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特開2024-103988塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103988
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/14 20060101AFI20240726BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20240726BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20240726BHJP
   B05B 5/025 20060101ALN20240726BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
B05B7/14
B29B11/16
B05B1/04
B05B5/025 B
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007967
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】服部 公治
(72)【発明者】
【氏名】田部 陽大
(72)【発明者】
【氏名】田代 晃
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊樹
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
4F072
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033BA02
4F033BA05
4F033CA05
4F033CA14
4F033DA01
4F033EA01
4F033EA02
4F033GA02
4F033GA11
4F033JA03
4F033LA09
4F033NA01
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB05
4F033QB12Y
4F033QC02
4F033QD02
4F033QD14
4F033QE14
4F033QE23
4F033QF07Y
4F033QF15Y
4F033QF21Y
4F033QH02
4F034AA01
4F034BA05
4F034BA12
4F034BA14
4F034BB15
4F034BB25
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB28
4F072AD42
4F072AG03
4F072AH05
4F072AH13
4F072AH24
(57)【要約】
【課題】任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズル100であって、前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の樹脂粉体吐出口SL1と、前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体が供給される管路47と、前記管路と前記樹脂粉体吐出口とを連通する内部空間と、前記内部空間を区画すると共に前記シート状繊維基材の幅方向に配列された複数の貫通穴が形成された少なくとも1つの拡散板142、143と、を含むエアーノズル41と、少なくとも1つの前記貫通穴の穴面積を調整する穴面積調整手段と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズルであって、
前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の樹脂粉体吐出口と、前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体が供給される管路と、前記管路と前記樹脂粉体吐出口とを連通する内部空間と、前記内部空間を区画すると共に前記シート状繊維基材の幅方向に配列された複数の貫通穴が形成された少なくとも1つの拡散板と、を含むエアーノズルと、
少なくとも1つの前記貫通穴の穴面積を調整する穴面積調整手段と、を備える塗装ノズル。
【請求項2】
前記穴面積調整手段は、前記貫通穴ごとに設けられている請求項1に記載の塗装ノズル。
【請求項3】
前記穴面積調整手段は、前記貫通穴の少なくとも一部を塞いだ状態で前記拡散板に固定される穴塞ぎ板である請求項2に記載の塗装ノズル。
【請求項4】
前記穴面積調整手段は、前記円錐体と、前記貫通穴に対して前記円錐体を接離する方向に移動させることにより前記貫通穴の穴面積を調整する円錐体移動機構と、を備える請求項2に記載の塗装ノズル。
【請求項5】
前記穴面積調整手段は、複数の前記貫通穴ごとに設けられており、複数の前記貫通穴の穴面積を同時に調整する請求項1に記載の塗装ノズル。
【請求項6】
前記穴面積調整手段は、複数の前記貫通穴それぞれの少なくとも一部を塞いだ状態で前記拡散板に固定される穴塞ぎ板である請求項5に記載の塗装ノズル。
【請求項7】
前記穴面積調整手段は、複数の前記貫通穴に頂部が対向した状態で配置される複数の円錐体と、複数の前記貫通穴に対して複数の前記円錐体を接離する方向に移動させることにより複数の前記貫通穴の穴面積を同時に調整する円錐体移動機構と、を備える請求項5に記載の塗装ノズル。
【請求項8】
樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズルであって、
前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の第1樹脂粉体吐出口を含むエアーノズルと、
前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の第2樹脂粉体吐出口と、
前記第1樹脂粉体吐出口から噴射され前記第2樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体を前記第2樹脂粉体吐出口まで供給する供給管と、
前記シート状繊維基材の幅方向に複数配置され、各々の配置箇所で前記供給管の管路面積を調整する流路面積調整プレートと、を備える塗装ノズル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の塗装ノズルを備えたプリプレグ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアーノズル(スリット)から噴射される樹脂粉体の分布(スリットの長手方向の分布)を調整することができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷電された樹脂粉体を、高電圧が印加される電極(高電圧板)と搬送されるシート状繊維基材との間に形成された電界によるクーロン力及びエアーノズルから噴射されるエアの搬送力により、シート状繊維基材に付着させるように構成されたプリプレグ製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6121978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、エアーノズル(スリット)から噴射される樹脂粉体の分布(スリットの長手方向の分布)を調整することができないため、任意の付着量分布(例えば、シート状繊維基材の幅方向に均一な付着量分布又はシート状繊維基材の幅方向の特定箇所の付着量が相対的に多い付着量分布)となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができないという課題がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る塗装ノズルは、樹脂粉体をシート状繊維基材に付着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置に用いられる塗装ノズルであって、前記シート状繊維基材の幅方向に延びたスリット状の樹脂粉体吐出口と、前記樹脂粉体吐出口から前記シート状繊維基材に向けて噴射される空気及び樹脂粉体が供給される管路と、前記管路と前記樹脂粉体吐出口とを連通する内部空間と、前記内部空間を区画すると共に前記シート状繊維基材の幅方向に配列された複数の貫通穴が形成された少なくとも1つの拡散板と、を含むエアーノズルと、少なくとも1つの前記貫通穴の穴面積を調整する穴面積調整手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる塗装ノズル、及びプリプレグ製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す側面図である。
図3図2のA-A矢視図である。
図4】参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
図5】塗装ノズル100の斜視図(透視図)である。
図6】(a)図5中の矢印AR4方向から見たエアーノズル41の矢視図、(b)図6(a)のB-B断面図である。
図7】エアーノズル41(穴塞ぎ板160)の斜視図である。
図8】エアーノズル41(穴塞ぎ板160の変形例)の斜視図である。
図9】(a)実験1の主要条件を表す図、(b)実験2の主要条件を表す図、(c)実験3の主要条件を表す図、(d)実験4の主要条件を表す図である。
図10】(a)実験1~4の主要条件等をまとめた表、(b)実験1~4の結果(第1スリットSL1から噴射される樹脂粉体の分布)を表すグラフである。
図11】第1変形例の塗装ノズル100Aを表す図(図6(b)に相当する図)である。
図12図11のC-C断面図である。
図13】第2変形例の塗装ノズル100Bを表す図(図12に相当する図)である。
図14】第3変形例の塗装ノズル100Cを表す斜視図である。
図15】捕集箱B1~B7を塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向にセットした状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<参考例>
図1から図3を参照して参考例のプリプレグ製造装置について説明する。
【0010】
参考例のプリプレグ製造装置は、樹脂粉体30を炭素繊維織物やUDテープなどのシート状繊維基材50に付着させてプリプレグを製造する装置であって、図1及び図2に示すように、シート状繊維基材50を間にして左右に設けられた2つのチャンバー31,32と、チャンバー31,32内にそれぞれ設けられた供給管37,38と、供給管37,38の端部にそれぞれ接続されたフラット型エアーノズル41,42と、供給管37,38にそれぞれ設けられた粉末樹脂帯電部43,44を主に備えている。
【0011】
チャンバー31,32は、矩形状の外殻31a,32aと、外殻31a,32aの内部に設けられた略矩形状で四角が丸みを帯びた内殻31b,32bを有している。
【0012】
外殻31a,32aのシート状繊維基材50側、すなわち、左側チャンバー31の右端(前面)及び右側チャンバー32の左端(前面)の位置は開放されていて、その間に樹脂粉体30が付着されるシート状繊維基材50が設置されている。また、外殻31a,32aのシート状繊維基材50側とは逆側、すなわち、左側チャンバー31の左端(後面)及び右側チャンバー32の右端(後面)の位置には排出口35,36が形成されている。排出口35,36には、排出口35,36から排出された樹脂粉体30を集める集塵機53,54が取付けられている。
【0013】
また、内殻31b,32bのシート状繊維基材50に相対向する前面位置、すなわち、左側チャンバー31の内殻31bの右端(前面)及び右側チャンバー32の内殻32bの左端(前面)の位置には開口部33,34が形成されている。開口部33,34の周囲には、全体を取り囲むように高電圧板51,52が設置されている。
【0014】
また、チャンバー31,32の内殻31b,32bは、外殻31a,32aに交わることなく仕切られた状態で設けられていて、外殻31a,32aと内殻31b,32bの間には、上下左右に開口部33,34から空気とともに吐出され付着しなかった樹脂粉体30が排出口35,36からチャンバー31,32の外側に排出されるような流路(隙間)45,46が形成されている。
【0015】
供給管37,38は、2つのチャンバー31,32の内殻31b,32b内の略中央の高さの位置にそれぞれ設けられ、その一端が開口部33,34まで略水平に延びている。また、供給管37,38の他端には、フラット型エアーノズル41,42が接続されている。
【0016】
フラット型エアーノズル41,42は、その本体部41a,42aが2つのチャンバー31,32の幅方向(図2においては紙面の表裏方向)に延び、本体部41a,42aのシート状繊維基材50側端部に、本体部41a,42aと同様にチャンバー31,32の幅方向に延びる長穴状の第1スリットSL1(図4参照)が形成され、第1スリットSL1からはカーテン状にエアーが噴射されるようになっている。第1スリットSL1が本開示の第1樹脂粉体吐出口の一例である。
【0017】
フラット型エアーノズル41,42の本体部41a,42aの基端には、一端に樹脂粉体30が投入される投入口47a,48aが設けられた投入管47,48の他端が接続されている。投入管47,48の他端はチャンバー31,32の内殻31b,32b内に入り込んでいるが、投入管47,48の一端は、チャンバー31,32の外部に位置し、その一端に設けられた投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入される。
【0018】
また、投入管47,48の略中央には、空気増幅装置Tを介してコンプレッサ39,40が接続されている。これにより、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気は、空気増幅装置Tで流速がさらに高められるとともに、投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって供給される樹脂粉体30に混合され、高圧の固気二相流としてフラット型エアーノズル41,42に押し込まれるようになっている。
【0019】
粉末樹脂帯電部43,44は、供給管37,38の略中央に設けられ、樹脂粉体30を空気とともにマイナス(逆にプラスでもよい)に帯電させるもので、高い電荷量が樹脂粉体30に与えられる。
【0020】
なお、樹脂粉体30としては、一般的に熱硬化性樹脂が使用されるが熱可塑性樹脂や天然樹脂などであってもよい。また、シート状繊維基材50は炭素繊維系以外の金属繊維や鉱物繊維やガラス繊維や合成繊維からなるものであってもよい。
【0021】
また、シート状繊維基材50はグランド接続されていて、チャンバー31,32の内殻31b,32bに形成された開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52との間に高圧の電界がかけられている。
【0022】
このように構成されたプリプレグ製造装置を使用してプリプレグを製造する方法について説明する。
【0023】
投入管47,48の投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入されると、樹脂粉体30は、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気が空気増幅装置Tによってその流速がさらに高められた高圧の空気と投入管47,48の内部で混合された後、フラット型エアーノズル41,42に押し込まれる。
【0024】
これにより、フラット型エアーノズル41,42の噴射スリットから供給管37,38内に風速が均一化され、樹脂粉体30と空気が混合された固気二相流がエアーカーテン状に送られるとともに、供給管37,38に設けられた粉末樹脂帯電部43,44によって樹脂粉体30と空気がともにマイナスに帯電させられる。
【0025】
そして、帯電された樹脂粉体30と空気が混合された固気二相流は、チャンバー31,32の開口部33,34(本開示の第2樹脂粉体吐出口の一例。図4参照。以下、第2スリットSL2とも記載する)から吐出させられ、シート状繊維基材50に吹き付けられる。このとき、開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52によって、開口部33,34とグランド接続されたシート状繊維基材50の間には、高圧の電界がかけられているとともに、開口部33,34側に負の高電圧がかけられるようにすると、マイナスに帯電された樹脂粉体30は勢いよく開口部33,34からシート状繊維基材50に向かって吐出してそのままシート状繊維基材50に強固な接着力で付着され、プリプレグが製造される。
【0026】
なお、樹脂粉体30が粉末樹脂帯電部43,44によってプラスに帯電される場合には、高電圧板51,52によって開口部33,34側には正の高電圧がかけられる。
【0027】
なお、本明細書においては、プリプレグは、セミプレグを含む。
【0028】
なお、シート状繊維基材50に付着されなかった樹脂粉体30は、2つのチャンバー31,32の外殻31a,32aと内殻31b,32bの間に形成された流路45,46を介して外殻31a,32aの後面側に流され、排出口35,36から2つのチャンバー31,32の外側に排出される。
【0029】
排出された樹脂粉体30は、排出口35,36に接続された集塵機53,54によって、集められ再利用できるようにしている。本実施形態では、図1に示したように、集塵機53,54で集められた樹脂粉体30を再度、定量フィーダーなどを介して投入管47,48の投入口47a,48aに投入し、コンプレッサ39,40を介して空気とともにフラット型エアーノズル41,42に押し込むようにしている。
【0030】
これによれば、シート状繊維基材50を間にして左右に外殻31a,32aと内殻31b,32bで構成されたチャンバー31,32を設け、チャンバー31,32の内殻31b,32bにはそれぞれフラット型エアーノズル41,42が設けられた構成であるので、装置全体が小型化され省スペース化が図られるとともにシート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30が同時に付着させられる。
【0031】
しかも、フラット型エアーノズル41,42を採用したことで、樹脂粉体30が空気と混合されて供給管37,38の後側から高圧でかつ均一の流速で押し込まれるので、供給管37,38内で帯電させられた樹脂粉体30と空気からなる固気二相流の流速は速く、しかも均一化されるために、通常使用されていた整流装置やブロワーは不要となり、これ
によっても装置全体の小型化が図れる。
【0032】
なお、本参考例では、2つのチャンバー31,32間にシート状繊維基材50を固定して両面に樹脂粉体30を同時に付着させるようにしたが、シート状繊維基材50自体を上方向又は下方向に連続的に搬送可能な搬送装置をさらに備えるようにすることで、シート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30を広範囲にわたってしかも単時間に連続して付着させることができる。
【0033】
また、本参考例では、チャンバー31,32の開口部33,34の周囲に高電圧板51,52を設置してシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30がより強固に付着するようにしたが、高電圧板51,52,粉末樹脂帯電部43,44を省いてもシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30を付着させることはできる。
【0034】
次に、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法について説明する。
【0035】
図4は、参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
【0036】
以下、シート状繊維基材50として織物基材を用いる。織物基材とは、縦糸及び横糸に相当する繊維により構成されるシート状繊維基材をいう。以下、織物基材m1と記載する。なお、説明を簡略化するため、図4には、開口部33(第2スリットSL2)のみを記載し、開口部34を省略した。以下の説明も、第2スリットSL2側の動作説明を中心に行い、開口部34側の動作説明については省略する。
【0037】
図4に示すように、織物基材m1は、当該織物基材m1をロール状に巻き取ったロール体M1から連続的に引き出され、従動ローラR1、R2に掛け渡され、巻取軸Aに連結されている。織物基材m1は、巻取軸Aがモータ(図示せず)により回転されることにより搬送(図4中矢印AR1~AR3が示す方向に搬送)され、従動ローラR1、R2間に配置された第2スリットSL2、樹脂溶着ヒータ60、樹脂溶着ヒータ60の後段に配置された膜厚計80(定点膜厚計)をこの順に通過する。
【0038】
高電圧板51(電極板)には、高電圧電源70が電気的に接続されており、高電圧V(例えば、数十KV)が印加されている。そのため、高電圧板51からグランドに接地された織物基材m1に向かってコロナ放電が発生する。そのため、第2スリットSL2からエアー(空気)と共に噴射される樹脂粉体は、高電圧板51を通過する際、コロナ放電により発生するイオンにより荷電される。この荷電された樹脂粉体は、高電圧板51と織物基材m1との間に形成された電界によるクーロン力及び第2スリットSL2から噴射されるエアの搬送力により、第2スリットSL2を通過する織物基材m1(表面又は裏面)に付着する(静電粉体塗装の原理)。なお、この第2スリットSL2から織物基材m1に向けて噴射されるエア及び樹脂粉体は、供給管37により、当該第2スリットSL2まで供給され当該第2スリットSL2から噴射される。
【0039】
上記のように樹脂粉体が付着した織物基材m1は、樹脂溶着ヒータ60を通過する際、当該樹脂溶着ヒータ60で加熱される。これにより、織物基材m1に付着した樹脂粉体が織物基材m1に溶着し、プリプレグm2(図4参照)が製造される。
【0040】
この製造されたプリプレグm2は、膜厚計80を通過する際、当該膜厚計80により膜厚が計測される。そして、この計測された膜厚が目標膜厚となるように定量フィーダー90(樹脂粉体の供給量)が制御(フィードバック制御)される。
【0041】
以上のようにして製造されたプリプレグm2は、従動ローラR2を介して、モータ(図示せず)により回転される巻取軸Aに巻き取られる。
【0042】
<実施形態>
まず、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法において本発明者らが見出した課題について説明する。
【0043】
本発明者らは、上記参考例においては、エアーノズル41(第1スリットSL1)から噴射される樹脂粉体の分布(第1スリットSL1の長手方向の分布)を調整することができず、エアーノズル41(第1スリットSL1)から樹脂粉体が不均一(第1スリットSL1の長手方向に不均一)に噴射され、この不均一に噴射される樹脂粉体が供給管37により第2スリットSL2まで供給され当該第2スリットSL2から不均一(第2スリットSL2の長手方向に不均一)に噴射されるため、織物基材m1へ樹脂粉体を均一(又は概ね均一)に付着させることが難しいという課題を見出した。
【0044】
次に、実施形態として、上記課題を解決するための構成例を上記参考例に適用した例について説明する。以下、上記課題を解決するための構成例として、穴塞ぎ板160(図7参照)を用いる例について説明する。なお、上記参考例と同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。なお、フラット型エアーノズル41、42は同様の構成及び動作であるため、説明を簡略化するため、以下代表して、フラット型エアーノズル41及び供給管37を用いる例について説明し、フラット型エアーノズル42及び供給管38を用いる例については省略する。
【0045】
<塗装ノズル100>
図5は、塗装ノズル100の斜視図(透視図)である。
【0046】
図5に示すように、エアーノズル41及び供給管37が塗装ノズル100を構成している。
【0047】
<エアーノズル41>
まず、エアーノズル41について説明する。このエアーノズル41は上記参考例と同様の構成である。
【0048】
図6(a)は図5中の矢印AR4方向から見たエアーノズル41の矢視図、図6(b)は図6(a)のB-B断面図である。図7は、エアーノズル41(穴塞ぎ板160)の斜視図である。
【0049】
図6(b)に示すように、エアーノズル41は、第1スリットSL1を備えたエアーノズル本体120、エアーノズル本体120にエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)を供給する投入管47を備えるフラット型エアーノズルである。投入管47を介してエアーノズル本体120に供給されるエアー及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、後述のように、エアーノズル本体120の内部空間を通過して第1スリットSL1から噴射される。
【0050】
エアーノズル41の構成についてさらに詳細に説明する。
【0051】
図6(b)に示すように、エアーノズル本体120は、織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びる断面矩形形状の筒状体である。なお、エアーノズル本体120の断面形状は、矩形以外の断面形状(例えば、六角形状)であってもよい。エアーノズル本体120の長手方向の両端部はそれぞれ壁部107、108により閉塞されている(図5図6(a)参照)。
【0052】
エアーノズル本体120には、第1スリットSL1(図5図6(a)、図6(b)参照)が形成されている。図6(a)に示すように、第1スリットSL1は、織物基材m1の幅方向に延びる、長さLSL1×スリット幅WSL1の横長矩形形状のスリットである。長さLSL1は例えば400mm、スリット幅WSL1は例えば20mmである。投入管47は、第1スリットSL1の反対側かつエアーノズル本体120の長手方向の中央に設けられている(図5参照)。投入管47と第1スリットSL1とは、エアーノズル本体120の内部空間を介して互いに連通している。エアーノズル本体120の内部空間は、投入管47及び第1スリットSL1以外、密閉された状態である。なお、投入菅47の配置は上記参考例と相違している(図1参照)が、投入菅47の機能は上記参考例と同様である。
【0053】
図6(b)に示すように、エアーノズル本体120の内部空間には、第1拡散板140及び第2拡散板150が配置されている。第1拡散板140及び第2拡散板150により、エアーノズル本体120の内部空間は、第1~第4内部空間S1~S4に区画されている。
【0054】
次に、第1拡散板140の構成について説明する。
【0055】
図6(b)に示すように、第1拡散板140は、第1~第3板状部141~143により構成される。第1~第3板状部141~143はそれぞれ織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びている。そして、第1~第3板状部141~143それぞれの一端部は壁部107まで達している。第1~第3板状部141~143それぞれの一端部と壁部107との間にはシール材(図示せず)が配置されている。一方、第1~第3板状部141~143それぞれの他端部は壁部108まで達している。第1~第3板状部141~143それぞれの他端部と壁部108との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0056】
第2板状部142は、第1板状部141の一方の長辺からエアーノズル本体120の後方上部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第2板状部142と後方上部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。同様に、第3板状部143は、第1板状部141の他方の長辺からエアーノズル本体120の後方下部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第3板状部143と後方下部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0057】
図6(b)に示すように、第2板状部142には、貫通穴142a(複数)が形成されている。この貫通穴142aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図5中矢印AR5参照)に一列に配置されている。同様に、第3板状部143には、貫通穴143a(複数)が形成されている。この貫通穴143aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図5中矢印AR5参照)に一列に配置されている。この貫通穴142a、143aの直径は例えば10mm程度である。
【0058】
次に、第1拡散板140に形成された貫通穴142a、143aの穴面積を調整する穴塞ぎ板160(本開示の穴面積調整手段の一例)について説明する。
【0059】
図7に示すように、穴塞ぎ板160は、貫通穴142a、143a(図7中貫通穴143aを例示)ごとに設けられている。穴塞ぎ板160は、貫通穴142a、143aの少なくとも一部を塞いだ状態でねじN1により第1拡散板140に固定(ねじ固定)される。貫通穴142a、143aの穴面積は、第1拡散板140に対する穴塞ぎ板160の固定位置を変更することにより調整可能である。
【0060】
このように貫通穴142a、143aの穴面積を個別に調整することにより、第1スリットSL1(及び第2スリットSL2)から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布(例えば、第1スリットSL1又は第2スリットSL2の長手方向に均一又は概ね均一)に調整することができる。この点については後述する。なお、図8に示すように、穴塞ぎ板160は、複数の貫通穴(図8中貫通穴143aを例示)ごとに設けてもよい。図8は、エアーノズル41(穴塞ぎ板160の変形例)の斜視図である。この場合、穴塞ぎ板160は、複数の貫通穴142a、143aそれぞれの少なくとも一部を塞いだ状態でねじN1により第1拡散板140に固定(ねじ固定)される。これにより、複数の貫通穴142a、143aの穴面積を同時に調整することができる。
【0061】
次に、第2拡散板150の構成について説明する。
【0062】
図6(b)に示すように、第2拡散板150は、第4~第6板状部151~153により構成される。第4~第6板状部151~153はそれぞれ織物基材m1の幅方向(図6(a)中左右方向)に延びている。そして、第4~第6板状部151~153それぞれの一端部は壁部107まで達している。第4~第6板状部151~153それぞれの一端部と壁部107との間にはシール材(図示せず)が配置されている。一方、第4~第6板状部151~153それぞれの他端部は壁部108まで達している。第4~第6板状部151~153それぞれの他端部と壁部108との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0063】
第5板状部152は、第4板状部151の一方の長辺からエアーノズル本体120の前方上部の角部まで延びている(図6(b)参照)。第5板状部152と前方上部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。同様に、第6板状部153は、第4板状部151の他方の長辺からエアーノズル本体120の前方下部の角部まで延びている。第6板状部153と前方下部の角部との間にはシール材(図示せず)が配置されている。
【0064】
図6(b)に示すように、第5板状部152には、貫通穴152a(複数)が形成されている。同様に、第6板状部153には、貫通穴153a(複数)が形成されている。この貫通穴152a、153aは、例えば、織物基材m1の幅方向(図5中矢印AR5参照)に一列に配置されている。この貫通穴152a、153aの直径は第2板状部142及び第3板状部143に形成された貫通穴142a、143aの直径より小さい。
【0065】
上記構成の第1拡散板140(第1板状部141)と第2拡散板150(第4板状部151)とは互いに固定(例えば、ねじ固定)されている。
【0066】
上記構成のエアーノズル41においては、投入管47を介してエアーノズル本体120に供給されるエア及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、エアーノズル本体120の内部空間S1~S4を通過して第1スリットSL1から噴射される。
【0067】
具体的には、投入管47を介してエアーノズル本体120に供給される空気及び樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、まず内部空間S1に供給される。この内部空間S1に供給された空気及び樹脂粉体は、内部空間S1において織物基材m1の幅方向(図5中矢印AR5参照)に拡散されると共に圧縮された後、第1拡散板140(第2板状部142)に形成された貫通穴142a(穴面積が調整された貫通穴142a。複数)を介して内部空間S2に供給され、かつ、第1拡散板140(第3板状部143)に形成された貫通穴143a(穴面積が調整された貫通穴143a。複数)を介して内部空間S3に供給される。
【0068】
次に、内部空間S2に供給された空気及び樹脂粉体は、内部空間S2においてさらに圧縮された後、第2拡散板150(第5板状部152)に形成された貫通穴152a(複数)を介して内部空間S4に供給される。同様に、内部空間S3に供給された空気及び樹脂粉体は、内部空間S3においてさらに圧縮された後、第2拡散板150(第6板状部153)に形成された貫通穴153a(複数)を介して内部空間S4に供給される。
【0069】
次に、上記のように内部空間S4に供給された空気及び樹脂粉体は、内部空間S4においてさらに圧縮された後、第1スリットSL1から噴射される。この第1スリットSL1から噴射される樹脂粉体(樹脂粉体が混合された高圧空気)は、供給管37により第2スリットSL2まで供給され、第2スリットSL2から噴射される。その際、第1拡散板140に対する各々の穴塞ぎ板160の固定位置を変更し第1拡散板140に形成された各々の貫通穴142a、143aの穴面積を調整することにより、第1スリットSL1、第2スリットSL2から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布(例えば、第1スリットSL1、第2スリットSL2の長手方向に均一又は概ね均一の分布、又は、第1スリットSL1、第2スリットSL2の長手方向の特定箇所の噴射量が多い分布)に調整することができる。その結果、任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる。
【0070】
以上のように、各々の貫通穴142a、143aの穴面積を調整することにより、第1スリットSL1、第2スリットSL2から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布に調整することができる。本発明者らは、このことをテストにより確認した。以下、本発明者らが行ったテスト1~4について説明する。
【0071】
まず、テスト1~4の前提条件について説明する。
【0072】
テスト1~4で用いた塗装ノズル100の諸元(図5に示すLSL1、WSL1、LSL2、WSL2、W37、H37、L37)は次のとおりである。すなわち、第1スリットSL1のスリット長さLSL1=400mm、スリット幅WSL1=10mm、第2スリットSL2のスリット長さLSL2=400mm、スリット幅WSL2=20mm、供給管37の織物基材m1の幅方向長さW37=20mm、供給管37の高さH37=240mm、供給管37の奥行き方向長さL37=400mmである。
【0073】
また、テスト1~4で用いた樹脂粉体の諸元は、次のとおりである。すなわち、樹脂粉体(樹脂パウダ)の種類はPEEK、粒径は50μmm、密度は1.3g/cm3である。また、投入管47を介してエアーノズル41に供給される高圧空気(樹脂粉体が混合された高圧空気)の流量は1.7m3/minである。
【0074】
テスト1~4の手順は次の(1)~(4)のとおりである。(1)捕集箱B1~B7の初期重量測定。(2)捕集箱B1~B7を塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向にセット(図15参照)。(3)塗装ノズル100(第2スリットSL2)から樹脂粉体を噴射。(4)捕集箱B1~B7の重量測定。以下、捕集箱B1~B7を特に区別しない場合、捕集箱Bと記載する。図15は、捕集箱B1~B7を塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向にセットした状態を表す概略図である。図示しないが、捕集箱Bは、樹脂粉体を溜める空間、及び空気が通過するフィルタ(例えば、不織布)を備えた箱である。塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される高圧空気(樹脂粉体が混合された高圧空気)のうち、エアについてはフィルタを通過し、樹脂粉体についてはフィルタを通過することなく噴射位置に応じていずれかの捕集箱B1~B7(フィルタ)に捕集される。
【0075】
図9(a)はテスト1~4において用いた第1拡散板140の概略図、図9(b)は図9中の第1拡散板140に形成された貫通穴(貫通穴142a、143a)の穴面積を、図9(a)中の領域A1~A4ごとにまとめた表である。図9(b)に示すように領域A1~A4ごとに穴面積に差をつける目的は、塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される高圧空気(樹脂粉体が混合された高圧空気)の流路面積に差をつけて下流側で風速分布を作り、それによって発生した圧力勾配で樹脂粉体の挙動を変化させるためである。なお、図9(b)に記載の樹脂粉体量の変動係数は、標準偏差/平均値により算出される。変動係数が小さい程、塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向の樹脂粉体の分布が均一であることを表す。
【0076】
図10は上記条件の下でテスト1~4を行った結果(塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される樹脂粉体の分布)を表すグラフである。図10中、縦軸は樹脂粉体量を表す。この縦軸の樹脂粉体量は、捕集箱B1~B7の配置箇所(7箇所)の平均を1として相対値を表す。一方、横軸は塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向の位置(捕集箱B1~B7の配置箇所)を表す。
【0077】
図10を参照すると、第1拡散板140に形成された貫通穴(貫通穴142a、143a)の穴面積を調整することにより、塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される樹脂粉体の分布(第2スリットSL2の長手方向の分布)を任意の分布に調整できることが分かる。
【0078】
例えば、図10中のグラフ「テスト1」を参照すると、第1拡散板140に形成された貫通穴(貫通穴142a、143a)の穴面積を図9(b)に示すように調整することにより、塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される樹脂粉体の分布(第2スリットSL2の長手方向の分布)を、塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向に概ね均一な分布に調整できることが分かる。これにより、シート状繊維基材の幅方向に均一な付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる。
【0079】
また、図10中のグラフ「テスト2」を参照すると、第1拡散板140に形成された貫通穴(貫通穴142a、143a)の穴面積を図9(b)に示すように調整することにより、塗装ノズル100(第2スリットSL2)から噴射される樹脂粉体の分布(第2スリットSL2の長手方向の分布)を、塗装ノズル100(第2スリットSL2)の長手方向の特定箇所(例えば、図10中長手方向の中央)の噴射量が多い分布に調整できることが分かる。これにより、シート状繊維基材の幅方向の特定箇所(例えば、幅方向の中央)の付着量が相対的に多い付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材へ付着させることができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、各々の貫通穴142a、143aの穴面積を調整することにより、第1スリットSL1、第2スリットSL2から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布(例えば、第2スリットSL2の長手方向に概ね均一な分布、第2スリットSL2の長手方向の特定箇所の噴射量が多い分布に調整することができる。その結果、任意の付着量分布となるように樹脂粉体をシート状繊維基材(例えば、織物基材、UD基材)へ付着させることができる。すなわち、樹脂粉体が任意の付着量分布で付着したシート状繊維基材を製造することができる。
【0081】
次に、変形例について説明する。
【0082】
<第1変形例>
図11は、第1変形例の塗装ノズル100Aを表す図(図6(b)に相当する図)である。図11に示すように、第1変形例の塗装ノズル100Aにおいては、穴面積調整手段として、穴塞ぎ板160に代えて、貫通穴142a、143aに頂部が対向した状態で配置される円錐体170、貫通穴142a、143aに対して円錐体170を接離する方向(図11中矢印AR6参照)に移動させることにより貫通穴142a、143aの穴面積を調整する円錐体移動機構180を用いている。それ以外、上記実施形態と同様である。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0083】
図12は、図11のC-C断面図である。
【0084】
図12に示すように、穴面積調整手段(円錐体170、円錐体移動機構180)は、貫通穴142a、143a(図12中貫通穴142aを例示)ごとに設けられている。
【0085】
円錐体170は、例えば、ゴム製の円錐状ニードルである。
【0086】
図11に示すように、円錐体移動機構180は、貫通穴142a、143aに対して接離する方向(図11中矢印AR6参照)に移動可能に支持されたラック181、ラック181に噛合するピニオン182、ピニオン182を回転させるモータ183、円錐体170とラック181とを連結する連結部184を備えている。連結部184は、閉塞板130に形成された貫通穴130aを介して円錐体170とラック181とを連結している。貫通穴130aは、シール材200で塞がれている。モータ183は制御装置190に電気的に接続されている。制御装置190がモータ183(回転軸)を正逆回転させると、その回転方向及び回転量に応じてラック181が移動する。これにより、ラック181に連結部184を介して連結された円錐体170が貫通穴142a、143aに対して接離する方向(図11中矢印AR6参照)に移動する。これにより、貫通穴142a、143aの穴面積がニードルバルブと同様に調整される。
【0087】
このように貫通穴142a、143aの穴面積を個別に調整することにより、第1スリットSL1から噴射される樹脂粉体の分布を任意の分布(例えば、第1スリットSL1の長手方向に均一又は概ね均一)に調整することができる。
【0088】
第1変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0089】
<第2変形例>
図13は、第2変形例の塗装ノズル100Bを表す図(図12に相当する図)である。
【0090】
図13に示すように、第2変形例の塗装ノズル100Bにおいては、連結部184は、閉塞板130に形成された貫通穴130aを介して複数の円錐体170とラック181とを連結している。それ以外、上記第1変形例と同様である。これにより、複数の貫通穴142a、143aの穴面積を同時に調整することができる。また、上記第1変形例1と比べ、円錐体移動機構180(モータ183等)の数を削減することができる。
【0091】
第2変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
<第3変形例>
図14は、第3変形例の塗装ノズル100Cを表す斜視図である。
【0093】
図14に示すように、第3変形例の塗装ノズル100Cにおいては、供給管37内に流路面積調整プレート210(複数)が配置されている。具体的には、流路面積調整プレート210は、織物基材m1の幅方向(図14中矢印AR7参照)に複数配置され、各々の配置箇所で矢印AR8が示す方向に移動することにより、供給管37の管路面積を調整する。流路面積調整プレート210の矢印AR8が示す方向への移動は、例えば、円錐体移動機構180と同様の機構を用いることにより実現できる。
【0094】
第3変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0095】
なお、第3変形例の場合、上記構成のエアーノズル41に限らず、第1スリットSL1に相当するスリットから樹脂粉体を噴射するエアーノズルであればどのような構造のエアーノズルを用いてもよい。
【0096】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本開示は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0097】
11 注入口
12 加速容器
13 ブラシ
14 圧縮部
15 格納ボックス
16 チューブ
17 粉体
18 穴
19 チャンバー
20 炭素繊維織物
30 樹脂粉体
31,32 チャンバー
31a,32a 外殻
31b,32b 内殻
33,34 開口部(樹脂粉体吐出出口)
35,36 排出口
37,38 供給管
39,40 コンプレッサ
41,42 フラット型エアーノズル
41a,42a 本体部
43,44 粉末樹脂帯電部
45,46 流路
47,48 投入管
47a,48a 投入口
50 シート状繊維基材
51,52 高電圧板
53,54 集塵機
T 空気増倍装置
60 樹脂溶着ヒータ
70 高電圧電源
80 膜厚計
90 定量フィーダー
100 塗装ノズル
120 エアーノズル本体
130 閉塞板
140 第1拡散板
150 第2拡散板
160 穴塞ぎ板
170 円錐体
180 円錐体移動機構
190 制御装置
200 シール材
210 流路面積調整プレート
SL1 第1スリット
SL2 第2スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15