(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104009
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240726BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240726BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/20
H05B3/00 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007998
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶彦
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
3K058
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA03
2H033AA24
2H033AA41
2H033AA42
2H033BA25
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BA38
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA04
2H033CA07
2H033CA17
2H033CA30
2H033CA45
2H033CA47
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA13
2H270KA28
2H270KA35
2H270KA65
2H270LA25
2H270LC06
2H270LD06
2H270MA35
2H270MB03
2H270MF01
2H270MF08
2H270MH09
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
2H270ZD05
3K058AA12
3K058BA18
3K058CB04
3K058CD01
(57)【要約】
【課題】定着装置のヒータ温度制御では、AC電圧のゼロクロス信号の検出タイミングからの位相差でトライアックをオン、オフしてヒータの点灯を制御する位相制御のものが知られているが、不連続な電力波形で電力量を調整するため、ヒータを点灯する際に電圧、電流の急峻な立ち上がり波形が生じ、高調波ノイズが発生することで制御系や周辺機器に影響を及ぼす可能性があった。
【解決手段】AC電圧が印加されるメインヒータ60と、AC電圧の周期を検出するAC半波検出部83と、ヒータへのAC電圧の印加をオン、オフするトライアック86と、トライアック86を駆動するトライアック駆動回路82と、定着ヒータ駆動制御部81とを備え、定着ヒータ駆動制御部81は、AC電圧のゼロクロス周期を算出し、前記オン、オフの切替えタイミングをゼロクロス周期よりも長いヒータ制御周期に同期して行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC電圧が印加されることにより発熱するヒータと、
前記AC電圧の周期を検出する周期検出部と、
前記ヒータへの前記AC電圧の印加をオン、オフするスイッチと、
前記スイッチを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路を介して前記ヒータへの前記AC電圧の印加を制御するヒータ制御部と
を備え、
前記ヒータ制御部は、前記周期検出部の検出結果から前記AC電圧の半波の第1の周期を算出し、前記オン、オフの切替えタイミングを前記第1の周期よりも長い第2の周期に同期して行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スイッチは、ゼロクロスタイプのフォトトライアックを含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の周期に対する前記第2の周期の比を1.03以上とすることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヒータ制御部は、前記ヒータを備えた定着装置の検出温度と目標温度との比較に基づいて前記オンの時間と前記オフの時間の比率を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した、定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置は、AC電圧のゼロクロス点を検出しゼロクロス信号を生成して、ゼロクロス信号の検出タイミングからの位相差でトライアックをオン、オフし、定着装置のヒータの点灯を制御する位相制御のものが知られている。
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-10193号公報(第6頁、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法ではゼロクロス検出回路が必要で比較的高価になること、また不連続な電力波形で電力量を調整するため、ヒータを点灯する際に電圧、電流の急峻な立ち上がり波形が生じ、高調波ノイズが発生することで制御系や周辺機器に影響を及ぼす可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による画像形成装置は、AC電圧が印加されることにより発熱するヒータと、前記AC電圧の周期を検出する周期検出部と、前記ヒータへの前記AC電圧の印加をオン、オフするスイッチと、前記スイッチを駆動する駆動回路と、前記駆動回路を介して前記ヒータへの前記AC電圧の印加を制御するヒータ制御部とを備え、
前記ヒータ制御部は、前記周期検出部の検出結果から前記AC電圧の半波の第1の周期を算出し、前記オン、オフの切替えタイミングを前記第1の周期よりも長い第2の周期に同期して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の画像形成装置によれば、安価で、高調波ノイズの発生を抑制でき、誤動作による意図しない温度上昇を防止できる、定着装置のヒータの温度制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による実施の形態1の画像形成装置の要部構成図を概略的に示す要部構成図である。
【
図2】画像形成装置の制御系の回路構成を示すブロック図である。
【
図3】定着器の内部構成を概略的に示す要部構成図であり、(a)は記録用紙を受け入れる用紙搬入側から見た正面図であり、(b)はその右側面図である。
【
図4】定着器の面状の定着ヒータの通電駆動制御部を示す回路図である。
【
図5】定着器の定着ヒータを温度制御する際のヒータ制御周期及び温度制御周期を決定するフローチャートである。
【
図6】商用電源のAC電圧の周波数50Hz、デューティ値40%で温度制御する場合の、各部の信号波形を示すタイムチャートである。
【
図7】AC電圧のゼロクロスと第1定着オン信号のエッジの相互のタイミングの説明に供する図であり、(a)は本実施の形態に基づくタイミングを示し、(b)は比較説明のために設定したタイミングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明による実施の形態1の画像形成装置11の要部構成図を概略的に示す要部構成図である。
【0009】
画像形成装置11は、例えば電子写真カラープリンタとしての構成を備え、画像形成部を構成する、4つの独立した画像形成ユニットとしてのイメージドラムユニット(以後、IDユニットと称す)12K、12Y、12M、12C(特に区別する必要がない場合は単にIDユニット12と称す場合がある)が、記録用紙40の搬送方向(矢印A方向)に沿って上流側から順に着脱自在に配置されている。IDユニット12Kはブラック(K)の画像を形成し、IDユニット12Yはイエロー(Y)の画像を形成し、IDユニット12Mはマゼンタ(M)の画像を形成し、IDユニット12Cはシアン(C)の画像を形成する。
【0010】
本実施の形態においては、これらのIDユニット12K,12Y,12M,12Cの構成は同一であり、収容されているトナーの色のみが異なるため、ここではブラック(K)のIDユニット12Kを例にとり、その内部構造を以下に説明する。
【0011】
IDユニット12Kには、感光体ドラム13K(特に区別する必要がない場合は単に感光体ドラム13と称す場合がある)、感光体ドラム13Kの表面を均一に帯電する帯電ローラ14K(特に区別する必要がない場合は単に帯電ローラ14と称す場合がある)、感光体ドラム13Kの表面に形成された静電潜像に、現像剤としてのブラック用トナー(図示せず)を付着させ、トナー像を形成する現像ローラ16K(特に区別する必要がない場合は単に現像ローラ16と称す場合がある)、及び現像ローラ16Kに圧接させたトナー供給ローラ18K(特に区別する必要がない場合は単にトナー供給ローラ18と称す場合がある)とが配置されている。
【0012】
トナー供給ローラ18Kは、IDユニット12K本体に対して着脱自在に装着されたトナーカートリッジ20K(特に区別する必要がない場合は単にトナーカートリッジ20と称す場合がある)に収容されたブラック用トナー(図示せず)を対応する現像ローラ16Kに供給すると共に摩擦帯電させるローラである。現像ローラ16Kには、現像ブレード19K(特に区別する必要がない場合は単に現像ブレード19と称す場合がある)が圧接されている。現像ブレード19Kは、現像ローラ16K上において、トナー供給ローラ18Kから供給されたブラック用トナーを薄層化するものである。
【0013】
現像ローラ16は、静電潜像を現像するトナーを表面に担持する部材であり、感光体ドラム13の表面(周面)に接するように配置されている。この現像ローラ16は、例えば、金属シャフトと、その外周(表面)を覆う半導電性ウレタンゴム層とを有している。尚、このような現像ローラ16は、所定の周速度にて、例えば感光体ドラム13とは逆方向に回転するようになっている。
【0014】
感光体ドラム13Kの表面に圧接するクリーニングブレード27K(特に区別する必要がない場合は単にクリーニングブレード27と称す場合がある)は、後述する転写後に感光体ドラム13K上に残ったブラック用トナー(残留トナー)を掻き落とし、例えば可撓性のゴム材またはプラスチック材などからなる。
【0015】
感光体ドラム13Kの上部には、露光ヘッド15K(特に区別する必要がない場合は単に露光ヘッド15と称す場合がある)が、感光体ドラム13Kに対向して配設されている。他の感光体ドラム13Y,13M,13Cにも、同様にしてそれぞれ対応する露光ヘッド15C,15M,15Yが配置されている。露光ヘッド15は、対応する色の画像データに従って感光体ドラム13を選択的に露光し、その表面(表層部分)に静電潜像を形成する。
【0016】
露光ヘッド15は、例えば、照射光を発する複数の光源と、この照射光を感光体ドラム13の表面に結像させるレンズアレイとを含んで構成され、これらの各光源としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザ素子等が挙げられる。尚、露光ヘッド15は、例えばアッパーカバー(図示せず)に保持され、アッパーカバーの開方向への回動に伴って、IDユニット12から離間する。
【0017】
4つのIDユニット12の各感光体ドラム13の下方には、転写ユニット21が配設されている。転写ユニット21は、転写ローラ17K,17Y,17M,17C(特に区別する必要がない場合は単に転写ローラ17と称す場合がある)、転写ベルト駆動ローラ21a、転写ベルト従動ローラ21b、転写ベルト駆動ローラ21a、及び転写ベルト従動ローラ21bによって、張架した状態で
図1中の矢印A方向へ走行可能に配設された転写ベルト26を備えている。尚、転写ベルト26上に付着する残留トナーは、ベルトクリーニングブレード34によって掻き取られてベルトクリーナ容器35内に収容される。
【0018】
各転写ローラ17は、転写ベルト26を介してそれぞれ対応する感光体ドラム13に圧接して配置され、圧接により形成されたニップ部において、転写ベルト26によって搬送される記録用紙40をトナーと逆の極性に帯電させ、対応する感光体ドラム13に形成された各色のトナー像を順次記録用紙40に重ねて転写する。
【0019】
画像形成装置11の転写ユニット21の下部には、転写ベルト26に記録用紙40を供給するための給紙機構が配設されている。給紙機構は、記録用紙40を格納する給紙トレイ24、給紙トレイ24から記録用紙40を取り出すホッピングローラ43と、記録用紙40を搬送するレジストローラ対44,45等からなる。レジストローラ対45の後段に配置された用紙検出センサ49は、接触または非接触で用紙の通過を検知する。用紙検出センサ49の検出信号は、露光ヘッド15の発光タイミング及び転写ローラ17へ高電圧を印加するタイミングの基準となる。
【0020】
更に、転写ベルト26による記録用紙40の排出側には、定着装置としての定着器28が画像形成装置11本体に対して着脱自在に設けられている。定着器28は、内部に熱源として定着ヒータ31を備えた定着ベルト29と、図示しない圧縮スプリングにより定着ベルト29が付勢されるバックアップローラ30、非接触型温度センサ32を有し、記録用紙40のトナー像を熱と加圧によって定着する。
【0021】
非接触型温度センサ32は、定着ベルト29の表面から放射される赤外線を受光し温度に変換する非接触の温度センサであり、温度検出位置は、周方向で記録用紙40の入り口側で、長手方向の中央になるよう、画像形成装置11本体側に配置される。
【0022】
この定着器28の排出側には、排出検知センサ50、用紙ガイド部42、この用紙ガイド部42に沿って配置された搬送ローラ対46、排出ローラ対47、及び用紙スタッカ部48等が設けられている。排出検知センサ50も記録用紙40の有無を検出するセンサであり、排出検知センサ50の検出信号は、記録用紙40に対する一連の画像形成プロセスが終了したか否かの基準となる。
【0023】
図2は、画像形成装置11の制御系の回路構成を示すブロック図である。
【0024】
同図において、ホストインターフェース部100は、パーソナルコンピュータ(PC)等の上位装置(外部機器)から送られてくるPDL(Page Description Language)等で記述された印刷データをコマンド/画像処理部101へ供給する。コマンド/画像処理部101は、ホストインターフェース部100から送られる印刷データをビットマップデータに変換する。
【0025】
露光ヘッドインターフェース部102は、コマンド/画像処理部101で変換された印刷データを印刷制御部103からの制御に従って露光ヘッド15K,15Y,15M,15Cへ出力する。印刷制御部103は、CPU、ROM、RAM、I/Oポート、タイマ等によって構成され、各センサ及び各部からの情報信号を解析、演算、条件判断し、各部への動作指示信号を出力することで、機構部制御と印加電圧制御を統括的に行っている。また、後述する非接触型温度センサ32の検出温度の上昇傾きの演算や演算結果の格納、比較も担っている。
【0026】
高圧発生部104は、印刷制御部103からの制御に従って各IDユニット12K,12Y,12M,12C内の部材(帯電ローラ14、現像ローラ16、トナー供給ローラ18)、及び転写ローラ17K,17Y,17M,17Cに対して高電圧(バイアス)を印加する。印刷制御部103によって、これらの高電圧の大きさ等が適宜制御される。
【0027】
定着制御部105は、定着器28に近接配置された非接触型温度センサ32(
図1)からの温度情報を受信し、この検出温度が定着器28を用紙サイズや用紙厚さなどの印刷条件に応じた目標温度に接近するように、定着ヒータ31の発熱を制御する。この定着ヒータ31の温度制御については、後で詳細に説明する。搬送モータ111は、ホッピングローラ43、レジストローラ対44、45、搬送ローラ対46、及び排出ローラ対47を回転駆動し、IDモータ112は、IDユニット12K、12Y、12M、12Cの各回転体を回転駆動する。
【0028】
ベルトモータ113は、転写ベルト駆動ローラ21aを回転駆動し、定着器モータ114は、定着器28のバックアップローラ30を回転駆動する。各モータは、印刷制御部103からの指示信号を受け所定のタイミング、速度で駆動される。
【0029】
図3は、定着器28の内部構成を概略的に示す要部構成図であり、同図(a)は、記録用紙40を受け入れる用紙搬入側から見た正面図であり、同図(b)はその右側面図である。尚、定着器28を、記録用紙40が搬入される側(通紙方向)からみて、前(手前側)後(奥側)左右を特定する場合がある。
【0030】
同図に示すように、エンドレスで円筒状に形成された定着ベルト29と、バックアップローラ30とは、図示しない付勢手段によって当接し、当接部にニップ部が形成されるように構成されている。このため、定着ベルト29は、左右の両端部が、各端部に対向して配置された図示しないフランジに形成された溝に嵌入して円筒形状が保たれ、且つ長手方向移動が規制されている。
【0031】
定着ベルト29は、適度の剛性を得るため、ここでは、複数層からなる部材によって構成され、内周側の基材として、PI(ポリイミド)などの樹脂又は適度な剛性と可撓性を有するSUS等の弾性を有した金属が用いられ、その上層にシリコーンゴム等の弾性層及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)に代表されるフッ素樹脂コーティング又はそれらを加工したチューブから成る表層を重ね合わせた多重構造となっている。バックアップローラ30は、定着器モータ114(
図2参照)によって、矢印C方向に回転駆動され、これに伴って定着ベルト29が供回りする。尚、
図2(a)で、定着ベルト29は、その内側を明示するため、透視した図となっている。
【0032】
定着ベルト29のニップ部の内側には、面状の定着ヒータ31が配設されている。定着ヒータ31の長手方向の温度ムラを小さくするため、定着ヒータ31と定着ベルト29の間に熱伝導率の高い金属製の熱拡散部材を配置する構成としても良い。定着ヒータ31の表面には図示しない摺動性グリスが塗付されており、定着ベルト29との摺動性を高めている。
【0033】
面状の定着ヒータ31は、定着ベルト29の幅方向(以後、長手方向と称す場合もある)に延在する面状発熱体であり、ステンレス又はセラミック製の基板上に、電気絶縁層、抵抗発熱体、電極と保護層が順に積層され、抵抗発熱体に電力を供給することにより発熱させることができる。面状の定着ヒータ31は、保護層側が直接又は熱拡散部材を介して発熱を定着ベルト29に熱伝達する。
【0034】
面状の定着ヒータ31は、発熱部が長手方向において3分割されており、中央部に位置するヒータとしてのメインヒータ60、メインヒータ60の左右両側に隣接配置された左サイドヒータ61L及び右サイドヒータ61Rを備える。これらの3分割された各ヒータは、長手方向において、メインヒータ60の中心に対して左右対称に形成され、左サイドヒータ61Lと右サイドヒータ61Rとは、後述するように電気的に並列接続され、同時通電されて同時に発熱する。
【0035】
メインヒータ60と左右のサイドヒータ61L,61Rの各幅は、設計要件又はユーザー要求等により任意に決定されるものであるが、ここではメインヒータ60の幅は、A4縦置き時の幅サイズ(210mm)に対応している。A4縦置きコピーの場合、メインヒータ60のみを駆動する。A4縦置きからA4横置き(297mm=画像形成装置11で印刷可能な最大幅とする)までの用紙幅の場合、用紙幅に応じて左右のサイドヒータ61R,61Lの発熱量を調整する。
【0036】
メインヒータ60、左サイドヒータ61L、及び左サイドヒータ61Lの各基板側の裏面には、それぞれの温度を検出するメインヒータ裏サーミスタ70、左サイドヒータ裏サーミスタ71L、右サイドヒータ裏サーミスタ71Rが配設されている。これらの各サーミスタは、夫々が検出した温度情報を定着制御部105(
図4参照)に送信する。
【0037】
メインヒータ裏サーミスタ70及び左右のサイドヒータ裏サーミスタ71は、それぞれ対応するメインヒータ60及び左右のサイドヒータ61L,61Rの暴走過熱やユーザーの用紙設定間違いによる非通紙部過熱のガードに使用される。また、定着ベルト29の外部、長手方向中央位置には定着ベルト29の表面の温度を検出するための非接触型温度センサ32が設置されている。非接触型温度センサ32は非接触で温度を検出するセンサであり、例えばサーモパイルが挙げられる。
【0038】
バックアップローラ30は、PTFEやPFAの表層、シリコーンゴム層、軸となる芯金で構成される。このうちシリコーンゴム層は、バックアップローラ30への熱伝導により定着器28のウォームアップ時間が延びることを避けるため、あえて熱伝導性の悪いスポンジタイプのゴムを用いることが多い。
【0039】
以上のように構成された定着器28は、転写ユニット21(
図1)から送り出された記録用紙40をニップ部で挟むようにして矢印A方向に搬送する。その間に、記録用紙40上に転写されて弱い静電気力で付着しているトナー画像を、熱によって溶解し、更に加圧して記録用紙40に定着させる。
【0040】
図4は、定着器28の面状の定着ヒータ31の通電駆動制御部を示す回路図である。
【0041】
同回路図に示すように、メインヒータ裏サーミスタ70、左サイドヒータ裏サーミスタ71L、右サイドヒータ裏サーミスタ71R、及び非接触型温度センサ32でそれぞれ検出された温度情報は、共に定着ヒータ駆動制御部81に送信される。
【0042】
面状の定着ヒータ31の各ヒータ60,61L,61Rの各一方の電極は、共にリレー84を介して商用電源85の一方の端子に接続される共に周期検出部としてのAC半波検出部83の一方の入力端子に接続され、メインヒータ60の他方の端子はトライアック86の一方の端子に接続され、左右のサイドヒータ61L,61Rの各他方の端子はトライアック87の一方の端子に接続されている。
【0043】
2つのトライアック86,87の各他方の端子は、共に商用電源85の他方の端子に接続されると共にAC半波検出部83の他方の入力端子に接続され、トライアック86のゲート端子はフォトトライアック401に接続され、トライアック87のゲート端子はフォトトライアック402に接続されている。尚、ここでは、フォトトライアック401、402としてゼロクロスタイプのフォトトライアックを使用するものとする。
【0044】
ヒータ制御部としての定着ヒータ駆動制御部81は、AC半波検出部83からAC半波検出信号を入力し、リレー84に対してオン/オフ制御信号を出力すると共に、第1制御パターンに応じた第1定着オン信号93を抵抗406を介してトライアック駆動回路82のトランジスタ403に送信し、第2制御パターンに応じた第2定着オン信号94をトライアック駆動回路82のトランジスタ404に送信する。
【0045】
第1定着オン信号93がハイレベルのとき、トランジスタ403がオンしてフォトトライアック401のLEDが点灯する。フォトトライアック401のLEDが点灯するとフォトトライアック401がオンとなり、抵抗409、410を介してトライアック86をオンさせている。トライアック87についても同様である。尚、抵抗410、412はそれぞれトライアック86、87の誤動作防止用として、また他の抵抗405,409,407,411は電流制限用として用いられている。尚、トライアック86、フォトトライアック401、抵抗409、及び抵抗410がスイッチに相当し、トランジスタ403、抵抗405、及び抵抗406が駆動回路に相当する。
【0046】
トライアック駆動回路82は、後述するように、第1定着オン信号93及び第2定着オン信号94に応じて、それぞれ対応するトライアック86及びトライアック87の通電時間を変えて面状の定着ヒータ31への供給電力を制御する。
【0047】
尚、ここでは、面状の定着ヒータ31に商用電源を印加することを、通電と称す場合がある。また、定着ヒータ駆動制御部81、トライアック駆動回路82、トライアック86,87、AC半波検出部83、及びリレー84が定着制御部105に相当する。
【0048】
以上のように構成された画像形成装置11における印刷動作について簡単に説明する。画像形成装置11は、先ず図示しない外部機器からホストインターフェース部100を介してPDL等で記述された印刷データを入力する。入力したデータは、コマンド/画像処理部101によってビットマップデータに変換する。その後、画像形成装置11は、定着器28の定着ベルト29を非接触型温度センサ32の温度検出値に応じて定着ヒータ31への電力供給を制御することにより所定の温度にした後、印字動作を開始する。
【0049】
給紙トレイ24内の記録用紙40は、ホッピングローラ43によって繰り出され、レジストローラ対44,45へ送られて斜行が矯正された後に転写ベルト26に送られ、この転写ベルト26の走行に伴って、IDユニット12K,12Y,12M,12Cへと順次搬送される。レジストローラ対45の後段には用紙検出センサ49が配置され、通過する記録用紙40の通過を接触或いは非接触で検出し、印刷制御部103(
図2)に検出信号を出力する。
【0050】
一方、IDユニット12において、感光体ドラム13の表面は、帯電ローラ14によって帯電された後、対応する露光ヘッド15によって露光され、この露光によって表面に静電潜像が形成される。このとき、変換されたビットマップデータに応じて各露光ヘッド15K,15Y,15M,15Cが点灯される。
【0051】
静電潜像が形成された部分には、現像ローラ16上で薄層化されたトナーが静電的に付着されて対応する色のトナー像が形成される。各感光体ドラム13に形成されたトナー像は、対応する転写ローラ17によって記録用紙40に順次重ねて転写され、記録用紙上にカラーのトナー像を形成する。転写後に、各感光体ドラム13上に残留したトナーは、それぞれクリーニングブレード27によって除去される。
【0052】
カラーのトナー像が形成された記録用紙40は、定着器28に送られる。この定着器28における加熱及び加圧により、カラーのトナー像が記録用紙40に定着され、カラー画像が形成される。カラー画像が形成された記録用紙40は、搬送ローラ対46によって用紙ガイド部42に沿って搬送され、排出ローラ対47によって用紙スタッカ部48へ排出される。以上のような過程を経て、カラー画像が記録用紙40上に形成される。尚、転写ベルト26上に付着する残留トナーは、ベルトクリーニングブレード34によってベルトクリーナ容器35内に収容される。
【0053】
次に、定着制御部105による定着器28の温度制御方法について説明する。
図5は、定着器28の定着ヒータ31を温度制御する際のヒータ制御周期及び温度制御周期を決定するフローチャートである。このフローチャートを参照しながら、ヒータ制御周期及び温度制御周期の決定方法について説明する。
【0054】
このフローが開始すると、定着ヒータ駆動制御部81は、安全性確保のため先ずリレー84がオフできることを確認する(ステップS101)。実施するタイミングは、電源オン、スリープ復帰、カバークローズ時などである。
【0055】
次に定着ヒータ駆動制御部81は、AC半波信号の立ち上がりを検出すると(ステップS102、Yes)、AC電圧周期を算出し(ステップS103)、検出されない場合には監視を続ける(ステップS102、No)。AC電圧周期は、AC半波検出部83で検出されるAC半波信号の立ち上がりエッジに基づいて算出される。ここではAC半波信号の立ち上がりを検出するが、立下りであってもよい。
【0056】
次に定着ヒータ駆動制御部81は、ステップS103で算出したAC電圧周期から、ヒータ制御周期を次式(1)によって求め、決定する(ステップS104)。
ヒータ制御周期=1.1×(AC電圧周期/2) ・・・(1)
尚、ここでは、第2の周期としてのヒータ制御周期を第1の周期としてのAC電圧のゼロクロス周期(AC電圧周期/2)の1.1倍としたが、これに限定されるものではない。
【0057】
次に定着ヒータ駆動制御部81は、ステップS104で決定したヒータ制御周期から、温度制御周期を次式(2)によって求め、決定する(ステップS105)。
温度制御周期=10×(ヒータ制御周期) ・・・(2)
【0058】
図6のタイムチャートを参照しながら、定着制御部105による定着器28の温度制御方法について更に説明する。
図6は、商用電源85のAC電圧の周波数50Hz、後述するデューティ値40%で温度制御する場合の、各部の信号波形を示すタイムチャートである。
【0059】
定着制御部105の定着ヒータ駆動制御部81は、非接触型温度センサ32による検出温度と、印刷条件で決まる目標温度との差に基づいてPID(Proportional Integral Differential)制御による計算を、温度の温度制御周期(110ms)毎に行い、所定の計算式に基づいてメインヒータ60の加熱制御のためのデューティ値naを求める。
【0060】
定着ヒータ駆動制御部81は、デューティ値naに対応して、予め設定したヒータ制御パターンのテーブルを記憶して備える。このヒータ制御パターンは、デューティ値naの所定の各値に対応して予め設定されたパターンである。例えば、求めたデューティ値naが40%の場合、定着ヒータ駆動制御部81は、
図6に示すように、温度制御周期(110ms)の1周期間に
0,1,0,1,0,1,0,1,0,0
と変化するヒータ制御パターンを選択し、第1定着オン信号93としてトライアック駆動回路82に送信する。
【0061】
トライアック駆動回路82は、選択された第1制御パターンに応じてレベル変化する第1定着オン信号93によってトライアック86を駆動する。このとき
図6に示すように、第1制御パターンのヒータ制御周期は、AC電圧のゼロクロス周期(10ms)の1.1倍(11ms)であるため、温度制御周期(110ms)の1周期間に、AC電圧の11個分の半波と、選択された第1制御パターンの10個分に対応する信号が生成され、ヒータ制御周期毎に繰り返される。
【0062】
その結果、第1定着オン信号93の、オフからオンへの立ち上がりエッジがAC電圧のゼロクロス点から常にずれた状態で経緯する。またここではゼロクロスタイプのフォトトライアックを使用しているため、第1定着オン信号93がオンになった後のゼロクロス点から通電状態となるため、ヒータ電流は、第1制御パターン信号91の「1」に対応して半波分だけ流れる。
尚、ここでは、デューティ値naに対応する電流半波の数を生成するため、この制御方法を、以後波数制御と称する場合がある。
【0063】
従って、ここでは、目標とするデューティ値na=40%に対して、動作した実際のデューティ値は、36.4(100・(4/11))%となるが、目標とするデューティ値naによって目標誤差がプラス側、マイナス側にずれる。例えば、目標とするデューティ値naが70%の場合、動作した実際のデューティ値は、72.7(100・(8/11))%となる。従って、目標とするデューティ値naが変動する実際の温度制御における長いスパンでみると誤差は相殺される。
【0064】
ここでは、第1制御パターン信号91のヒータ制御周期が、AC電圧のゼロクロス周期(10ms)の1.1倍(11ms)であるため、第1定着オン信号93の、オフからオンへの立ち上がりエッジ及びオンからオフへの立ち下がりエッジは、温度制御周期(110ms)の1周期間の起点を除いてAC電圧のゼロクロス点から常にずれた状態で経緯する。
【0065】
図7は、AC電圧のゼロクロスと第1定着オン信号93のエッジの相互のタイミングの説明に供する図であり、同図(a)は本実施の形態に基づくタイミングを示し、同図(b)は比較説明のために設定したタイミングを示している。
【0066】
同図(a)に示すように、本実施の形態では、第1定着オン信号93のオンへの立ち上がりエッジとAC電圧のゼロクロスがずれ、且つ第1定着オン信号93のオン状態の間にAC電圧のゼロクロスが1つ生じる関係となっている。従って、ヒータ電流は、第1制御パターンの「1」に対して半波分だけ流れる。
【0067】
一方、同図(b)は、AC電圧のゼロクロスと第1定着オン信号93のエッジが略同じタイミングで発生する場合を示している。この場合、ゼロクロスタイプのフォトトライアック401のゼロクロス電圧のバラツキやAC電圧の変動により、第1定着オン信号93のオフへの立ち下がりエッジに対してゼロクロスポイントの検知が早いと、ヒータ電流は、第1制御パターンの「1」に対して全波分が流れてしまうなど、誤動作により第1制御パターンと電流の関係が常に不安定なものとなる。
【0068】
本実施の形態では、温度制御周期の1周期間に、例えばその起点において、AC電圧のゼロクロスと第1定着オン信号93のエッジとが略同じタイミングとなって誤動作する可能性があるが、その場合においても、温度制御周期の1周期間に僅かに半波分の誤差電流が生じるだけとなる。
【0069】
尚、ここでは、選択された第1制御パターンのヒータ制御周期を、AC電圧のゼロクロス周期(10ms)の1.1倍(11ms)としたが、ゼロクロス検知誤差が発生しやすい範囲を避けるため、AC電圧や周期変動によるオンできる範囲(=ゼロクロス電圧未満の範囲)の変化以上である1.03倍以上とするのが望ましい。
【0070】
ここではメインヒータ60に対する通電制御について説明したが、左右のサイドヒータ61L,61Rに対しても、第2制御パターンに応じた第2定着オン信号94を形成してトライアック87を駆動し、同様の制御を行う。但し、ここでは、左右のサイドヒータ61L,61Rに対するデューティ値naは、印刷する記録用紙40のサイズ設定等に応じて、メインヒータ60に対するデューティ値nbを基に、所定の比率に設定されるものとする。
【0071】
以上のように、定着制御部105は、温度制御周期で、非接触型温度センサ32による検出温度と目標温度との差に基づいてAC電圧通電のためのデューティ値na,nbを求め、上記した定着ヒータ31への通電制御を繰り返す。
【0072】
以上のように、本実施の形態の波数制御によれば、目標とするデューティ値に沿う実際のデューティ値でAC電圧を確実にヒータに通電できるため、誤動作による意図しない温度上昇を防止できる。また位相制御では必要となるゼロクロス検出回路が不要となるため、部品点数削減や部品実装のための基板面積が削減できるなど、コスト面で有利となる。
【0073】
また、位相制御では、デューティ値算出毎にこの値に応じた位相差によってヒータ制御信号のオンタイミングを設定するため、タイマでカウントするなどの処理が必要となるが、本実施の形態の波数制御ではこれらの処理がいらないため、処理を簡略化できる。
【0074】
また通常の位相制御では、AC電圧の電圧値の高いポイントでヒータへの通電をオン、オフさせるため、不連続な電圧変動に伴って高周波ノイズの発生を誘発するが、本実施の形態の波数制御では、ヒータへの通電を、AC電圧の0V付近でオン、オフするため、ノイズの発生を低減できる。
【0075】
また、前記した特許請求の範囲、及び実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」といった言葉を使用したが、これらは便宜上であって、画像形成装置を配置する状態における絶対的な位置関係を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本実施の形態では画像形成装置としてカラープリンタを用いて説明したが、単色プリンタ、複写機、FAX、更にこれらを複合させた複合機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
11 画像形成装置、 12 IDユニット、 13 感光体ドラム、 14 帯電ローラ、 15 露光ヘッド、 16 現像ローラ、 17 転写ローラ、 18 トナー供給ローラ、 19 現像ブレード、 20 トナーカートリッジ、 21 転写ユニット、 21a 転写ベルト駆動ローラ、 21b 転写ベルト従動ローラ、 24 給紙トレイ、 26 転写ベルト、 27 クリーニングブレード、 28 定着器、 29 定着ベルト、 30 バックアップローラ、 31 定着ヒータ、 32 非接触型温度センサ、 34 ベルトクリーニングブレード、 35 ベルトクリーナ容器、 36 ドラムシャフト、 40 記録用紙、 42 用紙ガイド部、 43 ホッピングローラ、 44 レジストローラ対、 45 レジストローラ対、 46 搬送ローラ対、 47 排出ローラ対、 48 用紙スタッカ部、 49 用紙検出センサ、 50 排出検知センサ、 60 メインヒータ、 61L 左サイドヒータ、 61R 右サイドヒータ、 70 メインヒータ裏サーミスタ、 71L 左サイドヒータ裏サーミスタ、 71R 右サイドヒータ裏サーミスタ、 81 定着ヒータ駆動制御部、 82 トライアック駆動回路、 82a 第1駆動端子、 82b 第2駆動端子、 82c 第1入力端子、 82d 第2入力端子、 83 AC半波検出部、 84 リレー、 85 商用電源、 86 トライアック、 87 トライアック、 91 第1制御パターン信号、 92 第2制御パターン信号、 93 第1定着オン信号、 94 第2定着オン信号、 100 ホストインターフェース部、 101 コマンド/画像処理部、 102 露光ヘッドインターフェース部、 103 印刷データを印刷制御部、 104 高圧発生部、 105 定着制御部、 111 搬送モータ、 112 IDモータ、 113 ベルトモータ、 114 定着器モータ、 401 フォトトライアック、 402 フォトトライアック、 403 トランジスタ、 404 トランジスタ、 405 抵抗、 406 抵抗、 407 抵抗、 408 抵抗、 409 抵抗、 410 抵抗、 411 抵抗、 412 抵抗。