(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103998
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
E02F9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007985
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】島田 一輝
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA00
(57)【要約】
【課題】作業具の強度の低下を抑制しつつ、作業具の内部を通る配策部材を作業具の外部に取り出すことができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械としての油圧ショベルは、一面に第1開口を有する作業具と、作業具に取り付けられ、第2開口を有する補強部と、を備える。補強部は、作業具に対して、第1開口と第2開口とが重なる位置に取り付けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に第1開口を有する作業具と、
前記作業具に取り付けられ、第2開口を有する補強部と、を備え、
前記補強部は、前記作業具に対して、前記第1開口と前記第2開口とが重なる位置に取り付けられる、作業機械。
【請求項2】
前記補強部は、配策部材を案内する案内部を有し、
前記案内部が、前記第2開口を有する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第2開口は、前記第1開口よりも小さい、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記補強部は、
配策部材を案内する案内部と、
前記作業具に取り付けられる取付座と、を有し、
前記案内部は、前記取付座を介して前記作業具に取り付けられる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記案内部は、外側開口を有し、
前記取付座は、前記外側開口と重なって位置する内側開口を有し、
前記補強部は、前記第2開口として、前記外側開口と、前記内側開口と、を含む、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記内側開口は、前記第1開口よりも小さい、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記案内部は、前記外側開口と前記内側開口とがずれる位置で前記取付座に取り付けられる、請求項5に記載の作業機械。
【請求項8】
前記案内部は、締結具によって前記取付座に取り付けられる、請求項4に記載の作業機械。
【請求項9】
前記補強部は、両端に配策部材が取り付けられる継手を有し、
前記継手は、前記第1開口を横切って配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項10】
前記補強部は、前記作業具に取り付けられる取付座を有し、
前記取付座は、前記第2開口を有し、
前記継手は、前記第2開口をさらに横切って配置されるとともに、前記第2開口に取り付けられる、請求項9に記載の作業機械。
【請求項11】
前記作業具を駆動する油圧駆動部を有し、
前記油圧駆動部は、前記作業具の背面側に配置される、請求項1から10のいずれかに記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、油圧ショベルのブームの内部に作動油配管(油圧ホース)を挿通する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、油圧ホースが、ブレーカなどのアタッチメントに作動油を供給するPTO(Power Take-Off)用である場合、特許文献1の構造では、ブームの一面(例えば側面)に、ブームの内部からPTO用の油圧ホースを引き出すための開口を設ける必要がある。このため、ブームの強度の低下が懸念される。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ブームなどの作業具の強度の低下を抑制しつつ、作業具の内部を通る配策部材を作業具の外部に取り出すことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る作業機械は、一面に第1開口を有する作業具と、前記作業具に取り付けられ、第2開口を有する補強部と、を備え、前記補強部は、前記作業具に対して、前記第1開口と前記第2開口とが重なる位置に取り付けられる。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、作業具の強度の低下を抑制しつつ、作業具の内部を通る配策部材を作業具の一面から外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記油圧ショベルのブームにおける補強部の取付部分を拡大して示す斜視図である。
【
図3】上記取付部分をさらに拡大して示す斜視図である。
【
図4】上記ブームおよび上記補強部を所定の平面で切断したときの断面図である。
【
図5】上記ブームおよび上記補強部の断面図であって、外側開口と内側開口とがずれて位置するときの断面図である。
【
図7】上記補強部の他の取付構造を示す断面図である。
【
図8】上記補強部が有する案内部の他の構成を示す断面図である。
【
図9】上記補強部のさらに他の構成を示す断面図である。
【
図10】上記補強部が有する継手の他の構成を示す断面図である。
【
図11】上記補強部のさらに他の構成を示す断面図である。
【
図12】上記補強部のさらに他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0010】
〔1.作業機械の概略の構成〕
図1は、本実施形態の作業機械の一例である油圧ショベル1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0011】
ここで、本実施形態では、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の操縦部41の内部の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0012】
下部走行体2は、エンジン40からの動力を受けて駆動し、油圧ショベル1を走行させる。下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0013】
作業機3は、エンジン40からの動力を受けて駆動し、土砂等を掘り取る掘削作業を行う。作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、掘削作業を行うことができる。
【0014】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31aは、ブーム31の背面側(操縦部41側)に配置されている。なお、ブームシリンダ31aは、ブーム31の前面側(ブーム31に対して操縦部41とは反対側)に配置されてもよい。
【0015】
アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31の後述する屈曲部31d付近で支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32の基端部付近で支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダによって構成される。
【0016】
上部旋回体4は、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に構成される。上部旋回体4には、操縦部41、旋回台42、旋回モータ43、機関室44等が配置される。操縦部41および機関室44は、旋回台42上に配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。機関室44の内部には、各部に動力を提供する上述のエンジン40のほか、複数の油圧ポンプ(図示せず)が配置されている。
【0017】
各油圧ポンプは、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。任意の油圧ポンプから作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータと呼ぶ。
【0018】
オペレータが搭乗する操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、操作部41bが配置される。操作部41bは、油圧アクチュエータを駆動するための操作レバー、スイッチ、ボタン等で構成される。オペレータが運転座席41aに着座して操作部41bを操作することにより、油圧アクチュエータが駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、吊り作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0019】
〔2.PTOホースの配策および補強部について〕
本実施形態の油圧ショベル1は、PTO仕様となっている。PTO仕様とは、アーム32の先端に、バケット33に代えてブレーカなどのアタッチメントを装着し、アタッチメントを駆動して作業を行うことができる仕様を言う。PTO仕様では、アタッチメントに作動油を供給するための油圧ホースが配策される。上記油圧ホースのことを、ここでは、PTOホース51と称する。PTOホース51は、配策部材50の一種であり、上部旋回体4に設けられるコントロールバルブ(図示せず)のPTOセクションと接続される。アタッチメントの使用時には、アタッチメント側の油圧ホースを、PTOホース51の先端部(ストップバルブ)に接続する。コントロールバルブおよびPTOホース51を介してアタッチメントに作動油を供給することにより、アタッチメントを駆動することができる。
【0020】
ところで、ブーム31の背面側には、上述したようにブームシリンダ31aが配置される。このため、PTOホース51をブーム31の背面側に配策するスペースを確保することは通常困難である。そこで、PTOホース51は、ブーム31の内部を通って配策される。そして、ブーム31の側面31Sに開口(後述する第1開口31P(
図4参照))が形成され、上記開口を介して、PTOホース51がブーム31の内部から外部に取り出される。ブーム31の側面31Sに上記開口を設けることによるブーム31の強度低下を抑えるため、本実施形態では、ブーム31の側面31Sに補強部60が取り付けられる。すなわち、本実施形態の油圧ショベル1は、作業具としてのブーム31に取り付けられる補強部60を備える。以下、補強部60およびその取付部分の詳細について説明する。
【0021】
図2は、ブーム31における補強部60の取付部分を拡大して示す斜視図である。
図3は、上記取付部分をさらに拡大して示す斜視図である。
図4は、ブーム31および補強部60を所定の平面で切断したときの断面図である。
【0022】
なお、上記所定の平面は、以下のように定義される。
図1で示したブーム31において、上部旋回体4に回動可能に取り付けられる一端を基端部31bとし、アーム32が回動可能に取り付けられるブーム31の他端を先端部31cとし、基端部31bと先端部31cとの間で屈曲する部分を屈曲部31dとする。そして、屈曲部31dから先端部31cに向かう方向をT1とし、先端部31cから屈曲部31dに向かう方向をT2とする。上記所定平面は、T1方向およびT2方向と、油圧ショベル1の左右方向とを含む平面を指す。なお、以下では、便宜的に、T1方向およびT2方向をまとめて、第1方向とも称する。
【0023】
図4に示すように、ブーム31の左側の側面31Sには、第1開口31Pが形成されている。なお、第1開口31Pは、ブーム31の右側の側面31Sに形成されてもよい。すなわち、本実施形態の油圧ショベル1は、一面(左右のいずれかの側面31S)に第1開口31Pを有するブーム31を備える。第1開口31Pは、例えば第1方向に延びる長孔で形成されているが、第1開口31Pの形状は特に限定されない。例えば、第1開口31Pは、ブーム31の側面視で(側面31Sに垂直な方向から見て)真円であってもよく、多角形状であってもよい。なお、第1開口31Pの開口面積の増大は、ブーム31の強度低下につながるため、第1開口31Pは、極力開口面積の小さい形状であることが望ましい。
【0024】
上記の補強部60は、案内部61と、取付座62と、を有する。案内部61は、配策部材50としてのPTOホース51を、所定の位置(例えばブーム31の左側方)に案内する。取付座62は、作業具としてのブーム31(特に側面31S)に例えば溶接によって取り付けられる。すなわち、取付座62は、溶接部60Wを介してブーム31に取り付けられる。これにより、ブーム31に対して取付座62が強固に取り付けられる。案内部61は、締結具71によって取付座62に取り付けられる。締結具71は、例えばボルトで構成される。締結具71による案内部61の取付箇所は例えば2か所であるが、3か所以上であってもよい。
【0025】
案内部61は、平板61aと、支持板61bと、を有する。平板61aは、第1方向に延びる薄板である。平板61aには、PTOホース51が挿通される外側開口61Pが形成されている。すなわち、案内部61は、外側開口61Pを有する。
【0026】
外側開口61Pは、例えば第1方向に延びる長孔で形成されているが、外側開口61Pの形状は特に限定されない。例えば、外側開口61Pも、第1開口31Pと同様に、側面視で真円であってもよく、多角形状であってもよい。
図4の例では、外側開口61Pは、第1開口31Pよりも小さい形状で形成されているが、第1開口31Pと同じ形状で、かつ、同じ大きさで形成されていてもよい。
【0027】
平板61aには、締結具71としてのボルトが挿通される貫通孔61mが形成されている。貫通孔61mの内面には、上記ボルトの外表面のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。
【0028】
支持板61bは、一端が平板61aの先端(T1方向の端部)に連結され、他端がブーム31の側面31Sとは反対側に位置する薄板である。支持板61bには、ホース開口61b1が形成されており、ホース開口61b1をPTOホース51が通る。これにより、PTOホース51が支持板61bによって支持される(
図3参照)。
【0029】
平板61aおよび支持板61bを有する案内部61は、1枚の薄板を折り曲げることによって形成されてもよいし、2枚の薄板(平板61a、支持板61b)を溶接等によって連結して形成されてもよい。このような案内部61は、例えば一般構造用圧延鋼材(Structural Steel)で形成される。なお、作業機3を構成するブーム31等も一般構造用圧延鋼材で形成される。
【0030】
取付座62は、例えば高張力鋼板で形成される。高張力鋼板は、一般構造用圧延鋼材よりも引張強度が高い。取付座62は、溶接によりブーム31の側面31Sに取り付けられる。すなわち、取付座62は、溶接部60Wを介してブーム31に取り付けられる。これにより、ブーム31が補強される。
【0031】
取付座62には、締結具71としてのボルトが挿通される孔部62mが形成されている。孔部62mの内面には、上記ボルトの外表面のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、案内部61(平板61a)の貫通孔61mおよび取付座62の孔部62mに締結具71であるボルトを挿入して上記ボルトを締める、または上記ボルトを緩めることにより、取付座62に対して案内部61を固定または分離することができる。よって、締結具71を用いた場合、取付座62に対する案内部61の着脱が容易となる。
【0032】
取付座62は、内側開口62Pを有する。内側開口62Pは、案内部61の外側開口61Pと例えば同じ形状で形成される。したがって、内側開口62Pは、ブーム31の第1開口31Pよりも小さい形状で形成される。なお、内側開口62Pは、第1開口31Pと同じ形状で、かつ、同じ大きさで形成されていてもよい。また、内側開口62Pは、外側開口61Pと異なる形状で形成されてもよい。
【0033】
内側開口62Pは、外側開口61Pと重なって位置する。なお、
図4では、内側開口62Pと外側開口61Pとが完全に重なっているが、内側開口62Pの少なくとも一部が外側開口61Pと重なっていればよい。したがって、内側開口62Pと外側開口61Pとは、一部が重なるように互いにずれて位置してもよい(
図5参照)。
【0034】
上記した案内部61の外側開口61Pと、取付座62の内側開口62Pとは、補強部60の第2開口60Pを構成する。すなわち、補強部60は、外側開口61Pと内側開口62Pとで構成される第2開口60Pを有する。
【0035】
補強部60は、ブーム31(の側面31S)に対して、第1開口31Pと第2開口60Pとが重なる位置に取り付けられる。PTOホース51は、ブーム31の内部から第1開口31Pおよび第2開口60Pを介してブーム31の外部に取り出される。
【0036】
図4の例では、第2開口60Pは、第1開口31Pよりも小さい形状で形成される。この結果、ブーム31の側方視で、つまり、ブーム31の側面31Sに垂直な方向(例えば左方向)から見て、第2開口60Pが、第1開口31Pよりも内側に位置する。なお、ブーム31の側方視で、第2開口60Pの少なくとも一部が第1開口31Pと重なっていればよく、第2開口60Pの一部は第1開口31Pからはみ出ていてもよい。
【0037】
第2開口60P(特に外側開口61P)の内側には、緩衝リング63が配置される。つまり、補強部60は、緩衝リング63を備える。緩衝リング63は、例えば金属製の棒状部材またはパイプを曲げ、両端を向かい合わせた形状で形成される。なお、上記両端は連結されてもよい。緩衝リング63は、外側開口61Pの内側に例えば溶接によって取り付けられる。
【0038】
緩衝リング63は、PTOホース51が補強部60の第2開口60P(特に外側開口61P)の角部と接触して損傷することを回避する目的で設けられる。したがって、
図3および
図4に示すように、PTOホース51は、第2開口60Pの内側で、かつ、緩衝リング63で囲まれた空間を通って配策される。
【0039】
本実施形態のように、ブーム31に対して、第1開口31Pと第2開口60Pとが重なる位置に補強部60が取り付けられることにより、補強部60によってブーム31を補強しつつ(ブーム31の強度の低下を抑制しつつ)、ブーム31の内部を通る配策部材50としてのPTOホース51を、第1開口31Pおよび第2開口60Pを介して、ブーム31の外部に取り出すことができる。
【0040】
また、補強部60として案内部61と取付座62とを用いることにより、取付座62を案内部61よりも引張強度の高い材料で形成して、案内部61をブーム31に取り付けることが可能となる。したがって、ブーム31の補強効果を高める観点では、案内部61は、取付座62を介してブーム31に取り付けられることが望ましい。
【0041】
補強部60として案内部61と取付座62とを用いた構成において、第2開口60Pを介して配策部材50(PTOホース51)を所定の位置に案内する観点では、案内部61および取付座62が、外側開口61Pおよび内側開口62Pをそれぞれ有し、補強部60が、第2開口60Pとして、外側開口61Pと内側開口62Pとを含むことが望ましい。
【0042】
第1開口31Pと第2開口60Pとが重なるように、取付座62を介して案内部61をブーム31に取り付けたときに、ブーム31の内部を通るPTOホース51を、第1開口31Pと干渉させずに第2開口60Pを介してブーム31の外部に引き出すことが。PTOホース51の上記干渉による損傷を回避する点で望ましい。そのためには、
図4に示すように、第2開口60Pの内側開口62Pは、第1開口31Pよりも小さいことが望ましい。言い換えれば、ブーム31の側方視で、内側開口62Pは、第1開口31Pの内側に位置することが望ましい。
【0043】
また、取付座62に対する案内部61の着脱を容易にする観点では、案内部61は、締結具71によって取付座62に取り付けられることが望ましい。なお、取付座62に対して案内部61を強固に取り付ける観点では、案内部61は、溶接によって取付座62に取り付けられてもよい。
【0044】
図5は、ブーム31および補強部60を所定の平面で切断したときの断面図であって、外側開口61Pと内側開口62Pとがずれて位置するときの断面図である。PTOホース51がブーム31の側面31Sに対して斜め方向に配策される場合において、PTOホース51を曲げるときの負荷(曲げ応力)を低減して、PTOホース51の配策を容易にするためには、PTOホース51の上記斜め方向の配策経路に沿って外側開口61Pおよび内側開口62Pを位置させることが望ましい。このような観点では、
図5に示すように、案内部61は、外側開口61Pと内側開口62Pとがずれる位置で取付座62に取り付けられることが望ましい。特に、外側開口61Pが内側開口62Pに対して、第2開口60Pの通過後にPTOホース51を案内する方向(
図5ではT1方向)にずれて位置するように、案内部61が取付座62に取り付けられることが望ましい。
【0045】
以上のように、補強部60によってブーム31を補強しつつ、ブーム31の内部から外部へのPTOホース51の取り出しを実現する本実施形態の構成は、特に、ブーム31の内部にPTOホース51を配策せざるを得ない構成、つまり、油圧ショベル1が、ブーム31を駆動する油圧駆動部としてのブームシリンダ31aを有し、ブームシリンダ31aがブーム31の背面側に配置される構成において、非常に有効となる。また、ブーム31の背面とブームシリンダ31aとの間の間隙が大きいと、ブーム31を駆動させて掘削を行う際の掘削能力が低下することが懸念される。本実施形態では、ブーム31の内部を通ってPTOホース51を配策し、第1開口31Pおよび第2開口60Pを介してブーム31の外部にPTOホース51を取り出すため、上記間隙を小さくすることができ、掘削能力の低下を回避することができる点でも有利となる。
【0046】
〔3.補強部の他の構成〕
図6は、ブーム31および補強部60を所定の平面で切断したときの断面図であって、補強部60の他の構成を示す断面図である。補強部60は、上記した取付座62(
図4等参照)を用いずに構成されてもよい。例えば、補強部60は、配策部材50としてのPTOホース51を案内する上記の案内部61を有し、案内部61の外側開口61Pが単独で、補強部60の第2開口60Pを構成していてもよい。つまり、案内部61が第2開口60Pを有する構成であってもよい。なお、第2開口60P(外側開口61P)の内側に緩衝リング63が配置される点は、
図4等で示した構成と同じである。
【0047】
図6の構成では、案内部61(特に平板61a)は、例えば溶接によってブーム31の側面31Sに取り付けられる。つまり、案内部61は、溶接部60Wを介してブーム31に取り付けられる。これにより、ブーム31に対して案内部61が強固に取り付けられ、ブーム31が補強される。
【0048】
図7は、補強部60の他の取付構造を示す断面図である。案内部61は、例えばボルトからなる締結具71によってブーム31に取り付けられてもよい。この場合、案内部61(特に平板61a)およびブーム31には、締結具71としてのボルトが挿通される貫通孔61mおよび挿入口31mがそれぞれ形成される。貫通孔61mおよび挿入口31mの内面には、上記ボルトの外表面のねじ山と噛み合うねじ溝が形成される。この構成では、締結具71であるボルトを締める、または緩めることにより、ブーム31に対して補強部60(案内部61)を固定または分離することができる。したがって、ブーム31に対する補強部60(案内部61)の着脱が容易となる。また、案内部61をブーム31に固定することにより、ブーム31が補強される。
【0049】
図6および
図7の構成であっても、PTOホース51は、ブーム31の内部から第1開口31Pおよび第2開口60P(外側開口61P)を介してブーム31の外部に取り出される。したがって、補強部60が(取付座62を有さずに)案内部61を有する構成であっても、ブーム31の補強および上記したPTOホース51の配策を実現する観点では、補強部60の第2開口60P(としての外側開口61P)を、案内部61が有していればよいと言える。
【0050】
また、案内部61によってブーム31を補強するとともに、PTOホース51と第1開口31Pとの干渉を回避しながら、ブーム31の内部から外部にPTOホース51を取り出すためには、ブーム31の側方視で、第2開口60Pとしての外側開口61Pが、第1開口31Pの内側に位置するように、補強部60(案内部61)をブーム31に取り付けることが望ましい。このような取り付けを実現する観点では、第2開口60P(としての外側開口61P)は、第1開口31Pよりも小さいことが望ましい。
【0051】
図8は、補強部60の案内部61の他の構成を示す断面図である。補強部60を構成する案内部61の外側開口61P(第2開口60P)は、ブーム31の第1開口31Pと同じ形状で、かつ、同じ大きさであってもよい。そして、ブーム31の側面視で、外側開口61P(第2開口60P)と第1開口31Pとが完全に重なるように、案内部61がブーム31の側面31Sに取り付けられてもよい。
【0052】
〔4.補強部のさらに他の構成〕
図9は、ブーム31および補強部60を所定の平面で切断したときの断面図であって、補強部60のさらに他の構成を示す断面図である。
図9の補強部60は、緩衝リング63の代わりに継手64を備える点を除いて、
図4で示した構成と同じである。以下、
図4と異なる部分について説明する。
【0053】
継手64は、継手本体64aと、屈曲部材64bと、を接続して構成される。継手本体64aの内部は空洞であり、一端部(屈曲部材64bとの接続側とは反対側の端部)には、配策部材50としてのPTOホース51(第1PTOホース51a)が取り付けられる。第1PTOホース51aは、ブーム31の内部を通って配策される。
【0054】
屈曲部材64bも内部は空洞であり、例えばL字形状で形成される。屈曲部材64bの一端部(継手本体64aとの接続側とは反対側の端部)には、配策部材50としてのPTOホース51(第2PTOホース51b)が取り付けられる。第2PTOホース51bは、ブーム31の外部に配策される。このように、補強部60は、両端にPTOホース51(第1PTOホース51a、第2PTOホース51b)が取り付けられる継手64を有する。
【0055】
継手本体64aは、ブーム31の第1開口31Pおよび補強部60の第2開口60Pを横切って配置される。そして、継手本体64aは、第2開口60P(外側開口61P、内側開口62P)に取り付けられる。例えば、継手本体64aは、取付座62の内側開口62Pに溶接によって取り付けられる。なお、継手本体64aは、案内部61の外側開口61Pに溶接によって取り付けられてもよい。また、第1開口31Pは第2開口60Pよりも大きい形状であるため、継手本体64aは、第1開口31Pと非接触となっているが、第1開口31Pと第2開口60Pとが同一形状で完全に重なる位置関係である場合には、継手本体64aは第1開口31Pに溶接によって取り付けられてもよい。屈曲部材64bは、案内部61の外側開口61Pの外部に位置して、継手本体64aと接続される。
【0056】
継手64の両端にPTOホース51(第1PTOホース51a、第2PTOホース51b)をそれぞれ取り付けることにより、第1PTOホース51aの内部を流れる作動油は、継手本体64aおよび屈曲部材64bの内部を順に通り、第2PTOホース51bを介してアタッチメントに供給される。
【0057】
このように、継手64を用いることにより、ブーム31の内部から外部に第1開口31Pおよび第2開口60Pを介して1本のPTOホース51を取り出す構成と同等の構成を実現することができる。この点では、継手64は、(少なくとも)第1開口31Pを横切って配置されることが望ましい。
【0058】
また、継手64を安定して取り付ける観点では、継手64(特に継手本体64a)は、第2開口60Pをさらに横切って配置されるとともに、第2開口60Pに(溶接によって)取り付けられることが望ましい。
【0059】
図10は、継手64の他の構成を示す断面図である。継手64は、第1開口31Pおよび第2開口60Pを横切って配置される継手本体64aのみで構成されてもよい。この場合、継手本体64aの一端部には、第1PTOホース51aが取り付けられ、他端部には、第2PTOホース51bが取り付けられる。継手本体64aが取付座62の内側開口62Pに溶接によって取り付けられる点は、
図9の構成と同じである。
【0060】
図10の構成では、第1PTOホース51aの内部を流れる作動油は、継手本体64aの内部を通り、第2PTOホース51bを介してアタッチメントに供給される。したがって、
図10の構成であっても、ブーム31の内部から外部に第1開口31Pおよび第2開口60Pを介して1本のPTOホース51を取り出す構成と同等の構成が実現される。
【0061】
図11は、補強部60のさらに他の構成を示す断面図である。補強部60は、(案内部61を有さずに)取付座62を有する構成であってもよい。そして、
図9で示した継手64(特に継手本体64a)は、取付座62の内側開口62Pを横切って配置されるとともに、内側開口62Pに(溶接によって)取り付けられてもよい。なお、
図11の構成では、取付座62の内側開口62Pは、単独で、補強部60の第2開口60Pを構成する。
図11の構成であっても、取付座62によってブーム31を補強しつつ、ブーム31の内部から外部に第1開口31Pおよび第2開口60Pを介して1本のPTOホース51を取り出す構成と同等の構成が実現される。
【0062】
図12は、補強部60のさらに他の構成を示す断面図であり、
図11の補強部60に、
図10の継手64を適用した例を示している。この構成であっても、取付座62によってブーム31を補強しつつ、ブーム31の内部から外部に第1開口31Pおよび第2開口60Pを介して1本のPTOホース51を取り出す構成と同等の構成が実現される。
【0063】
〔3.補足〕
本実施形態では、配策部材50として、PTOホース51を例に挙げて説明したが、配策部材50はPTOホース51には限定されない。例えば、配策部材50は、ハーネスであってもよい。上記ハーネスは、例えば、作業機3に取り付けられる作業灯(ライト)への給電、作業機3に取り付けられる各種センサ(例えば角度センサ)からの信号を伝送するために配置される。配策部材50がハーネスであっても、本実施形態で述べた構成を適用することにより、ブーム31を補強しつつ、ブーム31の内部から外部にハーネスを取り出す構成、またはそれと同等の構成を実現することができる。
【0064】
油圧ショベル1は、動力源として、エンジン40の代わりに電動モータを用いた構成であってもよい。
【0065】
〔4.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す作業機械と表現することもできる。
【0066】
付記(1)の作業機械は、
一面に第1開口を有する作業具と、
前記作業具に取り付けられ、第2開口を有する補強部と、を備え、
前記補強部は、前記作業具に対して、前記第1開口と前記第2開口とが重なる位置に取り付けられる。
【0067】
付記(2)の作業機械は、付記(1)に記載の作業機械において、
前記補強部は、配策部材を案内する案内部を有し、
前記案内部が、前記第2開口を有する。
【0068】
付記(3)の作業機械は、付記(1)または(2)に記載の作業機械において、
前記第2開口は、前記第1開口よりも小さい。
【0069】
付記(4)の作業機械は、付記(1)に記載の作業機械において、
前記補強部は、
配策部材を案内する案内部と、
前記作業具に取り付けられる取付座と、を有し、
前記案内部は、前記取付座を介して前記作業具に取り付けられる。
【0070】
付記(5)の作業機械は、付記(4)に記載の作業機械において、
前記案内部は、外側開口を有し、
前記取付座は、前記外側開口と重なって位置する内側開口を有し、
前記補強部は、前記第2開口として、前記外側開口と、前記内側開口と、を含む。
【0071】
付記(6)の作業機械は、付記(5)に記載の作業機械において、
前記内側開口は、前記第1開口よりも小さい。
【0072】
付記(7)の作業機械は、付記(5)または(6)に記載の作業機械において、
前記案内部は、前記外側開口と前記内側開口とがずれる位置で前記取付座に取り付けられる。
【0073】
付記(8)の作業機械は、付記(4)から(7)のいずれかに記載の作業機械において、
前記案内部は、締結具によって前記取付座に取り付けられる。
【0074】
付記(9)の作業機械は、付記(1)に記載の作業機械において、
前記補強部は、両端に配策部材が取り付けられる継手を有し、
前記継手は、前記第1開口を横切って配置される。
【0075】
付記(10)の作業機械は、付記(9)に記載の作業機械において、
前記補強部は、前記作業具に取り付けられる取付座を有し、
前記取付座は、前記第2開口を有し、
前記継手は、前記第2開口をさらに横切って配置されるとともに、前記第2開口に取り付けられる。
【0076】
付記(11)の作業機械は、付記(1)から(10)のいずれかに記載の作業機械において、
前記作業具を駆動する油圧駆動部を有し、
前記油圧駆動部は、前記作業具の背面側に配置される。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば建設機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧ショベル(作業機械)
31 ブーム(作業具)
31P 第1開口
31S 側面(一面)
31a ブームシリンダ(油圧駆動部)
50 配策部材
51 PTOホース
51a 第1PTOホース
51b 第2PTOホース
60 補強部
60P 第2開口
61 案内部
61P 外側開口
62 取付座
62P 内側開口
64 継手
71 締結具