可動子は、接続体に接続されている。これにより、かごが設定速度で下方へ移動したときに、ガバナロープの走行が停止されることによって、可動子が停止位置へ移動するため、かごは、かごレールに停止する。
【0004】
また、停止装置は、かごが設定加速度で下方へ移動したときに、弾性復元力を回転体に加えることによって可動子を停止位置へ移動させる停止弾性部と、停止弾性部に重量を付与する錘とを備えている。そして、かごが設定加速度で下方へ移動したときに、停止弾性部の弾性復元力が回転体に加えられることによって、可動子が停止位置へ移動するため、かごは、かごレールに停止する。
【0005】
ところで、停止弾性部の弾性復元力は、錘及びガバナロープ等の重量を考慮して、設定されている。したがって、仮に、ガバナロープが破断された場合には、かごをかごレールに停止させるときのかごの移動加速度が、設定加速度ではなくなる場合がある。例えば、特許文献1に係るエレベータにおいては、仮に、ガバナロープが破断された場合には、かごが設定加速度で下方へ移動しても、停止装置は、かごをかごレールに停止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/162946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、課題は、仮に、ガバナロープが破断している場合でも、かごをかごレールに停止させるときのかごの移動加速度を設定加速度で維持することができるエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
エレベータは、かごと、前記かごを案内するかごレールと、前記かごに接続されて前記かごと共に移動し、前記かごを前記かごレールに停止させる停止装置と、前記かごの移動速度を検出する調速機と、を備え、前記停止装置は、前記かごに回転可能に接続される回転体と、前記回転体に接続され、前記回転体が回転することによって、前記かごを前記かごレールに停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で可動である可動子と、前記かごが設定加速度で下方へ移動したときに、弾性復元力を前記回転体に加えて前記回転体を第1回転方向へ回転させることによって前記可動子を前記停止位置に移動させる停止弾性部と、を備え、前記調速機は、前記かごに移動可能に接続される接続体と、前記かごの移動に伴って走行するように、前記接続体に接続される無端環状のガバナロープと、前記かごが設定速度で下方へ移動したときに、前記ガバナロープの走行を停止させるガバナ停止部と、を備え、前記接続体は、前記回転体から分離され、前記接続体は、前記ガバナ停止部が前記ガバナロープの走行を停止することによって、前記回転体が前記第1回転方向へ回転するように前記回転体を押す係合部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るエレベータの概要図
図2】同実施形態に係るエレベータの要部正面図
図3】同実施形態に係るエレベータの要部拡大正面図
図4】同実施形態に係るエレベータの要部拡大平面図
図5】同実施形態に係るエレベータの動作を説明する要部正面図((a):通常のときを示す図、(b):かごが設定速度で下方へ移動したときを示す図)
図6】同実施形態に係るエレベータの動作を説明する要部正面図((a):通常のときを示す図、(b):かごが設定加速度で下方へ移動したときを示す図)
図7】同実施形態に係るエレベータの動作を説明する要部正面図((a):ガバナロープが破断しているときを示す図、(b):(a)の状態から、かごが設定加速度で下方へ移動したときを示す図)
図8】他の実施形態に係るエレベータの要部拡大正面図
図9】さらに他の実施形態に係るエレベータの要部拡大正面図
図10】さらに他の実施形態に係るエレベータの要部拡大正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図面において、構成要素の寸法は、例えば、理解を容易にするために、実際の寸法に対して拡大、縮小して示す場合があり、また、各図面の間での寸法比は、一致していない場合がある。なお、各図面において、例えば、理解を容易にするために、構成要素の一部を省略して示す場合がある。
【0011】
第1、第2等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、構成要素は、この用語によって特に限定されるものではない。なお、序数を含む構成要素の個数は、特に限定されず、例えば、一つでもよい場合がある。また、以下の明細書及び図面で用いられる序数は、特許請求の範囲に記載された序数と異なる場合がある。
【0012】
以下、エレベータにおける一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、エレベータの構成等の理解を助けるために例示するものであり、エレベータの構成を限定するものではない。
【0013】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、人が乗るためのかご2と、かご2を移動させるかご駆動部3と、かご2を案内するかごレール4と、かご2の移動速度を検出する調速機5と、エレベータ1の各部を制御する制御装置1aとを備えていてもよい。かご2は、例えば、本実施形態のように、人が乗るかご室2aと、かご室2aに固定されるかご枠2bとを備えていてもよい。
【0014】
かご駆動部3の駆動方式は、特に限定されない。例えば、本実施形態のように、エレベータ1は、第1端部がかご2に接続されるかごロープ6と、かごロープ6の第2端部に接続される釣合錘7と、釣合錘7を案内する錘レール8とを備え、かご駆動部3は、かごロープ6が巻き掛けられる綱車3aと、綱車3aを回転させる駆動源3b(例えば、モータ)と、綱車3aを制動する制動部3c(例えば、ブレーキ)とを備えている、という構成でもよい。
【0015】
即ち、かご駆動部3は、巻上機であって、エレベータ1は、ロープ式の駆動方式である、という構成でもよい。なお、斯かる構成に限られず、例えば、かご駆動部3は、油圧装置であり、エレベータ1は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、例えば、かご駆動部3は、リニアモータであって、エレベータ1は、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0016】
本実施形態においては、かごロープ6の第1端部がかご2に固定され、かごロープ6の第2端部が釣合錘7に固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ6の両端部がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ6がかご2のシーブ及び釣合錘7のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ6がかご2及び釣合錘7にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0017】
また、本実施形態に係るエレベータ1は、かご駆動部3である巻上機を機械室X2の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室X2が備えられておらず、エレベータ1は、巻上機を昇降路X1の内部に配置する、という構成でもよい。
【0018】
なお、各図において、第1方向D1は、第1横方向D1であり、第2方向D2は、第1横方向D1と直交する横方向である第2横方向D2であり、第3方向D3は、各横方向D1,D2とそれぞれ直交する上下方向D3であり、かご2及び釣合錘7が移動する方向である。
【0019】
調速機5は、例えば、本実施形態のように、かご2に移動可能に接続される接続体9と、かご2の移動に伴って走行するように、接続体9に接続される無端環状のガバナロープ10と、ガバナロープ10が巻き掛けられるガバナ車11と、ガバナロープ10に張力を付与するために、ガバナロープ10に吊り下げられる張り車12と、かご2が設定速度で下方へ移動したときに、ガバナロープ10の走行を停止させるガバナ停止部13とを備えていてもよい。
【0020】
ガバナ停止部13の構成は、特に限定されない。例えば、かご2が設定速度で下方へ移動し、ガバナ車11が設定回転速度で回転したときに、ガバナ停止部13は、ガバナロープ10を把持することによって、ガバナロープ10の走行を停止させる、という構成でもよい。なお、設定速度は、例えば、かご2の定格速度(通常運転時の最大速度)よりも大きくしてもよく、例えば、かご2の定格速度の110%~120%としてもよい。
【0021】
図1及び図2に示すように、エレベータ1は、例えば、本実施形態のように、かご2をかごレール4に停止させる停止装置14を備えていてもよい。停止装置14は、例えば、本実施形態のように、かご2に接続されることによって、かご2と共に移動してもよい。なお、かご2及び停止装置14を備える装置は、エレベータかご装置1bといい、エレベータかご装置1bは、かごレール4に案内されることによって上下方向D3へ移動する。
【0022】
停止装置14は、例えば、本実施形態のように、複数の停止部15と、停止部15に力を加える停止加力部16と、複数の停止部15が連動するように複数の停止部15に接続され、複数の停止部15へ力を伝達する伝達部17と、停止部15の重量を支持する支持部18とを備えていてもよい。
【0023】
停止部15の個数は、特に限定されず、例えば、本実施形態のように、二つでもよく、かご2をかごレール4に停止できる個数であればよい。また、例えば、本実施形態のように、停止部15の個数は、かごレール4の個数と同じであってもよい。
【0024】
停止部15は、例えば、本実施形態のように、かご2のかご枠2bに対して固定される固定子15aと、伝達部17に接続され、固定子15aに対して可動である可動子15bとを備えていてもよい。伝達部17は、例えば、本実施形態のように、かご2のかご枠2bに対して第1横方向D1を軸にして回転可能な第1及び第2回転体17a,17bと、第1及び第2回転体17a,17bにそれぞれ回転可能に接続される長尺体17cとを備えていてもよい。
【0025】
可動子15bは、例えば、本実施形態のように、回転体17a,17bに回転可能に接続されていてもよい。これにより、回転体17a,17bが回転することによって、可動子15bは、例えば、固定子15aと接することによって固定子15aと協働してかご2をかごレール4に停止させる停止位置(図5(b)、図6(b)及び図7(b)参照)と、停止位置よりも下方の待機位置(図3図5(a)、図6(a)及び図7(a)参照)との間で、固定子15aに対して可動である。
【0026】
可動子15bは、例えば、楔状に形成されていてもよい。そして、例えば、可動子15bが停止位置に位置するときに、可動子15bは、固定子15aと協働してかごレール4に加圧して接触することによって、かご2は、かごレール4に停止する、という構成でもよい。
【0027】
図2に示すように、停止加力部16は、例えば、可動子15bに上方への弾性復元力を加えるために、長尺体17cの長手方向に弾性変形する停止弾性部16aと、かご2のかご枠2bに固定され、停止弾性部16aの第1端を保持する第1保持部16bと、長尺体17cに固定され、停止弾性部16aの第2端を保持する第2保持部16cとを備えていてもよい。
【0028】
これにより、停止弾性部16aの弾性復元力は、伝達部17によって、可動子15bに伝達される。そして、停止弾性部16aが、伝達部17に接続されているため、停止弾性部16aは、伝達部17を介して接続される可動子15bに、上方への力を加え続けている。特に限定されないが、停止弾性部16aは、例えば、本実施形態のように、弦巻ばねとしてもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、支持部18は、例えば、かご2のかご枠2bに固定されていてもよい。そして、支持部18は、例えば、本実施形態のように、伝達部17の第1回転体17aに接することによって、可動子15bを間接的に支持してもよく、また、斯かる構成に限られず、例えば、可動子15bに接することによって、可動子15bを直接的に支持していてもよい。
【0030】
これにより、可動子15bが待機位置に位置するときに、支持部18が可動子15bの重量を支持しているため、停止弾性部16aは、可動子15bの一部の重量によって、弾性変形している。したがって、待機位置は、釣合位置よりも、上方の位置となっている。なお、釣合位置とは、かご2の移動加速度がゼロである場合に、可動子15bが支持部18に支持されることなく、可動子15bの全体の重量が停止弾性部16aの弾性復元力と釣り合う位置のことである。
【0031】
図3及び図4に示すように、接続体9は、かご2のかご枠2bに回転可能に接続される板状の接続本体部9aと、ガバナ停止部13(図1参照)がガバナロープ10の走行を停止することによって、第1回転体17aが第1回転方向D4へ回転するように第1回転体17aを押す係合部9bとを備えていてもよい。そして、接続体9は、例えば、伝達部17(具体的には、第1回転体17a)から分離されていてもよい。これにより、接続体9は、可動子15bから分離されている。
【0032】
なお、図4は、かご室2aよりも下方における要部平面図を図示している。また、図4においては、ガバナロープ10、停止部15(固定子15a及び可動子15b)、長尺体17c、支持部18は、図示されていない。
【0033】
係合部9bは、例えば、本実施形態のように、接続本体部9aから第1横方向D1へ突出していてもよい。なお、斯かる構成に限られず、例えば、第1回転体17aは、板状の回転本体部と、回転本体部から突出する突出部とを備えており、係合部9bは、当該突出部を押す接続本体部9a(具体的には、接続本体部9aの上端部)で構成されていてもよい。
【0034】
調速機5は、例えば、本実施形態のように、接続体9に力を加えることによって、接続体9の回転移動を規制する規制部19を備えていてもよい。規制部19は、例えば、本実施形態のように、接続体9とかご2のかご枠2bとを接続するトルクリミッタ19aを備えていてもよい。
【0035】
例えば、本実施形態のように、かご2は、かご枠2bに固定される第1軸部2cを備えており、接続体9は、接続本体部9aに固定される第2軸部9cを備えており、トルクリミッタ19aは、かご2の第1軸部2cと接続体9の第2軸部9cとを接続する、という構成でもよい。
【0036】
これにより、接続体9に加えられる第1回転方向D4のトルクが設定トルク未満であるときに、トルクリミッタ19aは、接続体9の第1回転方向D4への回転を停止する(回転移動させない)。したがって、例えば、ガバナロープ10が揺動したり、かご2が加速度を有して下方へ移動したりすることによって、接続体9に第1回転方向D4のトルクが加えられた場合でも、接続体9の回転を停止することができるため、接続体9が不必要に揺動(回転移動)することを抑制することができる。
【0037】
なお、第1回転体17aは、例えば、本実施形態のように、接続体9の第2軸部9cに回転可能に接続されることによって、かご2のかご枠2bに回転可能に接続されていてもよい。これにより、接続体9及び第1回転体17aは、それぞれ第1横方向D1を中心に回転する。そして、接続体9の回転中心は、第1回転体17aの回転中心と、同じである。具体的には、接続体9の回転中心は、第1横方向D1視において、第1回転体17aの回転中心と、一致する。
【0038】
トルクリミッタ19aの構成は、特に限定されない。例えば、トルクリミッタ19aは、本実施形態のように、接続体9に設定トルク以上のトルクが加えられ接続体9がかご枠2bに対して回転するときに、かご枠2b及び接続体9間の力の伝達を遮断するトルク遮断型のトルクリミッタ19aとしてもよい。これにより、かご枠2bに対して接続体9を第1回転方向D4へ円滑に回転させることができる。
【0039】
特に限定されないが、トルク遮断型のトルクリミッタ19aとして、例えば、ボール式、ローラ式、シャーピン式等が挙げられる。そして、トルク遮断型のトルクリミッタ19aにおいては、かご枠2b及び接続体9間の力の伝達を遮断した後に(即ち、接続体9の第1回転方向D4への回転の停止が解除された後に)、接続体9を第1回転方向D4へ回転させるために必要となるトルクは、特に限定されないが、例えば、設定トルクの10%以下であってもよい。
【0040】
なお、トルクリミッタ19aは、トルク遮断型のトルクリミッタ19aだけでなく、例えば、接続体9がかご枠2bに対して回転するときに、かご枠2b及び接続体9間に設定トルク未満の力の伝達を維持するトルク維持型のトルクリミッタ19aとしてもよい。
【0041】
特に限定されないが、トルク維持型のトルクリミッタ19aとして、例えば、摩擦式、マグネット式等が挙げられる。そして、トルク維持型のトルクリミッタ19aにおいては、接続体9の第1回転方向D4への回転の停止が解除された後に、接続体9を第1回転方向D4へ回転させるために必要となるトルクは、例えば、設定トルクの90%~100%となる。
【0042】
本実施形態に係るエレベータ1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るエレベータ1の動作について説明する。なお、以下の内容は、エレベータ1の動作等の理解を助けるために例示するものであり、エレベータ1の動作を限定するものではない。
【0043】
まず、かご2が設定速度で下方へ移動したときの動作について、図5を参照しながら説明する。
【0044】
図5(a)に示すように、かご2が設定速度未満で下方へ移動しているときに、可動子15bは、待機位置に位置している。そして、かご2が設定速度(又は設定速度以上)で下方へ移動したときに、調速機5のガバナ停止部13(図1参照)は、ガバナロープ10の走行を停止させる。
【0045】
斯かる状態で、かご2がさらに下方へ移動することによって、接続体9に設定トルク以上のトルクが加えられるため、トルクリミッタ19aは、接続体9の第1回転方向D4への回転を許容する。これにより、図5(b)に示すように、接続体9が第1回転方向D4へ回転移動するため、接続体9の係合部9bは、第1回転体17aを第1回転方向D4へ押す。
【0046】
したがって、第1回転体17aは、第1回転方向D4へ回転する。このとき、接続体9及び第1回転体17aが、それぞれ同じ回転中心で回転するため、接続体9の係合部9bが第1回転体17aを押すときに、接続体9及び第1回転体17aのそれぞれの回転移動を円滑にすることができる。
【0047】
そして、可動子15bが、待機位置から停止位置へ移動することによって、かご2は、かごレール4(図1参照)に停止する。このように、かご2が設定速度(又は設定速度以上)で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4に停止させることができる。
【0048】
次に、かご2が設定加速度で下方へ移動したときの動作について、図6を参照しながら説明する。
【0049】
図6(a)に示すように、例えば、かご2の加速度がゼロである場合に、停止弾性部16aは、少なくとも可動子15bの重量(詳細には、伝達部17の重量も含む)を受けることによって、収縮するように弾性変形する。それに対して、かご2が加速度を有して下方へ移動した場合には、可動子15bに対して上方への慣性力(具体的には、可動子15bの質量とかご2の移動加速度との積)が働く。
【0050】
これにより、可動子15bの見掛けの重量(質量による重力と当該慣性力との合力)が、停止弾性部16aが可動子15b等に加える上方への弾性復元力よりも、小さくなった場合に、可動子15bは、上方へ移動する。なお、可動子15bの見掛けの重量が小さいほど、即ち、かご2の下方への移動加速度が大きいほど、停止弾性部16aの弾性復元量が大きくなるため、可動子15bの位置は、上方になる。
【0051】
したがって、かご2の下方への移動加速度が動作開始加速度以上となることによって、可動子15bは、待機位置から上方へ移動することになる。その結果、例えば、かご2の下方への移動加速度が動作開始加速度未満である場合に、可動子15bが待機位置から移動することを抑制することができる。
【0052】
特に限定されないが、動作開始加速度は、例えば、かご2の定格加速度(通常運転時の最大加速度)よりも、大きくてもよく、例えば、重力加速度の10%~50%としてもよい。これにより、かご2が通常運転しているときに、可動子15bを待機位置で保持することができる。したがって、例えば、可動子15bを不必要に揺動(上下方向D3に移動)することを抑制することができる。
【0053】
一方で、かご2の下方への移動加速度が設定加速度(又は設定加速度以上)になった場合には、停止弾性部16aが、弾性復元力を伝達部17に加えることによって、図6(b)に示すように、第1回転体17aは、第1回転方向D4へ回転する。これにより、可動子15bが、待機位置から停止位置まで上方へ移動するため、かご2は、かごレール4(図1参照)に停止する。
【0054】
このように、かご2が設定加速度(又は設定加速度以上)で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4に停止させることができる。なお、かご2の下方への移動加速度が設定加速度であるときに、可動子15bが停止位置へ移動するように、例えば、可動子15bの重量は、錘などによって、調整されていてもよい。
【0055】
ところで、トルクリミッタ19aの設定トルクは、例えば、本実施形態のように、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに接続体9に生じるトルクよりも大きくてもよい。これにより、かご2が、設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、規制部19は、接続体9の回転移動を停止させる。
【0056】
したがって、かご2が設定加速度で下方へ移動し、第1回転体17aが第1回転方向D4へ回転するときに、接続体9の係合部9bを、第1回転体17aから確実に離すことができる。その結果、かご2が、設定加速度で下方へ移動したときに、例えば、第1回転体17aの回転及び可動子15bの移動を、円滑にすることができる。
【0057】
次に、ガバナロープ10が破断した状態で、かご2が設定加速度で下方へ移動したときの動作について、図7を参照しながら説明する。
【0058】
図7(a)に示すように、例えば、かご2の加速度がゼロである場合に、可動子15bは、待機位置に位置している。そして、接続体9が、第1回転体17aから分離されているため、第1回転体17aは、ガバナロープ10の重量を受けていない。
【0059】
これにより、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2が、設定加速度(又は設定加速度以上)で下方へ移動したときに、停止弾性部16aは、弾性復元力を伝達部17に加えることによって、図7(b)に示すように、第1回転体17aは、第1回転方向D4へ回転する。したがって、可動子15bが、待機位置から停止位置まで上方へ移動するため、かご2は、かごレール4に停止する。
【0060】
このように、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2が設定加速度(又は設定加速度以上)で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4(図1参照)に停止させることができる。具体的には、ガバナロープ10の破断の有無に拘わらず、かご2をかごレール4に停止させるときのかご2の移動加速度を設定加速度で維持することができる。
【0061】
なお、トルクリミッタ19aの設定トルクは、例えば、本実施形態のように、ガバナロープ10が破断し且つかご2が設定加速度で下方へ移動したときに接続体9に生じるトルクよりも大きくてもよい。これにより、ガバナロープ10が破断し且つかご2が設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、規制部19は、接続体9の回転移動を停止させる。
【0062】
したがって、第1回転体17aが第1回転方向D4へ回転するときに、接続体9の係合部9bを、第1回転体17aから確実に離すことができる。その結果、仮に、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、例えば、第1回転体17aの回転及び可動子15bの移動を、円滑にすることができる。
【0063】
[1]
以上より、エレベータ1は、本実施形態のように、かご2と、前記かご2を案内するかごレール4と、前記かご2に接続されて前記かご2と共に移動し、前記かご2を前記かごレール4に停止させる停止装置14と、前記かご2の移動速度を検出する調速機5と、を備え、前記停止装置14は、前記かご2に回転可能に接続される回転体17a,17bと、前記回転体17a,17bに接続され、前記回転体17a,17bが回転することによって、前記かご2を前記かごレール4に停止させる停止位置と、前記停止位置より下方である待機位置と、の間で可動である可動子15bと、前記かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、弾性復元力を前記回転体17a,17bに加えて前記回転体17a,17bを第1回転方向D4へ回転させることによって前記可動子15bを前記停止位置に移動させる停止弾性部16aと、を備え、前記調速機5は、前記かご2に移動可能に接続される接続体9と、前記かご2の移動に伴って走行するように、前記接続体9に接続される無端環状のガバナロープ10と、前記かご2が設定速度で下方へ移動したときに、前記ガバナロープ10の走行を停止させるガバナ停止部13と、を備え、前記接続体9は、前記回転体17a,17bから分離され、前記接続体9は、前記ガバナ停止部13が前記ガバナロープ10の走行を停止することによって、前記回転体17a,17bが前記第1回転方向D4へ回転するように前記回転体(本実施形態においては、第1回転体17a)を押す係合部9bを備える、という構成が好ましい。
【0064】
斯かる構成によれば、かご2が、設定速度で下方へ移動したときに、ガバナ停止部13は、ガバナロープ10の走行を停止させる。これにより、接続体9の係合部9bが、回転体(本実施形態においては、第1回転体17a)を押すため、回転体17a,17bは、第1回転方向D4へ回転する。したがって、可動子15bが、停止位置へ移動するため、かご2は、かごレール4に停止する。
【0065】
ところで、接続体9が、回転体17a,17bから分離されているため、回転体17a,17bは、ガバナロープ10の重量を受けていない。これにより、仮に、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2が、設定加速度で下方へ移動したときに、可動子15bは、停止弾性部16aの弾性復元力によって、停止位置へ移動する。したがって、かご2は、かごレール4に停止する。
【0066】
このように、かご2が設定速度で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4に停止させることができ、また、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4に停止させることできる。しかも、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2が設定加速度で下方へ移動したときに、かご2をかごレール4に停止させることできる。したがって、仮に、ガバナロープ10が破断している場合でも、かご2をかごレール4に停止させるときのかご2の移動加速度を設定加速度で維持することができる。
【0067】
[2]
また、上記[1]のエレベータ1においては、本実施形態のように、前記接続体9は、前記かご2に回転可能に接続され、前記接続体9の回転中心は、前記回転体(本実施形態においては、第1回転体17a)の回転中心と、同じである、という構成が好ましい。
【0068】
斯かる構成によれば、接続体9が回転することによって、接続体9の係合部9bは、回転体(本実施形態においては、第1回転体17a)を押す。これにより、回転体17a,17bが回転するため、可動子15bは、停止位置へ移動する。このとき、接続体9及び回転体17aが、それぞれ同じ回転中心で回転するため、例えば、接続体9の係合部9bが回転体17aを押すときに、接続体9及び回転体17aのそれぞれの回転移動を円滑にすることができる。
【0069】
[3]
また、上記[1]又は[2]のエレベータ1においては、本実施形態のように、前記調速機5は、前記接続体9に力を加えることによって、前記接続体9の移動を規制する規制部19を備える、という構成が好ましい。
【0070】
斯かる構成によれば、規制部19が接続体9に力を加えるため、接続体9の移動は、規制部19によって、規制される。これにより、かご2が加速度を有して移動するときに、接続体9が揺動することを抑制することができる。
【0071】
[4]
また、上記[3]のエレベータ1においては、本実施形態のように、前記規制部19は、前記かご2が前記設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、前記接続体9の移動を停止させる、という構成が好ましい。
【0072】
斯かる構成によれば、かご2が、設定加速度より小さい加速度で下方へ移動するときに、規制部19が、接続体9の移動を停止させるため、接続体9の係合部9bを回転体(本実施形態においては、第1回転体17a)から確実に離すことができる。これにより、かご2が、設定加速度で下方へ移動したときに、回転体17aの回転及び可動子15bの移動を円滑にすることができる。
【0073】
[5]
また、上記[1]~[4]の何れか一つのエレベータ1においては、本実施形態のように、前記接続体9は、前記かご2に回転可能に接続され、前記調速機5は、前記接続体9に力を加えることによって、前記接続体9の移動を規制する規制部19を備え、前記規制部19は、前記接続体9に加えられるトルクが設定トルク未満であるときに前記接続体9の回転を停止するように、前記かご2と前記接続体9とを接続するトルクリミッタ19aを備える、という構成が好ましい。
【0074】
斯かる構成によれば、トルクリミッタ19aがかご2と接続体9とを接続しているため、接続体9に加えられるトルクが設定トルク未満であるときに、接続体9の回転は、停止される。そして、接続体9に加えられるトルクが設定トルク以上であるときに、接続体9は、回転する。
【0075】
なお、エレベータ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0076】
(A)上記実施形態に係るエレベータ1においては、規制部19は、かご2と接続体9とを接続するトルクリミッタ19aを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0077】
例えば、図8に示すように、規制部19は、かご2と接続体9とを接続する弾性体19bを備えている、という構成でもよく、また、例えば、図9に示すように、規制部19は、接続体9に固定される錘部19cを備えている、という構成でもよい。また、例えば、調速機5は、規制部19を備えていない、という構成でもよい。
【0078】
図8に係る構成においては、弾性体19bが接続体9に弾性復元力を加えるため、接続体9の回転移動は、規制される。また、図9に係る構成においては、例えば、錘部19cは、接続体9より重くなっており、錘部19cが接続体9に自重を加えるため、接続体9の回転移動は、規制される。
【0079】
(B)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、停止弾性部16aは、長尺体17cを介して、回転体17a,17bと接続されている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0080】
例えば、図10に示すように、停止弾性部16aは、回転体17aから分離されている、という構成でもよい。特に限定されないが、例えば、図10に示すように、停止加力部16は、停止弾性部16aをかご2に固定する固定部16dと、停止弾性部16aに自重を下方へ加える錘部16eとを備えていてもよい。
【0081】
斯かる構成によれば、かご2が、設定加速度で下方へ移動したときに、停止弾性部16aは、復元することによって、錘部16eを介して第1回転体17aを押す。これにより、第1回転体17aが回転するため、可動子15bが停止位置へ移動する。したがって、かご2は、かごレール4に停止する。
【0082】
(C)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、接続体9は、かご2に回転可能に接続され、接続体9の回転中心は、第1回転体17aの回転中心と、同じである、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0083】
例えば、接続体9は、かご2に直線移動可能(例えば、上下方向D3へ往復移動可能)に接続されている、という構成でもよい。また、例えば、接続体9の回転中心は、第1横方向D1視において、第1回転体17aの回転中心から、離れている、という構成でもよい。
【0084】
(D)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、規制部19は、かご2が設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、接続体9の移動を停止させる、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。
【0085】
例えば、規制部19は、かご2が設定加速度以下の加速度で下方へ移動するときに、接続体9を移動させる、という構成でもよい。特に限定されないが、例えば、かご2の下方への移動加速度が、動作開始加速度以上で且つ設定加速度以下の特定の加速度であるときに、規制部19は、接続体9の移動を開始させる、という構成でもよい。
【0086】
(E)なお、例えば、特許請求の範囲、明細書及び図面において示した方法及び装置における動作、手順、ステップ、及び段階等の各工程の実行順序は、前の工程の結果物を後の工程で用いるものでない限り、任意の順序で実現できる。例えば、便宜上、「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0087】
1…エレベータ、1a…制御装置、1b…エレベータかご装置、2…かご、2a…かご室、2b…かご枠、2c…第1軸部、3…かご駆動部、3a…綱車、3b…駆動源、3c…制動部、4…かごレール、5…調速機、6…かごロープ、7…釣合錘、8…錘レール、9…接続体、9a…接続本体部、9b…係合部、9c…第2軸部、10…ガバナロープ、11…ガバナ車、12…張り車、13…ガバナ停止部、14…停止装置、15…停止部、15a…固定子、15b…可動子、16…停止加力部、16a…停止弾性部、16b…第1保持部、16c…第2保持部、16d…固定部、16e…錘部、17…伝達部、17a…第1回転体、17b…第2回転体、17c…長尺体、18…支持部、19…規制部、19a…トルクリミッタ、19b…弾性体、19c…錘部、D1…第1横方向、D2…第2横方向、D3…上下方向、D4…第1回転方向、X1…昇降路、X2…機械室
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
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図10