(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104000
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】外壁構造、及びそれを用いた建築物の排水構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20240726BHJP
E04D 13/068 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E04D13/08 G
E04D13/068 503A
E04D13/068 504F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007988
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
(57)【要約】
【課題】軒樋や内樋に集められた雨水を高さ方向へ流すことができる排水空間が外壁内部に備えられ、建築物の意匠を損なうことなく、美観に優れた外壁構造、及びそれを用いた建築物の排水構造を提供する。
【解決手段】本発明は、高さ方向に延在する山部、谷部が交互に形成される外壁構造であって、面板部11,21の左右側縁がその表裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を前記面板部11,21側へ折り返した側縁成形部13,23を設けた山状外装材1、谷状外装材2を接続し、前記山状外装材1裏面側及び/又は前記谷状外装材2の表面側を排水空間3としたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に延在する山部、谷部が交互に形成される外壁構造であって、
面板部の左右側縁がその表裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を前記面板部側へ折り返した側縁成形部を設けた山状外装材、谷状外装材を接続し、前記山状外装材の裏面側及び/又は前記谷状外装材の表面側を排水空間としたことを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
建築物の外壁より延出している軒先に、屋根面の雨水を水平方向へ導く排水路を備える横樋材と、前記排水路の雨水を前記外壁側へ導く流水路を備える連結樋と、が連絡され、
前記流水路が、請求項1に記載の外壁構造の前記排水空間の上端に連結されていることを特徴とする建築物の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋や内樋に集められた雨水を高さ方向へ流すことができる排水空間が外壁内部に備えられ、建築物の意匠を損なうことなく、美観に優れた外壁構造、及びそれを用いた建築物の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根の樋としては、軒先に設ける軒樋が一般的に広く知られ、軒先より内側に設ける内樋も近年知られつつあり、これらの軒樋や内樋に集められた雨水を高さ方向へ流す竪樋が連結されている。このような排水構造には、雨水を円滑に排水すると共に建築物の意匠を損なうことがないことが求められる。
例えば特許文献1には、雨水を竪樋に向かって軒先端に配設された軒樋2から建築物側へ導く呼び樋3と、この呼び樋3の端部に接続される直交部(エルボ10)と、このエルボ10と高さ方向に延在する円筒状の竪樋5とを連通させた合わせ枡20が記載されている。そのため、エルボ10を介して呼び樋3を合わせ枡20に容易に接続でき、接続後の呼び樋3の外れを防止することができる。
また、特許文献2には、竪樋5として用いられる丸パイプを建物の壁面4に取り付けるための支持具1であって、壁面4に固定される固定部材2と、該固定部材に連結される支持部材3とを備え、支持部材3は、竪樋5を抱持する抱持部31と、該抱持部31から外方に突出し、固定部材2に連結される長尺状の取付足部35と、を備えている構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6530606号公報
【特許文献2】特開2021-123968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の構造は、竪樋5やエルボ10、及び呼び樋3が外壁の外側に間隔を隔てて配設されているので、特に呼び樋3の長さが長くなればなるほど、外圧を受け易く、建築物の意匠を損なうものであった。更に竪樋5への排水路が長く、落ち葉等の詰まりに対する対処も困難という問題もあった。
また、前記特許文献2に記載の構造は、竪樋5が建物の壁面(外壁)4から取付足場35の分だけ離間して配設されるので、竪樋5が外力を受けて変形や損傷を受け易く、建築物の意匠を損なうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、軒樋や内樋に集められた雨水を高さ方向へ流すことができる竪樋等の排水空間を、建築物の意匠を損なうことなく、美観に優れる外壁構造、及びそれを用いた建築物の排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、高さ方向に延在する山部、谷部が交互に形成される外壁構造であって、面板部の左右側縁がその表裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を前記面板部側へ折り返した側縁成形部を設けた山状外装材、谷状外装材を接続し、前記山状外装材の裏面側及び/又は前記谷状外装材の表面側を排水空間としたことを特徴とする外壁構造に関するものである。
以下の説明では、山状外装材の裏面側向き側縁成形部の表面側向き折返し部分を「山ハゼ」、谷状外装材の表面側向き側縁成形部の裏面側向き折返し部分を「谷ハゼ」という。また、「裏面側向き」を「裏向き」と略記し、「表面側向き」を「表向き」と略記す。さらに、後述する図示実施例では、山状外装材の表向き折返し部分のみではなく裏向き側縁成形部自体を「山ハゼ」、谷状外装材の裏向き折返し部分のみではなく表向き側縁成形部自体を「谷ハゼ」と説明している。
また、「前記山状外装材の裏面側及び/又は前記谷状外装材の表面側が前記排水空間とした」とは、山状外装材の面板部の裏面側、又は谷状外装材の面板部の表面側の両方、或いは何れか一方が排水空間となることを意味している。
【0007】
さらに、前記山状外装材の山ハゼには、表向き折返し部分として更に内側に折り返した山側対向面を設け、前記谷状外装材の谷ハゼには、裏向き折返し部分として更に内側に折り返した谷側対向面を設け、これらの山側対向面と谷側対向面とを対向(又は面接触)させることが望ましい。
【0008】
また、本発明は、建築物の外壁より延出している軒先に、屋根面の雨水を水平方向へ導く排水路を備える横樋材と、前記排水路の雨水を前記外壁側へ導く流水路を備える連結樋と、が連絡され、前記流水路が、前述の外壁構造の前記排水空間の上端に連結されていることを特徴とする建築物の排水構造をも提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外壁構造は、前述の従来技術のように外壁の外側に竪樋等を配設するものではなく、外壁の内部に高さ方向に延在する排水空間が組み込まれているので、仮にこの排水空間に排水材等を配設(収容)したとしても、外圧や紫外線等の影響を受けにくく、長寿命化が図られ、メンテナンスの必要性も減少する。また、建築物の意匠を損なうこともない。
さらに、この外壁構造は、面板部の左右側縁がその表裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を前記面板部側へ折り返した側縁成形部を設けた山状外装材、谷状外装材を用いるので、例えば面板部の寸法を調整するだけで、その成形加工が極めて簡易であり、屋根や陸屋根等に用いてきた外装材を、山状外装材や谷状外装材として流用することができる。特に一つの成形板を二種の外装材として利用できる場合もある。
【0010】
なお、前記山状外装材の山ハゼに、表向き折返し部分として更に内側に折り返した山側対向面を設け、前記谷状外装材の谷ハゼに、裏向き折返し部分として更に内側に折り返した谷側対向面を設け、これらの山側対向面と谷側対向面とを対向(又は面接触)させる場合には、係合部分自体の大きさが大きくなるため、毛細管現象が防止される大きさの空間を形成し易い。
【0011】
さらに、前記外壁構造を用いた排水構造は、屋根面等への降雨は、軒樋等の横樋材に流下した雨水を円滑に連結樋から排水空間へと導くことができる。しかもこの排水構造は、外壁の外側に排水材が配設されていないため、横樋材や連結樋の下方側から見上げた際の景観に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の外壁構造の一実施例(実施例1)、(b)それに用いた山状外装材及び谷状外装材、(c)それに用いた排水材、(d)その外装構造を用いた建築物の排水構造、をそれぞれ示す下方から見上げた斜視図である。
【
図2】(a)実施例1の外壁構造を用いた排水構造の正面図、(b)その側断面図である。
【
図3】(a)実施例1の外壁構造を用いた排水構造の上(平)面図、(b)その斜視図である。
【
図4】(a)山状外装材の裏面側に排水空間が形成された他の一実施例(実施例2)を示す断面図、(b)それに用いた山状外装材及び谷状外装材を示す断面図、(c)それに用いた吊子を示す断面図、(d)それに用いた固定具を示す断面図、(e)それに用いた補助面材(樋状材)を示す断面図である。
【
図5】(a)谷状外装材の表面側に排水空間が形成された他の一実施例(実施例3)を示す断面図、(b)それに用いた補助面材(カバー材)を示す断面図、(c)それに用いた裏打ち材及び断熱材(バックアップ材)を示す断面図、(d)それに用いた吊子及び固定受具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の外壁構造は、高さ方向に延在する山部、谷部が交互に形成される外壁構造であって、面板部の左右側縁がその表裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を前記面板部側へ折り返した側縁成形部を設けた山状外装材、谷状外装材を接続し、前記山状外装材の裏面側及び/又は前記谷状外装材の表面側を排水空間としたことを特徴とする。
なお、前述の「前記山状外装材の裏面側及び/又は前記谷状外装材の表面側を排水空間とした」という表記は、山状外装材の面板部の裏面側、谷状外装材の面板部の表面側の両方、或いは何れか一方が排水空間となることを意味している。
また、山状外装材、谷状外装材によって形成される複数の「山部」や「谷部」のうち、所定位置(所定箇所)の山部又は谷部が排水空間となる。即ち複数形成される空間のうち、排水空間として使用されるのは数か所であり、大部分は排水空間とはならない。
【0014】
本発明に用いられる山状外装材、谷状外装材は、従来、角波、縦葺きと称されるものであって、敷設状態において山部、谷部が上下方向に形成される外装材であれば特に限定しない。
ここで、従来、角波、縦葺きと称される外装材は、面板部の左右側縁を同方向(上下方向の何れか)へ折り曲げ、更にその先端を内側に折り返して側縁成形部(上ハゼ、下ハゼ)を設けた構成であって、原則的には表裏逆に且つ交互に配置することにより同一形状の外装板を、凸状外装材及び凹状外装材として用いて凹凸を連続して形成するが、必ずしも両者を完全に一致させる必要はない。即ち凸状外装材と凹状外装材とは、前記面板部や前記側縁成形部の細部の構成や形状、寸法まで、同一であっても、一部が相違してもよい。なお、交互に配した凸状外装材と凹状外装材は、金属面材や硬質樹脂板が原材料であり、弾性的に係合されて接続可能である。
【0015】
これらの山状外装材、谷状外装材は、何れも面板部の左右に側縁成形部を設けた構成であり、それぞれの側縁成形部は、それぞれの面板部の左右側縁をその表裏方向へ折り曲げ、更にその先端をそれぞれの面板部側に折り返した構成である。
即ち山状外装材では、面板部の左右側縁を裏面側へ折り曲げて側縁成形部とし、更にその先端を面板部側に折り返して山ハゼとした構成となる。
また、谷状外装材では、面板部の左右側縁を表面側へ折り曲げて側縁成形部とし、更にその先端を面板部側に折り返して谷ハゼとした構成となる。
【0016】
なお、前記山状外装材の山ハゼに、表向き折返し部分として更に内側に折り返した山側対向面を設け、前記谷状外装材の谷ハゼに、裏向き折返し部分として更に内側に折り返した谷側対向面を設け、敷設状態では、これらの山側対向面と谷側対向面とを対向(又は面接触)させることが望ましい。この場合には、相互にクッション性を有する対向(又は面接触)となり、係合部分自体の大きさが大きくなるため、毛細管現象が防止される大きさの空間を形成し易い。
これらの山状外装材(山側対向面)と谷状外装材(谷側対向面)とは、敷設状態では、対向(又は面接触)状に係合されるが、その係合部分が傾斜状に形成されていることが望ましい。即ちこれらの山側対向面と谷側対向面は、それぞれの折返し部分の先端から内側へ鋭角状に折曲げ(折り返され)ることで、その係合部分(隙間又は面)が傾斜状に形成されるものとなる。
例えば図示実施例のように、配設状態において、前記谷ハゼと前記山ハゼとがほぼ等しい傾斜角度に配される構成を採用した場合、均等な間隔の隙間を介して対向状に係合されるか、面接触状に係合される状態となる。
【0017】
そして、両外装材が交互に並列状に接続される際には、山ハゼと谷ハゼとが係合されるように接続することで、外壁が形成される。
この外壁には、高さ方向に延在する排水空間が形成されるが、前述のように排水空間の内部に別部材の排水材(筒状体)が収容されるようにしてもよいし、排水空間の前面が山状外装材の面板部で形成されるか、排水空間の後面が谷状外装材の面板部で形成されるか、でもよい。なお、後者の何れの場合も側縁成形部が、排水空間の側面を形成している。
即ちこの排水空間は、室内側に対する止水、防水機能を備え、雨水を高さ方向に流下可能な構成であれば特に問わず、おおよそ壁下地(野地材)表面から外装材の山部頂部の間に形成され、その幅等の大きさは各種条件で設定されればよく(排水空間の全てを排水路/落水路としても、排水空間の一部を排水路/落水路としてもよい)、特に問うものではない。なお、後述する
図1の仕様は、排水空間内に別途「排水材」を配しているため、空間の一部を排水路(落水路)とした仕様に該当する。このように、排水空間(排水路/落水路)は壁体の厚み内に納めることが基本ではあるものの、必ずしも当該外装材(もしくは補助面材)が他の外装材と同レベルとするものではない。
また、後述する実施例3は、補助面材が山部と略平坦状に設けられているが、山部に対して凸状、凹状であってもよい。
言い換えれば、排水空間は、空間全てを排水路/落水路とする場合と空間の一部を排水路/落水路とする場合が想定される。
【0018】
後述する図示実施例(実施例1~3)を含めてこの排水空間を説明すると、第1の仕様は、後述する実施例3のように谷部にカバー材(補助面材)を配設する態様、第2の仕様は、後述する実施例2のように空間の室内側に止水手段を講じた態様、第3の仕様は、後述する実施例1のように内部に別途排水材を配設する態様であり、各態様によって空間内の止水手段(レベル)が異なる。
前記第1の仕様は、排水空間が谷状外装材であるため外装材としての性能に担保され、表面側に配される「カバー材」も雨水流下時に飛散しない程度であればよい。空間として密閉されていなくともよい。
前記第2の仕様は、排水空間が山状外装材の内部に形成されるため室内側への止水手段は補助面材にて行われる。この補助面材は、「金属」「硬質樹脂板」等であってもよいし、「防水シート」等の軟質なものであってもよい。
前記第3の仕様は、排水空間内に別途「排水材」を設け当該排水材内を落水するものであるため、排水空間内の止水(野地上の止水)は特に問うものではない。
【0019】
前記第1、第2の仕様のように排水空間に別部材の排水材を使用しない態様としては、具体的に、排水空間の前面が山状外装材で形成される態様と、排水空間の後面が谷状外装材で形成される態様とがある。
排水空間の前面が山状外装材の面板部で形成される態様(前記第2の仕様)では、適宜構成の補助面材を排水空間の後面として用いれば、四方(表裏左右)を面材にて囲まれた水密性に優れた排水材が形成される。この後面用の補助面材としては、後述する図示実施例のよう後面側に配されるコ字状材が用いられる。
また、排水空間の後面が谷状外装材の面板部で形成される態様(前記第1の仕様)では、適宜構成の補助面材を排水空間の前面として用いれば、四方を面材にて囲まれた水密性に優れた排水材が形成される。この前面用の補助面材としては、後述する図示実施例のように前面側を被覆状に覆うカバー材が用いられる。
【0020】
前記第3の仕様のように排水空間に別部材の排水材が収容される態様では、円形や矩形の断面を備える各種の筒状体を排水材として利用できる。そして、この態様(例えば図示実施例1)では、山状外装材等が保護する役割を果たすため、排水材自体に強度を必要としないので、ゴム製や合成樹脂製等の各種の安価な材料を用いることができる。
そもそも本発明における外壁構造における排水空間とは、その周囲を囲う三面を、山状外装材又は谷状外装材が覆う構造であり、山状外装材では後面側、谷状外装材では前面側にそれぞれ適宜構成の補助面材を配設することで、四方(表裏左右)を面材にて囲まれた空間となる。そのため、この態様では、各面材が排水材を保護する役割が果たされる。
【0021】
なお、全ての山状外装材の裏面、全ての谷状外装材の表面を排水空間として用いるものではなく、排水空間として用いない該空間には、断面矩形状の断熱材をバックアップ材として一体的に取り付けても、介在(配設)させてもよい。この場合、断熱機能等が付与されることは説明するまでもないが、施工に際して山状外装材の配設も容易に行うことができ、外壁としての強度を向上する効果にも貢献する。
また、このような断熱材としては、例えば合成樹脂製ボードに限らず木製ボードでもよく、また単層でも複層でもよく、異なる材質の複層構成でもよい。そのため、難燃性、不燃性等の機能性ボード材を用いてもよく、また厚み等についても何等制限がなく、どのような断熱材を用いてもよい。
【0022】
また、内装下地への固定部を有する起立部と、該起立部の先端を折返した折返し部と、を有する保持部材を用いた場合には、前記谷状外装材の裏向き折返し部分が前記保持部材の折返し部に係合するように配設することにより、裏向き折返し部分が安定に位置規制されるものとなり、この裏向き折返し部分に対し、山状外装材の表向き折返し部分を安定に対向させて係合できる。
このように保持部材を用いる場合には、保持部材に対する山ハゼ、谷ハゼの係合を利用して取り付けているため、施工性にも優れている外装構造となる。
【0023】
前記保持部材については、通し吊子と称される高さ方向に連続する長尺材でもよいし、後述する図示実施例のようにピース材でもよい。
また、この保持部材への外装材の取付については、谷状外装材の谷ハゼを、保持部材の折返し部の内側へ収容されるように係合状に取り付けると共に、山状外装材の山ハゼが、谷状外装材の谷ハゼに対向するように弾性的に係合状に取り付ければよい。
【0024】
本発明の効果について更に詳しく説明すると、前述の従来技術のように外壁の外側に排水材等を配設するものではなく、外壁の内部に高さ方向に延在する排水空間が組み込まれているので、仮に該排水空間に排水材等を配設(収容)したとしても、外圧や紫外線等の影響を受けにくく、長寿命化が図られ、メンテナンスの必要性も減少する。また、建築物の意匠を損なうこともない。
しかも本発明に用いる山状外装材、谷状外装材として、従来の従来の角波、縦葺き等に用いられる外装板を流用することもでき、両外装材を一種で兼用することもできるため、極めて経済的な利用価値が高い。
【0025】
また、内装下地への固定部を有する起立部と、該起立部の先端を折返した折返し部と、を有する保持部材を、山状外装材と谷状外装材との間に固定している構造では、谷ハゼの裏向き折返し部分が安定に位置規制され、この裏向き折返し部分に対し、山状外装材の山ハゼを安定に対向させて強固に係合状に取り付けることができる。
【0026】
また、この本発明の外壁構造は、建築物の外壁より延出している軒先に、屋根面の雨水を水平方向へ導く排水路を備える横樋材と、前記排水路の雨水を前記外壁側へ導く流水路を備える連結樋と、が連絡される排水構造に適用することで、より有効な排水構造とすることができる。
この場合には、流水路が、本発明の外壁構造の排水空間の上端に連結されることで、軒樋等の横樋材に流下した雨水を、円滑に連結樋から排水空間(排水材)へと導くことができる。しかもこの排水構造は、外壁の外側に排水材が配設されずにその外壁内部に排水空間が設けられているため、横樋材や連結樋の下方側から見上げた際の景観に優れている。
【実施例0027】
図1(a)~(c)に示す本発明の実施例1の外壁構造は、面板部11,21の左右側縁がその表裏方向(正確には裏表方向)へ折り曲げられ、更にその先端を面板部11,21側へ折り返した側縁成形部13,23を設けた山状外装材1、谷状外装材2を接続し、山状外装材1の裏面側を排水空間3としている。
なお、この実施例1では、断面矩形状の排水空間3の内部に、高さ方向に連続する落水路41を有する角筒材である排水材4が別部材として配設されている。
【0028】
詳細に説明すると、山状外装材1は、面板部11の左右側縁が裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を面板部11側へ折り返した側縁成形部(山ハゼ)13,13が設けられ、該側縁成形部13,13間を排水空間3として用いている。詳細には、上記山状外装材1には、面板部11の左右側縁を裏向きに折り曲げた折り曲げ部分12,12が形成され、それぞれの先端を表面側に折り返した側縁成形部13は、折返し部131、その先端を内側へ折返し状に折り曲げた対向片132で形成されている。
それに対し、谷状外装材2は、面板部21の左右側縁が裏方向へ折り曲げられ、更にその先端を面板部21側へ折り返した側縁成形部(谷ハゼ)23が設けられ、該側縁成形部23,23間が谷状部(凹状部)となる。詳細には、上記谷状外装材2には、面板部21の左右側縁を表向きに折り曲げた折り曲げ部分22,22が形成され、それぞれにその先端を裏面側に折り返した側縁成形部23は、折返し部231と、その先端を内側へ折返し状に折り曲げた対向片232とで形成されている。
これらの山状外装材1及び谷状外装材2は、化粧性を有する金属面材や硬質樹脂成形板にて成形され、同一成形板が用いられている。なお、これらの面板部11,21には、高さ方向に連続する段状加工(段差部分111,211)を施すことで強度を向上している。
【0029】
なお、前述のようにこの実施例1では、山状外装材1の裏面側を排水空間3として用いたが、後述する実施例3のように適宜に面材を配設することにより、谷状外装材2の側縁成形部23,23間の谷状部(凹状部)を排水空間として利用することも可能である。
【0030】
当該実施例1における外壁5は、山状外装材1と谷状外装材2とが交互に並列状に接続されて凹凸状の外壁面を形成している構造であるが、壁面の所定位置(図示上、略中央)に配設されている山状外装材1の裏面側を排水空間3とし、該排水空間3に排水材4が配設されている。略中央以外の山状外装材1の裏面側の構成については同図には図示していないが、一般的な外壁構造と同様に後述する実施例2,3のように断熱材(バックアップ材)を介在させることが望ましい。
【0031】
また、この実施例1では、同一素材の面板材を山状外装材1及び谷状外装材2として用い、排水空間3に別部材として配設した排水材4を用いているに過ぎないので、少ない部材にて高さ方向に排水空間3を備える外壁5を構築できる。
【0032】
図1(d)は、この実施例1の外壁構造を用いた建築物6の排水構造を下方から見上げた状態であって、その一部分(同図にて一点鎖線で囲んだ部分)である外壁構造を拡大して示したものが
図1(a)と言い換えることもできる。
この排水構造は、
図2及び
図3にも示すように建築物6の外壁5より延出して形成されている軒先に、屋根面の雨水を水平方向へ導く排水路71を備える横樋材7,7と、各排水路71の雨水を建築物6側へ導く流水路81を備える連結樋8と、が連絡され、この流水路81が、外壁5内の排水空間3内の排水材4の上端に連結されている。
【0033】
この排水構造に用いられた横樋材7は、排水路71が略水平状に配設される軒樋であって、金属板材を折曲加工して成形され、平板状の底面の側面がそれぞれ段状に立ち上げられて形成されている。そのため、この横樋材7は、それぞれ段部を備える底面と側面とで形成される上方が開放状の排水路71を有する。また、軒先側の側面の上端には、く字状の被係合部が形成され、建築物6側の側面の上端には、上方へ延在させた上向き部が形成され、下端には、L字状の被支持部が形成されている。なお、この被支持部は、段部の裏面に相当する。
そして、配設状態における排水路71は、連結樋8の左側に配された横樋材7では左側から連結樋8側へ向かって僅かに下り傾斜状に形成され、右側に配された横樋材7では右側から連結樋8側へ向かって僅かに下り傾斜状に形成されている。そのため、何れの横樋材7,7の排水路71,71においても、雨水は側端側から中央側へ集められるように流れ、連結樋8の流水路81へと導かれる。
【0034】
この排水構造に用いられる連結樋8は、配設状態では横樋材7から裏面側へ隆起状に設けられている。この連結樋8は、上方が開放状の流水路81を有し、前述の横樋材7と同様な素材や成形加工法にて形成され、横樋材7と同様に略水平状に配設されている。この流水路81は、底面、両側面、及び軒先面との間に形成され、その両側面には、横樋材7と交差する軒先側が低く、建築物6側が高くなるように形成され、その上端には内側へ折り曲げられた水返しが連絡される連結部として切欠き口が形成されている。また、軒先面の上端には、横樋材7の被係合部の外側に係合する被係合部が形成され、側面との間には水返し部が形成されている。
そして、配設状態における流水路81は、雨水が流れる底面が、軒先側から建築物6側に向かって僅かに下り傾斜状に形成されている。そのため、横樋材7,7と交差する軒先側から建築物6側へと雨水が集められるように流れ、排水材4内の落水路41へと導かれる。
【0035】
なお、詳細を図示してはいないが、連結樋8の建築物6側端には、底面から排水材4へと雨水を導くジョイント樋を配設するか、底面に落水孔を形成することで、連結樋8(流水路81)と排水材4(落水路41)とを連結する役割が果たされ、集められた雨水が円滑に排水される。
【0036】
また、この建築物6の傾斜勾配を有する外装下地6Cには、図示を省略したが、流れ方向に沿うように断面略ハット状の垂木が固定され、その上面に複数の外装材6Aが重合状に敷設されている。
この外装材6Aは、横葺き外装材であり、断面く字状の面板部61の水下側に軒側成形部62、水上側に棟側成形部63が形成され、相互に嵌合可能である。
この外装材6Aが傾斜方向に接続されて形成される外装面の水下側には、前述の横樋材7や連結樋8が配設されるが、外装面と略同一面状であって、横樋材7(排水路71)や連結樋8(流水路81)の開放上面を覆うようにカバー材6Bが配設されている。
【0037】
このカバー材6Bは、横樋材7の排水路71や連結樋8の流水路81の内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積することを防止する部材であり、その面板部64の水下側には、雨水を内部へ導く複数の導水口640として小径のスリット孔が形成され、該導水口640の存在により、降雪の堆積や落ち葉等の侵入の防止も果たされる。即ちこの導水口640は、雨水等からの落ち葉等の侵入を防止するフィルターの役割を果たすので、その後の横樋材7(排水路71)や連結樋8(流水路81)、排水材4(落水路41)における詰まりを防止できる。
【0038】
このカバー材6Bは、前述の横樋材7や連結樋8と同質の素材や加工を用いることができ、横樋材7自体の強度も向上できる。また、その軒先端(略コ字状の係合部65)が横樋材7の軒先端の被係合部と係合され、その逆(建築物6側)端が外装下地6C(軒先唐草6d)に固定されることで、横樋材7の軒先端(被係合部)を建築物6側へ引っ張るように保持するため、カバー材6Bが横樋材7の荷重を保持するアームの作用をも果たし、横樋材7や連結樋8の内部を隠す。
【0039】
また、図中の符号9A,9Bは、前述の横樋材7の建築物6側の天井面に配設される軒天部材及びカバー材であって、平坦状屋根に施工される縦葺き材(軒天部材)と該縦葺き材(軒天部材)間に配設されるカバー材を上下逆に流用した部材である。
そのため、その施工においては、軒天部材9A,9A間に下方からカバー材9Bが係合状に取り付けられる。
【0040】
これらの
図1(d)、
図2及び
図3のうち、
図1(d)が横樋材7及び連結樋8の裏面側から見上げた斜視図であるが、連結樋8が裏面側へ隆起状に設けられているので、横樋材7や軒天部材9A等の裏面と異なる色で塗装することで、より明確に際立たせることができる。また、排水材4が外壁5の裏面側に沿うように配設されているので、視覚的に隠すことができる。
【0041】
この実施例1に用いられた排水材4は、前述の横樋材7(排水路71)や連結樋8(流水路81)にて導かれた雨水等を下方へ流下させる落水路41を備える角筒材であり、連結樋8の建築物6側の下方に連絡されているので、連結樋8(流水路81)からの雨水を、落水路41にて下方へ流下(排水)させることができる。また、この実施例1では、外壁5の内面側に排水材4を配設しているので、外壁5が排水材4を隠す役割を果たし、排水材4は外圧や紫外線等の影響を受けにくく、長寿命化が図られ、メンテナンスの必要性も減少する。また、建築物の意匠を損なうこともない。
【0042】
なお、この実施例1においては、軒先に沿って二つの横樋材7,7が、連結樋8を介在させて突き合わせるように配設されるが、突き合わせ状に廃した横樋材7,7の軒先側から連結樋8を臨ませ、該連結樋8の建築側端に排水空間3内の排水材4の上端が配置されるように取り付けることで、雨水の流れが形成されるように組み付ける。
一方、カバー材6Bについては、二つの横樋材7,7及び連結樋8を覆うように取り付け固定すると共に外装材6Aを軒側から順に外装下地6C上に敷設する。
【0043】
このように施工される実施例1の排水構造は、建築物6に取り付けられ、上方が開放する排水路71が備えられる二つの横樋材7,7の連結箇所に、排水路71,71と流水路81が交差するように連結樋8が取り付けられ、該連結樋8の建築物6側が高さ方向に延在する排水材4に連絡されているので、雨水を逆流させることなく確実に流下させることができる。
また、例えば外壁5の色に応じて横樋材7及び連結樋8の色(塗装色)を選択すれば、景観を損なうことがない構造物とすることもできるし、或いは逆に目立つ構造物とすることもできる。前者の場合には、外壁5や横樋材7及び連結樋8を近隣環境に応じた同一色とすればよく、後者の場合には、外壁5及び横樋材7に対し、連結樋8を色相環の反対色(補色)とすればよい。
【0044】
なお、この実施例1では、排水材4が建築物6の外壁5(山状外装材1)の裏面側に配設されているので、外壁5が外圧や紫外線等の影響を排水材4に受けにくくして長寿命化が図られる。
また、この実施例1では、横樋材7及び連結樋8の開放上部を覆うカバー材6Bが固定されているので、横樋材7及び連結樋8の内部をカバー材6Bにて隠すと共にこのカバー材6Bにて横樋材7や連結樋8の強度も向上できる。このカバー材6Bは、雨水等からの落ち葉等の侵入を防止するフィルターの役割をも果たすので、横樋材7,7や連結樋8、排水材4における詰まりを防止できる。
当該実施例2における外壁5も前述の実施例1と同様に、山状外装材1と谷状外装材2とが交互に並列状に接続されて凹凸状の外壁面を形成している構造であるが、左方側に配設されている山状外装材1の裏面側を排水空間3とし、当該排水空間3に配された樋状材である補助面材3Bの面板部21"が落水路31の後面を形成し、山状外装材1の面板部11が落水路31の前面を形成する構成である。
左方側以外の山状外装材1については、例えば右方側の山状外装材1のように面板部11の裏面側に断熱材(バックアップ材)1Cを介在させることで、面板部11の凹み等の変形を防止するようにしている。
なお、面板部11には、一般的なPEF等の裏貼り材1bが添着されている。
当該実施例2も、山状外装材1と谷状外装材2とが交互に並列状に接続されて凹凸状の外壁面を形成している構造であり、左方側に配設されている山状外装材1の裏面側を排水空間3(落水路31)としている。右方側の山状外装材1の裏面側には、断熱材(バックアップ材)1Cが介在され、凸状表面の凹み等の変形を防止している。
また、この実施例2でも、同一素材の面板材を山状外装材1及び谷状外装材2として用い、排水空間3に補助面材3Bを配設しているに過ぎないので、少ない部材にて高さ方向に排水空間3を備える外壁5を構築できる。
しかもこの実施例2にて用いる補助面材3Bは、面板部21"の寸法が巾狭に形成されている以外は谷状外装材2と全く同様であるため、その作成に際して原料板材の巾寸法を変更するだけで同様に成形することができる。