(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104005
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20240726BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20240726BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240726BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0267
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007993
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE33
5H126EE35
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】反応ガスを合流させつつ、セパレータの冷却効率の低下を抑制することができる燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】カソード側セパレータ30は、対向面において互いに並んで設けられ、酸化剤ガスが流れる複数のガス流路50を備えている。また、カソード側セパレータ30は、冷却面30bにおいて隣り合うガス流路50同士の間に設けられ、冷媒が流れる冷却流路58を備えている。ガス流路50は、互いに並んで設けられる複数の第1流路部51と、第1流路部51を流れる酸化剤ガスが合流する第1合流部71と、第1合流部71から下流側に延在する第2流路部52とを有している。冷却面30bには、冷却流路58のうち隣り合う第1流路部51同士の間に位置するとともに冷媒の流れ方向の下流側の端部に位置する下流側端部59と、下流側端部59とガス流路50を挟んで隣り合う他の冷却流路58とを接続する凹溝56が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電部に対向する対向面において互いに並んで設けられ、反応ガスが流れる複数のガス流路と、前記対向面とは反対側の冷却面において隣り合う前記ガス流路同士の間に設けられ、冷媒が流れる冷却流路と、を備える燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路における前記反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ上流側及び下流側とするとき、
前記ガス流路は、互いに並んで設けられる複数の上流側流路と、前記上流側流路を流れる前記反応ガスが合流する合流部と、前記合流部から下流側に延在する下流側流路と、を有し、
前記冷却面には、前記冷却流路のうち隣り合う前記上流側流路同士の間に位置するとともに冷媒の流れ方向の下流側の端部に位置する下流側端部と、前記下流側端部と前記ガス流路を挟んで隣り合う他の前記冷却流路とを接続する凹溝が設けられている、
燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記凹溝は、前記冷却面のうち前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路の両方の反対側の部分に設けられている、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記下流側端部は、直線状に延在する軸線を有し、
前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路の配置は、前記軸線に対して線対称の関係を有する、
請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記下流側端部は、直線状に延在する軸線を有し、
前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路は、前記合流部に近づくほど互いの距離が小さくなるように前記軸線に対して傾斜して延びる傾斜部を有しており、
前記凹溝は、前記冷却面のうち前記傾斜部の各々の反対側の部分に設けられている、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記対向面のうち前記凹溝が設けられている部分の反対側の部分には、前記ガス流路内に突出する突出部が設けられており、
前記突出部は、下流側ほど突出高さが大きくなるように傾斜している、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池の単セルが記載されている。
特許文献1に記載の単セルは、発電部と、発電部を挟むアノード側セパレータ及びカソード側セパレータとを備えている。アノード側セパレータのうち発電部と当接する面には、燃料ガスが流れる複数の燃料ガス流路が設けられている。カソード側セパレータのうち発電部と当接する面には、酸化ガスが流れる複数の酸化ガス流路が設けられている。カソード側セパレータには、隣り合う酸化ガス流路同士の間にリブが設けられている。リブのうち発電部と当接する面とは反対側の面には、冷媒が流れる冷媒用溝流路が設けられている。酸化ガス流路には、隣り合う酸化ガス流路を流れる酸化ガスが合流する合流部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化ガス流路に合流部が設けられる場合、隣り合う酸化ガス流路の間に位置する冷媒用溝流路では、冷媒の流れが合流部によって遮られるので、セパレータの冷却効率が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための燃料電池用セパレータは、燃料電池の発電部に対向する対向面において互いに並んで設けられ、反応ガスが流れる複数のガス流路と、前記対向面とは反対側の冷却面において隣り合う前記ガス流路同士の間に設けられ、冷媒が流れる冷却流路と、を備える燃料電池用セパレータであって、前記ガス流路における前記反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ上流側及び下流側とするとき、前記ガス流路は、互いに並んで設けられる複数の上流側流路と、前記上流側流路を流れる前記反応ガスが合流する合流部と、前記合流部から下流側に延在する下流側流路と、を有し、前記冷却面には、前記冷却流路のうち隣り合う前記上流側流路同士の間に位置するとともに冷媒の流れ方向の下流側の端部に位置する下流側端部と、前記下流側端部と前記ガス流路を挟んで隣り合う他の前記冷却流路とを接続する凹溝が設けられている。
【0006】
同構成によれば、冷却流路の下流側端部まで流れた冷媒が、凹溝を介して他の冷却流路へと流れるようになる。これにより、冷媒の流れが合流部によって遮られることを抑制できる。したがって、反応ガスを合流させつつ、セパレータの冷却効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る単セルの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のカソード側セパレータを示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のガス流路について、合流部を中心に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、突出部の変更例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、カソード側セパレータの第1変更例を示す拡大平面図である。
【
図7】
図7は、カソード側セパレータの第2変更例を示す拡大平面図である。
【
図8】
図8は、カソード側セパレータの第3変更例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図4を参照して、燃料電池用セパレータの一実施形態について説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示しているため、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
【0009】
<単セル90>
図1に示すように、燃料電池の単セル90は、膜電極ガス拡散層接合体(以下、発電部10)と、発電部10を囲む電気絶縁性の枠部材20と、発電部10及び枠部材20を挟むカソード側セパレータ30及びアノード側セパレータ40とを有している。単セル90は、全体として長方形板状である。
【0010】
なお、以降では、カソード側セパレータ30、発電部10及び枠部材20、並びにアノード側セパレータ40の積層方向を第1方向Xとして説明する。
また、単セル90の長辺方向及び短辺方向を、それぞれ第2方向Y及び第3方向Zとして説明する。
【0011】
単セル90は、燃料ガス、冷媒、及び酸化剤ガスを単セル90内にそれぞれ導入するための供給側マニホールド孔94,95,96を有している。また、単セル90は、単セル90内の燃料ガス、冷媒、及び酸化剤ガスをそれぞれ外部へ排出するための排出側マニホールド孔97,98,99を有している。
【0012】
供給側マニホールド孔94,95,96及び排出側マニホールド孔97,98,99は、単セル90を第1方向Xに貫通している。供給側マニホールド孔94及び排出側マニホールド孔98,99は、第2方向Yにおける単セル90の一側(
図1の左側)に設けられている。排出側マニホールド孔97及び供給側マニホールド孔95,96は、第2方向Yにおける単セル90の他側(
図1の右側)に設けられている。供給側マニホールド孔94及び排出側マニホールド孔98,99は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて順に並んでいる。排出側マニホールド孔97及び供給側マニホールド孔95,96は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて順に並んでいる。
【0013】
<発電部10>
図1に示すように、発電部10は、図示しない固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の両面に設けられた電極11,12とを有している。なお、本実施形態では、第1方向Xにおける電解質膜(図示略)の一側(
図1の上側)の面に接合された電極が、カソード電極11である。また、第1方向Xにおける電解質膜の他側(
図1の下側)の面に接合された電極が、アノード電極12である。電極11,12は、電解質膜に接合された触媒層と、触媒層に接合されたガス拡散層とを有している。
【0014】
<枠部材20>
図1に示すように、枠部材20は、カソード側セパレータ30とアノード側セパレータ40との間に設けられている。枠部材20は、第2方向Yに長い平面視略長方形板状である。枠部材20は、例えば合成樹脂材料により形成されている。
【0015】
枠部材20は、供給側マニホールド孔94,95,96,及び排出側マニホールド孔97,98,99をそれぞれ構成する供給側マニホールド孔24,25,26,及び排出側マニホールド孔27,28,29を有している。
【0016】
枠部材20は、中央に開口部21を有している。開口部21の内周縁部には、第1方向Xの一側(
図1の上側)から発電部10の周縁部が接合されている。
<カソード側セパレータ30>
図1に示すように、カソード側セパレータ30は、発電部10のカソード電極11に対向して配置されている。カソード側セパレータ30は、ステンレス鋼などの金属製の基材と、基材の表面を覆う導電性の被覆層とを有している。カソード側セパレータ30の基材は、プレス成形によって形成されている。
【0017】
カソード側セパレータ30は、供給側マニホールド孔94,95,96,及び排出側マニホールド孔97,98,99をそれぞれ構成する供給側マニホールド孔34,35,36,及び排出側マニホールド孔37,38,39を有している。
【0018】
カソード側セパレータ30は、枠部材20及び発電部10と重なる対向面30aと、対向面30aとは反対側の面である冷却面30bとを有している。
カソード側セパレータ30は、酸化剤ガスが流通する複数のガス流路50と、冷媒が流通する複数の冷却流路58とを有している。ガス流路50は、対向面30aに設けられている。冷却流路58は、冷却面30bに設けられている。
【0019】
なお、
図1には、カソード側セパレータ30において、複数のガス流路50が形成された部分の外縁と、複数の冷却流路58が形成された部分の外縁をそれぞれ簡略化して示している。
【0020】
<アノード側セパレータ40>
図1に示すように、アノード側セパレータ40は、発電部10のアノード電極12に対向して配置されている。アノード側セパレータ40は、ステンレス鋼などの金属製の基材と、基材の表面を覆う導電性の被覆層とを有している。アノード側セパレータ40の基材は、プレス成形によって形成されている。
【0021】
アノード側セパレータ40は、供給側マニホールド孔94,95,96,及び排出側マニホールド孔97,98,99をそれぞれ構成する供給側マニホールド孔44,45,46,及び排出側マニホールド孔47,48,49を有している。
【0022】
アノード側セパレータ40は、枠部材20及び発電部10と重なる対向面40aと、対向面40aとは反対側の面である冷却面40bとを有している。
アノード側セパレータ40は、燃料ガスが流通する複数のガス流路60と、冷媒が流通する複数の冷却流路68とを有している。ガス流路60は、対向面40aに設けられている。冷却流路68は、冷却面40bに設けられている。
【0023】
なお、
図1には、アノード側セパレータ40において、複数のガス流路60が形成された部分の外縁と、複数の冷却流路68が形成された部分の外縁をそれぞれ簡略化して示している。
【0024】
次に、カソード側セパレータ30の構成について、詳細に説明する。
図2に示すように、複数のガス流路50は、供給側マニホールド孔36と排出側マニホールド孔39とを接続する。ガス流路50同士の間には、リブ57が設けられている(
図3参照)。酸化剤ガスは、供給側マニホールド孔36からガス流路50に供給される。ガス流路50を流れる酸化剤ガスは、排出側マニホールド孔39に排出される。ガス流路50の幅は、ガス流路50の延在方向の全体にわたって一定である。
【0025】
なお、以降では、ガス流路50における酸化剤ガスの流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ上流側及び下流側として説明する。
ガス流路50は、上流側から順に、供給側接続流路50a、第1流路部51、第2流路部52、第3流路部53、及び排出側接続流路50bを有している。
【0026】
ガス流路50のうち第1流路部51、第2流路部52、及び第3流路部53が、発電部10のカソード電極11に対向する。
供給側接続流路50aは、供給側マニホールド孔36と第1流路部51とを接続している。本実施形態では、4つの供給側接続流路50aが第3方向Zに並んで設けられている。
【0027】
第1流路部51は、各供給側接続流路50aの下流側において複数に分岐して延在している。複数の第1流路部51は、互いに並んで設けられている。本実施形態では、1つの供給側接続流路50aから4つの第1流路部51が分岐するとともに、第3方向Zにおいて互いに並んでいる。ガス流路50は、上記4つの第1流路部51のうち隣り合う2つの第1流路部51を流れる酸化剤ガスが合流する第1合流部71と、第1合流部71から下流側に延在する第2流路部52とを有している。本実施形態では、上記4つの第1流路部51に対して2つの第1合流部71を介して2つの第2流路部52が接続されている。
【0028】
ガス流路50は、上記2つの第2流路部52を流れる酸化剤ガスが合流する第2合流部72と、第2合流部72から下流側に延在する第3流路部53とを有している。本実施形態では、上記2つの第2流路部52に対して1つの第2合流部72を介して1つの第3流路部53が接続されている。
【0029】
排出側接続流路50bは、第3流路部53と排出側マニホールド孔39とを接続している。本実施形態では、4つの排出側接続流路50bが第3方向Zに並んで設けられている。
【0030】
なお、第1流路部51と第2流路部52とにおいては、第1流路部51が本発明に係る上流側流路に相当し、第2流路部52が本発明に係る下流側流路に相当する。また、第2流路部52と第3流路部53とにおいては、第2流路部52が本発明に係る上流側流路に相当し、第3流路部53が本発明に係る下流側流路に相当する。
【0031】
図3に示すように、カソード側セパレータ30の冷却面30bには、隣り合うガス流路50同士の間に設けられ、冷媒が流れる冷却流路58が設けられている。冷却面30bには、冷却流路58のうち隣り合う第1流路部51同士の間に位置するとともに冷媒の流れ方向の下流側の端部に位置する下流側端部59が設けられている。下流側端部59は、直線状に延在する軸線Vを有している。下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の配置は、軸線Vに対して線対称の関係を有する。
【0032】
下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51は、第1合流部71に近づくほど互いの距離が小さくなるように軸線Vに対して傾斜して延びる傾斜部54を有している。
図3及び
図4に示すように、傾斜部54には、発電部10に向かって突出する突出部55が設けられている。突出部55は、傾斜部54の幅方向の全体にわたって設けられている。
【0033】
冷却面30bには、下流側端部59とガス流路50を挟んで隣り合う他の冷却流路58とを接続する凹溝56が設けられている。凹溝56は、突出部55によって形成されている。凹溝56は、冷却面30bのうち下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の両方の反対側の部分に設けられている。凹溝56は、冷却面30bのうち傾斜部54の各々の反対側の部分に設けられている。
【0034】
図4に示すように、傾斜部54の底面54aからの突出部55の突出高さは、傾斜部54の延在方向において一定である。
なお、第2流路部52についても第1流路部51と同様にして突出部55及び凹溝56が設けられている。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、冷却流路58の下流側端部59まで流れた冷媒が、凹溝56を介して他の冷却流路58へと流れるようになる。これにより、冷媒の流れが第1合流部71によって遮られることを抑制できる。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)冷却面30bには、下流側端部59と、下流側端部59とガス流路50を挟んで隣り合う他の冷却流路58とを接続する凹溝56が設けられている。
【0037】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、酸化剤ガスを合流させつつ、カソード側セパレータ30の冷却効率の低下を抑制することができる。
(2)凹溝56は、冷却面30bのうち下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の両方の反対側の部分に設けられている。
【0038】
こうした構成によれば、冷却流路58の下流側端部59まで流れた冷媒が、冷却面30bのうち下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の両方の反対側の部分に設けられた凹溝56を介して、下流側端部59と隣り合う他の2つの冷却流路58へと流れる。これにより、冷媒の流れに偏りができることを抑制できる。したがって、カソード側セパレータ30の冷媒効率の低下を一層抑制することができる。
【0039】
(3)下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の配置は、軸線Vに対して線対称の関係を有する。
こうした構成によれば、冷却流路58の下流側端部59から、下流側端部59と隣り合う他の2つの冷却流路58へと冷媒が流れる際に、冷媒が一方の冷却流路58へ偏って流れることを抑制することができる。したがって、冷媒による冷却性能が位置によってばらつくことを抑制できる。
【0040】
(4)下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51は、第1合流部71に近づくほど互いの距離が小さくなるように軸線Vに対して傾斜して延びる傾斜部54を有している。凹溝56は、冷却面30bのうち傾斜部54の各々の反対側の部分に設けられている。
【0041】
こうした構成によれば、冷却流路58の下流側端部59まで流れた冷媒が、冷却面30bのうち傾斜部54の反対側の部分に設けられた凹溝56を介して他の冷却流路58へと流れるようになる。このため、冷媒はその流れ方向を大きく変えることなく凹溝56へと流入するようになる。これにより、下流側端部59に冷媒が滞留することを抑制できる。したがって、カソード側セパレータ30の冷却効率を一層向上させることができる。
【0042】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
・
図5に示すように、突出部550の突出高さを、酸化剤ガスの流れ方向の下流側ほど大きくしてもよい。この場合、下流側ほど突出高さが大きくなるように突出部550が傾斜しているので、突出部550に起因して酸化剤ガスの圧力損失が増大することを抑制できる。したがって、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0044】
・
図6に示すように、凹溝560は、下流側端部59から第2流路部52の延在方向に沿って延びる第1部分561と、第1部分561から第2流路部52の幅方向に延びる第2部分562とを有し、平面視T字状を有するものであってもよい。
【0045】
・下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51の配置は、軸線Vに対して非対称であってもよい。
・上記実施形態において、下流側端部59と隣り合う2つの第1流路部51のいずれか一方の凹溝56を省略してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、2つの第1流路部51に対して1つの第1合流部71が設けられる構成について例示したが、
図7に示すように、3つの第1流路部51に対して1つの第1合流部71が設けられるようにしてもよい。この場合、3つの第1流路部51の全てに凹溝56を設けるようにしてもよい。また、この場合、3つの第1流路部51のうちの両側の2つの第1流路部51にのみ凹溝56を設けるようにしてもよい。
【0047】
・
図8に示すように、互いに隣り合う3つの第1流路部51のうち中央の第1流路部51を流れる酸化剤ガスが両側の2つの第1流路部51を流れる酸化剤ガスにそれぞれ合流するように、中央の第1流路部51を分岐させてもよい。3つの第1流路部51は、都合4つの傾斜部54を有する。この場合、4つの傾斜部54に、それぞれ凹溝56を設けるようにしてもよい。またこの場合、4つの傾斜部54のうち例えば中央に位置する2つの傾斜部54のいずれか一方に凹溝56を設けるようにしてもよい。
【0048】
・カソード側セパレータ30に加えて、あるいは代えて、アノード側セパレータ40に本発明を適用することもできる。
<付記>
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0049】
[付記1]燃料電池の発電部に対向する対向面において互いに並んで設けられ、反応ガスが流れる複数のガス流路と、前記対向面とは反対側の冷却面において隣り合う前記ガス流路同士の間に設けられ、冷媒が流れる冷却流路と、を備える燃料電池用セパレータであって、前記ガス流路における前記反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ上流側及び下流側とするとき、前記ガス流路は、互いに並んで設けられる複数の上流側流路と、前記上流側流路を流れる前記反応ガスが合流する合流部と、前記合流部から下流側に延在する下流側流路と、を有し、前記冷却面には、前記冷却流路のうち隣り合う前記上流側流路同士の間に位置するとともに冷媒の流れ方向の下流側の端部に位置する下流側端部と、前記下流側端部と前記ガス流路を挟んで隣り合う他の前記冷却流路とを接続する凹溝が設けられている、燃料電池用セパレータ。
【0050】
[付記2]前記凹溝は、前記冷却面のうち前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路の両方の反対側の部分に設けられている、[付記1]に記載の燃料電池用セパレータ。
【0051】
[付記3]前記下流側端部は、直線状に延在する軸線を有し、前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路の配置は、前記軸線に対して線対称の関係を有する、[付記2]に記載の燃料電池用セパレータ。
【0052】
[付記4]前記下流側端部は、直線状に延在する軸線を有し、前記下流側端部と隣り合う2つの前記上流側流路は、前記合流部に近づくほど互いの距離が小さくなるように前記軸線に対して傾斜して延びる傾斜部を有しており、前記凹溝は、前記冷却面のうち前記傾斜部の各々の反対側の部分に設けられている、[付記1]~[付記3]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【0053】
[付記5]前記対向面のうち前記凹溝が設けられている部分の反対側の部分には、前記ガス流路内に突出する突出部が設けられており、前記突出部は、下流側ほど突出高さが大きくなるように傾斜している、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【符号の説明】
【0054】
10…膜電極ガス拡散層接合体(発電部)
11…カソード電極
12…アノード電極
20…枠部材
21…開口部
24~26…供給側マニホールド孔
27~29…排出側マニホールド孔
30…カソード側セパレータ
30a…対向面
30b…冷却面
34~36…供給側マニホールド孔
37~39…排出側マニホールド孔
40…アノード側セパレータ
40a…対向面
40b…冷却面
44~46…供給側マニホールド孔
47~49…排出側マニホールド孔
50…ガス流路
50a…供給側接続流路
50b…排出側接続流路
51…第1流路部
52…第2流路部
53…第3流路部
54…傾斜部
54a…底面
55,550…突出部
56,560…凹溝
57…リブ
58…冷却流路
59…下流側端部
60…ガス流路
68…冷却流路
71…第1合流部
72…第2合流部
90…単セル
94~96…供給側マニホールド孔
97~99…排出側マニホールド孔
561…第1部分
562…第2部分